JP2005216893A - 光照射装置、結晶化装置、結晶化方法、デバイス、および光学変調素子 - Google Patents

光照射装置、結晶化装置、結晶化方法、デバイス、および光学変調素子 Download PDF

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幸夫 谷口
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Abstract

【課題】 逆ピークの両側に発生するピーク形状を抑えた所望の逆ピーク状の光強度分布を所定面に形成することのできる結晶化装置。
【解決手段】 段差により逆ピーク状の光強度分布を形成する光学変調素子(1)と、光学変調素子を介した光束に基づいて逆ピーク状の光強度分布に対応する所定の光強度分布を所定面(4)に形成するための結像光学系(3)とを備えている。光学変調素子は、逆ピーク状の光強度分布において逆ピークの両側に発生するピーク形状を抑えるために、段差の近傍に設けられた光遮蔽領域または位相変調領域を有する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、光照射装置、結晶化装置、結晶化方法、デバイス、および光学変調素子に関する。特に、本発明は、所定の光強度分布を有するレーザ光を多結晶半導体膜または非晶質半導体膜に照射して結晶化半導体膜を生成する結晶化装置および結晶化方法に関するものである。
従来、たとえば液晶表示装置(Liquid-Crystal-Display:LCD)の表示画素を選択するスイッチング素子などに用いられる薄膜トランジスタ(Thin-Film-Transistor:TFT)は、非晶質シリコン(amorphous-Silicon)層や多結晶シリコン(poly-Silicon)層に形成されている。
多結晶シリコン層は、非晶質シリコン層よりも電子または正孔の移動度が高い。したがって、多結晶シリコン層にトランジスタを形成した場合、非晶質シリコン層に形成する場合よりも、スイッチング速度が速くなり、ひいてはディスプレイの応答が速くなる。また、周辺LSIを薄膜トランジスタで構成することが可能になる。さらに、他の部品の設計マージンを減らせるなどの利点がある。また、ドライバ回路やDACなどの周辺回路は、ディスプレイに組み入れる場合に、それらの周辺回路をより高速に動作させることができる。
多結晶シリコンは結晶粒の集合からなるため、例えばTFTトランジスタを形成した場合チャネル領域に結晶粒界が形成され、この結晶粒界が障壁となり単結晶シリコンに比べると電子または正孔の移動度を低くする。また、多結晶シリコンに形成された多数の薄膜トランジスタは、チャネル部に形成される結晶粒界数が各薄膜トランジスタ間で異なり、これがバラツキとなって問題となる。そこで、最近、電子または正孔の移動度を向上させ且つチャネル部における結晶粒界数のバラツキを少なくするために、少なくとも1個のチャネル領域を形成できる大きさの大粒径の結晶化シリコンを生成する結晶化方法が提案されている。
従来、この種の結晶化方法として、多結晶半導体膜または非晶質半導体膜と平行に近接させた位相シフターにエキシマレーザ光を照射して結晶化半導体膜を生成する「位相制御ELA(Excimer Laser Annealing)法」が知られている。位相制御ELA法の詳細は、たとえば非特許文献1に記載されている。
表面科学Vol.21, No.5, pp.278-287, 2000
位相制御ELA法では、位相シフターの位相シフト部に対応する点において光強度が周辺よりも低い逆ピークパターン(中心において光強度が最も低く周囲に向かって光強度が急激に増大するパターン)の光強度分布を発生させ、この逆ピーク状の光強度分布を有する光を非単結晶半導体膜多結晶半導体膜または非晶質半導体膜に照射する。その結果、被照射領域内において光強度分布に応じて溶融領域に温度勾配が生じ、光強度が最も低い点に対応して最初に凝固する部分もしくは溶融しない部分に結晶核が形成され、その結晶核から周囲に向かって結晶が横方向に成長(以降、「ラテラル成長」もしくは「ラテラル方向成長」とよぶ)することにより大粒径の単結晶粒が生成される。
従来、さらに、非特許文献2に記載された大粒径の結晶化方法がある。非特許文献2では、たとえばV字型の光強度勾配分布を形成するパターンを有する素子、および逆ピーク状の光強度最小分布を形成するパターンを有する素子を、ともにSiO2の基板に段差を設けることにより実現している。そして、互いに重ね合わせた2枚の素子に被処理基板を近接させた状態でエキシマレーザ光を照射することにより、被処理基板上に結晶化半導体膜を生成している。
また、非特許文献3に記載された大粒径の結晶化方法がある。非特許文献3では、たとえばV字型の光強度勾配分布を形成するパターンを有する素子を光吸収材料SiONxの厚み分布により実現し、逆ピーク状の光強度最小分布を形成するパターンを有する素子をSiO2の段差により実現している。これら2つの素子は、1枚の基板に積層形成されている。そして、この1枚の素子基板に被処理基板を近接させた状態でエキシマレーザ光を照射することにより、被処理基板上に結晶化半導体膜を生成している。
M. NAKATA and M. MATSUMURA, "Two-Dimensionally Position-Controlled Ultra-Large Grain Growth Based on Phase-Modulated Excimer-Laser Annealing Method", Electrochemical Society Proceeding Volume 2000-31, page 148-154 井上,中田,松村,「シリコン薄膜の振幅・位相制御エキシマレーザ溶融再結晶化法−新しい2−D位置制御大結晶粒形成法−」,電子情報通信学会論文誌,社団法人電子情報通信学会,2002年8月,第J85−C巻,第8号,p.624−629
従来技術の課題を、図23、24を参照して説明する。
位相シフター191と被処理基板との間に結像光学系を配置して、位相シフター191の像を被処理基板の所定面に結像させる結晶化装置において、図23に示めされているように、位相シフター191の段差192による位相量が180度のとき、結像光学系のフォーカス位置(結像面)に形成される逆ピーク状の光強度分布193は左右対称である。また、結像光学系のフォーカス位置から上下に微小移動したデフォーカス位置においては、図23(a)および(c)に示すように、形成される逆ピーク状の光強度分布は左右対称で、逆ピーク状の光強度193が僅かに上昇する。しかしながら、逆ピークの両側のピーク部194には、図23(a)〜(c)図中破線の楕円で示すように、光強度分布が上に凸状のピーク形状195が発生する。
一方、図24(b)に示すように、段差192による位相量が60度の位相シフター191を用いたとき、結像光学系のフォーカス位置に形成される逆ピーク状の光強度分布193は、ほぼ左右対称である。これに対し、図24(a)および(c)に示すように、結像光学系のフォーカス位置から上下に微小移動したデフォーカス位置では、形成される逆ピーク状の光強度分布の左右対称性は大きく崩れる。この場合も、逆ピークの両側または片側には、図中破線の楕円194で示すように、ピーク形状195が発生する。なお、図23および図24は、光の波長が248nmで、結像光学系の像側開口数が0.13で、結像光学系のσ値(コヒーレンスファクター)が0.5の場合に得られる光強度分布を示している。
逆ピーク状の光強度分布193において逆ピークの両側または片側にピーク形状195があると、そのピーク形状195部分だけ光強度が大きくなるため、この被照射面にアブレーションが発生して半導体膜が破壊されるという不都合があった。また、逆ピーク状の光強度分布193を被処理基板に照射して結晶化半導体膜を生成する場合、逆ピーク部分から開始した結晶成長がピーク形状195の下り勾配部分で停止してしまうため、大粒径の結晶を生成するために支障となっていた。
さらに、段差192の位相量が60度の位相シフター191を用いる場合、一般的には段差192の位相量が180度と実質的に異なる位相シフター191を用いる場合、被処理基板の表面が結像光学系に対してデフォーカスすると、逆ピークの一方側のピーク形状195の持ち上りが顕著になるとともに、他方側のピーク形状195が抑えられて目立たなくなる。なお、被処理基板には、デフォーカスの原因となる板厚偏差が不可避的に存在する。その結果、デフォーカスにより左右非対称になった逆ピーク状の光強度分布に基づいて、生成される結晶粒も左右非対称になるという不都合があった。
