JP2005209669A - 希土類磁石及びそれを用いた磁気回路 - Google Patents
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Abstract
【課題】
高残留磁束密度及び高保磁力を示し、高温で十分に使用可能な希土類磁石及びそれを用いた磁気回路を提供すること。
【解決手段】
磁石において、少なくとも一種類の希土類元素と、コバルト又は鉄の少なくとも一方と、強磁性フッ素化合物と、を有することを要旨とする。ここで強磁性フッ素化合物とは、希土類元素,鉄又はコバルトとの合金であって、室温(約20℃)で強磁性を示す化合物をいう。このフッ素の存在は、結晶磁気異方性の増加により磁気変態温度を変化させ、結果として磁化,保磁力,異方性磁界の温度依存性の改善をもたらす。
【選択図】図2
高残留磁束密度及び高保磁力を示し、高温で十分に使用可能な希土類磁石及びそれを用いた磁気回路を提供すること。
【解決手段】
磁石において、少なくとも一種類の希土類元素と、コバルト又は鉄の少なくとも一方と、強磁性フッ素化合物と、を有することを要旨とする。ここで強磁性フッ素化合物とは、希土類元素,鉄又はコバルトとの合金であって、室温(約20℃)で強磁性を示す化合物をいう。このフッ素の存在は、結晶磁気異方性の増加により磁気変態温度を変化させ、結果として磁化,保磁力,異方性磁界の温度依存性の改善をもたらす。
【選択図】図2
Description
本発明は、希土類磁石及びそれを用いた磁気回路に関する。
磁石はエアコン圧縮機用モータやボイスコイルモータ等に用いられており、その中でも希土類元素を含む磁石(以下、「希土類磁石」という)は、高い残留磁束密度,高い保磁力を示すため有用であると考えられている。
一方、磁石には高温での使用も要求されつつある。例えば磁石は自動車駆動モータに磁石を適用することが望まれており、この場合エンジン等近傍に磁石が配置され、高温(約150℃〜200℃)となることが考えられる。このような条件の下でも十分な高い保磁力,残留磁束密度を示す必要がある。なお、半導体装置に使用される場合には300℃程度の高温に耐えられる使用が望まれる。なお、高温での使用の実現、即ち高いキュリー温度や高い保磁力を実現するために、希土類磁石に軽金属であるホウ素や窒素等を構成元素として加える場合がある。ホウ素を含有した希土類磁石の例としてNd2Fe14B を含有する希土類磁石が下記特許文献1に、窒素を含有した希土類磁石の例としてSm2Fe17Nを含有する希土類磁石が下記特許文献2に夫々に記載されている。
しかしながら、上記特許文献1に記載のNd2Fe14B を用いた磁石であってもまだキュリー温度は十分に高くなく、室温(約20℃)での保磁力の値も十分ではない。しかも、保磁力の温度依存性も大きく、高温での使用において課題を残す。また、上記特許文献2に記載のSm2Fe17N を用いた磁石でもやはり高温での使用において課題を残す。
一方、これら磁石の保磁力を高めるため、更に他の添加元素、例えばDy,Tb,Prを加えて保磁力を増加させ、高温での使用に耐えるよう改善することも考えられるが、
Dy,Tb,Pr等の添加元素は高価であり、また、添加量が多いと残留磁界密度を低下させてしまうため、保磁力の増加と残留磁界密度のバランスとはトレードオフの関係になってしまっている。
Dy,Tb,Pr等の添加元素は高価であり、また、添加量が多いと残留磁界密度を低下させてしまうため、保磁力の増加と残留磁界密度のバランスとはトレードオフの関係になってしまっている。
以上、本発明の目的は、高残留磁束密度及び高保磁力を示し、高温で十分に使用可能な希土類磁石及びそれを用いた磁気回路を提供することにある。
本発明は、上記した目的を達成するための手段として、主として以下の代表的な手段を採用する。
即ち、第一の手段として、希土類磁石において、少なくとも一種類の希土類元素と、コバルト又は鉄の少なくとも一方と、強磁性フッ素化合物と、を有することを要旨とする。ここで強磁性フッ素化合物とは、希土類元素,鉄又はコバルトとの合金であって、室温
