◆本発明の第1の観点によれば、以下のように構成する、繊維機械が提供される。機台長手方向に沿って複数並べて設置されるとともに、ボビンに糸を巻き取ることによりパッケージを形成可能な糸処理ユニットと、前記糸処理ユニットの並べられる方向に沿って走行し、満巻パッケージを前記糸処理ユニットから取り外して、空ボビンを前記糸処理ユニットに装着することが可能な玉揚台車と、を備える。前記玉揚台車の走行路は、糸処理ユニットの糸走行側を機台前面側としたときに、糸処理ユニットより機台前面側の位置に配置されている。前記玉揚台車は、空ボビンを貯溜可能なストッカを備え、且つ、台車の底面及び前記糸処理ユニット側を向く面を除いた面のいずれかに前記ストッカに連通する空ボビン投入口を備えている。
この構成によれば、玉揚台車の走行路が糸処理ユニットより機台前面側の位置に配置されており、その底面や前記糸処理ユニット側を向く面を除いた面のいずれかにストッカに連通する空ボビン投入口を備えているので、機台正面側に立つ作業者が空ボビンを空ボビン投入口へ手作業で投入してストッカへ貯溜させることも容易である。従って、玉揚台車への空ボビンの供給が容易になり、玉揚台車が例えば走行路の所定位置(空ボビン補給位置)まで走行しなくても、空ボビンを玉揚台車に補給することができる。
これにより、ストッカから空ボビンを取り出して使用する玉揚作業など、玉揚台車の停止中に、空ボビン投入口に空ボビンを投入し、ストッカに補充することが可能となる。従って、ストッカの補充の機会が増えるので、ストッカの残量がゼロになる場合が少なくなり、作業の効率が向上する。また、玉揚台車が停止しているときは空ボビン投入口への空ボビンの投入も容易であり、投入の失敗を少なくできる。
これにより、走行している玉揚台車の空ボビン投入口に対し、空ボビンを投入し、ストッカに補充することも可能である。従って、ストッカの補充の機会が増えるので、残量がゼロになる場合が少なくなり、作業の効率が向上する。
◆前記の繊維機械においては、以下のように構成することが好ましい。前記玉揚台車の前記投入口及び前記ストッカは、前記糸処理ユニットに空ボビンを装着する際のボビンの向きとほぼ一致した状態で空ボビンを投入あるいは貯溜可能な形状である。前記玉揚台車は、前記ストッカにて貯溜された空ボビンを該ボビンの向きを維持したまま把持しつつ糸処理ユニットまで案内可能なボビン案内手段を備える。
これにより、空ボビンを、空ボビン投入口に投入された向きのまま、ストッカに貯溜し、ボビン案内手段によって糸処理ユニットに装着することができる。従って、空ボビン投入口にボビンを投入する向きを一定にすることで、各糸処理ユニットに装着される空ボビンの向きを揃えることができる。また、玉揚台車に空ボビンの向きを変更するボビン方向変換手段などの特別な構成を設ける必要がなく、構成を簡素化できる。
◆前記の繊維機械においては、以下のように構成することが好ましい。前記玉揚台車の投入口に空ボビンを払出可能な払出口を有する空ボビン供給装置を備える。前記払出口は、前記玉揚台車の所定の停止位置における前記空ボビン投入口と対向する位置にある。
これにより、作業者の手が空いているときには前述のような空ボビンの手作業の供給を行って、作業者が忙しいときには玉揚台車を空ボビン供給装置まで走行させて供給を受ける、というように、玉揚台車への空ボビンの供給態様が増える。この結果、確実で、柔軟且つ素早い空ボビンの供給が可能になる。
◆前記の繊維機械においては、以下のように構成することが好ましい。前記玉揚台車は、前記ストッカの空状態を検知するボビン貯溜状態検知手段と、前記空ボビン投入口への空ボビンの投入を検知する投入検知手段と、を備えている。前記玉揚台車は、前記ボビン貯溜状態検知手段及び前記投入検知手段の検知結果に基づいて前記払出口への玉揚台車の走行又は走行中止を制御する制御手段を備えた。
即ち、玉揚台車のストッカが空になると、玉揚台車はそれをボビン貯溜状態検知手段によって検出し、空ボビン供給装置の払出口に向かって走行することとなるが、その走行中に前記空ボビン投入口に空ボビンが例えば作業者によって投入されれば、その時点で玉揚動作が再び可能になる。本構成はそれを投入検知手段で検知して払出口への走行を中止することで、玉揚要求が発生している糸処理ユニットへ素早く向かって玉揚作業をすることができる。
◆前記の繊維機械においては、以下のように構成することが好ましい。前記空ボビン供給装置の前記払出口には開閉部材を備え、この開閉部材が閉じているときには、開閉部材の位置に空ボビンを待機させることができるように構成する。前記玉揚台車がその空ボビン投入口を前記空ボビン供給装置の前記払出口に対向させる位置に停止したことを検知する台車位置検知手段と、該台車位置検知手段の検知結果に基づいて前記開閉部材の開閉を制御する制御手段を設けた。
これにより、開閉部材が閉じている段階で予め払出口に空ボビンを待機させておき、玉揚台車が空ボビン補給のために空ボビン供給装置に到着したときは、開閉部材が開くよう制御されることによって、待機させていた空ボビンを払出口から空ボビン投入口へ素早く払い出すことができる。従って、空ボビンの供給に必要な時間を短縮できる。
◆前記の繊維機械においては、以下のように構成することが好ましい。前記空ボビン供給装置は、複数の空ボビンを貯溜する貯溜部と、この貯溜部から前記払出口へ空ボビンを搬送するための搬送経路と、空ボビンを待機させることが可能となるように前記搬送経路の途中に設置された中継部と、を備えている。前記払出口及び前記中継部のそれぞれには、空ボビンの有無を検知する検知手段が備えられている。前記払出口や前記中継部に空ボビンがないことが前記検出手段によって検出されると、そこから搬送経路の直ぐ上流側の前記中継部又は前記貯溜部から空ボビンを下流に搬送するように制御する制御手段を設けた。
これにより、貯溜部から払出口への搬送経路を長くせざるを得ない場合でも、その搬送経路の途中の中継部に空ボビンを待機させておき、払出時はその中継部から払い出すことで、特に複数個の空ボビンを玉揚台車に供給するために必要な時間を短縮できる。
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。図1は本発明の一実施形態に係る紡績機の全体正面図、図2は同じく縦断右側面図、図3は玉揚台車を示す要部斜視図である。
