JP2005248054A - 熱可塑性樹脂組成物及びその成形品 - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物及びその成形品 Download PDF

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政 松田
Akira Saito
彰 斉藤
Hisashi Yamanoue
寿 山ノ上
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Abstract

【課題】制電性及び色調安定性に優れると共に、実質的に透明性を有する熱可塑性樹脂組成物及びそれからなる成形品を提供する。
【解決手段】 ゴム質重合体に、ビニル系単量体をグラフトさせたグラフト共重合体(A)と、ビニル系(共)重合体(B)からなる熱可塑性樹脂に対し、ポリアミドエラストマー及び特定のリン系酸化防止剤を特定量添加してなる熱可塑性樹脂組成物及びそれからなる成形品。
【選択図】なし

Description

本発明は、制電性及び色調に優れると共に、実質的に透明性を有する熱可塑性樹脂組成物に関するものである。
ジエン系ゴム等のゴム質重合体に、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のシアン化ビニルやスチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル等のビニル系単量体をグラフト共重合して得られる透明性を有する熱可塑性樹脂組成物は、耐衝撃性、成形性、外観、透明性等に優れていることから、OA機器、家電製品、及び一般雑貨等の用途に幅広く利用されている。また、IC関連部品、OA機器のカバーや各種防塵用部品等には制電性を付与した材料が使用されている。
透明樹脂材料に制電性を付与する方法としては、共役ジエンまたは/およびアクリル酸エステルとアルキレンオキサイド基を有するビニル系単量体を共重合して得られる親水性ゴム状重合体に、ビニル系単量体またはビニリデン単量体をグラフト重合して得る方法(例えば、特許文献1参照)等が知られているが、この方法は、特殊なゴムを使用しているため、その製造方法が繁雑なこと、及び制電特性の安定性に劣ること等の点で十分満足できるものではなかった。
これに対し、本出願人は、繁雑な製造方法によらず、持続的な制電特性を有し、かつ機械的特性に優れる熱可塑性樹脂組成物として、特定のポリエーテルエステルアミドとグラフト共重合体に特定の官能基を含有する変性ビニル系重合体を配合する方法(例えば、特許文献2参照)を開発し先に提案しているが、この熱可塑性樹脂組成物についても実使用においていくつかの問題点が見いだされた。たとえば、押出加工時の製造条件や成形時条件によっては、色調が悪化する場合があるという問題がその後明らかになったのである。
特開昭55−36237号公報 特開平1−198656号公報
したがって本発明の目的は、上記した従来技術の欠点を解消し、制電性及び色調安定性に優れると共に、実質的に透明性を有する熱可塑性樹脂組成物及びそれからなる成形品を提供することにある。
上記の目的を達成するために本発明によれば、ゴム質重合体(a)に対し、芳香族ビニル系単量体(b)、シアン化ビニル系単量体(c)、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(d)、及び共重合可能なその他のビニル系単量体(e)から選ばれた1種以上の単量体をグラフト共重合せしめたグラフト共重合体(A)と、芳香族ビニル系単量体(b)、シアン化ビニル系単量体(c)、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(d)、及び共重合可能なその他のビニル系単量体(e)から選ばれた1種以上の単量体からなるビニル系重合体(B)とを、(A)/(B)の重量比が10/90〜60/40となる割合で含む熱可塑性樹脂(I)に、ポリアミドエラストマー(II)を前記熱可塑性樹脂(I)100重量部に対し3〜40重量部、次式(イ)で示され、かつ融点が100℃以上のリン系酸化防止剤(III)を前記ポリアミドエラストマー(II)100重量部に対し0.4〜5.0重量部添加してなる熱可塑性樹脂組成物が提供される。
Figure 2005248054
(ただし、式中、R1は炭素数1〜18のアルキル基、フェニル基、または置換フェニル基を示す。)
なお、本発明の熱可塑性樹脂組成物においては、
前記ゴム質重合体(a)の重量平均粒子径が0.1〜0.5μmであり、かつ、グラフト共重合体(A)を構成するゴム質重合体(a)と単量体(b)、(c)、(d)、及び(e)の合計との重量比が20:80〜80:20の割合であること、
前記グラフト共重合体(A)を構成する単量体が、芳香族ビニル系単量体(b)10〜50重量%、シアン化ビニル系単量体(c)0〜20重量%、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(d)50〜90重量%、及び共重合可能なその他のビニル系単量体(e)0〜60重量%からなものであること、
前記ビニル系重合体(B)を構成する単量体が、芳香族ビニル系単量体(b)10〜50重量%、シアン化ビニル系単量体(c)0〜20重量%、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(d)50〜90重量%、及び共重合可能なその他のビニル系単量体(e)0〜60重量%からなるものであること、
前記熱可塑性樹脂組成物のペレットを80℃熱風乾燥機中で3時間乾燥し、シリンダー温度230℃に設定した東芝(株)製IS50A成形機内に充填して、射出成形により得られた角板成形品(40mm(W)×50mm(L)×3mm(t))を、東洋精機(株)製直読ヘイズメーターを使用して測定したヘイズ値が30%以下であること、
前記ポリアミドエラストマー(II)が、
(i)炭素原子数6以上のアミノカルボン酸または炭素原子数6以上のラクタム、もしくはジアミンとジカルボン酸から合成される合計炭素原子数が6以上の塩、
(ii)次式(ロ)〜(ニ)から選ばれ、数平均分子量が1,000〜3,000であるるジオール化合物の1種もしくは2種以上、
Figure 2005248054
Figure 2005248054
Figure 2005248054
(ただし、式中、R2、R3はエチレンオキシド基およびプロピレンオキシド基の少なくとも1つを示し、Yは共有結合、炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数1〜6のアルキリデン基、炭素数7〜17のシクロアルキリデン基、炭素数7〜17のアリールアルキリデン基、O、SO、SO2、CO、S、CF2、C(CF32、またはNHを示し、X1〜X12は水素、炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン基、スルホン基、またはその金属塩を示す。)
