JP2005213387A - 熱硬化性樹脂の硬化方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 熱硬化性樹脂の硬化特性を保ちながら、硬化時における揮発性有機化学物質(VOC)の発生を抑制できる熱硬化性樹脂の硬化方法に関する。
【解決手段】 熱硬化性樹脂100重量部に対して、亜リン酸エステルを0.01〜10重量部を添加し硬化することを特徴とする熱硬化性樹脂の硬化方法。熱硬化性樹脂が、不飽和ポリエステル樹脂又はビニルエステル樹脂である上述の熱硬化性樹脂の硬化方法。亜リン酸エステルからなる、熱硬化性樹脂の硬化時における揮発性有機化学物質の発生抑制剤。
【選択図】 なし

Description

本発明は、熱硬化性樹脂の硬化特性を保ちながら、硬化時における揮発性有機化学物質(以下、VOCと略す場合もある。)の発生を抑制できる熱硬化性樹脂の硬化方法に関する。
不飽和ポリエステル樹脂やビニルエステル樹脂などの熱硬化性樹脂は、関連機器、浄化槽、自動車部品、電気部品から外装材など広範囲にわたって使用されている。
熱硬化性樹脂には、スチレン、メタクリル酸メチルなどのビニル単量体、(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマ−や不飽和ポリエステルオリゴマーなどの不飽和結合を有する化合物が含まれているため、光や酸素などにより経時的に劣化が進み易い。また、これを硬化させる際、揮発性有機化学物質(VOC)が発生し、硬化物自体も着色するという問題があった。
近年ではシックハウス症候群などの点から建築関連材料に含まれるVOCの人体への影響問題が取り上げられ、行政府からも建築材料へのVOCに対する指針が出されるようになってきた。そのため、建築材料として用いられる熱硬化性樹脂において、硬化時に発生するホルムアルデヒドなどのVOCを抑制することが必要になってきている。
熱硬化性樹脂にはヒドロキノン、p−ベンゾキノン、p−t−ブチルカテコールヒドロキノン、p−メトキシフェノールなどの重合禁止剤やジ−t−ブチルフェノール、t−ブチルクレゾールなどの酸化安定剤が添加されている。しかし、重合禁止剤や酸化安定剤を添加しても、保存時における重合反応の抑制や硬化物の着色防止には効果が得られるものの、硬化時におけるVOC発生の抑制効果はほとんどなかった。
また、硬化物の着色を防止する目的では、熱硬化性樹脂に併用してバナジウム化合物とアルキルリン酸エステルを添加する技術がある(特許文献1参照)。しかし、特許文献1に開示された方法では、硬化時におけるホルムアルデヒドなどのVOCの発生を抑制する効果は十分ではない。また、バナジウム化合物を使用する関係上、硬化特性を維持できず反応が暴走するなど、安全性の点で問題があった。
他に、VOC発生の抑制方法としては硬化工程を不活性ガスの存在下あるいは減圧下で行う方法があるが、抑制効果は不十分であった。
特開平05−170840号公報(3〜4頁)
本発明の目的は、熱硬化性樹脂の硬化特性を保ちながら、硬化時における揮発性有機化学物質(VOC)の発生を抑制できる熱硬化性樹脂の硬化方法を提供することにある。
本発明者らは、前述した問題点に鑑み、鋭意検討した結果、熱硬化性樹脂に亜リン酸エステルの添加して硬化することで、ホルムアルデヒドなどのVOCの発生を抑制できることを見出して本発明を完成するに至った。
即ち、第1の発明は、熱硬化性樹脂100重量部に対して、亜リン酸エステルを0.01〜10重量部を添加して硬化することを特徴とする熱硬化性樹脂の硬化方法である。
第2の発明は、熱硬化性樹脂が、不飽和ポリエステル樹脂又はビニルエステル樹脂である第1の発明の熱硬化性樹脂の硬化方法である。
第3の発明は、亜リン酸エステルからなる、熱硬化性樹脂の硬化時における揮発性有機化学物質の発生抑制剤である。
第1又は第2の発明によると、硬化特性を保ちながら、硬化時におけるホルムアルデヒドなどのVOCの発生が抑制できる。その結果、硬化物中に残留するVOC量が減少するので、建築関連材料に使用してもシックハウス症候群などの問題が低減される。
第3の発明によると、硬化特性を維持しながら、硬化時におけるホルムアルデヒドなどのVOCの発生が抑制できる添加剤が提供される。
