JP4264512B2 - 3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンの製造方法 - Google Patents

3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、工業的に重要な3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンの製造プロセスを有害な有機溶媒を使用しない環境調和型プロセスで実施することを可能とする新しい3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンの製造方法に関するものであり、更に詳しくは、超臨界条件下の二酸化炭素等の二酸化炭素と高活性のロジウム担持触媒を用いて、従来技術より低い反応温度で、触媒の活性低下を防いで、イソホロンを効率良く水素化して、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンを製造する方法に関するものである。
本発明は、例えば、イソホロンの水素化によって得られる3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンの工業的生産技術の分野において、従来、例えば、ラッカー、ワニス等の被覆、仕上げ材の製造に必要な合成樹脂組成物を配合するための溶剤として用いられている、工業的に重要な物質である当該化合物を、高効率、且つ低コストで製造することを可能とする新しい生産技術を提供するものである。本発明は、これらの工業的に重要な物質を効率良く生産することを可能とするとともに、従来の3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンの製造プロセスにおける問題点を抜本的に解消することを可能とする新規3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンの製造方法を提供するものとして有用である。
従来、イソホロンから3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンを製造する方法としては、接触水素化方法が知られている。例えば、触媒としてラネーニッケルを用いてイソホロンを加圧水素ガスによって水素化して、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンを製造する方法が提案されている(特許文献1参照)。また、Hitzlerらは、超臨界二酸化炭素中でのイソホロン水素化反応(反応温度 140〜200℃)において、ポリアミノシロキサン担持5%パラジウム触媒を用いることによって選択率100%で3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンが得られることを報告している(非特許文献1参照)。
これらのプロセスのうち、ラネーニッケル触媒を用いるプロセスでは、溶剤としてのイソプロピルアルコール及びラネーニッケル触媒を用いて、温度16℃及び圧力4〜9kg/cm2 Gの反応条件でイソホロンと水素を3時間反応させて、転化率89.6%及び選択率96.1%で3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンを得ている。しかし、この製造方法は、反応温度を25℃以下の低温に保つ必要があり、且つ反応時間が長くなり、しかも、転化率が高くならない欠点を有する。また、Hitzlerらの方法は、有害な有機溶剤の代わりに超臨界二酸化炭素を用いる環境調和型プロセスであるが、反応温度が140〜200℃と高くなり、且つポリアミノシロキサン担持5%パラジウム触媒のような高価格の触媒を必要とする欠点があり、反応の低温化が課題となっている。
前述したように、従来の3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンの製造プロセスは、反応時間が長くかかったり、反応温度が高い等の欠点があり、反応条件の緩和化が要望されている。また、従来の3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンの製造プロセスは、触媒がラネーニッケル触媒や高価なポリアミノシロキサン担持5%パラジウム触媒に限定されているため、反応温度や転化率等の反応制御を更に進展させるのが困難である、という欠点を有していた。
特公平7―49385号公報 M.G.Hitzler, F.R.Smail, S.K.Rossand M.Poliakoff, Organic Process Research & Development,2(1998), 137-146
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、これらの問題点を抜本的に解決すべく長年鋭意検討を重ねた結果、二酸化炭素とロジウム担持触媒を反応に使用することによって、従来方法より反応温度を低下させ、且つ高転化率でイソホロンの水素化反応が進行することを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、二酸化炭素とロジウム担持触媒を用いて、イソホロンを水素化して、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンを効率良く製造することを可能とする新規3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンの製造方法を提供することを目的とするものである。
