JP2005247007A - ランフラットタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】 耐久性を向上しランフラット走行距離を増大させる。
【解決手段】 トロイド状のカーカス6と、カーカス6の内側面かつサイドウォール領域に配された断面略三日月状をなすサイド補強ゴム層9とを具え、しかもビード部4に、リムフランジJFのタイヤ半径方向外側を覆うようにタイヤ軸方向外側に突出してタイヤ周方向にのびるリムプロテクタ11が設けられたランフラットタイヤ1である。正規リムJにリム組みしかつ正規内圧を充填した無負荷である正規状態におけるタイヤ回転軸を含む子午線断面において、カーカス6のタイヤ軸方向の最も外側を通るカーカス最大幅点Mが、内圧を零としかつ正規荷重が負荷されたランフラット状態で前記リムプロテクタ11がリムフランジJFと接する最もタイヤ軸方向外側の点であるリム離反点Fよりも0.5〜4.0mmタイヤ軸方向内側に位置する。
【選択図】 図3

Description

本発明は、パンク時でも比較的長い距離を安全に継続走行しうるランフラットタイヤに関する。
従来、パンク等によってタイヤの空気が抜けた場合でも、比較的高速度で一定の距離を安全に走行しうるランフラットタイヤが種々提案されている。図6にはこの種のランフラットタイヤaの一例が示される。ランフラットタイヤaは、そのサイドウォール部bに断面略三日月状のなすサイド補強ゴム層cが配され、またビード部dにはリムフランジjfを覆うようにタイヤ軸方向外側に突出しかつタイヤ周方向にのびるリムプロテクタeが設けられている。タイヤの空気が抜けた場合、サイド補強ゴム層cで補強されたサイドウォール部bが主としてタイヤの荷重を支え、これにより該タイヤの縦撓みが制限される。
ところで、従来よりパンク状態での走行(以下、このような走行を「ランフラット走行」と呼ぶことがある。)距離を増大させるために、ランフラットタイヤにおいて種々の改善がなされている。具体的には、サイド補強ゴム層cの厚さをより大きくすることが一般に行われている。関連するものとして、下記特許文献1がある。
またランフラットタイヤの損傷原因の一つにピンチカットが挙げられる。ピンチカットは、概ね次のような過程で生じる。図7に示されるように、例えばランフラット走行時にタイヤaが路面gに形成された凹みf等を走行すると、その段差部の角によってサイドウォール部bに局部的に大きな撓みが生じる。この撓みによって、ビード部dのカーカスコードの切断或いはカーカスコードとゴムとの剥離が生じる。これらの損傷は走行に伴いタイヤの内部で徐々に進行し、最終的には図8に示されるようにサイド補強ゴム層cをも破断させる。ランフラット走行距離を増大させるためには、このようなピンチカットを長期に亘って抑制することが急務となる。
特開2001−322410号公報
発明者らは、種々の実験の結果、上述のようなピンチカットは、カーカスが最もタイヤ軸方向外側に突出するカーカス最大幅点と、ビード部のリムプロテクタがリムフランジと接触する最もタイヤ軸方向外側の位置であるリム離反点との相対位置関係によって発生の頻度が大きく異なることを知見し本発明を完成させるに至った。即ち、本発明は、カーカス最大幅点をリム離反点よりも一定距離だけタイヤ軸方向内側に位置させることを基本として、ランフラット走行時におけるカーカスコードへのせん断力の作用を減じ、ひいてはピンチカットの発生を抑制してランフラット走行距離を増大しうるランフラットタイヤを提供することを目的としている。
本発明のうち請求項1記載の発明は、トレッド部からサイドウォール部を経てビード部のビードコアに至るトロイド状のカーカスと、前記カーカスの内側面かつサイドウォール領域に配された断面略三日月状をなすサイド補強ゴム層とを具え、しかも前記ビード部に、リムフランジのタイヤ半径方向外側を覆うようにタイヤ軸方向外側に突出してタイヤ周方向にのびるリムプロテクタが設けられたランフラットタイヤであって、正規リムにリム組みしかつ正規内圧を充填した無負荷である正規状態におけるタイヤ回転軸を含む子午線断面において、前記カーカスのタイヤ軸方向の最も外側を通るカーカス最大幅点が、内圧を零としかつ正規荷重が負荷されたランフラット状態に前記リムプロテクタがリムフランジと接する最もタイヤ軸方向外側の点であるリム離反点よりも0.5〜4.0mmタイヤ軸方向内側に位置することを特徴としている。
