JP2005315328A - コンプレッサ主軸の支持構造および針状ころ軸受 - Google Patents

コンプレッサ主軸の支持構造および針状ころ軸受 Download PDF

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【課題】エアコンディショナの冷却効率を向上させた上で、コンプレッサの一層のコンパクト化と低価格化を実現可能とすることである。
【解決手段】コンプレッサ主軸11を支持する針状ころ軸受1aのシェル型外輪2aに用いる鋼板を、炭素含有量が0.3質量%以上の中・高炭素鋼として、プレス加工で形成されたシェル型外輪2aの少なくとも軌道面を高周波焼入れすることにより、雰囲気調整を必要とせず簡便な熱処理設備で、シェル型外輪2aの表面から内部までの強度を短時間に高め、その表面起点型剥離や内部起点型剥離の発生によって決まるシェル型針状ころ軸受1aの寿命を十分に確保して、エアコンディショナの冷却効率を向上させた上で、コンプレッサの一層のコンパクト化と低価格化を実現できるようにした。
【選択図】図1

Description

本発明は、コンプレッサ主軸の支持構造とこの支持構造に用いられる針状ころ軸受に関する。
エアコンディショナ等のコンプレッサには、圧縮動作部材を主軸の回転駆動で動作させ、この主軸のラジアル荷重をコンプレッサ内に配置された針状ころ軸受で支持した支持構造を採用した斜板式のものがある(例えば、特許文献1参照)。針状ころ軸受は軸受投影面積が小さい割に高負荷容量と高剛性が得られる利点を有しており、コンプレッサ主軸の支持構造をコンパクトに設計できる。
上記のようなコンプレッサで、特に自動車用エアコンディショナに用いられるものは、近年、耐久性の向上とともに、一層の低価格化とコンパクト化が求められている。さらに最近では、省エネルギや環境への配慮からエアコンディショナの冷却効率を高めるために、コンプレッサの軸受部をはじめとする各部の潤滑に用いるオイル量を削減する希薄潤滑化が進んでいる。コンプレッサの潤滑には元来低粘度のオイルが用いられており、このような希薄潤滑化の推進によって、コンプレッサ主軸の支持構造に採用される針状ころ軸受は、過酷な潤滑条件下で使用されるようになっている。
このため、高速回転するコンプレッサ主軸のラジアル荷重を支持する針状ころ軸受では、針状ころが転走する外輪の軌道面に表面起点型剥離等の表面損傷が早期に発生して、軸受寿命が著しく短くなることがある。また、自動車用エアコンディショナのコンプレッサは、その高圧縮比化に伴ってコンプレッサ主軸を支持する針状ころ軸受の負荷荷重も増大している傾向があり、針状ころ軸受の外輪には、繰り返しの負荷荷重に起因する内部起点型剥離も発生しやすくなって、軸受に要求される基本特性である転動疲労寿命の確保も難しくなっている。なお、自動車用エアコンディショナのコンプレッサでは、針状ころの転走に伴う軸受使用中の騒音を低くすることも望まれている。
一方、外輪の軌道面に沿って複数の針状ころを配列した針状ころ軸受には、絞り工程を含むプレス加工で形成されたシェル型外輪を用いるものがある。このシェル型外輪を用いるシェル型針状ころ軸受は、製造コストが安価となる経済的優位性からその用途が多岐に渡っており、上述した自動車用エアコンディショナに用いられるものを含めて、コンプレッサの主軸の支持構造にも採用されている。
前記シェル型外輪のプレス加工の概略工程は、以下の通りである。まず、鋼板の円形ブランクを数回の絞り回数に分けた絞り工程でカップ状に成形し、決め押し工程でカップ底コーナ部を所定のコーナ半径に決め押しする。この後、底抜き工程でカップ底中央部を打ち抜いて外輪の一方の鍔を形成し、トリミング工程でカップ上端を均一な高さにトリミングする。外輪の他方の鍔は、熱処理後の組立て工程で、カップ上端部を内方に折り曲げることにより形成される。
