JP2016207678A - Sm−Fe−N系磁石 - Google Patents

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Abstract

【課題】高い保磁力を示すSm−Fe−N系磁石を提供する。【解決手段】RaFe(100−a−b−c)TbXcで表わされる磁石(RはSmを必須とする一種類以上の希土類元素であり、TはFeを除きMoあるいはTaを必須とした一種類以上の遷移金属元素であり、XはNを必須としたN,C,Bのうちの1種類以上。ただし、6≦a≦14、5≦b≦20、8≦c≦18である。)であり、磁石に含まれる主相粒子がTh2Zn17型構造を有しており、磁石の粒界中に主相粒子よりもTが濃化した粒界相を含む。【選択図】なし

Description

本発明は、モータ、アクチュエータ、磁気センサ等に応用される永久磁石に関するものである。
永久磁石はモータ、アクチュエータ、センサなど幅広く利用され、エレクトロニクス製品に欠かせない重要な材料である。一般的には大きな磁化と高い保磁力を兼ね備えた材料が好まれ、高特性な希土類磁石材料の開発が電子機器の小型化、高性能化に果たした役割は大きい。
近年では電子機器の高密度集積化や高性能化、電気自動車やハイブリッドカーのモータ/ジェネレータへの搭載に伴い、内蔵された磁石が比較的高温の環境に晒されるようになっている。このような使用環境では熱による高温減磁を抑制することが重要であり、室温の保磁力が高く、キュリー点の高い材料が好適である。
特開1992−288801
IEEE Transactions On Magnetics,Vol.47,No.12,December(2011) Journal of Magnetism and Magnetic Materials 272−276,e889−e890(2004)
例えばNd−Fe−B系磁石は代表的な高性能磁石材料であるが、Sm−Fe−N系磁石はNd−Fe−Bを凌ぐ可能性のある材料として注目されている。非特許文献1でCoeyはサマリウムと鉄の金属間化合物に窒素が侵入したSmFe17が高いキュリー点と大きな磁気異方性とを持つことを述べているが、一方では焼結温度以下で分解が起こるため高密度の焼結体にならないことを課題として挙げている。
Sm−Fe−N系磁石は一般的な粉末冶金の方法では高密度な焼結体にならないものの、特許文献1のように金属溶湯の急冷によって得られた磁石粉末をボンド磁石に加工するなどの方法で利用されている。また、Sm−Fe−N系磁石粉末は、圧粉成形や通電焼結など、高温を経ることなく固化する方法でもバルク体にすることができるが、SmFe17の高いポテンシャルを十分に発揮した特性が得られているとは言い難い。
一方、薄膜(厚膜)磁石というアプリケーションも検討されており、成膜装置で高密度のバルク体を作製するアプローチがなされている。例えば非特許文献2においてKimらはSm−Fe−N薄膜の作製と評価を行っている。SmFe17をスパッタした後、窒素侵入工程を経てSm−Fe−N薄膜を得ている。しかしながら、α−Feなどの不純物のない薄膜を作製することは難しく、十分な磁気特性は得られていない。
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、高い保磁力を示すSm−Fe−N系磁石を提供するものである。
上述の課題を解決し、目的を達成するために、本願発明者は、Sm−Fe−N磁石の微細構造と磁気特性との関係を鋭意検討した結果、主相粒子のFeの一部をMoあるいはTaで置換し、なおかつ、主相粒子を取り囲む粒界相にMoあるいはTaを高濃度に存在させることにより高保磁力な磁石となることを見出した。
すなわち、本発明は、RFe(100−a−b−c)で表わされる磁石(RはSmを必須とする一種類以上の希土類元素であり、TはFeを除きMoあるいはTaを必須とした一種類以上の遷移金属元素であり、XはNを必須としたN,C,Bのうちの1種類以上。ただし、6≦a≦14、5≦b≦20、8≦c≦18である。)であり、前記磁石に含まれる主相粒子がThZn17型構造を有しており、前記磁石の粒界中に主相粒子よりもTが濃化した粒界相を含むことを特徴とする。
Fe(100−a−b−c)で表わされる磁石において、その主相粒子がThZn17型構造を有し、RはSmを、XはNを必須とし、6≦a≦14、5≦b≦20、8≦c≦18の範囲とすることによって、SmFe17の金属間化合物が侵入型の固溶体を形成した構造となり、高い磁気異方性を得ることができる。aおよびbが前記範囲を逸脱した場合、α−FeなどのFeリッチな相、あるいはRFe結晶相などのRリッチな相が不純物として生成するため保磁力が低下する。また、cが前記範囲を逸脱した場合、侵入元素量が適正な範囲ではないため、Fe原子同士あるいはFe原子と希土類原子の距離が最適化されず、十分な保磁力を得ることできない。さらに、TがFeサイトの一部を置換しているため、ThZn17型構造の結晶安定性が高くなり、α−Feなど保磁力を下げる要因となる異相が生成しにくくなる。また、粒界中に主相よりもTが濃化した相を含むことにより、粒界の磁化が下がり、粒界によって主相結晶が磁気的に分断される効果が高まるため、保磁力が向上する。
