JP2005238501A - 多層熱可塑性樹脂成形品の成形装置及びその成形装置によって成形された多層熱可塑性樹脂成形品 - Google Patents

多層熱可塑性樹脂成形品の成形装置及びその成形装置によって成形された多層熱可塑性樹脂成形品 Download PDF

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Abstract

【課題】 予め所定形状に成形された樹脂成形物に対して、溶融された樹脂材料を積層することにより樹脂成形品を成形するに際し、溶融樹脂材料が積層される前段階での樹脂成形物が熱の影響によって変形して製品不良を招いてしまうといった状況を回避できる成形装置及びその成形装置によって成形された多層熱可塑性樹脂成形品を提供する。
【解決手段】 被覆金型2の内部に冷却用金型7を配設しておき、予め所定形状に成形された内層管10Aを冷却用金型7によって冷却しながら搬送した後に、溶融された樹脂材料を積層することで、内層管10Aが金型等から熱を受けても軟化点温度には到達しないようにする。これにより、製品形状の安定化を図ることができる。
【選択図】 図2

Description

本発明は、熱可塑性樹脂で成る複数層が一体化されて成る多層熱可塑性樹脂成形品(多層パイプや多層パネル等)を成形するための成形装置及びその成形装置によって成形された多層熱可塑性樹脂成形品に係る。特に、本発明は、予め所定形状に成形された樹脂成形物(基材)に対して、溶融された樹脂材料が積層されることにより樹脂成形品を成形するに際し、上記溶融樹脂材料が積層される前段階での樹脂成形物の形状を安定的に維持するための対策に関する。
従来より、上下水道配管、給湯用配管、超純水用配管、化学プラント用のライニングパイプ等として、パイプを構成する各層に機能を分離した多層熱可塑性樹脂パイプが利用されている。これら多層熱可塑性樹脂パイプは高精度な形状寸法を有することが性能上重要であり、また、内層肉厚が小さくかつ高寸法精度による安価な構成で成形できることが重要である。
このような高い寸法精度をもった多層成形品を得るためには、従来、樹脂を金型内で合流させる多層共押出による成形方法か、もしくはタンデム方式といわれる被覆成形にて多層成形が行われていた。
しかしながら、多層共押出は金型内で異なった樹脂が合流するため、粘度差や肉厚差が大きい場合に界面荒れが発生し、肉厚精度が保てないといった問題があった。
そこで、タンデム方式として、クロスヘッドダイを用い強固な内層管に外層を被覆する方法が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。また、内層管通過時にニップルにて内層管を冷却することで内外層の融着を防止し、寸法精度を確保した装置も提案されている(例えば、特許文献3参照)。
特開平07−1542号公報 特開2002−337208号公報 特開平09−300424号公報
ところで、上述したタンデム方式の被覆成形を行うための金型の構成としては、内外2つの金型を使用し、内側の金型の内部に内層管を通過させる一方、この内側の金型の外面と外側の金型の内面との間で外層管となる被覆用樹脂の流路を形成しておき、この流路を流れ出てきた熱可塑性樹脂材料(被覆用樹脂)を、内側の金型を通過した内層管の外表面に被覆していくようになっている。
このようなタンデム方式の被覆成形において、高価な樹脂材料によって内層管を構成する場合、この内層管を薄肉にすることでコストの削減を図ることが考えられる。一方、外層管となる樹脂は、上記金型同士の間を流通する際の流動性を確保するために比較的高温度(例えば200〜250℃)に加熱されている。
このような状況で被覆成形が行われた場合、これまでの金型(上記特許文献に開示されている金型)にあっては、外層管となる被覆用樹脂を加熱するための熱が外側の金型から内側の金型に伝達されて内層管が直接加熱されてしまい、この内層管が軟化点温度以上に
なってしまう可能性がある。このように内層管が軟化点温度以上に加熱された状態にあっては内層管が容易に変形してしまい、外層管となる被覆用樹脂の被覆動作を安定して行うことができず、製品不良を招いてしまう。