ここで、「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば標準リム、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim"とする。また、「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" とするが、タイヤが乗用車用である場合には180kPaとする。さらに「正規荷重」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば最大負荷能力、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY"とする。
また請求項2記載の発明は、前記カーカスは、前記ビードコア間をトロイド状にのびる本体部と、この本体部に連なり前記ビードコアの周りをタイヤ軸方向内側から外側に折り返された折返し部とを有する1ないし複数枚のカーカスプライにより形成され、かつ前記折返し部の外端は前記カーカス最大幅点をタイヤ半径方向外側に超えてのびる請求項1記載のランフラットタイヤである。
また請求項3記載の発明は、前記リムプロテクタは、前記リム離反点から前記カーカスの外面までの最短距離で測定されるゴム厚さが4.0〜7.0mmであることを特徴とする請求項1又は2記載のランフラットタイヤである。
また請求項4記載の発明は、前記サイドウォール部は、前記カーカス最大幅点において、サイドウォールゴムの厚さtsと、前記サイド補強ゴム層の厚さtiとの比(ti/ts)が1.0〜1.6であることを特徴とする請求項1又は2に記載のランフラットタイヤである。
ランフラット走行時では、ビード部がリムフランジへ寄りかかるように接触することで、この部分のカーカスコードに大きなせん断力が作用する。しかし、本発明のランフラットタイヤのように、予めカーカスにおいてそのカーカス最大幅点をリム離反点よりも0.5〜4.0mmタイヤ軸方向内側に位置させておくことにより、カーカスコードに作用するせん断力を軽減できる。これにより、カーカスコードとゴムとの剥離が長期に亘って抑制でき、ピンチカット等の損傷を効果的に防止しうる。
以下、本発明の実施の一形態を図面に基づき説明する。
図1には本実施形態のランフラットタイヤ1の正規状態における断面図、図2には内圧を零としかつ正規荷重を負荷した断面図、図3は図1のビード部を拡大して示す部分断面図がそれぞれ示されている。なお特に言及が無い場合、タイヤ各部の寸法などは、前記正規状態でのものとする。
本実施形態のランフラットタイヤ1は、トレッド部2からサイドウォール部3を経てビード部4のビードコア5に至るカーカス6と、このカーカス6のタイヤ半径方向外側かつトレッド部2の内部に配置されたベルト層7と、前記ビードコア5のタイヤ半径方向の外側面から外側に先細状でのびるビードエーペックス8と、前記カーカス6の内側面かつサイドウォール領域に配された断面略三日月状をなすサイド補強ゴム層9とを具える。なおサイド補強ゴム層9のタイヤ軸方向内側には、空気を透過しにくいゴムからなるインナーライナゴム10が配されている。
前記カーカス6は、本実施形態では1枚のカーカスプライ6Aから形成されたものが示されている。カーカスプライ6Aは、平行に配列されたカーカスコードをトッピングゴムにて被覆して形成され、カーカスコードにはナイロン、ポリエステル、レーヨン、芳香族ポリアミドなどの有機繊維が好適に用いられる。カーカスコードは、本実施形態では、タイヤ赤道Cに対して70〜90度、より好ましくは80〜90度の角度で傾けて配列されたラジアル構造である。
前記カーカスプライ6Aは、本例では一対のビードコア5、5(図では一方のみを表示)間をトロイド状に跨る本体部6aと、この本体部6aの両端に連なりかつ前記ビードコア5の周りをタイヤ軸方向内側から外側に折り返されかつ前記ビードエーペックス8のタイヤ軸方向外側面に沿ってのびる折返し部6bとを含む。またこの例では、カーカス6のタイヤ軸方向の最も外側を通るカーカス最大幅点Mは折返し部6bにより形成される。換言すれば、折返し部6bは、カーカス最大幅点Mをタイヤ半径方向外側に超えてのびている。