前記コンプレッサ主軸を支持する針状ころ軸受のように、過酷な条件下で使用される軸受のシェル型外輪用鋼板には、SCM415等の肌焼鋼の鋼板が用いられており、その表面や内部の強度を高めて表面起点型剥離や内部起点型剥離の発生による軸受寿命の低下を防止するために、プレス加工後に浸炭焼入れ、焼戻しや浸炭窒化処理等の熱処理が施されている(例えば、特許文献2参照)。
特許第2997047号公報(第2頁、第10−12図) 特許第3073937号公報(第1−2頁、第1−3図)
上述した従来のシェル型外輪用の鋼板に用いられている肌焼鋼は、比較的絞り性が良いのでプレス加工が容易であるが、炭素含有量が少ないので、軸受寿命の確保に必要な強度や硬度を得るために、浸炭焼入れや浸炭窒化処理等の熱処理をする必要があり、炭素や窒素を拡散させるための熱処理時間が長くなる。特に、上述したコンプレッサ主軸の支持構造に用いられるもので発生する内部起点型剥離を防止するためには、非常に長い時間をかけて炭素や窒素をシェル型外輪の内部まで十分に拡散させる必要がある。
しかしながら、シェル型外輪の熱処理時間をあまり長くすると、軸受の生産性が低下するのみでなく、シェル型外輪に熱ひずみが発生するので、従来は、内部起点型剥離に対する軸受寿命の延長や、軸受寸法の小型化ができず、希薄潤滑化によるエアコンディショナの冷却効率向上や、コンプレッサのさらなるコンパクト化もできない問題があった。
また、浸炭焼入れや浸炭窒化処理は雰囲気を調整した熱処理をする必要があり、雰囲気炉等の熱処理設備が大きくなるとともに、一度に多数の部品を処理しないと効率が悪いので、仕掛品が増大してリードタイムも長くなる。このため、熱処理設備の初期コストとランニングコストの増大や仕掛品在庫の増加によって、シェル型外輪の製造コストが高くなり、延いてはシェル型針状ころ軸受を用いるコンプレッサのさらなる低価格化も難しくなっている問題がある。
そこで、本発明の課題は、エアコンディショナの冷却効率を向上させた上で、コンプレッサの一層のコンパクト化と低価格化を実現可能とすることである。
上記の課題を解決するために、本発明は、コンプレッサの圧縮動作部材を回転駆動させる主軸と、この主軸をコンプレッサ内で支持する針状ころ軸受とからなるコンプレッサ主軸の支持構造において、前記針状ころ軸受を、鋼板のプレス加工で形成されるシェル型外輪の軌道面に沿って複数の針状ころを配列したシェル型針状ころ軸受として、前記鋼板を炭素含有量が0.3質量%以上の中・高炭素鋼とし、前記プレス加工で形成したシェル型外輪の少なくとも軌道面を、高周波焼入れまたは光輝焼入れした構成を採用した。
すなわち、コンプレッサ主軸を支持する針状ころ軸受を、鋼板のプレス加工で形成したシェル型外輪の軌道面に沿って複数の針状ころを配列したシェル型針状ころ軸受とし、このシェル型外輪用にプレス加工される鋼板を、炭素含有量が0.3質量%以上の中・高炭素鋼として、プレス加工で形成されたシェル型外輪の少なくとも軌道面を、高周波焼入れまたは光輝焼入れすることにより、雰囲気調整を必要とせず簡便な熱処理設備で、シェル型外輪の表面から内部までの強度を短時間に高め、その表面起点型剥離や内部起点型剥離の発生によって決まるシェル型針状ころ軸受の寿命を十分に確保して、エアコンディショナの冷却効率を向上させた上で、コンプレッサの一層のコンパクト化と低価格化を実現できるようにした。
前記シェル型外輪を、Si、Ni、Moの少なくともいずれかの合金元素を含み、これらの合金元素の含有量がそれぞれ0.35質量%以下の鋼板から形成することにより、プレス加工性を高めることができる。Si、Ni、Moの含有量をそれぞれ0.35質量%以下としたのは、これらの合金元素は単独または共存して焼入れ性を改善するが、それぞれ含有量が0.35質量%を超えると、プレス加工性を低下させるからである。
前記シェル型外輪を、予め球状化焼鈍を施し、炭化物の球状化率を50%以上とした鋼板から形成することにより、炭素含有量が0.3質量%以上の中・高炭素鋼であっても十分な伸びと軟らかさを有するものとし、これを安定してシェル型外輪にプレス加工することができる。なお、炭化物の球状化率は次の定義式で定義され、定義式中のアスペクト比は、炭化物の長径寸法と短径寸法の比である。
