JP2005226718A - シェル型針状ころ軸受 - Google Patents

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JP2005226718A JP2004035259A JP2004035259A JP2005226718A JP 2005226718 A JP2005226718 A JP 2005226718A JP 2004035259 A JP2004035259 A JP 2004035259A JP 2004035259 A JP2004035259 A JP 2004035259A JP 2005226718 A JP2005226718 A JP 2005226718A
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真司 大石
Koji Matsunaga
浩司 松永
Yasuyuki Watanabe
靖之 渡邊
Tsuneaki Hiraoka
恒哲 平岡
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Abstract

【課題】安価な鋼板素材を用いて、かつ雰囲気調整が不要で簡便な熱処理でシェル型外輪の製品品質を確保できるようにすることである。
【解決手段】シェル型外輪1用にプレス加工される鋼板素材を、炭素含有量が0.3質量%以上で、球状化焼鈍が施されているものとすることにより、高い炭素含有量であってもプレス加工が可能な伸びと軟らかさを有するものとし、炭素含有量が多いことで浸炭焼入れや浸炭窒化処理等の雰囲気を調整する熱処理なしに強度や硬度等の製品品質を確保できるようにした。
【選択図】図1

Description

本発明は、シェル型針状ころ軸受に関するものである。
外輪の内径面に沿って複数の針状ころを配列した針状ころ軸受には、絞り工程を含むプレス加工で形成されたシェル型外輪を用いるものがある。プレス加工されるシェル型外輪の鋼板素材にはSCM415等の肌焼鋼が用いられ、強度や硬度等の製品品質を確保するために、プレス加工後に浸炭焼入れや浸炭窒化処理等の熱処理を施されている(例えば、特許文献1参照。)。
前記シェル型外輪のプレス加工の概略工程は、以下の通りである。まず、絞りを数回に分けた絞り工程で円形ブランクをカップ状に成形し、決め押し工程でカップ底コーナ部を所定のコーナ半径に決め押しする。こののち、底抜き工程でカップ底中央部を打ち抜いて外輪の一方の鍔を形成し、トリミング工程でカップ上端部を均一な高さにトリミングする。外輪の他方の鍔は、熱処理後の組立て工程で、カップ上端部を内方に折り曲げることにより形成される。
特許公報第3073937号(第1−2頁、第1−3図)
上述した従来のシェル型外輪の鋼板素材に用いられている肌焼鋼は、比較的絞り性が良いのでプレス加工が容易であるが、炭素含有量が少ないので、製品品質としての強度や硬度を確保するのに、浸炭焼入れや浸炭窒化処理等の雰囲気を調整した熱処理をする必要がある。このため、雰囲気炉等の熱処理設備が大きくなるとともに、炭素や窒素を拡散させるために熱処理時間が長くなる問題がある。また、雰囲気を調整する熱処理は、一度に多数の部品を処理しないと効率が悪いので、仕掛品が増大してリードタイムが長くなる問題もある。
そこで、本発明の課題は、雰囲気調整が不要で簡便な熱処理でシェル型外輪の製品品質を確保できるようにすることである。
上記の課題を解決するために、本発明は、鋼板のプレス加工で形成されるシェル型外輪の内径面に沿って、複数の針状ころを配列したシェル型針状ころ軸受において、前記鋼板の素材を、炭素含有量が0.3質量%以上で、球状化焼鈍が施されているものとした構成を採用した。
すなわち、シェル型外輪の鋼板素材を、炭素含有量が0.3質量%以上で、球状化焼鈍が施されているものとすることにより、高い炭素含有量であってもプレス加工が可能な伸びと軟らかさを有するものとし、炭素含有量が多いことで浸炭焼入れや浸炭窒化処理等の雰囲気を調整する熱処理なしに強度や硬度等の製品品質を確保できるようにした。炭素含有量が0.3質量%以上の鋼板素材として、構造用炭素鋼S30C〜S58C、SAE1040〜1095や工具鋼SK5を用いれば、素材費も安価とすることができる。
前記球状化焼鈍による炭化物の球状化率を50%以上とすることにより、鋼板素材をより安定してプレス加工することができる。なお、炭化物の球状化率は次の定義式で定義され、定義式中のアスペクト比は、炭化物の長径寸法と短径寸法の比である。
球状化率=(アスペクト比2未満の炭化物個数)/(炭化物総個数)×100(%)
