JP2005243493A - イオン交換膜 - Google Patents

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Abstract

【課題】イオン伝導性とメタノールの対する化学安定性が両立した、優れたイオン伝導膜を提供し、信頼性に優れ、高性能な燃料電池を供給する。
【解決手段】 本発明は、酸性官能基を有するイオン交換膜を熱処理により、酸性官能基の一部を架橋させることで、耐メタノール性に優れ安定性に優れたイオン交換膜を特徴とするものであり、本発明によるイオン交換膜は、液体燃料またはガス燃料を原料として作動する燃料電池の性能や耐久性を改善し、例えば燃料電池における耐久性の改善や、ダイレクトメタノール型燃料電池におけるメタノールのクロスリークを低減する効果を有する。

Description

本発明はイオン交換膜に関係し、詳しくは、燃料電池に使用される、特に安定性に優れるイオン交換膜に関するものでる。
液体電解質のかわりに高分子固体電解質をイオン伝導体として用いる電気化学的装置の例として、水電解槽や燃料電池を上げることができる。これらに用いられるイオン交換膜は、カチオン交換膜としてプロトン伝導性を有すると共に、化学的、熱的、電気化学的および力学的に十分安定なものでなくてはならない。このため、長期にわたり使用できるものとしては、主に米デュポン社製の「ナフィオン(登録商標)」を代表例とするパーフルオロカーボンスルホン酸膜が使用されてきた。しかしながら、ナフィオン膜を100℃を越える条件で運転しようとすると、膜の含水率が急激に落ちるほか、膜の軟化も顕著となる。また、ダイレクトメタノール型燃料電池を始めとする液体有機燃料を燃料とする燃料電池においては、たとえばメタノールを燃料極側に供給して使用する場合、メタノールがイオン交換膜を透過して空気極側に流れ込んでしまうクロスオーバーという問題が顕著である。このクロスオーバーが生じると、例えば、液体燃料と酸化剤が直接反応してしまい、電力が低下してしまうという問題や、液体燃料が空気極側から外部に漏れ出すといった問題が発生する。さらには、膜のコストが高すぎることが燃料電池技術の確立の障害として指摘されている。
このような欠点を克服するため、非フッ素系芳香族環含有ポリマーにスルホン酸基を導入した高分子イオン交換膜が種々検討されている。ポリマー骨格としては、耐熱性や化学的安定性を考慮すると、芳香族ポリアリーレンエーテルケトン類や芳香族ポリアリーレンエーテルスルホン類などの、芳香族ポリアリーレンエーテル化合物を有望な構造としてとらえることができ、ポリアリールエーテルスルホンをスルホン化したもの(例えば、非特許文献1参照。)、ポリエーテルエーテルケトンをスルホン化したもの(例えば、特許文献1参照。)、スルホン化ポリスチレン等が報告されている。しかしながら、これらポリマーのスルホン化反応により芳香環上に導入されたスルホン酸基は一般に脱離しやすい傾向にあり、これを改善する方法として電子吸引性芳香環上にスルホン酸基を導入したモノマーを用いて重合することで、安定性の高いスルホン化ポリアリールエーテルスルホン系化合物が報告されている(例えば、特許文献2参照。)。
しかしながら、それでもイオン交換膜としての安定性は充分では無く、さらなる改良が進められており、例えば、架橋により安定性を高める方法が、特許文献3や特許文献4に記載されている。いずれの文献も2個のスルホニル基を架橋剤を介して架橋する方法であり、安定性は改善されるが、複雑な工程とその制御を伴うという問題があった。
特開平6−93114号公報(第15−17頁) 米国特許出願公開第2002/0091225号明細書(第1−2頁) 特表2001−522401 特開平6−93114 ジャーナル・オブ・メンブラン・サイエンス(Journal of Membrane Science)、(オランダ)1993年、83巻、P.211−220
本発明は、イオン交換膜の形態安定性を改良することを目的としており、例えば燃料電池における耐久性の改善や、ダイレクトメタノール型燃料電池におけるメタノールのクロスリークを低減する効果を有する。
本発明は、安定性が高く、かつイオン伝導性に優れた高分子固体イオン交換膜として使用するのに適したイオン交換膜を提供するものである。またその製造方法およびイオン交換膜を使用した燃料電池に関するものである。
すなわち本発明は、酸性官能基を有する芳香族炭化水素系イオン交換膜であって、150℃以上で熱処理をすることによって、形態安定性を高めたことを特徴とするイオン交換膜である。
また、上記のイオン交換膜であり、少なくとも分子内にシアノ基を含むことを特徴とする前記のイオン交換膜である。
また、上記のいずれかのイオン交換膜であって、酸性官能基として少なくともスルホン酸基を有することを特徴とするイオン交換膜である。
また、上記のいずれかのイオン交換膜であって、熱処理によりスルホン酸基を含む親水性部位が架橋されていることを特徴とするイオン交換膜である。
また、上記のいずれかのイオン交換膜であって、イオン交換膜として、下記一般式(1)とともに一般式(2)で示される構成成分を含むことを特徴とするイオン交換膜である。