球状化率=(アスペクト比2未満の炭化物個数)/(炭化物総個数)×100(%)
前記高周波焼入れまたは光輝焼入れしたシェル型外輪に、炉焼戻しまたは高周波焼戻しのいずれかを施すことにより、熱処理後の組立て工程における外輪の他方の鍔の折り曲げ加工を容易に行うことができる。なお、炉焼戻しや高周波焼戻しも、雰囲気調整が不要で簡便に行うことができる。
前記シェル型外輪の軌道面の表面硬さをビッカース硬度HV653以上とすることにより、苛酷な潤滑条件下であっても、表面起点型剥離等の表面損傷が早期に発生するのを防止することができる。
前記シェル型外輪の軌道面の周方向面粗度をRa0.05〜0.3μmとすることにより、軌道面での針状ころの転走に伴う音響のレベルを低減し、軸受使用中の静粛性を高めることができる。周方向面粗度の下限をRa0.05μmとしたのは、これよりも周方向面粗度が細かくなって軌道面が滑らかになり過ぎると、転走する針状ころの弾性接触領域に保持される潤滑油が少なくなり、表面起点型剥離等の表面損傷が生じやすくなるからである。周方向面粗度の上限をRa0.3μmとしたのは、以下の理由による。
本発明者らは、シェル型外輪の軌道面の面粗度を変えたシェル型針状ころ軸受について、回転試験機を用いた音響測定試験を行い、軌道面の周方向面粗度を細かくすると軸受の音響レベルが効果的に低減されることを知見し、図10に示すように、これをRa0.3μm以下にすると、音響レベルを大幅に低減できることを確認した。この軌道面の周方向面粗度が音響レベルの低減に特に効果があるのは、つぎのように考えられる。すなわち、針状ころのころ径に対してころの回転方向の凹凸(周方向面粗度)がある程度以上に粗くなると、針状ころの上下振動が大きくなって大きな音響が発生する。針状ころのころ径は比較的小さいので、周方向面粗度がRa0.3μmを超えると、大きな音響が発生するものと思われる。
前記シェル型外輪の軌道面の軸方向面粗度をRa0.3μm以下とすることにより、針状ころの転走に伴う音響のレベルをさらに低減し、軸受使用中の静粛性をより高めることができる。針状ころはころ径に較べてころ長が長いので、軌道面の幅方向の凹凸(軸方向面粗度)も針状ころの上下振動に影響し、軸方向面粗度がRa0.3μmを超えると、音響が大きくなるものと思われる。
前記プレス加工の絞り工程での絞り回数を3回以下とし、最終回の絞り工程をしごき加工を加える絞りしごき工程とすることにより、プレス加工用の金型数と工程数を減らし、製造コストをさらに低減することができる。また、絞り回数を減らすことにより、各金型の設定誤差等に起因するカップ成形物の寸法精度低下も抑制することができる。
なお、絞りしごき加工では、単なる絞り加工よりも大きな絞り比が得られることが知られている。すなわち、絞り加工では縮みフランジの変形抵抗とフランジ部でのしわ押さえ力に起因する引張応力によるポンチ肩部での破断で絞り限界が決まるが、絞りしごき加工では、このポンチ肩部に作用するフランジ側からの引張応力がしごき部で遮断されるので、絞り性があまりよくない炭素含有量が0.3質量%以上の中・高炭素鋼であっても十分な絞り比を得ることができる。
前記シェル型外輪をリン酸塩皮膜処理鋼鈑から形成することにより、プレス加工におけるプレス加工油の保持能力を高め、より低級なプレス加工油を用いてシェル型外輪をプレス加工することができる。
前記コンプレッサは、斜板式のエアコンプレッサとすることができる。
また、本発明の針状ころ軸受は、上述したいずれかのコンプレッサ主軸の支持構造における前記主軸の支持に用いることができる。