(約20℃)で強磁性を示す化合物をいう。このフッ素の存在は、結晶磁気異方性の増加により磁気変態温度を変化させ、結果として磁化,保磁力,異方性磁界の温度依存性の改善をもたらすと考えられる。
(約20℃)で強磁性を示す化合物をいう。このフッ素の存在は、結晶磁気異方性の増加により磁気変態温度を変化させ、結果として磁化,保磁力,異方性磁界の温度依存性の改善をもたらすと考えられる。
また、第2の手段として、ロータシャフトと、このロータシャフトに固定されたリング磁石と、を有する回転子であって、リング磁石は、少なくとも一種類の希土類元素と、コバルト又は鉄の少なくとも一方と、強磁性フッ素化合物と、を有することを要旨とする。
高温での使用に耐えられる希土類磁石及びそれを用いた磁気回路を提供することが可能となる。
以下、本発明の最良の形態について図面を用いて説明するが、上記発明の効果を達成する限りにおいて本発明が実施形態,実施例に限定されることはない。
〔実施形態1〕
本発明の第一の実施形態について説明する。本実施形態は磁石についての実施形態である。
〔実施形態1〕
本発明の第一の実施形態について説明する。本実施形態は磁石についての実施形態である。
本実施形態における磁石は、少なくとも一種類の希土類元素と、コバルト又は鉄の少なくとも一方と、強磁性フッ素化合物と、を有して構成される。本実施形態の磁石は、強磁性フッ素化合物を含有する、即ち、フッ素が希土類元素,鉄又はコバルトと合金を形成して強磁性フッ素化合物となっているため、結晶磁気異方性を増加させ、磁気変態温度を改善させることができる。より詳細に説明すると、フッ素原子が希土類元素,鉄又はコバルトの原子位置に置換若しくは原子間に侵入しているため、結晶格子は原子半径の差による歪みをもつこととなり、バンド構造が変わり、局所的な磁気モーメントの増加となる。この結果、長周期(単位結晶格子一個以上)の平均の磁気異方性(或いは結晶磁気異方性)が増加し、磁化,保持力,磁気異方性,温度特性を改善できるのである。なお、フッ素原子は一種類の位置ではなく、複数の原子位置に配置され、それぞれの原子位置はそれぞれバンド構造へ異なった影響を与えるが、それぞれ磁気モーメントの増加に寄与すると考えられる。
なお、強磁性フッ素化合物は、磁石中に存在する結晶格子中に歪みを生じさせることで性能を向上させるため、相分離があったとしても、主相として存在させることでより顕著な効果を得ることができる。なお主相とは、強磁性を示す相であって、磁石における残留磁束密度を定めている相をいう。
また、磁石に含まれる希土類元素としては元素番号57から71の希土類元素のいずれかであることが望ましい。
また、磁石に含まれるフッ素は、1原子%以上65原子%以下であることが望ましい。これは、1原子%以上であれば保磁力が100kA/m以上となるため硬質磁性材としての応用が可能であり、フッ素濃度が66原子%以上ではFeF2 が主相の一部となり残留磁束密度が低くなり、格子歪の効果が小さくなってしまうからである。なお、フッ素が4原子%以上であればいずれの場合も安定的に800kA/m以上が実現できるため、3原子%〜65原子%とすることも望ましい。
また、磁石の上記要素以外に加えることが可能な構成要素として、本形態の磁石における性能に大きく影響を及ぼさない範囲で他の要素の添加が可能であり、例えばホウ素(B)であれば3原子%以下、炭素(C)であれば1原子%以下、珪素(Si)であれば1原子%以下、アルミニウム(Al)であれば1原子%以下、ニオビウム(Nb)であれば1原子%以下、ディスプロシウム(Dy)であれば3原子%以下、テルビウム(Tb)であれば3原子以下、の範囲で含有可能である。
次に、本実施形態における希土類磁石の製造方法について説明する。