図1は、並設された多数の紡績ユニット(糸処理ユニット)2を備えた、繊維機械としての紡績機1を示している。この紡績機1には、紡績ユニット2が並べられる方向に走行自在に設けられた糸継台車3と、この糸継台車とは独立に走行自在に設けられた玉揚台車4と、ブロアボックス80と、原動機ボックス81と、が装備される。
図1に示すように、各紡績ユニット2は、ドラフト装置7と、紡績装置9と、糸送り装置11と、巻取装置12と、を主要な構成として有している。ドラフト装置7は紡績機1本体のケーシング6の上端近傍に設けられており、このドラフト装置7から送られてくる繊維束8を紡績装置9で紡績するように構成している。紡績装置9から排出された紡績糸10は糸送り装置11で下方へ送られ、糸の欠陥を検出して糸切断を行い糸欠陥部分を除去するためのクリアラー(糸欠陥検出器)52を経て、巻取装置12によって巻き取られ、パッケージ45を形成する。
ドラフト装置7は図2に示すように、スライバ13を延伸して繊維束8にするためのものであり、バックローラ14、サードローラ15、エプロンベルト16を装架したミドルローラ17及びフロントローラ18の4つのローラから構成されている。
また糸送り装置11は、紡績機1本体のケーシング6に支持されたデリベリローラ39と、デリベリローラ39に接離自在に設けられたニップローラ40とからなる。紡績装置9から排出された紡績糸10をデリベリローラ39とニップローラ40との間に挟んでデリベリローラ39を回転駆動させることにより、紡績糸10を巻取装置12側へ送るようになっている。
巻取装置12は、ボビン48の軸方向両端を回転可能に支持するクレードルを構成する二本のアーム83・84(図1参照)と、ボビン48やパッケージ45を回転駆動させるための駆動ドラム79(図2参照)と、を主要な構成として備えている。このクレードルに対しては図1に示すように、ボビン48を機台長手方向に沿うように向けた状態で装着可能である。二本のアーム83・84の下端部はケーシング6に枢支されており、正面側(図1の紙面手前側、図2の紙面左側)に倒れるように回動可能である。このアーム83・84には図示しない付勢バネが弾設されて、起立方向の付勢力を常時アーム83・84に加えている。従って、アーム83・84に支持されるボビン48あるいはパッケージ45の周面が前記駆動ドラム79に押し付けられることによって、ボビン48あるいはパッケージ45は駆動ドラム79の駆動力を受けて回転する。ボビン48に紡績糸10が巻かれてパッケージ45が巻き太るに従って、アーム83・84は図2の鎖線に示すように正面側に倒れ、パッケージ45の軸の位置が前方へ移動する。駆動ドラム79は定速で回転駆動されているので、パッケージ45が巻き太っても、その巻取速度(周速度)は一定に保たれる。
図1に示すように、巻取装置12の一側のアーム83は、他側のアーム84に対し接離方向に傾動可能に構成される。またこのアーム83は、図示しないバネによって、他側のアーム84に近づく方向に付勢されている。従って、紡績糸10の巻取時にはバネ力によってボビン48を両アーム83・84の間に挟持できる一方、ボビン48に紡績糸10が巻かれてパッケージ45が満巻となったときは、アーム83を他側のアーム84から離れる方向に傾けて上記挟持状態を解除することで(図1の鎖線)、満巻のパッケージ45を巻取装置12から取り外すことができる。この満巻パッケージ45の取外しは、前記一側のアーム83の延出状の先端部を、前記玉揚台車4のクレードル操作アーム90が押動することにより行われる(詳細は後述する)。
糸継台車3は図1や図2に示すように、台車42と、この台車42に設けられたノッター又はスプライサ等の糸継装置43と、台車42に俯仰自在に設けられ、軸を中心に旋回しながら、紡績装置9から排出され糸送り装置11を通過した糸端を吸い込みつつ捕捉して糸継装置43へ案内するサクションパイプ(紡出側糸端捕捉案内手段)44と、台車42に俯仰自在に設けられ、軸を中心に旋回しながら、巻取装置12に回転自在に支持されたパッケージ45から糸端を吸引捕捉して糸継装置43へ案内するサクションマウス46と、を有している。
図2に示すように、前記ケーシング6の後部側(紡績ユニット2で糸が上下に走行しているその後部側)の内部には、前記糸継台車3の走行空間50が構成されている。この走行空間50は、前記紡績ユニット2の並べられる方向に沿って、細長く形成されている。この走行空間50の上部と下部にレール41が配設されるとともに、前記台車42の下部には走行輪49が備えられている。この構成で糸継台車3は、前記レール41によってその走行方向を案内されながら、走行輪49の駆動によって走行空間50の内部を走行できるようになっている。
玉揚台車4は前記糸継台車3とは独立して設けられており、図1や図2に示すように、紡績機1本体の前部に設けられた走行路86に沿って走行できるようになっている。玉揚台車4の走行路86は前記糸継台車3の走行空間50と同じく、紡績ユニット2の並べられる方向に沿って細長く設けられている。
玉揚台車4は図1や図2に示すように、前記走行路86上を走行輪87によって走行可能な台車ケーシング85を有している。この台車ケーシング85には、空のボビン48を貯溜するストッカ55や、バンチ巻における糸捕捉手段としてのサクションパイプ88や、チャッカ89や、クレードル操作アーム90や、バンチ巻駆動アーム91を備えている。サクションパイプ88は、紡績装置9から排出される糸端を吸い込みながら捕捉して前記巻取装置12まで案内するために、前記台車ケーシング85に俯仰自在かつ伸縮自在に設けられる。チャッカ89は、前記ストッカ55に貯溜されている空のボビン48を前記巻取装置12に供給するためのボビン案内手段であって、前記台車ケーシング85に回動自在に設けられている。クレードル操作アーム90は、前記巻取装置12のアーム83の先端を操作するために、前記台車ケーシング85に回動自在に設けられている。更にはバンチ巻駆動アーム91は、空のボビン48に紡績糸10を巻き始める初期のバンチ巻を行わせるために、前記台車ケーシング85に回動自在に設けられている。