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)イソホロンを水素化して、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンを製造する方法において、二酸化炭素を用いてロジウム担持触媒の存在下でイソホロンと水素を反応させることを特徴とする、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンの製造方法。
(2)二酸化炭素として、温度20〜250℃及び圧力0.1〜50MPaの二酸化炭素を用いることを特徴とする、前記(1)に記載の3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンの製造方法。
(3)温度20〜250℃及び圧力0.1〜30MPaの条件下の水素を用いることを特徴とする、前記(1)に記載の3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンの製造方法。
(4)二酸化炭素として、超臨界条件下の二酸化炭素を用いることを特徴とする、前記(1)又は(2)に記載の3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンの製造方法。
(5)イソホロンに対する水素のモル比が0.1〜100の範囲であることを特徴とする、前記(1)又は(3)に記載の3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンの製造方法。(6)イソホロンに対する触媒の使用量が0.01〜200重量%の範囲であることを特徴とする、前記(1)に記載の3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンの製造方法。
(7)バッチ反応によるイソホロンと水素との反応時間が、0.1〜10時間であることを特徴とする、前記(1)に記載の3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンの製造方法。
(8)イソホロンと水素を反応温度35〜100℃で反応させることを特徴とする、前記(1)に記載の3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンの製造方法。
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明の説明を容易にするために、以下、イソホロン、水素、二酸化炭素及び活性炭担持ロジウム触媒を、反応温度50℃に設定した内容積50mlの反応容器に導入して、イソホロンを水素化して、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンを製造する場合を例にとって詳細に説明する。本発明者らが、種々の実験を経て開発した本発明の3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンの製造方法は、例えば、50℃の反応温度の反応容器内で二酸化炭素とロジウム担持触媒を用いてイソホロンと水素を約30分で反応させて、イソホロンを水素化して、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンを従来の製造方法より温和な条件で合成することを可能とすることを特徴とする製造方法である。
本発明の3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンの製造方法においては、イソホロンの部分水素化によって3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンが合成されるが、更に、水素化が進展すると、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンからトランスー及びシスー3,3,5−トリメチルシクロヘキサノールが得られる。また、これらのトランスー及びシスー3,3,5−トリメチルシクロヘキサノールの水素化によって脱水反応が進展し、1,1,3−トリメチルシクロヘキサンが生成する。3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン、トランスー及びシスー3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、及び1,1,3−トリメチルシクロヘキサンを合成する反応式を、それぞれ、下記の式(1)、式(2)及び式(3)に示す。
Figure 0004264512
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本発明の3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンの製造方法においては、上記の式(1)に示されるように、1個のイソホロンに2個の水素原子が付加して部分的水素化反応が進行して、目的物質である3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンが合成される。更に、式(2)に示されるように、1個の3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンに2個の水素原子が付加すれば、完全な水素化反応となり、副生成物であるトランスー及びシスー3,3,5−トリメチルシクロヘキサノールが得られる。イソホロンの水素化反応は、逐次反応で進行し、最初に3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンが生成し、更に、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンの水素化反応が進捗し、トランスー及びシスー3,3,5−トリメチルシクロヘキサノールが合成されると考えられる。本発明においては、式(1)の反応が優先的に起きて、式(2)の反応は少ないと考えられる。式(3)に示される脱水反応は、本発明では、ほとんど進行しないと考えられる。