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたものであり、ピーク形状被照射面でのアブレーションの発生を抑制し、ピーク形状被照射面での結晶化の横方向成長を停止させることのない光照射装置、結晶化装置および結晶化方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、本発明の第1形態では、段差により逆ピーク状の光強度分布を形成する光学変調素子と、
前記光学変調素子を介した光束に基づいて前記逆ピーク状の光強度分布に対応する所定の光強度分布を所定面に形成するための結像光学系とを備え、
前記光学変調素子は、前記逆ピーク状の光強度分布において逆ピークの両側に発生するピーク形状を抑えるために、前記段差の近傍に設けられた光遮蔽領域を有することを特徴とする光照射装置を提供する。
第1形態では、段差の近傍に設けられた光遮蔽領域を有する光学変調素子を用いることにより、逆ピークの両側に発生するピーク形状を抑えた所望の逆ピーク状の光強度分布を所定面に形成することができる。その結果、たとえば所定面に設定された多結晶半導体膜または非晶質半導体膜に上記逆ピーク状の光強度分布を有する光を照射して結晶化半導体膜を生成する結晶化装置および結晶化方法に本発明の光照射装置を適用した場合、ピーク形状に起因するアブレーションの発生により半導体膜が破壊されることがなくなり、かつ逆ピーク部分から開始した結晶成長がピーク形状部分で停止することなく大粒径の結晶を生成することができる。
第1形態の好ましい態様によれば、前記光学変調素子は、位相値の異なる2つの領域が接する段差線を有する。この場合、前記光遮蔽領域は、前記段差線にほぼ平行に延びる線状光遮蔽領域を有する。この場合、前記線状光遮蔽領域の中心線と前記段差線との距離に対応する前記所定面上の距離Dは、光の波長をλとし、前記結像光学系の像側開口数をNAとするとき、0.4×λ/NA<D<0.7×λ/NAの条件を満足することが好ましい。ここで、「前記所定面上の距離D」とは、光学変調素子上の距離に結像光学系の倍率をかけた換算値であることを意味する。以下も同様である。
また、第1形態の好ましい態様によれば、前記光遮蔽領域は、前記段差線にほぼ平行に並ぶ複数の孤立光遮蔽領域を有する。この場合、前記複数の孤立光遮蔽領域の中心を結ぶ中心線と前記段差線との距離に対応する前記所定面上の距離Dは、光の波長をλとし、前記結像光学系の像側開口数をNAとするとき、0.4×λ/NA<D<0.7×λ/NAの条件を満足することが好ましい。また、第1形態では、前記光学変調素子は、3つ以上の位相値領域が接する段差点を有することも可能である。
本発明の第2形態では、段差により逆ピーク状の光強度分布を形成する光学変調素子と、
前記光学変調素子を介した光束に基づいて前記逆ピーク状の光強度分布に対応する所定の光強度分布を所定面に形成するための結像光学系とを備え、
前記光学変調素子は、前記逆ピーク状の光強度分布において逆ピークの両側に発生するピーク形状を抑えるために、前記段差の近傍に設けられた位相変調領域を有することを特徴とする光照射装置を提供する。
第2形態では、段差の近傍に設けられた位相変調領域を有する光学変調素子を用いることにより、逆ピークの両側に発生するピーク形状を抑えた所望の逆ピーク状の光強度分布を所定面に形成することができる。その結果、たとえば所定面に設定された多結晶半導体膜または非晶質半導体膜に上記逆ピーク状の光強度分布を有する光を照射して結晶化半導体膜を生成する結晶化装置および結晶化方法に本発明の光照射装置を適用した場合、ピーク形状に起因するアブレーションの発生により半導体膜が破壊されることがなくなり、かつ逆ピーク部分から開始した結晶成長がピーク形状部分で停止することなく大粒径の結晶を生成することができる。
第2形態の好ましい態様によれば、前記光学変調素子は、位相値の異なる2つの領域が接する段差線を有する。この場合、前記位相変調領域は、前記段差線にほぼ平行に延びる線状位相変調領域を有することが好ましい。この場合、前記線状位相変調領域の中心線と前記段差線との距離に対応する前記所定面上の距離Dは、光の波長をλとし、前記結像光学系の像側開口数をNAとするとき、0.4×λ/NA<D<0.7×λ/NAの条件を満足することが好ましい。
また、第2形態の好ましい態様によれば、前記位相変調領域は、前記段差線にほぼ平行に並ぶ複数の孤立位相変調領域を有する。この場合、前記複数の孤立位相変調領域の中心を結ぶ中心線と前記段差線との距離に対応する前記所定面上の距離Dは、光の波長をλとし、前記結像光学系の像側開口数をNAとするとき、0.4×λ/NA<D<0.7×λ/NAの条件を満足することが好ましい。
また、第2形態の好ましい態様によれば、前記段差線の位相変調量および前記位相変調領域の位相変調量がともに約180度である。あるいは、前記段差線の位相変調量が180度とは実質的に異なる値であり、前記段差線の一方の側に設けられた位相変調領域の位相変調量と前記段差線の他方の側に設けられた位相変調領域の位相変調量とは絶対値がほぼ等しく且つ符号が異なることが好ましい。また、第2形態では、前記光学変調素子は、3つ以上の位相値領域が接する段差点を有することも可能である。
本発明の第3形態では、第1形態または第2形態の光照射装置を備え、前記所定面に設定された多結晶半導体膜または非晶質半導体膜に前記所定の光強度分布を有する光を照射して結晶化半導体膜を生成することを特徴とする結晶化装置を提供する。
本発明の第4形態では、第1形態または第2形態の光照射装置を用いて、前記所定面に設定された多結晶半導体膜または非晶質半導体膜に前記所定の光強度分布を有する光を照射して結晶化半導体膜を生成することを特徴とする結晶化方法を提供する。
本発明の第5形態では、第3形態の結晶化装置または第4形態の結晶化方法を用いて製造されたことを特徴とするデバイスを提供する。
本発明の第6形態では、段差により逆ピーク状の光強度分布を形成する光学変調素子において、
前記逆ピーク状の光強度分布において逆ピークの両側に発生するピーク形状を抑えるために、前記段差の近傍に設けられた光遮蔽領域を有することを特徴とする光学変調素子を提供する。
第6形態の好ましい態様によれば、前記段差として、位相値の異なる2つの領域が接する段差線を有する。この場合、前記光遮蔽領域は、前記段差線にほぼ平行に延びる線状光遮蔽領域を有することが好ましい。あるいは、前記光遮蔽領域は、前記段差線にほぼ平行に並ぶ複数の孤立光遮蔽領域を有することが好ましい。また、第6形態では、前記段差として、3つ以上の位相値領域が接する段差点を有することも可能である。
本発明の第7形態では、段差により逆ピーク状の光強度分布を形成する光学変調素子において、
前記逆ピーク状の光強度分布において逆ピークの両側に発生するピーク形状を抑えるために、前記段差の近傍に設けられた位相変調領域を有することを特徴とする光学変調素子を提供する。
第7形態の好ましい態様によれば、前記段差として、位相値の異なる2つの領域が接する段差線を有する。この場合、前記位相変調領域は、前記段差線にほぼ平行に延びる線状位相変調領域を有することが好ましい。あるいは、前記位相変調領域は、前記段差線にほぼ平行に並ぶ複数の孤立位相変調領域を有することが好ましい。
また、第7形態の好ましい態様によれば、前記段差線の位相変調量および前記位相変調領域の位相変調量がともに約180度である。あるいは、前記段差線の位相変調量が180度とは実質的に異なる値であり、前記段差線の一方の側に設けられた位相変調領域の位相変調量と前記段差線の他方の側に設けられた位相変調領域の位相変調量とは絶対値がほぼ等しく且つ符号が異なることが好ましい。また、第7形態では、前記光学変調素子は、3つ以上の位相値領域が接する段差点を有することも可能である。この明細書において逆ピークの光強度とは、凹状光強度分布部である。ピークの光強度とは、凸状光強度分布部である。段差とは、光学変調素子において、位相変調量の異なる領域の境界のことを表す。例えば位相変調を凹凸形状で実現する場合は、物理的な段差となる。
