JP2005225859A - 環境調和型ナフタレン類水素化システム - Google Patents

環境調和型ナフタレン類水素化システム Download PDF

Info

Publication number
JP2005225859A
JP2005225859A JP2004270570A JP2004270570A JP2005225859A JP 2005225859 A JP2005225859 A JP 2005225859A JP 2004270570 A JP2004270570 A JP 2004270570A JP 2004270570 A JP2004270570 A JP 2004270570A JP 2005225859 A JP2005225859 A JP 2005225859A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
naphthalene
reaction
catalyst
decalin
naphthalenes
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2004270570A
Other languages
English (en)
Other versions
JP4512762B2 (ja
Inventor
Masayuki Shirai
誠之 白井
Takashi Sato
剛史 佐藤
Ritsuko Miura
律子 三浦
Kazuo Torii
一雄 鳥居
Norito Hiyoshi
範人 日吉
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
Original Assignee
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST filed Critical National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
Priority to JP2004270570A priority Critical patent/JP4512762B2/ja
Publication of JP2005225859A publication Critical patent/JP2005225859A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4512762B2 publication Critical patent/JP4512762B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Abstract

【課題】 工業的に有利にナフタレン類を水素化することが可能な新規ナフタレン類水素化システム等を提供する。
【解決手段】 二酸化炭素を反応に関与させたナフタレン類の水素化反応において、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、白金等の白金族金属を担持した触媒を用いることによって、従来技術より反応温度を下げ、且つ反応時間を短縮してナフタレン類を効率的に水素化することを可能とする環境調和型のナフタレン類の水素化システム、ナフタレン類の水素化物の製造方法、及びナフタレン類水素化用白金族金属担持触媒。
【効果】 デカリンを効率的に合成することを可能とする環境調和型のナフタレン類の水素化システム、及びナフタレン類の水素化物の製造方法を提供することができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、環境調和型ナフタレン類水素化システムに関するものであり、更に詳しくは、二酸化炭素と高活性の白金族金属担持触媒を用い、ナフタレン類を効率良く水素化する環境調和型プロセスに関するものである。従来、例えば、ナフタレンの水素化によって得られるデカリンは、例えば、反応用溶媒、一般溶剤やアロマフリー溶剤等として工業的に重要な物質であり、また、自動車用燃料電池の開発が進展する中で、デカリンは、水素貯蔵媒体として注目されている。一方、テトラリンは、溶剤、ペイント、モーター燃料などとして用いられている。本発明は、ナフタレン類の水素化物であるデカリン及び/又はテトラリンの工業的製造の技術分野において、従来の高温及び長時間の反応プロセスに代わる、反応温度を低下させ、且つ反応時間を短縮することが可能な効率的で簡便な水素化プロセスの開発が強く求められていたことを踏まえ、このような工業的に重要な物質を、有害な有機溶媒等を使用しない環境調和型プロセスによって、効率的に製造することを可能とする新規の環境調和型ナフタレン類水素化システム及びナフタレン類の水素化物の製造方法を提供し、新しいナフタレン類の水素化物の工業的生産技術を確立することを実現するものである。
従来、ナフタレンの水素化反応について、例えば、窒素・水素混合ガスを流通させ、10%ナフタレン−ノルマルヘプタン溶液を注入し、反応温度220〜340℃、反応圧力6MPa及び水素/ナフタレン=15mol/molの条件でMCM−41担持ロジウム触媒を用い、流通方式でナフタレンの水素化反応が検討されている。この反応方法では、反応温度260℃、接触時間6.8秒で転化率95.2%、生成物の収率はテトラリン52.6%、デカリン27.1%及び高分子環状生成物14.6%の値が示され、収率の残量は分解生成物であるとされている(非特許文献1)。
ナフタレンの水素化反応において、部分水素化物であるテトラリンの製造は、比較的容易であるとされているが、テトラリンからデカリンへの完全水素化は、かなり時間がかかることが知られている。例えば、二酸化チタン担持白金触媒を用い、水素圧力2.96MPa、温度160℃、1時間の反応条件でトリデカンを溶媒として用い、テトラリン−ナフタレン混合系溶液の水素化反応を行い、テトラリンからデカリンへの水素化反応が検討されている。この反応方法では、ナフタレン含有量が5mol%以下では、転化率100%及び選択率100%でデカリンが得られるが、ナフタレン含有量が10mol%では、生成物の組成は、テトラリン55.1mol%、ナフタレン0.3mol%及びデカリン44.6mol%となり、転化率44.1%及びデカリン選択率44.1%と水素化反応の進行が遅くなっているのが判る。一方、ナフタレンだけを水素化した場合は、転化率0.7%及び選択率0.7%でテトラリンが得られ、デカリンは得られないことが報告されている(非特許文献2)。
活性炭担持白金触媒を用い、水素圧力2MPa、温度200℃、6時間の反応条件で一段目の水素化反応を行い、ナフタレンからテトラリン93mass%及びナフタレン7mass%を含む生成油が得られている。これを蒸留してテトラリン99.9mass%及びナフタレン0.1mass%を含む抽出油を得、一段目と全く同じ条件で二段目の水素化反応を行い、抽出油からデカリン99.5mass%及びテトラリン0.5mass%の生成油が得られることが知られている(特許文献1)。