(iii)数平均分子量が1,000〜3,000のポリ(アルキレンオキシド)グリコール、および
(iv)炭素原子数4〜20のジカルボン酸
を重合して得られるポリエーテルエステルアミドであること、及び
更に、変性ビニル系共重合体(IV)を0.1〜20重量部含有すること(ただし、熱可塑性樹脂(I)+変性ビニル系共重合体(IV)=100重量部とする)
が、いずれも好ましい条件として挙げられる。
また、本発明の成形品は、上記の熱可塑性樹脂組成物からなることを特徴とする。
本発明によれば、以下に説明するとおり、制電性及び色調安定性に優れると共に、実質的に透明性を有する熱可塑性樹脂組成物及びそれからなる成形品を得ることができる。
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明におけるグラフト共重合体(A)に用いられるゴム質重合体(a)は特に制限はないが、ジエン系ゴム、アクリル系ゴム、及びエチレン系ゴム等が使用できる。具体例として、ポリブタジエン、ポリ(ブタジエン−スチレン)、ポリ(ブタジエン−アクリロニトリル)、ポリイソプレン、ポリ(ブタジエン−アクリル酸ブチル)、ポリ(ブタジエン−メタクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸ブチル−メタクリル酸メチル)、ポリ(ブタジエン−アクリル酸エチル)、エチレン−プロピレンラバー、エチレン−プロピレン−ジエンラバー、ポリ(エチレン−イソプレン)、及びポリ(エチレン−アクリル酸メチル)等が挙げられる。これらのゴム質重合体(a)は、1種または2種以上の混合物で使用される。これらのゴム質重合体(a)のうち、特にポリブタジエン、ポリ(ブタジエン−スチレン)、ポリ(ブタジエン−アクリロニトリル)、及びエチレン−プロピレンラバーが耐衝撃性の点で好ましく用いられる。
本発明におけるグラフト共重合体(A)を構成するゴム質重合体(a)の重量平均粒子径は特に制限はないが、0.1〜0.5μmの範囲が好ましい。0.1μm未満では得られる熱可塑性組成物の衝撃強度が低下し、0.5μmを越えると透明性が低下するケースが多くなるためいずれも好ましくない。さらに好ましくは0.15〜0.4μmの範囲である。
本発明におけるグラフト共重合体(A)及びビニル系(共)重合体(B)に用いる芳香族ビニル系単量体(b)は特に制限はないが、具体例として、スチレン,α−メチルスチレン,オルソメチルスチレン,パラメチルスチレン,パラ−t−ブチルスチレン及びハロゲン化スチレン等が挙げられ、これらは1種または2種以上用いることができる。なかでもスチレン及びα−メチルスチレンが好ましく、特に好ましくはスチレンである。
本発明におけるグラフト共重合体(A)及びビニル系(共)重合体(B)に用いるシアン化ビニル系単量体(c)は特に制限はないが、具体例として、アクリロニトリル及びメタクリロニトリル等が挙げられ、これらは1種または2種以上用いることができる。なかでもアクリロニトリルが耐衝撃性の点で好ましい。
本発明におけるグラフト共重合体(A)及びビニル系(共)重合体(B)に用いる不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(d)は特に制限はないが、炭素数1〜6のアルキル基または置換アルキル基を持つアクリル酸エステル及び/またはメタクリル酸エステルが好適であり、これらは1種または2種以上を用いることができる。具体例として、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸クロロメチル及び(メタ)アクリル酸2−クロロエチル等が挙げられ、なかでもメタクリル酸メチルが好ましい。
本発明におけるグラフト共重合体(A)及びビニル系(共)重合体(B)に用いる共重合可能なその他のビニル系単量体(e)は特に制限はないが、具体例として、N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド化合物、マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸、無水マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸無水物及びアクリルアミド等の不飽和アミド化合物に代表される共重合可能なビニル化合物等を挙げることができ、これらは単独ないし2種以上を用いることができる。
なお、ビニル系(共)重合体(B)は複数種類用いることができる。
グラフト共重合体(A)におけるゴム質重合体(a)とマトリックス樹脂との屈折率の差は0.03以下であることが好ましい。ここでいうマトリックス樹脂とは、グラフト共重合体(A)からゴム質重合体(a)を除いた、グラフト共重合成分及びビニル系(共)重合体(B)からなる。ゴム質重合体(a)、グラフト共重合成分及びビニル系(共)重合体(B)の屈折率は、アッベ屈折計を用いて測定することができる。ゴム質重合体(a)、グラフト共重合成分及びビニル系(共)重合体(B)の相互の屈折率の差が0.03を越えると透明性が低下する。
グラフト共重合体(A)に用いる単量体は、芳香族ビニル系単量体(b)10〜50重量%、シアン化ビニル系単量体(c)0〜20重量%、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(d)50〜90重量%、及び共重合可能なその他のビニル系単量体(e)0〜60重量%からなることが好ましい。より好ましくは、芳香族ビニル系単量体(b)15〜35重量%、シアン化ビニル系単量体(c)0〜10重量%、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(d)60〜80重量%、及び共重合可能なその他のビニル系単量体(e)0〜40重量%である。
本発明におけるビニル系(共)重合体(B)を構成する芳香族ビニル系単量体(b)、シアン化ビニル系単量体(c)、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(d)及び必要に応じて共重合可能なその他のビニル系単量体(e)の組成は特に制限はないが、透明性、耐衝撃性のバランスをとる点で、好ましくは芳香族ビニル系単量体(b)10〜50重量%、シアン化ビニル系単量体(c)0〜20重量%、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(d)50〜90重量%、及び共重合可能なその他のビニル系単量体(e)0〜60重量%である。さらに好ましくは芳香族ビニル系単量体(b)15〜35重量%、シアン化ビニル系単量体(c)0〜10重量%、及び不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(d)60〜80重量%、及び共重合可能なその他のビニル系単量体(e)0〜40重量%である。
