JP2005248358A - 炭素繊維前駆体繊維 - Google Patents
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Abstract
【課題】 炭素繊維製造時に、毛羽発生の少ない炭素繊維前駆体を提供する。
【解決手段】 以下の条件を満足する炭素繊維前駆体繊維である。
(1)動的粘弾性測定において、100℃付近に出現するガラス転移温度由来のtanδのピーク値(P1)と、170℃付近に出現する耐炎化反応由来のtanδのピーク値(P2)の比(P2/P1)が5以上である。
(2)広角X線測定により求めた結晶サイズが120オングストローム(Å)で以上である。
(3)広角X線測定により求めた結晶配向度が90%で以上である。
【選択図】 なし
【解決手段】 以下の条件を満足する炭素繊維前駆体繊維である。
(1)動的粘弾性測定において、100℃付近に出現するガラス転移温度由来のtanδのピーク値(P1)と、170℃付近に出現する耐炎化反応由来のtanδのピーク値(P2)の比(P2/P1)が5以上である。
(2)広角X線測定により求めた結晶サイズが120オングストローム(Å)で以上である。
(3)広角X線測定により求めた結晶配向度が90%で以上である。
【選択図】 なし
Description
本発明は、炭素繊維製造時の毛羽発生が少ない炭素繊維前駆体繊維に関する。
炭素繊維は他の繊維に比べて優れた比強度と比弾性率を有し、その軽量性と優れた機械的特性により、複合材料を得る際の補強材として多用されている。
特に各種スポーツ用具や航空宇宙用途等の分野では、炭素繊維強化複合材料として利用されており、近年、ますますの産業用途への需要が見込まれている。
炭素繊維製造時の毛羽発生を抑えることは、安定に製造する必須条件である。近年、より高性能の炭素繊維が求められており、炭素繊維前駆体繊維の紡糸条件がより厳しいものとなってきているため、わずかな紡糸条件の変動が炭素繊維製造時に毛羽発生に大きく影響を及ぼすようになった。
毛羽の発生は、スモーク発生や処理中の繊維の束切れ、炭素繊維の性能低下などの原因となり、炭素繊維の生産性を大きく低下させるので、炭素繊維製造時に毛羽発生の少ない炭素繊維前駆体繊維が望まれている。
本発明の課題は、炭素繊維製造時に、毛羽発生の少ない炭素繊維前駆体を提供することである。
本発明の要旨は、以下の条件を満足するアクリロニトリル系炭素繊維前駆体である。
(1)動的粘弾性測定において、100℃付近に出現するガラス転移温度由来のtanδのピーク値(P1)と、170℃付近に出現する耐炎化反応由来のtanδのピーク値(P2)の比(P2/P1)が5以上である。
(2)広角X線測定により求めた結晶サイズが120オングストローム(Å)で以上である。
(3)広角X線測定により求めた結晶配向度が90%で以上である。
(1)動的粘弾性測定において、100℃付近に出現するガラス転移温度由来のtanδのピーク値(P1)と、170℃付近に出現する耐炎化反応由来のtanδのピーク値(P2)の比(P2/P1)が5以上である。
(2)広角X線測定により求めた結晶サイズが120オングストローム(Å)で以上である。
(3)広角X線測定により求めた結晶配向度が90%で以上である。
本発明によれば、炭素繊維製造時の毛羽発生が少ない炭素繊維前駆体繊維を得ることができる。
以下に本発明について詳細に説明する。
<炭素繊維前駆体>
本発明の炭素繊維前駆体は、アクリロニトリル系ポリマーを紡糸したアクリル繊維である。
本発明で用いるアクリロニトリル系ポリマーは、以下で説明する条件を満たせばよく、アクリロニトリルと、アクリロニトリルと共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体である。この場合、炭素化を良好に行う目的で、共重合体中のアクリロニトリル単位は90モル%以上であることが好ましい。
<炭素繊維前駆体>