さらに、TがMoあるいはTaを必須とする一種類以上の遷移金属元素であることにより、十分な保磁力の向上効果が得られる。この理由については定かではないが、Mo、Taは酸素と結合した際、不動態を形成する元素として知られており、粒界中にMoあるいはTaが濃化した相が存在することにより、工程から不可避的に磁石に混入する酸素をトラップするとともに、磁石となった後も、磁石表面からの酸素の侵入を防ぐことができると考える。主相粒子表面が酸化されることで生じる欠陥や磁気異方性の低い領域は磁気特性低下の起点となるため、粒界相によってこうした粒子表面の劣化を防ぐことが保磁力の向上に有効であったと本発明者は推測している。
本発明は、前記Tが濃化した粒界相の組成において、Fe濃度に対するT濃度が、原子百分率の比で0.3以上であることが好ましい。かかる範囲とすることで、粒界の磁気分断効果、および主相粒子の表面酸化抑制の効果が高くなり、より高い保磁力を得ることができる。
さらに本発明の主相粒子の平均粒径は、20〜400nmであることが好ましい。かかる範囲とすることで、主相粒子が多磁区状態となることが抑制され、より高い保磁力を得ることができる。
本発明によれば、高い保磁力を示すSm−Fe−N系磁石を得ることができる。
以下、本発明の実施形態を説明する。なお、本発明の実施態様は、後述する形態例に限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
本実施形態に係る磁石は、主相粒子と、主相粒子の間に存在する粒界を有する。
本実施形態に係る磁石の主相粒子は、ThZn17型構造を有する結晶格子間に侵入元素Xが侵入した結晶相(以下、R(Fe,T)17X相とする。ただしXの組成比は不定比である。)である。主相粒子はR(Fe,T)17X相のみであることが望ましいが、R(Fe,T)17X相以外にも、RFe、RFe、RFe、RFe、RFe、RFe12結晶相、あるいはそれらに侵入元素が侵入した相などが含まれていても良く、また一部に侵入元素を含まないRFe17相があっても良い。ここで主相であるとは、磁石中で最も体積比率の多い相である結晶相を言う。
本実施形態に係る磁石の主相粒子であるR(Fe,T)17X相は磁石全体において体積比率が60%以上であり、好ましくは80%以上である。必要最低限の粒界を除き、主相粒子の割合が高いほど高い磁気特性を得ることができる。
本実施形態に係る磁石は、RFe(100−a−b−c)の組成式で表わされ、RはSmを必須とする一種類以上の希土類元素である。ここで希土類元素はY、La、Pr、Ce、Nd、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuである。磁石に含まれるRのうち、Smの割合は高いほど良く、全R量の50at%以上であることが望ましい。Rの組成比を示すaは、6≦a≦14である。aが6未満の時、相対的にFeなどの遷移金属が過剰となり、α−FeやFeリッチの異相が多く生成し、保磁力が著しく低下する。また、aが14より大きい時、Rリッチの異相が多く生成し、保磁力が著しく低下する。
本実施形態に係る磁石は、RFe(100−a−b−c)の組成式表わされ、TはFeを除きMoあるいはTaを必須とした一種類以上の遷移金属元素である。Feの一部をTが置換することにより、主相たるRFe17X相の結晶構造が安定化し、異相の生成を抑制することができ、高保磁力を得ることができる。磁石に含まれるTのうち、MoおよびTaを合計した割合は高いほどよく、全T量の80at%以上であることが望ましい。Tの組成比を示すbは、5≦b≦20である。bが5未満の時、十分な量のTリッチな粒界相を実質的に得ることができず、高い保磁力を得ることができない。また、bが20より大きい時、主相粒子の磁気特性が低下してしまい、高い保磁力を得ることができない。さらに好ましいbの範囲は、7≦b≦15である。
本実施形態に係る磁石は、RFe(100−a−b−c)の組成式で表わされ、XはNを必須としたN,C,Bのうちの1種類以上である。RFe17相の格子間に侵入元素Xが侵入することで、Fe原子同士、あるいはFe原子と希土類原子の距離が最適化され、高い磁気特性を得ることができる。磁石に含まれるXのうち、Nの割合は高いほどよく、全X量の80at%以上であることが望ましい。Xの組成比を示すcは、8≦c≦18である。cが8未満の時、侵入元素量が十分ではなく、高い保磁力を得ることができない。また、cが18より大きい時、実質的に多量の侵入元素を格子間に内包することは困難であり、また得られた場合も欠陥や歪みに起因すると思われる保磁力の低下が起こるため、高い保磁力を得ることができない。