このような不具合は、多層熱可塑性樹脂パイプの成形時に限らず、熱可塑性樹脂で成る複数層を板状に重ね合わせることにより多層板材を成形する場合にも同様に生じるものである。つまり、予め板状に成形された樹脂パネル基材に対して溶融樹脂材料を積層することで多層パネルを成形するに際し、この溶融樹脂材料を積層する前段階で上記樹脂パネル基材が熱変形してしまった場合には、溶融樹脂材料の積層動作を安定して行うことができず、製品不良を招いてしまうことになる。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、予め所定形状に成形された樹脂成形物に対して、溶融された樹脂材料を積層することにより樹脂成形品を成形するに際し、上記溶融樹脂材料が積層される前段階での樹脂成形物が熱の影響によって変形して製品不良を招いてしまうといった状況を回避できる成形装置及びその成形装置によって成形された多層熱可塑性樹脂成形品を提供することにある。
−発明の概要−
上記の目的を達成するために講じられた本発明の解決手段は、予め所定形状に成形された樹脂成形物に溶融樹脂材料を積層するに際し、溶融樹脂材料が積層される直前に樹脂成形物が金型等から熱を受けても軟化点温度には到達しないように、成形型内で樹脂成形物を予め冷却しておく。つまり、樹脂材料が積層される直前まで樹脂成形物を低温度に維持してその形状の安定化を図るようにしている。
−解決手段−
具体的に、本発明は、予め所定形状に成形された熱可塑性樹脂製の基材を通過させる基材挿通路を有する成形金型を備え、この基材挿通路を通過した基材の表面に、溶融した熱可塑性樹脂を積層して多層熱可塑性樹脂成形品を成形する成形装置を前提とする。この成形装置に対し、上記基材挿通路に、基材を冷却しながらこの基材の搬送をガイドする冷却用金型を配設する。これにより、冷却用金型によって軟化点温度以下に冷却された基材が基材挿通路を通過した後に、この基材の表面に溶融樹脂を積層して多層熱可塑性樹脂成形品を成形する構成としている。
この特定事項により、多層熱可塑性樹脂成形品の成形時には、先ず、予め所定形状に成形された熱可塑性樹脂製の基材が基材挿通路に挿通されていく。このとき、基材は冷却用金型によってガイドされ且つ冷却されながら搬送される。これにより、基材は軟化点温度以下に冷却された状態で基材挿通路を通過し、その直後に、基材の表面に溶融樹脂が積層されて多層熱可塑性樹脂成形品が成形されることになる。このように、基材は、溶融樹脂が積層される直前まで軟化点温度以下に冷却されているため、溶融樹脂が積層される際に金型等から熱を受けても軟化点温度まで温度上昇してしまうことは抑制されることになる。その結果、基材の形状を安定的に維持したまま溶融樹脂の積層が可能になり、熱変形による製品不良の発生を回避することができる。
成形装置によって成形される多層熱可塑性樹脂成形品として、具体的には多層熱可塑性樹脂パイプが掲げられる。この場合の成形装置の構成として具体的には、予め所定形状に成形された内層管の外周面に、溶融された熱可塑性樹脂をクロスヘッド方式で被覆することにより多層熱可塑性樹脂パイプを成形する構成としている。このように本発明を多層熱可塑性樹脂パイプの成形装置に適用した場合には、内層管を低温度に維持してその形状を安定化させた状態で、外層管となる溶融樹脂材料を被覆することが可能になるため、内層
管をより薄形化しながらも多層熱可塑性樹脂パイプの成形ができる。従って、高価な内層管材料を使用した場合であっても製造コストの低廉化を図りながら高精度の多層熱可塑性樹脂パイプを成形できる。
また、上記冷却用金型の配設形態としては、成形金型に対して非接触状態で配設されているか、または成形金型に対して断熱材のみを介在して支持されるようにしている。これによれば、溶融樹脂材料の流動性を確保するために成形金型に与えられている熱が冷却用金型に伝達されてしまうことを大幅に抑制することができ、冷却用金型による基材の冷却効率を高く維持することができる。その結果、冷却用金型としては冷却性能の高いものが必要なくなり、比較的簡素で冷却性能の低い冷却用金型を使用することが可能になる。