本発明によれば、アブレーションの発生を抑制し、アブレーションにより半導体膜が破壊されるのを防止することができる。本発明の結晶化装置および結晶化方法では、段差の近傍に設けられた光遮蔽領域または位相変調領域を有する光学変調素子を用いることにより、逆ピークの両側に発生するピーク形状を抑えた所望の逆ピーク状の光強度分布を多結晶半導体膜または非晶質半導体膜上に形成することができる。その結果、ピーク形状に起因するアブレーションの発生により半導体膜が破壊されることがなくなる。
また、逆ピーク部分から開始した結晶成長がピーク形状部分で停止することなく、大粒径の結晶を生成することができる。さらに、段差が180度と実質的に異なる光学変調素子を用いる場合には、結像光学系に対してデフォーカスしたときに多結晶半導体膜または非晶質半導体膜上に形成される逆ピーク状の光強度分布の左右対称性の崩れが大きく改善されるので、ほぼ左右対称な結晶粒を生成することができる。
本発明の実施形態を、添付図面に基づいて説明する。この実施形態は、逆ピークの両側に発生するピーク形状を抑えた所望の逆ピーク状の光強度分布を被結晶化処理面の所定面に形成することにより、ピーク形状被照射面でのアブレーションの発生を抑制し、ピーク形状被照射面での結晶化の横方向成長を停止させないようにした光照射装置、結晶化装置および結晶化方法である。次に、結晶化装置の実施形態を、図面を参照して具体的に説明する。図1は、本発明の実施形態にかかる結晶化装置の構成を概略的に示す図である。また、図2は、図1の照明系の内部構成を概略的に示す図である。本実施形態の結晶化装置は、透明体に形成された段差により入射光から逆ピーク状の光強度分布を形成する光学変調素子1と、照明系2と、結像光学系3と、被処理基板4と、基板ステージ5とを備えている。光学変調素子1の詳細な構成および作用については後述する。
照明系2は、光源2a、ビームエキスパンダ2b、第1フライアイレンズ2c、第1コンデンサー光学系2d、第2フライアイレンズ2e、第2コンデンサー光学系2fとが順次配置された光学系からなる。光源2aは、たとえば図2に示す光学系で248nmの波長のレーザ光を出射するKrFエキシマレーザ光源2aを備えている。なお、光源2aとしては、被結晶化材料の融点以上の光エネルギを出射する性能を有する光源であれば何れでもよく、例えば、XeClエキシマレーザ光源やYAGレーザ光源のような他の適当な光源を用いることもできる。光源2aから供給されたレーザ光は、ビームエキスパンダ2bを介して拡大された後、第1フライアイレンズ2cに入射する。
こうして、第1フライアイレンズ2cの後側焦点面には複数の光源が形成され、これらの複数の光源からの光束は第1コンデンサー光学系2dを介して、第2フライアイレンズ2eの入射面を重畳的に照明する。その結果、第2フライアイレンズ2eの後側焦点面には、第1フライアイレンズ2cの後側焦点面よりも多くの複数の光源が形成される。第2フライアイレンズ2eの後側焦点面に形成された複数の光源からの光束は、第2コンデンサー光学系2fを介して、光学変調素子1を重畳的に照明する。
ここで、第1フライアイレンズ2cおよび第1コンデンサー光学系2dは、第1ホモジナイザを構成し、この第1ホモジナイザにより光源2aから供給されたレーザ光について光学変調素子1上での入射角度に関する均一化が図られる。また、第2フライアイレンズ2eおよび第2コンデンサー光学系2fは第2ホモジナイザを構成し、この第2ホモジナイザにより第1ホモジナイザからの入射角度が均一化されたレーザ光について光学変調素子1上での面内各位置での光強度に関する均一化が図られる。こうして、照明系2は、ほぼ均一な光強度分布を有するレーザ光により光学変調素子1を照射する。
光学変調素子1で位相変調されたレーザ光は、結像光学系3を介して、被処理基板4に入射される。ここで、結像光学系3は、光学変調素子1のパターン面と被処理基板4とを光学的に共役に配置している。換言すれば、被処理基板4は、光学変調素子1のパターン面と光学的に共役な面(結像光学系3の像面)に設定されている。結像光学系3は、正レンズ群3aと正レンズ群3bとの間に開口絞り3cを備えている。
開口絞り3cは、開口部(光透過部)の大きさの異なる複数の開口絞りを有し、これらの複数の開口絞り3cは光路に対して交換可能に構成されていてもよい。あるいは、開口絞り3cは、開口部の大きさを連続的に変化させることのできる虹彩絞りを有していてもよい。いずれにしても、開口絞り3cの開口部の大きさ(ひいては結像光学系3の像側開口数NA)は、後述するように、被処理基板4の半導体膜上において所要の光強度分布を発生させるように設定されている。なお、結像光学系3は、屈折型の光学系であってもよいし、反射型の光学系であってもよいし、屈折反射型の光学系であってもよい。
また、被処理基板4は、たとえば液晶ディスプレイ用板ガラス基板の上に化学気相成長法(CVD)により下地膜および非晶質シリコン膜が順次形成されたものである。下地絶縁膜は、絶縁膜例えばSiO2であり、非晶質シリコン膜とガラス基板が直接接触してNaなどの異物が非晶質シリコン膜に混入するのを防止し、非晶質シリコン膜の溶融温度が直接ガラス基板に伝熱されるのを防止する。非晶質シリコン膜は、例えば結晶化される本導体膜であり、非単結晶膜で、非晶質半導体膜や多結晶半導体などである。非単結晶膜は、非単結晶の半導体膜や金属などでもよい。非晶質シリコン膜上には、キャップ膜として絶縁膜例えばSiO2膜が成膜される。キャップ膜は、非晶質シリコン膜に入射する光ビームの一部により加熱され、この加熱された温度を蓄熱する。この蓄熱効果は、光ビームの入射が遮断されたとき、非晶質シリコン膜の被照射面において高温部が相対的に急速に降温するが、この降温勾配を緩和させ、大粒径の横方向の結晶成長を促進させる。被処理基板4は、真空チャックや静電チャックなどにより基板ステージ5上において予め定められた所定の位置に位置決めされて保持される。
前述したように、光学変調素子1は、例えば差線が所定のピッチで形成されたライン型の位相シフターを用いると、被処理基板4の表面上に形成される逆ピーク状の光強度分布において逆ピークの両側には光強度分布が上に凸状のピーク形状が発生する。まず、逆ピークの両側にピーク形状が発生する原理を説明する。一般に、結像光学系3による結像の複素振幅分布U(x,y)は、比例係数を省略すると、次の式(1)で表わされる。
U(x,y)=O(x,y)*PSF(x,y) (1)
なお、式(1)において、O(x,y)は物体の複素振幅透過率分布を、*はコンボリューション(畳み込み積分)を、PSF(x,y)は結像光学系3の点像分布関数をそれぞれ示している。ここで、点像分布関数とは、結像光学系3による点像の複素振幅分布と定義される。結像光学系3が均一円形瞳を有し且つ無収差である場合、点像分布関数PSF(x,y)は、次の式(2)で表わされる。
PSF(x,y)=2J1(a・r)/(a・r) (2)
ただし、a=(2π・NA)/λ
r=(x2+y21/2
なお、式(2)において、J1はベッセル(Bessel)関数を、λは光の波長を、NAは上述したように結像光学系3の像側開口数をそれぞれ示している。上式(2)による点像分布関数PSFを図3に示す。図3において、縦軸は点像分布関数PSFの値であり、横軸は(a・r)の値である。図3を参照すると、点像分布関数PSFの値が負である領域すなわち「負領域」が存在し、この負領域の存在がピーク形状の発生の原因である。
ここで、原点に最も近い負領域の位置範囲は、次の式(3)で表わされる。また、a=(2π・NA)/λを式(3)に代入すると、次の式(4)に示す関係が得られる。
3.8<a・r<7.0 (3)
0.61×λ/NA<r<1.11×λ/NA (4)
次に、段差が180度の位相シフターの場合を例にとって、さらに具体的にピーク形状の発生を説明する。図4(a)は、段差が180度の位相シフターの複素振幅透過率分布O(x)を示している。図4(a)中の左側領域すなわち位相値が180度の領域40および右側領域すなわち位相値が0度の領域41のうち、右側領域41に着目して点像分布関数PSF(x)とのコンボリューションの様子を複数の細線42で、その結果として得られる像の複素振幅分布U(x)を太線43aで図4(b)に示す。太線43aで示す複素振幅分布U(x)は段差の位置44に関して点対称になり、右側には凸部45が左側には凹部46が生じる。