本実施形態に係る磁石は、RFe(100−a−b−c)の組成式で表わされ、R、T、Xを除く残部は実質的にFeである。また、RFe17X相はR、Fe、T、X以外の他の元素の含有を許容する。例えば、Al、Si、Ga、Ge、In、Sn、Bi等の元素を適宜含有させることができる。また原料に由来する不純物を含んでも良い。
本実施形態に係る磁石の粒界は、少なくとも、主相粒子であるR(Fe,T)17X相よりもTが濃化したTリッチ相を有する。主相のT濃度と比較し、粒界相のT濃度が原子百分率で主相の1.5倍以上の濃度であった場合に、Tリッチ相であるとする。Tリッチ相以外に、R濃度の高いRリッチ相、R酸化物相、Feリッチ相などを含んでもよい。
本実施形態に係る磁石の前記Tリッチ相は、Feに対するTの濃度が、原子百分率の比で0.3以上であることが好ましい。かかる範囲とすることで、粒界による磁気分断効果、および主相粒子の表面酸化抑制の効果が高くなり、より高い保磁力を得ることができる。また、Tリッチ相には、TおよびFe以外に、主相粒子の構成元素であるRやX、およびその他の成分を含んでもよい。
本実施形態に係る磁石の粒界の断面積割合は、4%以上40%以下である。粒界相の断面積割合が40%より大きい場合、主相粒子の割合が低下し、十分な磁気特性が得られなくなる。粒界の断面割合が4%未満の場合には、粒界による磁気分断効果、および主相粒子の表面酸化抑制の効果が得られず、保磁力の低下がおきる。
本実施形態に係る磁石の主相粒子の平均粒径は、20nm以上400nm以下が好ましい。主相粒子の平均粒径を400nm以下とすることにより、主相粒子が多磁区状態となることが抑制され、高い保磁力を得ることが可能となる。また、主相粒子の平均粒径が小さくなりすぎると、主相粒子の表面積が増え、粒界の制御が困難となり、磁気分断効果が得られにくくなる傾向にあることから、主相粒子の平均粒径は、20nm以上であることが好ましい。
本実施形態に係る磁石は、粉末磁石や薄膜磁石であり、またそれらを粉砕、加工して得られたバルク体の磁石である。その形状は特に限定されるものではなく、また、当該磁石を加工して着磁した磁石製品と、当該磁石を着磁していない磁石製品との両方が含まれる。
以下、本発明の磁石の製造方法の好適な例について説明する。磁石の製造方法は、焼結法、超急冷凝固法、蒸着法、HDDR法、薄膜法などがある。薄膜磁石の製造手法には、物理気相成長法や化学気相成長法などあるが、マグネトロン・スパッタリングによる製造方法の一例について説明する。
原料として、先ずターゲット材を準備する。ターゲット材は、所望の組成比を有するR−Fe−T合金ターゲット材とする。ここで、ターゲット材の組成比とスパッタリングで作製した膜の組成比は、各元素のスパッタ率が異なるためにずれる場合があり、調整が必要である。2個以上のスパッタリング機構を有する装置を使用し、構成元素の単元素ターゲット材を用いて所望の割合でスパッタリングすることも可能である。他の元素、例えば、Al、Bi、Sn、Ga、Si、Ge、B、C等を適宜含有させたい場合も同様に、合金ターゲット材、単元素ターゲット材の両方の方法で含有させることができる。
ターゲット材は、保管中に表面から酸化する。特に、希土類を含有するターゲット材は酸化の速度が速い。そのため、これらのターゲット材の使用前には、スパッタリングを十分に行い、ターゲット材の清浄表面を出しておく必要がある。
スパッタリングにて成膜を行う基材は、各種の金属、ガラス、シリコン、セラミックスなどを選択して使用することができる。ただし、所望の結晶組織を得るために高温での処理を行う必要上、処理温度において安定性の高い材料を選択することが望ましい。なお、基板とスパッタ膜との密着性が不足する場合や基板材質とスパッタ膜を構成する元素の反応性が高い場合には、基板上に下地膜を設けることが通常行われる。
スパッタリングを行う成膜装置は、成膜室内に使用するターゲット材の数以上のスパッタリング機構が必要である。あるいは基材を成膜装置内で移送することによって、別室のチャンバーにて異なるターゲット材のスパッタリング行うことによっても作製可能である。またスパッタ膜中へのO、HO、CO等の不純物ガスの混入を極力低減することが望ましいため、10−6Pa以下、より好ましくは10−8Pa以下となるまで真空槽内が排気されていることが望ましい。高い真空状態を保つため、成膜室と繋がった基材導入室を有することが望ましい。また、ターゲット材の使用前には、スパッタリングを十分に行い、ターゲット材の清浄表面を出しておく必要があるため、成膜装置は、基材とターゲット材の間に真空状態で操作可能な遮蔽機構を有することが望ましい。スパッタリングの方法は、不純物元素を極力低減するという目的で、より低Ar雰囲気でスパッタリングが可能となるマグネトロン・スパッタリング法が好ましい。ここで、強磁性体を含むターゲット材は、マグネトロン・スパッタリングの漏れ磁束を大きく低減させ、スパッタリングを困難にするため、ターゲット材の厚みを適切に選択することが必要である。スパッタリングの電源は、DC、RFどちらでも使用可能であり、ターゲット材に応じて適宜選択できる。