尚、上述した解決手段に係る成形装置により成形された多層熱可塑性樹脂成形品も本発明の技術的手段の範疇である。つまり、上記成形装置を使用し、予め所定形状に成形された基材の表面に、溶融された熱可塑性樹脂が積層されることにより成形されている多層熱可塑性樹脂成形品である。
本発明では、成形金型の基材挿通路に冷却用金型を配設しておき、予め所定形状に成形された樹脂成形物を冷却用金型によって冷却しながら搬送した後に、溶融された樹脂材料を積層することで、基材が金型等から熱を受けても軟化点温度には到達しないようにしている。このため、樹脂材料が積層される直前まで樹脂成形物を低温度に維持してその形状の安定化を図ることができ、基材の熱変形による製品不良の発生を回避することができる。また、基材を薄形化しても変形することは殆ど無いため、高価な基材材料を使用した場合であっても製造コストの低廉化を図ることができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。尚、本形態では、多層熱可塑性樹脂成形品として多層熱可塑性樹脂パイプを成形するための装置に本発明を適用した場合について説明する。
−パイプ製造ラインの説明−
図1は、本実施形態に係る熱可塑性樹脂パイプの製造ラインを示す概要図である。この図1に示すように、本製造ラインは、内層管押し込み機1、本発明でいう成形金型としての被覆金型2、サブ押出機3、減圧冷却水槽4、引取機5を備えた構成となっている。
つまり、図示しないメイン押出機において連続的に押し出し成形された本発明でいう基材としての内層管10Aを内層管押し込み機1によって被覆金型2に押し込んでいく一方、サブ押出機3から外層管10B(図3参照)となる被覆用樹脂を被覆金型2に供給し、この被覆金型2の内部において内層管10Aの外周面に被覆用樹脂を一定の厚さで被覆していく。つまり、サブ押出機3において加熱溶融され混練された熱可塑性樹脂が被覆金型2に導入され、内層管10Aの表面に賦形されつつこの被覆金型2より吐出され、サイジングチューブ6及び減圧冷却水槽4(以下、単に「冷却水槽」ともいう)に導入されて成形される。このようにして樹脂が硬化され、二層構造で構成されたパイプ材10は、引取機5によって連続的に引き取られる。また、この製造ラインには冷却チラー9が備えられており、この冷却チラー9と、減圧冷却水槽4及び後述する冷却用金型7が冷却水管91,92により接続されている。つまり、冷却チラー9で生成された冷却水が減圧冷却水槽4及び冷却用金型7に供給され、樹脂材料の冷却に寄与するようになっている。尚、上記被覆金型2の構成及び被覆用樹脂の被覆動作の詳細については後述する。
−被覆金型2の説明−
次に、被覆金型2の構成について説明する。図2は被覆金型2の断面図である。この図2に示すように被覆金型2は、金型本体21、マンドレル22、内型23、外型24、芯合わせ型25が一体的に組み合わされて構成されている。
金型本体21は円筒形状であって、その内部にマンドレル22が挿入されることにより、このマンドレル22の外周面と金型本体21の内周面との間で被覆用樹脂の流動路A1が構成されている。このため、金型本体21には、その外面から内面に亘って樹脂導入路21aが貫通形成されており、この樹脂導入路21aが上記サブ押出機3に接続されている。
マンドレル22は、上記金型本体21の一端部にボルト締結されるフランジ部22aと、金型本体21の内部に挿入されることによって上記流動路A1を構成する円筒部22bとを備えている。この円筒部22bの外周面には略螺旋形状に延びる溝22cが形成されており、サブ押出機3から樹脂導入路21aを経て流動路A1に導入された被覆用樹脂の一部がこの溝22cに沿って流れることにより、流動路A1の全体に亘って均等に被覆用樹脂が流れ込むようになっている。また、このマンドレル22の中心部には内層管10Aを通過させるための挿通空間B1が形成されている。この挿通空間B1の内径寸法は内層管10Aの外径寸法よりも大きく設定されており、内層管10Aの外面がマンドレル22の内面に接触しないようになっている。尚、このマンドレル22の挿通空間B1には後述する冷却用金型7が収容されており、実際には、内層管10Aは、この冷却用金型7の内部を通過するようになっている。