具体的には、カーカスプライ6Aの折返し部6bの外端6beは、ベルト層7のタイヤ半径方向内側にのびる。即ち、カーカスプライ6Aは、ベルト層7の外端7eをタイヤ軸方向内側に超えた位置で終端している。このようなカーカスプライ6Aは、1枚という少ない枚数でサイドウォール部3を効果的に補強しうる。また、カーカスプライ6Aは、耐久性の低い折返し部6bの外端6beをパンク走行中に大きく撓み易いサイドウォール部3から遠ざけ得るため、該外端6beを起点としたセパレーション等の損傷を抑制し、耐久性を高めるのにも役立つ。表1には、カーカスプライ6Aの折返し部6bとベルト層7とが重なるタイヤ軸方向の長さEWを種々違えてタイヤ(サイズ:P225/60R17)を試作し、正規状態での該折返し部6bの端部位置での歪を測定した結果が示されている。表1から明らかなように、長さEWが大きくなると、折返し部6bの端部位置での歪が効果的に緩和されるのが分かる。このような観点より、折返し部6bとベルト層7とが重なるタイヤ軸方向長さEWは、例えば10mm以上、好ましくは15mm以上、より好ましくは20mm以上とするのが望ましく、上限についてはタイヤ重量の増大を防止する上で例えば25mm以下が望ましい。
Figure 2005247007
前記ビードエーペックス8は、ビードコア5の外面からタイヤ半径方向外側に先細状でのびており、例えばJISA硬さで65〜95度、より好ましくは70〜95度程度の硬質ゴムにより形成される。これにより、ビード部4の曲げ剛性を高めてタイヤ1の縦撓みを抑制する。ビードエーペックス8のビードベースラインBLからの高さhaは、特に限定はされないが、小さすぎるとランフラット走行時の耐久性が低下しやすく、逆に大きすぎてもタイヤ重量の過度の増加や著しい乗り心地の悪化を招くおそれがある。このような観点より、ビードエーペックス8の前記高さhaは、タイヤ断面高さHの10〜50%、より好ましくは25〜45%程度が望ましい。
前記ベルト層7は、本例ではスチールからなるベルトコードをタイヤ赤道Cに対して例えば10〜35゜程度で傾けて配列した2枚のベルトプライ7A、7Bから構成されている。ベルトプライ7A、7Bは、前記ベルトコードが互いに交差するように重ね合わされる。これにより、ベルト層7は、カーカス6を強くタガ締めしてトレッド部2の剛性を増し、ラジアルタイヤとしての利点を発揮させる。また前記ベルトコードは、スチール材料以外にも、アラミド、レーヨン等の高弾性の有機繊維コードも必要に応じて用いることができる。
本実施形態のサイド補強ゴム層9は、厚肉の中央部分9aからタイヤ半径方向の内端9i及び外端9oに向かってそれぞれ厚さを徐々に減じた断面略三日月状で形成される。前記内端9iは、ビードエーペックス8の外端8Tよりもタイヤ半径方向内側かつビードコア5よりもタイヤ半径方向外側に位置している。またサイド補強ゴム層9の外端9oは、トレッド部2の内腔側に至ってのびており、ベルト層7の外端7eよりもタイヤ軸方向内側の位置で終端するものが示されている。これにより、サイド補強ゴム層9は、比較的広い範囲でタイヤの剛性を補強し縦撓み量を抑制する。
サイド補強ゴム層9は、カーカスプライ6Aの本体部6aのタイヤ軸方向内側に配される。このため、サイドウォール部3の曲げ変形時には、サイド補強ゴム層9には主として圧縮荷重が、またコードを有するカーカスプライ6Aには主として引張荷重がそれぞれ作用する。ゴムは圧縮荷重に強く、かつ、コード材は引張荷重に強いため、上記のようなサイド補強ゴム層9の配設構造は、サイドウォール部3の曲げ剛性を効率良く高め、ランフラット走行時のタイヤの縦撓みをより効果的に低減しうる。
特に限定はされないが、サイド補強ゴム層9は、好ましくはJISA硬さが65゜以上、より好ましくは70°以上の比較的硬質のゴム材により構成されるのが望ましい。前記硬さが65゜未満であると、ランフラット走行時の圧縮歪が大きくなって、耐久性が悪化しランフラット継続走行距離が低下しやすくなる。他方、前記硬さが大きすぎても、タイヤの縦バネ定数を過度に高めてしまい、通常走行時の乗り心地を著しく悪化させる傾向がある。このような観点より、前記サイド補強ゴム層9のJISA硬さは80゜以下、より好ましくは75゜以下が望ましい。
