JP2005255769A - 蛍光体前駆体、蛍光体及びこれらの製造方法 - Google Patents

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尚大 岡田
Naoko Furusawa
直子 古澤
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Abstract

【課題】 発光強度が大であり、残光時間の短い緑色蛍光体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 液相反応により合成されたケイ酸塩蛍光体又は酸化物蛍光体を熟成して蛍光体前駆体を作製する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、プラズマディスプレイパネル等の表示装置や細管型蛍光ランプ等の照明装置等のデバイス、電子機器および各種蛍光体使用物品に幅広く使用できる蛍光体の製造技術に関する。
蛍光体は、励起線(紫外線、可視光、赤外線、熱線、電子線、X線および放射線等)を照射することにより、前記励起線のエネルギーを光(紫外線、可視光および赤外線等)に変換する材料である。前記蛍光体を用いたデバイスとしては、蛍光ランプ、電子管、冷陰極ディスプレイ、蛍光表示管、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスパネル、シンチレーション検出器、X線イメージインテンシファイア、熱蛍光線量計およびイメージングプレート等が挙げられる(例えば、非特許文献1)。これらのデバイスは、いずれも、電気エネルギーを前記励起線のエネルギーに変換し、さらに、前記励起線のエネルギーを前記光に変換するデバイスである。このようなデバイスと、電子回路または機器部品(照明器具、コンピュータ、キーボード、蛍光体を用いていない電子機器等)とを組み合わせた電子機器は、照明装置や表示装置等として広く用いられている。また、蛍光体を用いた蛍光体使用物品としては、粉末状の蛍光体と、水もしくは有機溶媒等の液体、樹脂、プラスチック、金属またはセラミクス材料等の蛍光体以外の物質とを組み合わせた蛍光体含有物があり、これらは、例えば、蛍光体塗料等の液状物やペースト状物、灰皿などの固形物、案内板や誘導物等の表示物、シール、文房具、アウトドア用品、安全標識等として広く用いられている。
近年、特にPDPは画面の大型化および薄型化が可能なことから、陰極線管(CRT)に代わり得るフラットパネルディスプレイとして注目されている。PDPは多数の微小放電空間(以下「表示セル」と略すことがある)をマトリックス状に配置して構成した表示素子であり、各表示セル内には放電電極が設けられ、各表示セルの内壁には蛍光体が塗布されている。各表示セル内の空間にはHe−Xe、Ne−Xe、Ar等の希ガスが封入されており、放電電極に電圧を印加することにより、表示セル内で希ガスの放電が起こり、真空紫外線が放射される。この真空紫外線により蛍光体が励起され、可視光を発する。表示素子において、信号が入力した位置の表示セルの蛍光体の発光によって画像が表示される。各表示セルに用いられる蛍光体としてそれぞれ、青、緑、赤に発光する蛍光体を用い、これらをマトリクス状に塗り分けることにより、フルカラーの表示を行うことができる。
現在PDP用蛍光体として主に使用されているものは、赤色蛍光体として(Y,Gd)BO3:Eu蛍光体、緑色蛍光体としてZn2SiO4:Mn蛍光体、青色蛍光体としてBaMgAl1017:Eu蛍光体などである。これらのうち、白色輝度を向上させるためには、特に視感度の高い緑色蛍光体の発光強度を高めることが重要である。このような点から、緑色蛍光体の真空紫外線励起による発光強度をさらに向上させることが強く求められている。
さらには、Zn2SiO4:Mnをはじめとするマンガン付活の蛍光体では残光時間が長いことが問題視されている。このような点に対して、Mn量を増加させることで残光時間が短くなることが知られているが、Mn濃度を増加させると輝度が低下してしまう。このように、現状では残光時間と輝度がトレードオフの関係になっている。このようなことから、前記ケイ酸塩蛍光体の輝度低下を抑制しつつ、残光時間を短くすることが重要な課題となっている。
従来、前記蛍光体の一般的な製造方法としては、蛍光体母体を構成する元素を含む化合物と付活剤元素を含む化合物を所定量混合し、所定の温度で焼成して固相間反応により蛍光体を得る固相法による製造方法(非特許文献1参照)が広く採用されていた。
しかしながら、固相法では純粋に化学量論的な組成を有する蛍光体を製造することは難しく、固相間反応の結果、反応しない余剰の不純物や反応によって生ずる副塩等が残留し、化学量論的に高純度な蛍光体を得ることが難しい。その結果として、蛍光体の輝度低下等の問題点が指摘されている。
一方、組成的に均一で高純度な微粒子蛍光体を得るには、固相法よりも液相法の方が適していることが知られている。従来の液相法による蛍光体の製造方法としては、反応晶析法、ゾルゲル法、共沈法、水熱合成法等により合成し、これらを回収、洗浄、乾燥、焼成等により酸化物とする方法などが知られている。
特許文献1には前駆体の熟成に関する記述があるが、これらはイオン性結晶の輝尽性蛍光体であり、本発明に係る酸化物蛍光体又はケイ酸塩系蛍光体において要求される発光強度の向上や残光時間の短縮についての示唆は特許文献1からは得られない。
特開2002−285148号公報 蛍光体ハンドブック(蛍光体同学会編、オーム社発行)
本発明の目的は、従来の製造法では成し得なかった、発光強度に優れ、なおかつ残光時間の短い蛍光体を提供することを目的とする。
前記の本発明の目的は下記の発明により達成される。
1.