本発明の炭素繊維前駆体は、アクリロニトリル系ポリマーを紡糸したアクリル繊維である。
本発明で用いるアクリロニトリル系ポリマーは、以下で説明する条件を満たせばよく、アクリロニトリルと、アクリロニトリルと共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体である。この場合、炭素化を良好に行う目的で、共重合体中のアクリロニトリル単位は90モル%以上であることが好ましい。
アクリロニトリル系ポリマーの共重合可能なモノマーとしては、特に制限は無いが、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピルなどに代表されるアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルなどの代表されるメタクリル酸エステル類、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、臭化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデンなどの不飽和モノマー類、p−スルホフェニルメタリルエーテル、メタリルスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびこれらのアルカリ金属塩などが挙げられる。
アクリロニトリル系ポリマーの共重合成分モノマーとして、耐炎化工程における環化反応を促進する目的でカルボン酸基を有するモノマーやアクリルアミド系モノマーを用いることが好ましい。このようなカルボン酸基を有するモノマーとしては、メタクリル酸やイタコン酸が好ましい。また、アクリルアミド系モノマーとしてはアクリルアミドが好ましい。
原料に用いるアクリロニトリル系重合体の重合方法には、溶液重合、懸濁重合など、公知の重合方法の何れをも採用することができる。重合された共重合体から、未反応モノマーや重合触媒残渣、その他の不純物類を極力除く処理を施すことが好ましい。
原料に用いるアクリロニトリル系重合体の重合方法には、溶液重合、懸濁重合など、公知の重合方法の何れをも採用することができる。重合された共重合体から、未反応モノマーや重合触媒残渣、その他の不純物類を極力除く処理を施すことが好ましい。
また、前駆体繊維を紡糸する際の延伸性や炭素繊維の性能発現性等の点から、共重合体の重合度は、極限粘度〔η〕が1.0以上、特に1.4以上の範囲が好ましい。ただし、通常、極限粘度〔η〕は、2.0を超えない範囲のものが利用される。
アクリロニトリル系ポリマーは、溶剤に溶解され、紡糸原液となる。溶剤としては、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどの有機溶剤や、塩化亜鉛、チオシアン酸ナトリウムなどの無機化合物の水溶液が使用できる。作製される繊維中に金属を含有せず、また、工程が簡略化される点で有機溶剤が好ましい。その中でも凝固糸の緻密性が高いという点で、ジメチルアセトアミドを溶剤に用いることがより好ましい。
紡糸した際、緻密な凝固糸を得るためには、紡糸原液として、ある程度以上のポリマー濃度を有するポリマー溶液を使用することが好ましい。具体的には、紡糸原液中のポリマー濃度は、17%以上、より好ましくは19%以上の範囲とする。用いる共重合体の重合度にもよるが、適正な粘度・流動性を有するものとするため、通常ポリマー濃度は、25%を超えない範囲が好ましい。
アクリロニトリル系ポリマーの紡糸法は、湿式紡糸法か乾湿式紡糸法が好ましいが乾式紡糸法でも良い。湿式紡糸法、乾湿式紡糸法は用途に応じ使い分けられる。通常、より生産性を高くしたい場合は湿式紡糸で、より高いストランド強度を持つ炭素繊維を得たい場合は乾湿式紡糸を選択する。
紡糸では、まず前記紡糸原液を、円形断面を有するノズル孔より凝固浴中に吐出し凝固糸とする。凝固浴は、まず作製される凝固糸引き取りに十分な余裕がある条件に設定する必要がある。そして、凝固糸の断面形状が円形になるように、凝固浴に含まれる溶剤濃度、温度を設定する。
