JP2005225135A - 立体表現印刷物および立体表現印刷法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 図象が立体的に表現された印刷物Sであって、表面側に配置される透明基材層10と、透明基材層10の背面に部分的に印刷された図象表現層20と、図象表現層20の周縁に隣接して印刷され、図象表現層20よりも厚みがあり細幅である透明縁部層30と、図象表現層20、透明縁部層30を覆って透明基材層10の背面に印刷された遮光性下地層50とを備える。
【選択図】 図1
Description
このような立体表現が可能な印刷物の技術としては、例えば、印刷インクの厚みを変えたり、印刷インク層を重ねたりして、実際に厚みの違う立体的な図象を形成する印刷技術が知られている。シルクスクリーン印刷のように、印刷するインク層の厚みを比較的に自由に変更できる印刷法を適用することが有効である。
また、透明インクに金属微粉末などの光反射材を分散させた光反射性インク層の上に、着色透明インク層で図象を描くと、光の反射特性によって、図象部分が実際よりも浮き上がって立体的に観察されるという手法も知られている。
特許文献2には、フィルム基材の上に金属蒸着層や着色インキ層、スクリーン印刷層などが重ねられ、立体的に盛り上がった構造のメタリック調の図柄を有する転写材を得る技術が示されている。
例えば、印刷インク層の厚みを変えて立体表現をする方法では、立体表現の深みを増そうとすると、印刷インク層の厚みが過大になってしまう。シルクスクリーン印刷法などを採用したとしても、印刷可能な厚みには限界がある。厚みを増やせば、それだけ、印刷物全体の厚みが増えて、取扱いが難しくなったり、印刷インクの使用量が増大して印刷コストが嵩んだりする問題も起きる。厚みを増やすと、印刷された図象の輪郭が不明瞭になり易く、印刷品質も低下する。
光反射性微粉を配合したメタリック調の面に着色パターンを形成して立体感を与えるだけでは、それほど深みのある立体感は得られない。印刷インク層の盛り上げとメタリック調面の技術を組合せたとしても、立体感が不十分であり、前記した印刷インク層の厚みによる問題も残る。
〔透明基材層〕
立体表現印刷物を観察する際の表面側に配置される。
図象表現層などによる立体表現が良好に表示される透明性の高い材料が使用できる。完全な透明材料であってもよいし、光透過性を損なわない程度に薄く着色された半透明材料であってもよい。図象表現層などを印刷する基材に適した機械的強度や物理的・化学的耐久性、平坦性、印刷適性などを備えていることが望ましい。
透明基材層の厚みは、立体表現印刷物の使用目的や要求性能によっても異なる。いわゆるフィルムからシートあるいは板材と呼ばれる範囲の厚みが採用できる。通常、50〜5000μmの範囲に設定できる。
透明基材層は、柔軟で変形容易なものであってもよいし、容易に変形しない保形性のあるもの、剛性の高いものであってもよい。
透明基材層を、材料や特性、厚みが異なる複数の層を積層して構成することもできる。
〔図象表現層〕
透明基材層のうち、立体表現印刷物を観察する表面側ではなく、反対側の背面に部分的に印刷され、立体表現される図象を構成する。
部分的とは、透明基材層の全面を覆ってしまうことなく、図象表現層の外周のうち少なくとも一部には、図象表現層が存在せず透明基材層が露出する個所が存在することを意味している。
図象表現層は、通常の印刷技術で形成され、視覚的に図象を表現していることが認識できる形状や色、質感を有していればよい。但し、図象表現層は、透明基材層を通して図象を表現するので、表裏を逆に印刷する逆版印刷によって図象を印刷しておく。
図象表現層を印刷するには、着色インク、透明着色インク、微粉分散インクなどの通常のインク材料が使用される。透明度を調整した透明インクも使用できる。透明インク層であっても、表面に微細な凹凸を設けることで、図象表現層の形状や面を構成することができる。複数種類のインク層を積層して、単層のインク層では表現できない質感や表現を表すこともできる。一つの図象表現層を、場所によって色や質感の異なる複数種類のインク材料で構成することもできる。
