JP2007038551A - 印刷物および印刷物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 印刷落ちの防止が可能で、かつ、立体感が表現された優れた意匠的効果を有する印刷物を提供すること。
【解決手段】 印刷物1は、透明な基材2と、基材2の裏面2aにスクリーン印刷で印刷されて形成された所定形状の印刷表示部3とを備えている。基材2の裏面2aには、印刷表示部3の外形を形成する縁部4aを有する第1インク部4と、印刷表示部3の縁取りをなすとともに第1インク部4よりも厚く印刷された光を透過可能な第2インク部5とがスクリーン印刷で印刷されている。
【選択図】 図2
【解決手段】 印刷物1は、透明な基材2と、基材2の裏面2aにスクリーン印刷で印刷されて形成された所定形状の印刷表示部3とを備えている。基材2の裏面2aには、印刷表示部3の外形を形成する縁部4aを有する第1インク部4と、印刷表示部3の縁取りをなすとともに第1インク部4よりも厚く印刷された光を透過可能な第2インク部5とがスクリーン印刷で印刷されている。
【選択図】 図2
Description
本発明は、スクリーン印刷によって印刷された印刷物および印刷物の製造方法に関する。
従来から、樹脂製のプレートやシート等の基材に対して印刷を行う方法として、スクリーン印刷製版を用いたスクリーン印刷が広く採用されている。また、このスクリーン印刷によって、立体感が表現され、優れた意匠的効果を有する印刷物が知られている(たとえば、特許文献1参照)。この特許文献1には、かかる印刷物として、表面にUVインクによって立体的な模様が印刷されたCD(Compact Disk)収納ケースが開示されている。
しかしながら、特許文献1に記載の印刷物(CDケース)では、印刷物の表面にUVインクによって立体的な模様が印刷されているため、インクが表面から剥れ落ちる印刷落ちの問題が生じる。特に、印刷物の使用時等に、その表面に所定の溶剤等が付着すると、印刷落ちの問題は顕著になる。
そこで、本発明の課題は、印刷落ちの防止が可能で、かつ、立体感が表現された優れた意匠的効果を有する印刷物およびその製造方法を提供することにある。
上記の課題を解決するため、本願出願人は、種々の検討を行った。特に、スクリーン印刷によって基材の裏面に印刷を行う裏面印刷に着目し、種々の検討を行った。その結果、スクリーン印刷によって基材の裏面に印刷をした場合であっても、立体感の表現が可能で、優れた意匠的効果を有する印刷物およびその製造方法を知見するに至った。
本発明はかかる新たな知見に基づくものであり、透明な基材と、基材の裏面にスクリーン印刷で印刷されて形成された所定形状の印刷表示部とを備える印刷物であって、基材の裏面に、印刷表示部の外形を形成する縁部を有する第1インク部と、縁部に接するとともに印刷表示部の縁取りをなす第2インク部とがスクリーン印刷で印刷され、第2インク部は、光が通過可能なインクで形成され、かつ、第1インク部よりも厚く形成されていることを特徴とする。
本発明の印刷物では、基材の裏面にスクリーン印刷で印刷が行われることで、所定形状の印刷表示部が形成されている。すなわち、印刷物の表面には印刷が行われないため、印刷落ちを防止することが可能となる。また、本発明の印刷物は、基材の裏面に、印刷表示部の外形を形成する縁部を有する第1インク部と、縁部に接するとともに印刷表示部の縁取りをなす第2インク部とがスクリーン印刷で印刷され、第2インク部は、光が通過可能なインクで形成され、かつ、第1インク部よりも厚く形成されている。そのため、本発明の印刷物では、基材の裏面に印刷をした場合であっても、印刷表示部の立体感の表現が可能で、その結果、意匠的に優れた効果を得ることが可能になる。
本発明において、第2インク部を形成するインクは、紫外線硬化型のインクであることが好ましい。このように構成すると、印刷表示部の縁取りをなす第2インク部をより厚く印刷することが可能となる。そのため、印刷表示部をより立体的に表現することができる。
本発明において、第2インク部を覆う第3インク部がスクリーン印刷で印刷され、第3インク部を形成するインクは、鏡面インクであることが好ましい。このように構成すると、印刷表示部の縁取りをなす第2インク部が強調されるため、印刷表示部をより立体的に表現することができる。
本発明において、第2インク部の基材の裏面からの厚さは30μm±10μmであることが好ましい。このように構成すると、第2インク部によって、印刷表示部をより立体的に表現することができる。
