JP2005245394A - 魚類白子からの二本鎖dnaの抽出・精製方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】魚類の白子より高分子量の二本鎖DNA塩を高収率かつ高純度で入手する技術を提供する。
【解決手段】魚類白子から高分子量の二本鎖DNA塩を抽出・精製する方法であって、魚類白子を粗砕する粗砕工程と、粗砕した魚類白子にDNAが分解しない条件下でタンパク質分解酵素処理する工程と、酵素処理した溶液を濾過する濾過工程と、分画分子量が2,000〜1,000,000(望ましくは5,000〜100,000)である中空糸膜を用いて濾液に透析処理を行って、分解したタンパク質およびイオン類を除去すると共に二本鎖DNAを濃縮する透析工程と、透析処理を行った溶液から二本鎖DNA塩を沈殿させる沈殿工程あるいは溶液を濃縮する工程と、沈殿物あるいは濃縮物を回収する回収工程からなることを特徴とする、高分子量二本鎖DNA塩抽出・精製方法。
【選択図】図1
【解決手段】魚類白子から高分子量の二本鎖DNA塩を抽出・精製する方法であって、魚類白子を粗砕する粗砕工程と、粗砕した魚類白子にDNAが分解しない条件下でタンパク質分解酵素処理する工程と、酵素処理した溶液を濾過する濾過工程と、分画分子量が2,000〜1,000,000(望ましくは5,000〜100,000)である中空糸膜を用いて濾液に透析処理を行って、分解したタンパク質およびイオン類を除去すると共に二本鎖DNAを濃縮する透析工程と、透析処理を行った溶液から二本鎖DNA塩を沈殿させる沈殿工程あるいは溶液を濃縮する工程と、沈殿物あるいは濃縮物を回収する回収工程からなることを特徴とする、高分子量二本鎖DNA塩抽出・精製方法。
【選択図】図1
Description
本発明は、魚類の白子を原料とし、高収率、高純度で核酸を入手する方法に関するもので、特に高分子量の二本鎖DNA塩を効率良く入手することができる方法に関する。
デオキシリボ核酸(DNA)は生物細胞中に存在し、生物の遺伝情報を保存している高分子化合物である。そして該DNAがアデニン、チミン、グアニンおよびシトシンの4種の塩基を構成要素とし、二重螺旋構造を有する二本のポリヌクレオチド鎖からなることも周知である。該二本鎖の糖−リン酸骨格では、構造的相補性を有する平面的な塩基同士が螺旋の軸に対して垂直に螺旋の中央部に向かって突出し合い水素結合で結合している。また、DNAの構成成分であるヌクレオチド類は、生物のエネルギー源であるATP、代謝調整物質であるcAMPおよびcGMP、並びに補酵素であるNADおよびFADの構成成分でもあり、生命活動において重要な役割を果たしている。
近年、核酸またはヌクレオチドの摂取が、細胞代謝、免疫機能、脳機能、脂質代謝等に影響を及ぼすこと、また美白作用等を奏することが報告されつつある。そしてこれらの核酸の有する作用に鑑み、健康食品、化粧品、医薬品等の原料として、核酸の用途が拡大している。また、二本鎖DNAと様々な化合物とが結合または相互作用することにより機能を発現することを利用した光学素子、イオン伝導性膜、分離膜、難燃剤、エレクトロニクス素子等の開発も進められている。さらには、ダイオキシン類、発癌性物質等の有害物質の除去に二本鎖DNAを用いる技術も開発されつつあり、素材としての二本鎖DNAの需要は増大しつつある。
ところで、魚類の精巣、即ち白子は、プロタミン等のタンパク質と共に、多量の二本鎖DNAを含んでおり、非常に栄養価の高い食材であることが知られている。しかしながら魚類の白子は、極一部が生鮮食用として利用されるのみで、加工の困難さ、短い保存可能期間等の理由からその利用分野は限られており、大部分は廃棄処分されている。従って、魚類の白子は、二本鎖DNAの安価な大量生産のための原料として特に適しており、これらの白子から皮、筋、血管等を除去した後、油分を除き精製することによって二本鎖DNAを得ることができる。該魚類としては例えば鮭、鰊、鱒、鱈等を挙げることができ、特に、北海道で大量に水揚げされる鮭の白子は年間4千トン以上が飼料や肥料に使われるか廃棄処分されている。