本発明のコンプレッサ主軸の支持構造は、コンプレッサ主軸を支持する針状ころ軸受を、鋼板のプレス加工で形成したシェル型外輪の軌道面に沿って複数の針状ころを配列したシェル型針状ころ軸受とし、このシェル型外輪用にプレス加工される鋼板を、炭素含有量が0.3質量%以上の中・高炭素鋼として、プレス加工で形成されたシェル型外輪の少なくとも軌道面を、高周波焼入れまたは光輝焼入れすることにより、雰囲気調整を必要とせず簡便な熱処理設備で、シェル型外輪の表面から内部までの強度を短時間に高め、その表面起点型剥離や内部起点型剥離の発生によって決まるシェル型針状ころ軸受の寿命を十分に確保できるようにしたので、エアコンディショナの冷却効率を向上させた上で、コンプレッサの一層のコンパクト化と低価格化を実現することができる。
前記シェル型外輪を、Si、Ni、Moの少なくともいずれかの合金元素を含み、これらの合金元素の含有量がそれぞれ0.35質量%以下の鋼板から形成することにより、プレス加工性を高めることができる。
前記シェル型外輪を、予め球状化焼鈍を施し、炭化物の球状化率を50%以上とした鋼板から形成することにより、炭素含有量が0.3質量%以上の中・高炭素鋼であっても十分な伸びと軟らかさを有するものとし、これを安定してシェル型外輪にプレス加工することができる。
前記高周波焼入れまたは光輝焼入れしたシェル型外輪に、炉焼戻しまたは高周波焼戻しのいずれかを施すことにより、熱処理後の組立て工程における外輪の他方の鍔の折り曲げ加工を容易に行うことができる。
前記軌道面の表面硬さをビッカース硬度HV653以上とすることにより、苛酷な潤滑条件下であっても、表面起点型剥離等の表面損傷が早期に発生するのを防止することができる。
前記シェル型外輪の軌道面の周方向面粗度をRa0.05〜0.3μmとすることにより、軌道面での針状ころの転走に伴う音響のレベルを低減し、軸受使用中の静粛性を高めることができる。
前記シェル型外輪の軌道面の軸方向面粗度をRa0.3μm以下とすることにより、針状ころの転走に伴う音響のレベルをさらに低減し、軸受使用中の静粛性をより高めることができる。
前記プレス加工の絞り工程での絞り回数を3回以下とし、最終回の絞り工程をしごき加工を加える絞りしごき工程とすることにより、プレス加工用の金型数と工程数を減らし、製造コストをさらに低減することができる。また、絞り回数を減らすことにより、各金型の設定誤差等に起因するカップ成形物の寸法精度低下も抑制することができる。
前記鋼板をリン酸塩皮膜処理鋼鈑とすることにより、プレス加工におけるプレス加工油の保持能力を高め、より低級なプレス加工油を用いてシェル型外輪をプレス加工することができる。
以下、図面に基づき、この発明の実施形態を説明する。図1は、第1の実施形態のコンプレッサ主軸の支持構造を採用した自動車用エアコンディショナのコンプレッサを示す。このコンプレッサは、主軸11に固定された斜板12の回転により、斜板12上を摺動するシュー13を介して、圧縮動作部材であるピストン14を往復動作させる両斜板タイプのコンプレッサであり、高速で回転駆動される主軸11は、冷媒が存在するハウジング15内で、ラジアル方向を2つのシェル型針状ころ軸受1aで支持され、スラスト方向をスラスト針状ころ軸受16で支持されている。
前記ハウジング15には周方向に等間隔で複数のシリンダボア17が形成され、各ボア17内に両頭形のピストン14が往復自在に収納されている。各ピストン14には斜板12の外周部を跨ぐように凹部14aが形成され、この凹部14aの軸方向対向面に形成された球面座18に、球状のシュー13が着座されている。このシュー13は半球状のものもあり、ピストン14を斜板12の回転に対して相対移動自在に支持する。これによって、斜板12の回転運動からピストン14の往復運動への変換が円滑に行われる。
前記主軸11のラジアル方向を支持する各シェル型針状ころ軸受1aは、図2に示すように、プレス加工で形成されたシェル型外輪2aの軌道面3に沿って、複数の針状ころ4を配列したものであり、各針状ころ4は保持器5で保持され、外輪2aの両端部には鍔6a、6bが形成されている。シェル型外輪2aに用いられた鋼板は、中炭素鋼である炭素含有量が0.4質量%の構造用炭素鋼S40Cであり、表面にリン酸塩皮膜処理が施されたリン酸塩皮膜処理鋼板とされている。この鋼板には、炭素含有量が0.3〜0.5質量%の中炭素鋼のほかに、炭素含有量が0.5質量%以上の高炭素鋼を用いることもできる。