本発明において、基材の厚さ方向に直交する方向における第1インク部の縁部からの第2インク部の幅は、0.15mmから0.2mmであることが好ましい。このように構成すると、第2インク部によって、印刷表示部をより立体的に表現することができる。
本発明の印刷物の製造方法では、第2インク部の印刷工程で使用するスクリーン印刷製版のスクリーンの乳剤部の厚さは、40μm±5μmであることが好ましい。このように構成すると、適切な厚さの第2インク部が形成され、印刷表示部をより立体的に表現することができる。
また、本発明の印刷物の製造方法では、第2インク部の印刷工程で使用するスクリーン印刷製版のスクリーンのメッシュ粗さが120メッシュから350メッシュであることが好ましい。ここで、本明細書において、「メッシュ粗さ」は、スクリーン印刷製版のスクリーンを構成する経糸(縦糸)と緯糸(横糸)とがそれぞれ1インチ角当たりに配置される本数から規定される。たとえば、メッシュ粗さが120メッシュである場合には、スクリーンを構成する経糸と緯糸とがそれぞれ1インチ角当たりに120本配置されており、メッシュ粗さが350メッシュである場合には、スクリーンを構成する経糸と緯糸とがそれぞれ1インチ角当たりに350本配置されている。
このように構成すると、第2インク部を適切な厚さで形成しつつ、印刷表示部が歪んで見えるのを防止することができる。すなわち、メッシュ粗さが粗過ぎると、より多くのインクをスクリーンから刷り下ろすことができるため、第2インク部の厚さの確保は可能になる。しかし、第2インク部によって形成される印刷表示部の縁取りが粗くなるため、印刷表示部が歪んで見える。一方、メッシュ粗さが細か過ぎると印刷表示部の縁取りを細かくできるため、印刷表示部が歪んで見えるのを防止することができる。しかし、第2インク部の厚さの確保が困難となり、印刷表示部の立体的な表現が難しくなる。そのため、メッシュ粗さを120メッシュから350メッシュとすると、第2インク部を適切な厚さで形成しつつ、印刷表示部が歪んで見えるのを防止することが可能となる。
また、上述した新たな知見に基づいて、本発明は、スクリーン印刷にて所定形状の印刷表示部を基材に形成する印刷物の製造方法であって、基材の裏面に、印刷表示部の外形を形成する縁部を有する第1インク部をスクリーン印刷で印刷する第1印刷工程と、縁部に接するとともに印刷表示部の縁取りをなし、かつ、光が通過可能なインクで形成された第2インク部を第1インク部よりも厚くスクリーン印刷にて印刷する第2印刷工程とを備えることを特徴とする。
本発明の印刷物の製造方法では、印刷表示部の外形を形成する縁部を有する第1インク部と、印刷表示部の縁取りをなす第2インク部とを、基材の裏面にスクリーン印刷で印刷している。すなわち、印刷物の表面には印刷が行われないため、印刷落ちを防止することが可能となる。また、本発明の印刷物の製造方法は、基材の裏面に、印刷表示部の外形を形成する縁部を有する第1インク部を印刷する第1印刷工程と、刷表示部の縁取りをなし、かつ、光が通過可能なインクで形成された第2インク部を第1インク部よりも厚くスクリーン印刷にて印刷する第2印刷工程とを備えている。そのため、本発明の印刷物の製造方法では、基材の裏面に印刷をした場合であっても、印刷表示部の立体感の表現が可能で、その結果、意匠的に優れた効果を得ることが可能になる。
以上説明したように、本発明に印刷物および印刷物の製造方法では、印刷落ちを防止しつつ、立体感の表現が可能で、優れた意匠的効果を得ることができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
(印刷物の構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかる印刷物1を示す平面図である。図2は、図1のX−X部分の断面を拡大して示す部分拡大断面図である。
図1は、本発明の実施の形態にかかる印刷物1を示す平面図である。図2は、図1のX−X部分の断面を拡大して示す部分拡大断面図である。
本形態の印刷物1は、ネームプレートや装飾用プレート等の各種プレート、あるいは、各種機器の表示パネルや装飾用パネル等の各種パネル等の所定の厚さを有する基材2に所定形状の印刷表示部3が印刷されたものである。本形態の印刷物1では、図1に示すように、印刷表示部3として「JAPAN」の文字が基材2に印刷されている。なお、印刷表示部3としては、本形態のような文字の他、図形、記号または模様等の各種の表示が基材2に印刷されても良い。
印刷物1では、図2に示すように、基材2の裏面2a(図2では下面)に、スクリーン印刷によって、第1インク部4、第2インク部5、第3インク部6および第4インク部7が印刷されている。そして、第2インク部5および第3インク部6の、基材2の表面(図2の上面)から見える部分が印刷表示部3となっている。