通常フッ素化合物を磁石材料として用いる場合、このフッ素化合物を強磁性フッ素化合物として存在させ、磁気特性を向上させることは極めて困難である。フッ素化合物を用いた例としてはFeF2やREF3(REは希土類元素)が知られているが、これは室温において強磁性を示さず、磁石の磁気特性向上に寄与させることは困難である。なお鉄フッ素2元系では相分離が生じてしまい、フッ素を希土類元素,鉄又はコバルトの原子と置換若しくは侵入させることが困難である。また、希土類元素,鉄又はコバルト、及びフッ素との3元素からなる場合であっても、高温では液相となって溶け合うものの、通常に冷却したのでは冷却過程で液層から固相が晶出する際、2相に相分離を起こしてしまう。このような分離は上述の結晶格子において異方性の歪の発生に寄与せず、磁気特性の向上に殆ど寄与することができない。つまり本実施形態に係る磁石には強磁性のフッ素化合物以外に、非磁性のフッ素化合物が混合することも可能であるが、磁気特性に与える影響は少ない。例えば希土類フッ化物やフッ化鉄が存在する場合であっても、強磁性ではないものは高温での使用可能性となるような性質を得ることに寄与するものではないのである。
そこで、本実施形態では相分離を起こさず、フッ素を希土類元素,鉄又はコバルトの原子に置換若しくは侵入させることが可能な製造方法を採用することによって本実施形態の希土類磁石を実現する。この製造方法の例としては種々の工夫が必要であるが、ロール法,スパッタリング法,真空蒸着法,希土類元素と鉄の2元合金にフッ素を注入する方法等の適用が考えられる。これら方法については後述の各実施例にて開示する。
本発明の第一の実施例に係る希土類磁石について説明する。
まず本実施例の希土類磁石の製造方法について図1に示すロール装置1を用いて説明する。なお図1はロール装置を側面から見た概略図である。
NdF3 化合物(粒径約100μm) と鉄の粉体(10〜1000μm) を1:8の比で10g混練し、ロール装置1の溶解室101に入れた。溶解室101を真空に引いた後、水素5%,アルゴン95%のガスを0.5atmになるよう導入し、低圧の還元雰囲気とした。その後、混練された原料102を溶解室101において1800℃で均一に溶解した。溶解はアーク帽103によるアーク放電によって行った。なお、溶解室101は穴が形成されたノズル部104を有しており、またロール105を有するロール室106と開閉板107によって仕切られている。そして、ロール室106の圧力を溶解室101の圧力よりも低くし、開閉板107を開き、30℃,3000rpm の速度で回転するロール105の表面に噴射させた。なおロール室106は、水素1%の還元雰囲気で、圧力は10-2
Torrであった。
Torrであった。
この結果、強磁性フッ素化合物の濃度が7原子%、結晶粒径が10nm〜1000nmの粉体又は扁平体の材料を得ることができた。なおこの方法において、冷却速度は概ね
106 ℃/秒であった。本実施例では、還元雰囲気において希土類元素,鉄,コバルト,フッ素系合金を溶解及び急冷する方法を採用することで、フッ素原子が希土類元素,鉄又はコバルトの原子と置換しやすくする又は侵入しやすくさせることができた。
106 ℃/秒であった。本実施例では、還元雰囲気において希土類元素,鉄,コバルト,フッ素系合金を溶解及び急冷する方法を採用することで、フッ素原子が希土類元素,鉄又はコバルトの原子と置換しやすくする又は侵入しやすくさせることができた。
この粉体を2000kA/mの磁界で着磁後保磁力を測定した結果、粉の組成が
Nd2Fe14F の組成であるときに室温で880kA/mの保磁力を有していることを確認した。
Nd2Fe14F の組成であるときに室温で880kA/mの保磁力を有していることを確認した。
なお本実施例に係る単ロール法の還元雰囲気は1%の水素ガスを用いて行ったが、希土類元素を含む原料の酸化防止という理由により還元雰囲気のガスは1%以上であれば特に制限はない。但し、水素の場合、粉末の粒径制御,水素化物成長抑制,結晶粒制御,フッ素化合物への水素侵入の理由により、還元雰囲気のガスの濃度は50%以下であることが望ましい。また、還元雰囲気のガスは水素ガスに限られず、アルゴン等の希ガスも採用可能である。