本発明は、熱硬化性樹脂に対して亜リン酸エステルを添加し、硬化することを特徴とする熱硬化性樹脂の硬化方法である。この際、亜リン酸エステルは、硬化時におけるVOCの発生抑制剤として働く。具体的には、硬化時に、ホルムアルデヒドや、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒドなどのアルデヒド類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、エポキシ化合物、カルボン酸化合物、これらの重合物などのVOCの発生を抑制できる。
亜リン酸エステルとしては具体的には、例えばトリフェニルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、トリデシルフェニルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタドデシルホスファイト、トリノニルフェニルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリ(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトなどが挙げられ、これらの1種または2種以上の混合物として使用することができる。
本発明において、亜リン酸エステルの熱硬化性樹脂に対する添加量は、熱硬化性樹脂100重量部に対して0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重部の範囲である。0.01重量部未満ではVOCの発生の抑制効果が不十分であり、10重量部を超えると熱硬化性樹脂の硬化特性に影響を与えるおそれがある。
本発明において、熱硬化性樹脂の硬化時には、ラジカル重合開始剤を硬化剤として添加する。ラジカル重合開始剤としては、ジアシルパーオキシサイド、パーオキシエステル、ケトンパーオキシサイド、パーオキシケタール、ハイロドパーオキシサイド、ジアルキルパーオキシサイド、パーオキシジカーボネートなどの有機過酸化物、アゾ化合物が挙げられる。
好適なラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、t−ブチルペルオキシベンゾエート、過酸化ラウロイル、ジイソプロピルジカーボネート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシネオデカノエート、t−ペルオキシジイソブチレート、アセチルアセトンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパ−オキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、1,1−ビス(t−ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ジクミルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリルなどが挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いることができる。
硬化剤の添加量は、熱硬化性樹脂100重量部に対して、通常0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部の範囲である。0.01重量部未満では硬化が十分に進行できず、10重量部を超えると均一に硬化することが難くなるおそれがある。
本発明において、熱硬化性樹脂は、分子中にラジカル重合可能な不飽和基を2個以上有する成分及び、ラジカル重合性単量体を必須成分として含有し、硬化により三次元構造となる樹脂である。
熱硬化性樹脂は、例えば、これに硬化剤を添加しロールやニーダーなどの混練機を用いて混合し、所望の形状の金属製、ガラス製、プラスチック製などの型中に入れて加熱処理し硬化・成型される。本発明を用いて、混合する際に亜リン酸エステルを添加すると、硬化時のVOCの発生を抑制でき成形物を得ることができる。さらに熱硬化性樹脂を圧縮成形、トランスファー成形、射出圧縮成形などの各種機械成形法を用いることにより硬化・成形をする際、また、熱硬化性樹脂をレジコン成形、波板や平版の連続成形、フィラメントワインディング成形、SMCやBMCなどの公知の成形方法により硬化・成型する際も本発明を用いると同様の効果が得られる。
熱硬化性樹脂において、公知の熱硬化性樹脂のいずれも本発明の対象となるが、それらの中では、不飽和ポリエステル樹脂とビニルエステル樹脂が建築基材に汎用され、シックハウス症候群の原因となっているので、発明の実施に適した対象して挙げられる。