図3は、前記シェル型外輪2aを製造する概略の工程を示す。まずプレス加工により、前記リン酸塩皮膜処理鋼鈑の円形ブランクが、1回の絞りしごき工程でカップ状に成形され、決め押し工程でカップ底コーナ部が所定のコーナ半径に決め押し成形される。つぎに、底抜き工程でカップ底中央部が打ち抜かれて外輪2aの一方の鍔6a(図2参照)が形成され、トリミング工程でカップ上端が均一な高さにトリミングされるとともに、他方の鍔6b(図2参照)が形成されるカップ上端部が減厚加工される。こののち、プレス加工された外輪2aは、熱処理工程で高周波焼入れを施され、最後の組立て工程で、他方の鍔6bが内方への折り曲げ加工により形成される。なお、外輪2aの熱処理は光輝焼入れとしてもよい。また、このシェル型外輪2aは、1回の絞りしごき工程でカップ状に成形されているので、金型の設定誤差等に起因する寸法精度低下も少ない。
図4(a)、(b)は、それぞれ前記シェル型外輪2aの軌道面3の周方向面粗度と軸方向面粗度を示す。図4(a)に示す周方向面粗度は、外輪2aの長さ方向中央位置で測定したものであり、Ra0.18μmと非常に細かくなっている。図示は省略するが、両端から各2mmの位置で測定した周方向面粗度もRa0.05〜0.3μmの範囲に入っていた。また、図4(b)に示す軸方向面粗度は、周方向に90°の位相で4箇所測定したものの1つであり、Ra0.15μmと非常に細かくなっている。図示は省略するが、他の位相で測定した軸方向面粗度も、いずれもRa0.3μm以下と非常に細かくなっていた。
図5は、第2の実施形態のコンプレッサ主軸の支持構造を採用した自動車用エアコンディショナのコンプレッサを示す。このコンプレッサは片斜板タイプのコンプレッサであり、主軸21に連結された連結部材22の回転により、連結部材22の傾斜面22aにボール23とスラスト針状ころ軸受24で支持された斜板25を揺動運動させ、この斜板25の揺動運動をピストンロッド26を介して、片頭形のピストン27の往復運動に変換するものである。この主軸21はハウジング28内で、ラジアル方向を1つのシェル型針状ころ軸受1bで支持され、スラスト方向を連結部材22を介してスラスト針状ころ軸受29で支持されている。
前記シェル型針状ころ軸受1bは、第1の実施形態のものと同様に、図3に示した製造工程で製造されたシェル型外輪2bを用いており、シェル型外輪2bに用いられた鋼板は、炭素含有量が0.85質量%である工具鋼SK5を、球状化焼鈍によって炭化物の球状化率を50%以上としたものであり、表面にリン酸塩皮膜処理が施されている。この鋼板には、工具鋼のほかに、構造用炭素鋼S30C〜S58C、SAE1040〜1095や軸受鋼SUJ2等を用いることもできる。図示は省略するが、シェル型外輪2bの軌道面3の面粗度も、図4(a)、(b)に示した第1の実施形態のものと同様に、周方向面粗度がRa0.05〜0.3μmの範囲に入り、軸方向面粗度がRa0.3μm以下となっている。
図6は、前記球状化焼鈍した工具鋼SK5の鋼板を引張試験した結果を示す。鋼板の伸びは炭化物の球状化率に比例して増大し、球状化率が50%で伸びが20%程度、球状化率が100%で伸びが40%程度となっている。したがって、炭素含有量が0.3質量%以上の中・高炭素鋼であっても、球状化率を50%以上にすると、十分な伸びと軟らかさを有するようになり、これを安定してシェル型外輪2bにプレス加工することができる。
図7は、第3の実施形態のコンプレッサ主軸の支持構造を採用した自動車用エアコンディショナのコンプレッサを示す。このコンプレッサは片斜板タイプの可変容量コンプレッサであり、主軸31に連結された連結部材32の傾斜角度が、主軸31に嵌めこまれたスリーブ33を軸方向へスライドさせることにより、変更可能とされている。連結部材32にスラスト針状ころ軸受34で支持された斜板35の揺動運動は、第2の実施形態のものと同様に、ピストンロッド36を介して、片頭形のピストン37の往復運動に変換される。この主軸31はハウジング38内で、ラジアル方向を2つのシェル型針状ころ軸受1cで支持され、スラスト方向をスラスト針状ころ軸受39で支持されている。