Figure 2005243493
ただし、Arは2価の芳香族基、Yはスルホン基またはケトン基、XはHまたは1価のカチオン種を示す。
Figure 2005243493
ただし、Ar'は2価の芳香族基を示す。
また、上記のイオン交換膜の製造方法である。
また、上記いずれかのイオン交換膜を使用した燃料電池に関するものである。
本発明は、酸性官能基を有するイオン交換膜を熱処理により、酸性官能基の一部を架橋させることで、イオン交換膜の安定性を改善することを特徴とするものであり、本発明によるイオン交換膜は、液体燃料またはガス燃料を原料として作動する燃料電池の性能や耐久性を改善する。
本発明は、酸性官能基を有するイオン交換膜の熱処理により、イオン交換膜の安定性を高めたことを特徴とするイオン交換膜に関するものである。具体的には、熱処理によってイオン交換膜内部に存在する、スルホン酸基のような酸性官能基を活性化し、隣接する分子と架橋させることにより、イオン交換膜の形態安定性を向上させるものである。そのため、液体燃料を使用するタイプの燃料電池においては、簡便な処理によって、例えばダイレクトメタノール型燃料電池で最大の問題となっているメタノールのクロスリークを低減することが可能である。また、水素ガスと酸素などの酸化ガスを燃料とするタイプの燃料電池においては、膜の形態安定性が高まることによって、膜の膨潤収縮などによってもたらされる、イオン交換膜の劣化を低減することが可能となる。
イオン交換膜、特に燃料電池用途を考えたときのイオン交換膜として良好な性能を発現するものは、イオン伝導性とくにプロトン伝導性が高い必要がある。そのための方策として、ポリマー中のイオン性官能器量を増やすことは好ましい方法だといえる。すなわち、イオン交換膜中に存在する酸性官能基の量を増やすことで、イオン伝導またはプロトン伝導の媒体濃度を上げるという考え方である。しかしながら、酸性官能基量を増加させると、それだけイオン交換膜が水に膨潤しやすく、燃料電池の運転停止を繰り返すことにより膜が膨潤収縮を繰り返し、膜の劣化に繋がるという問題があった。また燃料電池の動作温度が高くなると、イオン交換膜が溶解するといった問題を有した。
そこで本発明の方法は、150℃以上で酸性官能基を有するイオン交換膜を熱処理することによって、一部の酸性官能基を隣接する分子と架橋させることで、膜の形態安定性を改善することである。また、本発明によると、イオン交換膜中の酸性官能器量を大幅に増やしたような膜であっても、膜の形態安定性が改善されるために、水等の溶媒で濡らした際の膨潤収縮が小さく、燃料電池の運転停止による膨潤収縮でもたらされる膜の劣化を低く抑えるという効果も有する。なお、150℃よりも低い温度で熱処理を行った場合、架橋反応は進行しにくいため、形態安定性に及ぼす影響は小さい。
なお酸性官能基を介した架橋処理を行うためには、イオン交換膜に存在するイオン性官能基は酸型であることが望ましく、かつ窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で処理することが好ましい。官能基が塩型にあるイオン交換膜を処理する場合、150℃近辺で検討したところ、反応がほとんど進行しないことが分かった。ただし、酸型の官能基と塩型の官能基を共存させることは可能である。その場合、酸型の官能基の割合としては、20%以上、より好ましくは40%以上95%以下含まれていることが望ましい。酸性官能基の割合が20%よりも低いと、架橋の効果は小さい。また、酸素が多く存在する雰囲気で処理を施すと、酸素によるイオン交換膜の酸化といった望ましくない副反応の影響で、膜の劣化に繋がるため好ましくない。酸素濃度としては、少なくとも10%、より好適には5%以下で処理することが好ましく、10%よりも高い場合は、イオン交換膜が酸化劣化されやすくなる。
本発明によるイオン交換膜の材質として、より優れたものについては後述するが、特に限定するものではない。例えばポリスチレンスルホン酸、ポリ(トリフルオロスチレン)スルホン酸、ポリビニルホスホン酸、ポリビニルカルボン酸、ポリビニルスルホン酸成分の少なくとも1種を含むアイオノマーが挙げられる。さらに、芳香族系のポリマーとして、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリパラフェニレン、ポリアリーレン系ポリマー、ポリフェニルキノキサリン、ポリアリールケトン、ポリエーテルケトン、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾール、ポリイミド等の構成成分の少なくとも1種を含むポリマーに、スルホン酸基、ホスホン酸基、カルボキシル基、およびそれらの誘導体の少なくとも1種、より好ましくは少なくともスルホン酸基が導入されているポリマーが挙げられる。なお、ここでいうポリスルホン、ポエーテルスルホン、ポリエーテルケトン等は、その分子鎖にスルホン結合、エーテル結合、ケトン結合を有しているポリマーの総称であり、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンケトン、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン、ポリエーテルケトンスルホンなどを含むとともに、特定のポリマー構造に限定するものではない。