液相法により合成された酸化物蛍光体前駆体又はケイ酸塩系蛍光体前駆体を温度40℃〜500℃、15分〜10時間熟成する事を特徴とする蛍光体前駆体の製造方法。
2.
液相法により酸化物蛍光体前駆体又はケイ酸塩系蛍光体前駆体を温度40℃〜500℃、15分〜10時間熟成して得られることを特徴とする蛍光体前駆体。
3.
液相法により合成された酸化物蛍光体前駆体又ケイ酸塩系蛍光体前駆体を温度40℃〜500℃、15分〜10時間間熟成し、
熟成により得られた前記蛍光体前駆体を焼成することを特徴とする蛍光体の製造方法。
4.
液相法により合成された酸化物蛍光体前駆体又ケイ酸塩系蛍光体前駆体を温度40℃〜500℃、15分〜10時間熟成し、
熟成により得られた前記蛍光体前駆体を焼成することにより得られたことを特徴とする蛍光体。
請求項1〜4の何れかに記載した発明により、発光強度が高く、残光時間の短い緑色蛍光体が得られ、フルカラーPDPの白色強度を向上することが可能となる。
本発明者等は、上記記載の問題点を種々検討した結果、蛍光体の製造方法において、請求項1に記載のように、液相反応により合成された酸化物蛍光体前駆体又ケイ酸塩系蛍光体前駆体を熟成する方法でこれらの蛍光体を製造することにより、従来の製造法では成し得なかった、発光強度に優れ、なおかつ残光時間の短い蛍光体を提供することが出来ることを見い出した。該方法により製造した蛍光体により、従来では得なれなかった優れた発光特性を有する各種デバイス、電子機器および蛍光体使用物品を提供することが出来るようになった。
本発明においては、ケイ素(単体)又はケイ素化合物が用いられるが、本発明におけるケイ素化合物とは、ケイ素を含む固体であって、使用される溶液に対して実質的に不溶であればいかなるものでも良く、例えば、シリカ(二酸化ケイ素)などが挙げられ、シリカとしては、気相法シリカ、湿式シリカ、コロイダルシリカ等があげられる。
本発明におけるケイ素化合物のBET比表面積は、50m2/g以上が好ましく、より好ましくは100m2/g以上、更に好ましくは200m2/g以上である。
本発明におけるケイ素化合物の1次粒径または2次凝集粒径は、1μm以下が好ましく、より好ましくは0.5μm以下、更に好ましくは0.1μm以下である。
本発明における金属元素とは、焼成することによりケイ酸塩蛍光体又は酸化物蛍光体を構成しうるものであればいかなるものでもよく、蛍光体を構成する金属元素としては、Zn、Mn、Mg、Ca、Sr、Ba、Y、Zr、Al、Ga、La、Ce、EuおよびTbからなる群から選ばれる一種以上の金属元素であることが好ましい。例えば、緑色蛍光体(Zn2SiO4:Mn等)を製造する場合は、Zn、Mnを含むものを用いればよい。前記金属元素は、使用される溶液に対して実質的に不溶な固体でもよいし、塩化物や硝酸塩等で構成され、使用される溶液に溶解するものでもよい。
本発明に係る無機蛍光体の組成は例えば、特開昭50−6410号、同61−65226号、同64−22987号、同64−60671号、特開平1−168911号等に記載されており、特に制限はないが、結晶母体であるY22S、Zn2SiO4、等に代表される金属酸化物、ケイ酸塩化合物に、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb等の希土類金属のイオンやAg、Al、Mn、Sb等の金属のイオンを賦活剤または共賦活剤として組み合わせたものが好ましい。
結晶母体の好ましい例としては、例えば、Y22S、Y3Al512、Y2SiO5、Zn2SiO4、Y2O3、BaMgAl1017、BaAl1219、(Ba,Sr,Mg)O・aAl23、(Y,Gd)BO3、YO3、SnO2、(Ba,Sr)(Mg、Mn)Al1017、(La,Ce)PO4、CeMgAl1119、GdMgB510、Sr22O7、Sr4Al1425等が挙げられる。
以上の結晶母体及び賦活剤または共賦活剤は、同族の元素と一部置き換えたものでも構わないし、とくに元素組成に制限はない。