またサイド補強ゴム層9は、図1に示される前記内端9i、外端9o間のタイヤ半径方向の配設長さLが小さすぎると、図2に示されるような滑らかなサイドウォール部3の湾曲状態が得られ難く、逆に大きすぎると内圧が適切に満たされている通常走行時において乗り心地の著しい悪化が生じやすい他、リム組み性能をも悪化させる傾向がある。特に限定はされないが、サイド補強ゴム層9の前記配設長さLは、好ましくはタイヤ断面高さHの35〜70%、より好ましくは40〜65%程度に設定されるのが望ましい。
また、サイド補強ゴム層9の厚さなどは負荷される荷重やタイヤサイズに応じて適宜定められるが、例えば図3に示すように、カーカス最大幅点Mにおいて、タイヤ軸方向に測定されるサイドウォールゴム(カーカス6のタイヤ軸方向外側のゴムである。)の厚さtsと、前記サイド補強ゴム層の厚さtiとの比(ti/ts)が1.0〜1.6、より好ましくは1.20〜1.55が望ましい。ちなみに、サイドウォールゴムの前記厚さtsは、概ね6.0〜8.0mm程度が望ましい。
また空気入りタイヤ1は、ビード部4に、リムJのリムフランジJFのタイヤ半径方向外側を覆うように突出しかつタイヤ周方向に連続してのびるリムプロテクタ11が設けられる。図3に示されるように、本実施形態のリムプロテクタ11は、タイヤ軸を含む子午線断面において、タイヤ軸方向外側に最も突出した突出面部11cと、この突出面部11cのタイヤ半径方向内側の縁に連なりタイヤ半径方向内側へ滑らかにのびてビード部4に連なる内の斜面部11aと、突出面部11cのタイヤ半径方向外側の縁に連なってタイヤ半径方向外側にのびサイドウォール部3に滑らかに連なる外の斜面部11bとで囲まれる隆起体である。
前記突出面部11cは、リムフランジJFのタイヤ軸方向の外端点JFbよりも僅かにタイヤ軸方向外側に突出した位置に設けられるのが望ましい。これにより、通常走行時において、縁石等からリムフランジJFを保護するのにも役立つ。また内の斜面部11aは、ビード部4よりもタイヤ軸方向外側に中心を有しかつリムフランジJFの外周面JFaの曲率半径よりも大きい曲率半径R1で形成された円弧部分を含んだ滑らかな凹面で形成されている。このような内の斜面部11aは、負荷走行時において抵抗無くリムフランジJFの外周面に寄りかかるように変形でき、カーカス6へのせん断力を緩和するのに役立つ。また外の斜面部11bもタイヤの外方に中心を有する曲率半径R2の円弧部分を含んで滑らかに形成される。
図3に示されるように、正規状態ではリムプロテクタ11の内の斜面部11aはリムフランジJFの外周面JFaと殆ど接触していない。しかし、図2に示されるようなランフラット走行時では、リムプロテクタ11の内の斜面部11aは、リムフランジJFの外周面JFaと広範囲でかつこれを覆うように密に接触する。これにより、ランフラット走行時のタイヤの縦たわみ量を効果的に抑制し、耐久性を向上させ得る。また、これに伴い、例えばサイド補強ゴム層9の厚さを減じ、より一層の小型化ないし軽量化を図ることが可能になる。
本実施形態の空気入りタイヤ1は、正規状態におけるタイヤ回転軸を含む子午線断面において、カーカス6のタイヤ軸方向の最も外側を通るカーカス最大幅点Mが、リムプロテクタ11がリムフランジJFと接する最もタイヤ軸方向外側の点であるリム離反点Fよりも0.5〜4.0mmタイヤ軸方向内側に位置する。ここで、前記リム離反点Fは、正規状態のときに得られるものではなく、図2にX部として拡大視されるように、内圧を零としかつ正規荷重を負荷してタイヤを平面に接地させたランフラット状態でのものである。図2で求められたリム離反点F(ビード部上の位置)は、内圧の充填と正規荷重の除去によって、図1又は図3に示すリム離反点Fへと復帰することになる。このため、図1ではリム離反点Fは、リムフランジJFとは接触してはいない。