上記酸性基を含有するポリマーのうち、芳香環上にスルホン酸基を持つポリマーは、上記例のような骨格を持つポリマーに対して適当なスルホン化剤を反応させることにより得ることができる。このようなスルホン化剤としては、例えば、芳香族環含有ポリマーにスルホン酸基を導入する例として報告されている、濃硫酸や発煙硫酸を使用するもの(例えば、Solid State Ionics,106,P.219(1998))、クロル硫酸を使用するもの(例えば、J.Polym.Sci.,Polym.Chem.,22,P.295(1984))、無水硫酸錯体を使用するもの(例えば、J.Polym.Sci.,Polym.Chem.,22,P.721(1984)、J.Polym.Sci.,Polym.Chem.,23,P.1231(1985))等が有効である。これらの試薬を用い、それぞれのポリマーに応じた反応条件を選定することにより実施することができる。また、特許第2884189号に記載のスルホン化剤等を用いることも可能である。
また、上記イオン交換性官能基含有ポリマーは、重合に用いるモノマーの中の少なくとも1種にイオン交換性官能基を含むモノマーを用いて合成することもできる。例えば、芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物から合成されるポリイミドにおいては、芳香族ジアミンの少なくとも1種にスルホン酸基含有ジアミンを用いて酸性化含有ポリイミドとすることが出来る。芳香族ジアミンジオールと芳香族ジカルボン酸から合成されるポリベンズオキサゾール、芳香族ジアミンジチオールと芳香族ジカルボン酸から合成されるポリベンズチアゾールの場合は、芳香族ジカルボン酸の少なくとも1種にスルホン酸基含有ジカルボン酸やホスホン酸基含有ジカルボン酸を使用することにより酸性基含有ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾールとすることが出来る。芳香族ジハライドと芳香族ジオールから合成されるポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトンなどは、モノマーの少なくとも1種にスルホン酸基含有芳香族ジハライドやスルホン酸基含有芳香族ジオールを用いることで合成することが出来る。この際、スルホン酸基含有ジオールを用いるよりも、スルホン酸基含有ジハライドを用いる方が、重合度が高くなりやすいとともに、得られたイオン交換性官能基含有ポリマーの熱安定性が高くなるので好ましいと言える。
なお本発明におけるイオン交換膜を形成するためのポリマーは、スルホン酸基含有ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリエーテルケトン系ポリマーなどのポリアリーレンエーテル系化合物であることがより好ましい。
さらに、これらのポリアリーレンエーテル系化合物のうち、分子内にシアノ基を有する化合物がより好ましい。詳細は不明な部分も多いが、分子内にシアノ基を有する化合物を含む場合、シアノ基の相互作用によって、シアノ基を含まない化合物から作製するよりも低膨潤性で形態安定性に優れるポリマーとなる。
さらに、これらのポリアリーレンエーテル系化合物のうち、下記一般式(1)とともに一般式(2)で示される構成成分を含むものが特に好ましい。
Figure 2005243493
ただし、Arは2価の芳香族基、Yはスルホン基またはケトン基、XはHまたは1価のカチオン種を示す。
Figure 2005243493
ただし、Ar'は2価の芳香族基を示す。
上記一般式(2)で示される構成成分は、下記一般式(3)で示される構成成分であることが好ましい。
Figure 2005243493
ただし、Ar'は2価の芳香族基を示す。
また、本発明のイオン交換膜のポリマーにおいては上記一般式(1)および一般式(2)で示される以外の構造単位が含まれていてもかまわない。このとき、上記一般式(1)または一般式(2)で示される以外の構造単位は50重量%以下であることが好ましい。50質量%以下とすることにより、本発明の特性を活かした組成物とすることができる。
さらに本発明のイオン交換膜を形成するためのポリマーとしては、下記一般式(4)とともに一般式(5)で示される構成成分を含むものが特に好ましい。ビフェニレン構造を有していることにより高温高湿条件での寸法安定性に優れるとともに、強靱性も高いものとなる。
Figure 2005243493
Figure 2005243493
ただし、XはHまたは1価のカチオン種を示す。