本発明に係る蛍光体の化合物例を示すが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
[青色発光無機蛍光化合物]
(BL−1) Sr227:Sn4+
(BL−2) Sr4Al1425:Eu2+
(BL−3) BaMgAl1017:Eu2+
(BL−4) (Ba,Sr)(Mg,Mn)Al1017:Eu2+
(BL−5) CaWO4
(BL−6) Y2SiO5:Ce3+
(BL−7) Ca259Cl:Eu2+
(BL−8) BaMgAl1423:Eu2
(BL−9) BaMgAl1017:Eu2+,Tb3+,Sm2+
(BL−10) BaMgAl1423:Sm2+
(BL−11) Ba2Mg2Al1222:Eu2+
(BL−12) Ba2Mg4l818:Eu2+
(BL−13) Ba3Mg5Al1835:Eu2+
(BL−14) (Ba,Sr,Ca)(Mg,Zn,Mn)Al1017:Eu2+
[緑色発光無機蛍光体]
(GL−1) (Ba,Mg)Al1627:Eu2+,Mn2+
(GL−2) Sr4Al1425:Eu2+
(GL−3) (Sr,Ba)Al2Si28:Eu2+
(GL−4) (Ba,Mg)2SiO4:Eu2+
(GL−5) Y2SiO5:Ce3+,Tb3+
(GL−6) Sr227−Sr225:Eu2+
(GL−7) Sr2Si38−2SrCl2:Eu2+
(GL−8) Zr2SiO4,MgAl1119:Ce3+,Tb3+
(GL−9) Ba2SiO4:Eu2+
(GL−10) Zn2SiO4:Mn2+
(GL−11) Gd22S:Tb3+
(GL−12) La22S:Tb3+
(GL−13) Y2SiO5:Ce3+,Tb3+
(GL−14) Zn2GeO4:Mn2+
(GL−15) CeMgAl1119:Tb3+
(GL−16) MgO・nB23:Ce3+,Tb3+
(GL−17) LaOBr:Tb3+,Tm3+
(GL−18) La22S:Tb3+
(GL−19) SrGa24:Eu2+,Tb3+,Sm2+
[赤色発光無機蛍光体]
(RL−1) Y22S:Eu3+
(RL−2) (Ba,Mg)2SiO4:Eu3+
(RL−3) Ca28(SiO4)6O2:Eu3+
(RL−4) LiY9(SiO462:Eu3+
(RL−5) (Ba,Mg)Al1627:Eu3+
(RL−7) YVO4:Eu3+
(RL−8) YVO4:Eu3+,Bi3+
(RL−9) Y23:Eu3+
(RL−10) 3.5MgO,0.5MgF2GeO2:Mn4+
(RL−11) YAlO3:Eu3+
(RL−12) YBO3:Eu3+
(RL−13) (Y,Gd)BO3:Eu3+
本発明では必要に応じて沈殿剤を使用することが好ましく、その際使用する沈殿剤としては、有機酸または水酸化アルカリが好ましい。有機酸としては、−COOH基を有する有機酸が好ましく、例えば、シュウ酸、蟻酸、酢酸、酒石酸等が挙げられる。特に、シュウ酸を用いた場合、Zn、Mn、Mg、Ca、Sr、Ba、Y、Zr、Al、Ga、La、Ce、Eu、Tbの陽イオンと反応しやすく、Zn、Mn、Mg、Ca、Sr、Ba、Y、Zr、Al、Ga、La、Ce、Eu、Tbの陽イオンがシュウ酸塩として析出しやすいため、より好ましい。また、沈殿剤として、加水分解等によりシュウ酸を生ずるもの、例えばシュウ酸ジメチル等を使用してもよい。
本発明における水酸化アルカリとしては、−OH基を有するもの、あるいは水と反応して−OH基を生じたり、加水分解により−OH基を生じたりするものであればいかなるものでもよく、例えば、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、尿素等が挙げられるが、好ましくはアルカリ金属を含まないアンモニアがよい。