本発明で合成される3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンは、例えば、ラッカー、ワニス等の被覆、仕上げ材の製造に必要な合成樹脂組成物を配合するための溶剤として用いられており、工業的に重要な物質である。これらの用途に対応して、あるいは新たな用途開拓のためには、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンを低コストで製造することが求められており、反応温度を下げ、反応時間を短縮し、あるいは反応転化率を上げることは重要であり、そのための触媒開発が期待されている。
本発明の3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンの製造方法におけるイソホロンの水素化反応では、触媒として、ロジウム担持触媒を用る。触媒中に上記のロジウムを含んでいれば本発明に有効に用いることができる。更に、これらのロジウムに、Pd、Ru、Os、Irの白金族金属、Ni、Co、Fe、Zn、Cu、Mn、Pb、Cd、Cr、Ag、Au、Hg、Ga、In、Ge、Sn、Ti、Al、Si等の金属元素、Ca、Mg、Sr、Baの2A族元素、及び、Li、Na、K、Rb、Csのアルカリ金属の中の少なくとも1種以上の金属元素を付加あるいは合金化して作製した触媒を、本発明に有効に用いることができる。
本発明において、ロジウム担持触媒の担体としては、好適には、例えば、活性炭、アルミナ、マグネシア、シリカ、シリカアルミナ、ジルコニア、チタニア、ゼオライト、粘土、カオリン、タルク、ベントナイト、あるいはこれらのゲル、ゾルを用いることができる。これらの適当な担体を混合して触媒に供しても良い。担体は、その表面に金属等の触媒活性点を分散させて高表面積の触媒としたり、触媒の機械的強度を高めたりする目的で用いられる。担体は、反応を阻害したり触媒活性を阻害したりしないものであれば特に制限はなく、反応に対して触媒活性がある程度発現するものでも使用できる。
本発明に用いる触媒は、使用する前に、水素、窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素、酸素、空気などのガス気流中で加熱処理することにより活性化することが望ましい。その際の処理温度は、通常、50〜700℃の範囲であり、好ましくは80〜600℃の範囲であり、より好ましくは80〜500℃の範囲であり、及び最も好ましくは100〜500℃の範囲である。処理温度が50℃未満では吸着物質の脱着が不十分となるため好ましくない。また、処理温度が700℃を越えると触媒に含まれる担体の構造が壊れやすくなり、表面積が減少する傾向がでてくることや金属粒子の凝集が起こるので好ましくない。活性化処理の時間は、表面吸着物の量や処理温度により左右されるため、特に限定されるものではないが、通常、0.1〜100時間の処理時間が好適である。
次に、本発明の好適な実施態様について説明する。本発明を実施するに際し、その反応方法は、バッチ式、セミバッチ式又は連続流通式の何れかの方法においても実施されうる。反応形態は、触媒を固体状態として、液相、気相、液−気混合相、固相、あるいは超臨界流体相の何れかの形態でも、あるいは、これらの何れの組合せでも実施することができる。例えば、触媒を固体状態として、液−気混合相、固−液−気混合相、液−超臨界液体混合相あるいは超臨界流体相の何れかの形態で実施することもできる。更に、常圧あるいは加圧の何れかの状態で実施することも可能である。反応効率的な観点から、好ましくは超臨界条件下の二酸化炭素を用いることが推奨されるが、本発明は、これに限定されるものでない。
反応温度は、20℃以上であれば特に限定されないが、好ましい反応温度範囲は20〜250℃であり、より好ましい反応温度範囲は30〜200℃であり、更により好ましい反応温度範囲は35〜150℃であり、及び最も好ましい反応温度範囲は35〜100℃である。反応温度が、あまりに低ければ反応速度は低下して、効率の良い製造方法とはならず、また、極端に高くなれば反応装置コストやランニングコストが増大し、あるいは望ましい生成物の選択率や収率を低下させたりして、経済的な方法とはならない。本発明では、水素と二酸化炭素が反応に用いられる。通常用いられる反応圧力範囲は0.1〜150MPaであり、好ましい反応圧力範囲は0.2〜80MPaであり、より好ましい反応圧力範囲は0.2〜50MPaであり、更により好ましい反応圧力範囲は1.5〜45MPaであり、及び最も好ましい反応圧力範囲は7.4〜35MPaである。
更に、本発明を実施するにあたり、例えば、バッチ反応を実施する際には、その反応時間は、特に限定されないが、好ましくは1分〜20時間であり、より好ましくは0.1〜10時間であり、更により好ましくは0.1〜5時間であり、及び最も好ましくは0.1〜2時間である。
水素化反応を実施するに際し、原料であるイソホロンと水素の仕込み組成は、特に限定されないが、イソホロンの水素化反応において高い転化率を達成するには、イソホロンに対する水素のモル比を高くすることが望ましい(部分水素化の理論当量は、イソホロンに対し、水素は1当量である)。本発明においては、イソホロンに対する水素のモル比は、通常、0.1〜100の範囲で実施されるが、0.2〜50の範囲で実施されることが好ましく、0.5〜30の範囲がより好ましく、0.5〜20の範囲が更により好ましく、及び0.5〜10の範囲が最も好ましい。勿論、本発明においては、これらの範囲の値のみに限定されるものではない。