上述したターゲット材および基材を用いて、所望の組成比の合金薄膜を成膜することができる。複数のターゲットからスパッタリングする際、同時スパッタリング、もしくは各元素を単独で交互にスパッタリングする積層スパッタリングのどちらでも可能である。単位時間当たりの成膜量を確認するため、あらかじめ成膜したスパッタ膜を接触式段差計で測定するか、または成膜装置内に水晶振動子膜厚計等を備え付けて用いることが行われる。
スパッタリング中は、基材を室温に保ち、成膜後に結晶化処理、粒界形成処理、窒化処理を行う。
結晶化は500℃〜800℃で、通常は1分〜1200分程度、Ar雰囲気で熱処理をすることによって行う。結晶化処理は短時間であることが好ましい。成膜後の合金薄膜は通常数十nm程度の微細結晶相やアモルファス相から成っており、結晶化処理によって結晶化および結晶成長が進行する。このとき、合金がTを適量含有することにより、異相の少ないR(Fe,T)17結晶相を安定的に得ることができる。合金薄膜中の微結晶のサイズにも依るが、結晶化温度が低いとR(Fe,T)17結晶相ができず、結晶化温度が高いと粒成長によって主相粒径が増大し、高保磁力が得られない。
合金薄膜を冷却した後、Ar雰囲気で350℃〜450℃に熱せられ、粒界形成処理が施される。保持時間は120分〜720分程度であり、特に望ましくは240分〜480分である。このとき、微結晶内のTが微結晶間の粒界へ析出し、また粒界のFeと主相内のTの置換が行われ、Tの濃化した二粒子粒界が形成される。厚い二粒子粒界を形成し、磁気分断効果を高め、高い保磁力を得るためには、粒界形成処理後の冷却速度を30℃/min以上とするのが好ましい。
次いで、窒化処理を350℃〜550℃で、通常は1分〜600分程度、窒素雰囲気で熱処理することによって行う。特に好ましくは、400℃〜500℃である。窒素ガスの替わりにアンモニアガスとすることもでき、また不活性ガスとの混合ガスでもよい。ここで、窒素ガスの濃度を0.2気圧以上とすることが好ましい。この工程ではR(Fe,T)17結晶相の格子間に窒素が侵入し、特に高い磁気特性が発現する。窒素処理の熱処理機構は結晶化処理と同一であるか、あるいは真空中で搬送可能であるものが望ましい。なお、侵入元素の一部にCを用いる場合、炭化雰囲気で熱処理することによっても侵入させることが可能である。
作製した薄膜磁石の表面には、酸化や窒素の分離を防ぐための保護膜を設けることができる。
以下、本発明にかかる粉末状態の磁石の製造方法の好適な例について、超急冷凝固法による製造方法を説明する。具体的な超急冷凝固法としては、単ロール法、双ロール法、遠心急冷法、ガスアトマイズ法等が存在するが、単ロール法を用いることが望ましい。単ロール法では、合金溶湯をノズルから吐出して冷却ロール周面に衝突させることにより、合金溶湯を急速に冷却し、薄帯状または薄片状の急冷合金を得る。単ロール法は、他の超急冷凝固法に比べ、量産性が高く、急冷条件の再現性が良好である。
原料として、まず、所望の組成比を有するR−Fe−T合金を準備する。原料合金は、R、Fe、Tそれぞれの原料を不活性ガス、望ましくはAr雰囲気中でアーク溶解、その他公知の溶解法により作製することができる。他の元素、例えばAl、Si、Ga、Ge、In、Sn、Bi、B、C等を含有させたいとき場合も同様に、溶解法により含有させることができる。
上記方法で作製されたR−Fe−T合金から超急冷凝固法により、アモルファス合金を作製する。超急冷凝固法としては、上記のように作製した合金インゴットをスタンプミルなどにより小片化したものを原料とする。該小片をAr雰囲気中で高周波溶解し、溶湯を高速で回転している銅ロール上に噴射して急冷凝固させる。ロールで急冷された溶湯は、薄帯状に急冷凝固された急冷合金になる。
急冷合金は、その組成比、冷却ロールの周速度によって異なるが、アモルファス単相、アモルファス相と結晶相の混相、結晶相のいずれかの組織形態を呈する。アモルファス相は、後に行う熱処理によって微結晶化される。一つの尺度として、冷却ロールの周速度が大きくなれば、アモルファスの占有する割合が高くなる。
冷却ロールの周速度が速くなれば、得られる急冷合金が薄くなるため、より均質な急冷合金が得られる。アモルファス単相の組織を得た後に、適切な熱処理によってR(Fe,T)17結晶相を得ることが可能である。したがって、本発明にとって望ましい形態は、アモルファス合金、もしくはアモルファス合金とR(Fe,T)17X結晶相を得ることである。そのためには、冷却ロールの周速度は、通常、10m/s〜100m/s、好ましくは15m/s〜75m/s、さらに好ましくは25m/s〜65m/sの範囲とする。冷却ロールの周速度が10m/s未満にすると均質な急冷合金が得られず、所望の結晶相が得られ難く、冷却ロールの周速度が100m/sを超えると合金溶湯と冷却ロール周面との密着性が悪くなって熱移動が効果的に行われなくなる。
急冷合金は、次いで結晶化処理、粒界形成処理および窒化処理に供される。
結晶化は550℃〜750℃で、通常は1分〜600分程度、Ar雰囲気で熱処理をすることによって行う。このとき、合金がTを適量含有することにより、異相の少ないR(Fe,T)17結晶相を安定的に得ることができる。急冷合金中の微結晶のサイズにも依るが、結晶化温度が低いとR(Fe,T)17結晶相ができず、結晶化温度が高いと粒成長によって主相粒径が増大し、高保磁力が得られない。
結晶化した合金は冷却した後、Ar雰囲気で300℃〜400℃に熱せられ、粒界形成処理が施される。保持時間は120分〜720分程度であり、特に望ましくは240分〜480分である。このとき、微結晶内のTが微結晶間の粒界へ析出し、また粒界のFeと主相内のTの置換が行われ、Tの濃化した二粒子粒界が形成される。厚い二粒子粒界を形成し、磁気分断効果を高め、高い保磁力を得るためには、粒界形成処理後の冷却速度を30℃/min以上とするのが好ましい。
次いで、窒化処理を350℃〜550℃で、通常は1分〜600分程度、窒素雰囲気で熱処理することによって行う。特に好ましくは、400℃〜500℃である。窒素ガスの替わりにアンモニアガスとすることもでき、また不活性ガスとの混合ガスでもよい。ここで、窒素ガスの濃度を0.2気圧以上とすることが好ましい。この工程ではR(Fe,T)17結晶相の格子間に窒素が侵入し、特に高い磁気特性が発現する。なお、侵入元素の一部にCを用いる場合、通常は原料合金に含有させるが、炭化雰囲気で熱処理することによっても侵入させることが可能である。
以上が本発明の磁石を得るための基本的な工程であるが、超急冷凝固法で得られた合金や薄膜磁石を、熱処理工程後に粉砕することができ、それらをバインダと混合し、成形することでボンド永久磁石にすることもできる。また、粉砕した合金、磁石を熱間加工法などの公知の技術により異方性永久磁石にすることも可能である。また、粉砕、磁場中成形、通電焼結を行うことで異方性永久磁石にすることも可能である。
以上、本件発明を好適に実施するための製造方法に関する形態を説明したが、次いで、本発明の磁石において、組成比を分析する方法について説明する。
試料の生成相の分析にはX線回折法(XRD:X−ray Diffractometry)を用い、主たる生成相がR(Fe,T)17Xに帰属されることを確認する。また、試料全体の組成分析は、ICP質量分析法(ICP:Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometry)と酸素気流中燃焼−赤外線吸収法を用いることができる。
薄膜磁石あるいは超急冷凝固法により作製された粉体状の磁石をパラフィンにて固化した試料を集束イオンビーム(FIB:Focused Ion Beam)装置にて厚さ100nmの薄片状に加工し、走査透過電子顕微鏡(STEM:Scanning Transmission Electron Microscope)に備えられたエネルギー分散型X線分析(EDS:Energy Dispersive Spectroscopy)装置にて分析を行う。任意の視野の磁石断面像において、画像解析法により、断面像中の30個の主相粒子の面積円相当径を計算し、その平均値を平均粒径とする。また、主相粒子の中央近傍をEDSにて分析し、主相粒子の組成を定量化できる。主相粒子の組成は、10個の測定点の平均値で示す。粒界にはTリッチ相、Rリッチ相、Feリッチ相などの粒界相が含まれるが、元素マッピング像から主相よりもTリッチな領域を抽出することで判別が可能であり、主相と同様の方法で組成の定量化を行う。
試料の磁気特性の測定には、振動試料型磁力計(VSM:Vibrating Sample Magnetometer)を用いる。
以下、本発明の内容を実施例及び比較例を用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
薄膜法により作製した実施例1について説明する。ターゲット材は、スパッタリングによって形成した膜が所望の組成比になるように調整したSm−Fe−Mo合金ターゲット材を作製した。成膜を行う基材にはシリコン基板を準備した。ターゲット材のサイズは直径76.2mm、基材のサイズは10mm×10mmとし、膜の面内均一性が十分に保たれる条件とした。
成膜装置は、10−8Pa以下まで排気が可能であり、同一槽内に複数のスパッタリング機構を有する装置を用いた。この成膜装置内に前記のSm−Fe−Mo合金ターゲット材を装着した。スパッタリングは、マグネトロン・スパッタリング法を用いることにより、1PaのAr雰囲気とし、RF電源にて行った。尚、RF電源のパワーと成膜時間は、試料の構成に応じて調整した。
まずSm−Fe−Mo層厚みが800nmとなるように調整し、基材のシリコン基板を室温に保ちながらスパッタリングを行った。成膜した試料をAr雰囲気で600℃/minで昇温し、650℃で10分結晶化処理後、急冷した。次いで、同様のAr雰囲気下で再び400℃まで昇温し、300分の粒界形成処理を施した後、50℃/minで急冷した。試料が十分に冷えたことを確認し、成膜漕内を5×10Paの窒素雰囲気にした後、450℃に加熱し、120分間保持し、冷却した。
試料である薄膜磁石の生成相を面直方向のXRDによって分析し、Sm(Fe,Mo)17N相が得られたことを確認した。次にICP質量分析法によってSm量、Fe量、Mo量を分析し、酸素気流中燃焼−赤外線吸収法によって試料中のN量を分析した。上記分析結果をもとに、RFe(100−a−b−c)の組成式で表わされる試料の組成比を決定した。
薄膜磁石試料をFIBにて基板と垂直な断面が得られるように厚さ100nmの薄片状に加工し、STEMおよびそれに備えられたEDS装置にて、磁石断面像およびその元素マッピング像を得た。画像解析法により、断面画像中の30個の主相粒子の面積円相当径を計算し、その平均値を主相粒径とした。また、主相粒子10個を選択し、それらの中央近傍をEDSにて分析し、分析値の平均を取ることで、主相粒子の組成とした。元素マッピング像にて主相よりもMoが強く検出された粒界相を10か所抽出し、その中央近傍をEDSにて分析し、分析値の平均を取ることで、Tリッチ相の組成とした。
次いで、試料の保磁力の測定方法を説明する。薄膜試料の面直方向に90kOeで着磁した試料に対して、面直方向に最大磁場±27kOeの磁化曲線を描き、保磁力の値を得た。
表1に薄膜法により作成した実施例1の磁石組成、主相粒子のFe濃度およびT濃度、Tリッチ相のFe濃度、T濃度およびFe濃度に対するT濃度の比([T]/[Fe])、主相粒径、保磁力の値を示す。
Figure 2016207678
(比較例1、2)
比較例1および2について説明する。比較例1は結晶化処理後の粒界形成処理を行わず、そのまま窒化処理をした以外は実施例1と同様の条件で作製した。比較例2は粒界形成処理後の窒化処理を行わずに作製した。
(実施例2、3および比較例3、4)
実施例2と3、および比較例3と4について説明する。薄膜中のSmの組成比が変化するように調整し、成膜を行った以外は実施例1と同様の条件で作製した。
(実施例4〜7、および比較例5、6)
実施例4〜7、および比較例5と6について説明する。薄膜中のMoの組成比が変化するように調整し、成膜を行った以外は実施例1と同様の条件で作製した。
(実施例8〜10、および比較例7、8)
実施例8〜10、および比較例7と8について説明する。粒界成形処理までは実施例1と同様の条件で作製し、窒化処理の条件を変えた試料である。窒化処理の雰囲気は実施例1と同様とし、比較例7は300℃で60分、実施例8は400℃で60分、実施例9は500℃で120分、実施例10は550℃で180分、比較例8は650℃で180分の窒化処理を行った。
(実施例11〜14)
実施例11〜14について説明する。結晶化処理までは実施例1と同様の条件で作製し、粒界形成処理の条件を変えた試料である。粒界形成処理の雰囲気は実施例1と同様とし、実施例11は350℃で300分、実施例12は400℃で120分、実施例13は450℃で480分、実施例14は450℃で600分の粒界形成処理を行った。粒界形成処理後の窒化処理は実施例1と同様の条件で行った。
(実施例15〜17)
実施例15〜17について説明する。成膜までは実施例1と同様の条件で作製し、結晶化処理の条件を変えた試料である。結晶化処理の雰囲気は実施例1と同様とし、実施例15は500℃で10分、実施例17は700℃で60分、実施例18は800℃で120分の結晶化処理を行った。結晶化処理後の粒界形成処理、窒化処理は実施例1と同様の条件で行った。
(実施例18〜21)
実施例18〜20について説明する。実施例18は、所望の組成になるようにSm−Nd−Fe−Mo(Sm:Nd=4:1)合金ターゲット材を作製し、それ以外は実施例1と同様の条件で作製した。実施例19は、所望の組成になるようにSm−Fe−Ta合金ターゲット材を作製し、それ以外は実施例1と同様の条件で作製した。実施例20は、粒界形成処理までは実施例1と同様の条件で作製し、窒化処理の雰囲気をN+CH雰囲気(CHガス濃度40重量%)とし、雰囲気以外は実施例1と同様の条件で、窒化および炭化処理を同時に行った。実施例21は、原料の1wt%がBとなるように合金ターゲット材を作製し、それ以外は実施例1と同様の条件で作製した。
実施例1と同様、実施例2〜20、比較例1〜8の磁石組成、主相粒子のFe濃度およびT濃度、Tリッチ相のFe濃度、T濃度およびFe濃度に対するT濃度の比([T]/[Fe])、主相粒径、保磁力の値を表1に示す。
実施例1と比較例1、2を比較、検討した結果について説明する。実施例1ではXRD測定の結果、主相がSm(Fe,Mo)17N相と同定され、Sm(Fe,Mo)17結晶相に侵入元素が侵入した化合物であることがわかった。組成比は表1に示したとおりであり、Nの侵入が確認できた。断面構造の観察の結果、主相粒子の粒径はおよそ50nmであり、粒界にはMoが強く検出されるTリッチ相が存在した。主相粒子、およびTリッチ相のMo濃度はそれぞれ6.9at%、30.5at%であり、粒界に十分にMo濃度の濃い相が析出していることがわかった。面直方向の保磁力は15.2kOeであり、後述の比較例1に対して磁気特性が非常に高く、Tリッチ相粒界が主相粒子間の磁気分断効果をもたらして特性を向上させたことがわかった。なお、面内方向の保磁力もVSMで評価したが、面直方向と同程度であり、薄膜磁石が等方性であることがわかった。一方、粒界形成処理を行わなかった比較例1も、主相がSm(Fe,Mo)17N相と同定されたが、断面構造の観察の結果、粒界にはMo濃度の高い相が見られなかった。主相粒子、および粒界のMo濃度はそれぞれ9.7at%、12.7at%であり、比較的Mo濃度の高い粒界相がほとんどFeとMoで構成されることを勘案し、Fe濃度とMo濃度の比で比較すれば、主相粒子に対して特にMo濃度が高いとは言えない。粒界形成処理を行わなかったことで、Mo濃度が粒界に濃化しなかったためである。主相としてSm(Fe,Mo)17N相が生成しているため、有意な保磁力は得られたが、粒界により磁気分断効果が十分に得られておらず、実施例1よりも小さい値(8.2kOe)であった。比較例2は窒化処理を行わなかった比較例であり、粒界にTリッチ相は確認できたが、Nが侵入しておらず、磁気特性が非常に低い値であった。なお、XRDによって比較例2の主相はSm(Fe,Mo)17相であることが確認されており、このことからも侵入型の結晶構造ではないことがわかった。
実施例1〜3と比較例3、4を比較、検討した結果について説明する。これらの試料群からRの組成比の変動に対する傾向がわかった。RであるSmが最も少ない比較例3はα−FeやSmFe2相などの混相となっており、主相としてSm(Fe,Mo)17N相が得られなかった。実施例1〜3はSmの量が適正な範囲内であったため、良好な保磁力が得られた。また、Smが最も多い比較例4は、Sm(Fe,Mo)17N相こそ得られたものの、希土類量の適切な範囲を大きく逸脱したため、Rリッチ相などの異相が相対的に多く、良好な磁気特性が得られなかった。aの適正な範囲が6〜14であることがわかった。
実施例1、4〜7と比較例5、6を比較、検討した結果について説明する。これらの試料群からTの組成比の変動に対する傾向がわかった。TであるMoが最も少ない比較例5は、Sm(Fe,Mo)17N相の主相とTリッチ相の粒界が得られたものの、Tリッチ相におけるMo濃度が低く、磁気分断効果が不十分であったため、高保磁力が得られなかったと推察される。実施例1、4〜7のように、磁石中のMo濃度を増やすごとにTリッチ粒界のMo濃度が上昇し、保磁力が向上することがわかった。また、Mo濃度の最も高い比較例6においては、Sm(Fe,Mo)17N相のMo濃度が高く、Feを過剰にMoで置換したため、主相の異方性が低下してしまい、高保磁力が得られなかった。bの適正な範囲が5〜20であり、特に7〜15の範囲で最適であることがわかった。
実施例1、8〜10と比較例7、8を比較、検討した結果について説明する。窒化条件を変えたこれらの試料群から、Xの組成比の変動に対する傾向がわかった。窒化条件が低温あるいは短時間であることにより、Sm(Fe,Mo)17結晶の格子間に侵入する窒素の量が低下した。比較例7ではSm(Fe,Mo)17N相の高い磁気特性が発現するに必要な侵入元素が不足したため、高保磁力が得られなかった。窒化条件が高温、あるいは長時間になると、侵入元素量が増え、それに伴って高保磁力が得られるようになった。結果的には、Nの量がR:(Fe+T):Nでおよそ2:17:3に近い組成比となる場合に高保磁力が得られた。より高温かつ長時間で窒化処理を行い、磁石に多量の窒素が含有された比較例8においては、格子間のみならず、粒界相にも窒素が多量に検出され、おそらくは欠陥等の影響により、保磁力が低下したものと推察される。bの適正な範囲が8〜18であることがわかった。
実施例1、11〜14を比較、検討した結果について説明する。粒界形成処理条件を変えたこれらの試料群から、Tリッチ相のFe濃度に対するT濃度の比の好ましい範囲がわかった。粒界形成処理条件がより高温、長時間になるに伴い、Tリッチ相のMo濃度が高くなり、Fe濃度に対するMo濃度の比([Mo]/[Fe])が0.3以上となる範囲で、高保磁力が得られた。Tリッチ相のFe濃度に対するT濃度の比は0.3以上であることが好ましい。
実施例1、15〜17を比較、検討した結果について説明する。結晶化処理条件を変えたこれらの試料群から、主相粒子の好ましい範囲がわかった。結晶化温度がより高温、長時間になることで、主相粒子が結晶化するときに粒成長し、平均粒径が増大した。主相粒子の平均粒径が16nmである実施例15は、小粒径であるため主相粒子の表面積が大きく、Tリッチ相の粒界が均一に主相粒子表面を覆うことが困難になり、磁気分断できなかった箇所が多かったため、実施例1や実施例16よりも保磁力の向上量が大きくなかったと推察される。また、主相粒子の平均粒径が415nmである実施例17は、およそ380n
mであると言われるSmFe17相の単磁区粒子臨界径よりも大きいため、粒子内が多軸状態になってしまい、保磁力が低下したものと推察される。主相粒子の平均粒径は20nm〜400nmであることが好ましい。
実施例1、18〜21を比較、検討した結果について説明する。合金組成あるいは窒化条件の雰囲気を変えたこれらの試料群から、Rが2種以上の希土類である場合、TとしてTaを選択した場合、侵入元素XがNとCあるいはBの二種類以上である場合のそれぞれについて、Tリッチ相の粒界による保磁力向上の効果が得られたことがわかった。
(実施例22)
次いで、超急冷凝固法によって作製した粉末磁石である実施例22について説明する。Sm、Fe、Moを所望の組成比となるように配合し、Ar雰囲気中、アーク溶解でインゴットを作製後、スタンプミルを用いて小片化した。該小片をAr雰囲気で高周波溶解し、単ロール法にて周速40m/sで急冷し、急冷合金を得た。得られた急冷合金をAr雰囲気で600℃/minで昇温し、650℃で10分結晶化処理後、急冷した。次に、同様のAr雰囲気下で再び350℃まで昇温し、360分の粒界形成処理を施した後、40℃/minで急冷した。粉末試料が十分に冷えたことを確認し、5×10Paの窒素雰囲気にて450℃で120分間の窒化処理を施した。
試料である粉末磁石の生成相をXRDによって分析し、Sm(Fe,Mo)17N相が得られたことを確認した。次にICP質量分析法によってSm量、Fe量、Mo量を分析し、酸素気流中燃焼−赤外線吸収法によって試料中のN量を分析した。上記分析結果をもとに、RFe(100−a−b−c)の組成式で表わされる試料の組成比を決定した。
所定量の粉末磁石試料をパラフィンで固化した後、FIBにてパラフィンごと薄片状に加工し、STEMおよびそれに備えられたEDS装置にて、粉末磁石断面像およびその元素マッピング像を得た。画像解析法により、断面画像中の30個の主相粒子の面積円相当径を計算し、その平均値を主相粒径とした。また、主相粒子10個を選択し、それらの中央近傍をEDSにて分析し、分析値の平均を取ることで、主相粒子の組成とした。元素マッピング像にて主相よりもMoが強く検出された粒界相を10か所抽出し、その中央近傍をEDSにて分析し、分析値の平均を取ることで、Tリッチ相の組成とした。
粉末試料の保磁力の測定方法を説明する。所定量の粉末試料を90kOeで着磁した試料に対して、面直方向に最大磁場±27kOeの磁化曲線を描き、保磁力の値を得た。
表2に超急冷凝固法によって作製した実施例22の磁石組成、主相粒子のFe濃度およびT濃度、Tリッチ相のFe濃度、T濃度およびFe濃度に対するT濃度の比([T]/[Fe])、主相粒径、保磁力の値を示す。
Figure 2016207678
(比較例9、10)
比較例9よび10について説明する。比較例9は結晶化処理後の粒界形成処理を行わず、そのまま窒化処理をした以外は実施例22と同様の条件で作製した。比較例10は粒界形成処理後の窒化処理を行わずに作製した。
実施例1と同様、比較例9と10の磁石組成、主相粒子のFe濃度およびT濃度、Tリッチ相のFe濃度、T濃度およびFe濃度に対するT濃度の比([T]/[Fe])、主相粒径、保磁力の値を表2に示す。
実施例22と比較例9、10を比較、検討した結果について説明する。実施例22ではXRD測定の結果、主相がSm(Fe,Mo)17N相と同定され、Sm(Fe,Mo)17結晶相に侵入元素が侵入した化合物であることがわかった。組成比は表2に示したとおりであり、Nの侵入が確認できた。粉末磁石の断面構造の観察の結果、薄膜磁石と同様、微細な主相粒子の粒界にMo濃度の高い粒界があり、前記粒界が主相粒子を磁気分断し、高保磁力が発現していた。粒界形成処理を行わなかった比較例9、窒化処理を行わなかった比較例10においても、薄膜磁石の結果と同様、前者はTリッチ相の粒界が得られなかったこと、後者は侵入型のSm(Fe,Mo)17N相が得られなかったことが原因で、高い保磁力が得られなかった。

Claims (3)

  1. Fe(100−a−b−c)で表わされる磁石(RはSmを必須とする一種類以上の希土類元素であり、TはFeを除きMoあるいはTaを必須とした一種類以上の遷移金属元素であり、XはNを必須としたN,C,Bのうちの1種類以上。ただし、6≦a≦14、5≦b≦20、8≦c≦18である。)であり、前記磁石に含まれる主相粒子がThZn17型構造を有しており、前記磁石の粒界中に主相粒子よりもTが濃化した粒界相を含むことを特徴とする。
  2. 前記Tが濃化した粒界相の組成において、Fe濃度に対するT濃度が、原子百分率の比で0.3以上である請求項1に記載の磁石。
  3. 前記主相粒子の平均粒径が、20〜400nmである請求項1または2に記載の磁石。
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