本発明のスルホン酸基を含有するポリアリーレンエーテル系ポリマーは、下記一般式(6)および一般式(7)で表される化合物をモノマーとして含む芳香族求核置換反応により重合することができる。一般式(6)で表される化合物の具体例としては、3,3'−ジスルホ−4,4'−ジクロロジフェニルスルホン、3,3'−ジスルホ−4,4'−ジフルオロジフェニルスルホン、3,3'−ジスルホ−4,4'−ジクロロジフェニルケトン、3,3'−ジスルホ−4,4'−ジフルオロジフェニルスルホン、およびそれらのスルホン酸基が1価カチオン種との塩になったもの等が挙げられる。1価カチオン種としては、ナトリウム、カリウムや他の金属種や各種アミン類等でも良く、これらに制限される訳ではない。一般式(7)で表される化合物としては、2,6−ジクロロベンゾニトリル、2,6−ジフルオロベンゾニトリル、2,4−ジクロロベンゾニトリル、2,4−ジフルオロベンゾニトリル、等を挙げることができる。
Figure 2005243493
Figure 2005243493
ただし、Yはスルホン基またはケトン基、Xは1価のカチオン種、Zは塩素またはフッ素を示す。本発明において、上記2,6−ジクロロベンゾニトリルおよび2,4−ジクロロベンゾニトリルは、異性体の関係にあり、いずれを用いたとしても良好なイオン伝導性、耐熱性、加工性および寸法安定性を達成することができる。その理由としては両モノマーとも反応性に優れるとともに、小さな繰り返し単位を構成することで分子全体の構造をより硬いものとしていると考えられている。
上述の芳香族求核置換反応において、上記一般式(6)、(7)で表される化合物とともに各種活性化ジフルオロ芳香族化合物やジクロロ芳香族化合物をモノマーとして併用することもできる。これらの化合物例としては、4,4'−ジクロロジフェニルスルホン、4,4'−ジフルオロジフェニルスルホン、4,4'−ジフルオロベンゾフェノン、4,4'−ジクロロベンゾフェノン、デカフルオロビフェニル等が挙げられるがこれらに制限されることなく、芳香族求核置換反応に活性のある他の芳香族ジハロゲン化合物、芳香族ジニトロ化合物、芳香族ジシアノ化合物なども使用することができる。
また、上述の一般式(1)で表される構成成分中のArおよび上述の一般式(2)で表される構成成分中のAr'は、一般には芳香族求核置換重合において上述の一般式(6)、(7)で表される化合物とともに使用される芳香族ジオール成分モノマーより導入される構造である。このような芳香族ジオールモノマーの例としては、4,4'−ビフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ハイドロキノン、レゾルシン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン等があげられるが、この他にも芳香族求核置換反応によるポリアリーレンエーテル系化合物の重合に用いることができる各種芳香族ジオールを使用することもできる。これら芳香族ジオールは、単独で使用することができるが、複数の芳香族ジオールを併用することも可能である。
本発明のスルホン酸基を含有するポリアリーレンエーテル系ポリマーを芳香族求核置換反応により重合する場合、上記一般式(6)および一般式(7)で表せる化合物を含む活性化ジフルオロ芳香族化合物及び/またはジクロロ芳香族化合物と芳香族ジオール類を塩基性化合物の存在下で反応させることで重合体を得ることができる。重合は、0〜350℃の温度範囲で行うことができるが、50〜250℃の温度であることが好ましい。0℃より低い場合には、十分に反応が進まない傾向にあり、350℃より高い場合には、ポリマーの分解も起こり始める傾向がある。反応は、無溶媒下で行うこともできるが、溶媒中で行うことが好ましい。使用できる溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホン、スルホランなどを挙げることができるが、これらに限定されることはなく、芳香族求核置換反応において安定な溶媒として使用できるものであればよい。これらの有機溶媒は、単独でも2種以上の混合物として使用されても良い。塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等があげられるが、芳香族ジオール類を活性なフェノキシド構造にしうるものであれば、これらに限定されず使用することができる。芳香族求核置換反応においては、副生物として水が生成する場合がある。この際は、重合溶媒とは関係なく、トルエンなどを反応系に共存させて共沸物として水を系外に除去することもできる。水を系外に除去する方法としては、モレキュラーシーブなどの吸水材を使用することもできる。芳香族求核置換反応を溶媒中で行う場合、得られるポリマー濃度として5〜50重量%となるようにモノマーを仕込むことが好ましい。5重量%よりも少ない場合は、重合度が上がりにくい傾向がある。一方、50重量%よりも多い場合には、反応系の粘性が高くなりすぎ、反応物の後処理が困難になる傾向がある。重合反応終了後は、反応溶液より蒸発によって溶媒を除去し、必要に応じて残留物を洗浄することによって、所望のポリマーが得られる。また、反応溶液を、ポリマーの溶解度が低い溶媒中に加えることによって、ポリマーを固体として沈殿させ、沈殿物の濾取によりポリマーを得ることもできる。