不飽和ポリエステル樹脂は、不飽和二塩基酸と多価アルコ−ル、さらに必要に応じて飽和二塩基酸を特定の割合で加熱脱水縮合反応させることによって得られる不飽和ポリエステル樹脂成分をラジカル重合性単量体に溶解させた液状樹脂である。
不飽和ポリエステル樹脂成分の原料である不飽和二塩基酸としては、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸などが挙げられ、これらの1種または2種以上の混合物として使用される。多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ビスフェノールA、水添ビスフェノールAなどが挙げられ、これらの1種または2種以上の混合物として使用される。
飽和二塩基酸としては、無水フタル酸、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、コハク酸、アジピン酸などが挙げられ、これらの1種または2種以上の混合物として使用される。
また、ビニルエステル樹脂は、エポキシアクリレート樹脂成分や不飽和エポキシ樹脂成分など、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシポリマーに(メタ)アクリル酸や不飽和二塩基酸のモノエステルを開環付加反応させて得られた成分をラジカル重合性単量体に溶解させた液状樹脂である。エポキシポリマー成分としては、公知のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。
不飽和ポリエステル樹脂及びビニルエステル樹脂にはラジカル重合性単量体が含まれている。含まれる単量体は、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロロスチレン、ジビニルベンゼンなどのスチレン誘導体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロイルモノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレートなどのメタクリル基またはアクリル基を有する単量体;ジアリルフタレートなどのアリルエステルが挙げられ、これらの1種または2種以上の混合物として使用される。
不飽和ポリエステル樹脂に含まれるラジカル重合性単量体の量は通常20〜70重量%である。また、ビニルエステル樹脂に含まれるラジカル重合性単量体の量は通常10〜70重量%である。ラジカル重合性単量体の量が少ないと不飽和ポリエステル樹脂又はビニルエステル樹脂は粘度が高くなるので作業性が低下する傾向にあり、ラジカル重合性単量体の量が多いと不飽和ポリエステル樹脂又はビニルエステル樹脂の硬化物の機械的特性が低下する傾向がある。
特に、ラジカル重合性単量体としてスチレン、メチルメタクリレート、ジアリルフタレートを含む不飽和ポリエステル樹脂及びビニルエステル樹脂は、硬化時にVOCが発生し易いことから、本発明の熱硬化性樹脂の硬化方法の対象として好適である。
不飽和ポリエステル樹脂及びビニルエステル樹脂は市販されており、例えば、不飽和ポリエステル樹脂としては、エポラックG−110A(商品名、日本触媒(株)製、オルソフタル酸系不飽和ポリエステル)、ポリマール4382(商品名、武田薬品工業(株)製、オルソフタル酸系不飽和ポリエステル)、ポリマール6691(商品名、武田薬品(株)製、イソフタル酸系不飽和ポリエステル)、リゴラック(商品名、昭和高分子(株)製)、ポリライト(商品名、大日本インキ化学工業(株)製)、ユピカ(商品名、日本ユピカ(株)製)が挙げられる。また、ビニルエステル樹脂としては、リポキシR−802(商品名、昭和高分子(株)製、ビスフェノールA型ビニルエステル樹脂)、リポキシH−600(商品名、昭和高分子(株)製ノボラック型ビニルエステル樹脂)、デラケーン((商品名、ダウ・ケミカル日本(株)製エポキシビニルエステル樹脂)、ネオポール(商品名、日本ユピカ(株)製エポキシアクリレート樹脂)が挙げられる。
また、本発明は、熱硬化性樹脂に、硬化促進剤、酸化防止剤、重合禁止剤や充填剤などが含まれていても適用することができる。