更に、本実施例における急冷とは、フッ素化合物が主相と分離を起こさない程度に行う急冷を指し、概ね104〜108℃/秒程度の冷却速度が望ましく、溶解の温度は概ね
1600℃〜1800℃位が望ましい。なお、冷却速度は速いほど高保磁力を保つことができる、例えば104℃/秒では保磁力は300kA/mで、108℃/秒では保磁力は
1150kA/mで、1010℃/秒では保磁力は1280kA/mであった。
1600℃〜1800℃位が望ましい。なお、冷却速度は速いほど高保磁力を保つことができる、例えば104℃/秒では保磁力は300kA/mで、108℃/秒では保磁力は
1150kA/mで、1010℃/秒では保磁力は1280kA/mであった。
また、本実施例では、急冷する工程に単ロール法を用いているが、単ロール法のほか、双ロール法をも用いることも可能であり、各条件についても単ロール法とほぼ同様である。
なお、本実施例のNd2Fe14F 以外の合金系についても同様であり、これらについては下記表1に示す。なお、RE2Fe14(RE:希土類元素)系以外の系では、RE2Fe17F,FE2Fe17F2の合金において高い保持力を得ることができるため有用である。
本実施形態ではこの方法の採用により、高温での使用を可能とする希土類磁石の提供を可能とすることができた。
なお、上記表1に記載されるように高い保磁力を示す磁石においては、これら組成における各元素の比は概ね、希土類元素が9〜15原子%、コバルト又は鉄が70〜90原子%、フッ素が1〜15原子%の割合となっている。即ち、高保磁力を示す磁石の割合はこの程度が望ましい。
(実験例1)
次に、フッ素の濃度と保磁力との関係の影響について、図2を用いて説明する。図2のグラフは粉末状態のNd2Fe14F の組成を有する種々の材料に対して行われた実験の結果であり、横軸は材料に含有されるフッ素の濃度(原子%)を示し、縦軸は保磁力(kA/m)を示している。なお図2のグラフは粉末状態の材料に対して行われた結果であるが、磁石に成型された場合であっても、物理的性質については変化せず、同様な特性を得ることができると推定できる。なおフッ素の濃度が異なる夫々の材料は、上記単ロール法によって製造されたものであり、材料を混練した比以外についてはいずれもほぼ同じである。
(実験例1)
次に、フッ素の濃度と保磁力との関係の影響について、図2を用いて説明する。図2のグラフは粉末状態のNd2Fe14F の組成を有する種々の材料に対して行われた実験の結果であり、横軸は材料に含有されるフッ素の濃度(原子%)を示し、縦軸は保磁力(kA/m)を示している。なお図2のグラフは粉末状態の材料に対して行われた結果であるが、磁石に成型された場合であっても、物理的性質については変化せず、同様な特性を得ることができると推定できる。なおフッ素の濃度が異なる夫々の材料は、上記単ロール法によって製造されたものであり、材料を混練した比以外についてはいずれもほぼ同じである。
図2において、フッ素の濃度が1原子%未満では保磁力が100kA/mとなり、硬質磁性材としての応用は困難であるが、1原子%以上であれば保磁力が100kA/m以上となるため硬質磁性材としての応用が可能の範囲になることがわかる。なお1原子%以上である場合、粉末XRDによる測定でフッ素によるパターンの変化が認められた。つまりフッ素による局所的格子歪みはフッ素濃度1原子%以上の組成範囲で生じていると考えられる。また一方、フッ素の濃度が66原子%以上では、FeF2 が主相の一部となり残留磁束密度が低くなってしまい格子歪の効果が小さくなってしまう。従って、フッ素の濃度は磁石に対して1原子%以上65原子%含有されていることが望ましい。なお、フッ素が4原子%以上であればいずれの場合も安定的に800kA/m以上が実現できるため、3原子%〜65原子%とすることも望ましい。