透明インク層の表面に、厚みの違いによる微細模様を設けておくと、透明インク層を通過したり屈折したり反射したりする光が、微細模様によって微妙な変化を受け、単なる着色では得られない色感や質感が得られる。このような微細模様による印刷表現を、ヘアライン模様、梨地模様などと呼ぶことがある。この場合も、遮光性下地層との組み合わせによる色や質感の変化をつけた表現が可能である。
〔透明縁部層〕
図象表現層の周縁に隣接して印刷され、図象表現層よりも厚みがあり細幅である。
透明縁部層は、透明インクを印刷することで形成できる。透明インクは、完全な透明性を有するインクであってもよいし、透明縁部層の機能を損なわない範囲で、少し透明性を落とした半透明状の透明インクや薄く着色された着色透明インクも使用できる。無色透明のメジウム材料が配合された透明メジウムインクも使用できる。シリカなどのマットメジウムを配合した、つや消し状のマットインクも使用できる。メジウムインクは、メジウムの配合量を変えることで、印刷インクの粘度を調整でき、幅が狭く厚みのある透明縁部層を形成するのに適している。
透明縁部層の厚みは、隣接する図象表現層の外周縁における厚みよりも分厚くしておく。透明縁部層の厚みを大きくするほど、透明縁部層による立体表現効果が強くなる。透明縁部層が分厚過ぎると、細幅で印刷するのが困難になったり、立体表現印刷物の全体の厚みが増え過ぎたりしてしまう。具体的には、3〜30μmの範囲に設定できる。図象表現層の外周縁の厚みよりも5〜25μm程度分厚くすることができる。
透明縁部層を、面方向で内外に複数の層で構成することができる。複数の層による光の通過、反射、屈折などの違いで、立体表現効果を高めることができる。複数の層は、通常は、内外の2層であるが、3層以上を組合せることもできる。複数の層は、同じ厚みおよび幅であってもよいし、異なる厚みあるいは幅の層を組合せることもできる。複層の場合、複層の最大厚みあるいは合計の幅が、前記した厚みおよび幅の範囲におさまるように設定する。通常は、内層側ほど厚みが小さくなるように設定することで、立体表現効果が高まる。
〔遮光性下地層〕
図象表現層、透明縁部層を覆って透明基材層の背面に印刷される。
透明基材層の背面には、一部のみに図象表現層が配置され、その外周縁に透明縁部層が配置されているだけなので、それ以外の領域は透明基材層が露出している。したがって、遮光性下地層の一部は、透明基材層の露出面に直接に印刷される。
遮光性下地層は、各種の色を呈する着色層であることができる。
金属微粉などの光反射性微粉末を含有する光反射性インク層であることができる。光反射性微粉末を樹脂あるいはインク材料に分散させたり練り込んだりすることで得られる。このような光反射性インクは、メタルインク、メタルクロムシルバーインクなどとも呼ばれている。光反射性微粉末として、メタルマイカ、パールマイカ、アルミニウムなどが使用できる。使用する光反射性微粉末の種類などによって、金色、銀色、銅色、クロム色などの金属色を表現することができる。光反射性微粉末の配合量は、通常、50〜90重量%に設定できる。好ましくは75〜85重量%である。
遮光性下地層は、厚みに違いのある図象表現層および透明縁部層、さらには、透明基材層の背面が露出している個所までにわたって設けられるので、遮光性下地層の厚みは、図象表現層や透明縁部層の厚みの違いにより、場所によって違ってくることがある。例えば、透明基材層の露出個所では厚く、透明縁部層の個所では薄くなることがある。遮光性下地層の最低厚みを、透明縁部層の個所で確実に遮光できる程度に設定する。具体的には、遮光性下地層を形成する印刷インクの遮光性によっても異なるが、通常は、遮光性下地層の最低厚みを、1〜3μmに設定することができる。