前記シェル型針状ころ軸受1cは、図3に示した製造工程におけるトリミング工程の後の熱処理工程で、高周波焼入れと炉焼戻しまたは高周波焼戻しを施して製造したシェル型外輪2cを用いている。シェル型外輪2cに用いられた鋼板は、C含有量が0.52〜0.58質量%、Si含有量が0.15〜0.35質量%の構造用炭素鋼S55Cであり、表面にリン酸塩皮膜処理が施されている。この鋼板は、C含有量が0.3質量%以上で、Si、Ni、Moの少なくともいずれかの合金元素を含み、これらの合金元素の含有量がそれぞれ0.35質量%以下のものであればよく、他の構造用炭素鋼SAE1070や工具鋼SK5等を用いることもできる。シェル型外輪2cの軌道面3の面粗度も、図4(a)、(b)に示した第1の実施形態のものと同様に、周方向面粗度がRa0.05〜0.3μmの範囲に入り、軸方向面粗度がRa0.3μm以下となっている。
図8(a)は、前記各シェル型外輪2a、2b、2cを高周波焼入れしたときの焼入れパターンを示す。ハッチングを施した部分が焼入れ部位Aであり、軌道面3が設けられる円筒部とカップ底の打ち抜きで形成された一方の鍔6aに高周波焼入れが施され、組立て工程で折り曲げ加工により形成される他方の鍔6bは未硬化のままとされている。軌道面3の表面硬さはビッカース硬度でHV653以上とされ、ハッチングを施した焼入れ部位Aの有効硬化層の部分はHV513以上となっている。
図8(b)、(c)は、それぞれ前記各シェル型外輪2a、2b、2cを高周波焼入れしたときの焼入れパターンの変形例を示す。(b)の焼入れパターンは、円筒部と両側の鍔6a、6bの全体に高周波焼入れを施したもの、(c)の焼入れパターンは、両側の鍔6a、6bを除く円筒部の軌道面3側のみに高周波焼入れを施したものであり、いずれも図8(a)の焼入れパターンと同様に、軌道面3の表面硬さはビッカース硬度でHV653以上とされ、ハッチングを施した焼入れ部位Aの有効硬化層の部分はHV513以上となっている。なお、高周波焼入れは、局部を順に短時間で加熱、冷却するので、図8(b)のように全体を熱処理する場合も、図8(a)、(c)のように部分的に熱処理する場合も、熱ひずみが生じ難い利点がある。
実施例として、構造用炭素鋼S40Cの鋼板をプレス加工して高周波焼入れを施したシェル型外輪を用いた図2のシェル型針状ころ軸受を用意した。また、比較例として肌焼鋼SCM415の鋼板をプレス加工して浸炭焼入れを施したシェル型外輪を用いたシェル型針状ころ軸受も用意した。軸受寸法は実施例、比較例とも内径22mm、幅16mmとし、比較例のシェル型外輪の浸炭焼入れにおける熱処理時間は3時間とした。
上記実施例と比較例のシェル型針状ころ軸受を、それぞれ回転試験機の回転軸に取り付けて軸受寿命試験を行った。軸受寿命はL10寿命(サンプルの10%に表面起点型剥離や内部起点型剥離が発生するまでの時間)で評価した。試験条件は以下の通りである。
・負荷荷重:4776N
・回転数 :8000rpm
・潤滑油 :マルチパーパス油♯5を循環給油
上記軸受寿命試験の結果を図9に示す。シェル型外輪を構造用炭素鋼S40Cで形成して高周波焼入れした実施例のものは、シェル型外輪を肌焼鋼SCM415で形成して浸炭焼入れした比較例のものの3倍に近いL10寿命となっており、表面起点型剥離や内部起点型剥離が発生するまでの軸受寿命を著しく延長できることが分かる。なお、比較例のものは、内部起点型剥離の発生によって軸受寿命が短くなっている。
上述した各実施形態では、シェル型外輪のプレス加工における絞り工程を1回のみとし、しごき工程をこの1回の絞り工程と同時に行う絞りしごき工程としたが、絞り工程を3回以下の複数回とし、しごき工程を最終回の絞り工程と同時に行う絞りしごき工程としてもよく、しごき工程を絞り工程または決め押し工程の後で別に行ってもよい。
