ところで、従来のこのような客動線調査システムでは、客の入場券や、迷子札といった個人の所持すべき物品に非接触方式ICタグ101を組み込むようにしている。ところが、入場券の場合には親等の同伴者が子供の分まで管理する場合があり、必ずしも正確な管理を行うことができない。また、迷子札の場合には子供や老人といった迷子になる可能性のある人物を対象として所持させるので、本人がその札を所持する意味について正確に理解していないような場合が多い。したがって、邪魔になるとか、格好が悪いといった理由で札を捨ててしまう場合があり、このような場合には調査を行うことができない。
また、この提案の客動線調査システムを店舗や図書館といった特定のエリアあるいは施設に使用する場合を考えると、次のような問題が発生する。
(1)店舗や図書館といったようなエリアあるいは施設では、入場券を発行しないのが通常である。したがって、特別な札等の物品を施設内で貸し出し、これを施設を出る段階で回収する必要があるが、貸し出しの趣旨の説明や物品の管理に人数を必要とする。また、施設内に位置の検出の精度との関係で複数のリーダを配置する必要がある。このため、システムの構築および維持のためのコストが増大する。
(2)貸し出す物品が調査を行うための物であることが分かると、その物を所持する者は普段と異なる行動をする可能性があり、調査が正確さを欠くものになる場合が多い。たとえば図書館でこのような物を所持させられると、娯楽中心の本よりも学問的な本を選ぶ傾向が現われてしまう。
(3)調査を依頼された客自体が特定されることになるので、プライバシを侵害されるのではないかという不安感を抱いてしまう可能性がある。この結果として、調査が最後まで行われる割合が低下したり、(2)で説明したように調査を意識した行動が採られて調査結果の信頼性を低下させてしまう。
そこで本発明の目的は、客に精神的な負担を掛けることなく、客動線の調査を行うことのできる客動線調査システム、客動線調査方法および客動線調査プログラムを提供することにある。
本発明の他の目的は、商品や本といったような物品を格納している棚等の格納手段から客が物品を持ち出して購入、借り受けあるいは閲覧等の利用を行う際に、商品の管理を行いながら客動線の調査も併せて行うことのできる客動線調査システム、客動線調査方法および客動線調査プログラムを提供することにある。
請求項1記載の発明では、(イ)それぞれ固有の識別情報を発信できる物品の識別情報と、予め定めた特定エリア内におけるこれらの物品の配置されている場所を表わした位置情報とを対にしてデータベースに登録しておき、各物品の識別情報をその発信する位置との関係で時間間隔を置いて順次取得してデータベースを更新していくことで、これらの物品が前記した特定エリアから消失したとき消失の確認された時刻としての消失時刻と共に検出する物品消失検出手段と、(ロ)この物品消失検出手段によって消失の確認された各物品が前記した特定エリア外の所定の処理地点に運ばれてきたとき、一人の客によって同時に運ばれてきた物品同士を1つのグループの物品としてグループ化するグループ化手段と、(ハ)このグループ化手段によって1つのグループにまとめられた各物品の消失時刻と前記した特定エリア内における消失直前に取得されたこれらの物品の位置情報とをデータベースでこれらの物品の識別情報をキーとして検索する検索手段と、(ニ)この検索手段の検索結果から移動した時刻の順にそれぞれの物品の位置情報で表わされた場所を結んだ客動線を求める客動線演算手段とを客動線調査システムに具備させる。
すなわち請求項1記載の発明では、物品消失検出手段で商品等の物品が予め定めた特定エリアから消失したとき消失の確認された時刻としての消失時刻と共に検出するようにしており、たとえば図書館の本棚から客が本を取り出したとき、本棚の群としての特定エリアからある識別情報の本が消失時刻に消失したとする検出を行う。グループ化手段は、この例の場合の客が閲覧場所等の所定の地点にこれらの本を運んできたときに同時に運ばれてきた本同士を1つのグループの物品としてグループ化する。検索手段は、グループ化手段によって1つのグループにまとめられた各物品(本)が消失した時刻と消失の直前に取得された位置情報をデータベースでこれらの物品の識別情報をキーとして検索する。そして、これらの物品が消失する直前に存在した場所を消失時刻順に結ぶことで、客動線演算手段によって、その客の動線を求めることができる。すなわち、本発明では本来の物品の管理のためのシステムを利用して、客動線を演算することが可能である。
請求項2記載の発明では、(イ)それぞれ固有の識別情報を発信できる物品の識別情報と、予め定めた特定エリア内におけるこれらの物品の配置されている場所を表わした位置情報とを対にしたものを時間間隔を置いて繰り返し取得し、これらのうちの識別情報と位置情報の新たな組み合わせを、それぞれの取得時間と共にデータベースに新規登録することで、これらの物品が前記した特定エリア内で出現したことを検出する物品出現検出手段と、(ロ)前記した特定エリア外の所定の処理地点に一人の客によって同時に運ばれてきた物品同士を1つのグループの物品としてグループ化するグループ化手段と、(ハ)このグループ化手段によって1つのグループにまとめられた各物品の取得時刻と前記した特定エリア内における新規登録されたこれらの物品の位置情報とをこれらの物品の識別情報をキーとしてデータベースで検索する検索手段と、(ニ)この検索手段の検索結果から得られた取得時刻の順にそれぞれの物品の位置情報で表わされた場所を結んだ客動線を求める客動線演算手段とを客動線調査システムに具備させる。
すなわち請求項2記載の発明では、物品出現検出手段で商品等の物品が予め定めた特定エリアに出現したときそのデータが取得された時刻としての取得時刻と共に検出するようにしている。たとえば図書館の閲覧室で閲覧の終了した本を客や本の整理を行うスタッフが本棚に戻すとき、本棚の群としての特定エリアにある識別情報の本が出現したことがデータとして取得された時刻に出現したとする検出を行う。グループ化手段は、この例の場合の客が閲覧場所等の所定の地点からこれらの本を運んできたときに同時に運ばれてきた本同士を1つのグループの物品としてグループ化する。検索手段は、グループ化手段によって1つのグループにまとめられた各物品(本)が前記した特定エリアに出現したことによる取得時刻と取得時の位置情報をデータベースでこれらの物品の識別情報をキーとして検索する。そして、これらの物品が出現した場所を取得時刻の順に結ぶことで、客動線演算手段によって、その客の動線を求めることができる。すなわち、本発明では本来の物品の管理のためのシステムを利用して、客動線を演算することが可能である。
請求項3記載の発明では、(イ)それぞれ固有の識別情報を発信できる物品の識別情報と、これらの物品の配置されている場所を表わした位置情報とを対にしてデータベースに登録しておき、各物品の識別情報をその発信する位置との関係で時間間隔を置いて順次取得してデータベースを更新していくことで、これらの物品が本来位置すべき場所から移動したことを移動時刻と共に検出する物品移動検出手段と、(ロ)この物品移動検出手段によって移動が検出された各物品が所定の処理地点に運ばれてきたとき、一人の客によって同時に運ばれてきた物品同士を1つのグループの物品としてグループ化するグループ化手段と、(ハ)このグループ化手段によって1つのグループにまとめられた各物品がそれぞれ本来位置すべき場所から移動した時刻をデータベースでこれらの物品の識別情報をキーとして検索する検索手段と、(ニ)この検索手段の検索結果から移動した時刻の順にそれぞれの物品の本来位置すべき場所を結んだ客動線を求める客動線演算手段とを客動線調査システムに具備させる。
すなわち請求項3記載の発明では、物品移動検出手段で商品等の物品が本来位置すべき場所から移動したことを移動時刻と共に検出するようにしており、たとえば陳列棚に配置された商品が客によって取り出されたとき、その場所と取り出された時刻を検出する。グループ化手段は、この例の場合の客がレジ等の所定の地点に物品を運んできたときに同時に運ばれてきた物品同士を1つのグループの物品としてグループ化する。検索手段は、グループ化手段によって1つのグループにまとめられた各物品がそれぞれ本来位置すべき場所から移動した時刻をデータベースでこれらの物品の識別情報をキーとして検索する。そして、これらの物品が本来位置すべき場所から移動した時刻順に場所を結ぶことで、客動線演算手段によって、その客の動線を求めることができる。すなわち、本発明では本来の物品の管理のためのシステムを利用して、客動線を演算することが可能である。
請求項4記載の発明では、請求項1〜請求項3いずれかに記載の客動線調査システムに、更に、(イ)客動線の解析に役立つ付加情報を客ごとにデータベースに入力する付加情報入力手段と、(ロ)客動線演算手段が演算を行う際の客を付加情報入力手段によって入力された付加情報をキーとして特定の客に絞り込む客絞込み手段とを具備させている。これにより、年代や性別といった付加情報で客を絞り込んだ客動線の演算が可能になる。