なお、位相値が0度の領域41に対応する像の複素振幅分布U(x)の正確な形状を図5に示す。図4(a)中の左側領域すなわち位相値が180度の領域40に関しても同様の現象が生じる。こうして、図4(c)に示すように、位相値が0度の領域41に対応する太線43aで示す複素振幅分布U(x)と位相値が180度の領域40に対応する太線43bで示す複素振幅分布U(x)とを重ね合わせて得られる太線43で示す最終的な複素振幅分布U(x)にも、右側の凸部47と左側の凹部48とが強調されて残る。その結果、図4(d)に示すように、位相シフターの段差により形成される逆ピーク状の光強度分布49には、図4(c)に示す凸部47および凹部48に対応して、逆ピークの両側にピーク形状(図中破線の円で示す)49aが発生する。
図6は、図4に対応する図であって、本発明によりピーク形状を抑える第1の手法を説明する図である。図6(a)を参照すると、第1の手法では、図4(c)における凸部47および凹部48に対応する位置に光遮蔽領域60および61をそれぞれ設けている。(換言すれば、光遮蔽領域60および61は、図4(d)におけるピーク形状(図中破線の円で示す)49aに対応する位置にそれぞれ設けられる。したがって、図6(a)に示すように、光遮蔽領域60および61における複素振幅透過率分布O(x)の値は0になる。
その結果、図6(b)に示すように、点像分布関数PSF(x)とのコンボリューションのうち、光遮蔽領域60に対応して太い破線62で示す部分が欠けることになり、その結果として得られる像の複素振幅分布U(x)は太線63aで示すようになる。太線43aで示す複素振幅分布U(x)と太線63aで示す複素振幅分布U(x)とを比較すると、光遮蔽領域60の作用により太線43aで示す複素振幅分布U(x)における凸部45が凹部64aに変化する。凹部46はわずかに変化し凹部65aとなるが基本的に凹部46と凹部65aは同一とみなしてよい。このとき、凹部64aの面積が凹部65aの面積(=凹部46の面積)とほぼ等しいことが望ましい。
その場合、図6(c)に示すように、光遮蔽領域60が形成された位相値0度の領域に対応する太線63aで示す複素振幅分布U(x)と光遮蔽領域61が形成された位相値180度の領域に対応する太線63bで示す複素振幅分布U(x)とを重ね合わせて得られる太線63で示す最終的な複素振幅分布U(x)では、図中破線の楕円で示すように凹部64aと凹部65aの反転に対応する凸部65bとが相殺され、凹部65aと凹部64aの反転に対応する凸部64bとが相殺されて、太線43で示す複素振幅分布U(x)において見られた凸部47および凹部48が消えてこの部分で比較的平らな分布を得ることができる。その結果、第1の手法では、図6(d)に示すように、位相シフターの段差により形成される逆ピーク状の光強度分布66には、逆ピークの両側にピーク形状が実質的に発生しない。
図7は、図4に対応する図であって、本発明によりピーク形状を抑える第2の手法を説明する図である。図7(a)を参照すると、第2の手法では、図4(c)における凸部47および凹部48に対応する位置に位相変調領域70および71をそれぞれ設けている。ここで、位相変調領域70および71における位相変調量は180度に設定されている。したがって、図7(a)に示すように、位相変調領域70における複素振幅透過率分布O(x)の値は位相値180度の領域と同じにあり、位相変調領域71における複素振幅透過率分布O(x)の値は位相値0度の領域と同じになる。
その結果、図7(b)に示すように、点像分布関数PSF(x)とのコンボリューションのうち、位相変調領域70に対応して太い破線72で示す部分が反転することになり、その結果として得られる像の複素振幅分布U(x)は太線73aで示すようになる。太線43aで示す複素振幅分布U(x)と太線73aで示す複素振幅分布U(x)とを比較すると、位相変調領域70の作用により太線43aで示す複素振幅分布U(x)における凸部45が凹部74aに変化する。凹部46はわずかに変化し凹部75aとなるが基本的に凹部46と凹部75aは同一とみなしてよい。このとき、凹部74aの面積が凹部75aの面積(=凹部46の面積)とほぼ等しいことが望ましい。
その場合、図7(c)に示すように、位相変調領域70が形成された位相値0度の領域に対応する太線73aで示す複素振幅分布U(x)と位相変調領域71が形成された位相値180度の領域に対応する太線73bで示す複素振幅分布U(x)とを重ね合わせて得られる太線73で示す最終的な複素振幅分布U(x)では、図中破線の楕円で示すように凹部74aと凹部75aの反転に対応する凸部75bとが相殺され、凹部75aと凹部74aの反転に対応する凸部74bとが相殺されて、太線43で示す複素振幅分布U(x)において見られた凸部47および凹部48が消えてこの部分で比較的平らな分布を得ることができる。その結果、第2の手法においても第1の手法と同様に、図7(d)に示すように、位相シフターの段差により形成される逆ピーク状の光強度分布76には、逆ピークの両側にピーク形状が実質的に発生しない。
次に、光遮蔽領域(60,61)や位相変調領域(70,71)の位置および大きさについて説明する。上述したように、図4(b)において、像の複素振幅分布U(x)の凸部45および凹部46の位置は、上記コンボリューションの式(1)で段差よりも右側の領域41のみを積分することにより求まる。その結果を正確に示した図5を参照すると、凸部45は段差から0.4λ/NA〜0.7λ/NAの範囲に位置する。したがって、光遮蔽領域(60,61)や位相変調領域(70,71)も、この位置の近傍に設ければよい。また、光遮蔽領域(60,61)や位相変調領域(70,71)の大きさについては、凹部(64a,74a)の面積と凹部(65a,75a)の面積とがほぼ等しくなるように設定すればよい。具体的には、光遮蔽領域が小さすぎると光強度分布にピーク形状が残り大きすぎると補正されすぎて逆に凹型形状となるので、光強度分布を計算しながら最適な大きさを求めればよい。光遮蔽領域60,61は、完全遮蔽でなく半透過であっても良い。
[第1実施例]
第1実施例では、所定周期にしたがって配置された180度の段差線を含むライン型の位相シフターに対して、上述した本発明の第1の手法を適用している。以下、各実施例および各比較例において、波長λは248nmであり、結像光学系3の像側開口数NAは0.13であり、結像光学系3のσ値は0.47である。また、光学変調素子1としての各位相シフターの寸法は、結像光学系3の像側に換算した値、すなわち像側換算値で示されている。
まず、従来技術にしたがう第1比較例では、図8(a)に示すように、位相値が180度の矩形状の領域10aと位相値が0度の矩形状の領域10bとが一方向又は他の方向に沿って交互に繰り返される2段ライン型位相シフター10を用いている(図8(a)にはその一組が示されている)。位相シフター10の実施例は、2つの矩形状の領域10aと10bとの間に、180度の段差線(位相の境界線:位相シフト線)10cが10μmのピッチで形成される例である。
この場合、図8(b)に示すように、結像光学系3のフォーカス位置(結像面)に設定された被処理基板4上には、段差線10cに対応する線領域において光強度が最も小さく周囲に向かって光強度が急激に増大する逆ピーク状の光強度分布が形成される。また、図8(c)に示すように、結像光学系3のフォーカス位置から微小移動したデフォーカス位置においても、フォーカス位置の場合と類似した逆ピーク状の光強度分布が形成される。第1比較例では、フォーカス状態においてもデフォーカス状態においても、ピーク状の光強度分布における逆ピークの両側に比較的大きなピーク形状が発生する。
これに対し、第1A実施例では、本発明の第1の手法にしたがって第1比較例のライン型位相シフター10に線状の光遮蔽領域を付設して得られる光遮蔽型の位相シフター10Aを用いている。位相シフター10Aでは、図9(a)に示すように、段差線10cに平行に延びる線状光遮蔽領域10dが段差線10cの両側に形成されている。ここで、線状光遮蔽領域10dの幅寸法は0.15μmに設定され、線状光遮蔽領域10dの中心線と近傍の段差線10cとの像側換算距離Dは0.8μmに設定されている。
すなわち、距離Dは、概して0.42×λ/NAに対応しており、上述した0.4×λ/NA<D<0.7×λ/NAの範囲内で設定されている。その結果、第1A実施例では、図9(b)に示すフォーカス状態においても図9(c)に示すデフォーカス状態においても、段差線10cに対応する線領域において光強度が最も小さく周囲に向かって光強度が急激に増大する互いに類似した逆ピーク状の光強度分布が形成され、ピーク状の光強度分布における逆ピークの両側の図4(d)に示すピーク形状49aは良好に抑えられている。