前記炭化物の球状化率を50%以上としたのは、以下の理由による。シェル型外輪のプレス加工における絞り工程では、絞られるカップ底のコーナR部で最も大きな板厚減少率(10〜20%程度)となり、このコーナR部で破断を生じやすい。後の図2に示すように、炭素含有量が0.3質量%以上の鋼板素材の伸びは、炭化物の球状化率に比例して増大し、球状化率が50%程度で伸びが20%程度以上となる。したがって、球状化率を50%以上とすることにより、絞り工程におけるカップ底コーナR部での板厚減少に耐えて、鋼板素材を破断させることなく絞ることができると考えられる。
前記プレス加工の絞り工程での絞り回数を3回以下とし、最終回の絞り工程をしごき加工を加える絞りしごき工程とすることにより、プレス加工用の金型数と工程数を減らし、製造コストを低減することができる。また、絞り回数を減らすことにより、各金型の設定誤差等に起因するカップ成形物の寸法精度低下も抑制される。
なお、絞りしごき加工では、単なる絞り加工よりも大きな絞り比が得られることが知られている。すなわち、絞り加工では縮みフランジの変形抵抗とフランジ部でのしわ押さえ力に起因する引張応力によるポンチ肩部での破断で絞り限界が決まるが、絞りしごき加工では、このポンチ肩部に作用するフランジ側からの引張応力がしごき部で遮断されるので、絞り性があまりよくない炭素含有量が0.3質量%以上の鋼板素材であっても十分な絞り比を得ることができる。
前記絞り工程での絞り回数を1回とし、この1回の絞り工程をしごき加工を加える絞りしごき工程とすることにより、製造コストの低減と外輪の寸法精度向上を、さらに促すことができる。
前記鋼板素材を、リン酸塩皮膜処理が施されたものとすることにより、前記プレス加工におけるプレス加工油の保持能力を高め、より低級なプレス加工油を用いてシェル型外輪をプレス加工することができる。
前記プレス加工で形成したシェル型外輪を高周波焼入れまたは光輝焼入れすることにより、簡便な熱処理でシェル型外輪に必要な強度や硬度を確保することができる。高周波焼入れを採用する場合は、熱処理設備も小さくなり、熱処理時間も著しく短縮することができる。また、光輝焼入れする場合でも、炭素や窒素を拡散させる時間が不要となり、熱処理時間を短縮することができる。
本発明のシェル型針状ころ軸受は、シェル型外輪の鋼板素材を、炭素含有量が0.3質量%以上で、球状化焼鈍が施されているものとしたので、高い炭素含有量であってもプレス加工が可能な伸びと軟らかさを有するものとし、炭素含有量が多いことで浸炭焼入れや浸炭窒化処理等の雰囲気を調整する熱処理なしに強度や硬度等の製品品質を確保することができる。
前記球状化焼鈍による炭化物の球状化率を50%以上とすることにより、鋼板素材をより安定してプレス加工することができる。
前記プレス加工の絞り工程での絞り回数を3回以下とし、最終回の絞り工程をしごき加工を加える絞りしごき工程とすることにより、プレス加工用の金型数と工程数を減らし、製造コストをさらに低減することができる。また、絞り回数を減らすことにより、各金型の設定誤差等に起因するカップ成形物の寸法精度低下も抑制することができる。
前記絞り工程での絞り回数を1回とし、この1回の絞り工程をしごき加工を加える絞りしごき工程とすることにより、製造コストの低減と外輪の寸法精度向上を、さらに促すことができる。
前記鋼板素材を、リン酸塩皮膜処理が施されたものとすることにより、プレス加工におけるプレス加工油の保持能力を高め、より低級なプレス加工油を用いてシェル型外輪をプレス加工することができる。
前記プレス加工で形成したシェル型外輪を高周波焼入れまたは光輝焼入れすることにより、簡便な熱処理でシェル型外輪に必要な強度や硬度を確保することができる。高周波焼入れを採用する場合は、熱処理設備も小さくなり、熱処理時間も著しく短縮することができる。また、光輝焼入れする場合でも、炭素や窒素を拡散させる時間が不要となり、熱処理時間を短縮することができる。
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。本発明に係るシェル型針状ころ軸受Aは、図1に示すように、鋼板のプレス加工で形成されたシェル型外輪1の内径面2に沿って、複数の針状ころ3を配列したものであり、各針状ころ3は保持器4で保持され、外輪1の両端部には鍔1a、1bが形成されている。
シェル型外輪1に用いられた鋼板素材は、炭素含有量が約0.85質量%である工具鋼SK5を、球状化焼鈍によって炭化物の球状化率を50%以上としたものであり、表面にリン酸塩皮膜処理を施されている。この鋼板素材としては、実施形態のような工具鋼のほかに、構造用炭素鋼S30C〜S58C、SAE1040〜1095や軸受鋼SUJ2等を用いることもできる。