請求項7記載の発明では、請求項1または請求項2記載の客動線調査システムで、物品は特定の施設内で使用できる備品であり、予め定めた特定エリアは、これらの備品を前記した特定の施設内の特定エリア外に持ち出したり返却するための保管場所であり、前記した所定の処理地点はこれらの備品を客が使用する場所あるいはその手前のゲートであることを特徴としている。
すなわち請求項7記載の発明では、物品が図書館や養護施設等の特定の施設内で使用できる本や介護用品等の備品であり、予め定めた特定エリアは、これらの備品を前記した特定の施設内の特定エリア外に持ち出したり返却するための保管場所であり、前記した所定の処理地点はこれらの備品を客が使用する閲覧情報や娯楽施設等の場所あるいはその手前で必ず通過するゲートであることを例示している。
請求項9記載の発明では、請求項1記載の客動線調査システムで、処理地点まで客ごとに所持させる特定物品を前記した特定エリアの入り口で配布する配布時刻検出手段を備え、客動線演算手段は客が前記した特定エリアに入る時刻から処理地点に到達するまでの客動線を演算することを特徴としている。
すなわち請求項9記載の発明では、処理地点まで客ごとに所持させる特定物品を前記した特定エリアの入り口で配布する配布時刻を検出することにして、特定エリアにその客が入るところから客動線を演算できるようにしている。たとえば図書館の本棚に自由に行き来できる入室証のようなものを特定エリアの入り口で機械によって発行し、発行時の時刻をその特定物品に書き込んだり、特定物品の識別情報と対応付けて記憶するようにすればよい。
請求項10記載の発明では、請求項8記載の客動線調査システムが、店舗の入り口に置かれた買物かごを客が取り出した時刻を検出する買物かご取り出し時刻検出手段を備え、客動線演算手段は客が店舗で買い物を開始する時刻からレジに買物かごを持ってくるまでの客動線を演算することを特徴としている。
すなわち請求項10記載の発明では、物品が商品の場合の店舗における発明に具体化した請求項8記載の発明で、更に、店舗の入り口に置かれた買物かごを客が取り出した時刻を検出する買物かご取り出し時刻検出手段を備えることで、客動線演算手段が客が店舗で買い物を開始する時刻からレジに買物かごを持ってくるまでの客動線を演算できるようにしている。すなわち、客が店舗に滞在する時間も客動線を表わす情報として演算することができる。
請求項11記載の発明では、請求項8記載の客動線調査システムが、レジに携行することで商品の割り引きを行う割引証明物を店舗の入り口で配布する時刻を検出する配布時刻検出手段を備え、客動線演算手段は客が店舗で買い物を開始する時刻からレジに割引証明物を持ってくるまでの客動線を演算することを特徴としている。
すなわち請求項11記載の発明では、物品が商品の場合の店舗における発明に具体化した請求項8記載の発明で、更に、レジに携行することで商品の割り引きを行う割引証明物を店舗の入り口で配布する時刻を検出する配布時刻検出手段が備えられ、たとえば割引チケットが機械等で配布されることで、客動線演算手段が客が店舗で買い物を開始する時刻からレジに割引証明物を持ってくるまでの客動線を演算できるようにしている。すなわち、客が店舗に滞在する時間も客動線を表わす情報として演算することができる。
請求項12記載の発明では、請求項1記載の客動線調査システムデータ、前記した特定エリアは図書館における開架式の書棚を配置した書棚エリアであり、物品消失検出手段は書棚から図書が取り出されたことが確認された時刻としての消失時刻とそれら取り出された図書が直前に存在していた場所を該当する図書の識別情報と対応付けて検出する手段であり、前記した所定の処理地点は書棚エリアと他のエリアを区切るために配置された1または複数のゲートであり、書棚エリアから図書を適宜の数だけ取り出す客は、それぞれ独自の識別情報を発信する発信手段を携行しており、グループ化手段は、この発信手段が図書と共にゲートのいずれか1つで検出されたとき、これらの図書を1つのグループとしてグループ化する手段であり、客動線演算手段は、1つのグループを構成する各図書の消失時刻とグループ化時のゲートで検出された発信手段の識別情報と同一の情報がこれらの図書の消失時刻よりも早い時間にゲートのいずれか1つで検出された時刻とを時間軸上に配列し、それぞれの場所を結んでいくことで客動線を演算する手段であることを特徴としている。
すなわち請求項12記載の発明では、図書館の開架式の書棚を配置した書棚エリアに出入りする位置に1つ以上のゲートを配置し、客に携行させた発信手段で客ごとにユニークな識別情報を受信できるようにしている。そして、客が書棚から適宜、図書を取り出してゲートを通過するときには、その客の持っているこれらの図書を1つのグループとして物品消失検出手段によってこれらの消失時刻と消失した書棚の場所を特定し、客が書棚エリアに入った時刻とそのゲートの場所を起点として、書棚から取り出した各図書の場所と時刻から客動線を求めることにしている。
請求項13記載の発明では、(イ)それぞれ固有の識別情報を発信できる物品の識別情報と、予め定めた特定エリア内におけるこれらの物品の配置されている場所を表わした位置情報とを対にしてデータベースに登録しておき、各物品の識別情報をその発信する位置との関係で時間間隔を置いて順次取得してデータベースを更新していくことで、これらの物品が前記した特定エリアから消失したとき消失の確認された時刻としての消失時刻と共に検出する物品消失検出ステップと、(ロ)この物品消失検出ステップによって消失の確認された各物品が前記した特定エリア外の所定の処理地点に運ばれてきたとき、一人の客によって同時に運ばれてきた物品同士を1つのグループの物品としてグループ化するグループ化ステップと、(ハ)このグループ化ステップによって1つのグループにまとめられた各物品の消失時刻と前記した特定エリア内における消失直前に取得されたこれらの物品の位置情報とをデータベースでこれらの物品の識別情報をキーとして検索する検索ステップと、(ニ)この検索ステップでの検索結果から移動した時刻の順にそれぞれの物品の位置情報で表わされた場所を結んだ客動線を求める客動線演算ステップとを客動線調査方法に具備させる。
請求項16記載の発明の客動線調査プログラムでは、(イ)それぞれ固有の識別情報を発信できる物品の識別情報と、予め定めた特定エリア内におけるこれらの物品の配置されている場所を表わした位置情報とを対にしてデータベースに登録しておくと共に、このデータベースと接続されたコンピュータに、(ロ)各物品の識別情報をその発信する位置との関係で時間間隔を置いて順次取得してデータベースを更新していくことで、これらの物品が前記した特定エリアから消失したとき消失の確認された時刻としての消失時刻と共に検出する物品消失検出処理と、(ハ)この物品消失検出処理によって消失の確認された各物品が前記した特定エリア外の所定の処理地点に運ばれてきたとき、一人の客によって同時に運ばれてきた物品同士を1つのグループの物品としてグループ化するグループ化処理と、(ニ)このグループ化手段によって1つのグループにまとめられた各物品の消失時刻と前記した特定エリア内における消失直前に取得されたこれらの物品の位置情報とをデータベースでこれらの物品の識別情報をキーとして検索する検索処理と、(ホ)この検索手段の検索結果から移動した時刻の順にそれぞれの物品の位置情報で表わされた場所を結んだ客動線を求める客動線演算処理とを実行させることを特徴としている。
すなわち請求項13あるいは請求項16記載の発明では、請求項1記載の発明と同様の技術内容を、客動線調査方法あるいは客動線調査プログラムの観点からそれぞれ把握して表現している。特に、本発明は物品あるいは商品の管理のためのシステムを制御するプログラムに客動線調査プログラムを組み合わせることで、簡単に客動線の調査が可能になるという実益がある。
請求項14記載の発明では、(イ)それぞれ固有の識別情報を発信できる物品の識別情報と、予め定めた特定エリア内におけるこれらの物品の配置されている場所を表わした位置情報とを対にしたものを時間間隔を置いて繰り返し取得し、これらのうちの識別情報と位置情報の新たな組み合わせを、それぞれの取得時間と共にデータベースに新規登録することで、これらの物品が前記した特定エリア内で出現したことを検出する物品出現検出ステップと、(ロ)前記した特定エリア外の所定の処理地点に一人の客によって同時に運ばれてきた物品同士を1つのグループの物品としてグループ化するグループ化ステップと、(ハ)このグループ化ステップによって1つのグループにまとめられた各物品の取得時刻と前記した特定エリア内における新規登録されたこれらの物品の位置情報とをこれらの物品の識別情報をキーとしてデータベースで検索する検索ステップと、(ニ)この検索ステップでの検索結果から得られた取得時刻の順にそれぞれの物品の位置情報で表わされた場所を結んだ客動線を求める客動線演算ステップとを客動線調査方法に具備させる。