図1〜図3に示すように、台車ケーシング85の適宜位置にはドグセンサ(台車位置検知手段)53が設けられており、このドグセンサ53は、各紡績ユニット2や後述する空ボビン自動供給装置82に位置を合わせて走行路86に設けられたドグ54を検出できるようにしている。このドグセンサ53及びドグ54は、台車ケーシング85を各紡績ユニット2や払出口116の位置に停止させる際の位置決めに用いられる。
図2に示すように、前記玉揚台車4の走行路86より更に前側には、満巻パッケージ45の載置エリア95が設定されている。即ち、前記紡績ユニット2が並べられる方向に直交する方向(図2の紙面左右方向)において、玉揚台車4の走行路86が、前記満巻パッケージ45の載置エリア95と前記紡績ユニット2との間の位置に配置されており、且つ、紡績ユニット2の糸走行側を前面側として、前記玉揚台車4の走行路86と載置エリア95とが前面側に配置されている。
玉揚台車4の台車ケーシング85は図1に示すように正面視門型に構成するとともに、パッケージ通路93を備えている(図3も併せて参照)。このパッケージ通路93は図2に示すように、前記載置エリア95に近づくにつれて低くなる傾斜床94を備えている。この構成で、前記巻取装置12から取り外された満巻パッケージ45は、パッケージ通路93の内部を前記傾斜床94上を転がって貫通し、載置エリア95に形成される浅い溝96に落ちて静止する。こうして載置エリア95に移動した満巻パッケージ45は作業者によって回収され、次工程へ送られる。なお、載置エリア95にコンベア等の搬送手段を配置し、次工程へ自動的に搬送する構成としても構わない。
台車ケーシング85はストッカ55を備えている。このストッカ55は図2に示すように、空ボビン48を複数個貯溜可能な収容室56を備え、この収容室56は屈曲しながら概ね上下方向に延びた形状としている。収容室56の上端は台車ケーシング85の上面に開口57を形成しており、この開口57が空ボビン投入口を構成している。収容室56の前後幅(前記走行路86に直交する方向の幅)はボビン48の外径よりやや大きい程度に設定しており、空ボビン48は、その軸線を前記走行路86と略平行な方向に向けながら、上下方向に一列に並んだ状態で収容室56に収容される。
前記空ボビン投入口57は図3に示すように、機台長手方向に細長く形成された開口として形成されている。従って、空ボビン投入口57に対して空ボビン48を、図3や図2の鎖線に示すように所定の向きに向けて投入することができる。なお、空ボビン48の前記所定の向きは、本実施形態では、ボビン48が図1の如く巻取装置12に装着される向きとほぼ一致する向きとしている。また前記ストッカ55の収容室56は上下方向に延びて形成されるとともに、機台長手方向にも細長く形成されている。従ってストッカ55は、前記空ボビン投入口57に投入されたボビン48を、各ボビンの向きをほぼ変えずに、縦方向に複数貯溜することができる。
この空ボビン投入口57は、玉揚台車4の走行中、玉揚作業中を問わず、常に開放されている。また、玉揚台車4の走行路86は紡績ユニット2よりも前面側に設けられているので、機台正面側の作業者からみた場合に、玉揚台車4や空ボビン投入口57が、紡績ユニット2を走行中の紡績糸10によって隠れない(図1参照)。従って、玉揚台車4の走行中あるいは玉揚作業中に、機台正面側で作業をする作業者が手持ちの空ボビンを空ボビン投入口57から投入することで、玉揚台車4のストッカ55に空ボビン48を補給することも容易である。
前記収容室56の下端部(収容室56におけるボビン供給方向の最下流部)には保持部材58が配設されており、この保持部材58によって、収容室56の最下端部に位置する1個のボビン48の周面を支持可能としている。この保持部材58は例えば板バネで構成されている。
前記保持部材58の上側には送出部材59が設けられている。この送出部材59は「V」字状に屈曲されたアームとして構成されており、その屈曲部分が台車ケーシング85に枢支されている。送出部材59は台車ケーシング85に設けられた図示しない駆動機構(本実施形態では、空気圧シリンダ)により所定の角度範囲で揺動し、1回の揺動によって、1個のボビン48を下流の前記保持部材58側へ送り出すことができる。
更に、前記収容室56の下端部には、ボビン48の有無を検出する第1センサ61(ボビン貯溜状態検知手段)が設けられている。更に、前記空ボビン投入口57付近にも、ボビン48の有無を検出する第2センサ62(投入検知手段)が設けられている。これらのセンサ61・62としては、例えば、LEDを用いた非接触式の光電型近接スイッチを用いることができるが、これに限定されない。
次に、上記玉揚台車4に対して空ボビン48を供給するための空ボビン自動供給装置82について、図1、図4、図5、図6を主に参照して詳細に説明する。図4は紡績機の左側面図、図5は空ボビン自動供給装置の部分を示す要部背面図である。図6は空ボビン自動供給装置のペグの要部拡大斜視図である。
この空ボビン自動供給装置82は、図4等に示すように、前記原動機ボックス81の背面に設置された貯溜部65と、この貯溜部65の空ボビン48を機台前方側へ送るコンベア66と、コンベア66で前方に送られた空ボビン48を落下させるシュート67と、シュート67の下端の払出口116を開閉する開閉扉(開閉部材)68と、を主要な構成として備えている。
貯溜部65について説明する。図4・図5に示すように、この貯溜部65は、背面側を開放された箱状のケース69を有している。このケース69の内部には、図5の背面図に示すように、駆動スプロケット70、及び、複数の従動スプロケット71が回転自在に支持されている。これらスプロケット70・71に対し、無端状のチェーン72が折返し状の軌道を形成しながら巻き掛けられている。駆動スプロケット70には、ケース69に設けられたチェーン駆動ユニット74の図示せぬモータの駆動力が伝えられる。このチェーン72には、空のボビン48を差し込んで保持させるための多数本のペグ73が等ピッチで並べて突設される。
このペグ73のチェーン72への取付構成について、図6の要部拡大斜視図を参照して説明する。即ち、ペグ73の取付位置において、前記チェーン72のリンクプレート98には取付部材75が固定され、この取付部材75に棒状の前記ペグ73が一体的に突出形成されている。このペグ73の軸線は水平とされており、チェーン72のリンクプレート98同士を連結するピン99の軸線と、一致するように設けている。