〔裏打ち層〕
遮光性下地層の背面を保護したり背面の凹凸をなくしたり透けないようにしたりするために、裏打ち層を設けることができる。
裏打ち層は、通常の印刷技術で形成できる。遮光性下地層の背面の凹凸を埋めることができる厚みで形成すれば、裏打ち層の背面すなわち立体表現印刷物の裏面を平坦にすることができる。
遮光性下地層が、接触や水濡れなどに弱い材料の場合、強度や耐水性のある裏打ち層を設けることで、遮光性下地層を保護することができる。例えば、遮光性下地層が、金属微粉による光反射層の場合、金属微粉の反射性を長期間にわたって維持するために裏打ち層が有効である。
裏打ち層の厚みは、その目的によっても異なるが、通常は、5〜20μmの範囲に設定できる。
透明基材層の一部に設けられ、図象表現層、透明縁部層および遮光性下地層の何れもが存在せず厚み方向に光が通過する。
図象表現層、透明縁部層および遮光性下地層が存在しなければ、透明基材層だけなので、光は良好に通過する。図象表現層、透明縁部層および遮光性下地層の代わりに、透明インクが印刷されてあってもよい。図象表現層、透明縁部層および遮光性下地層を印刷したあとで、貫通孔を加工形成することで、光通過部を設けることもできる。
光通過部は、立体表現印刷物に、表裏に貫通する透明な領域を設けて、意匠表現をより多彩にする。使用時に、立体表現印刷物の裏側を観察する機能を付与できる。例えば、各種機器類の表面を立体表現印刷物で構成した場合、光通過部を通じて機器内部を観察することが可能になる。機器内部の部材を露出させることができる。
光通過部の裏面に、液晶表示板やEL表示シートの表示部を配置しておけば、立体表現印刷物を、情報表示装置の一部として使用することができる。
〔立体表現印刷方法〕
立体表現印刷物の各層の構造が形成できる印刷方法であれば、通常の印刷物における印刷技術が適用できる。
印刷インクとして、UV(紫外線)硬化型インクを使用すれば、正確な厚みおよびパターン形状で印刷することができる。特に、細幅で厚みのある透明縁部層の印刷に適している。UV硬化型インクを印刷したあと直ちに紫外線照射を行って硬化させれば、インク層が変形したり流れたりすることなく、印刷された正確なパターン形状のままの硬化層が形成できる。
工程(a):透明基材層の背面で、後で印刷される図象表現層の周縁に隣接する位置に、予め、細幅の透明縁部層を図象表現層の厚さよりも分厚く印刷する。
基本的には、通常の印刷技術が適用できる。前記したように、細幅で厚みのある透明縁部層を正確に形成するには、UV硬化型インクを用いたシルクスクリーン印刷が好ましい。
印刷インクの粘度は、粘度が低いほうがスクリーン印刷で大量の印刷インクを供給できる。但し、粘度の低い印刷インクは、流れたり形が崩れたりし易い。粘度の低いUV硬化型インクを使って、大量の印刷インクを供給したあと、迅速に紫外線照射を行って硬化させてしまえば、透明縁部層を形成し易い。粘度の高い印刷インクを、大きな圧力をかけることで、大量に供給して、分厚い透明縁部層を形成することもできる。前記したメジウムインクは、メジウムの配合量によって粘度調整が容易にできる。透明縁部層を印刷する印刷インクの粘度を、2000〜4000poise に設定することができる。好ましくは、2,800〜3,500poise である。
印刷インクの乾燥条件によっても透明縁部層の厚みが変わる。例えば、溶剤タイプの印刷インクでは、乾燥硬化後に、印刷インクの40〜50%しか残留しないので、透明縁部層の厚みを大きくし難いが、UV硬化型の印刷インクであれば、印刷インクの80〜90%が残留し、印刷時点とあまり変わりのない透明縁部層が得られる。溶剤タイプであっても、溶剤量を減らすなど、印刷硬化後の残留量を増やすことで、透明縁部層の形成に対応させることも可能である。
工程(b):透明縁部層に隣接して、図象表現層を印刷する。