熱硬化性樹脂に含まれる硬化促進剤は、例えば、ジメチルアニリン、ジエチルアニリンなどの芳香族第三級アミンや、ナフテン酸コバルトやナフテン酸銅などの金属石鹸が挙げられ、ラジカル重合開始剤の種類、使用量によっても異なるが、熱硬化性樹脂に対して、通常0.01〜5重量%の範囲で含有される。ただし、硬化促進剤として一般に使用されるバナジウム化合物は硬化時の温度制御が難しく、作業時の安全性の点に問題があるのでこれを含む熱硬化性樹脂は本発明の対象には適さない。
熱硬化性樹脂に含まれる酸化防止剤は、例えば2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾ−ル、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ブチル化ヒドロキシアニソールなどのモノフェノール系化合物;2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)などのビスフェノール系化合物;ジラウリル3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル3,3’−チオジプロピオネート、テトラブチルスズなどのイオウ系化合物が挙げられ、これらは1種または2種以上の混合物で使用される。酸化防止剤の添加量は、熱硬化性樹脂において、通常10〜20000ppmの範囲にある。
熱硬化性樹脂に含まれる重合禁止剤は、例えばメトキシフェノール、ヒドロキノン、p−ベンゾキノン、t−ブチルカテコールなどの化合物が挙げられ、これらは1種または2種以上の混合物で使用される。重合禁止剤の添加量は、熱硬化性樹脂において、通常10〜20000ppmの範囲にある。
熱硬化性樹脂に含まれる充填剤は、例えば炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、ガラス粉、タルクなどが挙げられ、これらは1種または2種以上の混合物で使用される。その使用量は熱硬化性樹脂100重量部に対して20〜100重量部の範囲にある。
さらに、熱硬化性樹脂は、必要に応じて他の添加剤が含まれていても適用できる。
このような他の添加剤としては、ジイソシアネート類、酸化マグネシウムなどの増粘剤;有機および無機の染顔料からなる着色剤;ガラス繊維、炭素繊維などの補強剤;ステアリン酸亜鉛などの離型剤;ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、架橋ポリスチレン、飽和ポリエステル、酢酸ビニル・スチレンブロックコポリマ−、粉末状の不飽和ポリエステル樹脂硬化物など従来公知の低収縮剤;紫外線吸収剤;着色剤;離型剤;界面活性剤;抗菌剤などが挙げられる。
本発明において、熱硬化性樹脂の硬化手順は、熱硬化性樹脂に亜リン酸エステルを添加して混合物を作製し、次に硬化剤であるラジカル重合開始剤を添加して、これを加熱して熱硬化することが好ましい。ここで、あらかじめ、保存用に作製した熱硬化性樹脂と亜リン酸エステルとの混合物に硬化剤を添加してもかまわない。
また、硬化手順において、熱硬化性樹脂に亜リン酸エステルと硬化剤を同時に添加してもかまわない。この場合は、硬化剤に亜リン酸エステルを加えた混合物を予め作製し、これを使用してもよい。
なお、活性エネルギー線の照射により光硬化することもできる。
硬化の条件としては、空気中ないし不活性ガス雰囲気下で、−10〜180℃、好ましくは20〜150℃の温度範囲で、1分〜10時間、好ましくは1分〜1時間程度の硬化時間が好ましい。
特に、熱硬化性樹脂を室温以下の低温度域で硬化するときは、VOCが大気に放出されにくく、硬化物に残留する。本発明は、VOCの発生を抑制できるので、熱硬化性樹脂を低温度領域での硬化する際に適している。
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
なお表中の略記号は次の通りである。
G−110Al:日本触媒(株)製オルソフタル酸系不飽和ポリエステル、商品名:エポラックG−110A
4382:武田薬品工業(株)製オルソフタル酸系不飽和ポリエステル、商品名:ポリマール4382
6691:武田薬品(株)製イソフタル酸系不飽和ポリエステル、商品名:ポリマール6691
R−802:昭和高分子(株)製ビスフェノールA型ビニルエステル樹脂、商品名:リポキシR−802
H−600:昭和高分子(株)製ノボラック型ビニルエステル樹脂、商品名:リポキシH−600
St:スチレン、
MMA:メチルメタクリレート、
BPO:ベンゾイルパーオキサイド、
DMA:ジメチルアニリン、
CaCO3:炭酸カルシウム、
TPP:トリフェニルホスファイト、