内型23は、上記マンドレル22の先端部(図2における右端部)にねじ込みなどの手段によって取り付けられている。この内型23の中心部には上記マンドレル22に形成されている挿通空間B1に連続する挿通空間B2が形成されている。また、この内型23の外周面は内層管10Aの搬送方向下流側(図2における右側)に向かって外径寸法が次第に小さくなるような先細り状に形成されている。
そして、この内型23において、上記挿通空間B2を形成している内面の形状として、この内面の内径寸法は、内層管10Aの搬送方向下流側に向かって次第に小さくなっていき、その寸法が内層管10Aの外径寸法に略一致した(内層管10Aの外径寸法よりも僅かに大きな寸法になった)点からは内層管10Aの搬送方向下流側に向かってその寸法が一定となる芯出し部となる内層管ガイド面23aとして形成されている。そして、この内層管ガイド面23aにおける内層管搬送方向(内層管の軸心延長方向)の寸法(図2における寸法T1)は0〜20mm(0mm以上20mm以下)に設定されている。この寸法が20mmを越えると、内層管10Aが内型23に接触する時間が長くなってしまって内層管10Aの温度が大幅に上昇し、その内面温度が軟化点温度(以下、Tgで表す)に近づき、良好な寸法精度が得られなくなってしまう可能性がある。この寸法T1として好ましくは5〜10mmである。
また、この内層管ガイド面23aの内径寸法(図2における寸法D)としては、内層管10Aがスムーズに通過でき、更に内層管10Aの軸心位置を維持するため、内層管10Aの外径寸法よりも0.2mm以上且つ1mm以下の範囲で大きく設定することが好ましい。これが0.2mm未満(平均0.1mm以下の隙間)であるときには内層管10Aに曲がりや外径変動があった際に、型内で詰まってしまって良好な成形動作が行えなくなる。また、これが1mmを越えた(平均0.5mm以上の隙間)場合には内層管10Aが最大で1mm動く(軸心のブレが生じる)ため、被覆肉厚調整が困難となり、被覆肉厚精度が悪化してしまう。この寸法Dとして好ましくは内層管10Aの外径寸法よりも0.4mm以上で且つ0.8mm以下である。
外型24は、上記金型本体21の先端部であって内型23の外周囲を囲む位置に装着されている。この外型24は、上記内型23の外周面との間に間隙を有するように擂り鉢状に形成された内周面を備えており、内型23の外周面と外型24の内周面との間に、上記被覆用樹脂の流動路A1に連続する流動路A2を形成している。また、この外型24における金型本体21への取付部分には外周側に突出する段部24aが形成されている。
そして、この外型24は、内層管10Aに対して被覆用樹脂が被覆された後にこのパイプ材10をガイドするためのランド長(被覆金型2内で被覆用樹脂が内層管10Aと接触してから金型吐出されるまでの距離:図2における寸法T2)が0.5〜25mm(0.5mm以上25mm以下)の比較的短い寸法に設定されている。このランド長が短すぎると樹脂材料同士が十分に密着しないため界面にエアが混入したり界面で剥離しやすくなるといった問題が発生する。また、ランド長が長いと被覆樹脂圧力が高くなり、内層管10Aを押しつぶすため、扁平になるなどの不具合が発生する。このランド長として好ましくは0.5〜10mmである。
芯合わせ型25は、上記金型本体21の先端部にボルト止めなどの手段によって取り付けられた断面L字型のリング状部材であって、上記外型24の段部24aに対向する外周側位置に装着されている。また、この芯合わせ型25には、周方向の複数箇所にボルト孔が貫通形成されており、これらボルト孔にボルト25a,25a,…が挿通され、このボルト25aの先端部が外型24の段部24aの外周面に当接されている。このため、各ボルト25a,25a,…のボルト孔に対するねじ込み位置を調整することによって、内型23に対する外型24の位置を微調整することができ、これによって内型23と外型24との芯合わせを高精度で行うことができるようになっている。