(実験例2)
次に、この粉末の温度依存性について図3を用いて説明する。
(実験例2)
次に、この粉末の温度依存性について図3を用いて説明する。
図3の横軸は温度(℃)を示し、縦軸は保磁力(kA/m)を示す。用いた材料は図2において用いた材料のうち、フッ素が3原子%含有されたものを用いた。なおこの材料の室温(20℃)での保磁力は900kA/mである。図3で示されるとおり、この材料に係る粉末の保磁力は温度上昇とともに単調に減少し、500℃においてほぼ0となる。この傾きである保磁力の温度係数は20℃のときの保持力の値を100%としたとき、
−0.2〜−0.3%/℃であった。
−0.2〜−0.3%/℃であった。
なお本実験例では、フッ素含有量が3原子%における磁石について説明したが、含有量の異なる他の強磁性フッ素化合物を含む磁石に対しても同様の温度係数の改善の効果を得ることができた。フッ素含有量に対する保磁力の温度係数を下記の表2に示す。
この表より、1原子%〜65原子%により温度の傾きは−0.2〜−0.3℃/m以上と小さな変動範囲にすることができ、高温での使用が十分可能となっていることがわかる。
(実験例3)
次に、上記強磁性フッ素化合物を含有する粉末とエポキシ樹脂とを用いてコンパウンドを作製し、磁界中で圧縮成形することによって異方性ボンド磁石を作製した。このような異方性ボンド磁石について、異方性方向に平行に磁界を印加し、その着磁率と印加する磁界との関係について調べた。結果を図4に示す。
(実験例3)
次に、上記強磁性フッ素化合物を含有する粉末とエポキシ樹脂とを用いてコンパウンドを作製し、磁界中で圧縮成形することによって異方性ボンド磁石を作製した。このような異方性ボンド磁石について、異方性方向に平行に磁界を印加し、その着磁率と印加する磁界との関係について調べた。結果を図4に示す。
図4の横軸は磁界(kA/m)であり、縦軸は着磁率(%)を示す。磁界が1500
kA/m以上であるとき、ほぼ100%の着磁が可能である。異方性を付与するときの磁界は着磁磁界の10分の1である。着磁磁界がNdFeB系磁石とほぼ同等であることから、着磁前に適用部品として組み込んだ後に着磁することが可能である。
kA/m以上であるとき、ほぼ100%の着磁が可能である。異方性を付与するときの磁界は着磁磁界の10分の1である。着磁磁界がNdFeB系磁石とほぼ同等であることから、着磁前に適用部品として組み込んだ後に着磁することが可能である。
なお、粉末状態であっても磁石形状であってもボンド磁石としての保磁力の値及び温度係数に差はほとんどない。これは従来の硼化物や窒化物よりも酸化しにくいためと推定される。
本発明の第2の実施例について説明する。
本実施例は、第一の実施形態とは組成をほぼ同じにするが、製造工程が異なる。本実施例では、いわゆるスパッタリング法を採用することを要旨とする。
スパッタリング法は、ターゲットに希土類元素を含む合金を用い、フッ素を含むガス中で放電プラズマによりターゲットをガスイオンが叩き飛ばすことにより、基板上にフッ素を含む希土類鉄化合物を形成させる。なお、ターゲットにフッ素化合物を混合させること、フッ素化合物からなるチップをターゲット上に配置させ、不活性ガスプラズマを用いてターゲットの原子を基板上に堆積させることも可能である。以下、図5を用いて詳細に説明する。
図5は本実施例に係るスパッタリング法による磁石の製造方法を示す図である。本実施例では、NdFe合金をターゲット501とし、これにNdF3 のチップ502を貼り付け、RFスパッタリング装置を用いて膜を形成した。ここでターゲット501は4インチ径で3mmの厚さで、NdF3 のチップは10mm×10mmで1mmの厚さであった。なおこのスパッタリングは真空排気口503より真空に引いた後、ガス導入口504よりアルゴンガスをスパッタリング室内に導入し、アルゴンガス1mTorrの還元雰囲気で、加熱無しの室温で行った。なお基板ホルダ505に固定した基板506はガラス基板を用いた。また、ターゲット501の下には磁界を印加するための磁石507を設置し、シャッター508を用いてスパッタリング時間を制御した。そして成膜後、200℃で60分熱処理し、3インチ径で厚さ100nmの膜状の磁石を得た。膜の組成を分析した結果、Nd10原子%,Fe75原子%,F15原子%であった。