本発明の水素化反応に用いられる水素の温度は20℃以上及び圧力は0.1MPa以上であれば一向に差し支えない。好ましい温度範囲は20〜250℃であり、より好ましい温度範囲は30〜200℃であり、更により好ましい温度範囲は35〜150℃であり、及び最も好ましい温度範囲は35〜100℃である。一方、水素の好ましい圧力範囲は0.1〜30MPaであり、より好ましい圧力範囲は0.1〜20MPaであり、更により好ましい圧力範囲は0.5〜20MPaであり、及び最も好ましい圧力範囲は0.5〜10MPaである。
本発明の水素化反応に関与させる二酸化炭素の温度は20℃以上及び圧力は0.1MPa以上であれば一向に差し支えない。二酸化炭素の好ましい温度範囲は20〜250℃であり、より好ましい温度範囲は30〜200℃であり、更により好ましい温度範囲は35〜150℃であり、及び最も好ましい温度範囲は35〜100℃である。一方、二酸化炭素の好ましい圧力範囲は0.1〜50MPaであり、より好ましい圧力範囲は0.1〜30MPaであり、更により好ましい圧力範囲は1〜25MPaであり、及び最も好ましい圧力範囲は7.4〜25MPaである。
本発明において、イソホロン及び水素を仕込む際に、二酸化炭素を導入して反応に関与させるが、この場合、特に溶媒を使用する必要はない。しかしながら、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ケトン類、水等の溶媒を用いて、イソホロンを希釈して仕込んでも一向に差し支えない。
本発明において、触媒の使用量は、特に限定されないが、例えば、バッチ反応にて実施する場合には、原料であるイソホロンに対して重量%で0.01〜200%の範囲の値を用いることができ、好ましくは、0.05〜100%の範囲の値を用いることができ、より好ましくは0.05〜50%の範囲の値を用いることができ、更に好ましくは0.1〜30%の範囲の値を用いることができ、及び最も好ましくは0.1〜10%の範囲の値を用いることができる。これらの値は、反応方式、反応条件、原料及び触媒等に応じて適宜設定されるが、あまりに触媒使用量が少ない場合には実質的に反応の進行が低下し、また、多い場合には接触等の効率を低下させたり、製造コストの増加につながる等のトラブルが生じる恐れがある。
本発明を実施した後、通常、生成物は、水素及び二酸化炭素を放出した後に得られた混合溶液中に副生成物や未反応原料等と共に含有されるが、通常の蒸留、抽出、晶出、カラム分離等の分離精製方法により目的の化合物を単離精製することができる。例えば、反応が終了した後、得られた生成物は、副生成物等と共にメタノールで抽出して、ガスクロマトグラフ測定装置、ガスクロマトグラフ−質量分析装置、液体クロマトグラフ測定装置、NMR測定装置等によって生成物の同定や定量分析が行われ、水素化反応の転化率や選択率等のデータが調べられる。
本発明において、イソホロンの水素化によって3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンが得られるが、その転化率及び選択率に及ぼす操作条件の効果を説明する。活性炭担持5%ロジウム触媒を用い、反応温度50℃、水素圧3.0〜3.2MPa及び二酸化炭素圧8.9〜9.1MPaの条件で水素化反応を試みたところ、イソホロンの転化率は反応時間10分から2時間の間では99〜100%であり、反応は高転化率で、且つ短時間で終了することが判明した。そこで、水素圧を1MPaに下げて、イソホロン:H2 =1:0.7の条件にして反応温度50℃及び反応時間30分で二酸化炭素圧力の影響を調べたところ、二酸化炭素圧力が0.1〜20.3MPaの間で圧力の上昇に伴って反応の転化率は39.1〜61.1%の間で高くなっているのが認められた。このように、本発明においては、触媒の反応活性が非常に高いので、触媒量を減少したり、反応温度を下げたり、あるいは反応時間を短くすることができる。従って、反応温度、反応圧力、反応時間、触媒量等の反応条件を制御することによって、技術的及び経済的に好適な反応条件を選択できる。
本発明の3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンの製造方法では、イソホロンの水素化反応を、従来技術より反応温度を低下させて行うことが可能であり、反応温度50℃の条件でも短時間反応で高転化率の値が得られている。このように、本発明では、新たなロジウム担持金属触媒をイソホロンの水素化反応に適用して、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンの製造を高効率化でき、本発明は、従来技術の問題点を解消した新しい3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンの製造プロセスを提供するものとして有用である。
本発明は、イソホロンの水素化による3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンの製造方法に係るものであり、本発明により、(1)二酸化炭素を反応に関与させた3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンの製造反応において、ロジウムを担持した触媒を用いることによって、従来技術より反応温度を下げることが可能となる、(2)有害な有機溶媒を使用しない環境調和型の3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンの製造方法を提供できる、(3)新たな担持金属触媒をイソホロンの水素化反応に適用して、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンの製造プロセスを高効率化でき、低コスト化を実現することができる、(4)反応に用いる触媒は固体であるから、生成物が液体の場合は、生成物から簡単に分離でき、蒸留や溶媒抽出などによって精製できる、(5)工業的に重要な3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンの製造を環境調和型プロセスによって効率的に実施できる、という格別の効果が奏される。