第1B実施例では、本発明の第1の手法にしたがって第1比較例のライン型位相シフター10に複数の孤立光遮蔽領域を付設して得られる光遮蔽型の位相シフター10Bを用いている。位相シフター10Bでは、図10(a)に示すように、段差線10cに平行に並ぶ複数の正方形状の孤立光遮蔽領域10eが段差線10cの両側に形成されている。ここで、孤立光遮蔽領域10eの幅寸法(一辺の寸法)および間隔はともに0.3μmに設定され、複数の孤立光遮蔽領域10eの中心を結ぶ中心線と近傍の段差線10cとの像側換算距離Dは第1A実施例の場合と同様に0.8μmに設定されている。
換言すれば、第1A実施例における線状光遮蔽領域10dと第1B実施例における複数の孤立光遮蔽領域10eとは、光遮蔽面積が互いにほぼ等しくなるように、ひいては光学的にほぼ等価な効果を有するように設定されている。その結果、第1B実施例では、図10(b)に示すフォーカス状態においても図10(c)に示すデフォーカス状態においても、段差線10cに対応する線領域において光強度が最も小さく周囲に向かって光強度が急激に増大する互いに類似した逆ピーク状の光強度分布が形成され、ピーク状の光強度分布における逆ピークの両側の図4(d)に示すピーク形状49aは良好に抑えられている。
以上のように、第1実施例(第1A実施例および第1B実施例)では、段差線10cの近傍に設けられた光遮蔽領域(10d,10e)を有する位相シフター(10A,10B)を用いることにより、逆ピークの両側に発生するピーク形状を抑えた所望の逆ピーク状の光強度分布を被処理基板4上に形成することができる。その結果、第1実施例では、ピーク形状に起因するアブレーションの発生により半導体膜が破壊されることがなくなり、逆ピーク部分から開始した結晶成長が、図4(d)に示すピーク形状49a部分で停止することなく大粒径の結晶を生成することができる。
なお、第1A実施例と第1B実施例とを比較すると、孤立光遮蔽領域10eの最小寸法の方が線状光遮蔽領域10dの最小寸法よりも大きい。したがって、第1B実施例における孤立光遮蔽領域10eの方が第1A実施例における線状光遮蔽領域10dよりも形成が容易であり、ひいては第1B実施例における位相シフター10Bの方が第1A実施例における位相シフター10Aよりも作製が容易である。すなわち、解像度の低い露光装置やプロセスでも第1B実施例の実現が可能であり、またプロセスによる寸法変動があっても第1B実施例の方が相対的な変化率が少ないので光強度分布に及ぼすバラツキが小さいという利点がある。
ところで、光学変調素子1としての位相シフター(10A,10B)は、例えば石英ガラス基板に所要の段差に対応する厚さ分布を形成することにより製造することができる。石英ガラス基板の厚さの変化は、選択エッチングやFIB(Focused Ion Beam)加工により形成することができる。この点は、光学変調素子1としての他の位相シフターについても同様である。また、光遮蔽領域(10d,10e)の形成に際しては、例えば段差を形成した後に、通常のリソグラフィーの方法によりクロムのパターンを形成すればよい。孤立光遮蔽領域10eは、図10では正方形状の形態を有するが、結像光学系3の解像度(〜λ/NA)に比して十分に小さい寸法を有する任意の形状を適用することができる。
[第2実施例]
第2実施例では、第1比較例のライン型位相シフター10に対して、上述した本発明の第2の手法を適用している。具体的に、第2A実施例では、本発明の第2の手法にしたがって第1比較例のライン型位相シフター10に線状の位相変調領域を付設して得られる位相変調型の位相シフター11Aを用いている。位相シフター11Aでは、図11(a)に示すように、段差線10cに平行に延びる線状位相変調領域11dが段差線10cの両側に形成されている。ここで、位相値が180度の矩形状の領域10aに形成された線状位相変調領域11dの位相値は0度であり、位相値が0度の矩形状の領域10bに形成された線状位相変調領域11dの位相値は180度である。換言すれば、段差線10cの位相変調量および線状位相変調領域11dの位相変調量はともに180度である。
また、線状位相変調領域11dの幅寸法は0.08μmに設定され、線状位相変調領域11dの中心線と近傍の段差線10cとの像側換算距離Dは第1A実施例の場合と同様に0.8μmに設定されている。すなわち、距離Dは、概して0.42×λ/NAに対応しており、上述した0.4×λ/NA<D<0.7×λ/NAの範囲内で設定されている。その結果、第2A実施例では、図11(b)に示すフォーカス状態においても図11(c)に示すデフォーカス状態においても第1A実施例の場合と同様に、段差線10cに対応する線領域において光強度が最も小さく周囲に向かって光強度が急激に増大する互いに類似した逆ピーク状の光強度分布が形成され、ピーク状の光強度分布における逆ピークの両側の図4(d)に示すピーク形状49aは良好に抑えられている。
第2B実施例では、本発明の第2の手法にしたがって第1比較例のライン型位相シフター10に複数の孤立位相変調領域を付設して得られる位相変調型の位相シフター11Bを用いている。位相シフター11Bでは、図12(a)に示すように、段差線10cに平行に並ぶ複数の正方形状の孤立位相変調領域11eが段差線10cの両側に形成されている。ここで、位相値が180度の矩形状の領域10aに形成された孤立位相変調領域11eの位相値は0度であり、位相値が0度の矩形状の領域10bに形成された孤立位相変調領域11eの位相値は180度である。換言すれば、段差線10cの位相変調量および孤立位相変調領域11eの位相変調量はともに180度である。
また、孤立位相変調領域11eの幅寸法(一辺の寸法)および間隔は0.24μmおよび0.72μmにそれぞれ設定され、複数の孤立位相変調領域11eの中心を結ぶ中心線と近傍の段差線10cとの像側換算距離Dは第2A実施例の場合と同様に0.8μmに設定されている。換言すれば、第2A実施例における線状位相変調領域11dと第2B実施例における複数の孤立位相変調領域11eとは、位相変調面積が互いにほぼ等しくなるように、ひいては光学的にほぼ等価な効果を有するように設定されている。その結果、第2B実施例では、図12(b)に示すフォーカス状態においても図12(c)に示すデフォーカス状態においても第1B実施例の場合と同様に、段差線10cに対応する線領域において光強度が最も小さく周囲に向かって光強度が急激に増大する互いに類似した逆ピーク状の光強度分布が形成され、ピーク状の光強度分布における逆ピークの両側のピーク形状は良好に抑えられている。
以上のように、第2実施例(第2A実施例および第2B実施例)では、段差線10cの近傍に設けられた位相変調領域(11d,11e)を有する位相シフター(11A,11B)を用いることにより、逆ピークの両側に発生するピーク形状を抑えた所望の逆ピーク状の光強度分布を被処理基板4上に形成することができる。その結果、第2実施例においても第1実施例と同様に、ピーク形状に起因するアブレーションの発生により半導体膜が破壊されることがなくなり、逆ピーク部分から開始した結晶成長がピーク形状部分で停止することなく大粒径の結晶を生成することができる。
なお、第2A実施例と第2B実施例とを比較すると、孤立位相変調領域11eの最小寸法の方が線状位相変調領域11dの最小寸法よりも大きい。したがって、第1実施例の場合と同様に、第2B実施例における位相シフター11Bの方が第2A実施例における位相シフター11Aよりも作製が容易である。また、孤立位相変調領域11eは、図12では正方形状の形態を有するが、結像光学系3の解像度(〜λ/NA)に比して十分に小さい寸法を有する任意の形状を適用することができる。
[第3実施例]
第1実施例および第2実施例では、所定周期にしたがって配置された180度の段差線を含む2段ライン型の位相シフターに対して、本発明の第1の手法および第2の手法をそれぞれ適用している。これに対し、第3実施例では、所定周期にしたがって配置された90度の段差線を含む4段ライン型の位相シフターに対して、本発明の第1の手法および第2の手法を適用している。
まず、第3比較例では、図13(a)に示すように、0度の位相値を有する矩形状の第1帯状領域12aと、90度の位相値を有する矩形状の第2帯状領域12bと、180度の位相値を有する矩形状の第3帯状領域12cと、270度の位相値を有する矩形状の第4帯状領域12dとが一方向に沿って繰り返し形成されたパターンを有する4段ライン型位相シフター12を用いている。位相シフター12では、2つの矩形状の領域12aと12bとの間、12bと12cとの間、12cと12dとの間、12dと12aとの間に、90度の段差線12eが5μmのピッチで形成されている。
