JP2005315324A - ピストンポンプ駆動部の支持構造および針状ころ軸受 - Google Patents

ピストンポンプ駆動部の支持構造および針状ころ軸受 Download PDF

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Abstract

【課題】ピストンポンプ駆動部のアーマチャシャフトの偏心量を大きくしながらも、ピストンポンプの一層のコンパクト化と低価格化を実現可能とすることである。
【解決手段】モータ出力軸であるアーマチャシャフト14の偏心部14aに嵌着され、ピストン17を支持するシェル型針状ころ軸受1のシェル型外輪2に用いる鋼板を、炭素含有量が0.3質量%以上の中・高炭素鋼として、プレス加工で形成されたシェル型外輪2の少なくとも軌道面を高周波焼入れすることにより、雰囲気調整を必要とせず簡便な熱処理設備で、シェル型外輪2の表面から内部までの強度を短時間に高め、その表面起点型剥離や内部起点型剥離によって決まるシェル型針状ころ軸受1の寿命を十分に確保して、アーマチャシャフト14の偏心量を大きくしながらも、ピストンポンプの一層のコンパクト化と低価格化を実現できるようにした。
【選択図】図1

Description

本発明は、ピストンポンプ駆動部の支持構造とこの支持構造に用いられる針状ころ軸受に関する。
自動車のアンチロックブレーキシステム(ABS)やトラクションコントロール(TRC)等の自動ブレーキシステムには、リザーバタンクのブレーキ液をマスタシリンダへ送るピストンポンプが装備されている。この種のオイル等を圧送するピストンポンプには、電動モータの出力軸であるアーマチャシャフトに偏心部を設け、この偏心部に嵌着した転がり軸受で、ピストンポンプ駆動部である往復駆動されるピストンを支持するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
前記ピストンポンプのピストンを支持する転がり軸受に、針状ころ軸受を採用したものもある(例えば、特許文献2参照)。針状ころ軸受は軸受投影面積が小さい割に高負荷容量と高剛性が得られる利点を有しており、上記のようなピストンポンプ駆動部の支持構造をコンパクトに設計できる。
上述したような自動車のブレーキシステムに用いられるピストンポンプは、液圧を用いたブレーキアシストシステム等の開発により、さらなる能力向上が求められているとともに、一層の低価格化とコンパクト化も求められている。ピストンポンプの能力向上への対応としてはアーマチャシャフトの偏心量を大きくする動きがあり、コンパクト化への対応の一手段としては、偏心部に嵌着する転がり軸受を針状ころ軸受として小型化する動きがある。このため、このようなピストンポンプ駆動部の支持構造に用いられる針状ころ軸受の負荷荷重は増大する傾向があり、その外輪には繰り返しの負荷荷重に起因する内部起点型剥離が発生しやすくなって、軸受に要求される基本特性である転動疲労寿命の確保が難しくなっている。
また、前記ピストンポンプ駆動部の支持構造に用いられる針状ころ軸受は、低粘度のオイル(ブレーキ液)が混入すること等で潤滑状態が希薄となり、かつ、ピストンが衝合する外輪の軌道面を針状ころが高速で転走するので、転走面で油膜切れが生じやすい。このため、外輪の軌道面に表面起点型剥離等の表面損傷が早期に発生して、軸受寿命が著しく短くなることがある。なお、自動車のブレーキシステムに用いられるピストンポンプでは、針状ころの転走に伴う軸受使用中の騒音を低くすることも望まれている。
一方、外輪の軌道面に沿って複数の針状ころを配列した針状ころ軸受には、絞り工程を含むプレス加工で形成されたシェル型外輪を用いるものがある。このシェル型外輪を用いるシェル型針状ころ軸受は、製造コストが安価となる経済的優位性から、その用途が自動車部品用のものを始として多岐に渡っている。