前記した逆版印刷を適用する以外は、通常の印刷技術がそのまま適用できる。図象表現層を、複数の材料層が積層された構造で構成するには、立体表現印刷物の表側になる層から順番に印刷工程を繰り返すことになる。
図象表現層は、先に形成された透明縁部層に隣接する空間を埋めて透明縁部層と密着するように印刷すれば、透明縁部層と図象表現層との一体性が良好になる。透明縁部層と図象表現層との間にわずかな隙間があいたとしても、遮光性下地層を印刷することで、前記隙間を埋めることができる。
基本的には、通常の印刷技術が適用できる。遮光性下地層は、図象表現層、透明縁部層および透明基材層という段差のある面に確実に所定の厚みで印刷する必要があるため、前記したスクリーン印刷法などの印刷方法が好ましい。
以上に説明した工程(a)〜(c)を基本にして、通常の印刷技術で採用されている各種の印刷工程や前処理工程、後処理工程を組み合わせて、立体表現印刷物を製造することができる。
本発明の立体表現印刷物は、表面になる透明基材層を通して観察される図象表現層の図象が、立体的に浮き上がって見える。
立体感のある図象による意匠効果が必要とされる各種用途に利用することができる。
例えば、各種機器に取り付けられる銘板に使用できる。銘板に印刷された文字や記号が明瞭に確認できる。
立体表現印刷物が、各種機器の外殻部品あるいは外装板、面板など機器を構成する部材であれば、立体表現印刷が一体形成された機器を構成できる。各種のシールやラベル、ステッカーに使用できる。
書籍の表紙やパンフレット、包装用紙などに使用できる。立体感のある絵画の印刷出版にも使用できる。置物などの装飾品の一部に貼り付けて、装飾効果を高めることができる。
立体表現印刷物の裏面に粘着剤層や接着剤層を設けておけば、銘板やステッカーなどを貼り付けて使用するのに便利である。立体表現印刷物の裏面に両面粘着シートを貼り付けておくこともできる。粘着層の表面は、使用時まで剥離シートで覆っておくことができる。
立体表現印刷物の表面を構成する透明基材層の、さらに表面に、透明樹脂によって周辺から中央へと膨れた曲面状のレンズ層を配置することができる。曲面状のレンズ層を通して観察される立体表現は、より浮き上がった状態に見え立体感が増強される。いわゆる広角レンズあるいは魚眼レンズの効果である。立体表現印刷物の正面からだけでなく、斜め方向から観察したときにも良好な立体表現が見えるようになる。レンズ層が、微小な畝状あるいは点状のレンズを並べたものであることもできる。
その結果、図象表現層を過剰に分厚くする必要がなく、何度も重ね塗りしたりインクの過剰な盛り上げを行ったりする必要もなく、通常のスクリーン印刷法などを適用して、簡単かつ能率的に、深みのある立体表現を有する印刷物が得られる。
特に、深みのある立体表現が可能でありながら、立体表現印刷物の表面を平坦あるいは平滑にすることもできるので、立体表現印刷物を各種機器類の表面に配置して使用するような用途であっても、立体表現印刷物の表面に生じる凹凸によって使用感を損なうことがなく、磨耗などによる損傷も起こし難くなる。
図1、2に示す実施形態は、シート状の立体表現印刷物、すなわち立体表現印刷シート
Sである。
図1に示すように、立体表現印刷シートSは、白矢印で示す方向から観察されるようにして使用する。
<透明基材層>
印刷シートSの最表面には、透明樹脂フィルムなどからなる透明基材層10が存在する。透明基材層10の表面および背面は平滑である。透明基材層10の具体例として、厚み188μmのポリエステル透明フィルムが使用できる。
透明基材層10の背面には、所望の図象を構成する図象表現層20が配置される。図2に示すように、図象表現層20の平面形状は、「N」や「1」などの文字、星形や円、楕円リングなどの図形を表している。また、それぞれの図象表現層20は異なる色や模様、質感などを表現することができる。