基材2は透明な基材である。より具体的には、本形態の基材2は、厚さ0.5mmのPC(ポリカーボネート)で形成されている。なお、基材2の材質はPCには限定されず、PET(ポリエチレンテレフタレート)やアクリル等の透明な樹脂や、透明なガラス等であっても良い。
第1インク部4は、印刷表示部3の外形を形成している。すなわち、本形態では、印刷表示部3である「JAPAN」の文字以外の部分が、第1インク部4となっており、第1インク部4の縁部4aが、印刷表示部3の外形を形成している。本形態の第1インク部4は、アクリル系で銀色のメタリックインクで形成されている。図2に示すように、この第1インク部の基材2の裏面2aからの厚さt1は、たとえば、7〜8μmとなっている。なお、第1インク部4を形成するインクは、銀色のメタリックインクには限定されず、金色等のメタリックインクであっても良いし、通常のカラーインク等であっても良い。すなわち、第1インク部4を形成するインクは、基材2の材質に対応した適切なインクであれば良い。
第2インク部5は、図2に示すように、印刷表示部3の縁取りをなし、第1インク部4の縁部4aに接した状態で印刷されている。より具体的には、印刷表示部3の全ての縁取りをなすように、第1インク部4の全ての縁部4aに図示下側からかぶった状態で、第2インク部5が印刷されている。すなわち、印刷表示部3である「JAPAN」の文字の縁取りが第2インク部5となっている。この第2インク部5は、図2の示すように、断面略L形状に形成され、第1インク部4の縁部4aおよび縁部4aに連設される第1インク部4の図示下面の一部を覆っている。
また、第2インク部5は紫外線硬化型のUVインクで形成されている。より具体的には、第2インク部5は、厚盛り用で透明度の高いUVインクで形成されている。すなわち、第2インク部5は、光が通過可能なUVインクで形成されている。
本形態では、第2インク部5は、第1インク部4よりも厚く印刷されている。より具体的には、図2に示すように、第2インク部5の基材2の裏面2aからの厚さt2は、たとえば、30μmとなっている。また、基材2の厚さ方向に直交する方向(図2の横方向)における第1インク部4の縁部4aから第2インク部5の縁部5aまでの距離、すなわち、第2インク部5の幅(図2における第2インク部5の上側部分の横幅)w1は、たとえば、0.15mmとなっている。そして、図2に示すように、図2の横方向では、隣り合う第2インク部5の縁部5a同士の間には、所定の間隔が保たれている。また、図2の横方向における第2インク部5の、第1インク部4の図示下面の一部を覆っている部分の幅(図2における第2インク部5の下側部分の横幅)w2は、たとえば、0.3mmとなっている。
第3インク部6は、第2インク部5を覆うように印刷されている。より具体的には、第3インク部6は、図2における第2インク部5の左右両側面および下面を覆うように印刷されている。また、第3インク部6は、隣り合う第2インク部5の縁部5a間を充填するように印刷されている。本形態の第3インク部6は、鏡面インクで形成されている。より具体的には、第3インク部6は、高粘度で強鏡面性を有する鏡面インクで形成されている。
第4インク部7は、第3インク部6を覆うように印刷されている。また、第4インク部7は、第2インク部5や第3インク部6に覆われていない第1インク部4の下面部分も覆うように印刷されている。本形態の第4インク部7は、アクリル系で白色のインクで形成されている。なお、第3インク部6を形成する鏡面インクは、一般的に剥れやすいため、第3インク部6の剥れ防止のために、この第4インク部7が印刷されている。すなわち、第3インク部6を形成するインクが鏡面インク等の剥がれやすいインクでなければ、第4インク部7は印刷しなくても良い。
(スクリーン印刷装置の構成)
図3は、図1に示す印刷物1を印刷するためのスクリーン印刷装置9の概略構成を示す斜視図である。図4は、図3のスクリーン印刷装置9のスクリーン13の一部を拡大して示す拡大平面図である。図5は、図4のY−Y断面を示す部分拡大断面図である。
図3は、図1に示す印刷物1を印刷するためのスクリーン印刷装置9の概略構成を示す斜視図である。図4は、図3のスクリーン印刷装置9のスクリーン13の一部を拡大して示す拡大平面図である。図5は、図4のY−Y断面を示す部分拡大断面図である。
基材2の裏面2aに形成される第1インク部4から第4インク部7の4つの印刷には、図3に示すように、スクリーン印刷製版10とスキージ11とを備えるスクリーン印刷装置9が用いられる。