本発明の熱可塑性樹脂(I)を構成するグラフト共重合体(A)とビニル系(共)重合体(B)との混合比は、グラフト共重合体(A)10〜60重量部、ビニル系(共)重合体(B)40〜90重量部の割合である。グラフト共重合体(A)が10重量部未満もしくはビニル系(共)重合体(B)が90重量部を越えると衝撃強度が低下する。またグラフト共重合体(A)が60重量部を越えると溶融粘度が上昇して成形性が悪くなる。好ましくはグラフト共重合体(A)20〜50重量部、ビニル系(共)重合体(B)50〜80重量部の割合である。
また、グラフト共重合体(A)におけるゴム質重合体(a)の含有量は特に制限はないが、20〜80重量部の範囲が好ましい。20重量部未満では得られる熱可塑性樹脂組成物の衝撃強度が低下し、80重量部を越えると溶融粘度が上昇して成形性が悪くなるため好ましくない。さらに好ましくは35重量部〜60重量部の範囲である。なお、グラフト共重合体(A)に配合された単量体混合物は、そのすべてが、ゴム質重合体(a)と結合してグラフト化している必要はなく、単量体混合物の単量体同士で結合し、グラフト化していない重合体として含まれていても良い。しかし、グラフト率は好ましくは、10〜100%、特に好ましいのは20〜50%の範囲である。 本発明におけるビニル系(共)重合体(B)の還元粘度(ηsp/c)は特に制限はないが、0.1〜0.6dl/gの範囲が好ましい。これ以外の場合、耐衝撃性が低下し、或いは溶融粘度が上昇して成形性が悪くなりやすい。さらに好ましくは0.2〜0.5dl/gの範囲である。
本発明におけるグラフト共重合体(A)及びビニル系(共)重合体(B)の製造方法は特に制限はなく、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、及び乳化重合等のいずれでもよい。単量体の仕込方法も特に制限はなく、初期一括仕込み、単量体の一部または全てを連続仕込み、あるいは単量体の一部または全てを分割仕込みのいずれの方法を用いてもよい。

本発明で使用するポリアミドエラストマー(II)は、特に限定されるものではないが、
(i)炭素原子数6以上のアミノカルボン酸または炭素原子数6以上のラクタム、もしくはジアミンとジカルボン酸から合成される合計炭素原子数が6以上の塩、
(ii)次式(ロ)〜(ニ)から選ばれ、数平均分子量が1,000〜3,000であるるジオール化合物の1種もしくは2種以上、
Figure 2005248054
Figure 2005248054
Figure 2005248054
(ただし、式中、R2、R3はエチレンオキシド基およびプロピレンオキシド基の少なくとも1つを示し、Yは共有結合、炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数1〜6のアルキリデン基、炭素数7〜17のシクロアルキリデン基、炭素数7〜17のアリールアルキリデン基、O、SO、SO2、CO、S、CF2、C(CF32、またはNHを示し、X1〜X12は水素、炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン基、スルホン基、またはその金属塩を示す。)、
(iii)数平均分子量が1,000〜3,000であるポリ(アルキレンオキシド)グリコール、及び
(iv)炭素原子数4〜20のジカルボン酸
を重合して得られるポリエーテルエステルアミドがあげられる。
本発明におけるポリアミドエラストマー(II)を構成する(i)炭素原子数6以上のアミノカルボン酸としては、ω−アミノカプロン酸、ω−アミノエナント酸、ω−アミノカプリル酸、ω−アミノペルゴン酸、ω−アミノカプリン酸、11−アミノウンデカン酸、及び12−アミノドデカン酸等が挙げられる。炭素原子数6以上のラクタムとしては、カプロラクタム、エナントラクタム、カプリルラクタム及びラウロラクタム等が挙げられる。ジアミンとジカルボン酸から合成される合計炭素原子数が6以上の塩としては、ヘキサメチレンジアミン−アジピン酸塩、ヘキサメチレンジアミン−セバシン酸塩、ヘキサメチレンジアミン−デカンジカルボン酸塩、及びヘキサメチレンジアミン−イソフタル酸塩等が挙げられる。特にカプロラクタム、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、及びヘキサメチレンジアミン−アジピン酸塩が好ましく用いられ、より好ましくはカプロラクタムである。これらの(i)ポリアミド形成成分は1種もしくは必要に応じて2種以上用いることができる。
(i)ポリアミド形成成分は、ポリエーテルエステルアミド構成単位に対して10〜90重量%、好ましくは20〜70重量%、より好ましくは30〜50重量%の範囲で用いられる。10〜90重量%の範囲ではポリエーテルエステルアミドの機械的性質および透明性が高くなるため好ましい。
本発明におけるポリアミドエラストマー(II)を構成する(ii)ジオール化合物は、次式(ロ)〜(ニ)で示されるものである。
Figure 2005248054
Figure 2005248054
Figure 2005248054
(ただし、式中、R2、R3はエチレンオキシド基およびプロピレンオキシド基の少なくとも1つを示し、Yは共有結合、炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数1〜6のアルキリデン基、炭素数7〜17のシクロアルキリデン基、炭素数7〜17のアリールアルキリデン基、O、SO、SO2、CO、S、CF2、C(CF32、またはNHを示し、X1〜X12は水素、炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン基、スルホン基、またはその金属塩を示す。)
上記一般式(ロ)〜(ニ)で示される化合物のうち、R2、R3はエチレンオキシドであることが重合性が良好である点で好ましい。また、X1〜X12はそれぞれ同一または相違なる水素または炭素数1〜6のアルキル基であることが好ましく、特に好ましくは水素である。数平均分子量は1,000〜3,000であり、特に1,800〜2,500の範囲が好ましい。式中のmおよびnはそれぞれ−R2−、−R3−の重合度を意味し、独立した値は求められないが、m+nの平均値は化合物の構造と数平均分子量から計算により求めることができるものである。数平均分子量が上記範囲にある場合に、得られるポリエーテルエステルアミドの帯電防止性の向上、重合時間の短縮を図ることができる。