凝固浴には、紡糸原液に用いられる溶剤を含む水溶液が好適に使用される。ノズル孔より吐出される紡糸原液が所望の繊維径の凝固糸となるように、含まれる溶剤の濃度を調節する。使用する溶剤の種類にも依存するが、例えば、ジメチルアセトアミドを使用する場合、その濃度は50〜80%に選択する。
凝固浴には、紡糸原液に用いられる溶剤を含む水溶液が好適に使用される。ノズル孔より吐出される紡糸原液が所望の繊維径の凝固糸となるように、含まれる溶剤の濃度を調節する。使用する溶剤の種類にも依存するが、例えば、ジメチルアセトアミドを使用する場合、その濃度は50〜80%に選択する。
また、凝固浴の温度は、凝固糸の緻密性の観点からは温度が低い方が好ましい。しかしながら、湿式紡糸の場合、凝固浴の温度を下げすぎると凝固糸の引き取り速度が低下し、全体的な生産性が低下する点を考慮し、通常、50℃以下、より好ましくは20℃以上40℃以下の範囲に選択する。
通常、湿熱延伸倍率を高くすると繊維内部構造の破壊が起こり、この破壊が炭素繊維の欠陥の元となり、性能の低下を招くことが分かっている。これは湿熱延伸倍率を低くすることで回避できるが、生産性を変更しないとした場合、乾燥緻密化後の延伸倍率を通常に比べて大きくする必要があるため、紡糸工程通過性が悪くなり、かえって生産性が低下する可能性がある。これらのことから、湿熱延伸倍率は4倍以下にすることが好ましく、さらには3倍以下にすることがより好ましい。また乾燥緻密化後の延伸倍率は5倍以下が好ましく、4倍以下がさらに好ましい。
さらに繊維破壊が起こる湿熱延伸倍率の上限は品種ごとに異なるため、湿熱延伸倍率を生産条件ごとに考える必要がある。
さらに繊維破壊が起こる湿熱延伸倍率の上限は品種ごとに異なるため、湿熱延伸倍率を生産条件ごとに考える必要がある。
湿熱延伸に先立って、温水中で溶剤の洗浄を行っても良い。当然のことながら、かかる湿熱延伸における延伸倍率は1.0倍を下回るものではない。
さらに、この湿熱延伸に用いる延伸浴温度は、単糸同士が融着しない範囲で、できるだけ高温にすることが効果的である。この観点から、延伸浴の温度は70℃以上の高温とすることが好ましい。また、多段延伸の場合は、その最終浴を90℃以上の高温にすることが好ましい。
湿熱延伸、洗浄後、繊維表面には、公知の方法によって油剤処理を施す。油剤の種類は特に限定されないが、アミノシリコン系界面活性剤が好適に使用される。この油剤処理後、乾燥緻密化が行われる。この乾燥緻密化の温度は、繊維のガラス転移温度を超える温度に選択する。ガラス転移温度は、繊維自体の状態が、実質的には含水状態から乾燥状態へと変化することによって異なることもあり、温度が100〜200℃程度の加熱ローラーを用いる方法が好ましい。
本発明では、乾燥緻密化後、再度延伸を行うことで、前駆体繊維を所望の繊維径とする後延伸工程を設けることが好ましい。この後延伸は、高温の加熱ローラー、熱盤などを利用する乾熱延伸、あるいは加圧スチームによるスチーム延伸など種々の方式があるが、水の可塑化効果を利用することで、より分子鎖の可動状態にできる理由から、スチーム延伸が好ましい。またスチーム圧が低すぎれば、水の可塑化効果を十分に利用できず、高すぎれば蒸気の性状が不安定になることから、スムーズな延伸を行うためには、170〜250kPaであることが望ましく、190〜220kPaであることがより好ましい。さらにスチーム延伸機に入る直前のトウの温度は、80〜120℃であることが望ましく、90〜100℃であることがより望ましい。80℃未満であると、スチーム延伸機内で温度が上がりきらないうちに延伸され紡糸が不安定になる。一方、120℃を超えると温度が高すぎるため、スチーム延伸機内で可塑化効果を引き起こす水がうまく拡散しなくなる。
また、前延伸倍率と後延伸倍率を合わせた合計延伸倍率が、低すぎると繊維の配向が十分でなくなり炭素繊維の性能が低下し、高すぎると糸切れが生じ生産上好ましくない。この観点から、合計延伸倍率は7〜20が好ましく、10〜15倍がより好ましい。