この膜を2000kA/mの磁界で着磁後保磁力を測定した結果、膜の組成がNd2Fe14Fのときに600kA/mの保磁力を有していることを確認した。即ち、高温での使用可能な磁石を実現することができた。また、保持力の温度係数を測定したところ、−0.2%/℃であった。また、残留磁束密度についても測定したところ、1.0Tであった。なおキュリー温度は410であった。
なお、本実施例のスパッタリングでは基板にガラス基板を用いているが、下地膜に例えばTaやCrを形成しておいても良い。TaやCrを下地膜として用いることで、酸化防止を図り、保磁力のばらつきを低減することができる。
本実施例はほぼ実施例1における組成と同じであるが、真空蒸着法による磁石の製造方法である点において異なる。
本実施例である真空蒸着法は、フッ素化しにくいボートを用いてフッ素化合物や鉄等からなる蒸着源を通電加熱し、加熱蒸発させて基板上に膜を形成する方法である。蒸着時にフッ素化合物が分解し、希土類の強磁性フッ素化合物となる。
本実施例では、ボートとしてBNを10μmコートしたWを使用し、到達真空度は1×10-5Torr、蒸着中の圧力は1×10-3Torr、基板の温度は100℃であった。また、製膜後300℃で1時間熱処理を行った。得られた膜を調べたところ、膜厚は100nm、強磁性フッ素化合物を80%含んでいた。
なおボートにフッ素化しやすい材質を用いた場合は、原料よりもボートの方がフッ素化してしまうため、フッ素化しにくい材質が極めて望ましく、この材質としては例えばTiも該当する。
この膜を2000kA/mの磁界で着磁後保磁力を測定した結果、膜の組成がNd2Fe14Fのときに500kA/mの保磁力を有していることを確認した。また、キュリー温度は
400℃、保磁力の温度係数は−0.2%/℃、残留磁束密度は1.2Tであった。即ち、高温での使用可能な磁石を実現することができた。
400℃、保磁力の温度係数は−0.2%/℃、残留磁束密度は1.2Tであった。即ち、高温での使用可能な磁石を実現することができた。
なお、本実施例では真空蒸着源としてNd,Fe及びNdF3の粉を用いているが、
NdF3の粉の代わりにNdF2の粉を用いても良いし、それとの混合物を用いてもよい。
NdF3の粉の代わりにNdF2の粉を用いても良いし、それとの混合物を用いてもよい。
さらに、真空蒸着により成膜する際、基板付近に80kA/m程度の磁界を印加させることで、異方性の方向を磁界方向に向けることが可能となり、残留磁束密度を増加させることができる。
〔実施形態2〕
本実施形態は、回転子についての実施形態である。本実施形態に係る回転子は、ロータシャフトと、ロータシャフトにはめ込まれたリング磁石とを有し、このリング磁石は、実施形態1において用いた磁石を有して構成されている。ロータシャフトと、リング磁石とは接着手段により接着されており、高速回転時においてもリング磁石が外れないようにしてある。
〔実施形態2〕
本実施形態は、回転子についての実施形態である。本実施形態に係る回転子は、ロータシャフトと、ロータシャフトにはめ込まれたリング磁石とを有し、このリング磁石は、実施形態1において用いた磁石を有して構成されている。ロータシャフトと、リング磁石とは接着手段により接着されており、高速回転時においてもリング磁石が外れないようにしてある。
図7は本実施例に係る回転子の構成要素であるリング磁石6の概略を示す図であり、図7は図6のリング磁石6をロータシャフト7にはめ込んで作成した回転子の概略を示す図である。
リング磁石は、実施例1に記載の強磁性フッ素化合物を含有してなる磁石材料を用いて形成されたものである。但し、実施例1に記載の材料以外の強磁性フッ素化合物を含有した磁石も適用可能である。