Zn、Mn、Mg、Ca、Sr、Ba、Y、Zr、Al、Ga、La、Ce、Eu、Tbからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属元素はケイ素化合物の周囲に析出していることが好ましい。更に、沈殿剤として有機酸または水酸化アルカリ等を使用し、それらと反応して有機酸塩または水酸化物としてケイ素化合物の周囲に析出していることがより好ましい。用いる有機酸または水酸化アルカリの量としては、好ましくはケイ素以外の金属元素が有機酸塩または水酸化物として析出するのに必要な化学量論量の1倍以上が好ましい。
本発明において使用される懸濁液を作る液としては、上述の通り、ケイ素又はケイ素化合物を実質的に溶解しなければどのようなものでもよく、水またはアルコール類またはそれらの混合物であることが好ましい。アルコール類としては、ケイ素化合物を分散させるものならばいかなるものであっても良く、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノール、ブタノール等が挙げられる。これらのうち、比較的ケイ素化合物が分散しやすいエタノールが好ましい。
本発明におけるケイ素又はケイ素化合物を含む溶液と、焼成することによりケイ酸塩蛍光体を構成しうる金属元素を含む溶液との混合方法は、いかなる方法でもよく、例えば撹拌による混合方法が制御しやすく、低コストであるので好ましい。また、混合方法としては、バッチ式、連続式、外部循環混合等どのような方法でもよく、例えば、ケイ素化合物を含む溶液を母液とし、母液を撹拌しながらその中にもう一方の溶液を添加する方法、あるいは母液を外部循環させ、外部循環経路中にもうけた混合器にもう一方の液を添加する方法などがケイ素化合物の分散という観点から好ましい。更に、沈殿剤を添加する場合においても混合方法は、いかなる方法、順序に従ってもよく、例えば、ケイ素化合物を含む溶液を母液とし、母液を撹拌しながらその中に他の液をダブルジェットで同時に添加する方法、あるいは母液を外部循環させ、外部循環経路中にもうけた混合器に他の液をダブルジェットで同時に添加する方法が好ましい。また溶液の添加位置は母液表面でも母液中でもどちらでもよく、より均一な混合という観点から母液中が好ましい。更に撹拌レイノルズ数は、1×103以上、好ましくは3×103以上、より好ましくは5×103以上で撹拌することが均一混合という観点から好ましい。
また、本発明におけるケイ素化合物を含む溶液と、焼成することによりケイ酸塩蛍光体を構成しうる金属元素を含む溶液との混合方法は、少なくとも第一の流路から送り込まれるシリカを含む懸濁液と第二の流路から送り込まれる原料溶液及び懸濁液とを連続的に衝突・混合させてから第三の流路に連続的に送り込むとともに、衝突後の混合液をレイノルズ数3×103〜1×106で1×10-3〜3.0×103秒間の液流を形成した後に連続的に吐出させる事がより好ましく、衝突後のレイノルズ数の下限は5×103以上であることがさら好ましく、1×104以上であることが最も好ましい。また、上記送液時間は1×10-3秒以上が好ましく、1×10-2秒以上がより好ましく、1×10-1秒以上が最も好ましい。レイノルズ数とは、流れの中にある物体の代表的な長さをD,速度をU、密度をρ、粘性率をηとしたとき、以下の式により得られる無次元数である。Re=ρDU/η
本発明においては、ケイ素化合物を含む溶液をあらかじめ調整することが好ましい。本発明における調整とは、ケイ素化合物の溶液中での粒径及び分散状態をあらかじめ調整し、所望の状態を得ることを示す。調整方法の一例として、ケイ素化合物を含む溶液に対する撹拌回転数と時間の組み合わせでもよく、より効果的な方法としてケイ素化合物を含む溶液を超音波分散することが好ましい。その際、必要に応じて界面活性剤や分散剤を添加してもよい。また調整を行う場合の溶液温度は、50℃以下、好ましくは30℃以下、より好ましくは10℃以下で行うことがケイ素化合物の再凝集による粘度上昇を防ぐ上で好ましい。凝集粒径としては、1μm以下、好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.1μm以下に調整しておくことがより微少な蛍光体を得る上で好ましい。