本形態では、内層管10Aに被覆用樹脂が被覆されるまでの内層管10Aの内面温度を、内層管10Aを構成する樹脂の軟化点温度より50〜200℃低い状態に設定している。温度差が50℃以下の場合、金型内滞留時間が長いときに金型内で軟化点温度を越えてしまい、内層管10Aが金型2に安定的に送り込まれなくなるなどの不具合が発生する。また、温度差が200℃以上あると、被覆樹脂接触時に密着が不十分になる可能性がある。
そこで、本実施形態では、内層管10Aを、軟化点温度以下で被覆樹脂に接触させるために、冷却水が循環する上記冷却用金型(温度調整金型)7内を通して内層管10Aを冷却して、内層管10Aの内面温度を軟化点温度より50〜200℃低い状態で成形するようにしている。
具体的には、図2に示すように、被覆金型2内に同軸状に冷却用金型7を配置し、内層管10Aが被覆金型2を通過する際に、この冷却用金型7内で内層管10Aが冷却されるようにしている。冷却用金型7は、上記冷却水管91,92より供給される冷却水が金型内を循環することによって冷却される。
この冷却用金型7は、被覆金型2に接触すると被覆樹脂温度が低下して被覆金型2内での流れが乱れるため、図3に示すように断熱材8で熱移動を遮断するか、図4に示すように被覆金型2と非接触(隙間S)に配置するのが好ましい。
上記断熱材8を適用する場合の断熱材料としては、耐熱性と断熱性を兼ね備えているものであれば特に限定されない。例えば、PEEK樹脂等の高耐熱性を有するスーパーエンジニアリングプラスチックや、セラミック等の無機材料が好ましい。また、図4に示すように、冷却用金型7を被覆金型2と非接触に配置する場合には、冷却用金型7に一体的に取り付けられた冷却用金型固定支柱72を被覆金型2以外の部分に接地させる手法などが
採用される。
また、冷却用金型7の冷却方式としては、この冷却用金型7に冷媒が流通する孔が形成されるか、若しくは冷媒が流通する銅管を冷却用金型7に巻き付ける構成が採用される。この冷媒としては、冷却水を使用するのが簡易であり温度制御も容易である。その他にオイルや冷却エアを流通させるようにしてもよい。冷媒が流通する配管は被覆金型2に接触しないように配設する必要がある。これは、被覆金型2に接触してしまうと、冷媒温度が上昇して冷却効果が減少したり、被覆金型2の温度低下を招いて被覆用樹脂の流出が安定して行えなくなる等といった不具合を招くからである。
更に、冷却用金型7の配設位置としては、内層管10Aに対して被覆用樹脂が接触する位置にできるだけ近い位置であることが好ましい。この位置よりも、内層管搬送方向上流側に冷却用金型7が配置された場合には、被覆用樹脂が接触する際の内層管10Aの温度が軟化点温度に近付くことになり、内層管10Aの形状安定効果が減少してしてしまう。
加えて、上記冷却用金型7の長さ寸法は、100mm〜300mmの範囲が好ましい。この長さが100mm未満である場合には、内層管10Aが十分に冷却されず、内層管10Aの形状安定効果が減少してしてしまう。一方、この長さが300mmを越えている場合には、内層管10Aと冷却用金型7との接触距離が長くなり過ぎるため、搬送抵抗が大きくなり、内層管10Aの搬送動作が安定して行えなくなったり、内層管10Aの外面に傷が付き欠陥となる等の不具合を生じることになる。
また、冷却用金型7の内面(内層管10Aと接触する面)は、平滑であり内層管10Aを傷付けない素材であれば特に限定はされない。例えば、テフロン(登録商標)加工を施す等の手法が採用される。また、冷却用金型7の内径は、内層管10Aの外径よりも0.2mm以上且つ1mm以下の範囲で大きく設定することが好ましい。これが0.2mm未満(平均0.1mm以下の隙間)であるときには内層管10Aに曲がりや外径変動があった際に、型内で詰まってしまって良好な成形動作が行えなくなる。また、これが1mmを越えた(平均0.5mm以上の隙間)場合には内層管10Aの形状維持の効果が減少し、被覆肉厚精度が悪化する。この寸法として好ましくは0.4mm以上で且つ0.8mm以下である。このように、冷却用金型7は、内径寸法が内層管10Aの外径寸法に略一致しており、また、被覆金型2と同軸心上に配置されている。このため、この冷却用金型7は、被覆金型2と内層管10Aとの芯を出す役目を持つ。冷却用金型7が内層管10Aの芯を固定するため、被覆金型2の被覆肉厚調整が容易であり、被覆肉厚精度が向上できるようになっている。