例えば、鮭白子をホモジナイズし、プロテアーゼにより酵素処理し、pH調節した後、除タンパクと活性炭処理を行い、これを濾過した濾液についてアルコールを添加して二本鎖DNAを沈殿させて、乾燥・回収を行うことによる二本鎖DNAの抽出・精製方法が知られている(例えば、非特許文献1参照。)。この方法は、pHを調節することにより白子中に元来含まれているヌクレアーゼの活性を制御し、高分子量の二本鎖DNAをナトリウム塩の形態にして精製するものである。
梅原泰男、"DNAの単離技術−新機能材料としてのDNA大量分離精製技術の開発−"、高分子52巻3月号(2003年)、130〜133頁
梅原泰男、"DNAの単離技術−新機能材料としてのDNA大量分離精製技術の開発−"、高分子52巻3月号(2003年)、130〜133頁
機能性材料の素材としての二本鎖DNAの需要増加に伴い、二本鎖DNAを高収率、高純度で大量かつ安価に入手する方法の開発に対する要望が高まりつつある。特に、近年になって二本鎖DNAが応用されている分野では、より高分子量の二本鎖DNAが望ましい
場合が多く、如何に低分子化を回避しつつ二本鎖DNAを入手するかが課題となっている。また従来既知である二本鎖DNAの精製方法は、二本鎖DNA溶液の有する高い粘性のために濾過が困難であり、該濾過を容易にするために大量の水により希釈する必要があった。そのため二本鎖DNAの濃度が低くなり、該溶液から二本鎖DNAを回収するための費用が高騰するという問題があった。例えば、エタノールにより二本鎖DNAを沈殿させて回収する場合には多量のエタノールを添加する必要があり、凍結乾燥により回収する場合にはエネルギーコストが膨大となっていた。またエタノールにより沈殿させる方法では、溶液中に不純物が溶解しているため、得られる二本鎖DNAの純度が低いという問題もあった。
場合が多く、如何に低分子化を回避しつつ二本鎖DNAを入手するかが課題となっている。また従来既知である二本鎖DNAの精製方法は、二本鎖DNA溶液の有する高い粘性のために濾過が困難であり、該濾過を容易にするために大量の水により希釈する必要があった。そのため二本鎖DNAの濃度が低くなり、該溶液から二本鎖DNAを回収するための費用が高騰するという問題があった。例えば、エタノールにより二本鎖DNAを沈殿させて回収する場合には多量のエタノールを添加する必要があり、凍結乾燥により回収する場合にはエネルギーコストが膨大となっていた。またエタノールにより沈殿させる方法では、溶液中に不純物が溶解しているため、得られる二本鎖DNAの純度が低いという問題もあった。
本発明は、上記のような課題を解決するものであって、魚類の白子より、高分子量の二本鎖DNAを、高収率かつ高純度で入手する技術の提供を目的とする。
本発明は、魚類白子から高分子量の二本鎖DNA塩を抽出・精製する方法であって、
魚類白子を粗砕する粗砕工程と、
粗砕した魚類白子にDNAが分解しない条件下でタンパク質分解酵素処理する工程と、
酵素処理した溶液を濾過する濾過工程と、
分画分子量が2,000〜1,000,000(望ましくは5,000〜100,000)である中空糸膜を用いて濾液に透析処理を行って、分解したタンパク質およびイオン類を除去すると共に二本鎖DNAを濃縮する透析工程と、
透析処理を行った溶液から二本鎖DNA塩を沈殿させる沈殿工程あるいは溶液を濃縮する工程と、
沈殿物あるいは濃縮物を回収する回収工程からなることを特徴とする、高分子量二本鎖DNA塩抽出・精製方法に関する。
魚類白子を粗砕する粗砕工程と、
粗砕した魚類白子にDNAが分解しない条件下でタンパク質分解酵素処理する工程と、
酵素処理した溶液を濾過する濾過工程と、