<tanδ>
本発明の炭素繊維前駆体は、
(1)動的粘弾性測定において、100℃付近に出現するガラス転移温度由来のtanδのピーク値(P1)と、170℃付近に出現する耐炎化反応由来のtanδのピーク値(P2)の比(P2/P1)が5以上である、
(2)広角X線測定により求めた結晶サイズが120オングストローム(Å)で以上である、
(3)広角X線測定により求めた結晶配向度が90%で以上である。
ことが必要である、
本発明の炭素繊維前駆体は、
(1)動的粘弾性測定において、100℃付近に出現するガラス転移温度由来のtanδのピーク値(P1)と、170℃付近に出現する耐炎化反応由来のtanδのピーク値(P2)の比(P2/P1)が5以上である、
(2)広角X線測定により求めた結晶サイズが120オングストローム(Å)で以上である、
(3)広角X線測定により求めた結晶配向度が90%で以上である。
ことが必要である、
ここで動的粘弾性と結晶について詳しく説明する。
動的粘弾性測定とは、貯蔵弾性率と損失弾性率を求めるものであり、tanδは(損失弾性率/貯蔵弾性率)で表されるものである。貯蔵弾性率は主に高分子の弾性体部分に、損失弾性率は粘性体部分に寄与するものであり、弾性体部分は結晶部または拘束された非晶部、粘性体部分は可動非晶部に相当する。
動的粘弾性測定とは、貯蔵弾性率と損失弾性率を求めるものであり、tanδは(損失弾性率/貯蔵弾性率)で表されるものである。貯蔵弾性率は主に高分子の弾性体部分に、損失弾性率は粘性体部分に寄与するものであり、弾性体部分は結晶部または拘束された非晶部、粘性体部分は可動非晶部に相当する。
炭素繊維製造時の毛羽発生を抑制するためには、炭素繊維前駆体が化学反応を起こして環化する際に、非晶部の分子鎖が可動であることが必要である。つまり可動でない拘束された非晶部が多ければ、環化反応の際、応力集中が生じる箇所ができ、そこから構造破壊が起こり毛羽となってしまう。
単に炭素繊維製造時の毛羽発生を抑制するのであれば、紡糸工程にて炭素繊維前駆体をあまり延伸せず、分子鎖が可動な状態とすればよいが、それでは結晶部が未発達となり、炭素繊維としたときの性能向上は見込めない。
一方、炭素繊維の高強度化だけを目指して結晶部をより大きく、より配向させようとすると、高倍率の延伸が必要となり、非晶部に大きな歪が生じ、結果的に炭素繊維製造時の化学収縮反応時の応力集中により切断し、毛羽となってしまう。
すなわち、理想的な炭素繊維前駆体とは、耐炎化時に応力集中しないように、適度な可動非晶部を有しながら、炭素繊維としたときに性能を発現するために、適度な結晶サイズと配向度を有しておく必要がある。
多種の前駆体繊維について詳細に調べた結果、必要な条件として、上記(1)〜(3)を見出すに至った。
多種の前駆体繊維について詳細に調べた結果、必要な条件として、上記(1)〜(3)を見出すに至った。
<炭素繊維の製造>
本発明の前駆体繊維の耐炎化は、公知の方法・条件で行えばよく特に限定しないが、200〜300℃の酸化性雰囲気中、緊張あるいは延伸条件下で、密度が好ましくは1.25g/cm3以上、より好ましくは1.32g/cm3以上になるまで処理するのが良い。
本発明の前駆体繊維の耐炎化は、公知の方法・条件で行えばよく特に限定しないが、200〜300℃の酸化性雰囲気中、緊張あるいは延伸条件下で、密度が好ましくは1.25g/cm3以上、より好ましくは1.32g/cm3以上になるまで処理するのが良い。
耐炎化が不十分であると、炭素化する際に単糸間接着などを起こしやすくなる。雰囲気については空気、酸素、二酸化窒素など、公知の酸化性雰囲気を採用できるが、経済性の面から空気が好ましい。
耐炎化繊維は、炭素化に先立って、まず、最高温度が550〜800℃の不活性雰囲気中、緊張化で、300〜500℃の温度領域において500℃/分以下、好ましくは300℃/分以下の昇温速度で炭素化処理をすることが炭素繊維の機械的特性を向上させるために有効である。