冷却用金型7内の冷却水温度は5〜20℃が好ましい。低すぎると冷却用金型7が結露、滴下し、被覆金型2内で蒸発して、被覆樹脂と内層管10A内に気泡として混入するなどの不具合が生じる。また、冷却水温度が高いと十分に冷却されないため、被覆金型2内を通過時に内層管10Aが溶融して、内面平滑な多層熱可塑性樹脂パイプを得ることができない。
また、この隙間Sを減圧することで内層管と被覆樹脂との密着をあげ、界面にエア(空気)の混入を防ぐことができる。
パイプ材10が被覆金型2外に吐出してから冷却水槽4に入るまでの工程のうち、冷却水槽4に入る直前の内層管10Aの内面温度を、内層管10Aを構成する樹脂の軟化点温度以上(Tg以上)、融点以下で成形することが好ましい。軟化点温度以下の場合には、内層管10Aが堅いため冷却水槽4内でサイジングに密着できず、外観が悪化したり、真円度がでないといった不具合が生じる。また、融点以上になると、内層管10Aが溶融し
ているため内層管寸法精度が悪化したり、結晶性樹脂の場合は再結晶するため強度変化や内面平滑性が悪化するなどの不具合が発生する。
上記温度範囲とするための方法としては、被覆された多層管が金型2から吐出された後、冷却水槽4内に送られるまでの距離(エアギャップ)を制御する方法が挙げられる。エアギャップについては、内層管10Aの温度が図5に示すようにTg以上となるために、サイジングまでの距離(エアギャップ)を上昇させることができる。このエアギャップとしては、10mmから500mmが好ましい。短いと十分に内層温度が上昇しないため内層管10Aの内面温度が軟化点温度以上になりにくい。また、長すぎるとエアギャプ中のパイプ重量が増加するため、扁平や折れが発生して肉厚精度がでなかったり、安定して成形できないといった問題が発生する。従って、より好ましい範囲は、20〜200mmである。
また、冷却水槽4内で冷却固化される工程中、内層管10Aの内面温度を、内層管10Aを構成する樹脂の融点以下で成形する。冷却水槽4内で融点以上になると、内層管10Aが溶融しているため内層管寸法精度が悪化したり、結晶性樹脂の場合は再結晶するため強度変化や内面平滑性が悪化するなどの不具合が発生する。
冷却水槽4内の冷却水については、液体が固化しなければ冷却媒体の温度は低いほどよい。たとえば水を用いた場合、5℃から10℃が好ましい。
また、冷却水槽4内の真空圧については、真円度を向上させるため、−0.02から−0.1MPaあればよい。真空圧が高すぎるとサイジングチューブ6との摩擦が大きくなり、引き取り困難になるなどの不具合が生じる。また、低すぎると真円度が確保できないといった問題が生じる。
温度の測定方法は、内層管内に熱電対を張り付け、被覆金型へ挿入することで測定することができる。融点の測定は、DSC法を用いて行う。また、軟化点温度(HDT)は、ASTM D648を用いて測定することができる。
一方、冷却水槽4には、サイジングプレート44と噴霧ノズル45が設けられ、噴霧ノズル45より水がスプレーされるとともに冷却水槽4全体は減圧されてパイプが効率よく冷却され熱可塑性樹脂パイプが成形される。
上記サイジングチューブ6の材質としては、特に限定されないが、熱伝導が良い点で、ステンレス、真鍮、銅などを用いるのが好ましい。
また、被覆樹脂が内層管10Aに接触する際の温度は、内層管10Aを構成する樹脂の軟化点温度より50〜200℃高い温度とするのが好ましい。軟化点+200℃以上であると、内層管10Aが溶けやすくなり、この工程における内層管内面温度が軟化点以下になりにくい。また、冷却用金型7が暖まりすぎて冷却効率が下がる。一方、軟化点+50℃以下だと、内層管内面を軟化点以上にしにくくなる。軟化点以上にならないと、サイジングに密着せず、外観不良をおこすことがある。
−樹脂材料−
本実施形態において内層管及び被覆用樹脂として用いられる熱可塑性樹脂は、特に限定されないが、耐薬品性、柔軟性が良好なことより、塩化ビニル性樹脂やポリオレフィン系樹脂が好適に用いられる。