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。しかしながら、本実施例は、本発明の好適な例を説明したものであり、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
内容積50mlのステンレス製高圧反応装置にイソホロン0.026モルと活性炭担持ロジウム触媒(金属担持量5%、Wako Chemicals製品)0.0100gを入れ、圧力3.0MPaの水素及び圧力8.9MPaの二酸化炭素を導入して、反応温度50℃で30分間水素化反応を行った。使用したイソホロンと水素のモル比は、イソホロン:H2 =1:2.1であった。反応終了後、水素と二酸化炭素を放出し、得られた生成物及び未反応物をメタノール抽出によって回収し、ガスクロマトグラフを用いて分析した。その結果、イソホロンの転化率は99.3%であり、選択率は3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン95.4%、トランスー3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール2.1%及びシスー3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール2.5%であった。
実施例1と同様に反応させて生成物を得た。ただし、触媒量を0.0104gに、反応時間を2時間に、及び水素圧を3.2MPaに変更して実施した。以下に、反応条件を示す。
(反応条件)
イソホロン:0.026モル
水素圧力:3.2MPa
イソホロン:H2 =1:2.3
二酸化炭素圧力:8.9MPa
触媒:活性炭担持ロジウム触媒(金属担持量5%、Wako Chemicals製品) 0.0104g
反応温度:50℃
反応時間:2時間
得られた生成物について、ガスクロマトグラフを用いて分析した。その結果、イソホロンの転化率は98.9%であり、選択率は3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン93.3%、トランスー3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール3.7%、及びシスー3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール3.0%であった。
実施例1と同様に反応させて生成物を得た。ただし、反応時間を10分に変更して実施した。以下に、反応条件を示す。
(反応条件)
イソホロン:0.026モル
水素圧力:3.0MPa
イソホロン:H2 =1:2.1
二酸化炭素圧力:8.9MPa
触媒:活性炭担持ロジウム触媒(金属担持量5%、Wako Chemicals製品) 0.0100g
反応温度:50℃
反応時間:10分
得られた生成物について、ガスクロマトグラフを用いて分析した。その結果、イソホロンの転化率は99.1%であり、選択率は3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン97.2%、トランスー3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール0.8%、及びシスー3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール2.0%であった。
実施例1と同様に反応させて生成物を得た。ただし、水素圧力を6.0MPaに、及び二酸化炭素圧力を9.2MPaに変更して実施した。以下に、反応条件を示す。
(反応条件)
イソホロン:0.026モル
水素圧力:6.0MPa
イソホロン:H2 =1:4.2
二酸化炭素圧力:9.2MPa
触媒:活性炭担持ロジウム触媒(金属担持量5%、Wako Chemicals製品) 0.0100g
反応温度:50℃
反応時間:30分
得られた生成物について、ガスクロマトグラフを用いて分析した。その結果、イソホロンの転化率は99.5%であり、選択率は3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン94.5%、トランスー3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール2.6%、及びシスー3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール2.9%であった。
実施例1と同様に反応させて生成物を得た。ただし、触媒量を0.0109gに、水素圧力を1.0MPaに、及び二酸化炭素圧力を9.2MPaに変更して実施した。以下に、反応条件を示す。
(反応条件)
イソホロン:0.026モル
水素圧力:1.0MPa
イソホロン:H2 =1:0.7
二酸化炭素圧力:9.2MPa
触媒:活性炭担持ロジウム触媒(金属担持量5%、Wako Chemicals製品) 0.0109g
反応温度:50℃
反応時間:30分
得られた生成物について、ガスクロマトグラフを用いて分析した。その結果、イソホロンの転化率は54.1%であり、選択率は3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン97.4%、トランスー3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール0.8%、及びシスー3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール1.8%であった。