請求項17記載の発明では、(イ)それぞれ固有の識別情報を発信できる物品の識別情報と、予め定めた特定エリア内におけるこれらの物品の配置されている場所を表わした位置情報とを対にしたものをデータベースに登録すると共に、このデータベースと接続されたコンピュータに、(ロ)各物品の識別情報をその発信する位置との関係で時間間隔を置いて繰り返し取得し、これらのうちの識別情報と位置情報の新たな組み合わせを、それぞれの取得時間と共にデータベースに新規登録することで、これらの物品が前記した特定エリア内で出現したことを検出する物品出現検出処理と、(ハ)前記した特定エリア外の所定の処理地点に一人の客によって同時に運ばれてきた物品同士を1つのグループの物品としてグループ化するグループ化処理と、(ニ)このグループ化処理によって1つのグループにまとめられた各物品の取得時刻と前記した特定エリア内における新規登録されたこれらの物品の位置情報とをこれらの物品の識別情報をキーとしてデータベースで検索する検索処理と、(ホ)この検索処理の検索結果から得られた取得時刻の順にそれぞれの物品の位置情報で表わされた場所を結んだ客動線を求める客動線演算処理とを客動線調査プログラムに具備させる。
すなわち請求項14あるいは請求項17記載の発明では、請求項2記載の発明と同様の技術内容を、客動線調査方法あるいは客動線調査プログラムの観点からそれぞれ把握して表現している。特に、本発明は物品あるいは商品の管理のためのシステムを制御するプログラムに客動線調査プログラムを組み合わせることで、簡単に客動線の調査が可能になるという実益がある。
請求項15記載の発明では、(イ)それぞれ固有の識別情報を発信できる物品の識別情報と、これらの物品の配置されている場所を表わした位置情報とを対にしてデータベースに登録しておき、各物品の識別情報をその発信する位置との関係で時間間隔を置いて順次取得してデータベースを更新していくことで、これらの物品が本来位置すべき場所から移動したことを移動時刻と共に検出する物品移動検出ステップと、(ロ)この物品移動検出ステップによって移動が検出された各物品が所定の処理地点に運ばれてきたとき、一人の客によって同時に運ばれてきた物品同士を1つのグループの物品としてグループ化するグループ化ステップと、(ハ)このグループ化ステップによって1つのグループにまとめられた各物品がそれぞれ本来位置すべき場所から移動した時刻をデータベースでこれらの物品の識別情報をキーとして検索する検索ステップと、(ニ)この検索ステップでの検索結果から移動した時刻の順にそれぞれの物品の本来位置すべき場所を結んだ客動線を求める客動線演算ステップとを客動線調査方法に具備させる。
また、請求項18記載の発明の客動線調査プログラムでは、(イ)それぞれ固有の識別情報を発信できる物品の識別情報と、これらの物品の配置されている場所を表わした位置情報とを対にしてデータベースに登録しておくと共に、このデータベースと接続されたコンピュータに、(ロ)各物品の識別情報をその発信する位置との関係で時間間隔を置いて順次取得してデータベースを更新していくことで、これらの物品が本来位置すべき場所から移動したことを移動時刻と共に検出する物品移動検出処理と、(ハ)この物品移動検出処理によって移動が検出された各物品が所定の処理地点に運ばれてきたとき、一人の客によって同時に運ばれてきた物品同士を1つのグループの物品としてグループ化するグループ化処理と、(ニ)このグループ化処理によって1つのグループにまとめられた各物品がそれぞれ本来位置すべき場所から移動した時刻をデータベースでこれらの物品の識別情報をキーとして検索する検索処理と、(ホ)この検索処理での検索結果から移動した時刻の順にそれぞれの物品の本来位置すべき場所を結んだ客動線を求める客動線演算処理とを実行させることを特徴としている。
すなわち請求項15あるいは請求項18記載の発明では、請求項3記載の発明と同様の技術内容を、客動線調査方法あるいは客動線調査プログラムの観点からそれぞれ把握して表現している。特に、本発明は物品あるいは商品の管理のためのシステムを制御するプログラムに客動線調査プログラムを組み合わせることで、簡単に客動線の調査が可能になるという実益がある。
以上説明したように請求項1、請求項13または請求項16記載の発明によれば、物品が予め定めた特定エリアから消失したときこれを消失時刻と共に検出する物品消失検出手段、物品消失検出ステップ、物品消失検出処理を利用することで、一人の客によって同時に運ばれてきた物品同士を1つのグループの物品としてグループ化し、グループ内の物品の消失した時刻の順にそれぞれの物品の消失直前の場所を結んだ客動線を簡単に演算することができる。したがって、調査のための設備や調査時のコストを抑制することができる。しかも、客のプライバシの確保を図るだけでなく、信頼性の高い調査結果を得ることができる。
また請求項2、請求項14または請求項17記載の発明によれば、物品が予め定めた特定エリアに出現したときのデータを取得した取得時刻と共に検出する物品取得検出手段、物品取得検出ステップ、物品取得検出処理を利用することで、一人の客によって同時に運ばれてきた物品同士を1つのグループの物品としてグループ化し、グループ内の物品の出現がデータ上で取得された時刻の順にそれぞれの物品の出現した場所を結んだ客動線を簡単に演算することができる。したがって、調査のための設備や調査時のコストを抑制することができる。しかも、客のプライバシの確保を図るだけでなく、信頼性の高い調査結果を得ることができる。
更に、請求項3、請求項15または請求項18記載の発明によれば、物品が本来位置すべき場所から移動した時刻と場所を明らかにする所定の物品移動検出手段、物品移動検出ステップあるいは物品移動検出処理を利用することで、一人の客によって同時に運ばれてきた物品同士を1つのグループの物品としてグループ化し、グループ内の物品の移動した時刻の順にそれぞれの物品の本来位置すべき場所を結んだ客動線を簡単に演算することができる。したがって、調査のための設備や調査時のコストを抑制することができる。しかも、客のプライバシの確保を図るだけでなく、信頼性の高い調査結果を得ることができる。
図1は、本発明の一実施例における客動線調査システムの構成の概要を表わしたものである。この実施例による客動線調査システム200は、スーパマーケット等の店舗で商品の欠品の管理を行うための商品管理棚システムの一部として組み込まれたシステムである。客動線調査システム200は、その構成部品の多くを商品管理棚システムと共通させている。そこで、まず商品管理棚システムの概要を説明し、その後に、客動線調査システム200を詳細に説明することにする。
<商品管理棚システムの概要>
店舗には、その売り場に、商品を陳列して販売を行うための陳列棚2011、2012、……201nが配置されている。この図では図示を簡略化するために陳列棚2011、2012、……201nが1箇所に多段に配置されたものとして示している。実際には、売り場のスペースに、これらの陳列棚2011、2012、……201nが適宜の段数で複数箇所に分散して配置されているのが通常である。それぞれの陳列棚2011、2012、……201nには、各種の商品203が適宜のレイアウトで陳列されている。それぞれの商品203には、RFID(Radio Frequency Identification)タグ204が取り付けられている。ここでRFIDタグ204は、IC(Integrated Circuit)タグとも呼ばれているものである。本明細書ではこれを無線タグと称することにする。無線タグ204は、マイクロチップを用い、内蔵のアンテナを用いて内部に記憶された製品の製造番号等の情報を、通信機能を用いて外部に無線で送信する電子荷札である。無線タグ204を用いると、非接触で個々の商品に関する情報の読み出しや更新が可能になる。
陳列棚2011、2012、……201nのそれぞれには、これらの棚の1つずつに配置された商品に関するデータの送信を無線タグ204に指示すると共に無線タグ204と送受信を行うための棚送受信部2061、2062、……206nが配置されている。これらの棚送受信部2061、2062、……206nは、陳列棚2011、2012、……201nと1対1で対応付けられている。たとえば陳列棚2011に陳列された商品203の無線タグ204から送出された応答信号は、これに対応する棚送受信部2061のみが受信するようになっている。
無線タグ204は、図示しないマイクロチップを有しており、図1に示した棚送受信部2061、2062、……206nのいずれかから質問波を受信すると、商品の種類やそれぞれの個体情報を表わした応答信号を無線で送信するようになっている。
棚送受信部2061、2062、……206nのそれぞれに接続されたアンテナケーブル221は、第1の無線タグ情報取得部222に接続されている。棚送受信部2061、2062、……206nから質問波が発せられ、これを受信した商品203が応答信号を返送すると、第1の無線タグ情報取得部222は応答信号の読み取りを行うようになっている。