また、本発明においては、溶液中での粒径及び分散状態があらかじめ調製されたコロイダルシリカを使用しても良い。コロイダルシリカはアニオン性のものが好ましく、その粒径としては、1μm以下、好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.1μm以下であることがより微少な蛍光体を得る上で好ましい。
本発明においては、液相反応後の液を熟成して、蛍光体前駆体が作製されるが、熟成は温度40℃〜500℃で、15分〜10時間熟成を行うことが望ましく、攪拌しながら熟成することが望ましい。
本発明の方法において、ケイ素化合物を含む溶液と、焼成することによりケイ酸塩蛍光体を構成しうる金属元素を含む溶液とを混合し、液相反応により合成を行った後に、熟成処理した液から焼成用の前駆体とするには、直接乾燥するか、あるいは必要に応じて不溶な塩類の除去を既存の方法、例えば濾過水洗、膜分離等により行い、更にその後、濾過や遠心分離等の方法により固体を液体から分離した後に乾燥することが好ましい。乾燥温度は20〜300℃の範囲が好ましく、さらに好ましくは90〜200℃である。直接乾燥させる方法としては、エバポレーションや、顆粒化しながら乾燥させるスプレードライを挙げることができる。
次に、ケイ酸塩系蛍光体又は酸化物蛍光体の前駆体を焼成する方法はいかなる方法によってもよく、例えば、前駆体をアルミナボートに充填し、所定のガス雰囲気中で所定の温度で焼成することで所望の蛍光体を得ることができる。例えば、緑色蛍光体(Zn2SiO4:Mn等)の前駆体を焼成する場合は、不活性雰囲気中で400〜1400℃の温度範囲、0.5〜40時間の範囲で1回以上焼成するのが好ましい。更に必要に応じて、大気雰囲気(もしくは酸素雰囲気)、還元雰囲気を組み合わせてもよい。還元雰囲気を組み合わせる場合には、結晶中からの亜鉛の蒸発を防止するために800℃以下の温度で焼成することが好ましい。還元性雰囲気を得る方法として、前駆体の充填されたボート内に黒鉛の塊を入れる方法、窒素−水素の雰囲気中、あるいは希ガス・水素の雰囲気中で焼成する方法等が挙げられる。これらの雰囲気に水蒸気が含まれていてもよい。焼成後に得られたケイ酸塩系蛍光体に、分散、水洗、乾燥、篩い分け等の処理を行ってもよい。
本発明の蛍光体は、蛍光ランプ、蛍光表示管、プラズマディスプレイパネル(PDP)等のデバイス、あるいは、蛍光塗料、灰皿、案内板や誘導物等の表示物、シール、文房具、アウトドア用品、安全標識等の蛍光体使用物品に使用することが好ましい。
上記反応装置で沈殿を合成する際には、ステンレス製の配管で装置を構成するのが一般的である。しかしながら、ステンレス製の配管を用いた場合、蛍光体の発光効率が減少してしまうという自体がしばしば起こった。
本発明者らの鋭意検討の結果、蛍光体前駆体の硬度が高いため攪拌中にベッセルおよび攪拌翼が磨耗して、ステンレス粉が前駆体中に混入することが問題点であることをつきとめた。このようにステンレス粉が混入した前駆体を焼成すると蛍光体結晶の内部にNa、Fe、Cr、Ni、Mo、Ti、Nb等が混入することで蛍光体の性能に悪影響を及ぼすことが明らかとなった。このため、配管内部をテフロン(R)でコーティングする事が好ましく、配管自体をPP等の樹脂で構成する事がより好ましい。
(1)蛍光体S1の製造(図1参照)
二酸化ケイ素45gを含むコロイダルシリカとアンモニア水(28%)219gを純水に混合して液量を1500ccに調整したものをA液とした。同時に、硝酸亜鉛6水和物(関東化学株式会社製、純度99.0%)424gと硝酸マンガン6水和物(関東化学株式会社製、純度98.0%)21.5gを純水に溶解して液量を1500ccに調整したものをB液とした。