スクリーン印刷製版10は、図3に示すように、アルミ等の金属や木材で形成された枠体12と、枠体12の図示下端側に固定されたスクリーン13とから構成されている。
スクリーン13は、図4および図5に示すように、経糸(縦糸)14と緯糸(横糸)15とからなるメッシュ部16と、乳剤部17とを備えている。
経糸14および緯糸15は、シルク、ナイロン、ポリエステル等の繊維や、ステンレス線材等の針金で形成されている。この経糸14および緯糸15が、図4に示すように、網目状に織り込まれてメッシュ部16が形成されている。また、スクリーン13では、図4に示すように、図示上下方向と左右方向とで直交する網目状のメッシュ部16が、図3に示すスキージ11の差動方向Zに対して角度α(本形態では、22.5°)だけ傾いた状態で配設されている。すなわち、スクリーン13では、経糸14(または緯糸15)の方向が図3に示すスキージ11の差動方向Zに対して22.5°傾いた状態で、メッシュ部16が配設されている。
乳剤部17は、感光材(フォトレジスト)で形成されている。この乳剤部17には、所定の露光工程や現像工程等を経て、図5に示すように、インクが通過する開口部18が形成される。この開口部18は、スクリーン印刷で、基材2に形成したい印刷形状に合わせて形成される。たとえば、開口部18は、図3に示すような「JAPAN」の文字をなすように形成される。
スクリーン13では、図5に示すように、スクリーン13の全体の厚さが総厚t3、メッシュ部16の厚さが紗厚t4となっている。そして、総厚t3と紗厚t4との差(t3−t4)が乳剤部17の厚さである乳剤厚t5となっている。この乳剤厚t5が厚いと基材2にインクが厚く印刷され、乳剤厚t5が薄いと基材2にインクが薄く印刷されるようになっている。
また、スクリーン13では、1インチ角当たりに配置される経糸14および緯糸15のそれぞれの数でメッシュ粗さが表される。たとえば、1インチ角当たりに経糸14および緯糸15がそれぞれ330本配置されると、スクリーン13のメッシュ粗さは、330メッシュとなる。このメッシュ粗さが細かいと、スクリーンから刷り下ろされたインクの縁部が細かくなり、メッシュ粗さが粗いと、スクリーンから刷り下ろされたインクの縁部が粗くなる。
スキージ11は、先端側にシリコンゴム等のゴム材料から形成されたゴム部19を備えている。そして、図3に示すように、スクリーン13上の盛られたインク20を、スキージ11のゴム部19で、スクリーン13に圧力を加えながらこすることで、開口部18からインク20が刷り下ろされて、基材2の裏面2aに印刷が行われるようになっている。たとえば、図3に示すように、「JAPAN」の文字をなすように、開口部18が形成されていると、基材2には、「JAPAN」の文字が印刷されるようになっている。なお、基材2は所定の治具(図示省略)に固定されており、実際の印刷の際には、基材2は治具とともに、スクリーン13の下面(図3の裏面)に基材2の裏面2aが当接するまで上昇するようになっている。また、図3の基材2は、図1に示す基材2に切断分割される前の状態を示している。すなわち、図3に示す基材2が切断分割されて図1に示す基材2となる。
(印刷物の製造方法)
図6は、図1に示す印刷物1のスクリーン印刷工程を説明する図であり、(A)は第1インク部4の印刷が終了した状態、(B)は第2インク部5の印刷が終了した状態、(C)は第3インク部6の印刷が終了した状態、(D)は第4インク部7の印刷が終了した状態を示す図である。なお、図6の各図は、図2に示す断面図に相当する図面であるが、便宜上、斜線の記載を省略している。
図6は、図1に示す印刷物1のスクリーン印刷工程を説明する図であり、(A)は第1インク部4の印刷が終了した状態、(B)は第2インク部5の印刷が終了した状態、(C)は第3インク部6の印刷が終了した状態、(D)は第4インク部7の印刷が終了した状態を示す図である。なお、図6の各図は、図2に示す断面図に相当する図面であるが、便宜上、斜線の記載を省略している。
上述したスクリーン印刷装置9を用いて、スクリーン印刷を行い、印刷物1を得る。以下では、印刷物1のスクリーン印刷工程を説明する。なお、以下では、基材2に、印刷表示部3となる「JAPAN」の文字を印刷する場合について説明する。また、上述したように、実際には、図3に示す基材2に複数の「JAPAN」の文字を印刷した後、図3に示す基材2を切断分割して、図1に示す印刷物1を作成するが、以下では、説明の簡略化のため、切断分割した状態の基材2にスクリーン印刷を行うものとして説明する。