第1の無線タグ情報取得部222は、この店舗における客動線調査システム200を含めた商品管理棚システムの全体的な制御を行うストアコントローラ223に接続されている。ストアコントローラ223は、パーソナルコンピュータあるいはワークステーション等の情報処理装置で構成されており、図示しないCPU(中央処理装置)と、所定の制御プログラムを格納した磁気ディスク等の記憶媒体と、CPUがこの制御プログラムを用いて各種の制御を行う際に必要とされる各種のデータを一時的に格納するRAM(ランダム・アクセス・メモリ)等からなる作業用メモリを備えている。
このストアコントローラ223は、商品に関する情報を検索したり、システムの運用上必要な情報等を視覚的に表示するディスプレイ225、およびキーボードや操作パネル等の入力機器226と、売り場に陳列する商品の情報を格納した商品情報データベース227と、商品203の清算のために売り場に所定数設けられたレジに設置されたPOS(Point Of Sales)端末228と、LAN(ローカルエリアネットワーク)、イントラネットあるいはインターネット等の所定のネットワーク224を介して接続されている。POS端末228には、棚送受信部2061、2062、……206nと同様に質問波を発したり、レジの近傍に商品203が存在するときにその応答信号を受信するレジ送受信部229と、このレジ送受信部229の受信した応答信号の内容を読み取る第2の無線タグ情報取得部230が備えられている。なお、本実施例では陳列棚2011、2012、……201nとPOS端末228に二分した形で、棚送受信部2061、2062、……206nとレジ送受信部229、および第1の無線タグ情報取得部222と第2の無線タグ情報取得部230を配置しているが、たとえば第1の無線タグ情報取得部222が店舗全体のタグリーダとしての役割を有するものとして、第2の無線タグ情報取得部230を省略してもよい。
このような商品管理棚システムで、第1の無線タグ情報取得部222は所定の時間間隔で質問波の送出の指令を出すようになっている。これにより、棚送受信部2061、2062、……206nから順次、質問波が出力される。これに対して、陳列棚2011、2012、……201nに配置されている商品の無線タグ204がそれぞれ応答信号を発すると、これらを読み取った第1の無線タグ情報取得部222は、陳列棚2011、2012、……201nのうちの応答信号があった商品203については「陳列が行われている」と認識する。ここで、前回の質問波に対して応答がなかった商品について応答信号を新たに受信したときには、「新たに商品が陳列された」、あるいは「一度、陳列棚201から取り出された商品が元に戻された」と認識することになる。
これに対して、所定の陳列棚201で前回は応答信号が返された商品203から応答信号が受信できなった場合には、「その陳列棚201から該当する商品が無くなった」と認識する。この商品の無線タグ204から出力される応答信号が陳列棚2011、2012、……201nにおける前の場所以外の場所で受信された場合には「商品が別の陳列棚201に移動した」と認識する。また、レジ送受信部229がその商品の無線タグ204から出力される応答信号を検出した場合には「レジでその商品の清算が行われた」と認識する。
たとえば陳列棚2011、2012、……201nに新しい商品が陳列された状態で商品情報データベース227にその情報を登録したとする。その後、その商品203が該当する陳列棚201から無くなって、所定の時間が経過した後等に第2の無線タグ情報取得部230の質問波に対してその商品203から応答信号をレジ送受信部229が受信したとする。この場合には、「レジでその商品の清算が行われた」ことになるので、その商品203の補充等の欠品の管理を行うことができる。また、その商品203が陳列棚2011、2012、……201nでもレジ228でも検出されなかったときには、万引き等によって商品が紛失したことが判別する。店舗の管理者は、このような商品203の紛失に対応する管理も行う。
<客動線調査システムの具体的構成>
図2は、図1に示した客動線調査システムの一部についてその構成をより具体的に示したものである。ここでは、図1に示した客動線調査システム200における陳列棚2011に陳列された商品203に着目して、これに関連するシステムの構成部分のみを示している。商品203は、図1に示した無線タグ204から構成されており、これは質問波を受信する質問波受信手段241と、その商品203固有の個体ID(Identification)を格納した個体ID格納手段242と、質問波を受信することにより、この個体IDを読み出して応答信号として応答する質問波応答送信手段243を備えている。
陳列棚2011に配置された棚送受信部2061は、第1の無線タグ情報取得部222から指令があったときに質問波を送信する質問波送信手段244と、陳列棚2011に配置された商品203から応答信号が送出されたときこれを受信する質問波応答受信手段245を備えている。第1の無線タグ情報取得部222は、指令を所定のタイミングで送出する指令送出手段247と、質問波応答受信手段245から応答信号が受信されたときこれを基にしてその商品203の個体IDを検出する個体ID検出手段248を備えている。指令送出手段247が送出する指令の指示は、ストアコントローラ223内の指令タイミング生成手段249によって生成されるようになっている。また、個体ID検出手段248によって検出された個体IDは、同じくストアコントローラ223内の陳列状態検出手段250に入力され、ここで陳列棚2011、2012、……201nにおける各商品203の陳列状態が検出されることになる。
一方、POS端末228側のレジ送受信部229は、第2の無線タグ情報取得部230から指令があったときに質問波を送信する質問波送信手段251と、POS端末228の近傍に存在する商品203から応答信号が送出されたときこれを受信する質問波応答受信手段252を備えている。第2の無線タグ情報取得部230は、指令を所定のタイミングで送出する指令送出手段253と、質問波応答受信手段252から応答信号が受信されたときこれを基にしてその商品203の個体IDを検出する個体ID検出手段254と、POS端末228で一度に清算されるそれぞれの商品203についての情報を1つのグループにまとめる要求を行うグルーピング要求手段255を備えている。指令送出手段253が送出する指令の指示は、ストアコントローラ223内の前記した指令タイミング生成手段249によって生成されるようになっている。また、個体ID検出手段254によって検出された個体IDおよびグルーピング要求手段255の出力するグルーピング要求は、ストアコントローラ223内のグループ情報作成手段257に入力されるようになっている。
ストアコントローラ223には、客動線を演算する客動線演算手段258および入力機器226から入力されるデータのインターフェイス回路としての操作入力手段259も備えられている。客動線演算手段258は、陳列状態検出手段250およびグループ情報作成手段257と共に商品情報データベース227内の陳列状態格納手段261と接続されている。そして、陳列状態検出手段250の検出結果を陳列状態格納手段261に格納すると共に、グループ情報作成手段257の作成したグループ情報を基にして、一人の客がPOS端末228で同時に清算した商品203をグループ化して記憶するようになっている。また、これら陳列棚2011、2012、……201nから取り出された商品203については、取り出されたことが判別された時刻を表わす時刻情報を陳列状態を示す情報の一部として格納するようになっている。客動線演算手段258は、1つのグループに属する商品203のそれぞれについて、陳列棚2011、2012、……201nから取り出された時刻情報と照合することで、これらの商品203の取り出された順序を把握し、客動線を演算するようになっている。
商品情報データベース227には、陳列状態格納手段261の他にグループ情報格納手段262が備えられており、ここにはPOS端末228で一度に清算された商品203の一群として、陳列状態検出手段250で検出した商品203のどれとどれが1つのグループに属するかを示すグループ情報を格納する。
ディスプレイ225には客動線表示手段264が備えられており、ストアコントローラ223内の客動線演算手段258の演算によって得られた客動線等の情報が視覚的に表示されるようになっている。また、キーボードやポインティングデバイスとしてのマウス等からなる入力機器226は、ストアコントローラ223内の操作入力手段259に接続されている。これらの入力機器226は、客動線調査システム200における指令タイミング生成手段249の指示する質問波の送出開始時間、送出終了時間および送出間隔等の各種設定や保守の際のデータ入力等に使用される。