図象表現層20としては、図1の左側部分に示すように、透明基材層10に近い側に、着色透明インク層22を配置し、その背面側に非着色透明インク層24を重ねて配置することができる。より具体的には、厚み5μmで青色に着色された透明インク層22と、厚み10μmで無色の透明インク層24とを組み合わせることができる。
<透明縁部層>
図1に示すように、それぞれの図象表現層20の周縁には、幅の狭い透明縁部層30が配置される。透明縁部層30の厚みは、図象表現層20の厚みよりも分厚い。
具体的には、例えば、厚み10μmで幅50μmの透明メジウムインク層32と、厚み18μmで幅50μmの透明マットメジウムインク層34とを組み合わせる。
図象表現層20および透明縁部層30を覆って、光反射性微粉が配合された光反射性インクが印刷された遮光性下地層40を有する。
遮光性下地層40は、図象表現層20および透明縁部層30のない谷間の領域をも埋めていて、透明基材層10の表面を覆っている。遮光性下地層40は、図象表現層20および透明縁部層30を十分な厚みで覆い、透明基材層10側から入射する光の通過を遮って反射できるように設定されている。遮光性下地層40の背面には、図象表現層20および透明縁部層30に対応する凹凸が生じている。遮光性下地層40として、例えば、最小厚みが1μmの光反射性インク層が形成される。
遮光性下地層40の背面には、白色の不透明着色インクなどからなる裏打ち層50が配置される。裏打ち層50は、遮光性下地層40の全体を覆って背面の凹凸も埋めるようにして形成されている。裏打ち層50の背面は平坦である。裏打ち層50として、例えば、最小厚み5μmの白色インク層が形成される。
<立体表現作用>
このような構造を有する立体表現印刷シートSは、図1に白矢印で示す方向、すなわち、透明基材層10の表面側から観察する。図2に示すように、所定のパターン状をなす図象表現層20と、図象表現層20の外周を縁取る透明縁部層30と、それ以外の領域全体を占める遮光性下地層40とが観察される。
ところが、図象表現層20と遮光性下地層40との境界部分に、透明縁部層30が存在すると、図象表現層20が大きく浮き上がって立体感が強調されて観察される。これは、図1において、透明基材層10の表面側から入射した光が、透明縁部層30に入射すると、幅が狭く奥行きのある溝状をなし底面に遮光性下地層40が存在する透明縁部層30の中で、複雑に反射したり拡散したりしたあとで、透明基材層10の表面側に出ていくことになる。しかも、透明縁部層30の、内層32と外層34とも、光の透過性や散乱性などの特性が異なるので、反射して出ていく光はより複雑なものとなる。図象表現層20と遮光性下地層40との間に、光の反射の仕方が大きく異なる透明縁部層30が存在することで、図象表現層20が周囲から大きく浮き上がったように立体感が強調されて観察されることになる。
図象表現層20の周縁のうち、視線の手前側では、透明縁部層30と境界線で図象表現層20の端縁から周側面の一部までが見え、透明縁部層30の内部を複雑に反射した光が図象表現層20の端縁や周側面に当たった状態が強調されて観察される。透明縁部層30では、内層側の透明メジウムインク層32を主に通して図象表現層20の端縁から周側面が見える。これに対し、図象表現層20の周縁のうち、視線の奥側では、透明縁部層30、特に、外層の透明マットメジウムインク層34を主に通して、遮光性下地層40の端縁から内側面の一部が見えるという違いが生じる。図象表現層20の周縁の見え方が、手前側と奥側という位置の違いによって大きな違いを生じることで、図象表現層20の立体感が強調されるものと推測される。
図象表現層20の表面位置と遮光性下地層40の表面位置とは、何れも透明基材層10の背面位置であって、全く同じ高さ位置であるはずにも関わらず、観察者の感覚では、遮光性下地層40よりも、透明縁部層30で囲まれた図象表現層20のほうが、明らかに浮き出ているように見えるという現象が起こる。