また、本発明のスルホン酸基を含有するポリアリーレンエーテル系ポリマーは、ポリマー対数粘度が0.1以上であることが好ましい。対数粘度が0.1よりも小さいと、イオン交換膜として成形したときに、膜が脆くなりやすくなる。還元比粘度は、0.3以上であることがさらに好ましい。一方、還元比粘度が5を超えると、ポリマーの溶解が困難になるなど、加工性での問題が出てくるので好ましくない。なお、対数粘度を測定する溶媒としては、一般にN−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミドなどの極性有機溶媒を使用することができるが、これらに溶解性が低い場合には濃硫酸を用いて測定することもできる。
なお、必要に応じて、本発明のイオン交換膜を形成するためのポリマーは、例えば酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、粘着付与剤、可塑剤、架橋剤、粘度調整剤、静電気防止剤、抗菌剤、消泡剤、分散剤、重合禁止剤、ラジカル防止剤などの各種添加剤や、イオン交換膜の特性をコントロールするための無機化合物や無機―有機のハイブリッド化合物、イオン性液体などを含んでいても良い。
以上に示したポリマーを、押し出し、圧延またはキャストなど任意の方法でイオン交換膜とすることができる。中でも適当な溶媒に溶解した溶液から成形することが好ましい。この溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルホスホンアミドなどの非プロトン性極性溶媒や、メタノール、エタノール等のアルコール類から適切なものを選ぶことができるがこれらに限定されるものではない。これらの溶媒は、可能な範囲で複数を混合して使用してもよい。溶液中の化合物濃度は0.1〜50重量%の範囲であることが好ましい。溶液中の化合物濃度が0.1重量%未満であると良好な成形物を得るのが困難となる傾向にあり、50重量%を超えると加工性が悪化する傾向にある。溶液から成形体を得る方法は従来から公知の方法を用いて行うことができる。イオン交換膜を成形する手法として最も好ましいのは、溶液からのキャストであり、キャストした溶液から上記のように溶媒を除去してイオン交換膜を得ることができる。溶媒の除去は、乾燥による方法がイオン交換膜の均一性からは好ましい。また、化合物や溶媒の分解や変質を避けるため、減圧下でできるだけ低い温度で乾燥することもできる。また、溶液の粘度が高い場合には、基板や溶液を加熱して高温でキャストすると溶液の粘度が低下して容易にキャストすることができる。キャストする際の溶液の厚みは特に制限されないが、10〜2000μmであることが好ましい。より好ましくは50〜1500μmである。溶液の厚みが10μmよりも薄いとイオン交換膜としての形態を保てなくなる傾向にあり、2000μmよりも厚いと不均一な高分子イオン交換膜ができやすくなる傾向にある。溶液のキャスト厚を制御する方法は公知の方法を用いることができる。例えば、アプリケーター、ドクターブレードなどを用いて一定の厚みにしたり、ガラスシャーレなどを用いてキャスト面積を一定にして溶液の量や濃度で厚みを制御することができる。キャストした溶液は、溶媒の除去速度を調整することでより均一な膜を得ることができる。例えば、加熱する場合には最初の段階では低温にして蒸発速度を下げたりすることができる。また、水などの非溶媒に浸漬する場合には、溶液を空気中や不活性ガス中に適当な時間放置しておくなどして化合物の凝固速度を調整することができる。本発明のイオン交換膜は目的に応じて任意の膜厚にすることができるが、イオン伝導性の面からはできるだけ薄いことが好ましい。具体的には5〜300μmであることが好ましく、25〜250μmであることがさらに好ましい。イオン交換膜の厚みが5μmより薄いとイオン交換膜の取扱が困難となり燃料電池を作製した場合に短絡等が起こる傾向にあり、300μmよりも厚いとイオン交換膜の電気抵抗値が高くなり燃料電池の発電性能が低下する傾向にある。また本発明においては、イオン交換膜として記載したが、中空糸状に加工することも好ましい形であり、加工に際しては公知の処方を利用できる。
このような手法で作製したイオン交換膜の中で官能基が塩型にある場合、熱処理を行う前に酸型に変換する必要がある。酸変換の手法としては、特に規定されるものではないが、塩型のイオン交換膜を、硫酸水溶液や塩酸水溶液やリン酸水溶液といった酸性溶液に浸漬することで酸型のイオン交換膜へ変換した後、余分な酸成分を水洗除去することが好ましい。酸型への変換に使用する酸性溶液の濃度や温度も特に規定されるものでは無く、目的に応じて調整できる。なお、より高濃度の酸や高温の溶液を使用する程、酸型への変換速度や変換効率は高くなる傾向にある。また水洗に使用する水として、プロトン以外のカチオンを含むものは、酸型になったイオン交換膜を再び塩型に戻す可能性があるため、管理する必要があり、こちらも目的に応じて決めることが可能である。あえて塩型の官能基を任意の割合で残すことも可能である。
以上のようにして得たイオン交換膜に対して、前述した熱処理法を施すことによって膜の特性を改良し、より優れたイオン交換膜を提供することが可能となる。