<客動線調査システムの動作>
次に、このような構成の客動線調査システム200の動作の概要をまず説明する。図2に示した商品情報データベース227内の陳列状態格納手段261は、個体ID格納手段242に格納された商品203ごとに異なる個体IDをキーとして、陳列棚2011、2012、……201nにおける棚送受信部2061、2062、……206nを最小単位とする陳列位置と、陳列の開始時刻および陳列棚に存在しなくなったことが確認された最終消失時刻とを陳列状態として、各商品203ごとに格納するようになっている。
このような陳列状態を最新のものとして把握するために、ストアコントローラ223内の陳列状態検出手段250は、個体ID検出手段248を用いて、指令タイミング生成手段249の生成する指令タイミングに従って、たとえば定期的に個体IDの検出を行う。ある個体IDが最初に検出された場合には、その陳列位置と陳列時刻をその商品203についての陳列状態として、陳列状態格納手段261に新たに格納する。
これに対して、陳列状態格納手段261に格納されている商品の個体IDが消失する場合がある。これは、前回の質問波に対して応答信号が返ってきた個体IDの一群と、今回の質問波に対して応答信号が返ってきた個体IDの一群を対比して、今回初めて検出されなかった個体IDが存在すれば、これが前記した最終消失時刻となる。検出された最終消失時刻は、陳列状態を構成する情報の一部として陳列状態格納手段261に格納されることになる。
第1の無線タグ情報取得部222内の指令送出手段247は、棚送受信部2061、2062、……206nの質問波送信手段244に対して質問波を送信するように指令する。そして、質問波に対する応答信号を質問波応答受信手段245から取得することによって、商品203ごとの個体IDを検出する。
質問波送信手段244は、特定の商品203に限定して質問波を送信することも可能であるが、複数の無線タグに対して一括して質問波を送信することもできる。後者の一括送信の場合、質問波応答受信手段245は複数の商品203から応答を同時に受信することができ、これによって複数の個体IDを同時に検出することができる。
商品203の質問波受信手段241は、質問波送信手段244から質問波を受信すると、これを質問波応答送信手段243に伝達する。質問波応答送信手段243は、質問波に対応させて個体ID格納手段242から個体IDを読み出し、これをデータの一部に組み込んだ応答信号を作成して送信する。この応答信号が質問波応答受信手段245で受信される。
ところで商品情報データベース227内のグループ情報格納手段262は、商品203のグループ情報を格納するようになっている。ここでグループ情報とは、客ごとに購入した商品をグループ化して、グループIDを定めたものについて、レジ送受信部229の位置、その通過時刻、グループに含まれる各商品203の個体ID群を記したものである。グループ情報作成手段257は、個体ID検出手段254によって検出した各商品203の個体IDに対してグループ情報を作成する。グルーピング要求手段255は、グループ情報作成手段257に対して、一人の客がPOS端末228で複数の商品203の清算を行った場合、そのとき一緒に清算された各商品203の個体IDに対して、同一のグループIDによるグループ情報を作成するように要求するようになっている。
図3を用いて、商品のグループ化と客動線調査の様子を具体的に説明する。店舗内には、第1〜第3の商品陳列場所271〜273が存在し、これらに対応した第1〜第3の陳列棚(20111、20112、……2011n)、(20121、20122、……2012n)、(20131、20132、……2013n)が配置されている。これらには適宜、商品203が陳列されている。また、第1〜第3の商品陳列場所271〜273には、これらに対応させて第1〜第3の棚送受信部(20611、20612、……2061n)、(20621、20622、……2062n)、(20631、20632、……2063n)が配置されている。客281は、店舗内で適宜、商品203を買物かご282に入れていき、最終的にこれらの商品203を購入する場合にはレジのPOS端末228で清算を行うようになっている。POS端末228の近傍には、商品203が存在するときにその応答信号を受信するレジ送受信部229と、このレジ送受信部229の受信した応答信号の内容を読み取る第2の無線タグ情報取得部230が備えられている。
今、この客281がまず第3の商品陳列場所273で商品203を1つ買物かご282に入れ、次いで第2の商品陳列場所272で他の商品203を1つ買物かご282に入れ、最後に第1の商品陳列場所271で更に他の商品203を1つ買物かご282に入れて、POS端末228まで持ってきたとする。POS端末228も複数存在するものとし、図3に示した端末の位置をR3とする。
図4は、この例の場合の図1に示した第1の無線タグ情報取得部がこの客について取得する個体IDに関する一連の情報を表わしたものである。まず、順序“1”として、第3の商品陳列場所273の陳列棚20133から個体ID「00.52.11」の商品203が最終消失時刻「2003/11/5 10:27:52」に消失する。次に、順序“2”として、第2の商品陳列場所272の陳列棚20124から個体ID「24.72.31」の商品203が最終消失時刻「2003/11/5 10:28:02」に消失する。最後に、順序“3”として、第1の商品陳列場所271の陳列棚20111から個体ID「00.10.01」の商品203が最終消失時刻「2003/11/5 10:31:22」に消失する。その後、位置R3のPOS端末228にこれらの商品203が時刻「2003/11/5 10:44:43」に清算される。
このような例について、客動線として、客281が以上説明した順序で第1〜第3の商品陳列場所271〜273を移動したことを示す手法について次に説明する。
図5は、この客がレジに商品を持っていった時点における図2に示した陳列状態検出手段の検出した陳列状態を示したものである。陳列状態検出手段250は、第1〜第3の陳列棚(20111、20112、……2011n)、(20121、20122、……2012n)、(20131、20132、……2013n)における商品203の陳列状態を、質問波の送出と応答信号の受信によって順次更新していくが、商品203のうちである時点を境として該当する棚から消失したものについては、消失が検出されたそれぞれの時刻を「最終消失時刻」として保持することになる。図4に示した3つの商品203についての「最終消失時刻」はここから取得できることが分かる。なお、この図5で「N/A(Not Available)」は、個体IDが「00.10.02」のその商品203がまだ陳列されていること、すなわち「最終消失時刻」には該当するに至っていないことを示している。
図6は、客が商品をレジに持ってきてから客動線を求めて表示するまでの一連の処理の概要を表わしたものである。図2と共に説明する。図3に示した買物かご282を持って商品203の清算のためにPOS端末228に行くと、図示しないレジ担当者が図2に示した入力機器226を操作して清算を開始する。このときにレジ担当者は所定のキー操作に連動させて、第2の無線タグ情報取得部230内のグルーピング要求手段255にグルーピング要求を発生させる(図6ステップS301)。このグルーピング要求はストアコントローラ223に伝達される。
ストアコントローラ223では、このグルーピング要求をグループ情報作成手段257が受信する。グループ情報作成手段257はこれと共に第2の無線タグ情報取得部230内の指令送出手段253に対して個体ID検出のための指令の送出を指示する(ステップS302)。これにより、指令送出手段253はレジ送受信部229の質問波送信手段251に対して質問波の送信を指示して、質問波が買物かご282内の商品203に送出される。これに対してこれらの商品から応答信号が返ってくると、質問波応答受信手段252がこれを検出し、個体ID検出手段254がそれぞれの商品203の個体IDを検出する。これらの個体IDは、ストアコントローラ223内のグループ情報作成手段257に入力され(ステップS303)、ここでグループIDが作成される(ステップS304)。
作成されたグループIDは、現在時刻あるいはグルーピング要求が発生した時刻としての通過時刻と、ステップS303で検出したそれぞれの商品203の個体IDと連結された形で、商品情報データベース227内のグループ情報格納手段262に格納される(ステップS305)。
図7は、グループ情報格納手段に格納されるグループ情報の一例を示したものである。グループ情報格納手段262には、グループIDごとにPOS端末228の位置、通過時刻およびグループに属する各商品203の個体ID群が、グループ情報として格納されるようになっている。