雰囲気については窒素、アルゴン、ヘリウムなど公知の不活性雰囲気を採用できるが、経済性の面から窒素が望ましい。
雰囲気については窒素、アルゴン、ヘリウムなど公知の不活性雰囲気を採用できるが、経済性の面から窒素が望ましい。
このように処理された繊維は、公知の方法・条件で炭素化を行えばよく特に限定しないが、最高温度1200〜1800℃の不活性雰囲気中、1000〜1200℃の温度領域において500℃/分以下、好ましくは300℃/分以下の昇温速度で炭素化処理をすることが炭素繊維の機械的特性を向上させるために有効である。雰囲気については窒素、アルゴン、ヘリウムなど、公知の不活性雰囲気を採用できるが、経済性の面から窒素が望ましい。
こうして得られた炭素繊維は、公知の電解液中で電解酸化処理を施したり、気相または液相での酸化処理を施したりすることによって、複合材料における炭素繊維とマトリックス樹脂との親和性や接着性を向上させることが好ましい。
さらに、必要に応じて従来公知の方法によりサイジング剤を付与することができる。
さらに、必要に応じて従来公知の方法によりサイジング剤を付与することができる。
以下に、実施例により本発明をより具体的に説明する。
「毛羽評価」、「動的粘弾性」、「結晶サイズ」、「配向度」、「樹脂含浸ストランド特性」は以下の評価方法により評価した。通常は複数の試料に対して評価し、その平均値を採用している。
「毛羽評価」、「動的粘弾性」、「結晶サイズ」、「配向度」、「樹脂含浸ストランド特性」は以下の評価方法により評価した。通常は複数の試料に対して評価し、その平均値を採用している。
(イ)「毛羽評価」
炭素化炉出の炭素繊維を1〜3分毎に目視にて観察し、毛羽の発生状況を「なし」、「ややあり」、「やや多い」、「多い」の4段階に分類し、それぞれに対して0点,1点,2点,3点の得点を設けた。観察は試験数=25で行い、その平均値から◎(2点以上)、○(1.5〜2.0未満)、×(1.5未満)として判定を行った。
炭素化炉出の炭素繊維を1〜3分毎に目視にて観察し、毛羽の発生状況を「なし」、「ややあり」、「やや多い」、「多い」の4段階に分類し、それぞれに対して0点,1点,2点,3点の得点を設けた。観察は試験数=25で行い、その平均値から◎(2点以上)、○(1.5〜2.0未満)、×(1.5未満)として判定を行った。
(ロ)「動的粘弾性」
アクリロニトリル系炭素繊維前駆体繊維を長さ30cm、質量18mgになるように取り分ける。その繊維を試長が2cmとなるように両端をグラフ用紙ではさみサンプルを作成する。グラフ用紙と繊維との接着は、高性能接着剤アラルダイトスタンダード(ニチバン株式会社製)を使用した。尚、測定の際に必要な繊維の断面積は、10cmの長さに切り取った試料の質量を用いて丸断面を仮定して求めた値を使った。
動的粘弾性測定は、DMS200(セイコーインスツルメンツ株式会社製)を用いて行った。測定周波数は10Hz、昇温速度は2℃/分で室温から250℃まで測定した。測定は試験数2で行い、その平均値を取った。
アクリロニトリル系炭素繊維前駆体繊維を長さ30cm、質量18mgになるように取り分ける。その繊維を試長が2cmとなるように両端をグラフ用紙ではさみサンプルを作成する。グラフ用紙と繊維との接着は、高性能接着剤アラルダイトスタンダード(ニチバン株式会社製)を使用した。尚、測定の際に必要な繊維の断面積は、10cmの長さに切り取った試料の質量を用いて丸断面を仮定して求めた値を使った。
動的粘弾性測定は、DMS200(セイコーインスツルメンツ株式会社製)を用いて行った。測定周波数は10Hz、昇温速度は2℃/分で室温から250℃まで測定した。測定は試験数2で行い、その平均値を取った。
(ハ)「結晶サイズ」