分画分子量が2,000〜1,000,000(望ましくは5,000〜100,000)である中空糸膜を用いて濾液に透析処理を行って、分解したタンパク質およびイオン類を除去すると共に二本鎖DNAを濃縮する透析工程と、
透析処理を行った溶液から二本鎖DNA塩を沈殿させる沈殿工程あるいは溶液を濃縮する工程と、
沈殿物あるいは濃縮物を回収する回収工程からなることを特徴とする、高分子量二本鎖DNA塩抽出・精製方法に関する。
本発明の方法では、透析膜の使用により濾過液からペプチド類、アミノ酸類、その他のイオン類等の不純物を除去しているため、二本鎖DNAを精製したとき、エタノール沈殿による方法や凍結乾燥による方法で行った場合も、従来法と比べ、製品である二本鎖DNAの純度が高くなる。また、直接濃縮乾燥することができる。また透析処理を行うため、二本鎖DNAを例えば3%以上の濃度まで濃縮でき、精製費用(エネルギーコスト、エタノール使用量等)を低減することができる。
以下、本発明の高分子量二本鎖DNA塩抽出・精製方法の一態様を示す流れ図である図1を参照して本発明を詳細に説明する。図1に図示する態様の本発明の高分子量二本鎖DNA塩抽出・精製方法は、大別すると以下の工程に分けることができる:粗砕工程、酵素処理工程、濾過工程、透析工程、沈殿工程、および回収工程。以下、各工程毎に説明する。
粗砕工程は、魚類の白子を粗砕して均一にホモジナイズする工程である。原料となる魚類の白子は、例えば鮭、鰊、鱒、鱈等のものを使用することができる。特に鮭の白子は鮭の卵を人工授精させる際に大量に採取されており、また余剰の白子は従来廃棄されていたので入手が容易である。また、魚類白子は非常に腐敗し易いので、採取後直ちに冷凍することが好ましいが、このように冷凍した魚類の白子であっても、粗砕の前に解凍すれば、本発明の方法に問題無く使用することができる。
酵素処理工程は、粗砕工程でホモジナイズした白子溶液にタンパク質分解酵素を添加して、白子溶液中に含まれるタンパク質を分解する工程である。上記したように、白子は二
本鎖DNAの他、大量のタンパク質およびイオン類を含有している。従って、二本鎖DNAのみを精製するためにはこれらを除去する必要があるが、酵素処理工程はタンパク質の分解・除去を目的として行うものである。即ち、酵素処理工程においてタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)を白子溶液に添加すると、該酵素が溶液中のタンパク質と選択的に反応して、より低分子のペプチドまたはアミノ酸に分解する。また二本鎖DNAにタンパク質が結合している場合においても、タンパク質分解酵素はタンパク質から二本鎖DNAを分離することができる。
本鎖DNAの他、大量のタンパク質およびイオン類を含有している。従って、二本鎖DNAのみを精製するためにはこれらを除去する必要があるが、酵素処理工程はタンパク質の分解・除去を目的として行うものである。即ち、酵素処理工程においてタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)を白子溶液に添加すると、該酵素が溶液中のタンパク質と選択的に反応して、より低分子のペプチドまたはアミノ酸に分解する。また二本鎖DNAにタンパク質が結合している場合においても、タンパク質分解酵素はタンパク質から二本鎖DNAを分離することができる。
さらに、酵素処理工程において白子溶液のpHを調節することにより、二本鎖DNAの低分子化を防止することができる。白子中には元来、二本鎖DNAを分解し得る核酸分解酵素(ヌクレアーゼ)が存在するが、酵素処理工程における白子溶液のpHを適宜調節すると、該酵素を失活させたり、その活性を低下させたりすることが可能となる。しかしながら、タンパク質分解酵素によるタンパク質の分解は進行させる必要が有るから、酵素処理工程における白子溶液のpHは、タンパク質分解酵素が活性を有し、かつ核酸分解酵素の活性が低下するようなものでなければならない。