したがって、図象表現層20の周縁部と遮光性下地層40との境界部分に存在する、幅が狭くて厚みがある透明縁部層30における複雑な光の反射作用が、前記したような図象表現層20の立体感の強調を実現していることが判る。
〔立体表現印刷シートの製造〕
図3は、前記した立体表現印刷シートSの製造工程を示している。
この状態で、シルクスクリーン印刷法を適用して、図象表現層20および透明縁部層30を印刷する。図象表現層20と透明縁部層30とは、何れを先に印刷することもできる。通常は、透明縁部層30を印刷したあとで、図象表現層20を印刷する。
<透明縁部層の印刷>
あとで印刷される図象表現層20の周縁に隣接する位置に、内層の透明メジウムインク層32を印刷して硬化させ、その後で、透明メジウムインク層32の外側に隣接する位置に、外層の透明マットメジウムインク層34を印刷する。透明縁部層30は、幅が狭くて厚みが大きいので、シルクスクリーン印刷で印刷インクを印刷したあと、直ぐに硬化させないと、流動状態の印刷インクが流れたり形が崩れたりして、適切な幅および厚みに形成されないことがある。そこで、UV硬化型の印刷インクを使用し、印刷した後、直ぐに紫外線照射を行って、印刷インクを硬化させる。印刷インクの粘度は、透明メジウムインク層32が2,800poise、透明マットメジウムインク層34が3,500poiseである。
<図象表現層の印刷>
図3(b)に示すように、透明縁部層30が十分に硬化して形が崩れないようになってから、図象表現層20を印刷する。
図象表現層20の印刷は、通常の印刷方法と同様に行える。例えば、着色透明インク層22を印刷した上に、非着色透明インク層24を印刷する。ヘアライン印刷用のシルクスクリーンを使って、上面に微細な凹凸がある図象表現層20を印刷することもできる。
<遮光性下地層の印刷>
図3(c)に示すように、透明基材層10の全面に、遮光性下地層40を印刷する。遮光性下地層40は、図象表現層20および透明縁部層30による凹凸表面を覆って、図象表現層20および透明縁部層30の上を一定の厚みで覆い、図象表現層20および透明縁部層30の谷間を透明基材層10の表面まで完全に覆うように印刷する。
<裏打ち層の印刷>
図1に示すように、遮光性下地層40の上には、裏打ち層50が印刷される。裏打ち層50が無くても、立体表現印刷シートSの基本的な立体表現機能は発揮できるが、裏打ち層50を印刷することで、遮光性下地層40を保護することができる。遮光性下地層40における反射特性も良好になる。遮光性下地層40に凹凸があっても、裏打ち層50で凹凸を埋めてしまえば、立体表現印刷シートSの外面を平坦にすることができる。
図4に示す実施形態は、立体表現印刷物に、発光による意匠表現を加えている。
立体表現印刷シートSの基本的構造は前記実施形態と共通している。
図象表現層20の形成個所の一部に、透明基材層10を除いて、図象表現層20から裏打ち層50までを貫通する透明インク層からなる光通過部60を設けている。光通過部60は、各層22、24、40、50を印刷する際に、光通過部60の部分だけをマスキングするなどして印刷しないでおき、残った部分にあとから透明インクを印刷することで形成できる。光通過部60を印刷したあとで、他の各層22等を印刷してもよい。
このような構造の立体表現印刷シートSを、透明基材層10の表面側から観察すると、前記実施形態と同様に、図象表現層20の部分が周囲から立体的に浮き上がって見えると同時に、発光器62から照射される光が、光通過部60および透明基材層10を通過することで、図象表現層20の一部が明るく輝いて見えることになる。
その結果、単なる立体表現を超えて、より観察者の注意を引く、商品価値の高い立体表現印刷物を提供することができる。
図5に示す実施形態は、図象表現層20の輪郭をより明確に表現している。
立体表現印刷シートSの基本的構造は前記実施形態と共通している。