図6に示すように取付部材75は円柱状の部分を有して構成されているとともに、その円柱状部分の側面には円環状のガイド溝75gが形成されている。このガイド溝75gは、ケース69に設置されたガイド板51(図4・図5)の溝(前記チェーン72の軌道に沿って設けられている)に嵌合している。この構成により、片持ち状にチェーン72に支持されるペグ73のグラツキを防止している。
図5に示すように前記チェーン72は、鉛直平面内で複数回往復するように折返し状に配置されているので、小さいスペースに多数個の空ボビン48を貯溜できる。また、ペグ73は水平な細長い棒状のものとして構成されているから、本実施形態の巻取装置12で使用されているコーン巻用ボビン(大径側・小径側を有する円錐台筒状のボビン)のみならず、円筒状のチーズ状のボビンも掛けることができる。更に本実施形態では、ケース69を縦長状に形成し、チェーン72が縦方向に往復するように折り返して配置されているので、折返し往復距離を長くすることでチェーン長(ペグ73の数、即ち、ボビン48の最大収容数)を大きく確保できる一方、従動スプロケット71を少なくでき、部品点数とコストを低減できる。
また、図6に示すように、前記ペグ73の軸線73cは前記ピン99の軸線99cと一致しており、このことからペグ73は、チェーン72の中心線72cに直交する。このようにペグ73がチェーン72の中心線72c上に設けられているので、実公平6−38050の第3図のようにペグがチェーンの中心線から一側にオフセットされて設けられている構成に比較して、チェーン72のターン部(スプロケット70・71に巻回される部分)において、隣り合うペグ73同士の間隔が過剰に狭くなったり広くなったりしない。従って、隣り合うペグ73に差し込まれた空ボビン48同士が互いに衝突したりするトラブルを防止できる。
図5に示すように、前記ケース69の所定の位置(以下、「抜取位置」と称する。)60には、抜脱部材76が設けられている。この抜脱部材76は図4に示すように、水平に設置された抜取シリンダ77のシリンダロッドに取り付けられている。この構成で前記抜脱部材76は、抜取シリンダ77の図4に図示する縮退状態のときは前記ペグ73の根元部近傍に位置しているが、抜取シリンダ77が伸長するのに伴って、ペグ73の突出方向に沿って水平に移動する。従って、空ボビン48を掛けたペグ73をチェーン駆動ユニット74を駆動することで前記抜取位置60まで移動させた上で、前記抜取シリンダ77を伸長駆動することで、前記抜脱部材76が空ボビン48の軸端を押動して、空ボビン48をペグ73から抜くことができる。ペグ73から抜かれた空ボビン48は、前記ケース69の機台後方側に設けられたガイド斜面78(図5)に落下し、このガイド斜面78上を転がって、前記ケース69の側部に設けられたコンベア66上で、当該コンベア66の側部に設置された受け部材63に受け止められて静止する(図5の鎖線)。
なお本実施形態では、空ボビン48の軸端に抜脱部材76を接当させて押し出しやすいように、空ボビン48はペグ73に対し、大径側がペグ73の根元にくるように図4や図6の如く掛けることとしている。また、本実施形態ではチェーン72の駆動方向を図5の太線矢印方向となるように設定しており、空ボビン48は図5に示すように、前記抜取位置60よりチェーン搬送上流側に1つずつ掛けることとしている。
前記コンベア66は図4に示すように、その長手方向を機台前後方向に向けて設置されており、機台後部側に設けられたコンベア駆動ユニット97の図示せぬモータによって駆動される構成となっている。コンベア66後端上に置かれた空ボビン48は、コンベア66の駆動によって機台前方側へ送られる。
図4に示すように、コンベア66の前端側には、空ボビン48の向きを変えながら1個ずつシュート67へ送るためのシュート中継部111が設置されている。図1・図4に示すように、このシュート中継部111は、中継ケース112と、中継ケース112に固定される送出シリンダ113と、この送出シリンダ113のシリンダロッドに固定されるとともに前記中継ケース112の内部で往復移動自在に支持される送出体114と、を有している。
図1に示すように、前記送出体114は下方を開放した箱型に構成しており、送出シリンダ113が図1に示す縮退状態にあるときは、コンベア66によって機台前方へ搬送される空ボビン48が送出体114の内部に送り込まれるようになっている。一方、送出シリンダ113が伸長駆動されると、送出体114が、内部に空ボビン48を収容した状態で水平方向にスライドし、コンベア66上の空ボビン48を、コンベア66側部に設けられた落下孔115に落下させるようにしている。この落下孔115は前記シュート67に接続しており、これによって空ボビン48をシュート67に送り出すことができる。
図1や図4に示すように、シュート67は、機台前側かつ右側が下方となるような斜状のシュートとして構成しており、その下端(下流側端部)には払出口116が備えられている。この払出口116は、前記玉揚台車4の空ボビン投入口57に対し、上下方向に対向可能としている。
なお、前記落下孔115の開口部の端部には図示しない向き変更板が設けられており、送出体114によってボビン48が落下孔115に落下する際に、ボビン48の大径側のみが前記向き変更板の上に乗るように当たることで、ボビン48は小径側が下側(先頭)となるようにその姿勢を変更されながらシュート67内を落下する。従って、ボビン48は上記姿勢でシュート67内を落下した後、ボビン48は一側が小径側となるような向きで開閉扉68の上に水平に置かれて待機することとなり、この待機向きは、空ボビン投入口57に空ボビン48を投入する向き、即ち、ボビン48が玉揚台車4によって前記巻取装置12に取り付けられる向き(図1を参照)に一致する。開閉扉68は図4に示すように一対の部材からなり、開閉駆動手段としての払出シリンダ64によって開閉駆動可能な構成となっている。
なお、前記払出口116には、開閉扉68上の空ボビン48の有無を検出する払出口センサ131が設けられる。また、中継ケース112の内部には、送出体114の内部にコンベア66上の空ボビン48が到着したか否かを検出するコンベア終端センサ132が設けられる。更に、前記コンベア66の搬送始端側(前記受け部材63が設けられている地点)には、コンベア66の始端上に空ボビン48が乗っているか否かを検出するコンベア始端センサ133が設けられる。加えて、前記貯溜部65の抜取位置60には、当該抜取位置60のペグ73に空ボビン48が掛けられているかを検出する抜取位置センサ134が設けられる。上記センサ131〜134については、例えば、LEDを用いた非接触式の光電型近接スイッチを用いることができる。