一方、別のプロセスでは、先ず最初に、硫化コバルトモリブデン触媒を用いて、水素圧力5MPa、300℃でナフタレンから水素化脱硫反応(反応時間5時間)を触媒交換して3回行い、硫黄分3mass ppmの水素化精製油(テトラリン12mass%及びナフタレン88mass%)が調製されている。この水素化精製油に対して、活性炭担持白金触媒を用い、水素圧力2MPa、温度200℃、5時間の反応条件で水素化反応を行い、デカリン93mass%及びテトラリン7mass%を含む生成油が得られたことが報告されている(特許文献2)。
上記の非特許文献1に示されるように、ナフタレンの水素化反応は、通常、200℃以上の反応温度で行われており、テトラリンは得られやすいが、高濃度のデカリンを一段反応で得るのはかなり困難であることが判る。また、非特許文献1では、反応温度が高くなると、分解生成物や高分子環状生成物が得られて反応が阻害され、また、反応温度が高くなると触媒活性が低下することも指摘されている。更に、反応プロセスに有害な有機溶媒が用いられる場合も多い(非特許文献1、2)。
上記の特許文献1の水素化方法は、一段目の水素化反応でナフタレンからテトラリンを製造し、二段目の水素化反応でテトラリンからデカリンを製造する方法であるが、この種の方法は、テトラリンにナフタレンが含有していると二段目の水素化反応の進行が困難となるため(非特許文献2)、蒸留によってテトラリンからナフタレンを除去する必要が有り、プロセスが煩雑となる等の問題点を有する。また、二段目の水素化反応においても、反応温度が200℃と高く、且つ反応時間が6時間と長くなる欠点が認められる。一方、特許文献2の方法で、水素化反応を達成するには、水素化反応に用いる基質溶液の調製に、300℃、15時間の水素化脱硫工程を必要とし、更に、水素化工程においても、反応温度を200℃と高温にする必要があり、且つ反応時間が5時間と長くなる等の問題点が認められる。そのため、当技術分野においては、より低温で、且つ短時間でナフタレン類の水素化を行うことを可能する簡便な環境調和型プロセスの開発が強く求められていた。
特開平2003−160515号公報 特開平2003−212800号公報 S.Albertazzi, R.Ganzerla, C.Gobbi, M.Lenarda, M.Mandreoli, E.Salatelli, P.Savini, L.Storaro, A.Vaccari, Journal of Molecular Catalysis A: Chemical, 200, 261-270(2003) K.Ito, Y.Kogasaki, H.Kurokawa, M.Ohshima, K.Sugiyama, H.Miura, Fuel Processing Technology,79, 77-80(2002)
前述したように、従来のナフタレンの水素化プロセスでは、不純物の影響によって水素化反応が妨害されるため、プロセスが煩雑化したり、あるいは反応温度を高くして、且つ反応時間を長くする必要がある等の問題点があり、そのため、反応温度を低下させ、且つ反応時間を短縮することが可能な効率的で簡便な水素化プロセスの開発が強く要望されていた。このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、これらの問題点を抜本的に解決すべく長年鋭意研究を積み重ねた結果、超臨界状態などの二酸化炭素と白金族金属担持触媒を反応に関与させることによって、反応温度を低下させ、且つ効率的にナフタレン類の水素化反応が進行することを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、例えば、超臨界条件下の二酸化炭素と白金族金属担持触媒を用いることによって、ナフタレン類を、より低温で、且つ反応時間を短縮して、効率良く水素化することが可能な、環境調和型のナフタレン類の新規水素化システム及びナフタレン類の水素化物の製造方法を提供することを目的とするものである。
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)ナフタレン類を水素化する反応システムにおいて、二酸化炭素の亜臨界ないし超臨界流体と白金族金属担持触媒を組み合わせたことを特徴とする環境調和型ナフタレン類水素化システム。
(2)白金族金属担持触媒として、ロジウム、ルテニウム、パラジウム及び白金から選択された少なくとも一種の白金族金属担持触媒を用いる前記(1)に記載のシステム。
(3)触媒の担体として、活性炭及び/又はアルミナを用いる前記(1)又は(2)に記載のシステム。
(4)二酸化炭素として、温度20〜250℃及び圧力0.1〜50MPaの二酸化炭素を用いる前記(1)に記載のシステム。
(5)温度20〜250℃及び圧力0.1〜50MPaの条件下の水素を用いる前記(1)に記載のシステム。
(6)二酸化炭素として、超臨界条件下の二酸化炭素を用いる前記(1)又は(4)に記載のシステム。
(7)ナフタレン類が、ナフタレンである前記(1)から(6)のいずれかに記載のシステム。
(8)ナフタレン類が、テトラリンである前記(1)から(6)のいずれかに記載のシステム。
(9)ナフタレン類が、ビフェニルである前記(1)から(6)のいずれかに記載のシステム。
(10)ナフタレン及び/又はテトラリンと水素を反応させて、デカリン及び/又はテトラリンを合成する前記(1)に記載のシステム。
(11)ナフタレン類を水素化してナフタン類の水素化物を製造する方法において、二酸化炭素を用いて白金族金属担持触媒の存在下、温度20〜250℃及び圧力0.2〜100MPaの反応条件でナフタレン類と水素を反応させて、ナフタレン類の水素化物を製造することを特徴とするナフタレン類の水素化物の製造方法。
(12)ナフタレン類として、ナフタレン及び/又はテトラリンを用い、デカリン及び/又はテトラリンを製造する前記(11)に記載のナフタレン類の水素化物の製造方法。
(13)白金族金属担持触媒からなることを特徴とする二酸化炭素の亜臨界ないし超臨界流体と組み合わせて使用するナフタレン類水素化用触媒。
(14)白金族金属担持触媒が、ロジウム、ルテニウム、パラジウム及び白金から選択された少なくとも一種の白金族金属担持触媒である前記(13)に記載のナフタレン類水素化用触媒。
(15)担体が、活性炭及び/又はアルミナである前記(13)に記載のナフタレン類水素化用触媒。
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明のナフタレン類の水素化技術についての説明を容易にするために、以下、ナフタレン、水素、二酸化炭素及び活性炭担持ロジウム触媒を、反応温度80℃に設定した内容積50mlの反応容器に導入して、ナフタレンを水素化してデカリンとテトラリンを合成する反応を例にとって詳細に説明する。本発明者らが、種々の実験を経て開発した本発明の水素化方法は、例えば、80℃の反応温度の反応容器内で二酸化炭素と触媒を用いて、ナフタレンと水素を30〜120分で反応させて、従来の反応温度より低い温度条件で、且つ反応時間を短縮して、ナフタレンを水素化してデカリンとテトラリンを製造することを特徴とするものである。本発明の環境調和型ナフタレン類水素化システムは、ナフタレン類を水素化する反応システムにおいて、二酸化炭素の亜臨界ないし超臨界流体と白金族金属担持触媒を組み合わせたことを特徴とするものである。本システムにおいて、二酸化炭素の亜臨界ないし超臨界流体と白金族金属担持触媒を組み合わせる構成の他は任意の反応システムを用いることができ、それらの具体的構成は任意に設計することができる。