A液とB液を40℃に保温した後、ローラーポンプ1、2を使って1800cc/minの添加速度で図1に示すようなポリプロピレン製Y字形反応装3に供給した。反応により容器4に得られた沈殿物を、加圧ろ過を行い固液分離した。次いで、100℃、12時間乾燥を行い、乾燥済み前駆体PS1を得た。次に、得られた前駆体PS1を窒素100%の雰囲気中で1200℃、3時間焼成して蛍光体S1を得た。
(2)蛍光体S2の製造(図1参照)
二酸化ケイ素45gを含むコロイダルシリカとアンモニア水(28%)219gを純水に混合して液量を1500ccに調整したものをA液とした。同時に、硝酸亜鉛6水和物(関東化学株式会社製、純度99.0%)424gと硝酸マンガン6水和物(関東化学株式会社製、純度98.0%)21.5gを純水に溶解して液量を1500ccに調整したものをB液とした。
A液とB液を40℃に保温した後、ローラーポンプ1、2を使って1800cc/minの添加速度で図1に示すポリプロピレン製Y字形反応装置3に供給した。反応により容器4に得られた沈殿物を攪拌しながら40℃1時間熟成を行い、加圧ろ過を行い固液分離した。次いで、100℃、12時間乾燥を行い、乾燥済み前駆体PS2を得た。
次に、得られた前駆体PS2を窒素100%の雰囲気中で1200℃、3時間焼成して蛍光体S2を得た。
(3)蛍光体S3の製造(図1参照)
二酸化ケイ素45gを含むコロイダルシリカとアンモニア水(28%)219gを純水に混合して液量を1500ccに調整したものをA液とした。同時に、硝酸亜鉛6水和物(関東化学株式会社製、純度99.0%)424gと硝酸マンガン6水和物(関東化学株式会社製、純度98.0%)21.5gを純水に溶解して液量を1500ccに調整したものをB液とした。
A液とB液を40℃に保温した後、ローラーポンプ1、2を使って1800cc/minの添加速度で図1に示すポリプロピレン製Y字形反応装置3に供給した。反応により容器4に得られた沈殿物を攪拌しながら60℃2時間熟成を行い、加圧ろ過を行い固液分離した。次いで、100℃、12時間乾燥を行い、乾燥済み前駆体3を得た。
次に、得られた前駆体を窒素100%の雰囲気中で1200℃、3時間焼成して蛍光体3を得た。
〔評価〕
上記の(1)〜(3)で得られた蛍光体S1〜S3について、発光強度の測定を行った。
1.発光強度の評価
蛍光体1〜3にそれぞれ0.1〜1.5Paの真空槽内でエキシマ146nmランプ(ウシオ電機社製)を用いて紫外線を照射して、蛍光体から緑色光を発光させた。次に、得られた緑色光を検出器(MCPD−3000(大塚電子株式会社製))を用いてその強度を測定した。そして、発光のピーク強度を、蛍光体1を100とした相対値で求めた結果を表1に示す。
Figure 2005255769
表1に示すように、本発明の蛍光体は残光時間が短く、発光強度が向上するという結果が得られた。
本発明において使用される反応装置の例を示す図である。
符号の説明
1、2 ローラーポンプ
3 Y字形反応装置

Claims (4)

  1. 液相法により合成された酸化物蛍光体前駆体又はケイ酸塩系蛍光体前駆体を温度40℃〜500℃、15分〜10時間熟成する事を特徴とする蛍光体前駆体の製造方法。
  2. 液相法により酸化物蛍光体前駆体又はケイ酸塩系蛍光体前駆体を温度40℃〜500℃、15分〜10時間熟成して得られることを特徴とする蛍光体前駆体。
  3. 液相法により合成された酸化物蛍光体前駆体又ケイ酸塩系蛍光体前駆体を温度40℃〜500℃、15分〜10時間間熟成し、
    熟成により得られた前記蛍光体前駆体を焼成することを特徴とする蛍光体の製造方法。
  4. 液相法により合成された酸化物蛍光体前駆体又ケイ酸塩系蛍光体前駆体を温度40℃〜500℃、15分〜10時間熟成し、
    熟成により得られた前記蛍光体前駆体を焼成することにより得られたことを特徴とする蛍光体。
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