濾過工程は、酵素処理後の白子溶液から夾雑物等を除去するために行う工程である。濾過工程は適宜炭素や珪藻土等の濾過助剤を使用する複数の濾過段階を含むことができ、典型的には遠心濾過、活性炭濾過、セライト濾過等から選択した一つ以上の濾過段階からなる。なお、濾過すべき白子溶液は粘性が高く濾過に長時間要する場合が多いため、遠心や吸引等の濾過時間を短縮する手段を採用することが好ましく、また水で希釈する必要もある。この濾過工程により、二本鎖DNA、プロテアーゼによるタンパク質の分解により生じたペプチドおよびアミノ酸、並びにイオン類を含む濾液を得ることができる。
透析工程は、濾過工程で得られた濾液から二本鎖DNA以外の不純物を除去するために行う工程である。即ち、プロテアーゼによるタンパク質の分解により生じたペプチドおよびアミノ酸、並びにイオン類は、二本鎖DNAと比較して遥かに分子量が小さいので、前者は透過するが、後者は透過させないように選択した分画分子量を有する透析膜を用いて透析することにより、濾液中に二本鎖DNAのみを残し、低分子量のペプチドとアミノ酸並びにイオン類を分画して精製を行うことができる。好ましい分画分子量は例えば、2,000〜1,000,000である。
また透析処理は精製と同時に濃縮の効果も有する。例えば、透析工程を経た溶液は、二本鎖DNAについて3%以上に濃縮される。この段階までナトリウム塩の形態に有る二本鎖DNAは、そのまま凍結乾燥して回収することもできる。この時点で回収した二本鎖DNAナトリウム塩の純度は、例えば95%程度となる。
本発明の方法では、透析処理において白子溶液から不純物を除去すると共に、白子溶液を濃縮する。この白子溶液の濃縮は、二本鎖DNA塩の製造費用を大幅に減じる要因となる。即ち、白子溶液を濃縮することにより、二本鎖DNAを沈殿により回収する場合には、エタノール、カルシウムイオン等の沈殿剤の必要量が大幅に減少する。例えば、等量のエタノールで十分に沈殿させることが可能な白子溶液を、4倍に水で希釈した場合、エタノールの添加量は4倍になる。即ち、DNA水溶液の濃度の低下とともにより多くの量を必要とする。従って、白子溶液の濃度が二本鎖DNAの精製費用に及ぼす影響は大きく、たとえ濃縮の程度が僅かであったとしても、精製費用を大幅に削減することが可能となる。
上記した透析工程は、中空糸膜を用いて好ましく行うことができる。中空糸膜を使用すると、半透膜を使用する通常の場合と比較して、透析に供される面積が増加するため処理速度が上昇し、透析に要する時間を大幅に短縮することが可能となる。ここで、中空糸膜
装置としては、例えば旭化成株式会社製「マイクローザ(登録商標)」を使用することができる。また、中空糸膜の入口と出口の差圧を適切に調節することにより、粘性の高い白子溶液についても処理速度を上昇させることができる。
装置としては、例えば旭化成株式会社製「マイクローザ(登録商標)」を使用することができる。また、中空糸膜の入口と出口の差圧を適切に調節することにより、粘性の高い白子溶液についても処理速度を上昇させることができる。
さらに、透析工程の前処理として、適当な緩衝液を白子溶液に添加してpHを調節することもできる。これにより、白子自身が含む核酸分解酵素の活性をさらに抑制することができ、二本鎖DNAを高分子量のまま保持できる。
沈殿工程は、得られた二本鎖DNAを含む白子溶液から二本鎖DNAを沈殿・析出させる工程である。透析工程で得られた白子溶液にエタノールやカルシウムイオンを含む水溶液を添加すると、二本鎖DNAの沈殿が生じる。特にカルシウムイオンを白子溶液に添加した場合には、二本鎖DNAに結合していたナトリウムイオンと該カルシウムイオンとの置換が生じ、二本鎖DNAとカルシウムイオンとの架橋体が生成して沈殿する。このように、二本鎖DNAがカルシウムイオンとの反応により沈殿を生成することは全く新しい知見であり、従来技術では予期し得なかったことである。