本発明で、基質原料として用いられるナフタレン類として、好適には、例えば、ナフタレン、メチルナフタレン、ジメチルナフタレン等のアルキルナフタレン、フェナントレン、アントラセン、及び4環以上の多環芳香族化合物等を例示することができる。また、本発明では、ナフタレンと構造が類似しているビフェニル等も基質原料として用いることができる。更に、ナフタレンの水素化反応によって得られる部分水素化物であるテトラリン、メチルテトラリン、及びジメチルテトラリン等のアルキルテトラリンも、本発明における基質原料として用いることができる。
本発明によるナフタレン類の水素化物の製造方法の具体例として、例えば、ナフタレンを水素化してテトラリンやデカリンを合成する反応式を、下記の化1及び化2に示す。
Figure 2005225859
Figure 2005225859
本発明のナフタレンの水素化方法においては、上記の化1に示されるように、1個のナフタレンのナフタレン核に、4個の水素原子が付加して部分的水素化反応が進行してテトラリンが合成される。更に水素化反応を続行させれば、最終的にテトラリンの不飽和のナフタレン核が6個の水素原子によって完全に水素化され、デカリンが生成する。本発明では、テトラリンと大量のナフタタレンが共存する状態においても、低温で、且つ短時間で、デカリンが合成される傾向が強いことが認められ、本発明は、これらの水素化にも有用である。
本発明のナフタレン類の水素化反応に用いられる触媒としては、例えば、白金族金属担持触媒を好適に用いることができる。本発明の触媒中に含有される白金族金属としては、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、白金、オスミウム及びイリジウムを用いることができ、ロジウム、ルテニウム、パラジウム及び白金を最も有効に用いることができる。触媒中に、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、白金、オスミウム及びイリジウムから選択された少なくとも1種類以上の白金族金属を含有しているものであれば、本発明に有効に用いることができる。更に、これらのロジウム、ルテニウム、パラジウム、白金、オスミウム及びイリジウムの少なくとも1種類以上の白金族金属を含有する担持触媒に対して、Ni、Co、Fe、Zn、Cu、Mn、Pb、Cd、Cr、Ag、Au、Hg、Ga、In、Ge、Sn、Ti、Al、Si等の金属元素、Ca、Mg、Sr、Baの2A族元素、及び、Li、Na、K、Rb、Csのアルカリ金属の中から選択された少なくとも1種以上の金属元素を付加、あるいは合金化して作製した触媒を、本発明に有効に用いることもできる。本発明では、白金族金属の種類や担持量を変化させることによって、触媒活性や選択性を制御することができる。
ロジウム、ルテニウム、パラジウム、白金、オスミウム及びイリジウムから選択された少なくとも1種類以上の白金族金属を含有する本発明の担持触媒の担体としては、好適には、例えば、通常用いられている活性炭、アルミナ、チタニア、シリカ、マグネシア、シリカアルミナ、ジルコニア、ゼオライト、MCM−41等のメソ多孔体、合成スメクタイト系メソポア多孔体、合成スメクタイト、粘土、カオリン、タルク、ベントナイト、あるいはこれらのゲル、ゾルを用いることができる。これらの適当な担体を混合して触媒に供しても良い。担体は、その表面に金属等の触媒活性点を分散させて高表面積の触媒としたり、触媒の機械的強度を高めたりする目的で用いられる。担体は、反応を阻害したり触媒活性を阻害したりしないものであれば特に制限はなく、反応に対して触媒活性がある程度発現するものでも使用できる。また、本発明では、担体を変えることによって、触媒活性や選択性を制御することも可能である。
本発明に用いる触媒は、使用する前に、例えば、水素、窒素、アルゴン、二酸化炭素、酸素、空気などのガス気流中で加熱処理することにより活性化することが望ましい。その際の処理温度は、通常、50〜700℃の範囲であり、好ましくは80〜600℃の範囲であり、より好ましくは80〜500℃の範囲であり、及び最も好ましくは100〜500℃の範囲である。処理温度が50℃未満では、吸着物質の脱着が不十分となるため好ましくない。また、処理温度が700℃を越えると、触媒に含まれる担体の構造が壊れやすくなり、表面積が減少する傾向がでてくることや金属粒子の凝集が起こるので好ましくない。活性化処理の時間は、表面吸着物の量や処理温度により左右されるため、特に限定されるものではないが、通常、0.1〜100時間である。加熱処理することによって、選択率の向上や転化率を制御すること等が可能となる。
次に、本発明の実施態様について説明する。本発明を実施するに際し、その反応方法としては、バッチ式、セミバッチ式又は連続流通式の何れかの方法が使用される。本発明は、反応形態としては、触媒を固体状態として、液相、気相、超臨界流体相、及び固相の何れの形態でも、あるいはこれらの何れの組み合わせの形態でも実施でき、例えば、液−気混合相、固−液−気混合相、あるいは超臨界流体相の何れかの形態で実施することもできる。更に、本発明は、常圧、あるいは加圧の何れかの状態で実施することも可能である。反応効率的な観点から、好ましくは超臨界条件下の二酸化炭素を用いることが推奨されるが、本発明は、これに限定されるものでない。
反応温度は、20℃以上であれば特に限定はされないが、好ましい反応温度範囲は20〜250℃であり、より好ましい反応温度範囲は30〜200℃であり、更により好ましい反応温度範囲は30〜150℃であり、及び最も好ましい反応温度範囲は35〜100℃である。反応温度が、あまりに低ければ反応速度は低下して、効率の良い製造方法とはならず、また、極端に高くなれば反応装置コストやランニングコストが増大し、あるいは望ましい生成物の選択率や収率を低下させたりして経済的な方法とはならない。
本発明では、水素と二酸化炭素が反応に用いられる。通常用いられる反応圧力範囲は0.2〜150MPaであり、好ましい反応圧力範囲は0.2〜100MPaであり、より好ましい反応圧力範囲は1.1〜80MPaであり、更により好ましい反応圧力範囲は2〜60MPaであり、及び最も好ましい反応圧力範囲は8.4〜50MPaである。更に、本発明を実施するにあたり、例えば、バッチ反応を実施する際には、その反応時間は、特に限定されることはないが、好ましくは1分〜20時間であり、より好ましくは0.1〜5時間であり、更により好ましくは0.1〜3時間であり、最も好ましくは0.1〜2.5時間である。
水素化反応を実施するに際し、原料である水素とナフタレン類の仕込み組成は、特に限定はされないが、例えば、ナフタレンの水素化反応において高い転化率を達成するには、ナフタレンに対する水素のモル比を高くすることが望ましい(部分水素化で得られるテトラリンの理論当量は、ナフタレンに対し、水素は2当量である)。本発明においては、ナフタレン類に対する水素のモル比は、通常、0.1〜1000の範囲で実施されるが、1〜500の範囲で実施されることが好ましく、2〜200の範囲がより好ましく、2〜100の範囲が更により好ましく、及び2〜50の範囲が最も好ましい。勿論、本発明においては、これらの範囲の値のみに限定されるものではない。