貯溜部65の適宜位置(抜取位置60からやや離れた位置)には、供給不足センサ135が設けられている。この供給不足センサ135は、抜取位置60から若干離れた位置にあるペグ73にボビン48が掛けられていないことを検出することで、貯溜部65に貯溜された空ボビン48の残量が少ないことを検出し、アラームとして作業者に報知できるようになっている。
次に、以上に示した紡績機1本体、糸継台車3、玉揚台車4、空ボビン自動供給装置82の電気的構成を図7を参照して説明する。図7は紡績機の電気的構成を示すブロック図である。
図7に示すように、紡績機1本体は制御装置151を備え、この制御装置151は、多数並べられた前記紡績ユニット2のそれぞれを制御する。また紡績機1本体の制御装置151は、糸継台車3の制御装置152、玉揚台車4の制御装置153、空ボビン自動供給装置82の制御装置154に対し、信号線を介して接続されており、各制御装置152・153・154に対して指令を送って制御するように構成している。
糸継台車3は図7に示すように、前述の糸継装置43のほか、台車42の走行輪49(図1・図2参照)を駆動する走行モータ301や、前記サクションパイプ44やサクションマウス46や糸継装置43(図1・図2参照)などを駆動する糸継動作用駆動モータ群302や、各紡績ユニット2ごとに設けられた図略のドグを検知するためのドグセンサ303、等を備えている。糸継台車3の制御装置は、糸継要求のあった紡績ユニット2に対し走行モータ301を駆動することで台車42を走行させ、ドグセンサ303の検知結果に基づいて、当該紡績ユニット2に台車42を位置決めして停止させる。また、糸継動作用駆動モータ群302により、サクションパイプ44やサクションマウス46を駆動して糸端を糸継装置43に案内した後、糸継装置43を駆動して糸継ぎを行わせる。
玉揚台車4は図7に示すように、走行輪87を駆動する走行モータ401や、前記サクションパイプ88やチャッカ89やバンチ巻駆動アーム91やクレードル操作アーム90をカム駆動するカムモータ402や、サクションパイプ88の伸縮や前記送出部材59の揺動のための空気圧シリンダ403や、前記バンチ巻駆動アーム91の駆動ローラ92を駆動するための空ボビン駆動モータ404、等を備えている。また玉揚台車4の制御装置153には、前記第1センサ61・第2センサ62(図2等を参照)のほか、機台に設けられたドグ54を検知するドグセンサ53等が、電気的に接続されている。
ここで、糸継台車3、玉揚台車4のそれぞれには、紡績ユニット2のセンサ161、162に信号を出力する出力部171、172を備えている。糸継台車3、玉揚台車4が目的の紡績ユニット2に到着して停止したとき、出力部171、172は、その停止位置に対向する紡績ユニット2のセンサへ信号を出力する。そして、信号を受信したセンサ161、162に対応する紡績ユニット2は、自身のユニット位置情報を含む信号を、制御装置151を介して、現在停止している糸継台車3や玉揚台車4の制御装置(152、153)に対して出力するようになっている。これにより、停止中の糸継台車3、玉揚台車4は、複数ある紡績ユニット2のうちどの位置に停止しているかを認識することができる。従って、糸継台車3、玉揚台車4が走行を再開したときは、前記の位置情報を基準としてドグセンサ303、53の検知をカウントすることにより、現在の走行位置を認識することができる。
空ボビン自動供給装置82の制御装置154は図7に示すように、チェーン駆動ユニット74、抜取シリンダ77、コンベア駆動ユニット97、送出シリンダ113、払出シリンダ64を進退駆動制御可能としている。また、払出口センサ131、コンベア終端センサ132、コンベア始端センサ133、抜取位置センサ134が、制御装置154に電気的に接続されている。
次に、玉揚台車4による玉揚動作について、図8〜図10を参照しながら説明する。図8は玉揚台車が巻取装置から満巻パッケージを取り外す様子を示す要部側面図、図9は玉揚台車が紡績装置側の糸を捕捉しながら空のボビンまで案内する様子を示す要部側面図、図10は玉揚台車が空のボビンを駆動ドラムにセットする様子を示す要部側面図である。
複数の紡績ユニット2のうち、ある紡績ユニット2においてパッケージ45が満巻となったことが図示しないセンサによって検知されると、紡績機1の制御装置151は、当該紡績ユニット2におけるドラフト装置7のバックローラ14、サードローラ15や紡績装置9を停止させるとともに、巻取装置12において、アーム83・84の回動により駆動ドラム79から満巻パッケージ45を離して、パッケージ45の回転駆動を停止させる。そして、紡績機1本体の制御装置151は玉揚台車4の制御装置153に信号を送り、玉揚台車4を、その紡績ユニット2の前まで走行して停止させる(図2にはその状態が示されている)。玉揚対象となる紡績ユニット2の前に玉揚台車4を位置決めして停止させるために、前記ドグセンサ53のドグ54の読み取り情報が用いられる。なお、パッケージ45が満巻近くまで巻き取られた段階で満巻の予告信号を紡績機1本体の制御装置151から出力し、予め、玉揚台車4を該当ユニット2まで移動させて待機させることも可能である。
玉揚台車4の停止後は、玉揚台車4の制御装置153はカムモータ402を駆動させて、図8に示すように、クレードル操作アーム90を下側へ回動させて巻取装置12のアーム83を押動し、アーム83を正面側へ更に倒すように傾動させる。このとき巻取装置12の他側のアーム84も追従して正面側へ傾動するので、満巻パッケージ45は駆動ドラム79から更に離間することになる。更にアーム83を図1の鎖線に示すように他側のアーム84から離すようにクレードル操作アーム90を回動させることで、両アーム83・84の間に支持されていた満巻パッケージ45はその支持状態を解除され、傾斜床94上を転がるようにして玉揚台車4内のパッケージ通路93を通過し、載置エリア95の溝96に落下して静止する。