上記ポリオレフィン系樹脂としては、特に限定されず、例えばエチレン、プロピレン、
またはα−オレフィン等の重合体が挙げられる。α−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ペプテン、1−オクテン等が挙げられる。
これらの重合体としては、例えば、エチレンの単独重合体、エチレンとプロピレンの共重合体、エチレンとα−オレフィンの共重合体、プロピレンの単独重合体、プロピレンとα−オレフィンの共重合体、ポリブテンの単独重合体、ポリイソプレンの単独重合体等が挙げられる。また、これらのポリオレフィン類は、得られる物性を考慮した上で、適当な組み合わせにてブレンドされていても構わない。
また、本発明に用いるポリオレフィン系樹脂の分子量及び分子量分布は特に制限されず、重量平均分子量は、通常5,000〜5,000,000、好ましくは20,000〜300,000であり、分子量分布(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)が2〜80、好ましくは3〜40である。
また、超純水用パイプとして用いられる樹脂としては、フッ素系樹脂が挙げられ、フッ素系樹脂としては、従来公知のフッ素系樹脂を用いることができる。具体的には、ポリフッ化ビニリデン(PVDF;融点160〜180℃)、ポリビニルフルオライド(PVF:融点206℃)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE:融点330℃)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP:融点250〜280℃)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA:融点300〜310℃)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE:融点260〜270℃)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE:融点210℃)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(EPE:融点290〜300℃)、ポリエチレン(PE:融点95〜135℃)などが挙げられる。
本発明に用いる熱可塑性樹脂には適宜、他種の高分子化合物がアロイ化またはブレンドされていても構わない。
本発明に用いられる熱可塑性樹脂には適宜添加剤が添加されていても構わない。酸化防止剤、耐光剤、紫外線吸収剤、滑剤等、難燃剤、帯電防止剤等の添加剤は、所望の物性を得る為に適宜用いられる。結晶核剤となり得るものを少量添加して結晶を微細化し、物性を均一化または平滑性の向上を補助することも可能である。
本発明のパイプの形状については、内層管の肉厚は0.1〜3mmが好ましい。3mm以上のときは、内層管が高価な樹脂のときにコストが高くなるといった不具合が生じる場合がある。また、内層管の肉厚が厚くなると、肉厚方向や周方向に温度分布が発生して水槽内におけるサイジングへの密着が悪くなり、外観が悪くなることがある。また、0.1mm以下のときは、内層管の肉厚が薄く安定的に金型通過できないため成形が困難なときがある。
被覆する外層の肉厚としては、外層と内層の肉厚比が3以上(3:1)10以下が好ましい。3以下のときは、最終製品が十分な肉厚にならないため強度が低いといった問題や、被覆樹脂が直接冷却され内層管に密着しにくいことがあり、また10以上のときには、外層肉厚精度が安定して得られにくい。
次に、本発明の好適な実施例について説明する。
熱可塑性樹脂としてPE(旭化成製「QB780」)をφ40mm押出機(プラスチック工学研究所製「UT40」)に投入し、被覆樹脂温度200℃で3.0mm被覆成形した。内層管は外径20mm肉厚1.0mm肉厚標準偏差0.011mmのPVDF(呉羽化学社製「KF1100」)樹脂で成形されたパイプを用いた。図3に示す温度調整金型7を用いて冷却させて、ランド長T2が0.5mm、内層管通過孔径Dが20.5mm、内層管通過平行部(内層管ガイド面)の長さT1が10mmの被覆金型2に通した。このとき、冷却水槽4ならびに冷却用金型7内を循環する冷却水の温度は15℃、真空圧は−0.05MPa、エアギャップは150mmであった。