回収工程は、沈殿工程にて沈殿させた二本鎖DNA塩を回収するために行う工程であり、周知の技術を組み合わせて適宜行うことができる。例えば、図1に図示した態様の回収工程は、水洗段階と、乾燥段階からなる。ここで注意すべきは乾燥段階での乾燥方法であり、二本鎖DNAの変性を防止する観点より、高温に加熱して行う乾燥は好ましくない。
こうして得られた二本鎖DNA塩は、特に高分子量であることを特徴とする。例えば、本発明の方法で得られる二本鎖DNA塩は20Kb、平均分子量1200万程度となる。また純度についても十分高く、例えば90%以上の高純度となる。
本発明の高分子量二本鎖DNA塩抽出・精製方法では、有機溶媒を使用すること無く、二本鎖DNAの低分子化を起こさずに高分子量のまま白子溶液から二本鎖DNAを精製することができる。有機溶媒を使用しないので、本発明の方法は環境適合性も高いものである。またエタノールを使う場合も少量ですみ、環境適合性が高い。また本発明の方法は、大規模化するに適しており、安価な二本鎖DNAの大量生産に繋がる。
実施例1
図1に図示する方法に従って二本鎖DNAカルシウム塩を製造した。製造は、下記表1に示すような組成および物性の原料(鮭白子)を使用して行った。
*:鮭白子を105℃恒量で水分量を測定したところ74.9%であり、鮭白子300gの乾燥重量は75.3gであった。
冷凍した鮭白子300gを解凍後、フードプロセッサーにより粗砕して白子溶液とした。
次いで、NaHCO3とNa2CO3を添加して弱アルカリ性とすることにより核酸分解酵素の活性を低下させつつ、白子溶液にアパチル菌由来のタンパク質分解酵素を45℃で添加して、6時間反応させた。
酵素処理後の白子溶液に、遠心濾過、活性炭濾過、およびセライト濾過を行い、夾雑物を除去した後、中空糸膜装置(旭化成株式会社製「マイクローザ(登録商標)」)中に導入して透析を行った。
透析終了後、白子溶液のpHを再度5.0に調節し、次いで白子溶液に塩化カルシウムを添加して、二本鎖DNAカルシウム塩を沈殿させた。
この沈殿した二本鎖DNAカルシウム塩を含む溶液に、水洗および凍結乾燥を行い、高分子量二本鎖DNAカルシウム塩を回収した。
図1に図示する方法に従って二本鎖DNAカルシウム塩を製造した。製造は、下記表1に示すような組成および物性の原料(鮭白子)を使用して行った。
冷凍した鮭白子300gを解凍後、フードプロセッサーにより粗砕して白子溶液とした。
次いで、NaHCO3とNa2CO3を添加して弱アルカリ性とすることにより核酸分解酵素の活性を低下させつつ、白子溶液にアパチル菌由来のタンパク質分解酵素を45℃で添加して、6時間反応させた。
酵素処理後の白子溶液に、遠心濾過、活性炭濾過、およびセライト濾過を行い、夾雑物を除去した後、中空糸膜装置(旭化成株式会社製「マイクローザ(登録商標)」)中に導入して透析を行った。
透析終了後、白子溶液のpHを再度5.0に調節し、次いで白子溶液に塩化カルシウムを添加して、二本鎖DNAカルシウム塩を沈殿させた。
この沈殿した二本鎖DNAカルシウム塩を含む溶液に、水洗および凍結乾燥を行い、高分子量二本鎖DNAカルシウム塩を回収した。
得られた二本鎖DNAカルシウム塩の電気泳動結果を図2に図示する。
図2では、右側から、1)Molecular Ruler、2)従来技術で得られた二本鎖DNAナトリウム塩、3)本発明の二本鎖DNAカルシウム塩、4)および5)λDNA−HindIII Digestを表す。
この電気泳動結果からも明らかなように、本発明の二本鎖DNAカルシウム塩は、従来のものと比較して遥かに高分子量なものとなる。
図2では、右側から、1)Molecular Ruler、2)従来技術で得られた二本鎖DNAナトリウム塩、3)本発明の二本鎖DNAカルシウム塩、4)および5)λDNA−HindIII Digestを表す。