こうして満巻パッケージ45を取り外すのとほぼ同時に、玉揚台車4の制御装置153はサクションパイプ88を斜め上方へ回動させるとともに空気圧シリンダ403によって伸長させ、その吸込み口を前記糸送り装置11のデリベリローラ39及びニップローラ40の直ぐ下流まで移動させる(図8)。このとき紡績装置9側では前記紡績糸10が紡績装置9から噴出されて、糸送り装置11の両ローラ39・40にニップされ、更に下流側へ送られる。この結果、紡績糸10の先端はサクションパイプ88に吸い込まれ捕捉される。
玉揚台車4の制御装置153はカムモータ402を更に駆動させる。この結果、前記チャッカ89が、台車ケーシング85の前記ストッカ55にストックされている空のボビン48のうち、最下部で前記保持部材58に保持されているボビン48を把持した後(図8)、下側へ回動される(図9)。なお、保持部材58は弾性変形可能に構成されているので、保持部材58によるボビン48の保持状態はチャッカ89の回動によって自然に解除される。またこのとき、巻取装置12の一側のアーム83は前記クレードル操作アーム90によって拡開側に傾動されているので、前記両アーム83・84の間の距離はボビン48の軸方向長さよりも長くなっている。従って、チャッカ89に把持されたボビン48を両アーム83・84の間の位置に移動させた状態では、ボビン48の両軸端は、巻取装置12の両アーム83・84に対し、軸方向の隙間を形成した状態となる。
ここでチャッカ89は、ストッカ55に貯溜された状態の空ボビン48を把持して移動させ、紡績ユニット2の巻取装置12まで案内するのであるが、その際の空ボビン48の向きは、ストッカ55に貯溜されているときの向きのまま維持されている。また前述のとおり、空ボビン48は、巻取装置12に装着される際の向きとほぼ一致する向きで空ボビン投入口57から投入され、その向きを保った状態でストッカ55に貯溜される。以上により、巻取装置12のアーム83・84に装着される空ボビン48の向きを、図1に示すように一定の向きに揃えることができる。また、玉揚台車4内に、空ボビン48の向きを変更するための特別な手段を不要とすることができる。
前記チャッカ89の下側への回動とほぼ同時に、前記バンチ巻駆動アーム91も図9に示すように下側へ回動し、その先端の駆動ローラ92を、前記チャッカ89に保持される空のボビン48に対して近接させる。なおこの状態では、空ボビン駆動モータ404(駆動ローラ92)はまだ回転駆動されていない。
更に、延出状態にあった前記サクションパイプ88を図9に示すように縮退させるとともに下側へ回動させ、紡績装置9から紡出される糸の糸端を吸い込みながら、チャッカ89に支持された空のボビン48の近傍まで、糸を案内する。
この状態で前記クレードル操作アーム90を回動させて前記アーム83の拡開状態を解除し、巻取装置12の両アーム83・84によって空のボビン48を挟んで、当該ボビン48を回転自在に支持する。またこれと同時に、前記チャッカ89によるボビン48の把持状態を解除する。なお、この支持状態においても、前記アーム83は、前記クレードル操作アーム90によってやや正面側へ倒されており、従って、前記ボビン48の周面は駆動ドラム79に接触しない。
この状態から、ボビン48に紡績糸10のバンチ巻を以下のようにして行う。即ち、図示しない所定のニップ部に、サクションパイプ88に捕捉されている紡績糸10を係止し、この状態で前記バンチ巻駆動アーム91を図9の状態から更に回動させて、その先端の駆動ローラ92をボビン48の外周面に接触させる。そして、この状態で空ボビン駆動モータ404を介して駆動ローラ92を回転駆動することでボビン48を所定回数だけ回転させ、前記ニップ部からボビン48の軸方向に少し離れた位置に紡績糸10の棒巻を形成することで、バンチ巻を形成できる。なお、このバンチ巻のときに、紡績糸10の余分な糸端は、サクションパイプ88の先端に取り付けられた図示しないカッタで切断され、サクションパイプ88に吸引され廃棄される。
上記のバンチ巻が終了した直後には、図10に示すように、前記クレードル操作アーム90を上昇回動させて、当該クレードル操作アーム90によるアーム83の正面側への傾動状態を解除する。この結果、アーム83・84は付勢バネの作用によって起立し、空のボビン48が駆動ドラム79に接触し、紡績糸10の巻取りが開始される。なお、クレードル操作アーム90の上昇回動とほぼ同時に、前記チャッカ89や前記バンチ巻駆動アーム91も上昇回動する。
また、上記バンチ巻が終了した後は、送出部材59を数回往復揺動させることで、収容室56の上流側にストックされた空ボビン48が1個落下し、保持部材58に新たに保持されることとなる。
以上で玉揚動作は完了し、玉揚台車4の制御装置153は、また何れかの紡績ユニット2でパッケージ45が満巻となるまで待機する。なお、以上に示したチャッカ89やクレードル操作アーム90やバンチ巻駆動アーム91やサクションパイプ88の回動動作は、玉揚台車4に支持された図示しないカム軸が図7のカムモータ402によって駆動されることで、一連の動きとして行われる。
次に、玉揚台車4に対する空ボビン48の供給について、最初に玉揚台車4側の制御を図11を参照して説明する。図11は玉揚台車の制御を示すフロー図である。
玉揚台車4に設けられた制御装置153は、前記ストッカ55において保持部材58にボビン48が支持されていないことを第1センサ61(図2)によって検知すると(図11のステップS101)、送出部材59を数回往復動させ、上流側にある空ボビン48を保持部材58の位置まで送り出そうと試みる(S102)。送出部材59やその上流側にボビン48が支持されていれば、送出部材59の何回かの揺動によってそのボビン48が保持部材58まで落下し、次のステップS103で第1センサ61がボビン48を検知することになる。ステップS101あるいはS103において第1センサ61がボビン有りを検知すると、玉揚台車4は、何れかの紡績ユニット2でパッケージ45が満巻となって玉揚要求が発生するまで待機する(S104)。玉揚要求があった場合は、その紡績ユニット2まで玉揚台車4を走行させ、玉揚動作を行う(S105)。玉揚げが終了した後は最初のステップS101に戻る。