本発明の水素化反応に用いられる水素の温度は、20℃以上、及び圧力は、0.1MPa以上であれば一向に差し支えない。好ましい温度範囲は20〜250℃であり、より好ましい温度範囲は30〜200℃であり、更により好ましい温度範囲は30〜150℃であり、及び最も好ましい温度範囲は35〜100℃である。一方、水素の好ましい圧力範囲は0.1〜50MPaであり、より好ましい圧力範囲は1〜40MPaであり、更により好ましい圧力範囲は1〜30MPaであり、及び最も好ましい圧力範囲は1〜25MPaである。
本発明の水素化反応に関与させる二酸化炭素の温度は、20℃以上、及び圧力は、0.1MPa以上であれば一向に差し支えない。二酸化炭素の好ましい温度範囲は20〜250℃であり、より好ましい温度範囲は30〜200℃であり、更により好ましい温度範囲は30〜150℃であり、及び最も好ましい温度範囲は35〜100℃である。一方、二酸化炭素の好ましい圧力範囲は0.1〜50MPaであり、より好ましい圧力範囲は0.1〜40MPaであり、更により好ましい圧力範囲は1〜30MPaであり、及び最も好ましい圧力範囲は7.4〜25MPaである。
本発明においては、ナフタレン類及び水素を仕込む際に、二酸化炭素を導入して反応に関与させるが、その際に、特に溶媒を使用する必要はない。しかしながら、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン、ノルマルデカン、シクロヘキサン、トリデカン、メタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、及びテトラヒドロフラン等の溶媒を用いて、ナフタレン類を希釈して仕込んでも一向に差し支えない。
本発明において、触媒の使用量は、特に限定されないが、例えば、バッチ反応にて実施する場合には、原料であるナフタレン類に対して重量%で0.01〜200%の範囲の値を用いることができ、好ましくは0.05〜100%の範囲の値を用いることができ、より好ましくは0.05〜70%の範囲の値を用いることができ、更に好ましくは0.1〜50%の範囲の値を用いることができ、及び最も好ましくは0.1〜40%の範囲の値を用いることができる。これらは、あまりに触媒使用量が少ない場合には、実質的に反応の進行が低下し、触媒使用量が多い場合には、接触等の効率を低下させて、製造コストの増加につながる等のトラブルが生じる恐れがあるためである。
本発明を実施し、水素及び二酸化炭素を放出した後、生成物は、得られた混合溶液中に未反応原料や触媒等と共に含有されるが、固体触媒と物理的手法によって分離でき、得られた反応溶液から、通常の蒸留、抽出、晶出、及びカラム分離等の分離精製方法により、目的の化合物を単離精製することができる。例えば、反応終了後、得られた液体生成物に対してガスクロマトグラフ−質量分析装置、液体クロマトグラフ測定装置、ガスクロマトグラフ測定装置、及びNMR測定装置等を用いて、生成化合物の同定や定量分析が行われ、水素化反応の転化率や選択性のデータを調べることができる。反応装置容量が小さい場合の反応では、生成物量が少ないため、便宜的にアセトン等の溶媒抽出によって生成物を回収して分析することも可能であり、反応効率等について検討することもできる。
本発明においては、例えば、活性炭担持ロジウム触媒を用い、ナフタレンの水素化によってテトラリンとデカリンが得られるが、この反応を例にとって転化率及び選択率に及ぼす操作条件の効果を述べると、反応温度が50〜80℃の間では、ナフタレンの転化率は反応温度の上昇とともに高くなる。また、反応時間が長くなるにつれ、あるいは水素圧が高くなるに従って、ナフタレンの転化率が大きくなり、デカリンの選択率が向上する傾向を示す。以上、本発明について、ナフタレン、水素、二酸化炭素及び活性炭担体ロジウム触媒を用いて、ナフタレンを水素化してデカリンとテトラリンを合成する反応を例にとって説明したが、本発明は、これに制限されるものではなく、他のナフタレン類、白金族金属担持触媒の場合についても同様に適用し得るものであることは言うまでもない。本発明では、反応温度、水素圧、二酸化炭素圧、反応時間、触媒金属の種類、及び触媒量等を変化させることによって、技術的及び経済的に最適な反応条件を選択できる。
本発明のナフタレンの水素化反応技術では、ナフタレンを効率よく水素化でき、例えば60℃条件下、ナフタレン転化率100%及び選択性100%でデカリンが得られる。ナフタレンの水素化反応では芳香環の一部分が水素化されたテトラリンと全てが水素化されたデカリンが得られる。従来のナフタレン水素化ではテトラリンは得やすいが、高濃度のデカリンを1段の反応で合成することは困難であった。デカリンは、分散型燃料電池用水素貯蔵材料やアロマフリー溶剤として用いられる。これまでのナフタレンを水素化してテトラリンやデカリンを合成する手法は、反応温度200℃以上で行われているが、従来のプロセスは、反応温度が高いため、分解副成物や高分子環状複成物ができて収率が下がること、副生物により触媒表面が汚れ活性が大幅に減少(寿命が大幅に低下)することが問題視されていた。更に、部分水素化体であるテトラリンまでしか水素化反応が進行せず、デカリン選択性が低いことも技術的課題であった。本発明の合成方法では、大幅に反応温度を低下させると共にデカリン選択性が飛躍的に向上すること、超臨界二酸化炭素の溶媒効果によって、触媒表面が清浄化され、触媒の繰り返し使用や長期使用が可能となることなど省エネルギーかつ環境負荷低減技術を提供できる。本発明では、例えば、超臨界二酸化炭素溶媒と担持ロジウム触媒を用いることによって、反応温度60℃、収率100%でナフタレンからデカリンが得られる。
これまで報告されている高温(200℃以上)でのナフタレンの水素化法では、高分子環状物や分解物が非常に多く生成する(非特許文献1)。これに対して本発明の手法では反応温度を大幅に低下させることができるため、デカリンとテトラリンがほとんどであり、高分子環状物やベンゼン、アルキルベンゼン、ポリアルキルオレフィンなどの分解物はほどんど生成しないという特徴を有する。すなわち、超臨界二酸化炭素でナフタレンを水素化してデカリンをつくると非常に純度が高いものが得られる。本発明の生成物のデカリンは、例えば、水素貯蔵材料としての用途を有しているが、従来の生成法では、収率との関係でこのような高純度の生成物を作製し、提供することは現実的ではなく、実際上、水素貯蔵材料として使われるデカリンの純度から本発明の生成法を見分けることが可能である。
本発明によれば、(1)二酸化炭素を反応に関与させてナフタレン類の水素化反応を行い、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、及び白金等の白金族金属を担持した触媒を用いることによって、従来技術より反応温度を下げ、且つ反応時間を短縮することが可能となる、(2)有害な有機溶媒を使用しない環境調和型のナフタレン類の水素化システム及びナフタレン類の水素化物の製造方法を提供できる、(3)新たな担持金属触媒をナフタレン類の水素化方法に適用して、高効率、且つ経済的に反応させることができる、(4)反応に用いる触媒は固体であり、通常得られる液体生成物を簡単に分離でき、蒸留やカラム分離などによって精製できる、(5)工業的に重要なナフタレン類の水素化物の製造を効率的に実施できる新規ナフタレン類の水素化物の工業的製造技術を提供できる、という効果が奏される。