この電気泳動結果からも明らかなように、本発明の二本鎖DNAカルシウム塩は、従来のものと比較して遥かに高分子量なものとなる。
実施例2
本発明の二本鎖DNAの抽出・精製方法の透析工程における、白子溶液の濃縮効果を確認した。
濃縮は、濾過−逆洗のサイクルが濾過20分、逆洗20秒であり、逆洗圧が0.2MPaである中空糸膜装置を用い、白子溶液23.4Lについて行った。また圧力は変動するが、入口圧0.18MPa、出口圧0.12MPaに調整しながら透析を行った。
濃縮の過程を以下の表に示す。
累積濾液量:15.4L+9.0L+10.0L=34.4L
濃縮度:原液量/(原液量−累積濾液量)
みかけ濃縮度:38.4/{(23.4+8.0+7.0)−34.4}=9.6
原液に対する濃縮度:23.4/4.0=5.9
全処理時間:204分+81分+83分=368分(約6時間)
平均濾過速度:57.3(L・m2・時)
最終DNA溶液量:4.0L
本発明の二本鎖DNAの抽出・精製方法の透析工程における、白子溶液の濃縮効果を確認した。
濃縮は、濾過−逆洗のサイクルが濾過20分、逆洗20秒であり、逆洗圧が0.2MPaである中空糸膜装置を用い、白子溶液23.4Lについて行った。また圧力は変動するが、入口圧0.18MPa、出口圧0.12MPaに調整しながら透析を行った。
濃縮の過程を以下の表に示す。
濃縮度:原液量/(原液量−累積濾液量)
みかけ濃縮度:38.4/{(23.4+8.0+7.0)−34.4}=9.6
原液に対する濃縮度:23.4/4.0=5.9
全処理時間:204分+81分+83分=368分(約6時間)
平均濾過速度:57.3(L・m2・時)
最終DNA溶液量:4.0L
中空糸膜処理による濃縮の結果を以下の表にまとめる。
この濃縮試験によれば、DNA水溶液23.4Lから開始し、204分後に8.0Lになった(−15.4L)。次いで、水8.0Lを加え再開し、81分後に7.0Lになった(−9.0L)。さらに水7.0Lを加え再開し、83分後に4.0Lになった(−10L)。結果として、23.4Lから4.0LのDNA水溶液が得られた。
このように本発明の方法では、透析工程において白子溶液の体積を減少させることができ、また二本鎖DNAの純度を高めることができる。従って、続く沈殿工程において必要となるエタノールの量は少量ですみ、その結果、本発明の方法での二本鎖DNAの精製費用は従来の方法と比較して大幅に減少する。
このように本発明の方法では、透析工程において白子溶液の体積を減少させることができ、また二本鎖DNAの純度を高めることができる。従って、続く沈殿工程において必要となるエタノールの量は少量ですみ、その結果、本発明の方法での二本鎖DNAの精製費用は従来の方法と比較して大幅に減少する。
Claims (3)
- 魚類白子から高分子量の二本鎖DNA塩を抽出・精製する方法であって、
魚類白子を粗砕する粗砕工程と、
粗砕した魚類白子にDNAが分解しない条件下でタンパク質分解酵素処理する工程と、
酵素処理した溶液を濾過する濾過工程と、
分画分子量が2,000〜1,000,000である中空糸膜を用いて濾液に透析処理を行って、分解したタンパク質およびイオン類を除去すると共に二本鎖DNAを濃縮する透析工程と、
透析処理を行った溶液から二本鎖DNA塩を沈殿させる沈殿工程あるいは溶液を濃縮する工程と、
沈殿物あるいは濃縮物を回収する回収工程からなることを特徴とする、高分子量二本鎖DNA塩抽出・精製方法。 - 前記中空糸膜の分画分子量が5,000〜100,000であることを特徴とする、請求項1記載の高分子量二本鎖DNA塩抽出・精製方法。
- 前記沈殿工程は、カルシウムイオンを添加して二本鎖DNAとカルシウムイオンとの架橋体を生成させ、二本鎖DNAカルシウム塩を沈殿させることを特徴とする、請求項1記載の高分子量二本鎖DNA塩抽出・精製方法。
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