この場合、図13(b)に示すフォーカス状態では、段差線12eに対応する線領域において光強度が最も小さく周囲に向かって光強度が急激に増大する逆ピーク状の左右対称な光強度分布が形成される。そして、逆ピークの両側には、比較的大きなピーク形状が発生する。ただし、90度の段差線12eに対応して第3比較例で形成される逆ピーク点における最小光強度は、180度の段差線10cに対応して第1比較例で形成される逆ピーク点における最小光強度よりも大きい。
一方、図13(c)に示すデフォーカス状態では、形成される逆ピーク状の光強度分布の左右対称性は大きく崩れ、逆ピークの一方の側には非常に大きなピーク形状が発生し、他方の側には比較的小さなピーク形状しか発生しない。すなわち、デフォーカス状態では、逆ピークの一方側のピーク形状が持ち上がって顕著になるとともに、他方側のピーク形状が抑えられてあまり目立たなくなる。なお、被処理基板4には、デフォーカスの原因となる板厚偏差が不可避的に存在する。その結果、第3比較例では、デフォーカスにより左右非対称になった逆ピーク状の光強度分布に基づいて、生成される結晶粒も左右非対称になる。
これに対し、第3A実施例では、本発明の第1の手法にしたがって第3比較例の4段ライン型位相シフター12に線状の光遮蔽領域を付設して得られる光遮蔽型の位相シフター12Aを用いている。位相シフター12Aでは、図14(a)に示すように、段差線12eに平行に延びる線状光遮蔽領域12fが段差線12eの両側に形成されている。ここで、線状光遮蔽領域12fの幅寸法は図示を省略したが0.1μmに設定され、線状光遮蔽領域12fの中心線と近傍の段差線12eとの像側換算距離Dは0.8μmに設定されている。すなわち、距離Dは、概して0.42×λ/NAに対応しており、上述した0.4×λ/NA<D<0.7×λ/NAの範囲内で設定されている。
その結果、第3A実施例では、図14(b)に示すフォーカス状態において、段差線12eに対応する線領域において光強度が最も小さく周囲に向かって光強度が急激に増大する逆ピーク状の左右対称な光強度分布が形成され、逆ピークの両側のピーク形状は良好に抑えられている。一方、図14(c)に示すデフォーカス状態では、第3比較例の場合と比較して、形成される逆ピーク状の光強度分布の左右対称性の崩れは大きく改善され、逆ピークの一方側には小さなピーク形状が残るが、他方側のピーク形状は比較的良好に抑えられている。
第3B実施例では、本発明の第2の手法にしたがって第3比較例の4段ライン型位相シフター12に線状の位相変調領域を付設して得られる位相変調型の位相シフター12Bを用いている。位相シフター12Bでは、図15(a)に示すように、段差線12eに平行に延びる線状位相変調領域12gおよび12hが段差線12eの両側に形成されている。ここで、段差線12eの図中右側に形成された線状位相変調領域12gの位相変調量は−30度であり、段差線12eの図中左側に形成された線状位相変調領域12hの位相変調量は+30度である。
換言すれば、段差線12eの位相変調量は90度であり、段差線12eの左右で位相ベクトルが対称になるように、段差線12eの一方の側に設けられた線状位相変調領域12gの位相変調量と段差線12eの他方の側に設けられた線状位相変調領域12hの位相変調量とは絶対値が等しく且つ符号が異なる。段差線12eの左右で位相ベクトルを対称にすることにより、以下に示すように、フォーカス状態において左右対称な逆ピーク状の光強度分布を得るとともに、デフォーカス状態においても逆ピーク状の光強度分布の左右対称性の崩れを大きく改善することができる。
また、線状位相変調領域12gおよび12hの幅寸法はともに0.5μmに設定され、線状位相変調領域12gおよび12hの中心線と近傍の段差線12eとの像側換算距離Dは1μmに設定されている。すなわち、距離Dは、概して0.52×λ/NAに対応しており、上述した0.4×λ/NA<D<0.7×λ/NAの範囲内で設定されている。その結果、第3B実施例では、図15(b)に示すフォーカス状態においても図15(c)に示すデフォーカス状態においても、段差線12eに対応する線領域において光強度が最も小さく周囲に向かって光強度が急激に増大する逆ピーク状のほぼ左右対称な光強度分布が形成され、逆ピークの両側のピーク形状は比較的良好に抑えられている。
以上のように、第3実施例(第3A実施例および第3B実施例)では、段差線12eの近傍に設けられた光遮蔽領域12fを有する位相シフター12Aまたは段差線12eの近傍に設けられた位相変調領域(12g,12h)を有する位相シフター12Bを用いることにより、逆ピークの両側に発生するピーク形状を抑えた所望の逆ピーク状の光強度分布を被処理基板4上に形成することができる。
その結果、第3実施例においても第1実施例および第2実施例と同様に、ピーク形状に起因するアブレーションの発生により半導体膜が破壊されることがなくなり、逆ピーク部分から開始した結晶成長がピーク形状部分で停止することなく大粒径の結晶を生成することができる。また、第3実施例では、段差が180度と実質的に異なるにもかかわらず、結像光学系3に対して被処理基板4がデフォーカスしたときの逆ピーク状の光強度分布の左右対称性の崩れが大きく改善されるので、ほぼ左右対称な結晶粒を生成することができる。
なお、第3A実施例では、段差線12eに平行に延びる線状光遮蔽領域12fを形成している。しかしながら、第1B実施例の場合と同様に、段差線12eに平行に並ぶ複数の孤立光遮蔽領域を形成することもできる。また、第3B実施例では、段差線12eに平行に延びる線状位相変調領域12gおよび12hを形成している。しかしながら、第2B実施例の場合と同様に、段差線12eに平行に並ぶ複数の孤立位相変調領域を形成することもできる。
なお、上述の実施形態では、段差により逆ピーク状の光強度分布を形成する光学変調素子1を用いている。しかしながら、図16に示すように、逆ピーク状の光強度分布を形成する光学変調素子1に加えて、入射光束に基づいて光強度勾配分布を形成するパターンを有する第2光学変調素子21を用いることもできる。ここで、第2光学変調素子21は、その位相パターン面が光学変調素子1の位相パターン面と対向するように配置されている。また、光学変調素子1として、上述の2段ライン型の位相シフター10A,10B,11A,11B、または上述の4段ライン型の位相シフター12A,12Bなどを用いることができる。
図17は、図16の変形例における第2光学変調素子のパターンを示す図である。また、図18は、図17に示す第2光学変調素子における基本パターンを示す図である。図17(a)に示す第2光学変調素子21のパターンは、図18(a)に示す基本パターンを含んでいる。図18(a)を参照すると、第2光学変調素子21の基本パターンは、結像光学系3の点像分布範囲の半径よりも光学的に小さいサイズの複数のセル(図中矩形状の破線で示す)21cを有する。
各セル21cには、たとえば−90度の位相値(第1の位相値)を有する第1領域(図中斜線部で示す)21bと、たとえば0度の位相値(第2の位相値)を有する第2領域(図中空白部で示す)21aとが形成されている。図18(a)に示すように、各セル21c内における第1領域21bと第2領域21aとの占有面積率がセル毎に変化している。換言すれば、位相値が−90度の第1領域21bと位相値が0度の第2領域21aとの占有面積率がX方向の位置によって変化する位相分布を有する。さらに具体的には、セル内における第2領域21aの占有面積比は、図中左側のセルにおいて最も50%に近く、図中右側のセルにおいて最も100%に近く、その間においてX方向に沿って単調に変化している。
上述のように、第2光学変調素子21は、結像光学系3の点像分布範囲の半径よりも光学的に小さいサイズの位相変調単位(セル)21cに基づく位相分布を有する。したがって、各位相変調単位21cにおける第1領域21bと第2領域21aとの占有面積率を、すなわち2つの位相ベクトルの和を適宜変化させることにより、被処理基板4上に形成される光強度分布を解析的に且つ簡単な計算にしたがって制御することが可能である。