前記シェル型外輪のプレス加工の概略工程は、以下の通りである。まず、鋼板の円形ブランクを数回の絞り回数に分けた絞り工程でカップ状に成形し、決め押し工程でカップ底コーナ部を所定のコーナ半径に決め押しする。この後、底抜き工程でカップ底中央部を打ち抜いて外輪の一方の鍔を形成し、トリミング工程でカップ上端を均一な高さにトリミングする。外輪の他方の鍔は、熱処理後の組立て工程で、カップ上端部を内方に折り曲げることにより形成される。
前記ピストンポンプ駆動部の支持構造に用いられるシェル型針状ころ軸受のように、過酷な条件下で使用されるもののシェル型外輪には、SCM415等の肌焼鋼の鋼板が用いられており、その表面や内部の強度を高めて表面起点型剥離や内部起点型剥離の発生による軸受寿命の低下を防止するために、プレス加工後に浸炭焼入れ、焼戻しや浸炭窒化処理等の熱処理が施されている(例えば、特許文献3参照)。
特開平8−182254号公報(第2頁、第7図) 特開2001−187915号公報(第2頁、第9図) 特許第3073937号公報(第1−2頁、第1−3図)
上述した従来のシェル型外輪用の鋼板に用いられている肌焼鋼は、比較的絞り性が良いのでプレス加工が容易であるが、炭素含有量が少ないので、軸受寿命の確保に必要な強度や硬度を得るために、浸炭焼入れや浸炭窒化処理等の熱処理をする必要があり、炭素や窒素を拡散させるための熱処理時間が長くなる。特に、上述したピストンポンプ駆動部の支持構造に用いられるもので発生する内部起点型剥離を防止するためには、非常に長い時間をかけて炭素や窒素をシェル型外輪の内部まで十分に拡散させる必要がある。
しかしながら、シェル型外輪の熱処理時間をあまり長くすると、軸受の生産性が低下するのみでなく、シェル型外輪に熱ひずみが発生するので、従来は、内部起点型剥離に対する軸受寿命の延長や、軸受寸法の小型化ができず、アーマチャシャフトの偏心量の増大によるピストンポンプの能力向上やさらなるコンパクト化もできない問題があった。
また、浸炭焼入れや浸炭窒化処理は雰囲気を調整した熱処理をする必要があり、雰囲気炉等の熱処理設備が大きくなるとともに、一度に多数の部品を処理しないと効率が悪いので、仕掛品が増大してリードタイムも長くなる。このため、熱処理設備の初期コストとランニングコストの増大や仕掛品在庫の増加によって、シェル型外輪の製造コストが高くなり、延いてはシェル型針状ころ軸受を用いるピストンポンプのさらなる低価格化も難しくなっている問題がある。
そこで、本発明の課題は、ピストンポンプ駆動部のアーマチャシャフトの偏心量を大きくしながらも、ピストンポンプの一層のコンパクト化と低価格化を実現可能とすることである。
上記の課題を解決するために、本発明は、ピストンポンプのモータ出力軸と、このモータ出力軸の偏心部に嵌着された針状ころ軸受と、この針状ころ軸受に支持されるピストンポンプのピストンとからなるピストンポンプ駆動部の支持構造において、前記針状ころ軸受を、鋼板のプレス加工で形成したシェル型外輪の軌道面に沿って複数の針状ころを配列したシェル型針状ころ軸受として、前記鋼板を炭素含有量が0.3質量%以上の中・高炭素鋼とし、前記プレス加工で形成したシェル型外輪の少なくとも軌道面を、高周波焼入れまたは光輝焼入れした構成を採用した。