まず、図6(A)に示すように、基材2の裏面2aに第1インク部4を印刷する(第1印刷工程)。この第1印刷工程では、アクリル系で銀色のメタリックインクを用いる。より具体的には、第1印刷工程では、セイコーアドバンス社製のCAVメイバンを、同じくセイコーアドバンス社製の溶剤T−947で5%〜10%希釈したインクを用いる。また、第1印刷工程で用いるスクリーン13では、乳剤厚t5が12μm、メッシュ粗さが305メッシュとなっている。さらに、第1印刷工程で用いるスクリーン13(以下、第1のスクリーン13という。)には、「JAPAN」の文字以外の部分に開口部18が形成され、「JAPAN」の文字以外の部分にメタリックインクが刷り下ろされるようになっている。
第1印刷工程では、上述のメタリックインクを第1のスクリーン13上に盛り、スキージ11のゴム部19で、基材2の裏面2aにメタリックインクを1回刷り下ろす。メタリックインクを刷り下ろすと、図6(A)に示すように、「JAPAN」の文字以外の部分に第1インク部4が形成される。すなわち、印刷表示部3となる「JAPAN」の文字の外形が第1インク部4の縁部4aによって形成される。この状態で、第1インク部4の乾燥を行う。たとえば、温度40℃に保った状態で、基材2を30分間放置して第1インク部4の乾燥を行う。第1インク部4の乾燥が終わると第1印刷工程が終了する。
次に、図6(B)に示すように、基材2の裏面2aに第2インク部5を印刷する(第2印刷工程)。すなわち、第1インク部4の縁部4aに接するように、かつ、縁部4aにかぶせるように、第2インク部5を印刷する。この第2印刷工程では、厚盛り用で透明度の高いUVインクを用いる。より具体的には、第2印刷工程では、セイコーアドバンス社製のUV硬化型HUG Y0164 厚盛りメジュームAを、同じくセイコーアドバンス社製の溶剤UV8070で15%〜20%希釈したインクを用いる。また、第2印刷工程で用いるスクリーン13では、乳剤厚t5が40μm、メッシュ粗さが330メッシュとなっている。さらに、第2印刷工程で用いられるスクリーン13(以下、第2のスクリーン13という。)には、「JAPAN」の文字の縁取りをなすように、開口部18が形成され、「JAPAN」の文字の縁取りをなすように、UVインクが刷り下ろされるようになっている。
第2印刷工程では、上述のUVインクを第2のスクリーン13上に盛り、スキージ11のゴム部19で、基材2の裏面2aにUVインクを1回刷り下ろす。UVインクを刷り下ろすと、図6(B)に示すように、第1インク部4の縁部4aに接するように、かつ、縁部4aにかぶるように、第2インク部5が形成される。すなわち、印刷表示部3となる「JAPAN」の文字の縁取りなすように、第2インク部5が形成される。この状態で、第2インク部5の乾燥を行う。より具体的には、第2インク部5に数秒間、紫外線を照射する。この紫外線の積算光量は、たとえば、350〜400mJ(ミリジュール)/cm2である。このように、第2印刷工程では、紫外線照射によって第2インク部5の乾燥を行うため、短時間で第2インク部5の乾燥を行うことができ、第2インク部5を厚く印刷することが可能になる。第2インク部5の乾燥が終わると第2印刷工程が終了する。
次に、図6(C)に示すように、基材2の裏面2aに第3インク部6を印刷する(第3印刷工程)。すなわち、第2インク部5を覆うように第3インク部6を印刷する。この第3印刷工程では、高粘度で強鏡面性を有する鏡面インクを用いる。より具体的には、第3印刷工程では、十条ケミカル社製のPCシルバーを用いる。また、第3印刷工程で用いるスクリーン13(以下、第3のスクリーン13という。)では、乳剤厚t5が12μm、メッシュ粗さが305メッシュとなっている。さらに、第3印刷工程で用いられるスクリーン13には、「JAPAN」の文字をなすように開口部18が形成され、「JAPAN」の文字を形成するように、鏡面インクが刷り下ろされるようになっている。
第3印刷工程では、上述の鏡面インクを第3のスクリーン13上に盛り、スキージ11のゴム部19で、基材2の裏面2aに鏡面インクを2回刷り下ろす。より具体的には、基材2の裏面2aに鏡面インクを2回連続して刷り下ろす。鏡面インクを刷り下ろすと、図6(C)に示すように、第2インク部5の左右両側面および下面を覆うように第3インク部6が形成される。また、隣り合う第2インク部5の縁部5a間を充填するように第3インク部6が形成される。この状態で、第3インク部6の乾燥を行う。たとえば、基材2を通風状態で30分間乾燥させた後、さらに、温度80℃に保った状態で、基材2を30分間放置して乾燥を行う。第3インク部6の乾燥が終わると第3印刷工程が終了する。