図象表現層20の外周縁と、その外側を囲む透明縁部層30との間に、狭い隙間があいている。この隙間に、光反射性インクが塗工された遮光性下地層40の一部が埋めこまれて、光反射性輪郭部42を構成している。光反射性輪郭部42の幅は、透明縁部層30と同じ程度か、さらに狭い幅に設定されている。
このような構造を、立体表現印刷シートSの表面側から観察すると、図象表現層20の外周縁に光反射性輪郭部42によって輝く明瞭な輪郭線が認められる。この明瞭な輪郭線を表す光反射性輪郭部42の外周縁に、前記同様の透明縁部層30による立体表現が施されることになる。
〔別の実施形態(3)〕
図6に示す実施形態は、ヘアライン調とも呼ばれる金属の切削加工面のような光沢感のある意匠表現を強調している。
立体表現印刷シートSの基本的構造は前記実施形態と共通している。
図象表現層20を、厚みが異なる2種類の透明インク層26、28を交互に並べた状態で構成している。例えば、図2の左下に示された同心円状の意匠パターンを、上記2種類の透明インク層26、28を中心から外周へと交互に並べて印刷することができる。具体的には、一方の透明インク層26を一定間隔毎に並ぶパターンで印刷したあと、その隙間を埋めるような形態で、他方の透明インク層28を印刷すればよい。
2種類の透明インク層26、28は、厚みだけでなく、インクの種類や透明度、着色度、つや消し状態などの特性を違えておけば、より複雑で意匠性の高い表現を行うことができる。
20 図象表現層
22 着色透明インク層
24 非着色透明インク層
30 透明縁部層
32 透明メジウムインク層
34 透明マットメジウムインク層
40 遮光性下地層
50 裏打ち層
60 光通過部
62 発光器
S 立体表現印刷シート
Claims (9)
- 図象が立体的に表現された印刷物であって、
表面側に配置される透明基材層と、
前記透明基材層の背面に部分的に印刷された図象表現層と、
前記図象表現層の周縁に隣接して印刷され、図象表現層よりも厚みがあり細幅である透明縁部層と、
前記図象表現層、透明縁部層を覆って前記透明基材層の背面に印刷された遮光性下地層と
を備える
立体表現印刷物。 - 前記図象表現層が、前記透明基材層側から順番に、着色透明インク層および非着色透明インク層を有する
請求項1に記載の立体表現印刷物。 - 前記図象表現層が、厚みの違いによる微細模様を有する透明インク層を有する
請求項1または2に記載の立体表現印刷物。 - 前記透明縁部層が、前記図象表現層に近い側に配置された透明メジウムインク層と、透明メジウムインク層の外側に隣接して配置され透明メジウムインク層よりも厚い透明マットメジウムインク層とを有する
請求項1〜3の何れかに記載の立体表現印刷物。 - 前記透明縁部層が、厚み3〜30μm、幅50〜500μmである
請求項1〜4の何れかに記載の立体表現印刷物。 - 前記遮光性下地層が、光反射性微粉末を含有する光反射性インク層からなる
請求項1〜5の何れかに記載の立体表現印刷物。 - 前記透明基材層の一部に、前記図象表現層、透明縁部層および遮光性下地層の何れもが存在せず厚み方向に光が通過する光通過部をさらに備える
請求項1〜6の何れかに記載の立体表現印刷物。 - 請求項1〜7の何れかに記載の立体表現印刷物を得る立体表現印刷法であって、
前記透明基材層の背面で、後で印刷される前記図象表現層の周縁に隣接する位置に、前記細幅の透明縁部層を図象表現層の厚さよりも分厚く印刷する工程(a)と、
前記透明縁部層に隣接して、前記図象表現層を印刷する工程(b)と、
前記図象表現層、透明縁部層を覆って前記透明基材層の背面に遮光性下地層を印刷する工程(c)と
を含む立体表現印刷法。 - 前記工程(a)における図象表現層の印刷、前記工程(b)における透明縁部層の印刷、および、前記工程(c)における遮光性下地層の印刷を、スクリーン印刷で行う
請求項8に記載の立体表現印刷法。
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