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。しかしながら、本実施例は、本発明の好適な例を具体的に説明したものであり、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
内容積50mlのステンレス製高圧反応装置に、ナフタレン(和光特級試薬)0.2994gと活性炭担持ロジウム触媒(金属担持量5%、Wako Chemicals製品)0.1018gを入れ、この反応装置に、圧力6.0MPaの水素及び圧力10.0MPaの二酸化炭素を導入して、反応温度80℃で60分間水素化反応を行った。反応終了後、反応温度を下げて水素と二酸化炭素を放出して生成物を得たが、その量が少ないため、アセトン抽出によって回収し、ガスクロマトグラフ−質量分析装置を用いて分析した。その結果、ナフタレンの転化率は100%であり、生成物の選択率はデカリン62.2%及びテトラリン37.8%であった。デカリンは2種類の異性体が存在し、トランスデカリンの選択率は16.9%及びシスデカリンの選択率は45.3%であった。
実施例1と同様に基質原料を反応させて生成物を得た。ただし、反応時間を120分に変更して以下の反応条件により実施した。
反応条件
基質原料:ナフタレン0.2993g
水素圧力:6.1MPa
二酸化炭素圧力:10.2MPa
触媒:活性炭担持ロジウム触媒(金属担持量5%、Wako Chemicals製品) 0.1019g
反応温度:80℃
反応時間:120分
ナフタレンの転化率は100%であり、生成物の選択率はデカリン100%であった。デカリンは2種類の異性体が存在し、トランスデカリンの選択率は23.9%及びシスデカリンの選択率は76.1%であった。
実施例1と同様に基質原料を反応させて生成物を得た。ただし、反応時間を30分に変更して以下の条件により実施した。
反応条件
基質原料:ナフタレン0.2998g
水素圧力:6.1MPa
二酸化炭素圧力:10.1MPa
触媒:活性炭担持ロジウム触媒(金属担持量5%、Wako Chemicals製品) 0.1001g
反応温度:80℃
反応時間:30分
ナフタレンの転化率は65.5%であり、生成物の選択率はデカリン41.7%及びテトラリン58.3%であった。デカリンは2種類の異性体が存在し、トランスデカリンの選択率は8.6%及びシスデカリンの選択率は33.1%であった。
実施例1と同様に基質原料を反応させて生成物を得た。ただし、ナフタレン試料量を0.1013gに、水素圧力条件を9.0MPaに及び反応時間を120分に変更して以下の条件により実施した。
反応条件
基質原料:ナフタレン0.1013g
水素圧力:9.0MPa
二酸化炭素圧力:10.1MPa
触媒:活性炭担持ロジウム触媒(金属担持量5%、Wako Chemicals製品) 0.1016g
反応温度:80℃
反応時間:120分
ナフタレンの転化率は100%であり、生成物の選択率はデカリン100%であった。デカリンは2種類の異性体が存在し、トランスデカリンの選択率は21.9%及びシスデカリンの選択率は78.1%であった。
実施例4と同様に基質原料を反応させて生成物を得た。ただし、水素圧力条件を3.8MPaに、二酸化炭素圧力を12.2MPaに及び反応時間を10分に変更して以下の条件により実施した。
反応条件
基質原料:ナフタレン0.3024g
水素圧力:3.8MPa
二酸化炭素圧力:12.2MPa
触媒:活性炭担持ロジウム触媒(金属担持量5%、Wako Chemicals製品) 0.1014g
反応温度:80℃
反応時間:10分
ナフタレンの転化率は35.5%であり、生成物の選択率はデカリン38.1%及びテトラリン61.9%であった。デカリンは2種類の異性体が存在し、トランスデカリンの選択率は8.7%及びシスデカリンの選択率は29.4%であった。
実施例1と同様に基質原料を反応させて生成物を得た。ただし、反応温度を50℃に及び反応時間を120分に変更して以下の反応条件により実施した。
反応条件
基質原料:ナフタレン0.3016g
水素圧力:6.0MPa
二酸化炭素圧力:10.0MPa
触媒:活性炭担持ロジウム触媒(金属担持量5%、Wako Chemicals製品) 0.1018g
反応温度:50℃
反応時間:120分
ナフタレンの転化率は56.1%であり、生成物の選択率はデカリン67.0%及びテトラリン33.0%であった。デカリンは2種類の異性体が存在し、トランスデカリンの選択率は11.9%及びシスデカリンの選択率は55.1%であった。
実施例1と同様に基質原料を反応させて生成物を得た。ただし、ナフタレン試料量を0.1497gに、触媒量を0.0509gに及び反応温度を60℃に変更して以下の反応条件により実施した。
反応条件
基質原料:ナフタレン0.1497g
水素圧力:6.0MPa
二酸化炭素圧力:10.1MPa
触媒:活性炭担持ロジウム触媒(金属担持量5%、Wako Chemicals製品) 0.0509g
反応温度:60℃
反応時間:60分
ナフタレンの転化率は57.3%であり、生成物の選択率はデカリン49.0%及びテトラリン51.0%であった。デカリンは2種類の異性体が存在し、トランスデカリンの選択率は9.0%及びシスデカリンの選択率は40.0%であった。
実施例1と同様に基質原料を反応させて生成物を得た。ただし、反応温度を60℃に及び反応時間を10分に変更して以下の条件により実施した。
反応条件
基質原料:ナフタレン0.3021g
水素圧力:6.0MPa
二酸化炭素圧力:10.0MPa
触媒:活性炭担持ロジウム触媒(金属担持量5%、Wako Chemicals製品) 0.1003g
反応温度:60℃
反応時間:10分
ナフタレンの転化率は28.8%であり、生成物の選択率はデカリン57.9%及びテトラリン42.1%であった。デカリンは2種類の異性体が存在し、トランスデカリンの選択率は10.4%及びシスデカリンの選択率は47.5%であった。
実施例1と同様に基質原料を反応させて生成物を得た。ただし、反応温度を60℃に、及び反応時間を30分に変更して以下の反応条件により実施した。
反応条件
基質原料:ナフタレン0.3009g
水素圧力:6.0MPa
二酸化炭素圧力:10.1MPa
触媒:活性炭担持ロジウム触媒(金属担持量5%、Wako Chemicals製品) 0.1010g
反応温度:60℃
反応時間:30分
ナフタレンの転化率は46.9%であり、生成物の選択率はデカリン61.2%及びテトラリン38.8%であった。デカリンは2種類の異性体が存在し、トランスデカリンの選択率は11.2%及びシスデカリンの選択率は50.0%であった。
実施例9と同様に基質原料を反応させて生成物を得た。ただし、二酸化炭素圧力を5.2MPaに変更して以下の反応条件により実施した。
反応条件
基質原料:ナフタレン0.3000g
水素圧力:6.1MPa
二酸化炭素圧力:5.2MPa
触媒:活性炭担持ロジウム触媒(金属担持量5%、Wako Chemicals製品) 0.1005g
反応温度:60℃
反応時間:30分
ナフタレンの転化率は43.6%であり、生成物の選択率はデカリン61.2%及びテトラリン38.8%であった。デカリンは2種類の異性体が存在し、トランスデカリンの選択率は10.9%及びシスデカリンの選択率は50.4%であった。