なお、本発明において、数平均分子量は、試料1gを過剰なアセチル化剤、例えば無水酢酸と加熱してアセチル化を行い、生成したアセチル化物を中和するのに必要な水酸化カリウムの量(mg数)をG、アセチル化前の試料1gを中和するのに必要な水酸化カリウムの量(mg数)をHとしたときに、次式(ホ)によって計算することができる。
数平均分子量=11200/〔[G/(1−0.00075×G)]−H〕(ホ)
また、一般式(ハ)で示される化合物が重合性の点で優れ好ましい。一般式(ハ)のYとしては、共有結合、炭素数1〜6のアルキレン基およびSO2が好ましく、特に好ましくは炭素数1〜6のアルキレン基である。
具体的な例としては、ビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA、ジメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールA、2,2−ビス(4,4’−ヒドロキシフェニル−3,3’−スルホン酸ナトリウム)プロパン、ビスフェノールS、ジメチルビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールS、4,4’−(ヒドロキシ)ビフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフルオロメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アミン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、ハイドロキノン、及び1,4−ジヒドロキシベンゼンスルホン酸ナトリウム等のエチレンオキシド及び/またはプロピレンオキシド付加物、ジヒドロキシナフタレン、及びそれらのブロック共重合体等が挙げられる。
この中で好ましいジオール化合物としては、ハイドロキノンのエチレンオキシド付加物、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物、ビスフェノールSのエチレンオキシド付加物、ジヒドロキシナフタレンのエチレンオキシド付加物及びそれらブロック共重合体であり、特にビスフェノールAのエチレンオキシド付加物及びそのブロック共重合体が重合性、経済性の点で好ましい。
これらの(ii)ジオール化合物は、1種もしくは必要に応じて2種以上用いることができる。共重合量については特に制限はないが、ポリエーテルエステルアミド中の(ii)ジオール類及び(iii)ポリ(アルキレンオキシド)グリコールの合計量に対して、5〜95重量%の範囲が好ましい。
本発明におけるポリアミドエラストマー(II)を構成する(iii)ポリ(アルキレンオキシド)グリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリ(1,2−プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(1,3−プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックまたはランダム共重合体及びエチレンオキシドとテトラヒドロフランのブロックまたはランダム共重合体等が挙げられる。これらの中でもポリエチレングリコールが帯電防止性に優れるため好ましい。これらの(iii)ポリ(アルキレンオキシド)グリコールは1種もしくは必要に応じて2種以上用いることができる。
(iii)ポリ(アルキレンオキシド)グリコールの数平均分子量は、1,000〜3,000であり、特に1,300〜2,500の範囲が好ましい。数平均分子量が1,000〜3,000の場合には、得られるポリエーテルエステルアミドの帯電防止性の向上、重合時間の短縮や透明性の向上が図れる。
(iii)ポリ(アルキレンオキシド)グリコールの共重合量について特に制限はないが、透明性及び帯電防止性等の点でポリエーテルエステルアミド中の(ii)ジオール類および(iii)ポリ(アルキレンオキシド)グリコールの合計量に対して、5〜95重量%の範囲が好ましい。
本発明におけるポリアミドエラストマー(II)を構成する(iv)炭素原子数4〜20のジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、及び3−スルホイソフタル酸ナトリウム等の芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、及びジシクロヘキシル−4,4’−ジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、コハク酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、及びドデカンジ酸(デカンジカルボン酸)等の脂肪族ジカルボン酸等が挙げられ、特にテレフタル酸、イソフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、セバシン酸、アジピン酸、及びドデカンジ酸が、重合性、色調、透明性及び物性の点から好ましく用いられる。
(iv)ジカルボン酸は、(ii)ジオール化合物、及び(iii)ポリ(アルキレンオキシド)グリコールの合計と1:1のモル比で反応するが、使用するジカルボン酸の種類により、仕込比を1:1または適宜変更して供給される。
(ii)ジオール化合物、(iii)ポリ(アルキレンオキシド)グリコール、及び(iv)ジカルボン酸から誘導されるポリエーテルエステル形成成分は、ポリエーテルエステルアミド構成単位に対して10〜90重量%、好ましくは30〜80重量%、より好ましくは50〜70重量%の範囲で用いられる。ポリエーテルエステル形成成分が上記の範囲である場合には、ポリエーテルエステルアミドの透明性および機械的性質が優れるため好ましい。
本発明のポリアミドエラストマー(II)の重合方法は特に限定されず、例えば(i)ポリアミド形成成分と(iv)ジカルボン酸を反応させて両末端がカルボン酸基のポリアミドプレポリマーを製造後、ポリアミドプレポリマー、(ii)ジオール化合物、及び(iii)ポリ(アルキレンオキシド)グリコールを真空下で反応させる方法がある。このポリアミドプレポリマーの平均分子量は特に制限はないが、200〜15,000が好ましく、より好ましくは500〜5,000の範囲である。
他の手法として、(i)、(ii)、(iii)、及び(iv)の各化合物を反応槽に仕込み、水の存在下または非存在下に220〜260℃の温度で、常圧または加圧下で反応させることにより、ポリアミドプレポリマーを生成させ、その後真空下で反応を進める方法などを利用することができる。