本発明のイオン交換膜においては、酸性官能基量が0.5〜4.5meq/gの範囲にあることが好ましい。0.5meq/gよりも少ない場合には、イオン交換膜として使用したときに十分なイオン伝導性を示さない傾向があり、4.5meq/gよりも大きい場合には本発明のイオン交換膜においても、高温高湿条件においた場合に膜膨潤が大きくなりすぎて使用に適さなくなる傾向がある。より好ましくは1.0〜3.5meq/gである。酸性官能器量は、後述のイオン交換容量の測定から実験的に求めることができる。
最終的に得られたイオン交換膜を使用する場合、膜中のイオン性官能基は金属塩になっているものを含んでいても良いが、適当な酸処理によりフリーの酸型に変換した形が好ましい。この際、イオン交換膜のイオン伝導率は1.0x10−3S/cm以上であることが好ましい。イオン伝導率が1.0x10−3S/cm以上である場合には、そのイオン交換膜を用いた燃料電池において良好な出力が得られる傾向にあり、1.0x10−3S/cm未満である場合には燃料電池の出力低下が起こる傾向にある。
安定性が改善された効果として、膨潤性や液体燃料の透過性が抑制される。すなわち、本発明のイオン交換膜においては、同程度の酸性基量の膜を比較した場合に、10%以上膨潤性を下げることが可能となり、安定性が向上する。また液体燃料として代表的なメタノールが透過する速度、すなわちメタノール透過係数を同等膜厚のサンプルで比較した場合、熱処理を施さない場合に比べて、10%以上透過係数を下げることが可能となる。場合により30%以上低下させることも可能となる。なお、メタノール透過速度として、液体燃料のクロスリークを防ぐ意味では、メタノール透過速度は、0.1〜5.0mmol/m2/sの範囲にあることが好ましく、より好適には、4.0mmol/m2/sよりも小さいことが望ましい。本発明のイオン交換膜においては、より良好な形で膜の膨潤を抑えることが可能であるため、高いイオン伝導性と液体燃料透過抑止性能を両立できる。
また、上述した本発明のイオン交換膜に電極を設置することによって、本発明のイオン交換膜と電極との接合体を得ることができる。触媒の種類や電極の構成や電極に使用されるガス拡散層の種類や接合方法などは特に限定されるものではなく、公知のものが使用でき、また公知の技術を組み合わせたものも使用できる。電極に使用する触媒としては耐酸性と触媒活性の観点から適宜選出できるが、白金族系金属およびこれらの合金や酸化物が特に好ましい。例えばカソードに白金または白金系合金,アノードに白金または白金系合金や白金とルテニウムの合金を使用すると高効率発電に適している。複数の種類の触媒を使用していても良く、分布があっても良い。電極中の空孔率や、電極中に触媒と一緒に混在させるイオン伝導性樹脂の種類・量なども特に制限されるものではない。また疎水性化合物の含浸などに代表されるガス拡散性をコントロールするための手法なども好適に利用できる。電極を膜に接合する技術としては、膜―電極間に大きな抵抗が生じないようにすることが重要であり、また膜の膨潤収縮や、ガス発生の機械的な力によって剥離や電極触媒の剥落が生じないようにすることも重要である。この接合体の作製方法としては、従来から燃料電池または、水電解における電極−膜接合方法の公知技術として知られている手法、例えば触媒担持カーボンとイオン交換樹脂およびポリテトラフルオロエチレン等の撥水性を有する材料を混合してあらかじめ電極を作製し、これを膜に熱圧着する手法や、前記混合物を膜にスプレーやインクジェット等で直接析出させる方法などが好適に用いられる。また、化学めっきによる、例えば白金族のアンミン錯イオンのように金属イオンをカチオン型にした溶液に膜を浸漬してイオン交換(吸着)させてから、膜を還元剤溶液に接触させて、膜表面近傍の金属イオンを還元させると同時に膜内部の金属イオンを表面に拡散させ、強固な金属析出層を膜表面に形成させる方法などが上げられる。後者については、さらに化学めっき浴を用いて活性な金属析出層の上に所定の金属種および量をめっき成長させる方法もある。
また上記のイオン交換膜・電極接合体を燃料電池に組み込むことによって良好な性能を有する燃料電池を提供できる。燃料電池に使用されるセパレータの種類や、燃料や酸化ガスの流速・供給方法・流路の構造などや、運転方法、運転条件、温度分布、燃料電池の制御方法などは特に限定されるものではない。
本発明のイオン交換膜は高いイオン伝導性を有しながら、安定性や液体燃料透過抑止能に優れる。その特性を生かして、ダイレクトメタノール型燃料電池や固体高分子形燃料電池の高分子固体イオン交換膜として利用することができ、そうして作製した燃料電池は優れた性能を示す。
以下に本発明の実施例を示すが本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
評価法・測定法
<イオン交換膜の厚み>
イオン交換膜の厚みは、マイクロメーター(Mitutoyo 標準マイクロメーター 0−25mm 0.01mm)を用いて測定することにより求めた。なお厚みを正確に測ることを目的とし、室温が20℃で湿度が30±5RH%にコントロールされた測定室内で評価を行った。測定に際してサンプルは、24時間以上、測定室内で静置したものを使用した。測定は5×5cmの大きさのサンプルに対して20箇所測定し、その平均値を厚みとした。
<イオン交換容量(酸型)>