実施例1と同様に反応させて生成物を得た。ただし、触媒量を0.0104gに、水素圧力を1.0MPaに、及び二酸化炭素圧力を20.3MPaに変更して実施した。以下に、反応条件を示す。
(反応条件)
イソホロン:0.026モル
水素圧力:1.0MPa
イソホロン:H2 =1:0.7
二酸化炭素圧力:20.3MPa
触媒:活性炭担持ロジウム触媒(金属担持量5%、Wako Chemicals製品) 0.0104g
反応温度:50℃
反応時間:30分
得られた生成物について、ガスクロマトグラフを用いて分析した。その結果、イソホロンの転化率は61.1%であり、選択率は3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン96.4%、トランスー3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール1.7%、及びシスー3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール1.9%であった。
実施例1と同様に反応させて生成物を得た。ただし、触媒量を0.0102gに、水素圧力を1.1MPaに、及び二酸化炭素圧力を0.1MPaに変更して実施した。以下に、反応条件を示す。
(反応条件)
イソホロン:0.026モル
水素圧力:1.1MPa
イソホロン:H2 =1:0.8
二酸化炭素圧力:0.1MPa
触媒:活性炭担持ロジウム触媒(金属担持量5%、Wako Chemicals製品) 0.0102g
反応温度:50℃
反応時間:30分
得られた生成物について、ガスクロマトグラフを用いて分析した。その結果、イソホロンの転化率は39.1%であり、選択率は3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン96.9%、トランスー3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール1.3%、及びシスー3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール1.8%であった。
実施例1と同様に反応させて生成物を得た。ただし、触媒量を0.0104gに、水素圧力を1.0MPaに、及び二酸化炭素圧力を5.0MPaに変更して実施した。以下に、反応条件を示す。
(反応条件)
イソホロン:0.026モル
水素圧力:1.0MPa
イソホロン:H2 =1:0.7
二酸化炭素圧力:5.0MPa
触媒:活性炭担持ロジウム触媒(金属担持量5%、Wako Chemicals製品) 0.0104g
反応温度:50℃
反応時間:30分
得られた生成物について、ガスクロマトグラフを用いて分析した。その結果、イソホロンの転化率は44.6%であり、選択率は3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン97.2%、トランスー3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール1.1%、及びシスー3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール1.7%であった。
実施例1と同様に反応させて生成物を得た。ただし、触媒量を0.0103gに、反応時間を60分に、水素圧力を1.0MPaに、及び二酸化炭素圧力を9.1MPaに変更して実施した。以下に、反応条件を示す。
(反応条件)
イソホロン:0.026モル
水素圧力:1.0MPa
イソホロン:H2 =1:0.7
二酸化炭素圧力:9.1MPa
触媒:活性炭担持ロジウム触媒(金属担持量5%、Wako Chemicals製品) 0.0103g
反応温度:50℃
反応時間:60分
得られた生成物について、ガスクロマトグラフを用いて分析した。その結果、イソホロンの転化率は53.0%であり、選択率は3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン97.8%、トランスー3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール0.9%、及びシスー3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール1.3%であった。
実施例5と同様に反応させて生成物を得た。ただし、触媒をアルミナ担持ロジウム触媒(金属担持量5%、Wako Chemicals製品)0.0101gに、及び二酸化炭素圧を8.9MPaに変更して実施した。以下に、反応条件を示す。
(反応条件)
イソホロン:0.026モル
水素圧力:1.0MPa
イソホロン:H2 =1:0.7
二酸化炭素圧力:8.9MPa
触媒:アルミナ担持ロジウム触媒(金属担持量5%、Wako Chemicals製品)0.0101g反応温度:50℃
反応時間:30分
得られた生成物について、ガスクロマトグラフを用いて分析した。その結果、イソホロンの転化率は25.1%であり、選択率は3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン98.1%、トランスー3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール0.7%、及びシスー3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール1.2%であった。
(参考例)