保持部材58を何回か往復揺動させてもステップS103での第1センサ61の検知結果がボビン無しのままの場合は、ストッカ55のボビン48の残りがゼロになったことを意味する。この場合、玉揚台車4の制御装置153は、確認的に第2センサ62の状態を調べる(S106)。もし第2センサ62がボビン有りを検知した場合は、ストッカ55(収容室56)のどこかでボビン48が引っ掛かってしまっている等の異常が考えられるので、制御装置153は玉揚台車4を、異常を知らせるアラーム(警報ランプあるいや警報音等が考えられる)を出力するとともに、走行中の場合は停止するように制御する(S107)。
一方、ステップS106において第2センサ62もボビン無しを検知していた場合は、玉揚台車4の制御装置は、空ボビンの補給のために、空ボビン自動供給装置82へ向けて走行を開始する(S108)。空ボビン自動供給装置82に玉揚台車4が到着したか否かはステップS110で判定する。具体的には、前記ドグセンサ53の状態を監視し、ドグセンサ53が空ボビン自動供給装置82の位置にあるドグ54を読み取ったときに、玉揚台車4が空ボビン自動供給装置82に到着したと判断する。
なお、この走行の途中においても、制御装置153は前記第2センサ62の状態を常時監視している(S109・S110のループ)。そして、走行途中にステップS109において第2センサ62がボビン有りを検知した場合は、空ボビン自動供給装置82までの走行を途中で停止するようにしている(S111)。
即ち、本実施形態では紡績ユニット2より機台前面側の位置を玉揚台車4が走行し、また、玉揚台車4の台車ケーシング85の上面に空ボビン投入口57が設けられているため、図2・図3に示すように、機台の前方にいる作業者が空ボビン投入口57にボビンを投入することも十分可能である。従って、上記のように空ボビン48の供給を受けるために玉揚台車4が空ボビン自動供給装置82まで走行する途中に、機台の前側で作業をしている作業者が空ボビン投入口57に空ボビンを手で投入するような場合も考えられる。ここで、空ボビン投入口57、ストッカ55が、アーム83・84に空ボビン48を装着する向きとほぼ一致した向きにして空ボビン48を投入あるいは貯溜可能に構成しているため、玉揚台車4内にボビン48の向きを変更するための特別な手段を不要とすることができる。
このように手作業による空ボビン48の供給を受けた時点で、玉揚動作が可能な状態となり、更に空ボビン自動供給装置82による供給を受ける必要はなくなる。従って制御装置153は、前記第2センサ62でそのような作業者による空ボビン48の投入を検知した場合には(S109)、空ボビン自動供給装置82までの走行を途中で停止するとともに(S111)、前記のステップS101まで戻るのである。空ボビン投入口57から投入された空ボビン48は最初に送出部材59の上側に受け止められるため、ステップS101では保持部材58の位置に空ボビン48を検知できないが、その後、送出部材59を数回揺動させれば(S102)、新しく投入された空ボビン48は保持部材58のところまで送られるはずである。これを第1センサ61で検知した後は(S103)、玉揚要求が発生するまで待機する(S104)。このように、ストッカ55の空ボビン48がなくなったために空ボビン自動供給装置82に向かう際に人手により空ボビン48が投入された場合には空ボビン自動供給装置82へ向かうのを途中で中止することで、玉揚台車4の玉揚動作ができなくなる時間を短くして、玉揚要求ユニットへ素早く向かって玉揚動作をすることができ、作業効率を向上できている。
走行途中に作業者による空ボビン48の投入が行われず、玉揚台車4が走行路86の端の空ボビン自動供給装置82に到着した場合は(S110)、玉揚台車4の制御装置153は信号線を介して紡績機1本体の制御装置151に空ボビン要求信号を送信する(S112)。紡績機1本体側の制御装置151は、この信号を受信すると、空ボビン自動供給装置82の制御装置154に供給信号を送る。この供給信号を受信した空ボビン自動供給装置82の制御装置154は、払出シリンダ64を駆動して前記開閉扉68を開くよう制御する(制御の詳細は後述)。こうして、図4に示すように、開閉扉68上に乗っていた空ボビン48が払出口116から払い出されて空ボビン投入口57へ落下し、玉揚台車4のストッカ55に供給される。なお、この場合でいうところの走行の中止とは、玉揚台車4が、空ボビン自動供給装置82に向かおうとすることを中止する内容を指し、玉揚台車4の走行自体を停止させることを直ちに指すものではない。
空ボビン自動供給装置82の制御装置は、前記供給信号を受信すると、開閉扉68を一定時間だけ開いてその後は再び閉じるように制御し、再び供給信号を受信するまで待機する。なお、開閉扉68が閉じると、空ボビン自動供給装置82での供給動作(詳細は後述する)により、開閉扉68上に新しい空ボビンが1個供給される。一方、玉揚台車4側では、ストッカ55に空ボビン48が一杯になったことが第2センサ62によって検知されるまで、紡績機1本体の制御装置151に空ボビン要求信号を繰返し送るようにしている(S112・S113のループ)。こうして玉揚台車4のストッカ55に1個ずつ空ボビン48が供給される。ストッカ55が一杯になったことがステップS113において第2センサ62により検知されると、ステップS101まで戻り、その後は送出部材59を数回揺動させて空ボビン48を保持部材58まで送った上で、玉揚要求が発生するまで待機する(S101→S102→S103→S104)。
次に、空ボビン自動供給装置82の制御を説明する。空ボビン自動供給装置82の制御装置154は、図12に示される条件−動作表に従って制御を行う。
以下、図12の表に従って説明する。即ち、表の番号1に示すように、紡績機1本体の制御装置151から前述の供給信号を受信した場合であって、開閉扉68の上に空ボビン48があることが払出口センサ131によって検出されたときは、制御装置154は払出シリンダ64を伸長させて開閉扉68を開いた後、所定時間後に閉じる。この供給信号が受信されたときは、払出口116の直下に前記玉揚台車4の空ボビン投入口57が対向しているはずである。従って、払出口116から空ボビン48が払い出され、前述のように玉揚台車4のストッカ55に供給される。