すなわち、ピストンポンプ駆動部のモータ出力軸であるアーマチャシャフトの偏心部に嵌着され、ピストンを支持する針状ころ軸受を、鋼板のプレス加工で形成したシェル型外輪の軌道面に沿って複数の針状ころを配列したシェル型針状ころ軸受とし、このシェル型外輪用にプレス加工される鋼板を、炭素含有量が0.3質量%以上の中・高炭素鋼として、プレス加工で形成されたシェル型外輪の少なくとも軌道面を、高周波焼入れまたは光輝焼入れすることにより、雰囲気調整を必要とせず簡便な熱処理設備で、シェル型外輪の表面から内部までの強度を短時間に高め、その表面起点型剥離や内部起点型剥離の発生によって決まるシェル型針状ころ軸受の寿命を十分に確保して、アーマチャシャフトの偏心量を大きくしながらも、ピストンポンプの一層のコンパクト化と低価格化を実現できるようにした。
前記シェル型外輪を、Si、Ni、Moの少なくともいずれかの合金元素を含み、これらの合金元素の含有量がそれぞれ0.35質量%以下の鋼板から形成することにより、プレス加工性を高めることができる。Si、Ni、Moの含有量をそれぞれ0.35質量%以下としたのは、これらの合金元素は単独または共存して焼入れ性を改善するが、それぞれ含有量が0.35質量%を超えると、プレス加工性を低下させるからである。
前記シェル型外輪を、予め球状化焼鈍を施し、炭化物の球状化率を50%以上とした鋼板から形成することにより、炭素含有量が0.3質量%以上の中・高炭素鋼であっても十分な伸びと軟らかさを有するものとし、これを安定してシェル型外輪にプレス加工することができる。なお、炭化物の球状化率は次の定義式で定義され、定義式中のアスペクト比は、炭化物の長径寸法と短径寸法の比である。
球状化率=(アスペクト比2未満の炭化物個数)/(炭化物総個数)×100(%)
前記高周波焼入れまたは光輝焼入れしたシェル型外輪に、炉焼戻しまたは高周波焼戻しのいずれかを施すことにより、熱処理後の組立て工程における外輪の他方の鍔の折り曲げ加工を容易に行うことができる。なお、炉焼戻しや高周波焼戻しも、雰囲気調整が不要で簡便に行うことができる。
前記シェル型外輪の軌道面の表面硬さをビッカース硬度HV653以上とすることにより、苛酷な潤滑条件下であっても、表面起点型剥離等の表面損傷が早期に発生するのを防止することができる。
前記シェル型外輪の軌道面の周方向面粗度をRa0.05〜0.3μmとすることにより、軌道面での針状ころの転走に伴う音響のレベルを低減し、軸受使用中の静粛性を高めることができる。周方向面粗度の下限をRa0.05μmとしたのは、これよりも周方向面粗度が細かくなって軌道面が滑らかになり過ぎると、転走する針状ころの弾性接触領域に保持される潤滑油が少なくなり、表面起点型剥離等の表面損傷が生じやすくなるからである。周方向面粗度の上限をRa0.3μmとしたのは、以下の理由による。
本発明者らは、シェル型外輪の軌道面の面粗度を変えたシェル型針状ころ軸受について、回転試験機を用いた音響測定試験を行い、軌道面の周方向面粗度を細かくすると軸受の音響レベルが効果的に低減されることを知見し、図8に示すように、これをRa0.3μm以下にすると、音響レベルを大幅に低減できることを確認した。この軌道面の周方向面粗度が音響レベルの低減に特に効果があるのは、つぎのように考えられる。すなわち、針状ころのころ径に対してころの回転方向の凹凸(周方向面粗度)がある程度以上に粗くなると、針状ころの上下振動が大きくなって大きな音響が発生する。針状ころのころ径は比較的小さいので、周方向面粗度がRa0.3μmを超えると、大きな音響が発生するものと思われる。
前記シェル型外輪の軌道面の軸方向面粗度をRa0.3μm以下とすることにより、針状ころの転走に伴う音響のレベルをさらに低減し、軸受使用中の静粛性をより高めることができる。針状ころはころ径に較べてころ長が長いので、軌道面の幅方向の凹凸(軸方向面粗度)も針状ころの上下振動に影響し、軸方向面粗度がRa0.3μmを超えると、音響が大きくなるものと思われる。