ここでいう真空下とは、好ましくは約2kPa以下、より好ましくは0.67kPa以下、最も好ましくは0.13kPa以下をいう。
ポリアミドエラストマーの重合反応においては、金属触媒を用いることが可能であり、これら金属触媒として、テトラブチルチタネート等のテトラアルキルチタネートやシュウ酸チタンカリウム等のシュウ酸チタン金属塩のようなチタン系触媒、ジブチルスズオキサイド、ジブチルスズラウレート、モノブチルスズオキサイドのようなスズ系触媒、ジルコニウムテトラブトキサイド、ジルコニウムイソプロポキサイド等のジルコニウム系触媒、ハフニウムテトラエトキサイド等のハフニウム系触媒、酢酸鉛等の鉛系触媒、酢酸亜鉛等の亜鉛系触媒、酸化ゲルマニウム等のゲルマニウム触媒、及び三酸化アンチモン等のアンチモン系触媒がある。これらの金属触媒は1種または必要に応じて2種以上組み合わせてもよい。
本発明のポリアミドエラストマー(II)は、0.5重量%濃度のオルトクロロフェノール溶液中、25℃で測定した相対粘度(ηr)が1.1〜3.5であることが必要であり、好ましくは1.5〜2.5の範囲である。
本発明のポリアミドエラストマー(II)の添加量は、熱可塑性樹脂(I)100重量部に対し3〜40重量部の範囲である。ポリアミドエラストマー(II)の添加量が3重量部未満では制電性能が十分に発現せず、40重量部を越えると耐熱性及び剛性が劣る傾向を生じることがある。
本発明で使用するリン系酸化防止剤(III)は、次式(イ)の構造を有し、かつ融点が100℃以上のものである。
Figure 2005248054
(ただし、式中、R1は炭素数1〜18のアルキル基、フェニル基、または置換フェニル基を示す。)
上記一般式(イ)で示される化合物のうちでも、R1が置換フェニル基であるものが、透明性及び色調改良効果の点で好ましい。具体的な例としては、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト及びビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられ、好ましくは、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトである。
本発明のリン系酸化防止剤(III)の製造法は特に制限はなく、公知の方法で得ることができる。
本発明のリン系酸化防止剤(III)の添加量は、ポリアミドエラストマー(II)100重量部に対し0.4〜5.0重量部、好ましくは0.5〜3.0重量部の範囲である。リン系酸化防止剤(III)の添加量が0.4重量部未満では得られる熱可塑性樹脂組成物の色調改善効果が十分ではなく、5.0重量部を越えると得られる熱可塑性樹脂組成物の吸湿処理後の透明性が損なわれる傾向となるため好ましくない。
上記の組成からなる本発明の熱可塑性樹脂組成物は、この熱可塑性樹脂組成物のペレットを80℃熱風乾燥機中で3時間乾燥し、シリンダー温度230℃に設定した東芝(株)製IS50A成形機内に充填して、射出成形により得られた角板成形品(40mm(W)×50mm(L)×3mm(t))を、東洋精機(株)製直読ヘイズメーターを使用して測定したヘイズ値が30%以下であることが好ましい。
ヘイズ値がこの範囲にあれば、本発明の熱可塑性樹脂組成物からなる成形品内部の視認性が良好となる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、さらに変性ビニル系共重合体(IV)を配合することができる。本発明で使用される変性ビニル系共重合体(IV)としては、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体、共重合可能なその他のビニル系単量体から選ばれた1種以上の単量体及び官能基を有する単量体(f)が共重合されたものが挙げられる。
ここで、芳香族ビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、オルソメチルスチレン、パラメチルスチレン、パラ−t−ブチルスチレン及びハロゲン化スチレン等が挙げられ、これらは1種または2種以上を用いることができる。なかでも、スチレンとα−メチルスチレンが好ましく用いられる。
また、シアン化ビニル系単量体としては、アクリロニトリル及びメタクリロニトリル等が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。なかでもアクリロニトリルが好ましく用いられる。
不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体としては、炭素数1〜6のアルキル基または置換アルキル基を持つアクリル酸エステル、またはメタクリル酸エステル等が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
具体例として、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸クロロメチル及び(メタ)アクリル酸2−クロロエチル等が挙げられ、なかでもメタクリル酸メチルが好ましい。共重合可能なその他のビニル系単量体としては、具体例として、N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド化合物、マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸、無水マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸無水物及びアクリルアミド等の不飽和アミド化合物に代表される共重合可能なビニル化合物等を挙げることができ、これらは単独ないし2種以上を用いることができる。
単量体(f)に含まれる官能基の種類については、例えば、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、及びエポキシ基等いずれでも良いが、その中でもカルボキシル基とエポキシ基が好ましく用いられる。
ここで、単量体(f)の種類については、前記官能基を有し、かつ芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体や不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体と共重合可能なもので有れば、いずれも使用できる。具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、グリシジルアクリレート、及びグリシジルメタクリレートが好ましく、特にグリシジルメタクリレート及びメタクリル酸が好ましく使用される。これらの単量体は1種でもよく2種以上を併用することもできる。