アクリロニトリル系炭素繊維前駆体繊維を50mm長に切断し、これを30mg精秤採取し、試料繊維軸が正確に平行になるようにして引き揃えた後、試料調整用治具を用いて巾1mmの厚さが均一な繊維試料束に整えた。この繊維試料束に酢酸ビニル/メタノール溶液を含浸させて形態が崩れないように固定した後、これを広角X線回折試料台に固定した。X線源として、リガク社製のCuKα線(Niフィルター使用)X線発生装置(RU200B)を用い、同じくリガク社製のゴニオメーターにより、面指数(100)に相当する2θ=17°近傍の回折ピークをシンチレーションカウンターにより検出した。出力は40kV−100mAにて測定した。回折ピークにおける半値巾から以下の式を用いて、結晶領域サイズLaを求めた。
La=Kλ/(β0 cosθ)
ここで、Kはシェラー定数0.9、λは用いたX線の波長(CuKα線を用いているので、1.5418オングストローム)、θはブラッグの回折角、β0 は真の半値巾、β0 =βE −β1 (βE は見かけの半値巾、β1 は装置定数であり、ここでは1.05×10-2ラジアン)である。)
アクリロニトリル系炭素繊維前駆体繊維を50mm長に切断し、これを30mg精秤採取し、試料繊維軸が正確に平行になるようにして引き揃えた後、試料調整用治具を用いて巾1mmの厚さが均一な繊維試料束に整えた。この繊維試料束に酢酸ビニル/メタノール溶液を含浸させて形態が崩れないように固定した後、これを広角X線回折試料台に固定した。X線源として、リガク社製のCuKα線(Niフィルター使用)X線発生装置(RU200B)を用い、同じくリガク社製のゴニオメーターにより、面指数(100)に相当する2θ=17°近傍の回折ピークをシンチレーションカウンターにより検出した。出力は40kV−100mAにて測定した。回折ピークにおける半値巾から以下の式を用いて、結晶領域サイズLaを求めた。
La=Kλ/(β0 cosθ)
ここで、Kはシェラー定数0.9、λは用いたX線の波長(CuKα線を用いているので、1.5418オングストローム)、θはブラッグの回折角、β0 は真の半値巾、β0 =βE −β1 (βE は見かけの半値巾、β1 は装置定数であり、ここでは1.05×10-2ラジアン)である。)
(ニ)「配向度」
数百本のアクリロニトリル系炭素繊維前駆体繊維を酢酸ビニル/メタノール溶液で固め、幅0.5mmほどのサンプルを作製し、サンプルをX線に対して垂直な面上で360°回転させ、(002)反射における最高強度を含む子午線方向のプロファイルの半価幅から以下の式を用いて配向度を算出した。X線源として、リガク社製のCuKα線(Niフィルター使用)X線発生装置を用い、出力は40kV−100mAにて測定した。
配向度π=(180−B)/180×100・・・・・・・・(2)
B:半価幅
数百本のアクリロニトリル系炭素繊維前駆体繊維を酢酸ビニル/メタノール溶液で固め、幅0.5mmほどのサンプルを作製し、サンプルをX線に対して垂直な面上で360°回転させ、(002)反射における最高強度を含む子午線方向のプロファイルの半価幅から以下の式を用いて配向度を算出した。X線源として、リガク社製のCuKα線(Niフィルター使用)X線発生装置を用い、出力は40kV−100mAにて測定した。
配向度π=(180−B)/180×100・・・・・・・・(2)
B:半価幅
(ホ)「樹脂含浸ストランド特性」
炭素繊維のストランド強度およびストランド弾性率は、JIS R 7601に記載された試験法に準拠して測定した。
炭素繊維のストランド強度およびストランド弾性率は、JIS R 7601に記載された試験法に準拠して測定した。
アクリロニトリル96モル%/メタクリル酸1モル%/アクリルアミド3モル%のアクリル系共重合体を、ジメチルアセトアミドに溶解して紡糸原液(重合体濃度21質量%、原液温度60℃)を調整した。
この紡糸原液を、孔径0.065mm、孔数12000個を有する口金を用いて、温度35℃、濃度66質量%のジメチルアセトアミド水溶液中に吐出し凝固糸とした。
断面形状はほぼ真円であった。この凝固糸を、冷延伸および温水中延伸を施した後、アミノシリコン系油剤1質量%水溶液中に浸漬し、180℃の加熱ローラーにて乾燥緻密化した。ここまでの湿熱延伸倍率は3.5倍である。続いてスチーム延伸機に入る繊維の温度を100℃とし、220kPaの加圧水蒸気中で延伸倍率が合計10倍になるように延伸を施して、アクリロニトリル系前駆体繊維を得た。