TEP:トリエチルホスファイト、
TP:リン酸トリエチル
1)硬化特性の測定方法
JIS−K−6901を準用する18mm試験管法で得られた硬化発熱曲線より各特性値を次の基準で求めた。
GT:油浴に浸漬後、浴温からさらに5℃上昇するまでの時間(分)。
CT:油浴に浸漬後、最高温度に到達するまでの時間(分)。
PET:硬化時の最高発熱温度(℃)。
2)揮発性物質の測定法(JIS−K−0303の準用)
実施例で硬化した後、室温で1日放置した硬化物を乳鉢にて粉砕した。これをアセトニトリル溶液(2,4−ジニトロヒドラジン(2,4−DNPH)を3.0g/リットル含む。VOCは2,4−DNPHと反応し、ヒドラゾン化合物を形成し、UV検出器にて検出される。)20mlに硬化物1.2gを入れ、40℃、4日間をかけて抽出を行なった。次に、液体クロマトグラフィーによりVOCであるホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトンおよびベンズアルデヒドを定量した。
液体クロマトグラフィーの条件は、
カラム:TSK−GEL120A(4.6mm×250mm)、
溶離液:アセトニトリル/水(50/50、体積/体積)混合溶媒、
検出器:UV検出器(360nm)である。
また、硬化前の熱硬化性樹脂に含まれる各VOC量の測定は、熱硬化性樹脂をそのまま前述のアセトニトリル溶液に入れ、VOCを抽出した後、液体クロマトグラフィーにより同様に定量した。
実施例1
表1に示される混合物を所定量18mm試験管中に入れ、恒温槽中、60℃、24時間の条件で硬化させて硬化物を得た。
その際、硬化特性を測定し、GT(分)、CT(分)、PET(℃)を求めた。また硬化前の熱硬化性樹脂および硬化後の硬化物の各VOC量を測定した。それらの結果を表2に示す。
Figure 2005213387
Figure 2005213387
実施例2〜10
表1に示される混合物を実施例1と同様に硬化させて硬化物を得た。
その際、硬化特性を測定し、GT(分)、CT(分)、PET(℃)を求めた。また硬化前の熱硬化性樹脂および硬化後の硬化物の各VOC量を測定した。それらの結果を表2に示す。
比較例1〜8
表3に示される亜リン酸エステルを含まない混合物を実施例1と同様に硬化させて硬化物を得た。
その際、硬化特性を測定し、GT(分)、CT(分)、PET(℃)を求めた。また硬化前の熱硬化性樹脂および硬化物の各VOCを測定した。それらの結果を表4に示す。
Figure 2005213387
Figure 2005213387
比較例9
リン化合物としてTPPの代わりにTP(リン酸トリエチル)を用いた以外、実施例6と同様に硬化させて硬化物を得た。
その際、硬化特性を測定し、GT(分)、CT(分)、PET(℃)を求めた。また硬化前の熱硬化性樹脂および硬化物の各VOCを測定した。それらの結果を表4に示す。
実施例1と比較例1とを比較すると(表2と表4の比較)、実施例1では硬化前の各VOC量が硬化前に比べて減少しVOCの発生が抑制されているが、比較例1では硬化後において、ベンズアルデヒドを除き各VOC量が増加している。また、実施例1と比較例1において、硬化特性はほとんど同一である。
したがって、この比較より、本発明は、硬化特性を維持しながら、硬化時においてホルムアルデヒドなどのVOCの発生を抑制できる方法であることが確認できた。
さらに実施例2〜8と比較例2〜8とを比較した場合でも同様な本発明の効果が確認できた。
また、実施例9、10のように充填剤を含有させた場合にも、本発明によれば、硬化時においてホルムアルデヒドなどのVOCの発生を抑制できることが確認できた。
また実施例6(TPP添加)、比較例9(アルキルリン酸エステル添加)とを比較すると、本発明の亜リン酸エステルを添加した場合(実施例6)、アルキルリン酸エステルを添加した場合よりも優れた効果があることが明らかとなった。

Claims (3)

  1. 熱硬化性樹脂100重量部に対して、亜リン酸エステルを0.01〜10重量部を添加して硬化することを特徴とする熱硬化性樹脂の硬化方法。
  2. 熱硬化性樹脂が、不飽和ポリエステル樹脂又はビニルエステル樹脂である請求項1に記載の熱硬化性樹脂の硬化方法。
  3. 亜リン酸エステルからなる、熱硬化性樹脂の硬化時における揮発性有機化学物質の発生抑制剤。
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