従来のランフラットタイヤを調べると、カーカス最大幅点Mがリム離反点Fよりもタイヤ軸方向外側に位置していることが判明した。それには、種々の理由が考えられるが、主に金型の成形面のプロファイルやサイド補強ゴム層9の厚さのバランス等により、カーカス6のプロファイルが、全体的にタイヤ軸方向外側へと張り出す傾向があったものと推察される。発明者らは、カーカス最大幅点Mとリム離反点Fとの間のタイヤ軸方向の距離Aを違えて複数種類のランフラットタイヤを試作し、各々のランフラットタイヤについて破壊エネルギーを測定した。この破壊エネルギーの具体的なテスト内容は、後述の実施例において述べるが、破壊エネルギーが大きいほど耐ピンチカット性能に優れることになる。図4にはその結果を示す。
図4において、距離Aがマイナスのものはカーカス最大幅点Mがリム離反点Fよりもタイヤ軸方向外側にあることを意味する。これらの結果からも明らかなように、前記距離Aが0.5mm以上になると破壊エネルギーが向上していることが確認できる。
図2に示したランフラット走行状態では、リムフランジJFに接触しているビード部4(リムプロテクタ11)はこのリムフランジJFによって拘束されるが、その近傍を通るカーカスコード、本実施形態では折返し部6bのカーカスコードは圧縮歪を受ける。このため、両者の界面では、大きなせん断力が発生する。特に路面に凹部が存在する場合には、このせん断力は突発的に大きな値となる。カーカスコード周囲のゴムがこれに追従できない場合、コードとゴムとの剥離が生じる。これがピンチカットの起点になる。しかし、予めカーカス6の変形の起点となるカーカス最大幅点Mを、リム離反点Fからタイヤ軸方向内側へ遠ざけることでカーカスコードが圧縮及び引張変形がない曲げのニュートラルラインに近づき、ランフラット走行時でも折返し部6bのカーカスコードへのせん断力の作用を軽減できる。
ここで、前記距離Aは、0.5mm以上で折返し部6bのカーカスコードのせん断力を緩和する効果を発揮することができるが、より好ましくは1.0mm以上とすると、さらにその効果が顕著に高められる点で望ましい。また距離Aを大きくするに従い折返し部6bのカーカスコードに作用するせん断力の低減を図ることができるが、4.0mmを超えるとその効果は頭打ちとなる。また距離Aが過度に大きくなると、サイドウォール部3におけるカーカス6のプロファイルがタイヤ半径方向に沿った立ち上がったものとなる。このようなプロファイルを持つタイヤは、サイド補強ゴム層9が加硫成形中にビードコア5側へとゴム流れしやすく生産性が悪いという不具合がある。このような観点より、カーカス最大幅点Mは、リム離反点よりも1.0〜3.0mm、特に好ましくは1.0〜2.0mmタイヤ軸方向内側に位置させるのが望ましいものである。なおカーカス最大幅点Mは、カーカスコードの外面をもってこれを定め、トッピングゴムは含めないもとする。
またランフラット走行時において、折返し部6bのカーカスコードへのせん断力をより効果的に緩和するために、上述の距離Aの限定に加えて、リムプロテクタ11のゴム厚さを限定することが特に望ましい。具体的には、前記正規状態において、リム離反点Fからカーカス6の外面まで(カーカスコードまでを意味する)の最短距離で測定されるゴム厚さtが4.0〜7.0mm、より好ましくは5.0〜7.0mmであるのが望ましい。即ち、前記ゴム厚さtが4.0mm未満であると、ランフラット走行時においてリムフランジJFとカーカスコードとの間のゴムボリュームが十分に得られるため、このゴムによってせん断力の緩和ないし吸収が可能になる。一方、前記ゴム厚さが7.0mmを超えると、この部分の発熱が大きくなって耐久性を低下させ易くなる。
本実施形態のランフラットタイヤにおいて、カーカス最大幅点Mとリム離反点Fとの距離を調節は、主としてタイヤ加硫金型の成形面のプロファイルを変えることによって行うことができる。またこれに合わせて、サイドウォールゴム、リムプロテクタ11、ビードエーペックス8等の形状乃至ゴム厚さを調節することによってもなしうる。
本発明の効果を確認するために、表1の仕様に基づきタイヤサイズ「245/40R18」のランフラットタイヤを複数種類試作した。実施例1ないし4については、サイド補強ゴム層の厚さを違えることによって前記距離Aを調整した。但し、この厚さの差による影響を無くすために、サイド補強ゴム層の断面の体積は共通とした。また実施例5は図3のB部におけるサイドウォールゴムの厚さを、実施例6、7はリムプロテクタの厚さを違えることによって距離Aを調整した。各タイヤとも、表1に示されるパラメータ以外は同じである。そして、各供試タイヤの耐ピンチカット性能の目安になる破壊エネルギーを測定し性能を比較した。