このアクリロニトリル系前駆体繊維を230〜260℃の空気中、緊張化に加熱し密度1.36g/cm3の耐炎化繊維に転換し、さらに、700℃の窒素中、緊張化で前炭素化処理を施し前炭素化繊維とした。
この前炭素化処理での300〜500℃での昇温速度は200℃/分であった。
この前炭素化処理での300〜500℃での昇温速度は200℃/分であった。
得られた前炭素化繊維を1450℃で焼成し、表面処理後にサイジング剤を付与し、炭素繊維を得た。1000〜1200℃での昇温速度は400℃/分であった。評価結果を表1に示した。
スチーム延伸機に入る繊維の温度を90℃にしたほかは実施例1と同様に操作し、炭素繊維を得た。
スチーム延伸機に入る繊維の温度を110℃にしたほかは実施例1と同様に操作し、炭素繊維を得た。
(比較例1)
(比較例1)
スチーム延伸機に入る繊維の温度を140℃にしたほかは実施例1と同様に操作し、炭素繊維を得た。
(比較例2)
(比較例2)
スチーム延伸機に入る繊維の温度を60℃にしたほかは実施例1と同様に操作し、炭素繊維を得た。
(比較例3)
(比較例3)
スチーム延伸機の加圧水蒸気圧を190kPaにしたほかは実施例1と同様に操作し、炭素繊維を得た。
(比較例4)
(比較例4)
スチーム延伸機の加圧水蒸気圧を150kPaにしたほかは実施例1と同様に操作し、炭素繊維を得た。
Claims (1)
- 以下の条件を満足する炭素繊維前駆体繊維。
(1)動的粘弾性測定において、100℃付近に出現するガラス転移温度由来のtanδのピーク値(P1)と、170℃付近に出現する耐炎化反応由来のtanδのピーク値(P2)の比(P2/P1)が5以上である。
(2)広角X線測定により求めた結晶サイズが120オングストローム(Å)で以上である。
(3)広角X線測定により求めた結晶配向度が90%で以上である。
Priority Applications (1)
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JP2008075205A (ja) * | 2006-09-21 | 2008-04-03 | Mitsubishi Rayon Co Ltd | 加圧スチームによる繊維の延伸方法及び延伸装置、並びに炭素繊維用アクリル系前駆体繊維束の製造方法 |
JP2012188789A (ja) * | 2011-03-14 | 2012-10-04 | Mitsubishi Rayon Co Ltd | 炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維及びその製造方法 |
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2004
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JP2008075205A (ja) * | 2006-09-21 | 2008-04-03 | Mitsubishi Rayon Co Ltd | 加圧スチームによる繊維の延伸方法及び延伸装置、並びに炭素繊維用アクリル系前駆体繊維束の製造方法 |
JP4745932B2 (ja) * | 2006-09-21 | 2011-08-10 | 三菱レイヨン株式会社 | 加圧スチームによる繊維の延伸装置および炭素繊維用アクリル系前駆体繊維束の製造方法 |
JP2012188789A (ja) * | 2011-03-14 | 2012-10-04 | Mitsubishi Rayon Co Ltd | 炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維及びその製造方法 |
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