第1の実施形態のコンプレッサ主軸の支持構造を採用したコンプレッサを示す縦断面図 図1のシェル型針状ころ軸受を示す縦断面図 図2のシェル型外輪の概略の製造工程を示す工程図 a、bは、それぞれ図3の製造工程で製造したシェル型外輪の軌道面の周方向と軸方向の面粗度を示すグラフ 第2の実施形態のコンプレッサ主軸の支持構造を採用したコンプレッサを示す縦断面図 図5のシェル型外輪に用いた鋼板の引張試験結果を示すグラフ 第3の実施形態のコンプレッサ主軸の支持構造を採用したコンプレッサを示す縦断面図 aは図2のシェル型外輪の焼入れパターンを示す断面図、b、cは、それぞれaの焼入れパターンの変形例を示す断面図 図2のシェル型針状ころ軸受の軸受寿命試験の結果を示すグラフ シェル型針状ころ軸受の音響測定試験における外輪軌道面の周方向面粗度と音響レベルの関係を示すグラフ
符号の説明
1a、1b、1c シェル型針状ころ軸受
2a、2b、2c シェル型外輪
3 軌道面
4 針状ころ
5 保持器
6a、6b 鍔
11 主軸
12 斜板
13 シュー
14 ピストン
14a 凹部
15 ハウジング
16 スラスト針状ころ軸受
17 ボア
18 球面座
21 主軸
22 連結部材
22a 傾斜面
23 ボール
24 スラスト針状ころ軸受
25 斜板
26 ピストンロッド
27 ピストン
28 ハウジング
29 スラスト針状ころ軸受
31 主軸
32 連結部材
33 スリーブ
34 スラスト針状ころ軸受
35 斜板
36 ピストンロッド
37 ピストン
38 ハウジング
39 スラスト針状ころ軸受

Claims (11)

  1. コンプレッサの圧縮動作部材を回転駆動させる主軸と、この主軸をコンプレッサ内で支持する針状ころ軸受とからなるコンプレッサ主軸の支持構造において、前記針状ころ軸受を、鋼板のプレス加工で形成されるシェル型外輪の軌道面に沿って複数の針状ころを配列したシェル型針状ころ軸受として、前記鋼板を炭素含有量が0.3質量%以上の中・高炭素鋼とし、前記プレス加工で形成したシェル型外輪の少なくとも軌道面を、高周波焼入れまたは光輝焼入れしたことを特徴とするコンプレッサ主軸の支持構造。
  2. 前記シェル型外輪を、Si、Ni、Moの少なくともいずれかの合金元素を含み、これらの合金元素の含有量がそれぞれ0.35質量%以下の鋼板から形成した請求項1に記載のコンプレッサ主軸の支持構造。
  3. 前記シェル型外輪を、予め球状化焼鈍を施し、炭化物の球状化率を50%以上とした鋼板から形成した請求項1または2に記載のコンプレッサ主軸の支持構造。
  4. 前記高周波焼入れまたは光輝焼入れしたシェル型外輪に、炉焼戻しまたは高周波焼戻しのいずれかを施した請求項1乃至3のいずれかに記載のコンプレッサ主軸の支持構造。
  5. 前記シェル型外輪の軌道面の表面硬さをビッカース硬度HV653以上とした請求項1乃至4のいずれかに記載のコンプレッサ主軸の支持構造。
  6. 前記シェル型外輪の軌道面の周方向面粗度をRa0.05〜0.3μmとした請求項1乃至5のいずれかに記載のコンプレッサ主軸の支持構造。
  7. 前記シェル型外輪の軌道面の軸方向面粗度をRa0.3μm以下とした請求項1乃至6のいずれかに記載のコンプレッサ主軸の支持構造。
  8. 前記プレス加工の絞り工程での絞り回数を3回以下とし、最終回の絞り工程をしごき加工を加える絞りしごき工程とした請求項1乃至7のいずれかに記載のコンプレッサ主軸の支持構造。
  9. 前記シェル型外輪をリン酸塩皮膜処理鋼鈑から形成した請求項1乃至8のいずれかに記載のコンプレッサ主軸の支持構造。
  10. 前記コンプレッサが斜板式のエアコンプレッサである請求項1乃至9のいずれかに記載のコンプレッサ主軸の支持構造。
  11. 請求項1乃至10のいずれかに記載のコンプレッサ主軸の支持構造における前記主軸の支持に用いた針状ころ軸受。
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