変性ビニル系共重合体(IV)の好ましい含有量は、0.1〜20重量部であり、より好ましくは、1〜15重量部の範囲である(ただし、熱可塑性樹脂(I)+変性ビニル系共重合体(IV)=100重量部とする)。
変性ビニル系共重合体(IV)の割合が0.1重量部未満では、熱可塑性樹脂(I)とポリアミドエラストマー(II)との相溶性向上効果が十分発揮されず、また、20重量部を超えると流動性や成形品外観を損ねる場合がある。
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、変性ビニル系共重合体(IV)中の単量体(f)の含有量については、0.1〜20重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜15重量%の範囲である。単量体(f)の含有量が、0.1重量%未満では、相溶性向上効果が十分発揮されず、また、含有量が20重量%を超えると、変性ビニル系共重合体の製造が困難になったり、自己反応によるゲル化が発生することがある。
変性ビニル系共重合体(IV)の製造方法については、特に限定されず、塊状重合、懸濁重合、乳化重合あるいは溶液重合など、公知の方法を利用することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法に関しては特に制限はなく、熱可塑性樹脂(I)、ポリアミドエラストマー(II)およびリン系酸化防止剤(III)を、例えばバンバリミキサー、ロール、エクストルーダー、ニーダー等で溶融混練することによって製造することができる。
また、ポリアミドエラストマー(II)の重合の際にリン系酸化防止剤(III)を添加することもできる。
なお、本発明の熱可塑性樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、各種の熱可塑性樹脂やエラストマー類を配合することにより、成形用樹脂組成物として性能をさらに改良することができる。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じてヒンダードフェノール系、含硫黄化合物系、他の含リン有機化合物系等のその他の酸化防止剤、フェノール系、アクリレート系等の熱安定剤、ベンゾトリアゾール系、ベンソフェノン系、サクシレート系等の紫外線吸収剤、有機ニッケル系、ヒンダードアミン系等の光安定剤などの各種安定剤、高級脂肪酸の金属塩類、高級脂肪酸アミド類等の滑剤、フタル酸エステル類、リン酸エステル類等の可塑剤、臭素系化合物、リン系化合物等の難燃剤、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等の難燃助剤、カーボンブラック、顔料及び染料等を添加することもできる。
さらに、本発明の熱可塑性樹脂組成物には、各種の補強材や充填剤を添加することもできる。
上記によって得られた熱可塑性樹脂組成物は、射出成形、押出成形、ブロー成形、真空成形、圧縮成形及びガスアシスト成形などの現在熱可塑性樹脂の成形に用いられる公知の方法によって成形することができ、成形方法については特に制限されるものではない。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、制電性、色調安定性、耐衝撃性、及び成形時の流動性に優れた特徴を生かして、OA機器、家電機器等のハウジング及びそれらの部品類に適している。
以下、本発明を実施例及び比較例にて詳細に説明するが、これをもって本発明を制限するものではない。なお、実施例及び比較例中、特にことわりのない限り「部」または「%」で表示したものは、すべて重量比率を表わしたものである。熱可塑性樹脂組成物の特性について、分析方法を下記する。
(1)屈折率
測定するサンプルに1−ブロモナフタレンを少量滴下し、アッベ屈折計を用いて以下の条件で屈折率を測定した。
光 源 :ナトリウムランプD線
測定温度:20℃。
(2)重量平均ゴム粒子径
「Rubber Age Vol.88 p.484〜490(1960)by E.Schmidt, P.H.Biddison」記載のアルギン酸ナトリウム法によって求めた。すなわち、アルギン酸ナトリウムの濃度によりクリーム化するポリブタジエン粒子径が異なることを利用して、クリーム化した重量割合とアルギン酸ナトリウム濃度の累積重量分率より累積重量分率50%の粒子径を求めた。
(3)グラフト率
グラフト共重合体所定量(m)にアセトンを加え、3時間還流し、この溶液を8800r/min(10000G)で40分間遠心分離後、不溶分を濾取し、この不溶分を60℃で5時間減圧乾燥し、重量(n)を測定した。グラフト率は、下記式より算出した。グラフト率(%)={[(n)−(m)×L]/[(m)×L]}×100
ここで、Lはグラフト共重合体のゴム含有量である。
(4)還元粘度ηsp/c
サンプル1gにアセトン200mlを加え、3時間還流し、この溶液を8800r/min(10000G)で40分間遠心分離した後、不溶分を濾過した。濾液をロータリーエバポレーターで濃縮し、析出物(アセトン可溶分)を60℃で5時間減圧乾燥後、0.4g/100ml(メチルエチルケトン、30℃)に調整し、ウベローデ粘度計を用いηsp/cを測定した。
(5)数平均分子量
ジオール化合物、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールの数平均分子量は下記のとおり求めた。すなわち、試料1gを過剰な無水酢酸と加熱してアセチル化を行い、生成したアセチル化物を中和するのに必要な水酸化カリウムの量(mg数)をG、アセチル化前の試料1gを中和するのに必要な水酸化カリウムの量(mg数)をHとして、次式(ホ)によって計算した。
数平均分子量=11200/〔[G/(1−0.00075×G)]−H〕(ホ)
(6)透明性評価方法
80℃熱風乾燥機中で3時間乾燥した熱可塑性樹脂組成物のペレットを、シリンダー温度230℃に設定した東芝(株)製IS50A成形機内に充填し、射出成形により角板成形品(40mm(W)×50mm(L)×3mm(t))を得た。東洋精機(株)製直読ヘイズメーターを使用して角板成形品のヘイズ値[%]を測定した。ヘイズ値が低いほど透明性に優れた樹脂である。
また、成形品の場合は、平坦部を切り出して測定される。
(7)イエローインデックス(YI値)
(6)項と同様の方法で得た試験片にて、JIS K7103に準拠して測定した。YI値が低いほど黄色味が少なく、色調に優れた樹脂である。
また、成形品の場合も(6)と同様にして測定される。
(8)アイゾット衝撃強度