最後に、図6(D)に示すように、基材2の裏面2aに第4インク部7を印刷する(第4印刷工程)。この第4印刷工程では、アクリル系で白色のインクを用いる。より具体的には、第4印刷工程では、セイコーアドバンス社製のCAVメイバンコンク120白を、同じくセイコーアドバンス社製の溶剤T−947で5%〜10%希釈したインクを用いる。また、第4印刷工程で用いるスクリーン13では、乳剤厚t5が12μm、メッシュ粗さが305メッシュとなっている。さらに、第4印刷工程で用いるスクリーン13(以下、第4のスクリーン13という。)には、「JAPAN」の文字部分も含め、基材2の裏面2aに印刷された第1インク部4の全ての範囲に対応するように、開口部18が形成されている。
第4印刷工程では、上述の白色インクを第4のスクリーン13上に盛り、スキージ11のゴム部19で、基材2の裏面2aに白色インクを1回刷り下ろす。白色インクを刷り下ろすと、図6(D)に示すように、第3インク部6を覆うように第4インク部7が形成される。また、第2インク部5や第3インク部6に覆われていない第1インク部4の下面部分も覆うように第4インク部7が形成される。この状態で、第4インク部7の乾燥を行う。たとえば、温度40℃に保った状態で、基材2を30分間放置して第4インク部7の乾燥を行う。第4インク部4の乾燥が終わると第4印刷工程が終了する。そして、この第4印刷工程が終了すると、印刷物1へのスクリーン印刷工程が終了し、印刷物1が完成する。
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態の印刷物1では、基材2の裏面2aにスクリーン印刷で印刷が行われることで印刷表示部3が形成されている。すなわち、通常、ユーザが触れる印刷物1の表面には印刷が行われていないため、印刷落ちを防止することができる。また、本形態の印刷物1では、基材2の裏面2aに、印刷表示部3となる「JAPAN」の文字の外形を形成する縁部4aを有する第1インク部4と、印刷表示部の縁取りをなす第2インク部とがスクリーン印刷で印刷されている。また、第2インク部5は、透明度の高いインクで形成され、かつ、第1インク部4よりも厚く形成されている。そのため、本形態の印刷物1では、基材2の裏面2aに厚く印刷された第2インク部5の深みによって、印刷表示部3となる「JAPAN」の文字が基材2の表面側に押し出されているかのように見える。すなわち、基材2の裏面2aに印刷をした場合であっても、印刷表示部3(すなわち、「JAPAN」の文字)の立体感の表現が可能となる。その結果、本形態の印刷物1では、優れた意匠的効果を得ることができる。
以上説明したように、本形態の印刷物1では、基材2の裏面2aにスクリーン印刷で印刷が行われることで印刷表示部3が形成されている。すなわち、通常、ユーザが触れる印刷物1の表面には印刷が行われていないため、印刷落ちを防止することができる。また、本形態の印刷物1では、基材2の裏面2aに、印刷表示部3となる「JAPAN」の文字の外形を形成する縁部4aを有する第1インク部4と、印刷表示部の縁取りをなす第2インク部とがスクリーン印刷で印刷されている。また、第2インク部5は、透明度の高いインクで形成され、かつ、第1インク部4よりも厚く形成されている。そのため、本形態の印刷物1では、基材2の裏面2aに厚く印刷された第2インク部5の深みによって、印刷表示部3となる「JAPAN」の文字が基材2の表面側に押し出されているかのように見える。すなわち、基材2の裏面2aに印刷をした場合であっても、印刷表示部3(すなわち、「JAPAN」の文字)の立体感の表現が可能となる。その結果、本形態の印刷物1では、優れた意匠的効果を得ることができる。
本形態では、第2インク部5を形成するインクは、紫外線硬化型のUVインクである。そのため、印刷表示部3の縁取りをなす第2インク部5をより厚く印刷することができる。その結果、印刷表示部3となる「JAPAN」の文字をより立体的に表現することができる。
本形態では、第2インク部5を覆う第3インク部6は、鏡面インクで形成されている。そのため、印刷表示部3の縁取りをなす第2インク部5を強調することができ、その結果、印刷表示部3となる「JAPAN」の文字をより立体的に表現することができる。
(他の実施の形態)
上述した各形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。たとえば、上述した形態では、第2インク部5は紫外線硬化型のUVインクで形成されているが、第2インク部5を形成するインクはUVインクには限定されない。すなわち、第2インク部5を形成するインクは、印刷表示部3の立体感ある表現が可能となるように、第1インク部4の縁部4aに接するように、厚く印刷できるインクであればUVインク以外のインクであっても良い。