図2は、前記鋼板素材を引張試験した結果を示す。前述したように、各鋼板素材の伸びは炭化物の球状化率に比例して増大し、球状化率が50%で伸びが20%程度、球状化率が100%で伸びが40%程度となっている。なお、炭素含有量が0.3質量%以上である構造用炭素鋼S30C〜S58C、SAE1040〜1095や軸受鋼SUJ2についても引張試験を行ったが、ほぼ同様の結果が得られた。
図3は、前記シェル型外輪1を製造する概略の工程を示す。まずプレス加工により、球状化焼鈍してリン酸塩皮膜処理を施した工具鋼SK5の鋼鈑素材の円形ブランクが、1回の絞りしごき工程でカップ状に成形され、決め押し工程でカップ底コーナ部が所定のコーナ半径に決め押し成形される。つぎに、底抜き工程でカップ底中央部が打ち抜かれて外輪1の一方の鍔1a(図1参照)が形成され、トリミング工程でカップ上端部が均一な高さにトリミングされる。こののち、プレス加工された外輪1は、熱処理工程で高周波焼入れまたは光輝焼入れを施され、最後の組立て工程で、他方の鍔1b(図1参照)が内方への折り曲げ加工により形成される。
前記シェル型外輪1は、1回の絞りしごき工程でカップ状に成形されているので、金型の設定誤差等に起因する寸法精度低下が少ない。また、図示は省略するが、軌道面となる内径面2の面粗度も、周方向および軸方向の両方でRa0.3μm以下と非常に細かくなっている。
図4は、前記シェル型外輪1を高周波焼入れしたときの焼入れパターンの例を示す。ハッチングを施した部分が焼入れ部位であり、この例では、内径面2が軌道面となる円筒部とカップ底の打ち抜きで形成された一方の鍔1a部に高周波焼入れが施され、組立て工程で折り曲げ加工により形成される他方の鍔1b部は未硬化のままとされている。この鍔1b部は焼入れ硬化後焼戻し処理してもよい。高周波焼入れは、局部を順に短時間で加熱、冷却するので、外輪1の全体を熱処理する場合も、このように部分的に熱処理する場合も、熱ひずみが生じ難い利点もある。
図5は、上記シェル型針状ころ軸受Aを組み込んだ自動車のエアコンディショナ用コンプレッサ10を示す。このコンプレッサ10は、主軸11に固定された斜板12の回転により、斜板12上を摺動するシュー13を介してピストン14を往復動作させる両斜板タイプのものであり、ハウジング15内の冷媒をピストン14の往復動作で圧縮する。高速で回転駆動される主軸11は、ラジアル方向を2つのシェル型針状ころ軸受Aで支持され、スラスト方向をスラスト針状ころ軸受16で支持されている。上述したように、各シェル型針状ころ軸受Aの外輪1は、軌道面である内径面2の面粗度が細かく、かつ、寸法精度も優れているので、主軸11の高速回転に伴う騒音の発生を抑制できるとともに、その耐久寿命も延長することができる。
図6は、上記シェル型針状ころ軸受Aを組み込んだ自動車のABS用ピストンポンプ20の駆動装置を示す。この駆動装置は、電動モータ21の出力軸であるアーマチュアシャフト22を、ポンプハウジング23に形成された凹部24に一対の玉軸受25で支持し、その偏心部22aに嵌着したシェル型針状ころ軸受Aに、ピストンポンプ20のピストン26を直角に衝合支持したものである。したがって、電動モータ21を回転駆動することにより、シェル型針状ころ軸受Aに衝合支持されたピストン26が往復駆動され、ブレーキ液がポンプハウジング23に設けられた吸引口27から吸引されて、吐出口28から吐出される。この場合のシェル型針状ころ軸受Aも、外輪1の内径面2の面粗度が細かく、かつ、寸法精度も優れているので、ピストンポンプ20作動に伴う騒音の発生を抑制できるとともに、その耐久寿命を延長することができる。
上述した実施形態では、外輪のプレス加工における絞り工程を1回のみとし、この1回の絞り工程をしごき加工を加える絞りしごき工程としたが、絞り工程を3回以下の複数回とし、しごき加工を最終回の絞り工程で加えるようにすることもできる。
シェル型針状ころ軸受の実施形態を示す縦断面図 図1のシェル型外輪の鋼板素材の引張試験結果を示すグラフ 図1のシェル型外輪の概略の製造工程を示す工程図 図1のシェル型外輪の焼入れパターンの例を示す断面図 図1のシェル型針状ころ軸受を組み込んだコンプレッサを示す縦断面図 図1のシェル型針状ころ軸受を組み込んだピストンポンプの駆動装置を示す縦断面図
符号の説明
A シェル型針状ころ軸受
1 シェル型外輪
1a、1b 鍔
2 内径面
3 針状ころ
4 保持器
10 コンプレッサ
11 主軸
12 斜板
13 シュー
14 ピストン
15 ハウジング
16 スラスト針状ころ軸受
20 ピストンポンプ
21 電動モータ
22 アーマチュアシャフト
23 ポンプハウジング
24 凹部
25 玉軸受
26 ピストン
27 吸引口
28 吐出口