実施例9と同様に基質原料を反応させて生成物を得た。ただし、水素圧力を3.1MPaに変更して以下の反応条件により実施した。
反応条件
基質原料:ナフタレン0.3020g
水素圧力:3.1MPa
二酸化炭素圧力:10.0MPa
触媒:活性炭担持ロジウム触媒(金属担持量5%、Wako Chemicals製品) 0.1009g
反応温度:60℃
反応時間:30分
ナフタレンの転化率は30.3%であり、生成物の選択率はデカリン37.4%及びテトラリン62.6%であった。デカリンは2種類の異性体が存在し、トランスデカリンの選択率は7.3%及びシスデカリンの選択率は30.1%であった。
実施例9と同様に基質原料を反応させて生成物を得た。ただし、触媒を活性炭担持5%ルテニウム触媒に変更して以下の反応条件により実施した。
反応条件
基質原料:ナフタレン0.3037g
水素圧力:6.0MPa
二酸化炭素圧力:10.0MPa
触媒:活性炭担持ルテニウム触媒(金属担持量5%、Wako Chemicals製品) 0.1012g
反応温度:60℃
反応時間:30分
ナフタレンの転化率は9.6%であり、生成物の選択率はデカリン51.0%及びテトラリン49.0%であった。デカリンは2種類の異性体が存在し、トランスデカリンの選択率は3.9%及びシスデカリンの選択率は47.1%であった。
実施例9と同様に基質原料を反応させて生成物を得た。ただし、触媒を活性炭担持5%パラジウム触媒に変更して以下の反応条件により実施した。
反応条件
基質原料:ナフタレン0.3029g
水素圧力:6.1MPa
二酸化炭素圧力:10.0MPa
触媒:活性炭担持パラジウム触媒(金属担持量5%、Wako Chemicals製品) 0.0999g
反応温度:60℃
反応時間:30分
ナフタレンの転化率は7.6%であり、生成物の選択率はデカリン4.1%及びテトラリン95.9%であった。デカリンは2種類の異性体が存在するが、トランスデカリンは認められず、シスデカリンの選択率は4.1%であった。
実施例9と同様に基質原料を反応させて生成物を得た。ただし、触媒を活性炭担持5%白金触媒に及び反応温度を80℃変更して以下の反応条件により実施した。
反応条件
基質原料:ナフタレン0.3005g
水素圧力:6.2MPa
二酸化炭素圧力:10.6MPa
触媒:活性炭担持白金触媒(金属担持量5%、Wako Chemicals製品) 0.1002g
反応温度:80℃
反応時間:30分
ナフタレンの転化率は4.8%であり、生成物の選択率はデカリン26.0%及びテトラリン74.0%であった。デカリンは2種類の異性体が存在し、トランスデカリンの選択率は10.3%及びシスデカリンの選択率は15.7%であった。
実施例9と同様に基質原料等を反応させて生成物を得た。ただし、触媒をアルミナ担持5%ロジウム触媒に変更して以下の反応条件により実施した。
反応条件
基質原料:ナフタレン0.2994g
水素圧力:6.1MPa
二酸化炭素圧力:10.1MPa
触媒:アルミナ担持ロジウム触媒(金属担持量5%、Wako Chemicals製品) 0.1009g
反応温度:60℃
反応時間:30分
ナフタレンの転化率は15.2%であり、生成物の選択率はデカリン43.1%及びテトラリン56.9%であった。デカリンは2種類の異性体が存在し、トランスデカリンの選択率は7.9%及びシスデカリンの選択率は35.2%であった。
実施例9と同様に基質原料等を反応させて生成物を得た。ただし、触媒をアルミナ担持5%パラジウム触媒に変更して以下の条件により実施した。
反応条件
基質原料:ナフタレン0.3014g
水素圧力:6.0MPa
二酸化炭素圧力:10.1MPa
触媒:アルミナ担持パラジウム触媒(金属担持量5%、Wako Chemicals製品) 0.1007g
反応温度:60℃
反応時間:30分
ナフタレンの転化率は8.2%であり、生成物の選択率はテトラリン100%であリ、デカリンは認められなかった。
比較例1
内容積50mlのステンレス製高圧反応装置に、ナフタレン0.3015gと活性炭担持ニッケル触媒(金属担持量5%、Wako Chemicals製品)0.1515gを入れ、この反応装置に圧力6.1MPaの水素及び圧力10.0MPaの二酸化炭素を導入して、反応温度60℃で30分間水素化反応を行った。反応終了後、水素と二酸化炭素を放出して生成物を得たが、固体であったため、アセトン抽出によって回収し、ガスクロマトグラフ−質量分析装置を用いて分析した。ナフタレンの水素化物であるデカリン及びテトラリンは認められず、ナフタレンの転化率は0%であり、水素化反応は全く進行しなかった。
実施例1と同様に基質原料を反応させて生成物を得た。ただし、基質原料としてテトラリンを用い、以下の条件により実施した。
反応条件
基質原料:テトラリン 0.32ml
水素圧力:6.0MPa
二酸化炭素圧力:10.0MPa
触媒:活性炭担持ロジウム触媒(金属担持量5%、Wako Chemicals製品) 0.0102g
反応温度:60℃
反応時間:30分
テトラリンからデカリンが得られ、テトラリンの転化率は100%であった。生成物の選択率はトランスデカリン14.5%及びシスデカリンの選択率は85.5%であった。
実施例1と同様に基質原料を反応させて生成物を得た。ただし、基質原料としてビフェニルを用い、以下の条件により実施した。
反応条件
基質原料:ビフェニル 0.3623g
水素圧力:9.0MPa
二酸化炭素圧力:15.2MPa
触媒:活性炭担持ロジウム触媒(金属担持量5%、Wako Chemicals製品) 0.0199g
反応温度:50℃
反応時間:45分
ビフェニルからビシクロヘキシルが得られた。ビフェニルの転化率は100%であり、生成物の選択率はビシクロヘキシル100%であった。
実施例18と同様に基質原料を反応させて生成物を得た。ただし、触媒を活性炭担持ルテニウム触媒(金属担持量5%、Wako Chemicals製品)に及び反応時間30分に変更して以下の条件により実施した。
反応条件
基質原料:ビフェニル 0.3615g
水素圧力:9.1MPa
二酸化炭素圧力:15.4MPa
触媒:活性炭担持ルテニウム触媒(金属担持量5%、Wako Chemicals製品) 0.0199g
反応温度:50℃
反応時間:30分
ビフェニルからビシクロヘキシルが得られた。ビフェニルの転化率は100%であり、生成物の選択率はビシクロヘキシル100%であった。
以上詳述したように、本発明は、環境調和型ナフタレン類水素化システムに係るものであり、本発明によれば、二酸化炭素を反応に関与させてナフタレン類の水素化反応を行い、ロジウム、パラジウム、白金、及びルテニウム等の白金族金属を担持した触媒を用いることによって、従来技術より反応温度を下げ、且つ反応時間を短縮することが可能となる。有害な有機溶媒を使用しない環境調和型のナフタレン類の水素化システムを提供できる。新たな担持金属触媒をナフタレン類の水素化システムに適用して、高効率、且つ経済的に反応させることができる。反応に用いる触媒は固体であり、通常得られる液体生成物を簡単に分離でき、蒸留やカラム分離などによって精製できる。工業的に重要なナフタレン類の水素化物を効率的に製造できる。これにより、新しいナフタレン類の水素化物の工業的生産技術を確立することを実現できる。