このように商品情報データベース227内のグループ情報格納手段262に、グループIDごとの情報が格納されていくが、客動線の確認のための処理は店舗経営者等の所定の権限を有する者がその旨の指示を行うことで実行される。たとえば店舗経営者は、図1に示すストアコントローラ223に接続された操作パネル等の入力機器226を操作することで、ディスプレイ225に表示されたメインメニューから「グループID一覧要求」モードに移行させ(ステップS307)、グループID一覧要求を発生させる(ステップS308)。このグループID一覧要求が発生すると、ストアコントローラ223内の客動線演算手段258がグループ情報格納手段262からグループIDの一覧を取得する(ステップS309)。取得したグループIDの一覧は、ディスプレイ225における客動線表示手段264によって表示される。このグループIDの一覧には、通過時刻も表示されている(ステップS310)。
店舗経営者は、グループIDの一覧から客動線を確認したいグループIDを特定して客動線の表示要求を行う(ステップS311)。これを基に、入力機器226から特定されたグループIDに対応する個体IDの要求がストアコントローラ223内の操作入力手段259を経由して客動線演算手段258に送られる(ステップS312)。客動線演算手段258はグループ情報格納手段262から該当するグループに含まれる個体IDを取得して(ステップS313)、更に陳列状態格納手段261からその個体IDにおける最終消失時刻を取得する(ステップS314)。客動線演算手段258は取得した最終消失時刻を降順にソートする(ステップS315)。
これにより、特定されたグループIDにおいて、どの順序で商品203が第1〜第3の陳列棚(20111、20112、……2011n)、(20121、20122、……2012n)、(20131、20132、……2013n)から取り出されたかが分る。そこで、客動線演算手段258はこの結果をディスプレイ225における客動線表示手段264に送って(ステップS316)、客動線を表示させる(ステップS317)。先に示した図4が客動線を表にして示した一例である。商品203を売り場で選択する順序を見ることで、客動線を判読することができる。
もちろん、図4に示したような表ではなく、店舗を表わした地図上に客動線を重ねて描くように表示すると共に、たとえば2003年11月1日から同年11月15日までといったように、POS端末228の通過時刻を参考にしながら複数のグループIDを指定することで、複数の客281が多く通る通路や、第1〜第3の陳列棚(20111、20112、……2011n)、(20121、20122、……2012n)、(20131、20132、……2013n)のうちで最も商品203の取り出しが多く人気のある棚を可視化することができる。
なお、以上説明した例では、グループIDを1つ特定したり、期間を指定してその期間にPOS端末228を通過した商品203のグループIDを特定することで客動線を演算することにした。これ以外の客動線の演算方法としては、グループ情報に含まれる通過時刻をたとえば1時間ごとに区切って該当するそれぞれの時間帯の客動線を求めることも可能である。これにより、時間帯別の客動線についての統計情報を得ることができる。したがって、これらの結果を使用して前記したポップ広告の内容や広告の対象となる場所を適宜切り替えるようにすることで、一日における客層の変化に対応した理想的な客動線を実現することができる。
以上説明した実施例の客動線調査システムあるいは客動線調査方法によれば、客動線を調査する客を特定の者に限定したり、その者に調査のための特別のツールを与えたり貸し出す必要がない。また、客を任意に抽出して調査の対象とすることができるので、客のプライバシを保護することができる。
更に本実施例では、商品管理棚システムをすでに構築している場合には、これに使用される設備ならびにレジでの一括清算システムを実現する設備を利用して客動線を求めることができる。したがって、特別な設備を新たに備える必要なく、図6に概要を示した処理を実現する客動線調査プログラムを作成して実行するだけで、客動線調査システムあるいは客動線調査方法を簡単に実現することができる。このため、導入コストの抑制や導入までの期間の短縮を図ることができる。
なお、本実施例では、ディスプレイ225に備えられた客動線表示手段264を、単に表示用の駆動手段を備えたものとして説明したが、商品情報データベース227に対して必要なデータの取得を要求し、得られたデータを表示用に加工する機能を備えさせてもよい。この場合には、客動線表示手段264がステップS308以降の処理をストアコントローラ223を介さずに直接行うことができる。
このような本実施例によれば、第1の効果として、来客者に特別な機器を貸与することなく、客動線を把握することを挙げることができる。すなわち、システムの構築者側では、特別な機器の購入やその保守および貸与や回収のために要する人件費といった経済的な負担を解消することができる。これは、陳列棚で把握される商品の陳列状態と、レジで把握される客単位のグループ情報から客動線を演算することができるからである。
また、本実施例の第2の効果として、来客者のプライバシの保護を挙げることができる。これは、レジに商品を運んできた人ごとにグループ化して、そのグループ化した商品の陳列棚から取り出す順序を用いて客動線を演算しているので、各個人を特定する必要がないからである。
本実施例の第3の効果は、精度の高い客動線を得ることができることを挙げることができる。これは、来客者に全く知られずに客動線の調査を行うことができるので、特別な機器を貸与したりアンケートをとった場合のような、人間の作為が入り込むおそれがないからである。
本実施例の第4の効果は、システム導入のコストを抑えることができることを挙げることができる。これは、店舗等で多用されている商品管理のためのシステムを導入しておけば、基本的には客動線調査のためのソフトウェアを追加するだけでシステムを稼動させることができるからである。したがって、特別の工事を行う必要がないので、本システムの稼動までに要する時間を短縮することも可能である。
<本発明の第1の変形例>
図8は、本発明の第1の変形例における客動線調査システムの要部を示したものである。図8で図2と同一部分には同一の符号を付しており、これらの説明を適宜省略する。この第1の変形例の客動線調査システム200Aでは、レジとしてのPOS端末228の近傍に配置された第2の無線タグ情報取得部230Aに付加情報追加手段401が新たに追加されている。付加情報追加手段401は、この店舗の客281(図3参照。)に関する付加情報をレジ担当者が入力した際に、これをグループ情報作成手段257に提供するためのものである。付加情報としては、たとえば客281の性別や年齢層をいう。付加情報追加手段401は、第2の無線タグ情報取得部230A内のグルーピング要求手段255を介してストアコントローラ223内のグループ情報作成手段257と接続されるようになっている。
図9は、実施例の図7に対応したもので、第1の変形例におけるグループ情報の一部を表わしたものである。グループ情報格納手段262Aには、グループIDごとにPOS端末228の位置、通過時刻、グループに属する各商品203の個体ID群の他に、性別および年齢層(たとえば十代単位)が、グループ情報として格納されるようになっている。
このように商品203をレジまで持ってきた客281についての客動線調査に参考となる付加情報をレジ担当者が入力することによって、たとえば若い年齢層にとって客動線がどのようになるとか、男性と女性の性別による客動線の変化を調べることができ、客動線の統計分析をより細かく行うことができる。付加情報は、調査の対象となる店舗や図書館といった施設の性格によって適宜選択することができることはもちろんである。たとえば図書館の場合には、小中学生、高校生、一般客(一人)、一般客(子供連れ)といった付加情報を使用することもできる。
このような第1の変形例では、先の実施例による効果に加えて、付加情報を使用することでこれを用いた統計をとることができ、多面的な客動線の分析が可能になるという効果がある。
<本発明の第2の変形例>
図10は、本発明の第2の変形例における客動線調査システムの要部を示したものである。図10で図1と同一部分には同一の符号を付しており、これらの説明を適宜省略する。この第2の変形例の客動線調査システム200Bでは、ストアコントローラ223Bと接続されたネットワーク224がレジのPOS端末228やレジ送受信部229および第2の無線タグ情報取得部230だけでなく、店舗の入り口の近傍に配置された店舗入り口送受信部411および第3の無線タグ情報取得部412と接続されている。また、店舗入り口送受信部411と第3の無線タグ情報取得部412の近傍の買物かご置き場には無線タグ付きかご4211〜421mが配置されている。図示しない無線タグ付きショッピングカートが備えられていてもよい。