前記プレス加工の絞り工程での絞り回数を3回以下とし、最終回の絞り工程をしごき加工を加える絞りしごき工程とすることにより、プレス加工用の金型数と工程数を減らし、製造コストをさらに低減することができる。また、絞り回数を減らすことにより、各金型の設定誤差等に起因するカップ成形物の寸法精度低下も抑制することができる。
なお、絞りしごき加工では、単なる絞り加工よりも大きな絞り比が得られることが知られている。すなわち、絞り加工では縮みフランジの変形抵抗とフランジ部でのしわ押さえ力に起因する引張応力によるポンチ肩部での破断で絞り限界が決まるが、絞りしごき加工では、このポンチ肩部に作用するフランジ側からの引張応力がしごき部で遮断されるので、絞り性があまりよくない炭素含有量が0.3質量%以上の中・高炭素鋼であっても十分な絞り比を得ることができる。
前記シェル型外輪をリン酸塩皮膜処理鋼鈑から形成することにより、プレス加工におけるプレス加工油の保持能力を高め、より低級なプレス加工油を用いてシェル型外輪をプレス加工することができる。
前記ピストンポンプは、自動車のアンチロックブレーキシステム用のピストンポンプとすることができる。
また、本発明の針状ころ軸受は、上述したいずれかのピストンポンプ駆動部の支持構造における前記ピストンの支持に用いることができる。
本発明のピストンポンプ駆動部の支持構造は、モータ出力軸であるアーマチャシャフトの偏心部に嵌着され、ピストンを支持する針状ころ軸受を、鋼板のプレス加工で形成したシェル型外輪の軌道面に沿って複数の針状ころを配列したシェル型針状ころ軸受とし、このシェル型外輪用にプレス加工される鋼板を、炭素含有量が0.3質量%以上の中・高炭素鋼として、プレス加工で形成されたシェル型外輪の少なくとも軌道面を、高周波焼入れまたは光輝焼入れすることにより、雰囲気調整を必要とせず簡便な熱処理設備で、シェル型外輪の表面から内部までの強度を短時間に高め、その表面起点型剥離や内部起点型剥離によって決まるシェル型針状ころ軸受の寿命を十分に確保できるようにしたので、アーマチャシャフトの偏心量を大きくしながらも、ピストンポンプの一層のコンパクト化と低価格化を実現することができる。
前記シェル型外輪を、Si、Ni、Moの少なくともいずれかの合金元素を含み、これらの合金元素の含有量がそれぞれ0.35質量%以下の鋼板から形成することにより、プレス加工性を高めることができる。
前記シェル型外輪を、予め球状化焼鈍を施し、炭化物の球状化率を50%以上とした鋼板から形成することにより、炭素含有量が0.3質量%以上の中・高炭素鋼であっても十分な伸びと軟らかさを有するものとし、これを安定してシェル型外輪にプレス加工することができる。
前記高周波焼入れまたは光輝焼入れしたシェル型外輪に、炉焼戻しまたは高周波焼戻しのいずれかを施すことにより、熱処理後の組立て工程における外輪の他方の鍔の折り曲げ加工を容易に行うことができる。
前記シェル型外輪の軌道面の表面硬さをビッカース硬度HV653以上とすることにより、苛酷な潤滑条件下であっても、表面起点型剥離等の表面損傷が早期に発生するのを防止することができる。
前記シェル型外輪の軌道面の周方向面粗度をRa0.05〜0.3μmとすることにより、軌道面での針状ころの転走に伴う音響のレベルを低減し、軸受使用中の静粛性を高めることができる。
前記シェル型外輪の軌道面の軸方向面粗度をRa0.3μm以下とすることにより、針状ころの転走に伴う音響のレベルをさらに低減し、軸受使用中の静粛性をより高めることができる。
前記プレス加工の絞り工程での絞り回数を3回以下とし、最終回の絞り工程をしごき加工を加える絞りしごき工程とすることにより、プレス加工用の金型数と工程数を減らし、製造コストをさらに低減することができる。また、絞り回数を減らすことにより、各金型の設定誤差等に起因するカップ成形物の寸法精度低下も抑制することができる。