具体的には、図17(b)に示すように、第2領域21aの占有面積比が最も100%に近い両側位置において最も光強度が大きく、第2領域21aの占有面積比が最も50%に近い中央位置において最も光強度が小さい一次元の(X方向に勾配を有する)V字型の光強度勾配分布が得られる。第2光学変調素子21は、例えば石英ガラス基板に所要の段差に対応する厚さ分布を形成することにより製造することができる。石英ガラス基板の厚さの変化は、選択エッチングやFIB(Focused Ion Beam)加工により形成することができる。
その結果、図16の変形例では、図19に示すように、第2光学変調素子21を介して形成される一次元V字型の光強度勾配分布4aと、光学変調素子1を介して形成される逆ピーク状の光強度分布4bとの合成光強度分布、すなわちV字型パターン+逆ピーク状パターンの光強度分布4cが被処理基板4の表面上に形成される。ここで、前述したように、逆ピーク状の光強度分布4bにおいて逆ピークの両側に発生するピーク形状が良好に抑えられる。その結果、図16の変形例では、ピーク形状に起因するアブレーションの発生により半導体膜が破壊されることがなくなり、逆ピーク部分から開始した結晶成長がピーク形状部分で停止することなく大粒径の結晶を生成することができる。
また、V字型パターン+逆ピーク状パターンの光強度分布4cでは、結晶核の形成位置すなわち結晶成長の開始点を、逆ピーク状の光強度分布4bにおいて光強度の最も小さい位置へ極力近づけることができる。そして、一次元V字型の光強度勾配分布4aにおける光強度の勾配方向(X方向)に沿って結晶核からの十分なラテラル方向の結晶成長を実現して、大粒径の結晶化半導体膜を生成することができる。
なお、図16の変形例において、結像光学系3によるフォーカスの観点から、光学変調素子1の位相パターン面と第2光学変調素子21の位相パターン面とができるだけ近接するように配置することが望ましい。また、光学変調素子1の後側に第2光学変調素子21を配置しているが、これに限定されることなく、第2光学変調素子21の後側に光学変調素子1を配置することもできる。
さらに、光学変調素子1と第2光学変調素子21とを別々に用いているが、これに限定されることなく、例えば光学変調素子1の位相パターンと第2光学変調素子21の位相パターンとの合成位相パターンを有する1つの光学変調素子を用いることもできる。ここで、光遮蔽型の位相シフターの場合には、合成位相パターンを有する1つの光学変調素子の上に光遮蔽層を形成すればよい。また、位相変調型の位相シフターの場合には、位相変調領域も含めた合成位相パターンを有する1つの光学変調素子を形成すればよい。
また、上述の実施形態および変形例では、逆ピーク状の光強度分布を形成する光学変調素子1として、段差線を含むライン型の位相シフターを用いている。しかしながら、これに限定されることなく、光学変調素子1として3つ以上の位相値領域が接する段差点を有する位相シフターを用いることもできる。具体的には、図20(a)に示すように、互いに位相値の異なる4種類の矩形状領域13a,13b,13c,13dが所定の点13eにおいて互いに隣接する形態を有する光学変調素子13を用いることもできる。
ここで、光学変調素子13は、例えば位相値が0度の第1矩形状領域13aと、位相値が90度の第2矩形状領域13bと、位相値が180度の第3矩形状領域13cと、位相値が270度の第4矩形状領域13dとを有する。そして、点13eにおいて十字状に交差する4つの直線は、第1矩形状領域13aと第2矩形状領域13bとの間の境界線、第2矩形状領域13bと第3矩形状領域13cとの間の境界線、第3矩形状領域13cと第4矩形状領域13dとの間の境界線、および第4矩形状領域13dと第1矩形状領域13aとの間の境界線に対応するように構成されている。
なお、図示を省略しているが、光学変調素子13には、図20(a)に示す位相パターンが二次元的に繰り返し形成されている。この場合、点13eだけでなく矩形状領域の各隅角部13fも4種類の位相値領域(13a〜13d)の接点を構成し、ひいては段差点(位相シフト点)を構成することになる。その結果、図20(b)に示すように、被処理基板4の表面には、光学変調素子13の段差点(13e,13f)に対応するスポット領域13gにおいて光強度が最も小さく周辺のすべての方向に向かって急激に光強度が増大する逆ピーク状の光強度分布が得られる。
そして、光学変調素子13を介して形成される逆ピーク状の光強度分布では、段差点(13e,13f)に対応する位置を中心とする円形状にピーク形状が発生することになる。この場合、図20(a)に示すように、光学変調素子13の段差点(13e,13f)を中心とする円形状の光遮蔽領域(または位相変調領域)13hを形成することが好ましい。ここで、光遮蔽領域(または位相変調領域)13hは、円形状に延びる線状であってもよいし、円形状に並ぶ孤立状であってもよい。こうして、光遮蔽領域(または位相変調領域)13hの作用により、段差点(13e,13f)に対応する位置を中心とする円形状のピーク形状の発生が良好に抑えられる。
また、具体的には、図21(a)に示すように、例えば位相値が0度の第1矩形状領域14aと位相値が180度の第2矩形状領域14bとの間に形成される180度の段差線14cが所定の点14dにおいて直交するような光学変調素子14を用いることもできる。すなわち、光学変調素子14では、位相値が0度の第1矩形状領域14aと位相値が180度の第2矩形状領域14bとが、交互に二次元的に形成されている。
なお、図示を省略しているが、光学変調素子14には、図21(a)に示す位相パターンが二次元的に繰り返し形成されている。この場合、点14dだけでなく矩形状領域の各隅角部14eも段差点を構成し、十字状の交差線14cだけでなく矩形状領域の各辺14fも段差線を構成することになる。その結果、図21(b)に示すように、被処理基板4の表面には、光学変調素子14の段差点(14d,14e)に対応するスポット領域14gおよび光学変調素子14の段差線(14c,14f)に対応する線領域14hにおいて光強度が最も小さく周辺に向かって急激に光強度が増大する逆ピーク状の光強度分布が得られる。
そして、光学変調素子14を介して形成される逆ピーク状の光強度分布では、段差線(14c,14f)に対応する線領域14hの両側にピーク形状が発生することになる。この場合、図21(a)に示すように、段差線(14c,14f)の両側に光遮蔽領域(または位相変調領域)14jを形成することが好ましい。
光遮蔽領域(または位相変調領域)14jは、段差線(14c,14f)にほぼ平行に延びる線状であってもよいし、段差線(14c,14f)にほぼ平行に並ぶ孤立状であってもよい。こうして、光遮蔽領域(または位相変調領域)14jの作用により段差線(14c,14f)に平行なピーク形状の発生が良好に抑えられる。
図22は、本実施形態の結晶化装置を用いて結晶化された領域に電子デバイスを作製する工程を示す工程断面図である。図22(a)に示すように、絶縁基板80(例えば、アルカリガラス、石英ガラス、プラスチック、ポリイミドなど)の上に、下地膜81(例えば、膜厚50nmのSiNおよび膜厚100nmのSiO2積層膜など)および非晶質半導体膜82(例えば、膜厚50nm〜200nm程度のSi,Ge,SiGeなど)を、化学気相成長法やスパッタ法などを用いて成膜した被処理基板5を準備する。そして、本実施形態にしたがう結晶化装置を用いて、非晶質半導体膜82の表面の予め定められた領域に、レーザ光83(例えば、KrFエキシマレーザ光やXeClエキシマレーザ光など)を照射する。
こうして、図22(b)に示すように、大粒径の結晶を有する多結晶半導体膜または単結晶化半導体膜84が生成される。次に、図22(c)に示すように、フォトリソグラフィ技術を用いて多結晶半導体膜または単結晶化半導体膜84を例えば薄膜トランジスタを形成するための領域となる島状の半導体膜85に加工し、表面にゲート絶縁膜86として膜厚20nm〜100nmのSiO2膜を化学気相成長法やスパッタ法などを用いて成膜する。さらに、図22(d)に示すように、ゲート絶縁膜上にゲート電極87(例えば、シリサイドやMoWなど)を形成し、ゲート電極87をマスクにして不純物イオン88(Nチャネルトランジスタの場合にはリン、Pチャネルトランジスタの場合にはホウ素)をイオン注入する。その後、窒素雰囲気でアニール処理(例えば、450°Cで1時間)を行い、不純物を活性化して島状の半導体膜85にソース領域91、ドレイン領域92を形成する。次に、図22(e)に示すように、層間絶縁膜89を成膜してコンタクト穴をあけ、チャネル90でつながるソース91およびドレイン92に接続するソース電極93およびドレイン電極94を形成する。