本実施例は、回転子についての実施例であり、磁石部の配置が異なる点を除いて実施例4と同様である。図8にその回転子のロータシャフトの軸に垂直な面に沿った断面図を示す。
図8の回転子の磁石部801は、積層電磁鋼板802内の外周側に穴をあけ、磁石が表面に出ないようにしてある。
本実施例は、回転子についての実施例であり、磁石部の配置が異なる点を除いて実施例5と同様である。図9にその回転子のロータシャフトの軸に垂直な面に沿った断面図を示す。
図9の回転子の磁石部901は、積層電磁鋼板902内の外周側に、磁石部が表面に露出するように配置されている。
〔実施形態3〕
本実施形態は、磁気回路についての実施形態である。図10を用いて説明する。
〔実施形態3〕
本実施形態は、磁気回路についての実施形態である。図10を用いて説明する。
本実施形態における磁気回路は、強磁性フッ素化合物を含む磁石1001と、この磁石に接続された軟磁性材1002とを有して構成されている。ここで、強磁性フッ素化合物を含む磁石は、含フッ素化合物を含んだ強磁性体の粉体を作成し、粉に磁界を印加し、磁界の方向に沿って配向させる。この後成形体とし、加熱,焼結,着磁することで高密度の素材とすることができる。軟磁性材はギャップ部1003を有しており、このギャップ部1003に高磁界を得ることができる。なお軟磁性材1002にコイルを配置し、流す電流を調節することでギャップ部1003に生じる磁界の値を変えることも可能である。
なお、ここで強磁性フッ素化合物を含む磁石としては、強磁性フッ素化合物とNd2Fe14Bとを複合したもの、Nd2Fe14Bをフッ化処理したNd2Fe14(B,F)が考えられる。
1…ロール装置、6…リング磁石、7…ロータシャフト、101…溶解室、102…原料、103…アーク帽、104…ノズル部、105…ロール、106…ロール室、107…開閉板、501…ターゲット、502…チップ、503…真空排気口、504…ガス導入口、505…基板ホルダ、506…基板、507,1001…磁石、508…シャッター、801,901…磁石部、802,902…積層電磁鋼板、1002…軟磁性材、
1003…ギャップ部。
1003…ギャップ部。
Claims (10)
- 少なくとも一種類の希土類元素と、
コバルト又は鉄の少なくとも一方と、
強磁性フッ素化合物と、を有する磁石。 - 前記希土類元素は、原子番号57〜71の希土類元素であることを特徴とする請求項1記載の磁石。
- 前記強磁性フッ素化合物は、前記磁石の主相に含まれていることを特徴とする請求項1記載の磁石。
- 前記磁石は、フッ素を1原子%以上65原子%以下含有してなることを特徴とする請求項1記載の磁石。
- 前記希土類元素を9原子%〜15原子%、
前記コバルト又は鉄の少なくとも一方を70原子%〜90原子%、
前記フッ素を1原子%〜15原子%含有していることを特徴とする請求項1記載の磁石。 - シャフトと、
該シャフトに固定されてなるリング磁石と、を有する回転子であって、
前記リング磁石は、少なくとも一種類の希土類元素と、コバルト又は鉄の少なくとも一方と、強磁性フッ素化合物と、を有することを特徴とする回転子。 - 前記強磁性フッ素化合物は、前記リング磁石の主相に含まれていることを特徴とする請求項6記載の回転子。
- 前記リング磁石は、フッ素を1原子%以上65原子%以下含有してなることを特徴とする請求項7記載の回転子。
- 前記リング磁石は、
前記回転子前記希土類元素を9原子%〜15原子%、
前記コバルト又は鉄の少なくとも一方を70原子%〜90原子%、
前記フッ素を1原子%〜15原子%含有していることを特徴とする請求項7記載の回転子。 - NdF3 化合物と、鉄とを混練し、還元雰囲気中で溶解及び急冷する工程を有する磁石材料の製造方法。
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