JP2005240052A - 高温加工性に優れかつ金属イオン溶出量が著しく小さい耐食性に優れたNi基合金 - Google Patents
高温加工性に優れかつ金属イオン溶出量が著しく小さい耐食性に優れたNi基合金 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】Cr:43超〜50%、Mo:0.1〜2%、Mg:0.001〜0.05%、N:0.001〜0.04%、Mn:0.05〜0.5%、B:0.0005〜0.01%を含有し、さらに必要に応じて、Fe:0.05〜1.0%およびSi:0.01〜0.1%の内の1種または2種を含有し、残部がNiおよび不可避不純物からなり、不可避不純物として含まれるC量を0.05%以下に調整した組成を有する。
【選択図】 なし
Description
一方で、医薬品バルク生成プロセスでは、創薬技術の加速化に伴い多品種少量生産への要求が年々高まり、同一装置で異なるプロセスを実施しなければ対応できない状況になっている。それゆえ広範な運転条件(腐食環境)下において汚染されること無くバッチブロセスを行うための多目的装置用材料の必要性が高まってきている。
その結果、質量%(以下、%は質量%を示す)でCr:43超〜50%含有するNi基合金にMo:0.1〜2%と、Mg:0.001〜0.05%と、N:0.001〜0.04%と、Mn:0.05〜0.5%、B:0.0005〜0.01%を含有せしめ、さらに、必要に応じてFe:0.05〜1.0%およびSi:0.01〜0.1%を1種または2種を含有し、残りがNiおよび不可避不純物からなり、不可避不純物としてのCを0.05%以下に調整した組成を有するNi基合金は、高温加工性に優れかつ比較的弱い酸や強アルカリ環境下における腐食速度(mm/year)が0.1mm/year未満であり、さらに金属イオンの溶出が著しく少ないことから、この成分組成を有するNi−Cr系合金は比較的弱い酸や強アルカリ環境下にある医薬品製造プラントなどの材料として一層優れた効果を有する、という知見を得たのである。
(1)Cr:43超〜50%、Mo:0.1〜2%、Mg:0.001〜0.05%、N:0.001〜0.04%、Mn:0.05〜0.5%、B:0.0005〜0.01%を含有し、残部がNiおよび不可避不純物からなり、不可避不純物として含まれるC量を0.05%以下に調整した組成を有する高温加工性に優れかつ金属イオン溶出量が著しく小さいNi基合金、
(2)Cr:43超〜50%、Mo:0.1〜2%、Mg:0.001〜0.05%、N:0.001〜0.04%、Mn:0.05〜0.5%、B:0.0005〜0.01%を含有し、さらに、Fe:0.05〜1.0%およびSi:0.01〜0.1%の内の1種または2種を含有し、残部がNiおよび不可避不純物からなり、不可避不純物として含まれるC量を0.05%以下に調整した組成を有する高温加工性に優れかつ金属イオン溶出量が著しく小さいNi基合金、に特徴を有するものである。
(3)前記(1)または(2)記載の金属イオン溶出量が著しく小さいNi基合金からなる医薬品製造プラント部材、に特徴を有するものである。
Cr:
医薬品製造プラントなどの比較的弱い酸や強アルカリ環境下ではCrが表面に濃縮して薄くて緻密なCr2O3を主体とする不働態被膜を形成することにより金属イオン溶出を抑制する作用があるので添加する。その場合、表面被膜中の陽イオン率が95%以上クロムであることで金属イオンの溶出を著しく抑制することができる。その為には、Crは43%を越えて含有することが必要であるが、50%を超えて含有すると加工が困難となる。従って、この発明のNi基合金に含まれるCrは43超〜50%に定めた。一層好ましくは、43.1〜47%である。
Moは、Cr2O3を主体とする不働態被膜の形成を促進する効果がある。その場合、0.1%以上含有することで効果を示すが、2%を超えて含有すると相安定性を劣化させ、Cr−bcc相の固溶化を困難にしてしまうため、母相であるNi−fcc相とCr−bcc相との間でミクロ電池を形成し、結果的に金属イオンの溶出量を増大させてしまうので、Mo含有量は0.1〜2%に定めた。一層好ましくは0.1超〜0.5%未満である。
N、MnおよびMgを共存させることにより、相安定性を向上させることができる。すなわち、N、MnおよびMgはいずれも母相であるNi-fcc相を安定化させ、Crの固溶化を促進し、第2相を析出しにくくする効果がある。その結果として高温加工性、特に高温での変形能の向上や溶接部とその熱影響部における耐食性、特に医薬品製造プラント等の比較的弱い酸や強アルカリ環境でのそれらの耐食性の劣化を抑制する効果がある。しかし、Nの含有量が0.001%未満では相安定化の効果はなく、したがって高温加工性の向上や溶接部耐食性劣化の抑制に対する効果がなく、一方、0.04%を超えて含有すると窒化物を形成し、高温加工性が劣化すると同時に溶接部やその熱影響部の金属イオンの溶出量が増大するため、Nの含有量を0.001〜0.04%(一層好ましくは、0.005〜0.03%)とした。
同様に、Mnの含有量が0.05%未満では相安定化の効果はなく、したがって、高温加工性の向上や溶接部耐食性劣化の抑制に対する効果がないので好ましくなく、一方、0.5%を超えて含有すると相安定性を損ね、高温加工性が劣化すると同時に溶接部やその熱影響部の金属イオンの溶出量が増大するため、Mnの含有量を0.05〜0.5%(一層好ましくは、0.1%〜0.4%)とした。