このパイプの肉厚精度を測定した結果、内層管は肉厚標準偏差0.011mmであり、被覆層は肉厚標準偏差0.011mmであり、また真円度は0.8%であった。また外観は良好であった。
真円度の測定方法は、基準点から45°ずつ4点の直径を測定し、その最大と最小の差異を基準外径で除した割合(下式(1))で測定した。
(最大直径−最小直径)/基準直径×100…(1)
(比較例1)
ランド長30mm、内層管通過孔径Dが20.5mm、内層管通過平行部(内層管ガイド面)の長さが10mmの被覆金型2を使用したこと以外は、上記実施例1と同等の条件で成形した。この場合、内層管が溶解し、被覆成形することができなかった。
−その他の実施形態−
上述した実施形態では、メイン押出機において連続的に押し出し成形された内層管10Aに対して被覆用樹脂を連続被覆していく場合(連続成形)について説明したが、予め所定長さに成形された内層管を被覆金型2に押し込んで所定長さの多層熱可塑性樹脂パイプを成形する場合(バッチ式成形)にも本発明は適用可能である。
また、内層管10Aと外層管10Bとの間に異物が混入しないように、被覆金型2の直上流側に内層管洗浄機を設置してもよい。この内層管洗浄機としては、例えば内層管10Aに高圧エアを吹き付けるものや、洗浄水による洗浄の後に内層管10A外面を乾燥させる構成のもの等が採用可能である。
更に、上記実施形態では、多層熱可塑性樹脂パイプを成形するための装置に本発明を適用した場合について説明したが、予め板状に成形された樹脂パネル基材に対して溶融樹脂材料を積層することで多層パネルを成形する装置にも本発明は適用可能である。
また、本発明が対象とする多層熱可塑性樹脂成形品は、2層構造のものに限らず3層以上の構造のものも含まれる。
実施形態に係る熱可塑性樹脂パイプの製造ラインを示す概要図である。 被覆金型の断面図である。 被覆金型及び冷却水槽の一例を模式的に示す断面図である。 被覆金型及び冷却水槽の他の例を模式的に示す断面図である。 実施形態における内層管内面温度の変化を示す図である。
符号の説明
2 被覆金型(成形金型)
7 冷却用金型
8 断熱材
10 パイプ材(多層熱可塑性樹脂成形品)
10A 内層管(基材)
10B 外層管

Claims (4)

  1. 予め所定形状に成形された熱可塑性樹脂製の基材を通過させる基材挿通路を有する成形金型を備え、上記基材挿通路を通過した基材の表面に、溶融した熱可塑性樹脂を積層して多層熱可塑性樹脂成形品を成形する成形装置において、
    上記基材挿通路には、基材を冷却しながらこの基材の搬送をガイドする冷却用金型が配設されており、この冷却用金型によって軟化点温度以下に冷却された基材が基材挿通路を通過した後に、この基材の表面に溶融樹脂を積層して多層熱可塑性樹脂成形品を成形するよう構成されていることを特徴とする多層熱可塑性樹脂成形品の成形装置。
  2. 請求項1記載の多層熱可塑性樹脂成形品の成形装置において、
    多層熱可塑性樹脂成形品は多層熱可塑性樹脂パイプであって、予め所定形状に成形された内層管の外周面に、溶融された熱可塑性樹脂をクロスヘッド方式で被覆することにより多層熱可塑性樹脂パイプを成形するよう構成されていることを特徴とする多層熱可塑性樹脂成形品の成形装置。
  3. 請求項1または2記載の多層熱可塑性樹脂成形品の成形装置において、
    冷却用金型は、成形金型に対して非接触状態で配設されているか、または成形金型に対して断熱材のみを介在して支持されていることを特徴とする多層熱可塑性樹脂成形品の成形装置。
  4. 請求項1、2または3記載の成形装置を使用し、予め所定形状に成形された基材の表面に、溶融された熱可塑性樹脂が積層されることにより成形されていることを特徴とする多層熱可塑性樹脂成形品。
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