上述した各形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。たとえば、上述した形態では、第2インク部5は紫外線硬化型のUVインクで形成されているが、第2インク部5を形成するインクはUVインクには限定されない。すなわち、第2インク部5を形成するインクは、印刷表示部3の立体感ある表現が可能となるように、第1インク部4の縁部4aに接するように、厚く印刷できるインクであればUVインク以外のインクであっても良い。
また、上述した形態では、第3インク部6は鏡面インクで形成されているが、第3インク部6を形成するインクは鏡面インクには限定されない。すなわち、第3インク部6を形成するインクは、第2インク部5が強調されるように、第1インク部4に使用されるインクの色と差異のある色のインクであれば、鏡面インク以外のインクであっても良い。また、第3インク部6は必ずしも印刷されなくても良い。この場合であっても、印刷物1が設置されたときの背景が、第1インク部4に使用されるインクの色と差異のある色であれば、印刷表示部3の立体感ある表現が可能となる。
さらに、上述した形態では、第2インク部5の基材2の裏面2aからの厚さt2が30μmとなっているが、第2インク部5の厚さt2は、20μmから40μmの範囲(すなわち、30μm±10μm)となっていれば良い。第2インク部5の厚さt2が20μm以上であると、第2インク部5による印刷表示部3の立体感のある表現が可能となる。一方、第2インク部5の厚さt2が40μm以下であると、スクリーン印刷で、第2インク部5を形成することが可能となる。そのため、第2インク部5の厚さt2が、20μmから40μmの範囲であると、第2インク部5による印刷表示部3の適切な立体的表現が可能となる。
さらにまた、上述した形態では、第2印刷工程で使用するスクリーン13の乳剤厚t5は40μmとなっているが、第2印刷工程で使用するスクリーン13の乳剤厚t5は、35μmから45μmの範囲(すなわち、40μm±5μm)となっていれば良い。第2印刷工程で使用するスクリーン13の乳剤厚t5が35μm以上であると、第2インク部5の厚さt2を十分に確保することが可能となり、そのため、印刷表示部3の立体的表現が可能となる。一方、第2印刷工程で使用するスクリーン13の乳剤厚t5が45μm以下であると、スクリーン印刷で、第2インク部5を適切な厚さに形成することができる。そのため、第2印刷工程で使用するスクリーン13の乳剤厚t5が35μmから45μmの範囲であると、適切な厚さt2の第2インク部5が形成され、第2インク部5による印刷表示部3の適切な立体的表現が可能となる。
また、上述した形態では、第2インク部5の幅(図2における横幅)w1は0.15mmとなっているが、第2インク部5の幅w1は、0.15mmから0.2mmの範囲となっていれば良い。第2インク部5の幅w1が狭すぎる場合や広すぎる場合には、第2インク部5を強調することが難しくなり、第2インク部5による印刷表示部3の立体的な表現が困難となる。すなわち、第2インク部5の幅w1が0.15mm以上0.2mm以下であれば、第2インク部5を強調することが可能となり、第2インク部5による印刷表示部3の適切な立体的表現が可能となる。
さらに、上述した形態では、第2インク部5の幅w2は0.3mmとなっているが、第2インク部5の幅w2は0.3mmには限定されない。ただし、第2インク部5の幅w2が狭すぎると、第2インク部5の幅w1を0.15mmから0.2mmの範囲とすることが困難となるため、第2インク部5の幅w2は、第2インク部5の幅w1を0.15mmから0.2mmの範囲とすることができる程度に広く形成されていることが好ましい。
さらにまた、上述した形態では、第2印刷工程で用いる第2のスクリーン13のメッシュ粗さは330メッシュであるが、第2のスクリーン13のメッシュ粗さは、120メッシュから350メッシュの範囲となっていれば良い。第2のスクリーン13のメッシュ粗さが粗過ぎるとより多くのインクが第2のスクリーン13から刷り下ろされるため、第2インク部5の厚さを確保できるが、第2インク部5の縁部5aが粗くなるため、印刷表示部3となる「JAPAN」の文字が歪んで見える。一方、メッシュ粗さが細か過ぎると第2インク部5の縁部5aが細かくなるため、印刷表示部3が歪んで見えるのを防止できるが、第2インク部5の厚さの確保が困難となり、印刷表示部3の立体的な表現が難しくなる。したがって、メッシュ粗さを120メッシュから350メッシュの範囲とすることで、第2インク部5を適切な厚さで形成しつつ、印刷表示部3が歪んで見えるのを防止できる。