以上の工程において、図22(a)および(b)に示す工程で生成された多結晶半導体膜または単結晶化半導体膜84の大粒径結晶の位置に合わせて、チャネル90を形成する。以上の工程により、多結晶トランジスタまたは単結晶化半導体に薄膜トランジスタ(TFT)を形成することができる。こうして製造された多結晶トランジスタまたは単結晶化トランジスタは、液晶表示装置(ディスプレイ)やEL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイなどの駆動回路や、メモリ(SRAMやDRAM)やCPUなどの集積回路などに適用可能である。
なお、上述の説明では、多結晶半導体膜または非晶質半導体膜に所定の光強度分布を有する光を照射して結晶化半導体膜を生成する結晶化装置および結晶化方法に本発明を適用している。しかしながら、これに限定されることなく、一般的に結像光学系を介して所定の光強度分布を所定面に形成する光照射装置に対して本発明を適用することができる。
本発明の実施形態にかかる結晶化装置の構成を概略的に示す図である。 図1の照明系の内部構成を概略的に示す図である。 均一円形瞳を有し且つ無収差である結像光学系の点像分布関数PSFを示す図である。 段差が180度のライン型位相シフターを用いて逆ピーク状の光強度分布を形成したときに逆ピークの両側にピーク形状が発生する様子を説明する図である。 ライン型位相シフターの位相値が0度の領域に対応する像の複素振幅分布U(x)の正確な形状を示す図である。 図4に対応する図であって、本発明によりピーク形状を抑える第1の手法を説明する図である。 図4に対応する図であって、本発明によりピーク形状を抑える第2の手法を説明する図である。 180度の段差線を含む2段ライン型の位相シフターを用いた第1比較例を示す図である。 第1比較例に本発明の第1の手法を適用した第1A実施例を示す図である。 第1比較例に本発明の第1の手法を適用した第1B実施例を示す図である。 第1比較例に本発明の第2の手法を適用した第2A実施例を示す図である。 第1比較例に本発明の第2の手法を適用した第2B実施例を示す図である。 90度の段差線を含む4段ライン型の位相シフターを用いた第3比較例を示す図である。 第3比較例に本発明の第1の手法を適用した第3A実施例を示す図である。 第3比較例に本発明の第2の手法を適用した第3B実施例を示す図である。 入射光束に基づいて光強度勾配分布を形成する第2光学変調素子を付設した変形例を示す図である。 図16の変形例における第2光学変調素子のパターンを示す図である。 図17に示す第2光学変調素子における基本パターンを示す図である。 図16の変形例において形成されるV字型の光強度勾配分布と逆ピーク状の光強度分布との合成光強度分布を示す斜視図である。 光学変調素子として4種類の位相値領域が1点において接する位相シフターを用いた変形例を示す図である。 光学変調素子として180度の段差線が1点において4つ交わる位相シフターを用いた変形例を示す図である。 本実施形態の結晶化装置を用いて電子デバイスを作製する工程を示す工程断面図である。 段差の位相量が180度の位相シフターを用いたときに結像光学系を介して形成される逆ピーク状の光強度分布を模式的に示す図である。 段差の位相量が60度の位相シフターを用いたときに結像光学系を介して形成される逆ピーク状の光強度分布を模式的に示す図である。
符号の説明
1,10〜14 光学変調素子
21 第2光学変調素子
2 照明系
2a KrFエキシマレーザ光源
2b ビームエキスパンダ
2c,2e フライアイレンズ
2d,2f コンデンサー光学系
3 結像光学系
3c 開口絞り
4 被処理基板
5 基板ステージ

Claims (17)

  1. 入射光から位相段差により逆ピーク状の光強度分布を形成する光学変調素子と、
    前記光学変調素子を介した光束に基づいて前記逆ピーク状の光強度分布に対応する所定の光強度分布を所定面に形成するための結像光学系とを備え、
    前記光学変調素子は、前記逆ピーク状の光強度分布において逆ピークの両側に発生するピーク形状を平坦化するために設けられた光遮蔽領域及び位相変調領域のうち少なくとも一方の領域を有することを特徴とする光照射装置。
  2. 前記光学変調素子は、位相値の異なる2つの領域が接する位相段差線を有することを特徴とする請求項1に記載の光照射装置。
  3. 前記光遮蔽領域及び位相変調領域のうち少なくとも一方の領域は、前記位相段差線にほぼ平行に延びる線状光遮蔽領域及び線状位相変調領域のうち少なくとも一方の領域を有することを特徴とする請求項2に記載の光照射装置。
  4. 前記線状光遮蔽領域及び線状位相変調領域のうち少なくとも一方の領域の中心線と前記位相段差線との距離に対応する前記所定面上の距離Dは、光の波長をλとし、前記結像光学系の像側開口数をNAとするとき、
    0.4×λ/NA<D<0.7×λ/NA
    の条件を満足することを特徴とする請求項3に記載の光照射装置。
  5. 前記光遮蔽領域及び位相変調領域のうち少なくとも一方の領域は、前記位相段差線にほぼ平行に並ぶ複数の孤立光遮蔽領域及び孤立位相変調領域のうち少なくとも一方の領域を有することを特徴とする請求項2に記載の光照射装置。
  6. 前記複数の孤立光遮蔽領域及び孤立位相変調領域のうち少なくとも一方の領域の中心を結ぶ中心線と前記位相段差線との距離に対応する前記所定面上の距離Dは、光の波長をλとし、前記結像光学系の像側開口数をNAとするとき、
    0.4×λ/NA<D<0.7×λ/NA
    の条件を満足することを特徴とする請求項5に記載の光照射装置。
  7. 前記光学変調素子は、3つ以上の位相値領域が接する位相段差点を有することを特徴とする請求項1に記載の光照射装置。
  8. 前記位相段差線の位相変調量および前記位相変調領域の位相変調量がともに約180度であることを特徴とする請求項2乃至6のいずれか1項に記載の光照射装置。
  9. 前記位相段差線の位相変調量が180度とは実質的に異なる値であり、前記位相段差線の一方の側に設けられた位相変調領域の位相変調量と前記位相段差線の他方の側に設けられた位相変調領域の位相変調量とは絶対値がほぼ等しく且つ符号が異なることを特徴とする請求項2乃至6のいずれか1項に記載の光照射装置。
  10. 請求項1乃至9のいずれか1項に記載の光照射装置を備え、前記所定面に設定された多結晶半導体膜または非晶質半導体膜に前記所定の光強度分布を有する光を照射して結晶化半導体膜を生成することを特徴とする結晶化装置。
  11. 請求項1乃至9のいずれか1項に記載の光照射装置を用いて、前記所定面に設定された非単結晶膜に前記所定の光強度分布を有する光を照射して結晶化半導体膜を生成することを特徴とする結晶化方法。
  12. 請求項10に記載の結晶化装置または請求項11に記載の結晶化方法を用いて製造されたことを特徴とするデバイス。
  13. 位相段差により逆ピーク状の光強度分布を形成する光学変調素子において、
    前記逆ピーク状の光強度分布において逆ピークの両側に発生するピーク形状を抑えるために、前記位相段差の近傍に設けられた光遮蔽領域及び位相変調領域のうち少なくとも一方の領域を有することを特徴とする光学変調素子。
  14. 前記光遮蔽領域及び位相変調領域のうち少なくとも一方の領域は、前記位相段差線にほぼ平行に延びる線状光遮蔽領域及び位相変調領域のうち少なくとも一方の領域を有することを特徴とする請求項13に記載の光学変調素子。
  15. 前記光遮蔽領域及び位相変調領域のうち少なくとも一方の領域は、前記位相段差線にほぼ平行に並ぶ複数の孤立光遮蔽領域及び位相変調領域のうち少なくとも一方の領域を有することを特徴とする請求項13に記載の光学変調素子。
  16. 前記位相段差線の位相変調量が180度とは実質的に異なる値であり、前記位相段差線の一方の側に設けられた位相変調領域の位相変調量と前記位相段差線の他方の側に設けられた位相変調領域の位相変調量とは絶対値がほぼ等しく且つ符号が異なることを特徴とする請求項13に記載の光学変調素子。
  17. 前記光学変調素子は、3つ以上の位相値領域が接する位相段差点を有することを特徴とする請求項13に記載の光学変調素子。
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