実施例5と同様に反応させて生成物を得た。ただし、触媒を活性炭担持白金触媒(金属担持量5%、Wako Chemicals製品)0.0100gに変更して実施した。以下に、反応条件を示す。
(反応条件)
イソホロン:0.026モル
イソホロン:H2 =1:0.7
水素圧力:1.0MPa
二酸化炭素圧力:8.9MPa
触媒:活性炭担持白金触媒(金属担持量5%、Wako Chemicals製品)0.0100g
反応温度:50℃
反応時間:30分
得られた生成物について、ガスクロマトグラフを用いて分析した。その結果、イソホロンの転化率は13.7%であり、選択率は3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン94.7%、トランスー3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール2.7%、及びシスー3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール2.6%であった。
比較例1
実施例5と同様に反応させて生成物を得た。ただし、触媒を活性炭担持ルテニウム触媒(金属担持量5%、Wako Chemicals製品)0.0103gに変更して実施した。以下に、反応条件を示す。
(反応条件)
イソホロン:0.026モル
水素圧力:1.0MPa
イソホロン:H2 =1:0.7
二酸化炭素圧力:9.2MPa
触媒:活性炭担持ルテニウム触媒(金属担持量5%、Wako Chemicals製品)0.0103g
反応温度:50℃
反応時間:30分
得られた生成物について、ガスクロマトグラフを用いて分析した。その結果、イソホロンの転化率は0.8%であり、選択率は3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン93.3%、トランスー3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール4.2%、及びシスー3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール2.5%であった。
以上詳述したように、本発明は、イソホロンの水素化による3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンの製造方法に係るものであり、本発明により、二酸化炭素を反応に関与させたイソホロンの水素化反応において、ロジウムを担持した触媒を用いることによって、従来技術より反応温度を下げるができる。有害な有機溶媒を使用しない環境調和型の3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンの製造方法を提供できる。新たな担持金属触媒をイソホロンの水素化反応に適用して、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンの製造プロセスを高効率化でき、低コスト化を実現することができる。反応に用いる触媒は固体であるから、生成物が液体の場合は、生成物から簡単に分離でき、蒸留や溶媒抽出などによって精製できる。工業的に重要な3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンの製造を環境調和型プロセスによって効率的に実施できる。

Claims (8)

  1. イソホロンを水素化して、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンを製造する方法において、二酸化炭素を用いてロジウム担持触媒の存在下でイソホロンと水素を反応させることを特徴とする、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンの製造方法。
  2. 二酸化炭素として、温度20〜250℃及び圧力0.1〜50MPaの二酸化炭素を用いることを特徴とする、請求項1に記載の3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンの製造方法。
  3. 温度20〜250℃及び圧力0.1〜30MPaの条件下の水素を用いることを特徴とする、請求項1に記載の3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンの製造方法。
  4. 二酸化炭素として、超臨界条件下の二酸化炭素を用いることを特徴とする、請求項1又は2に記載の3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンの製造方法。
  5. イソホロンに対する水素のモル比が0.1〜100の範囲であることを特徴とする、請求項1又は3に記載の3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンの製造方法。
  6. イソホロンに対する触媒の使用量が0.01〜200重量%の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンの製造方法。
  7. バッチ反応によるイソホロンと水素との反応時間が、0.1〜10時間であることを特徴とする、請求項1に記載の3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンの製造方法。
  8. イソホロンと水素を反応温度35〜100℃で反応させることを特徴とする、請求項1に記載の3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンの製造方法。
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