Claims (15)

  1. ナフタレン類を水素化する反応システムにおいて、二酸化炭素の亜臨界ないし超臨界流体と白金族金属担持触媒を組み合わせたことを特徴とする環境調和型ナフタレン類水素化システム。
  2. 白金族金属担持触媒として、ロジウム、ルテニウム、パラジウム及び白金から選択された少なくとも一種の白金族金属担持触媒を用いる請求項1に記載のシステム。
  3. 触媒の担体として、活性炭及び/又はアルミナを用いる請求項1又は2に記載のシステム。
  4. 二酸化炭素として、温度20〜250℃及び圧力0.1〜50MPaの二酸化炭素を用いる請求項1に記載のシステム。
  5. 温度20〜250℃及び圧力0.1〜50MPaの条件下の水素を用いる請求項1に記載のシステム。
  6. 二酸化炭素として、超臨界条件下の二酸化炭素を用いる請求項1又は4に記載のシステム。
  7. ナフタレン類が、ナフタレンである請求項1から6のいずれかに記載のシステム。
  8. ナフタレン類が、テトラリンである請求項1から6のいずれかに記載のシステム。
  9. ナフタレン類が、ビフェニルである請求項1から6のいずれかに記載のシステム。
  10. ナフタレン及び/又はテトラリンと水素を反応させて、デカリン及び/又はテトラリンを合成する請求項1に記載のシステム。
  11. ナフタレン類を水素化してナフタン類の水素化物を製造する方法において、二酸化炭素を用いて白金族金属担持触媒の存在下、温度20〜250℃及び圧力0.2〜100MPaの反応条件でナフタレン類と水素を反応させて、ナフタレン類の水素化物を製造することを特徴とするナフタレン類の水素化物の製造方法。
  12. ナフタレン類として、ナフタレン及び/又はテトラリンを用い、デカリン及び/又はテトラリンを製造する請求項11に記載のナフタレン類の水素化物の製造方法。
  13. 白金族金属担持触媒からなることを特徴とする二酸化炭素の亜臨界ないし超臨界流体と組み合わせて使用するナフタレン類水素化用触媒。
  14. 白金族金属担持触媒が、ロジウム、ルテニウム、パラジウム及び白金から選択された少なくとも一種の白金族金属担持触媒である請求項13に記載のナフタレン類水素化用触媒。
  15. 担体が、活性炭及び/又はアルミナである請求項13に記載のナフタレン類水素化用触媒。