破壊エネルギーは、各供試タイヤを18×8JJのリムに組み付け内圧230kPaを満たした状態で図5に示されるように水平固定軸に固着するとともに、トレッド面に、重さ2.94kN(300kgf)のブロック状の錘を自由落下させて衝突させた。錘の衝突は、サイドウォール部を局部的に湾曲させピンチカットの発生状況と近似した状況を作り出すことができる。そして、錘を衝突させた後のタイヤのサイドウォール部を目視によって観察し、サイドウォール部に現れる局部的な膨れにより確認した。この膨れは、ピンチカットの初期損傷であり、タイヤ内部でカーカスコードが切断されていることを意味している。そして、サイドウォール部に膨れが生じるまで錘の高さを徐々に増してテストを繰り返し、膨れが生じたときの錘の高さと重量との積で破壊エネルギーを計算した。結果は、比較例1を100とする指数で表示している。数値が大きいほど耐ピンチカット性能に優れていると言える。なお錘は、トレッド面においてタイヤ赤道位置と一方のトレッド端との間の領域Yに衝突させ、その衝突面は平坦なものとした。テストの結果などを表2に示す。
Figure 2005247007
テストの結果、実施例のタイヤは、比較例に比べると破壊エネルギーを有意に向上していることが確認できる。従って、耐ピンチカット性能を向上し、ランフラット継続走行距離を増大することができる。
本発明の実施形態を示すランフラットタイヤの断面図である。 そのランフラット状態の断面図である。 図1のビード部を拡大して示す部分断面図である。 破壊エネルギーと、距離Aとの関係を示すグラフである。 破壊エネルギーを測定するテストの例を示す略図である。 従来のランフラットタイヤの断面図である。 ランフラット走行時の一例を示す側面図である。 ピンチカットを説明する部分断面図である。
符号の説明
1 ランフラットタイヤ
2 トレッド部
3 サイドウォール部
4 ビード部
5 ビードコア
6 カーカス
7 ベルト層
9 サイド補強ゴム層
11 リムプロテクタ
F リム離反点
J 正規リム
JF リムフランジ
M カーカス最大幅点

Claims (4)

  1. トレッド部からサイドウォール部を経てビード部のビードコアに至るトロイド状のカーカスと、前記カーカスの内側面かつサイドウォール領域に配された断面略三日月状をなすサイド補強ゴム層とを具え、
    しかも前記ビード部に、リムフランジのタイヤ半径方向外側を覆うようにタイヤ軸方向外側に突出してタイヤ周方向にのびるリムプロテクタが設けられたランフラットタイヤであって、
    正規リムにリム組みしかつ正規内圧を充填した無負荷である正規状態におけるタイヤ回転軸を含む子午線断面において、前記カーカスのタイヤ軸方向の最も外側を通るカーカス最大幅点が、内圧を零としかつ正規荷重が負荷されたランフラット状態に前記リムプロテクタがリムフランジと接する最もタイヤ軸方向外側の点であるリム離反点よりも0.5〜4.0mmタイヤ軸方向内側に位置することを特徴とするランフラットタイヤ。
  2. 前記カーカスは、前記ビードコア間をトロイド状にのびる本体部と、この本体部に連なり前記ビードコアの周りをタイヤ軸方向内側から外側に折り返された折返し部とを有する1ないし複数枚のカーカスプライにより形成され、
    かつ前記折返し部の外端は前記カーカス最大幅点をタイヤ半径方向外側に超えてのびる請求項1記載のランフラットタイヤ。
  3. 前記リムプロテクタは、前記リム離反点から前記カーカスの外面までの最短距離で測定されるゴム厚さが4.0〜7.0mmであることを特徴とする請求項1又は2記載のランフラットタイヤ。
  4. 前記サイドウォール部は、前記カーカス最大幅点において、サイドウォールゴムの厚さtsと、前記サイド補強ゴム層の厚さtiとの比(ti/ts)が1.0〜1.6であることを特徴とする請求項1又は2に記載のランフラットタイヤ。
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