図11は、店舗入り口の周辺に配置された無線タグ付きかご、店舗入り口送受信部および第3の無線タグ情報取得部の概要の構成を表わしたものである。このうち、無線タグ付きかご4211〜421mは、図1に示した商品203と同様に無線タグを取り付けており、質問波を受信する質問波受信手段441と、それぞれの無線タグ付きかご4211〜421mに固有の個体IDを格納したかごID格納手段442と、質問波を受信することにより、このかごIDを読み出して応答信号として応答する質問波応答送信手段443を備えている。
店舗入り口送受信部411は、第3の無線タグ情報取得部412から指令があったときに質問波を送信する質問波送信手段444と、無線タグ付きかご4211〜421mから応答信号が送出されたときこれらを受信する質問波応答受信手段445を備えている。第3の無線タグ情報取得部412は、指令を所定のタイミングで送出する指令送出手段447と、質問波応答受信手段445から応答信号が受信されたときこれを基にしてその無線タグ付きかご421のIDとしてのかごIDを検出するかごID検出手段448を備えている。指令送出手段447が送出する指令の指示は、ストアコントローラ223B(図10)内の図示しない指令タイミング生成手段(図2の指令タイミング生成手段249参照。)によって生成されるようになっている。また、かごID検出手段448によって検出されたかごIDは、図示しないグループ情報作成手段(図2のグループ情報作成手段257参照。)に入力され、ここでグループ情報が作成されるようになっている。
ここで、この第3の変形例の指令タイミング生成手段は、客281(図3参照。)が店舗の入り口で無線タグ付きかご4211〜421mの中のいずれかを1つずつ持ち出すことを検出するのに十分な時間間隔で指令タイミングを生成するようになっている。グループ情報作成手段は、先の実施例と同様に一人の客がPOS端末228で同時に清算した商品203をグループ化するが、ショッピングカートに複数の無線タグ付きかご421をセットして買い物を行う場合があるので、1つの無線タグ付きかご421が必ずしも1つのグループには対応しない。そこで、各商品203のグループ化は実施例と同様にレジ担当者が一括して清算する範囲を基準とすることになる。
ただし、ショッピングカートにも無線タグを取り付けた場合には、1台のショッピングカートと同時にPOS端末228の場所に到達した無線タグ付きかご421同士を同一の客動線の調査対象と判別してよい。したがって、この場合には、レジにおける同一清算という条件を用いることなく、ショッピングカートを基準として商品203のグループ化を行うことができる。また、ショッピングカートの無線タグが検出されずに無線タグ付きかご421の無線タグが検出された場合には、1つの無線タグ付きかご421が使用されたと擬制することで、この場合には無線タグ付きかご421ごとに商品203のグループ化が可能である。
なお、買物かご置き場で客281が無線タグ付きかご4211〜421mを1つずつ持ち出す際のこれらの検出動作は、陳列棚2011、2012、……201nから商品203を取り出す検出動作と同一の処理で行うことができる。したがって、この処理についての詳細な説明は省略する。
図12は、この第2の変形例における客動線の一例を示したものであり、実施例の図4と対応するものである。第2の変形例では、「順序」欄の「Start」という箇所で客281が無線タグ付きかご4211〜421mのいずれかを取り出した時刻と、その無線タグのID、および買物かご置き場の位置「E1」が記されている。したがって、店舗に入り口が複数箇所存在するような場合でも、それらとの関係で、第1〜第3の陳列棚(20111、20112、……2011n)、(20121、20122、……2012n)、(20131、20132、……2013n)における商品203の取り出しによる「最終消失時刻」との関係で客動線を全工程で把握することができる。
なお、店舗の入り口が1箇所だけの場合には、買物かご置き場の位置の記載を省略することができることは当然である。また、店舗内の複数箇所に、第1〜第3の陳列棚(20111、20112、……2011n)、(20121、20122、……2012n)、(20131、20132、……2013n)とは別に無線タグ付きかご4211〜421mを対象とした質問波送信手段と質問波応答受信手段を設けておいて、商品203の取り出しによる客281の店舗内の移動の様子を補足する形で無線タグ付きかご4211〜421mの移動の様子を判別し、これら全体から客動線を演算するようにしてもよい。
この第2の変形例では、先の実施例による効果に加えて、客281が来店した直後から、すなわち商品203の最初の選択を行うまでに至る経路までを加えて客動線を把握することができる。したがって、店舗内における滞在時間を先の実施例よりも正確に測定することができる。
また、第2の変形例では、店舗に複数の入り口がある場合でも、客281がどの入り口から入ったかを把握できるので、客動線をより正確に調査して、どの入り口から入っても客を飽きさせない店舗の配置を考察することができる。
なお、この第2の変形例では客281が無線タグ付きかご4211〜421mや無線タグ付きショッピングカートを使用して買い物を行うことでこれらの使用を開始した時点すなわち来店時からの客動線の演算を可能にしたが、同様のことを無線タグ付きの他の物品を用いることでも可能である。たとえば、レジ割引チケット等の無線タグ付きチケットや、無線タグ付き濡れ傘用ビニール袋等の無線タグ付きの物品を店舗の入り口に配置しておいて、これらを持ったり使用して買い物を開始する客281について客動線を求めることができる。
<本発明の第3の変形例>
図13は、本発明の第3の変形例における客動線調査システムの要部を示したものである。この変形例は、図書館に本発明を適用したものである。この客動線調査システム500を採用した図書館501には、入館手続きを行う箇所に図書端末配布機502が配置されており、入館者(以下、単に客という。)503に1台ずつ図書端末504が貸与されるようになっている。この図書端末504にはユニークな識別情報を発信できる無線タグ505が組み込まれている。
図書館501の内部は、書棚エリア511と閲覧エリア512に大別されており、書棚エリア511の出入り口には第1のゲート513が配置されている。第1のゲート513は、図書端末504の無線タグ505と、書棚エリア511の書棚5141、5142、……514Kに格納されている図書515にそれぞれ組み込まれている無線タグ516からそれぞれ情報を受信するリーダ517、518が内蔵されている。閲覧エリア512には、複数の閲覧用テーブル5211、5212、……521Lが配置されており、客503がここに必要な数だけの図書515を持ち込んで、自由に閲覧できるようになっている。書棚エリア511と閲覧エリア512の間には、第2のゲート522が配置されている。第2のゲート522にも、2種類の無線タグ505、516から情報を受信するリーダ524、525が内蔵されている。なお、第1および第2のゲート513、522がそれぞれ比較的狭い間隔の関門となっている場合には、それぞれに2つずつ配置されているリーダ517、518、524、525の1つずつを省略することも可能である。
この図書館501では、書棚エリア511の各書棚5141、5142、……514Kに図書の比較的大きな分類が表示されているだけで、各図書515はその中で雑然と並べられている。たとえば、書棚5141が「旅行」という大分類の棚であるとすると、ここには図示しない上中下の3つの棚を利用して「国内旅行」、「海外旅行」、「旅行記」という区分けがされているのみである。各書棚5141、5142、……514Kには、図示しないが上中下の3つの棚にそれぞれ複数個の棚送受信部(図1の棚送受信部206参照。)が間隔を置いて配置されており、それぞれの位置には図書515の場所を示す「通し番号」が見やすい大きさで表示されている。
客503は、関連する書棚514に行って所望の図書515を目で直接探し出すことができる他、貸与された図書端末504を操作して、キーワード検索等で所望の図書515をリストアップし、これと共に表示された「通し番号」の場所でこれらの図書515を見つけることができる。また、各書棚5141、5142、……514Kから閲覧のために持ち出した図書515は、前記した「国内旅行」、「海外旅行」、「旅行記」というような区分けの場所に返すだけでよく、それらの場所で更に分類に沿った正確な位置に戻す必要がない。万一、全然違う書棚514に図書515を返した場合には、その場所の「通し番号」の近傍に配置された警告ランプが点灯して客503に注意を促すようになっている。図書館501の専用のスタッフが定期的にこれら間違って戻された図書515を正しい場所に戻して警告ランプを消灯させる。これよりも前に他の客503が間違って戻した図書515の閲覧を希望した場合でも、図書端末504を操作することでその場所を追跡することができる。したがって、客503が実際に背表紙を見ながら希望の図書515を探せるという開架式の書棚5141、5142、……514Kの利点を追求しなければ、閲覧のために持ち出した図書515は書棚5141、5142、……514Kのどの場所に返してもよいことになる。