前記シェル型外輪をリン酸塩皮膜処理鋼鈑から形成することにより、プレス加工におけるプレス加工油の保持能力を高め、より低級なプレス加工油を用いてシェル型外輪をプレス加工することができる。
以下、図面に基づき、この発明の実施形態を説明する。図1は、本発明に係るピストンポンプ駆動部の支持構造を採用した自動車のABS用ピストンポンプ11と、これを駆動する電動モータ12を示す。電動モータ12の出力軸であるアーマチュア13のアーマチャシャフト14は、ポンプハウジング15にピストンポンプ11と直角に形成された凹部15aに一対の玉軸受16で支持され、その偏心部14aに嵌着されたシェル型針状ころ軸受1に、ピストンポンプ11のピストン17が支持されている。したがって、電動モータ12を回転駆動することにより、シェル型針状ころ軸受1に支持されたピストン17が往復駆動され、ブレーキ液がポンプハウジング15に設けられた吸引口18から吸引されて、吐出口19から吐出される。なお、図示は省略するが、吸引口18はリザーバタンクに接続され、吐出口19はマスタシリンダに接続される。
前記ピストン17を支持するシェル型針状ころ軸受1は、図2に示すように、プレス加工で形成されたシェル型外輪2の軌道面3に沿って、複数の針状ころ4を配列したものであり、各針状ころ4は保持器5で保持され、外輪2の両端部には鍔6a、6bが形成されている。シェル型外輪2に用いられた鋼板は、中炭素鋼である炭素含有量が0.4質量%の構造用炭素鋼S40Cであり、表面にリン酸塩皮膜処理が施されたリン酸塩皮膜処理鋼板とされている。この鋼板には、炭素含有量が0.3〜0.5質量%の中炭素鋼のほかに、炭素含有量が0.5質量%以上の高炭素鋼を用いることもできる。
図3は、前記シェル型外輪2を製造する概略の工程を示す。まずプレス加工により、前記リン酸塩皮膜処理鋼鈑の円形ブランクが、1回の絞りしごき工程でカップ状に成形され、決め押し工程でカップ底コーナ部が所定のコーナ半径に決め押し成形される。つぎに、底抜き工程でカップ底中央部が打ち抜かれて外輪2の一方の鍔6a(図2参照)が形成され、トリミング工程でカップ上端が均一な高さにトリミングされるとともに、他方の鍔6b(図2参照)が形成されるカップ上端部が減厚加工される。こののち、プレス加工された外輪2は、熱処理工程で高周波焼入れを施され、最後の組立て工程で、他方の鍔6bが内方への折り曲げ加工により形成される。なお、外輪2の熱処理は光輝焼入れとしてもよい。また、このシェル型外輪2は、1回の絞りしごき工程でカップ状に成形されているので、金型の設定誤差等に起因する寸法精度低下も少ない。
図4(a)、(b)は、それぞれ前記シェル型外輪2の軌道面3の周方向面粗度と軸方向面粗度を示す。図4(a)に示す周方向面粗度は、外輪2の長さ方向中央位置で測定したものであり、Ra0.18μmと非常に細かくなっている。図示は省略するが、両端から各2mmの位置で測定した周方向面粗度もRa0.05〜0.3μmの範囲に入っていた。また、図4(b)に示す軸方向面粗度は、周方向に90°の位相で4箇所測定したものの1つであり、Ra0.15μmと非常に細かくなっている。図示は省略するが、他の位相で測定した軸方向面粗度も、いずれもRa0.3μm以下と非常に細かくなっていた。
図5(a)は、前記シェル型外輪2を高周波焼入れしたときの焼入れパターンを示す。ハッチングを施した部分が焼入れ部位Aであり、軌道面3が設けられる円筒部とカップ底の打ち抜きで形成された一方の鍔6aに高周波焼入れが施され、組立て工程で折り曲げ加工により形成される他方の鍔6bは未硬化のままとされている。軌道面3の表面硬さはビッカース硬度でHV653以上となっている。なお、高周波焼入れは、局部を順に短時間で加熱、冷却するので、外輪2の全体を熱処理する場合も、このように部分的に熱処理する場合も、熱ひずみが生じ難い利点もある。