80℃熱風乾燥機中で3時間乾燥した熱可塑性樹脂組成物のペレットを、シリンダー温度230℃に設定した東芝(株)製IS50A成形機内に充填し、射出成形により試験片を得た。ASTM D256に準拠し(12.7mmノッチ付き、23℃)、測定した。
(9)曲げ弾性率
80℃熱風乾燥機中で3時間乾燥した熱可塑性樹脂組成物のペレットを、シリンダー温度230℃に設定した東芝(株)製IS50A成形機内に充填し、射出成形により試験片を得た。ASTM D790に準拠し(12.7mm(W)×127mm(L)×6.4mm(t)、23℃)、測定した。
(10)メルトフローレート
ISO 1133(220℃、98N荷重)に準じて測定した。
(11)耐熱性
(9)項と同様の方法で得た試験片にて、ASTM D648に準拠し(1.82MPa荷重)測定した。
(12)表面固有抵抗値
(6)項と同様の方法で得た試験片にて、ASTM D257に準拠し、測定した。印加電圧500V、1分後の値を読みとった。
また、成形品の場合も(6)と同様にして測定される。
(13)制電特性
(6)項と同様の方法で得た試験片にて、スタティックオネストメーター(宍戸製)を使用して測定した。成形品と印加電極との距離を15mm、検出電極との距離を10mmとし、8kVの電圧を1分間印加し、そのときの帯電圧を読みとった。帯電圧減衰半減期は、印加を止め、帯電圧が半減するまでの時間を読みとった。帯電圧が低く、かつ帯電圧減衰半減期が短いほど制電特性に優れるといえる。
また、成形品の場合も(6)と同様にして測定される。
(14)吸湿処理方法
(6)項と同様の方法で得た試験片にて、60℃、95%RH(タバイエスペック社製恒温恒湿器)で48時間処理した。
[参考例1]グラフト共重合体(A)の製造方法
ポリブタジエン(重量平均粒子径0.2μm、屈折率1.52) 50重量部
(固形分換算)
オレイン酸カリウム 0.5重量部
ブドウ糖 0.5重量部
ピロリン酸ナトリウム 0.5重量部
硫酸第一鉄 0.005重量部
脱イオン水 120重量部
以上の物質を重合容器に仕込み、撹拌しながら65℃に昇温した。内温が65℃に達した時点を重合開始として、メタクリル酸メチル70部、スチレン25部、アクリロニトリル5部、t−ドデシルメルカプタン0.3部からなる混合物50重量部を5時間かけて連続滴下した。並行してクメンハイドロパーオキサイド0.25部、オレイン酸カリウム2.5部及び純水25部からなる水溶液を、7時間で連続滴下し反応を完結させた。得られたグラフト共重合体ラテックスを硫酸で凝固し、苛性ソ−ダで中和後、洗浄、濾過、乾燥してグラフト共重合体(A)A1を得た。このグラフト共重合体(A)A1のグラフト率は45%、還元粘度ηsp/cは0.27dl/gであった。グラフト成分の屈折率は、1.52であった。
[参考例2]ビニル系(共)重合体(B)の製造方法
容量が20Lで、バッフル及びファウドラ型攪拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、メタクリル酸メチル/アクリルアミド共重合体(特公昭45−24151号公報記載)0.05部をイオン交換水165部に溶解した溶液を400rpmで攪拌し、系内を窒素ガスで置換した。次に、下記混合物質を反応系を攪拌しながら添加し、60℃に昇温し重合を開始した。
メタクリル酸メチル 70重量部
スチレン 25重量部
アクリロニトリル 5重量部
t−ドデシルメルカプタン 0.2重量部
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル 0.4重量部
15分かけて反応温度を65℃まで昇温したのち、50分かけて100℃まで昇温した。以降、通常の方法に従い、反応系の冷却、ポリマーの分離、洗浄、乾燥を行ない、ビニル系(共)重合体(B)B1を得た。このビニル系(共)重合体(B)B1の還元粘度ηsp/cは0.36dl/gであった。屈折率は、1.52であった。
[参考例3]ポリアミドエラストマー(II)の製造方法
カプロラクタム45部、数平均分子量が1,800であるビスフェノールAのエチレンオキシド付加物45部、数平均分子量が1,800であるポリエチレングリコール5部、テレフタル酸5.2部、“イルガノックス1098”(酸化防止剤)0.2部をヘリカルリボン攪拌翼を供えた反応容器に仕込み、N2パージして260℃で60分間加熱攪拌して透明な均質溶液とした後、0.07kPa以下まで減圧した。
テトラブチルチタネート0.1部を加えて、圧力は0.07kPa以下、温度は260℃の条件で、攪拌トルクが11kg・m(11r/min)になった時点で反応を終了した。反応時間は2時間であり、相対粘度(ηr)が2.10(オルトクロロフェノール0.5%溶液、25℃)、屈折率が1.52であるポリエーテルエステルアミドを得た。
[参考例4]リン系酸化防止剤
<III−1> ”アデカスタブ PEP−36”(旭電化工業(株)製)
融点約237℃
<III−2> ”アデカスタブ PEP−24G”(旭電化工業(株)製)
融点約165℃
<III−3> ”アデカスタブ PEP−8”(旭電化工業(株)製)
軟化点52℃
[参考例5]変性ビニル系共重合体(IV)の製造方法
スチレン70部、アクリロニトリル25部、メタクリル酸5部を懸濁重合して、ビーズ状の変性ビニル系共重合体を得た。
[実施例1〜6]
参考例で示したグラフト共重合体(A)、ビニル系(共)重合体(B)、ポリアミドエラストマー(II)、リン系酸化防止剤(III)および変性ビニル系共重合体(IV)を表1に示した配合比で混合し、ベント付40mm単軸押出機で溶融混練、押出しを行うことによって、ペレット状の実質的に透明性を有する熱可塑性樹脂組成物を製造した。次いで射出成形機により、シリンダー温度230℃、金型温度60℃で試験片を成形し、上記条件で物性を測定し、得られた測定結果を表1に示した。
[比較例1〜8]
参考例で示した、グラフト共重合体(A)、ビニル系(共)重合体(B)、ポリアミドエラストマー(II)およびリン系酸化防止剤(III)を表1に示した配合比で混合し、実施例と同様の方法で各物性を測定し、測定結果を表1に併せて示した。
Figure 2005248054
表1の結果から次のことが明らかである。本発明の熱可塑性樹脂組成物(実施例1〜6)はいずれも制電性、耐熱性、透明性(初期および吸湿処理後のヘイズ値)および色調安定性(YI値)が均衡して優れている。
一方、リン系酸化防止剤が含まれないもの(比較例1)は、色調に劣り(YI値が高い)、また、本発明のリン系酸化防止剤に相当しないリン系酸化防止剤(III−3)を添加したもの(比較例2)は、吸湿処理後のヘイズ値が高く、透明性が悪い。リン系酸化防止剤の添加量が5.0重量部(対ポリアミドエラストマー)を超えるもの(比較例3)は、吸湿処理後のヘイズ値が高く、0.4重量部未満のもの(比較例4)は、YI値が高い。