このように、玉揚台車4がその空ボビン投入口57を前記空ボビン自動供給装置82の前記払出口116に対向させる位置に停止したことを前記ドグセンサ53によって検知すると、前記開閉扉68が、紡績機1本体側からの供給信号を受信した制御装置154によって開かれ、開閉扉68の位置に待機していた空ボビン48が素早く落下して払い出されるようになっている。この結果、空ボビンの供給に必要な時間を短縮できる。
表の番号2に示すように、開閉扉68の上に空ボビン48がないことが払出口センサ131によって検出され、かつ、シュート中継部111の送出体114の内部(前記コンベア66の搬送終点)に空ボビン48があることがコンベア終端センサ132によって検出されたときは、制御装置154は送出シリンダ113を伸長させて送出体114をスライド移動させ、その後、送出シリンダ113を縮退させて送出体114を元の位置に戻す。こうすることで、シュート中継部111の空ボビン48を落下孔115に落下させ、シュート67を介して前記払出口116の開閉扉68上に送ることができる。
表の番号3に示すように、シュート中継部111の送出体114の内部に空ボビン48がないことがコンベア終端センサ132によって検出され、かつ、コンベア66の搬送始端側に空ボビン48があることがコンベア始端センサ133によって検出されたときは、制御装置154はコンベア駆動ユニット97を作動させてコンベア66を所定の距離だけ駆動する。この結果、搬送始端側の空ボビン48は、前記送出体114の内部まで搬送される。
表の番号4に示すように、コンベア66の搬送始端側に空ボビン48がないことがコンベア始端センサ133によって検出され、かつ、前記貯溜部65における前記抜取位置60のペグ73に空ボビン48が掛けられていることが抜取位置センサ134によって検出されたときは、制御装置154は抜取シリンダ77を伸長させて抜脱部材76により空ボビン48を抜き取り、ガイド斜面78に落下させる。この結果、抜取位置60のペグ73に掛けられている空ボビン48を、コンベア66の搬送始端側に送ることができる。
更に、表の番号5に示すように、前記抜取位置60のペグ73に空ボビン48が掛けられていないことが抜取位置センサ134によって検出されたときは、制御装置154はチェーン駆動ユニット74を作動させて、チェーン72を、ペグ73の1ピッチ分だけ駆動する。こうして、空ボビン48を保持する次のペグ73が前記抜取位置60に至る。
空ボビン自動供給装置82の制御装置154は、上記の表における番号1の条件を満たすかどうか調べ、満たす場合は番号1の動作を行い、次に番号2の条件を満たすかどうか調べ、満たす場合は番号2の動作を行い、・・・というように、番号1から番号5まで順番に条件を調べ、条件を満たすものがあれば対応する番号の動作を行う。5つの条件を調べた後は、所定の時間間隔(例えば、数秒)が経過した後、再び上記5つの条件を調べて、条件を満たすものがあった場合はその番号の動作を行う。
上記のような繰返し制御により、シュート67終端の払出口116に空ボビン48がない場合はシュート中継部111の空ボビン48が送られ(番号2)、シュート中継部111の空ボビン48がない場合はコンベア66の始端側の空ボビン48が送られ(番号3)、コンベア66の始端側に空ボビン48がない場合は抜取位置60のペグ73の空ボビン48が抜き取られて送られ(番号4)、・・・というように、払出口116や各中継部(コンベア66の始端部、シュート中継部111)に空ボビン48がない場合には、その直ぐ上流の中継地点や貯溜部65の空ボビン48が搬送されることになる。この結果、貯溜部65の抜取位置60のペグ73に掛けられた空ボビン48が、抜取位置60→コンベア66の始端→コンベア66の終端(シュート中継部111)→払出口116というように1個ずつ中継されながら送られ、最終的には払出口116から玉揚台車4へ払い出される。本実施形態では、前記コンベア66の始端部、及び前記シュート中継部111が、本発明の「中継部」に相当する。
上記制御とすることで、ペグ73を多数貯溜する貯溜部65から払出口116までの経路に設定した複数の中継部のそれぞれに空ボビン48を待機させておくことができるので、貯溜部65から払出口116までの経路が長距離となってしまう場合でも、玉揚台車4に対し複数の空ボビン48を素早く払い出して供給することができる。
本実施形態に照らしていえば、本実施形態の紡績機1はレイアウト上の都合から、機台の背面に貯溜部65を、機台の正面に払出口116を、それぞれ設けており、貯溜部65から払出口116までの経路が、ガイド斜面78、コンベア66及びシュート67を含めた長い経路となってしまっている。しかしながら上記の制御とすることにより、長い経路の途中のシュート中継部111やコンベア66の始端部に空ボビン48を待機させられるので、開閉扉68上の空ボビン48を払い出した後はシュート中継部111に待機させている空ボビン48を払い出し、その後はコンベア66の始端部に待機させていた空ボビン48をシュート中継部111を中継させて払い出し、・・・というように、2個目以降の空ボビン48を素早く玉揚台車4に供給することができる。
以上から、空ボビン投入口57を設け、手作業によるボビン供給や空ボビン自動供給装置82に対するボビンの自動供給制御を行うことにより、玉揚台車4の走行路86に沿って機台長手方向に延びるボビン供給用コンベアが不要になる。従って、作業者が走行路86上やその近くで作業を行う際にボビン供給用コンベアが邪魔になる等の不都合がない。
本実施形態では空ボビン投入口57は玉揚台車4の台車ケーシング85の上面に設けられているが、これに限定されることなく、機台正面側の面や、側面に設けられていても良い。台車ケーシングの底面や背面(紡績ユニット2側を向く面)以外の面に空ボビン投入口57が設けられていれば十分である。
空ボビン自動供給装置の構成についても、本実施形態の構成に限定されない。例えば、貯溜部が機台の背面ではなく側面に設けられている紡績機にも本発明は適用可能である。また、コンベアやシュートを用いて空ボビンを搬送する構成にも限定されない。更に、払出口や中継部に設置される検出手段としては、非接触式のセンサに限らず、リミットスイッチ等の接触式のセンサを用いても構わない。
また本発明は、紡績機のみならず、糸に対して何らかの処理を行ってパッケージを形成し、玉揚台車による作業が必要となる繊維機械全般に適用することができる。