図5(b)は、前記シェル型外輪2を高周波焼入れしたときの焼入れパターンの第1の変形例を示す。この変形例に用いられたシェル型外輪2鋼板は、炭素含有量が0.85質量%である工具鋼SK5を、球状化焼鈍によって炭化物の球状化率を50%以上としたもののリン酸塩皮膜処理鋼板である。この変形例では、軌道面3が設けられる円筒部と両側の鍔6a、6bの全体に高周波焼入れが施され、軌道面3の表面硬さはビッカース硬度でHV653以上となっている。
図6は、前記球状化焼鈍した工具鋼SK5の鋼板を引張試験した結果を示す。鋼板の伸びは炭化物の球状化率に比例して増大し、球状化率が50%で伸びが20%程度、球状化率が100%で伸びが40%程度となっている。したがって、炭素含有量が0.3質量%以上の中・高炭素鋼であっても、球状化率を50%以上にすると、十分な伸びと軟らかさを有するようになり、これを安定してシェル型外輪2にプレス加工することができる。なお、この球状化焼鈍した鋼板には、工具鋼のほかに、構造用炭素鋼S30C〜S58C、SAE1040〜1095や軸受鋼SUJ2等を用いることもできる。
図5(c)は、前記シェル型外輪2を高周波焼入れしたときの焼入れパターンの第2の変形例を示す。この変形例に用いられたシェル型外輪2鋼板は、C含有量が0.52〜0.58質量%、Si含有量が0.15〜0.35質量%の構造用炭素鋼S55Cのリン酸塩皮膜処理鋼板であり、図3に示した製造工程におけるトリミング工程の後の熱処理工程で、高周波焼入れと炉焼戻しまたは高周波焼戻しを施されている。この変形例では、両側の鍔6a、6bを除く円筒部の軌道面3側のみに高周波焼入れが施されており、軌道面3の表面硬さはビッカース硬度でHV653以上となっている。なお、ハッチングを施した焼入れ部位Aの有効硬化層の部分はHV513以上となっている。また、このような変形例に用いられる鋼板は、C含有量が0.3質量%以上で、Si、Ni、Moの少なくともいずれかの合金元素を含み、これらの合金元素の含有量がそれぞれ0.35質量%以下のものであればよく、他の構造用炭素鋼SAE1070や工具鋼SK5等を用いることもできる。
実施例として、構造用炭素鋼S40Cの鋼板をプレス加工して高周波焼入れを施したシェル型外輪を用いた図2のシェル型針状ころ軸受を用意した。また、比較例として肌焼鋼SCM415の鋼板をプレス加工して浸炭焼入れを施したシェル型外輪を用いたシェル型針状ころ軸受も用意した。軸受寸法は実施例、比較例とも内径22mm、幅16mmとし、比較例のシェル型外輪の浸炭焼入れにおける熱処理時間は3時間とした。
上記実施例と比較例のシェル型針状ころ軸受を、それぞれ回転試験機の回転軸に取り付けて軸受寿命試験を行った。軸受寿命はL10寿命(サンプルの10%に表面起点型剥離や内部起点型剥離が発生するまでの時間)で評価した。試験条件は以下の通りである。
・負荷荷重:4776N
・回転数 :8000rpm
・潤滑油 :マルチパーパス油♯5を循環給油
上記軸受寿命試験の結果を図7に示す。シェル型外輪を構造用炭素鋼S40Cで形成して高周波焼入れした実施例のものは、シェル型外輪を肌焼鋼SCM415で形成して浸炭焼入れした比較例のものの3倍に近いL10寿命となっており、表面起点型剥離や内部起点型剥離が発生するまでの軸受寿命を著しく延長できることが分かる。なお、比較例のものは、内部起点型剥離の発生によって軸受寿命が短くなっている。
上述した実施形態では、シェル型外輪のプレス加工における絞り工程を1回のみとし、しごき工程をこの1回の絞り工程と同時に行う絞りしごき工程としたが、絞り工程を3回以下の複数回とし、しごき工程を最終回の絞り工程と同時に行う絞りしごき工程としてもよく、しごき工程を絞り工程または決め押し工程の後で別に行ってもよい。