さらに、ビニル系(共)重合体(B)の配合量が40重量部未満のもの(比較例5)は、剛性及び耐熱性に劣り、また90重量部を超えるもの(比較例6)は、耐衝撃性が劣り好ましくない。
ポリアミドエラストマー(II)の配合量が40重量部を超えるもの(比較例7)は、吸湿処理後のヘイズ値が高くなる傾向にあり、また剛性も低くなる。ポリアミドエラストマー(II)の配合量が3重量部未満のもの(比較例8)は、表面固有抵抗値が高く、制電性能が得られない。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、射出成形、押出成形、ブロー成形、真空成形、圧縮成形及びガスアシスト成形などの現在熱可塑性樹脂の成形に用いられる公知の方法によって成形することができ、かくして得られる成形品は、制電性、色調安定性、透明性、耐衝撃性、及び成形時の流動性に優れるという特徴を生かして、OA機器、家電機器等のハウジング及びそれらの部品類等への適用が期待される。

Claims (8)

  1. ゴム質重合体(a)に対し、芳香族ビニル系単量体(b)、シアン化ビニル系単量体(c)、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(d)、及び共重合可能なその他のビニル系単量体(e)から選ばれた1種以上の単量体をグラフト共重合せしめたグラフト共重合体(A)と、芳香族ビニル系単量体(b)、シアン化ビニル系単量体(c)、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(d)、及び共重合可能なその他のビニル系単量体(e)から選ばれた1種以上の単量体からなるビニル系重合体(B)とを、(A)/(B)の重量比が10/90〜60/40となる割合で含む熱可塑性樹脂(I)に、
    ポリアミドエラストマー(II)を前記熱可塑性樹脂(I)100重量部に対し3〜40重量部、次式(イ)で示され、かつ融点が100℃以上のリン系酸化防止剤(III)を前記ポリアミドエラストマー(II)100重量部に対し0.4〜5.0重量部添加してなる熱可塑性樹脂組成物。
    Figure 2005248054
    (ただし、式中、R1は炭素数1〜18のアルキル基、フェニル基、または置換フェニル基を示す。)
  2. 前記ゴム質重合体(a)の重量平均粒子径が0.1〜0.5μmであり、かつ、グラフト共重合体(A)を構成するゴム質重合体(a)と単量体(b)、(c)、(d)、及び(e)の合計との重量比が20:80〜80:20の割合である請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. 前記グラフト共重合体(A)を構成する単量体が、芳香族ビニル系単量体(b)10〜50重量%、シアン化ビニル系単量体(c)0〜20重量%、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(d)50〜90重量%、及び共重合可能なその他のビニル系単量体(e)0〜60重量%からなるものである請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. 前記ビニル系重合体(B)を構成する単量体が、芳香族ビニル系単量体(b)10〜50重量%、シアン化ビニル系単量体(c)0〜20重量%、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(d)50〜90重量%、及び共重合可能なその他のビニル系単量体(e)0〜60重量%からなるものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  5. 前記熱可塑性樹脂組成物のペレットを80℃熱風乾燥機中で3時間乾燥し、シリンダー温度230℃に設定した東芝(株)製IS50A成形機内に充填して、射出成形により得られた角板成形品(40mm(W)×50mm(L)×3mm(t))を、東洋精機(株)製直読ヘイズメーターを使用して測定したヘイズ値が30%以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  6. 前記ポリアミドエラストマー(II)が、
    (i)炭素原子数6以上のアミノカルボン酸または炭素原子数6以上のラクタム、もしくはジアミンとジカルボン酸から合成される合計炭素原子数が6以上の塩、
    (ii)次式(ロ)〜(ニ)から選ばれ、数平均分子量が1,000〜3,000であるるジオール化合物の1種もしくは2種以上、
    Figure 2005248054
    Figure 2005248054
    Figure 2005248054
    (ただし、式中、R2、R3はエチレンオキシド基およびプロピレンオキシド基の少なくとも1つを示し、Yは共有結合、炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数1〜6のアルキリデン基、炭素数7〜17のシクロアルキリデン基、炭素数7〜17のアリールアルキリデン基、O、SO、SO2、CO、S、CF2、C(CF32、またはNHを示し、X1〜X12は水素、炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン基、スルホン基、またはその金属塩を示す。)
    (iii)数平均分子量が1,000〜3,000のポリ(アルキレンオキシド)グリコール、および
    (iv)炭素原子数4〜20のジカルボン酸
    を重合して得られるポリエーテルエステルアミドである請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  7. 更に、変性ビニル系共重合体(IV)を0.1〜20重量部含有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。(ただし、熱可塑性樹脂(I)+変性ビニル系共重合体(IV)=100重量部とする)
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物からなる成形品。
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EP3342818A1 (en) * 2016-12-30 2018-07-04 Lotte Advanced Materials Co., Ltd. Thermoplastic resin composition and molded article produced therefrom

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