このような図書館501で客動線調査システム500は、客503が書棚エリア511で書棚5141、5142、……514Kの間をどのように動き回ったかを客動線で調査することになる。客503が図書端末504を携行して第1のゲート513を通過すると、これにより客動線の開始位置と開始時間が判別する。書棚5141、5142、……514Kから所望の図書515を適宜の数だけ取り出して閲覧エリア512に持っていくとき、客503は第2のゲート522を通過する。このとき、リーダ524、525が、図書端末504の識別番号によって、その客503の所持している所定の数の図書515を1つのグループに纏めることになる。そこで、これらの図書515が各書棚5141、5142、……514Kから取り出されたことが検出された時刻(棚から消失した時刻)順にこれらの図書515の「通し番号」の位置を結んでいくことで、客動線が求められることになる。
図14は、図書端末と図書の登録処理の流れを表わしている。図書館501の図示しないコンピュータは第1のゲート513および各書棚5141、5142、……514Kの前記した棚送受信部を監視しており、第1のゲート513で図書端末504が検出されたか(ステップS601)と、書棚5141、5142、……514Kから図書515のいずれかが消失したか(ステップS602)と、一度消失した図書515が書棚5141、5142、……514Kに戻ったか(ステップS603)を監視している。
客503が図書端末配布機502から図書端末504の配布を受けてこれを携行して第1のゲート513を通過すると、第1のゲート513がこれを検出する(ステップS601:Y)。前記したコンピュータはその図書端末504の通過した時刻、すなわち書棚エリア511に入る時刻と、その図書端末504の識別情報を図示しない記憶媒体上に記憶する(ステップS604)。
一方、このコンピュータは書棚5141、5142、……514Kを前記した棚送受信部で定期的にスキャンしており、図書515のいずれかがこれらの棚送受信部から検出されなくなると、その図書515の消失を検出する(ステップS602:Y)。この場合、コンピュータはその図書515の識別情報と最終消失時刻および最後に存在した場所(「通し番号の数字」)を前記した記憶媒体に登録する(ステップS605)。最終消失時刻とは、図書515が存在しなくなったことが分かったもっとも早い時刻であってもよいし、その図書515の存在を最終的に確認した時刻であってもよい。なお、閲覧を終了した等の理由で図書515が書棚5141、5142、……514Kのいずれかに戻ると(ステップS603)、その図書515の識別情報と戻った時刻および場所(「通し番号の数字」)を記憶媒体に登録する(ステップS606)。
図15は、この第3の変形例における客動線の演算処理の流れを表わしたものである。客503は、書棚エリア511で書棚5141、5142、……514Kから図書515を適宜の数だけ取り出して閲覧のために閲覧エリア512に向かう途中で第2のゲート522を通過する。このとき、その客503が携行する図書端末504および携行した図書515がリーダ524、525によって検出される(ステップS621)。この段階で、前記したコンピュータは図書端末504および携行した図書515の識別情報を同一グループの情報として検出する(ステップS622)。そして、図14のステップS604で登録したその図書端末504の書棚エリア511に入室した時刻(第1のゲート513の通過時刻)と、グループ内の各図書515の消失に関する時刻情報と場所情報を前記した記憶媒体から読み出す(ステップS623)。この後、これらの時刻順に各場所を繋いで、客動線を作成することになる(ステップS624)。この客動線でスタート地点は第1のゲート513である。
この第3の変形例の客動線調査システム500では、閲覧エリア512で閲覧を終了した客503が複数の図書515を書棚5141、5142、……514Kに戻すときの客動線を調べることもでき、これらの書棚514の配置を返却時の視点で工夫することも可能になる。また、客503が間違って戻した図書515を正しい場所に戻す、図書館501のスタッフの作業も、同様に客動線を求めて、効率的な作業手順を考察することが可能である。
<本発明の第3の変形例の変形例>
図16は、第3の変形例の変形例におけるデータベース側の新規登録処理の様子を表わしたものである。図13に示した書籍エリア511の各書棚5141、5142、……514Kには、前記したように上中下の3つの棚にそれぞれ複数個の棚送受信部(図1の棚送受信部206参照。)が配置されており、各図書515に対するデータ取得時刻になると(図16ステップS701:Y)、これらの図書515の識別情報の取得が行われる(ステップS702)。そして、図示しないデータベースに未登録の図書515についての識別情報とそれらの位置情報を取得時刻と共に登録する(ステップS703)。このようにして、データベースには各図書が書棚5141、5142、……514Kの上中下の3つの棚のいずれかに戻されたとき、あるいは新しく持ち込まれたときのデータが登録されていく。
図17は、客が閲覧終了後の図書を返却する際の客動線の演算処理の様子を表わしたものである。たとえばある客503が閲覧エリア512で複数の図書515を閲覧した後、書棚エリア511に戻ってこれらを返却するものとする。図13に示した第2のゲート522をこの客503が通過すると、前記したコンピュータは図書端末504を検出する(ステップS721)。このとき、そのCPUは図書端末504の識別情報の検出と共にその検出時刻をコンピュータの所定の作業領域に記憶する(ステップS722)。このとき、識別情報の把握は必ずしも必要とされないが、第2のゲート522を奇数回通過したか遇数回通過したかによって、その客503が書棚エリア511に向かったか閲覧エリア512に向かったかを判断する材料となる。
CPUは図書端末504を検出したとき、客503が持っている図書515を同時に検出しそれらの識別情報を取得する。これらが返却時の1つのグループとなる。これらの図書515の識別情報は1つのグループの識別情報として作業領域に記憶される(ステップS723)。
この後、CPUは図16で説明したデータベースに図書515が新既登録されるたびに(ステップS724:Y)、識別情報の一致するものがあるかどうかをチェックして(ステップS725)、一致するものがあれば(Y)、その識別情報と取得時刻を作業領域に記憶する(ステップS726)。以上の処理はグループの残りが存在する限り繰り返される(ステップS727)。そのグループのすべての図書515について識別情報と取得時刻が作業領域に記憶されたら(N)、その記憶内容の読み出しが行われる(ステップS728)。そして、取得時刻の早い順に出現した位置(場所)を繋いで、客動線が作成される(ステップS729)。
なお、ステップS727でグループの残りを検出する代わりに、その客503が第1のゲート513を通過することで書棚エリア511における図書515の返却処理が終了したと判別するようにしてもよい。この場合には、返却しなかった図書を貸し出しの対象として把握したり、無断持ち出しを検出することができる。
以上、実施例および各変形例では店舗や図書館における客動線を説明したが、介護施設等の他の施設についても、各種備品の持ち出しとの関係で客動線を演算することができる。したがって、これらについても本発明を同様に適用することができる。
また、実施例および各変形例では客動線をディスプレイ225に表示する場合を説明したが、図示しないプリンタを用いて客動線を印刷したり、あるいは図示しない通信手段を用いて客動線を表わした情報を他の箇所に送信してもよい。図示しない記録媒体記録手段を使用して、磁気ディスク、フロッピディスク、光ディスク等の記録媒体に客動線を記録することも可能である。
更に、第3の変形例では図書端末504という特別の表示端末を客503に貸与したが、図書515の検索を携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistant)等の他の通信端末を使用して同様の処理を行うようにしてもよい。また、客503には無線タグの組み込まれたチケットを配布して、これを利用して図書515のグループ化を行うようにしてもよい。この場合、図書515の検索は、書棚エリア511や閲覧エリア512に適宜配置したパーソナルコンピュータ等の情報端末を使用するようにしてもよい。また、第3の変形例では「通し番号」の位置で所望の図書515の所在を確認するようにしたが、図書端末504や携帯電話機のような携行できる通信端末の場合には、それらの表示部に所望の図書515の所在を矢印等で表示するようにして、グラフィカルに場所に行き着くような工夫を行うことも可能である。