1 印刷物
2 基材
2a 裏面
3 印刷表示部
4 第1インク部
4a 縁部
5 第2インク部
6 第3インク部
10 スクリーン印刷製版
13 スクリーン
17 乳剤部
t2 第2インク部の厚さ
t5 乳剤厚
w1 第2インク部の幅
2 基材
2a 裏面
3 印刷表示部
4 第1インク部
4a 縁部
5 第2インク部
6 第3インク部
10 スクリーン印刷製版
13 スクリーン
17 乳剤部
t2 第2インク部の厚さ
t5 乳剤厚
w1 第2インク部の幅
Claims (8)
- 透明な基材と、該基材の裏面にスクリーン印刷で印刷されて形成された所定形状の印刷表示部とを備える印刷物であって、
上記基材の上記裏面に、上記印刷表示部の外形を形成する縁部を有する第1インク部と、上記縁部に接するとともに上記印刷表示部の縁取りをなす上記第2インク部とがスクリーン印刷で印刷され、
上記第2インク部は、光が通過可能なインクで形成され、かつ、上記第1インク部よりも厚く形成されていることを特徴とする印刷物。 - 前記第2インク部を形成するインクは、紫外線硬化型のインクであることを特徴とする請求項1記載の印刷物。
- 前記第2インク部を覆う第3インク部がスクリーン印刷で印刷され、上記第3インク部を形成するインクは、鏡面インクであることを特徴とする請求項1または2記載の印刷物。
- 前記第2インク部の前記基材の前記裏面からの厚さは30μm±10μmであることを特徴とする請求項1から3いずれかに記載の印刷物。
- 前記基材の厚さ方向に直交する方向における前記第1インク部の前記縁部からの前記第2インク部の幅は、0.15mmから0.2mmであることを特徴とする請求項1から4いずれかに記載の印刷物。
- 請求項1から5いずれかに記載の印刷物の製造方法であって、前記第2インク部の印刷工程で使用するスクリーン印刷製版のスクリーンの乳剤部の厚さは、40μm±5μmであることを特徴とする印刷物の製造方法。
- 請求項1から5いずれかに記載の印刷物の製造方法であって、前記第2インク部の印刷工程で使用するスクリーン印刷製版のスクリーンのメッシュ粗さが120メッシュから350メッシュであることを特徴とする印刷物の製造方法。
- スクリーン印刷にて所定形状の印刷表示部を基材に形成する印刷物の製造方法であって、
上記基材の裏面に、上記印刷表示部の外形を形成する縁部を有する第1インク部をスクリーン印刷で印刷する第1印刷工程と、上記縁部に接するとともに上記印刷表示部の縁取りをなし、かつ、光が通過可能なインクで形成された上記第2インク部を上記第1インク部よりも厚くスクリーン印刷にて印刷する第2印刷工程とを備えることを特徴とする印刷物の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2005226138A JP2007038551A (ja) | 2005-08-04 | 2005-08-04 | 印刷物および印刷物の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2007038551A true JP2007038551A (ja) | 2007-02-15 |
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Country | Link |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010064356A (ja) * | 2008-09-10 | 2010-03-25 | Tokyo Tokushu Insatsu Kogyo Kk | 立体感を有する印刷シート |
JP2016055461A (ja) * | 2014-09-05 | 2016-04-21 | 凸版印刷株式会社 | 立体印刷物 |
Citations (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JPH0526697A (ja) * | 1991-05-14 | 1993-02-02 | Nippondenso Co Ltd | 表示盤 |
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-
2005
- 2005-08-04 JP JP2005226138A patent/JP2007038551A/ja active Pending
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