JP2004270570A 2004-01-14 2004-09-16 環境調和型ナフタレン類水素化システム Expired - Fee Related JP4512762B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004270570A JP4512762B2 (ja) 2004-01-14 2004-09-16 環境調和型ナフタレン類水素化システム

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004007283 2004-01-14
JP2004270570A JP4512762B2 (ja) 2004-01-14 2004-09-16 環境調和型ナフタレン類水素化システム

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2005225859A true JP2005225859A (ja) 2005-08-25
JP4512762B2 JP4512762B2 (ja) 2010-07-28

Family

ID=35000851

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2004270570A Expired - Fee Related JP4512762B2 (ja) 2004-01-14 2004-09-16 環境調和型ナフタレン類水素化システム

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4512762B2 (ja)

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP1750015A2 (en) 2005-08-03 2007-02-07 Mitsubishi Heavy Industries, Ltd. Shroud and rotary vane wheel of propeller fan and propeller fan
JP2008173596A (ja) * 2007-01-21 2008-07-31 National Institute Of Advanced Industrial & Technology 超臨界二酸化炭素反応方法及び装置
JP2009046398A (ja) * 2007-08-13 2009-03-05 National Institute Of Advanced Industrial & Technology ナフタレン類水素化触媒
JP2010529286A (ja) * 2007-06-11 2010-08-26 エイチエスエム システムズ,インコーポレーテッド 超臨界流体を使用するビチューメンの品質向上

Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0482841A (ja) * 1990-07-23 1992-03-16 Arakawa Chem Ind Co Ltd 低分子量芳香族炭化水素化合物の水素化方法
JPH09111252A (ja) * 1995-10-13 1997-04-28 Agency Of Ind Science & Technol ルテニウム担持金属酸化物触媒による選択的核水素化反応
JPH11315037A (ja) * 1998-02-26 1999-11-16 Bayer Ag 6員環炭素環の製造法
JP2000508653A (ja) * 1996-04-17 2000-07-11 トーマス・スワン・アンド・カンパニー・リミテツド 超臨界水素化
JP2003160515A (ja) * 2001-11-28 2003-06-03 Nippon Oil Corp ナフタレンから2段水素化反応によりデカリンを製造する方法
JP2003212800A (ja) * 2002-01-23 2003-07-30 Nippon Oil Corp ナフタレンの水素化によるデカリンの製造方法

Patent Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0482841A (ja) * 1990-07-23 1992-03-16 Arakawa Chem Ind Co Ltd 低分子量芳香族炭化水素化合物の水素化方法
JPH09111252A (ja) * 1995-10-13 1997-04-28 Agency Of Ind Science & Technol ルテニウム担持金属酸化物触媒による選択的核水素化反応
JP2000508653A (ja) * 1996-04-17 2000-07-11 トーマス・スワン・アンド・カンパニー・リミテツド 超臨界水素化
JPH11315037A (ja) * 1998-02-26 1999-11-16 Bayer Ag 6員環炭素環の製造法
JP2003160515A (ja) * 2001-11-28 2003-06-03 Nippon Oil Corp ナフタレンから2段水素化反応によりデカリンを製造する方法
JP2003212800A (ja) * 2002-01-23 2003-07-30 Nippon Oil Corp ナフタレンの水素化によるデカリンの製造方法

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP1750015A2 (en) 2005-08-03 2007-02-07 Mitsubishi Heavy Industries, Ltd. Shroud and rotary vane wheel of propeller fan and propeller fan
JP2008173596A (ja) * 2007-01-21 2008-07-31 National Institute Of Advanced Industrial & Technology 超臨界二酸化炭素反応方法及び装置
JP2010529286A (ja) * 2007-06-11 2010-08-26 エイチエスエム システムズ,インコーポレーテッド 超臨界流体を使用するビチューメンの品質向上
JP2014205850A (ja) * 2007-06-11 2014-10-30 エイチエスエム システムズ,インコーポレーテッド 超臨界流体を使用するビチューメンの品質向上
JP2009046398A (ja) * 2007-08-13 2009-03-05 National Institute Of Advanced Industrial & Technology ナフタレン類水素化触媒

Also Published As

Publication number Publication date
JP4512762B2 (ja) 2010-07-28

Similar Documents

Publication Publication Date Title
CA2768259C (en) Pyrolysis of cineole in the presence of a gamma-alumina supported transition metal catalyst
JP2009046398A (ja) ナフタレン類水素化触媒
JP4581078B2 (ja) フェノール類の水素化方法
Scelfo et al. Highly efficient catalysts for the synthesis of adipic acid from cis, cis-muconic acid
JP4512762B2 (ja) 環境調和型ナフタレン類水素化システム
JP2023544666A (ja) 液体有機化合物による水素貯蔵
Gou et al. θ-Al2O3/FeO1. 25 possessing a special ring complex of FeII---HO=== FeIII for the efficient catalytic semi-hydrogenation of acetylene under front–end conditions
JP2011032241A (ja) 芳香族置換脂肪族ケトン化合物の製造方法
CN113508104A (zh) 选择性氧化甘油的方法
CN111450836A (zh) 一种用于合成对羟基苯甲醇的方法
CN105175213A (zh) 一种碳五双环戊二烯加氢的方法
JP2003160515A (ja) ナフタレンから2段水素化反応によりデカリンを製造する方法
JP4288348B2 (ja) ナフトール類の水素化物の製造方法
JPWO2007063974A1 (ja) 芳香環化合物の芳香環への水素添加方法
JP2022528992A (ja) 2-アルキルアントラセンを分離する方法、および、過酸化水素を製造するためのその使用
JP4164459B2 (ja) メチルナフタレン製造触媒及び製造法
JP2003212800A (ja) ナフタレンの水素化によるデカリンの製造方法
JP4312334B2 (ja) インダンの製造方法
JP4264512B2 (ja) 3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンの製造方法
JP5360863B2 (ja) 芳香族置換脂肪族環式ケトン化合物の合成方法
JP4359679B2 (ja) 3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンの製造法
JPH0558611A (ja) フラーレン類の精製方法
KR102493012B1 (ko) 올레핀 복분해 반응 원료 정제방법
KR20230163377A (ko) 촉매 및 시클로펜텐의 제조 방법
JP2011231048A (ja) アルキルアリールケトンの水素化法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20061013

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20090914

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20090924

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20091124

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20091222

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20100219

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20100318

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20100405

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130521

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130521

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130521

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130521

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140521

Year of fee payment: 4

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees