上記の構成によると、作業走行時に急旋回状態を現出しても、ローリング制御手段が、その急旋回によって発生する大きい遠心力の影響による大きい外乱値を含んだ傾斜センサの検出値に基づいてアクチュエータの作動を制御すること防止でき、これによって、対地作業装置の対地姿勢が不適切になって作業の均平性が低下することを回避できる。
しかしながら、車輪の沈下などに起因して旋回作業時に走行機体が大きく左右傾斜すると、それに伴って対地作業装置も大きく左右傾斜することになり、対地作業装置の対地姿勢が不適切になって作業の均平性が低下することになる。
本発明の目的は、旋回作業時においても、走行機体の左右傾斜にかかわらず、ローリング制御手段の制御作動によって対地作業装置を適切な対地姿勢に維持できるようにして、旋回作業時における均平性の向上を図れるようにすることにある。
上記の課題を解決するための手段として、本発明では、走行機体に対地作業装置をローリング可能に連結し、前記走行機体に対して前記対地作業装置をローリング駆動するアクチュエータと、前記走行機体又は前記対地作業装置の左右傾斜角度を検出する傾斜センサと、この傾斜センサの検出値に基づいて、前記対地作業装置の左右傾斜角度が設定角度に維持されるように前記アクチュエータの作動を制御するローリング制御手段とを備えた作業機のローリング制御装置において、前記走行機体を、その旋回走行時には各車輪の旋回中心が固定車軸の延長線上の一点に収束されるように構成するとともに、前記走行機体の走行速度を検出する車速センサと、操向輪の切れ角を検出する切角センサとを備え、前記走行機体の軸間距離と車輪間隔、及び、前記切角センサの検出値に基づいて、前記旋回走行時の旋回径を算出し、この旋回径と前記車速センサの検出値とに基づいて、前記旋回走行時に発生する遠心力を算出し、この遠心力と予め備えられた前記傾斜センサの対遠心力特性とに基づいて、前記旋回走行時における前記傾斜センサの検出値に含有する前記遠心力に起因した外乱値を算出し、その外乱値を前記旋回走行時における前記傾斜センサの検出値から減算する演算処理によって、前記旋回走行時に前記傾斜センサが検出した検出値を適正なものにする適正化手段を備えてある。
この構成では、走行機体を、その旋回走行時には各車輪の旋回中心が固定車軸の延長線上の一点に収束されるようにする、という所謂アッカーマン・ジャントー方式に基づいて構成することで、走行機体の軸間距離Wと車輪間隔H、及び、切角センサの検出値θsによって、旋回走行時の旋回径r=W(軸間距離)÷tanθs(切れ角)+H(車輪間隔)÷2という関係式を導き出すことができ、これによって、旋回走行時の旋回径rを簡単に算出できる。
又、遠心力Fは、F(遠心力)=v(車速)×v(車速)÷r(旋回径)であり、この関係式と、上記のように算出した旋回径r及び車速センサの検出値vとから遠心力Fを簡単に算出でき、この算出した遠心力と傾斜センサの対遠心力特性とから、その旋回走行時において傾斜センサの検出値に含まれる遠心力に起因した外乱値を算定し、その外乱値を傾斜センサの検出値から減算することで、旋回走行時に傾斜センサが検出した検出値の適正化を図れることになり、その適正化が図られた走行機体又は対地作業装置の左右傾斜角度に基づいて、ローリング制御手段がアクチュエータの作動を制御することになって、結果、旋回走行時でありながらも、その旋回走行時に発生する遠心力の影響を抑制した精度の高い制御(ローリング制御)を行える。
従って、対地作業装置を接地させた状態で旋回走行する旋回作業時には、傾斜センサが受けるそのときの遠心力の影響を考慮した精度の高いローリング制御を行えるようになり、これによって、旋回作業時に走行機体が左右傾斜する場合であっても、その左右傾斜にかかわらず、対地作業装置を適切な対地姿勢に維持することができ、結果、旋回作業時における均平性の向上を図れることになる。
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、試験旋回走行時の実測遠心力と算出遠心力との比を、前記適正化手段の前記演算処理における補正係数として備えてある。
この構成によると、走行時に発生する車輪のスリップに起因した車速センサの検出値に対する実速度の低下を考慮したより正確な遠心力を算出することができ、又、この算出した遠心力と傾斜センサの対遠心力特性とから、より正確な外乱値を算定でき、その外乱値を傾斜センサの検出値から減算することで、より適正な走行機体又は対地作業装置の左右傾斜角度を得られることになる。
そして、このより適切な走行機体又は対地作業装置の左右傾斜角度に基づいてローリング制御手段がアクチュエータの作動を制御することになり、結果、旋回走行時に発生する遠心力の影響をより的確に抑制したより精度の高いローリング制御を行える。
従って、旋回作業時には、そのときの遠心力や車輪のスリップを考慮したより精度の高いローリング制御を行えるようになり、これによって、旋回作業時に走行機体が左右傾斜する場合であっても、その左右傾斜にかかわらず対地作業装置をより適切な対地姿勢に維持することができ、結果、旋回作業時における均平性の向上を更に図れることになる。
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、前記走行機体の走行状態を切り換える走行制御手段を備え、その走行制御手段が現出する各走行状態のそれぞれに対応させた前記適正化手段の前記演算処理における補正係数を備えるとともに、前記走行制御手段が現出する走行状態の判別を可能にする判別情報に基づいて、前記走行制御手段が現出する走行状態に応じた補正係数を選定するように構成してある。
走行制御手段が現出する走行状態としては、例えば、左右の後輪のみを駆動する2輪駆動状態、左右の前輪をその周速度が後輪の周速度と等しくなるように駆動する4輪駆動状態、前輪をその周速度が後輪の周速度よりも速くなるように駆動する前輪増速状態、この前輪増速状態で旋回内側の後輪を制動する制動前輪増速状態などがあり、これらの走行状態は、例えば、切角センサで検出される操向輪の切れ角が同じであっても、4輪駆動状態では、前輪の周速度と後輪の周速度とが等しいことから2輪駆動状態に比較して旋回径が大きくなり、前輪増速状態では、前輪の周速度が後輪の周速度よりも速くなることから2輪駆動状態に比較して旋回径が小さくなり、制動前輪増速状態では、その前輪増速状態で旋回内側の後輪を制動することから旋回径が更に小さくなる。
つまり、操向輪の切れ角などが同じであっても、旋回走行時に現出される走行状態によって、旋回径に差が生じるとともに旋回走行時に発生する遠心力が変化し、傾斜センサの検出値に含まれる遠心力に起因した外乱値も変動する。
そこで、上記の手段を講じて、走行制御手段が現出する走行状態を考慮した補正係数の選定を行えるようにしているのであり、これによって、走行制御手段が現出する走行状態を考慮したより正確な遠心力の算出を行え、この算出した遠心力と傾斜センサの対遠心力特性とから、より正確な外乱値を算定でき、その外乱値を傾斜センサの検出値から減算することで、より適正な走行機体又は対地作業装置の左右傾斜角度を得られることになる。
そして、このより適切な走行機体又は対地作業装置の左右傾斜角度に基づいてローリング制御手段がアクチュエータの作動を制御することになり、結果、旋回走行時に発生する遠心力の影響をより的確に抑制したより精度の高いローリング制御を行える。
従って、旋回作業時には、そのときに現出される走行状態に応じて変化する遠心力を考慮したより精度の高いローリング制御を行えるようになり、これによって、旋回作業時に走行機体が左右傾斜する場合であっても、その左右傾斜にかかわらず対地作業装置をより適切な対地姿勢に維持することができ、結果、旋回作業時における均平性の向上を更に図れることになる。
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、前記切角センサの検出値に基づいて前記走行機体が180度旋回状態であるか否かを判別し、前記走行機体が180度旋回状態であると判別した場合に、その180度旋回時に前記傾斜センサが検出した値を平滑化処理し、その平滑化処理後の値とその180度旋回時に前記適正化手段が算出した前記外乱値との比を算出し、その比の所定180度旋回回数分を平滑化処理して得た値を、前記適正化手段の前記演算処理における補正係数とするように構成してある。
ところで、旋回走行時の旋回径は、作業地における走行路面の硬さなどの諸条件の影響を受けるものであり、作業地を変えることで走行路面の硬さなどが大きく変わると、旋回径の変化とともに発生する遠心力も変化する。
そのため、作業地が変わることで作業地の諸条件が変化する場合には、その変化する諸条件のうち、旋回走行時に発生する遠心力を算出する上において影響のあるものを考慮して、遠心力を算出することが望ましい。
そこで、圃場での代掻き作業や競技場での芝刈り作業などを行う場合には、その作業地において作業機を折り返し往復走行させることが一般的であり、又、作業機を往路から復路に方向転換させる折り返し時には、作業機を180度旋回させることになり、更に、代掻き作業が行われる圃場や芝刈り作業が行われる競技場などは基本的に水平であることに着目して、上記の手段を講じるようにしているのであり、この手段では、作業地での180度旋回時に傾斜センサが検出した複数の走行機体又は対地作業装置の左右傾斜角度を平滑化処理することで、走行機体又は対地作業装置の左右傾斜角度を相殺した、そのときの180度旋回時に発生した実遠心力による外乱値とし、この外乱値と、この180度旋回の際に適正化手段が算出した外乱値との比を、作業地の諸条件を考慮するための補正係数とし、更に、所定回数の180度旋回で得た各補正係数を平滑化処理して信頼性を高めたものを、その後に行われる前記適正化手段の前記演算処理における補正係数とするのである。
これによって、作業地の諸条件を考慮したより正確な遠心力の算出を行え、この遠心力と傾斜センサの対遠心力特性とから、より正確な外乱値を算定でき、その外乱値を傾斜センサの検出値から減算することで、より適正な走行機体又は対地作業装置の左右傾斜角度を得られることになる。
そして、このより適切な走行機体又は対地作業装置の左右傾斜角度に基づいてローリング制御手段がアクチュエータの作動を制御することになり、結果、旋回走行時に発生する遠心力の影響をより的確に抑制したより精度の高いローリング制御を行える。
従って、旋回作業時には、作業する作業地の諸条件に応じて変化する遠心力を考慮したより精度の高いローリング制御を行えるようになり、これによって、旋回作業時に走行機体が左右傾斜する場合であっても、その左右傾斜にかかわらず対地作業装置をより適切な対地姿勢に維持することができ、結果、旋回作業時における均平性の向上を更に図れることになる。
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、予め設定した前記遠心力に対する比較値と前記適正化手段が算出した前記遠心力とを比較し、前記遠心力が前記比較値を超えた場合には、前記ローリング制御手段が、前記走行機体に対して前記対地作業装置が平行になるように前記アクチュエータの作動を制御する、又は、前記アクチュエータの作動制御を停止するように構成してある。
ところで、より正確で予想率の高い遠心力を算出できたとしても、遠心力が極端に大きい場合には、十分に外乱値を除去することができず、対地作業装置の対地姿勢が不適切になって作業の均平性が低下することになる。
そこで、上記の手段を講じることで、遠心力が極端に大きく外乱値を十分に除去することができない場合には、外乱値の含有率の高い適正化手段の出力に基づいてローリング制御手段がアクチュエータの作動を制御すること阻止するのである。
従って、遠心力が極端に大きく働く旋回状態であっても一定の性能を確保することができる。
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、前記走行機体又は前記対地作業装置の左右傾斜方向での角速度を検出する角速度センサを備え、前記ローリング制御手段が、前記傾斜センサと前記角速度センサのそれぞれの検出値に基づいて前記アクチュエータの作動を制御するように構成してある。
この構成によると、慣性の影響を受けず応答性に優れる角速度センサと、検出時点での絶対傾斜角度を検出できない角速度センサの欠点を補う傾斜センサとを使用することから、応答性が良く精度の高いローリング制御を行える。
従って、対地作業装置を、より確実かつ応答性良く、適切な対地姿勢に維持することができ、結果、旋回作業時における均平性の向上を更に図れることになる。
図1には作業機の全体側面が、又、図2にはその後部が示されており、この作業機は、走行機体であるトラクタ1の後部に、トップリンク2と左右一対のロアーリンク3からなる3点リンク機構4を介して、対地作業装置の一例であるロータリ耕耘装置5を連結して構成されている。
図1〜3に示すように、トラクタ1は、その前部にエンジン6を搭載するとともに左右一対の前輪7を操向輪として備え、その中央部に、左右の前輪7にステアリング操作系を介して連係されるステアリングホイール8、車速などの情報を表示するメータパネル9、及び運転座席10などを備えて搭乗運転部11が形成され、その後部に、左右一対の後輪12や左右一対のリフトアーム13、及び、それら左右のリフトアーム13を上下方向に揺動駆動する油圧式で単動型のリフトシリンダ14などを備えて構成され、又、左側のリフトアーム13が、リフトロッド15を介して左側のロアーリンク3に連結され、右側のリフトアーム13が、アクチュエータの一例である油圧式で複動型のローリングシリンダ16を介して右側のロアーリンク3に連結されている。つまり、リフトシリンダ14の作動でロータリ耕耘装置5を昇降駆動し、ローリングシリンダ16の作動でロータリ耕耘装置5をローリング駆動するようになっている。
図1、図4及び図5に示すように、エンジン6からの動力は、クラッチハウジング17に内蔵した主クラッチ18を介して、ミッションケース19に内蔵した変速装置20に伝達され、その変速装置20から左右の前輪7への伝動は、前輪用変速装置21や前輪用差動装置22などを備える前輪伝動系を介して行われ、変速装置20から左右の後輪12への伝動は、後輪用差動装置23などを備える後輪伝動系を介して行われ、変速装置20からロータリ耕耘装置5への伝動は図外の作業伝動系を介して行われるように構成されている。
前輪用変速装置21は、変速装置20による変速後の動力を、油圧式の多板クラッチからなる標準クラッチ24やギヤ式の標準伝動機構25などを介して左右の前輪7に伝動することで、前輪7の周速度と後輪12の周速度とが等しくなるように駆動する標準4輪駆動状態と、油圧式の多板クラッチからなる増速クラッチ26やギヤ式の増速伝動機構27などを介して左右の前輪7に伝動することで、前輪7の周速度が後輪12の周速度よりも速くなるように例えば約2倍の速度で駆動する前輪増速状態と、左右の前輪7に伝動しない2輪駆動状態とに切り換え可能に構成されている。
ミッションケース19には、油圧式で多板型の左右一対のサイドブレーキ28が装備され、左右のサイドブレーキ28は、左右の対応する後車軸29を介して、油圧に比例した制動力を対応する後輪12に作用させるように構成されている。
図3に示すように、このトラクタ1は、アッカーマン・ジャントー方式に基づいて、その旋回走行時には、旋回内側の前輪7の切れ角θsaが旋回外側の前輪7の切れ角θsbよりも大きくなって、各車輪7,12の旋回中心が固定車軸である後車軸29の延長線上の一点に収束されるように構成してあり、これによって、その軸間距離Wと車輪間隔Hと前輪7の切れ角θsとから、旋回走行時の旋回径r=W(軸間距離)÷tanθs(前輪7の切れ角)+H(車輪間隔)÷2という関係式を導き出すことができる。つまり、前輪7の切れ角θsを検出すれば、旋回走行時の旋回径rを算出することができるのである。
図4〜7に示すように、このトラクタ1には、マイクロコンピュータからなる第1制御装置30が装備されており、この第1制御装置30には、搭乗運転部11の右下部に配備された左右の対応するブレーキペダル31の踏み込み操作量を検出する一対のブレーキセンサ32、変速装置20から後輪用差動装置23にわたる伝動軸33に備えたギヤ34の回転数を車速vとして検出する電磁ピックアップ式の回転センサからなる車速センサ35、ステアリング操作系の操作量を前輪7の切れ角θsとして検出する回転式のポテンショメータからなる切角センサ36、及び、トラクタ1の走行モードを選択する走行選択スイッチ37などのそれぞれ出力に基づいて、左右の対応するサイドブレーキ28に対する作動油の流動状態を切り換える一対の制動用制御弁38、並びに、標準クラッチ24及び増速クラッチ26に対する作動油の流動状態を切り換えるクラッチ用制御弁39などの作動を制御する走行制御手段40が備えられている。
このトラクタ1において走行選択スイッチ37により選択される走行モードとしては、2輪駆動モード、4輪駆動モード、自動前輪増速モード、及び、自動制動前輪増速モードがある。
走行制御手段40は、走行選択スイッチ37によって2輪駆動モードが選択されると、メータパネル9に備えた2WDランプ41を点灯させるとともに、車速センサ35及び切角センサ36の出力にかかわらず、標準クラッチ24及び増速クラッチ26が非伝動状態に維持されるようにクラッチ用制御弁39の作動を制御して、左右の後輪12のみを駆動する2輪駆動状態を現出する。
走行選択スイッチ37によって4輪駆動モードが選択されると、メータパネル9に備えた4WDランプ42を点灯させるとともに、車速センサ35及び切角センサ36の出力にかかわらず、標準クラッチ24が伝動状態に、かつ、増速クラッチ26が非伝動状態に維持されるようにクラッチ用制御弁39の作動を制御して、左右の前輪7と左右の後輪12とをそれらの周速度が等しくなるように駆動する4輪駆動状態を現出する。
走行選択スイッチ37によって自動前輪増速モードが選択されると、先ず、メータパネル9に備えた増速ランプ43を点灯させるとともに、切角センサ36の出力に基づいて前輪7の切れ角θsを判別し、その切れ角θsが設定角度θso(例えば35度)未満である場合には、車速センサ35の出力にかかわらず前述した4輪駆動状態を現出し、その切れ角θsが設定角度θso以上である場合には、車速センサ35の出力に基づいて車速vを判別し、その車速vが第1設定速度(例えば0.2km/h)未満、又は、第2設定速度(例えば5km/h)以上であると前述した4輪駆動状態を現出し、その車速vが第1設定速度以上で、かつ、第2設定速度未満であると、標準クラッチ24が非伝動状態に、かつ、増速クラッチ26が伝動状態に切り換わるようにクラッチ用制御弁39の作動を制御して、左右の前輪7と左右の後輪12とを前輪7の周速度が後輪12の周速度よりも速くなるように駆動する前輪増速状態を現出する。
走行選択スイッチ37によって自動制動前輪増速モードが選択されると、先ず、メータパネル9に備えたADランプ44を点灯させるとともに、切角センサ36の出力に基づいて前輪7の切れ角θsを判別し、その切れ角θsが設定角度θso(例えば35度)未満である場合には、車速センサ35の出力にかかわらず前述した4輪駆動状態を現出し、その切れ角θsが設定角度θso以上である場合には、車速センサ35の出力に基づいて車速vを判別し、その車速vが第1設定速度(例えば0.2km/h)未満、又は、第2設定速度(例えば5km/h)以上であると前述した4輪駆動状態を現出し、その車速vが第3設定速度(例えば3.6km/h)以上で、かつ、第2設定速度未満であると前述した前輪増速状態を現出し、その車速vが第1設定速度以上で、かつ、第3設定速度未満であると、前述した前輪増速状態を現出するとともに、旋回内側の後輪12に対するサイドブレーキ28が制動状態となるように対応する制動用制御弁38の作動を制御して、左右の前輪7と左右の後輪12とを前輪7の周速度が後輪12の周速度よりも速くなるように駆動しながら旋回内側の後輪12を制動する制動前輪増速状態を現出する。
つまり、自動前輪増速モードでは、前輪7を増速させて旋回径を小さくする前輪増速状態の自動現出を可能とし、又、自動制動前輪増速モードでは、前輪7を増速させて旋回径を小さくする前輪増速状態と、前輪7を増速させるとともに旋回内側の後輪12を制動して旋回径を更に小さくする制動前輪増速状態との自動現出を可能にして、枕地での旋回操作性及び旋回性能の向上を図れるようにしながら、自動前輪増速モードと自動制動前輪増速モードのいずれにおいても、第1設定速度未満の低速走行状態において操縦者の意志に反した小旋回状態が現出されることや、第2設定速度以上の高速走行状態において操縦者の意志に反した急激な小旋回状態が現出されることを防止している。
尚、走行制御手段40は、左右のブレーキペダル31のいずれか一方、又は、双方が踏み込み操作された場合には、走行選択スイッチ37により選択された走行モードにかかわらず、各ブレーキセンサ32の出力に基づいて対応する制動用制御弁38の作動を制御して、左右のブレーキペダル31の踏み込み操作量に応じた左右のサイドブレーキ28の制動状態を現出する。
図1、図2、図5及び図6に示すように、このトラクタ1には、マイクロコンピュータからなる第2制御装置45が装備されており、第2制御装置45には、昇降制御モードを選択する昇降選択スイッチ46、昇降レバー47の揺動操作量に基づいてロータリ耕耘装置5の目標対地高さを設定する回転式のポテンショメータからなる高さ設定器48、ロータリ耕耘装置5の目標耕深を設定する回転式のポテンショメータからなる耕深設定器49、リフトアーム13の上下揺動角度を検出する回転式のポテンショメータからなるリフトアームセンサ50、及び、ロータリ耕耘装置5による耕耘跡を鎮圧整地する後カバー51の上下揺動角度を検出する回転式のポテンショメータからなる耕深センサ52などのそれぞれ出力に基づいて、リフトシリンダ14に対する作動油の流動状態を切り換える昇降用制御弁53の作動を制御する昇降制御手段54が備えられている。
昇降制御手段54は、昇降選択スイッチ46の出力が「オフ」であると、高さ設定器48とリフトアームセンサ50の出力に基づいて、リフトアームセンサ50の出力が高さ設定器48の出力と一致する(不感帯幅内に収まる)ように、昇降用制御弁53の作動を制御してリフトシリンダ14を作動させることで、ロータリ耕耘装置5を、高さ設定器48による設定高さまで昇降させるとともに、その高さ位置に維持するポジション制御を実行する。
昇降選択スイッチ46の出力が「オン」であると、耕深設定器49と耕深センサ52の出力に基づいて、耕深センサ52の出力が耕深設定器49の出力と一致する(不感帯幅内に収まる)状態が維持されるように、昇降用制御弁53の作動を制御してリフトシリンダ14を作動させることで、ロータリ耕耘装置5を、その実耕深が目標耕深に維持される状態に自動昇降させる自動耕深制御を実行する。
そして、この自動耕深制御の実行中において、高さ設定器48の出力から昇降レバー47の上限位置への揺動操作を認識すると、ポジション制御を優先してロータリ耕耘装置5を上昇させる。その後、高さ設定器48の出力から昇降レバー47の下限位置への揺動操作を認識すると、自動耕深制御を再開させて、ロータリ耕耘装置5をその実耕深が目標耕深に維持される状態に自動昇降させる。つまり、自動耕深制御の実行中において、畦際で方向転換する枕地旋回走行などを行う際に、自動耕深制御を一時停止してロータリ耕耘装置5を地面から離間させる場合には、昇降レバー47を上限位置まで揺動操作することによって、又、その枕地旋回走行などを行った後に、再びロータリ耕耘装置5を接地させて自動耕深制御を再開させる場合には、昇降レバー47を上限位置まで揺動操作することによって、それらの状態を簡単に切り換え現出することができる。
又、この自動耕深制御の実行中において、搭乗運転部11に装備したオートアップスイッチ55の出力が「オン」であると、切角センサ36の出力に基づいて前輪7の切れ角θsを判別し、その切れ角θsが設定角度θso以上になると、自動耕深制御を一時停止するとともに、ロータリ耕耘装置5が予め設定された所定の上限位置まで上昇するように昇降用制御弁53の作動を制御し、その後、その切れ角θsが設定角度θso未満になると、自動耕深制御を再開させて、ロータリ耕耘装置5をその実耕深が目標耕深に維持される状態に自動昇降させる。つまり、オートアップスイッチ55の出力を「オン」にすることで、前輪7を設定角度θso以上に操向する枕地旋回走行などを行う際には、その開始とともにロータリ耕耘装置5を自動的に地面から離間させ、又、その終了とともにロータリ耕耘装置5を自動的に接地させることができる。
図1、図2、図5及び図6〜10に示すように、第2制御装置45には、ロータリ耕耘装置5の水平面に対する左右方向の目標傾斜角度θroを設定する回転式のポテンショメータからなる傾斜角設定器56、トラクタ1の左右傾斜角度θtを検出する重錘式の傾斜センサ57、トラクタ1の左右傾斜方向の角速度dθt/dtを検出する振動ジャイロ型の角速度センサ58、及び、ローリングシリンダ16の作動長さLを検出する摺動式のポテンショメータからなるストロークセンサ59の各出力に基づいて、ローリングシリンダ16に対する作動油の流動状態を切り換えるローリング用制御弁60の作動を制御し、ローリングシリンダ16を作動させることで、ロータリ耕耘装置5を、その水平面に対する左右方向の傾斜角度θrが目標傾斜角度θroに維持されるようにローリング駆動するローリング制御手段61が備えられている。
つまり、傾斜角設定器56を操作することで、ロータリ耕耘装置5の左右方向の設定角度を任意に変更することができる。
図8に示すように、ローリング制御手段61は、傾斜センサ57と角速度センサ58の出力に基づいてトラクタ1の左右傾斜角度θtを算出する左右傾斜角演算手段62、トラクタ1がこの左右傾斜角度θtにある時にロータリ耕耘装置5を傾斜角設定器56により設定された目標設定角度θroにするために必要なローリングシリンダ16の目標シリンダ長さLoを算出するシリンダ長さ演算手段63、及び、この目標シリンダ長さLoとストロークセンサ59が出力するローリングシリンダ16の長さLとを比較し、目標シリンダ長さLoにローリングシリンダ16の長さLが近づくようにローリング制御弁60の作動を制御するフィードバック制御を行うシリンダ作動制御手段64を備える。
左右傾斜角演算手段62によるトラクタ1の左右傾斜角度θtの算出は、基本的に、その演算処理部において、角速度センサ58の出力dθtj/dtを積分し、その誤差を傾斜センサ57の出力θtrで補正することで行われる。
つまり、慣性の影響を受けず応答性に優れる角速度センサ58と、検出時点での絶対傾斜角度を検出できない角速度センサ58の欠点を補う傾斜センサ57とを使用することで、応答性が良く精度の高いローリング制御を行えるようにしている。
ところで、傾斜センサ57は、トラクタ1の左右傾斜に伴う錘のトラクタ1に対する振れ角度をトラクタ1の左右傾斜角度θtrとして電気的に検出する重錘式のものであることから、遠心力Fが働く場合には、その遠心力Fの影響による外乱値θgを含んだ値をトラクタ1の左右傾斜角度θtrとして出力することになる。
そこで、図9及び図10に示すように、左右傾斜角演算手段62には、その外乱値θgを算出して傾斜センサ57の出力θtrから減算する演算処理を行うことによって、旋回走行時に傾斜センサ57が検出したトラクタ1の左右傾斜角度θtrを適正なものにする適正化手段65を備えてある。この適正化手段65は、先ず、このトラクタ1の設計指標であるアッカーマン・ジャントー方式と、第1制御装置30から送信される切角センサ36の出力値θsとに基づいて、その旋回走行時の旋回径rを、r(旋回径)=W(軸間距離)÷tanθs(前輪7の切れ角)+H(車輪間隔)÷2から算出し、その算出で得られた旋回径rと、第1制御装置30から送信される車速センサ35の出力値vとに基づいて、その旋回走行時における遠心力Fを、F(遠心力)=v(車速)×v(車速)÷r(旋回径)から算出する。
この算出で得られる遠心力Fには、実走行時に発生する車輪7,12のスリップなどに起因した誤差が含まれる。そこで、適正化手段65には、圃場での試験走行で実測した実遠心力と、このときに算出した算出遠心力との比を、その誤差を消去するための補正係数K1として予め備えるとともに、その補正係数K1を、実走行時に算出した遠心力Fに乗算する補正を行って、適正化手段65により算出されるトラクタ1の左右傾斜角度θtrの適正化を図る第1補正手段66を備えてある。
又、このトラクタ1においては、前述したように、旋回走行時に現出する走行状態として、2輪駆動状態、4輪駆動状態、前輪増速状態、及び、制動前輪増速状態があり、これらの走行状態は、車速センサ35で検出される車速v及び切角センサ36で検出される前輪7の切れ角θsが同じであっても旋回径rが異なることになる。例えば、左右の後輪12のみを駆動する2輪駆動状態を基準とした場合、左右の前輪7をその周速度が後輪12の周速度と等しくなるように駆動する4輪駆動状態では旋回径rが大きくなり、前輪7をその周速度が後輪12の周速度よりも速くなるように駆動する前輪増速状態は旋回径rが小さくなり、この前輪増速状態で旋回内側の後輪12を制動する制動前輪増速状態では旋回径rが更に小さくなる。つまり、上記の算出で得られる遠心力Fには、現出する走行状態の違いに基づく誤差が含まれる。
そこで、適正化手段65には、走行状態に応じて理論的に推定した値、又は、圃場での試験走行で実測した各走行状態での実遠心力と、このときに各走行状態に対応して算出した算出遠心力との比を、その誤差を消去するための補正係数K2a〜K2dとして予め備えるとともに、第1制御装置30から送信される走行選択スイッチ37で選択された走行モード、車速センサ35の出力値v、及び、切角センサ36の出力値θsに基づいて現出中の走行状態を判別し、その走行状態に応じた補正係数K2a〜K2dを、実走行時に算出した遠心力Fに乗算する補正を行って、適正化手段65において算出されるトラクタ1の左右傾斜角度θtrの適正化を更に図る第2補正手段67を備えてある。
尚、各走行状態における旋回径rの関係が前述した通りであることから、各走行状態の補正係数K2a〜K2dの関係は、K2b(4輪駆動状態の補正係数)<K2a(2輪駆動状態の補正係数)<K2c(前輪増速状態の補正係数)<K2d(制動前輪増速状態の補正係数)となり、例えば、2輪駆動状態の補正係数K2aを「1」とした場合、4輪駆動状態の補正係数K2bを「0.7」、前輪増速状態の補正係数K2cを「1.5」、制動前輪増速状態の補正係数K2d=「1.8」とすることが考えられる。
そして、以上の補正によって得られた予想率の高い遠心力Foと、傾斜センサ57の対遠心力特性とから外乱値θgを算出する外乱値演算手段68を備えてあり、この外乱値演算手段68から出力された外乱値θgを傾斜センサ57の出力θtrから減算したものを、適正なトラクタ1の左右傾斜角度θtroとして適正化手段65が出力することになる。
しかし、いくら予想率の高い遠心力Foを算出できたとしても、その遠心力Foが極端に大きい場合には、十分に外乱値θgを消去することはできない。
そこで、図8、図10及び図11に示すように、ローリング制御手段61には、外乱値演算手段68によって算出された外乱値θg(遠心力Foに対応)と、予め設定した限界外乱値θgm(遠心力の限界値Fmに対応)とを比較し、外乱値θgが限界外乱値θgmを超える場合には、ロータリ耕耘装置5をトラクタ1に対する平行姿勢にするための目標シリンダ長さLoをシリンダ作動制御手段64に出力し、かつ、その目標シリンダ長さLoに基づくローリング用制御弁60の作動制御を優先して行い、かつ、ストロークセンサ59からの出力でロータリ耕耘装置5がトラクタ1に対する平行姿勢に至ったことを確認するのに伴って、ローリング用制御弁60の作動制御を一時的に停止するように、シリンダ作動制御手段64の制御作動を規制する比較制御規制手段69を備えてあり、これによって、遠心力Foが極端に大きく外乱値θgを十分に消去することができない場合には、ロータリ耕耘装置5をトラクタ1に対する平行姿勢に維持することで、外乱値θgの含有率の高い適正化手段65からの出力θtroと、角速度センサ58の出力dθtj/dtとに基づいて、シリンダ作動制御手段64がローリング用制御弁60の作動を制御し、ローリングシリンダ16が作動して、ロータリ耕耘装置5の左右傾斜姿勢が不適切になることを防止するのであり、これによって、遠心力Foが極端に大きく働く旋回状態であっても一定の性能を確保することができる。
そして、その規制後に外乱値θgが再び限界外乱値θm以下になると、比較制御規制手段69は、シリンダ作動制御手段64に対する制御作動の規制を解除し、傾斜センサ57と角速度センサ58のそれぞれの出力に基づく精度の高いローリング制御を再開することになる。
ところで、このように旋回走行時に発生する遠心力Foに対応する外乱値θgに基づいて、傾斜センサ57と角速度センサ58のそれぞれの出力に基づくローリング制御を行うか否かを判別すると、この判別によって得られる傾斜センサ57の使用可能領域A1には、例えば、単に操向輪7の切れ角に基づいて判別する場合に得られる傾斜センサ57の使用可能領域A2と比較すると、図11に示すように、操向輪7の切れ角が大きい場合であっても低速走行であれば傾斜センサ57の使用が可能になる領域A1aや、操向輪7の切れ角θsが小さい場合であっても高速走行であれば傾斜センサ57の使用を避けることが望ましい領域A2aが存在することを認識できる。
つまり、旋回走行時に発生する遠心力Foに対応する外乱値θgに基づいて、傾斜センサ57と角速度センサ58のそれぞれの出力に基づくローリング制御を行うか否かを判別することで、代掻き作業などにおいて作業状態を継続しながらトラクタ1を180度旋回させる場合であっても、低速走行であれば、傾斜センサ57と角速度センサ58とを使用した応答性が良く精度の高いローリング制御を行うことができ、又、高速走行でありながらも前輪7の切れ角θsが小さいことによって、外乱値θgの含有率の高い傾斜センサ57の出力に基づく精度の低いローリング制御が行われることを回避できる。
尚、限界外乱値θmは、搭乗運転部11に装備した回転式のポテンショメータからなる図外の設定器によって調節可能である。
ちなみに、外乱値θgが限界外乱値θgmを超える場合には、比較制御規制手段69が、その段階からシリンダ作動制御手段64のローリング用制御弁60に対する制御作動を一時的に停止させて、ロータリ耕耘装置5を、その時点でのトラクタ1に対する傾斜姿勢に維持することで、ロータリ耕耘装置5の左右傾斜姿勢が不適切になるのを防止し、遠心力Foが極端に大きく働く旋回状態であっても一定の性能を確保するようにしてもよい。
ところで、各走行状態における旋回径rは、圃場における土壌の硬さなどの諸条件の影響を受けるものであり、例えば、作業対象の圃場を変えることで土壌の硬さなどが大きく変わる場合には、旋回走行時の旋回径rが変化するとともにそのときに発生する遠心力Fも変化する。
そのため、作業対象の圃場が変わることで圃場の諸条件が変化する場合には、その変化する諸条件のうち、旋回走行時に発生する遠心力Fを算出する上において影響のあるものを考慮して、遠心力Fを算出することが望ましい。
そこで、旋回走行時もロータリ耕耘装置5を接地させて作業を継続する代掻き作業などを行う場合には、その圃場においてトラクタ1を折り返し往復走行させることが一般的であり、又、トラクタ1を往路から復路に方向転換させる折り返し時には、トラクタ1を180度旋回させることになり、更に、代掻き作業が行われる圃場などは基本的に水平であることに着目して、以下の学習処理を行う学習手段70を備えてある(図10参照)。
学習手段70は、先ず、作業の開始に伴って、第1制御装置30から送信される切角センサ36の検出値θsに基づいてトラクタ1が180度旋回状態であるか否かを判別する判別処理を行い、トラクタ1が180度旋回状態であると判別した場合に、その180度旋回時に傾斜センサ57が検出した値θtrを、検出値θtr=(新検出値θtrn×α+旧検出値θtro×β)÷(α+β)とする適正ローパスフィルタ処理を行い、その処理によって180度旋回後に得た値θtraと、その180度旋回時に適正化手段65が算出した外乱値θgとの比K3を算出し、次の180度旋回によって新たな比K3nを得るごとに、その比K3=(新たな比K3n×α+古い比K3o×β)÷(α+β)とする適正ローパスフィルタ処理を行い、所定回数(例えば5回)の180度旋回で得た値を、その旋回走行で行われる適正化手段65の演算処理における補正係数K3として備え、圃場ごとの補正係数の適合化を図るようにする。
つまり、圃場での180度旋回時に傾斜センサ57が検出した複数のトラクタ1の左右傾斜角度を適正ローパスフィルタ処理することで、トラクタ1の左右傾斜角度を相殺した、そのときの180度旋回時に発生した実遠心力Fによる外乱値θgsとし、この外乱値θgsと、この180度旋回の際に適正化手段65が算出した外乱値θgとの比K3を、圃場の諸条件を考慮するための補正係数K3とし、更に、その補正係数K3を180度旋回ごとに新たに得るたびに適正ローパスフィルタ処理して信頼性を高めたものを、その後に行われる適正化手段65の演算処理における補正係数K3とするのである。
これによって、作業を開始してから所定時間後には、適正化手段65の演算処理において圃場の諸条件を考慮したより正確な遠心力Foの算出を行え、この遠心力Foと傾斜センサ57の対遠心力特性とから、より正確な外乱値θgを算定でき、その外乱値θgを傾斜センサ57の検出値θtrから減算することで、傾斜センサ57の検出値θtrに基づく、より適正なトラクタ1の左右傾斜角度θtroを得られることになる。
そして、旋回走行時には、この傾斜センサ57の検出によるより適切なトラクタ1の左右傾斜角度θtroと角速度センサ58の出力dθtj/dtとの演算によって得たトラクタ1の左右傾斜角度θtに基づいて、シリンダ作動制御手段64が、ローリング用制御弁60の作動を制御してローリングシリンダ16を作動させることになり、結果、旋回走行時に発生する遠心力Fの影響をより的確に抑制したより精度の高いローリング制御を行えることになり、旋回作業時における均平性の向上を効果的に図れることになる。
尚、補正係数K3を得た後も上述した学習処理を継続して補正係数K3を更新するようにしてもよく、又、補正係数K3を得た後は上述した学習処理を停止して、その補正係数K3を定数として記憶するようにしてもよい。更に、補正係数K3を揮発性メモリに記憶して電源オフとともに消去して初期設定に戻るようにしてもよく、又、補正係数K3を不揮発性メモリに記憶して、次の作業時には、その開始段階から、補正係数K3を備えた適正化手段65の演算処理を行えるようにしてもよい。一方、上記の学習処理における平滑化処理として移動平均処理や単純な平均処理などを採用してもよい。
〔別実施例〕
以下、本発明の別実施例を列記する。
〔1〕作業機としては、トラクタ1の後部にモーアを連結して構成された芝刈機などであってもよい。
〔2〕図12に示すように、ローリング制御装置としては、角速度センサ58を備えずに、傾斜センサ57の出力θtrのみに基づいて、ローリング制御手段61がローリング制御を行うように構成してもよい。この構成においては、ローリング制御手段61は、遠心力Fに起因した外乱値θgを算出して傾斜センサ57の出力θtrから減算する演算処理を行うことにより、旋回走行時に傾斜センサ57が検出したトラクタ1の左右傾斜角度θtrを適正なものにする適正化手段65、トラクタ1がこの適正化された左右傾斜角度θtroにある時にロータリ耕耘装置5を傾斜角設定器56により設定された目標設定角度θroにするために必要なローリングシリンダ16の目標シリンダ長さLoを算出するシリンダ長さ演算手段63、及び、この目標シリンダ長さLoとストロークセンサ59が出力するローリングシリンダ16の長さLとを比較し、目標シリンダ長さLoにローリングシリンダ16の長さLが近づくようにローリング制御弁60の作動を制御するフィードバック制御を行うシリンダ作動制御手段64、などを備えることになる。
〔3〕切角センサ36の検出値θsに基づいて、前輪7の切れ角θsが設定値(例えば35度)以上になった場合に、傾斜センサ57の出力θtrのみに基づいて、ローリング制御手段61がローリング制御を行うように構成してもよい。
〔4〕切角センサ36の検出値θsに基づいて、前輪7の切れ角θsが設定値(例えば35度)以上になった場合に、適正化手段65が、傾斜センサ57が検出したトラクタ1の左右傾斜角度θtrの適正化を行うように構成してもよい。
〔5〕図13に示すように、一つの制御装置30に、走行制御手段40、昇降制御手段54、及びローリング制御手段61を備えるようにしてもよい。
〔6〕走行制御手段40が制動用制御弁38の作動を制御する際の作動情報と、クラッチ用制御弁39の作動を制御する際の作動情報とに基づいて、ローリング制御手段61が現出中の走行状態を判別するように構成してもよい。