イオン交換容量(IEC)としては、イオン交換膜に存在する酸型の官能基量を測定した。まずサンプル調整として、サンプル片(5×5cm)を80℃のオーブンで窒素気流下2時間乾燥し、さらにシリカゲルを充填したデシケータ中で30分間放置冷却した後、乾燥重量を測定した(Ws)。次いで、200mlの密閉型のガラス瓶に、200mlの1mol/l塩化ナトリウム-超純水溶液と秤量済みの前記サンプルを入れ、密閉状態で、室温で24時間攪拌した。次いで、その溶液30mlを10mMの水酸化ナトリウム水溶液(市販の標準溶液)で中和滴定し、滴定量(T)より下記式を用いて、IEC(酸型)を求めた。
IEC(meq/g)=10T/(30Ws)×0.2
(Tの単位:ml Wsの単位:g)
なお、サンプル中のイオン性官能基量の目安となる全イオン交換容量は、サンプルを2mol/lの硫酸水溶液に一晩浸漬した後、超純水で洗浄を繰り返した後乾燥することで作製した酸型サンプルについて、上述のイオン交換容量を求めることで行った。
<膨潤率>
膨潤率は、サンプル(5×5cm)の正確な乾燥重量(Ws)と、サンプルを70℃の超純水に2時間浸漬した後取り出し、サンプル表面に存在する余分な水滴をキムワイプ(商品名)を用いてふき取り、直ぐに測定した重量(Wl)から、下記式を用いて求めた。膨潤率が小さいほど、形態安定性に優れる。
膨潤率(%)=(Wl−Ws)/Ws×100(%)
<イオン伝導率>
イオン伝導率σは次のようにして測定した。自作測定用プローブ(ポリテトラフルロエチレン製)上で幅10mmの短冊状膜試料の表面に白金線(直径:0.2mm)を押しあて、80℃、相対湿度95%の恒温恒湿槽中に試料を保持し、白金線間の10kHzにおける交流インピーダンスをSOLARTRON社1250FREQUENCY RESPONSE ANALYSERにより測定した。極間距離を10mmから40mmまで10mm間隔で変化させて測定し、極間距離と抵抗測定値をプロットした直線の勾配Dr[Ω/cm]から下記の式により膜と白金線間の接触抵抗をキャンセルして算出した。
σ[S/cm]=1/(膜幅×膜厚[cm]×Dr)
<メタノール透過速度およびメタノール透過係数>
イオン交換膜の液体燃料透過速度はメタノール透過速度およびメタノール透過係数として、以下の方法で測定した。25℃に調整した5モル/リットルのメタノール水溶液(メタノール水溶液の調整には、市販の試薬特級グレードのメタノールと超純水(18MΩ・cm)を使用。)に24時間浸漬したイオン交換膜をH型セルに挟み込み、セルの片側に100mlの5モル/リットルのメタノール水溶液を、他方のセルに100mlの超純水を注入し、25℃で両側のセルを撹拌しながら、イオン交換膜を通って超純水中に拡散してくるメタノール量をガスクロマトグラフを用いて測定することで算出した(イオン交換膜の面積は、2.0cm2)。なお具体的には、超純水を入れたセルのメタノール濃度変化速度[Ct](mmol/L/s)より以下の式を用いて算出した。
メタノール透過速度[mmol/m2/s]=(Ct[mmol/L/s]× 0.1[L])/2×10−4[m2]
メタノール透過係数[mmol/m/s]=メタノール透過速度[mmol/m2/s]×膜厚[m]
<発電特性>
下記2種類の方法により発電特性を評価した。
<発電評価1>
デュポン社製20%ナフィオン(商品名)溶液に、市販の54%白金/ルテニウム触媒担持カーボン(田中貴金属工業株式会社)と、少量の超純水およびイソプロパノールを混合してから、均一になるまで撹拌することで、触媒ペーストを調製した。この触媒ペーストを、東レ製カーボンペーパーTGPH−060に白金の付着量が2mg/cm2になるように均一に塗布・乾燥して、アノード用の電極触媒層付きガス拡散層を作製した。また、同様の手法で、白金/ルテニウム触媒担持カーボンに替えて市販の40%白金触媒担持カーボン(田中貴金属工業株式会社)を用いて、疎水化したカーボンペーパー上に電極触媒層を形成することで、カソード用の電極触媒層付きガス拡散層を作製した(1mg−白金/cm2)。上記2種類の電極触媒層付きガス拡散層の間に、イオン交換膜を、電極触媒層がイオン交換膜に接するように挟み、ホットプレス法により135℃、2MPaにて5分間加圧、加熱することにより、イオン交換膜・電極接合体を作製した。この接合体をElectrochem社製の評価用燃料電池セルFC25−02SPに組み込んでセル温度40℃で、アノードおよびカソードにそれぞれ40℃の2mol/lのメタノール水溶液と空気を供給し、電流密度0.1A/cm2で放電試験を行った。
<発電評価2>
上記の発電評価1で示したカソード用の電極触媒層付きガス拡散層を、アノード用としても使用し、同様の手法によりイオン交換膜・電極接合体を作製した。セル温度80℃で、アノードおよびカソードに、それぞれ、60℃で加湿した水素ガス及び酸素ガスを供給しながら電流密度1A/cm2で放電試験を行い、電圧(V)を測定した。また同条件で長期間運転しながら2時間に一度、開回路電圧を観察し、開回路電圧が初期に比べて50mV低下した時間を耐久時間として、耐久性も評価した。
実施例1
モル比で1.00:1.02:2.02:2.25となるように、3,3'−ジスルホ
−4,4'−ジクロロジフェニルスルホン2ナトリウム塩、2,6−ジクロロベンゾニト
リル、4,4'−ビフェノール、炭酸カリウムを混合し、その15gとモリキュラーシーブ2.71gを溶媒であるNMPとともに100ml四つ口フラスコに計り取り、窒素を流した。148℃で一時間撹拌した後、反応温度を180−200℃に上昇させて系の粘性が十分上がるのを目安に反応を続けた(約6.5時間)。放冷の後、沈降しているモレキュラーシーブを除いて水中にストランド状に沈殿させた。得られたポリマーは、沸騰させた超純水中で1時間洗浄した後、乾燥した。ポリマーの28%NMP溶液を調整した。流延法によってポリマー溶液を薄く引き延ばし、100℃次いで145℃で4時間乾燥した。次いで2mol/lの硫酸水溶液中に2時間浸漬し、水洗5回後、枠に固定した状態で室温で乾燥することによりグリーンフィルムを作製した。このグリーンフィルムを160℃の窒素オーブン中で1時間加熱することによって熱処理を施したフィルムを作製した。80℃以下の温度となるまで窒素オーブン中で放置した後、フィルムを取り出した。次いで水洗処理を3回実施し、枠に固定した状態から室温で乾燥することにより、実施例1のイオン交換膜を作製した。
実施例2
3,3'−ジスルホ−4,4'−ジクロロジフェニルスルホン2ナトリウム塩、2,6−ジクロロベンゾニトリル、4,4'−ビフェノール、炭酸カリウムのモル比を、1.00:0.25:1.25:1.46で仕込んだことを除いて、実施例1の手法で処理することによって、実施例2のイオン交換膜を作製した。
実施例3
グリーンフィルムの熱処理温度を200℃で行ったことを除いて、実施例2の手法で処理することにより実施例3のイオン交換膜を作製した。
実施例4
厚みの異なるグリーンフィルムを用いたことを除いて、実施例1の手法で処理することによって、実施例4のイオン交換膜を作製した。
比較例1
グリーンフィルムの熱処理をしなかったことを除いて実施例1の手法で比較例1のイオン交換膜を作製した。
比較例2
グリーンフィルムの熱処理を120℃で行ったことを除いて実施例2の手法により比較例2のイオン交換膜を作製した。発電評価2の方法で発電試験を行った際、膜の抵抗が低く、電流密度増加に伴う電圧の低下は小さく抑えることが可能であったが、開回路電圧が実施例に比べて低く、初期段階でも幾分ガスリークしているような挙動を示し、不安定なものであった。
比較例3
酸変換処理を施さず、塩型の状態のグリーンフィルムを用いたことを除いて、実施例1の手法により比較例3のイオン交換膜を作製した。
実施例1、2、3、4、比較例1、2、3、の物性評価結果を表1に示す。
Figure 2005243493
実施例のイオン交換膜は、グリーンフィルムに比べてIECが減少している。これはスルホン酸基由来の架橋反応が進行したためと考えられる。一方、比較例のイオン交換膜は、グリーンフィルムとほぼ同じIECを有しており、架橋反応は進行していないことが分かる。実施例と比較例のイオン交換膜の特性を比べた場合、実施例の方が低膨潤率であり、形態安定性が向上している。その結果、IECが高くともメタノール透過係数を低く抑えることが可能であり、より良い性能を有していることが分かる。発電性能は、発電評価1の方法の場合、実施例の膜はメタノール透過性が低いので良好な性能が得られている。一方、発電評価2の方法による場合、実施例の膜も比較例の膜も、初期性能は良好であったが(ただし、比較例2の膜を使用した場合、開回路電圧が低いという問題はある。)、耐久性を評価した結果、明らかに実施例の膜の方が優れていた。膨潤性や形態安定性が改善された結果だと考えられる。
イオン伝導性と安定性が両立される、優れたイオン交換膜を提供することができ、信頼性に優れ、高性能な燃料電池を供給することが可能となる。

Claims (7)

  1. 150℃以上で熱処理をすることによって、形態安定性を高めたことを特徴とする、酸性官能基を有する芳香族炭化水素系イオン交換膜。
  2. 分子内にシアノ基を含むことを特徴とする請求項1の範囲のイオン交換膜。
  3. 酸性官能基として少なくともスルホン酸基を有することを特徴とする請求項1乃至2のいずれかの範囲のイオン交換膜。
  4. 熱処理により架橋されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかの範囲のイオン交換膜。
  5. イオン交換膜として、下記一般式(1)とともに一般式(2)で示される構成成分を含むことを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかの範囲のイオン交換膜。
    Figure 2005243493
    ただし、Arは2価の芳香族基、Yはスルホン基またはケトン基、XはHまたは1価のカチオン種を示す。
    Figure 2005243493
    ただし、Ar'は2価の芳香族基を示す。
  6. 請求項1乃至5の範囲のイオン交換膜の製造方法。
  7. 請求項1乃至6の範囲のイオン交換膜を使用した燃料電池。
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