Claims (7)

  1. 鋼板のプレス加工で形成されるシェル型外輪の内径面に沿って、複数の針状ころを配列したシェル型針状ころ軸受において、前記鋼板の素材を、炭素含有量が0.3質量%以上で、球状化焼鈍が施されているものとしたことを特徴とするシェル型針状ころ軸受。
  2. 前記球状化焼鈍による炭化物の球状化率を50%以上とした請求項1に記載のシェル型針状ころ軸受。
  3. 前記プレス加工の絞り工程での絞り回数を3回以下とし、最終回の絞り工程をしごき加工を加える絞りしごき工程とした請求項1または2に記載のシェル型針状ころ軸受。
  4. 前記絞り工程での絞り回数を1回とし、この1回の絞り工程をしごき加工を加える絞りしごき工程とした請求項3に記載のシェル型針状ころ軸受。
  5. 前記鋼板素材を、リン酸塩皮膜処理が施されたものとした請求項1乃至4のいずれかに記載のシェル型針状ころ軸受。
  6. 前記プレス加工で形成したシェル型外輪を高周波焼入れした請求項1乃至5のいずれかに記載のシェル型針状ころ軸受。
  7. 前記プレス加工で形成したシェル型外輪を光輝焼入れした請求項1乃至5のいずれかに記載のシェル型針状ころ軸受。
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EP05710088A EP1715204A4 (en) 2004-02-12 2005-02-10 BOTTLE NEEDLE BEARINGS, SUPPORT STRUCTURE FOR COMPRESSION SPINDLE AND SUPPORT STRUCTURE FOR PISTON PUMP DRIVE PARTS
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US10/584,924 US20080298734A1 (en) 2004-02-12 2005-02-10 Shell Type Needle Roller Bearing, Support Structure for Supporting a Compressor Spindle, and Support Structure for Supporting Driving Portion of a Piston Pump
US12/453,372 US20090218458A1 (en) 2004-02-12 2009-05-08 Shell type needle roller bearing, support structure for supporting a compressor spindle, and support structure for supporting driving portion of a piston pump

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2015534022A (ja) * 2012-11-07 2015-11-26 シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲーSchaeffler Technologies AG & Co. KG シェル形軸受用の軌道輪

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