本発明に係るピストンポンプ駆動部の支持構造を採用した自動車のABS用ピストンポンプと電動モータを示す縦断面図 図1のシェル型針状ころ軸受を示す縦断面図 図2のシェル型外輪の概略の製造工程を示す工程図 a、bは、それぞれ図3の製造工程で製造したシェル型外輪の軌道面の周方向と軸方向の面粗度を示すグラフ aは図2のシェル型外輪の焼入れパターンを示す断面図、b、cは、それぞれaの焼入れパターンの変形例を示す断面図 図5(b)の変形例に用いた鋼板の引張試験結果を示すグラフ 図2のシェル型針状ころ軸受の軸受寿命試験の結果を示すグラフ シェル型針状ころ軸受の音響測定試験における外輪軌道面の周方向面粗度と音響レベルの関係を示すグラフ
符号の説明
1 シェル型針状ころ軸受
2 シェル型外輪
3 軌道面
4 針状ころ
5 保持器
6a、6b 鍔
11 ピストンポンプ
12 電動モータ
13 アーマチュア
14 アーマチャシャフト
14a 偏心部
15 ポンプハウジング
15a 凹部
16 玉軸受
17 ピストン
18 吸引口
19 吐出口

Claims (11)

  1. ピストンポンプのモータ出力軸と、このモータ出力軸の偏心部に嵌着された針状ころ軸受と、この針状ころ軸受に支持されるピストンポンプのピストンとからなるピストンポンプ駆動部の支持構造において、前記針状ころ軸受を、鋼板のプレス加工で形成したシェル型外輪の軌道面に沿って複数の針状ころを配列したシェル型針状ころ軸受として、前記鋼板を炭素含有量が0.3質量%以上の中・高炭素鋼とし、前記プレス加工で形成したシェル型外輪の少なくとも軌道面を、高周波焼入れまたは光輝焼入れしたことを特徴とするピストンポンプ駆動部の支持構造。
  2. 前記シェル型外輪を、Si、Ni、Moの少なくともいずれかの合金元素を含み、これらの合金元素の含有量がそれぞれ0.35質量%以下の鋼板から形成した請求項1に記載のピストンポンプ駆動部の支持構造。
  3. 前記シェル型外輪を、予め球状化焼鈍を施し、炭化物の球状化率を50%以上とした鋼板から形成した請求項1または2に記載のピストンポンプ駆動部の支持構造。
  4. 前記高周波焼入れまたは光輝焼入れしたシェル型外輪に、炉焼戻しまたは高周波焼戻しのいずれかを施した請求項1乃至3のいずれかに記載のピストンポンプ駆動部の支持構造。
  5. 前記シェル型外輪の軌道面の表面硬さをビッカース硬度HV653以上とした請求項1乃至4のいずれかに記載のピストンポンプ駆動部の支持構造。
  6. 前記シェル型外輪の軌道面の周方向面粗度をRa0.05〜0.3μmとした請求項1乃至5のいずれかに記載のピストンポンプ駆動部の支持構造。
  7. 前記シェル型外輪の軌道面の軸方向面粗度をRa0.3μm以下とした請求項1乃至6のいずれかに記載のピストンポンプ駆動部の支持構造。
  8. 前記プレス加工の絞り工程での絞り回数を3回以下とし、最終回の絞り工程をしごき加工を加える絞りしごき工程とした請求項1乃至7のいずれかに記載のピストンポンプ駆動部の支持構造。
  9. 前記シェル型外輪をリン酸塩皮膜処理鋼鈑から形成した請求項1乃至8のいずれかに記載のピストンポンプ駆動部の支持構造。
  10. 前記ピストンポンプが自動車のアンチロックブレーキシステム用のピストンポンプである請求項1乃至9のいずれかに記載のピストンポンプ駆動部の支持構造。
  11. 請求項1乃至10のいずれかに記載のピストンポンプ駆動部の支持構造における前記ピストンの支持に用いた針状ころ軸受。
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