また、同様に、Mgの含有量が0.001%未満では相安定化の効果はなく、したがって、高温加工性の向上や溶接部耐食性劣化の抑制に対する効果がないので好ましくなく、一方、0.05%を超えて含有すると相安定性を損ね、高温加工性が劣化すると同時に溶接部やその熱影響部の金属イオンの溶出量が増大するため、Mgの含有量を0.001〜0.05%(一層好ましくは、0.002%〜0.04%)とした。
なお、これら3元素は、3元素が同時に所定の範囲に含有しないと効果がないことを見出している。
Bは、熱間における変形能を向上させる効果があると同時に溶接凝固部においてCr偏析を抑制することにより溶接部の耐食性劣化を抑制する効果がある。しかし、その含有量が0.0005%未満では所望の効果が得られないので好ましくなく、一方、0.01%を越えて含有すると逆に熱間における変形能を低下させると同時に、逆にCrの偏析を促してしまうことから溶接凝固部における耐食性を劣化させる傾向にあるため、B含有量を0.0005〜0.01%に定めた。一層好ましい範囲は0.001〜0.01%である。
FeおよびSiは共に強度を向上させる効果があるので必要に応じて添加するが、Feは0.05%以上含有することで効果を示すものの、1%を超えて含有すると医薬品製造プラント等の比較的弱い酸や強アルカリ環境における金属イオンの溶出量が増大するため、Feの含有量を0.05%〜1%(一層好ましくは、0.1〜0.5%未満)とした。
同様にSiは0.01%以上含有することで効果を示すものの、0.1%を超えて含有すると相安定性が劣化するために、特に高温加工性の劣化や溶接部耐食性の劣化が生じるところから、Siの含有量を0.01%〜0.1%(一層好ましくは、0.02〜0.05%)とした。
Cは不可避不純物として含まれるが、Cは結晶粒界近傍でCrと炭化物を形成し、金属イオンの溶出量を増大させるため、Cの含有量は少ないほど好ましく、不可避不純物に含まれるCの含有量の上限を0.05%と定めた。
一方、一部切断した残りの部分をさらに圧延して最終的に厚さ:3mmとしたのち1200℃で30分間保持し水焼入れすることにより固溶化処理を施し、表面をバフ研磨することにより薄板を作製した。このようにして作製した厚板および薄板を用いて、下記の条件で熱間捻り試験を行うことにより高温における変形能を評価し、さらに腐食試験を行うことにより耐食性を評価した。
先に作製した本発明Ni基合金1〜23、比較Ni基合金1〜12および従来Ni基合金1〜2からなる厚さ:30mmの厚板を機械加工することにより、両側にチャック部を有し、直径:8mm、長さ:30mmの寸法を有する捻り部を持った熱間捻り試験片を作製した。この熱間捻り試験片を温度:1050℃および1150℃にそれぞれ15分間保持した後、歪速度を2.0/秒になるように捻り回転数を調整して熱間捻り試験を実施し、切断するまでの回転数を測定し、その結果を表4〜6に示すことにより高温における変形能を評価した。
先に作製した本発明Ni基合金1〜23、比較Ni基合金1〜12および従来合金1〜2からなる厚さ:3mmの薄板をそれぞれ縦:30mm、横:20mmの寸法に切断して溶接無し腐食試験片を作製した。
続いて前記本発明Ni基合金1〜23、比較Ni基合金1〜12および従来合金1〜2からなる厚さ:3mmの薄板をアルゴンアーク溶接器を用いて同材種の突き合わせ溶接を行い、突き合わせ溶接部を含む板から溶接ビードを中央に位置するように縦:30mm、横:20mmの寸法に切断して溶接有り腐食試験片を作製した。これら試験片の表面を研磨し、最終的に耐水エメリー紙#400仕上げの表面研摩したのち、これらをアセトン中超音波振動状態に5分間保持し脱脂した。
保持試験終了後、圧力容器を冷却してから試験片を取出し、浸漬後の腐食溶液中に溶出した元素の定量分析(ICP発光分析による)をし、試験片の単位面積当りに溶出したイオンの総量を測定し、この溶出したイオンの総量を試験片表面積で割り、単位面積当りの溶出量を算出し、その値を表4〜6に示した。
Claims (3)
- 質量%で、Cr:43超〜50%、Mo:0.1〜2%、Mg:0.001〜0.05%、N:0.001〜0.04%、Mn:0.05〜0.5%、B:0.0005〜0.01%を含有し、残部がNiおよび不可避不純物からなり、不可避不純物として含まれるC量を0.05%以下に調整した組成を有することを特徴とする高温加工性に優れかつ金属イオン溶出量が著しく小さい耐食性に優れたNi基合金。
- 質量%で、Cr:43超〜50%、Mo:0.1〜2%、Mg:0.001〜0.05%、N:0.001〜0.04%、Mn:0.05〜0.5%、B:0.0005〜0.01%を含有し、さらに、Fe:0.05〜1.0%およびSi:0.01〜0.1%の内の1種または2種を含有し、残部がNiおよび不可避不純物からなり、不可避不純物として含まれるC量を0.05%以下に調整した組成を有することを特徴とする高温加工性に優れかつ金属イオン溶出量が著しく小さい耐食性に優れたNi基合金。
- 請求項1または2記載のNi基合金からなることを特徴とする医薬品製造プラント部材。
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