JP2006148108A - 超小型製品用の円筒形状又は円盤形状の焼結希土類磁石 - Google Patents

超小型製品用の円筒形状又は円盤形状の焼結希土類磁石 Download PDF

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Abstract


【課題】携帯電話用振動モータ、マイクロロボットや体内診断用マイクロモータに要求さ
れる高出力・超小型アクチュエータへ適用できる高性能な、小体積の希土類磁石を提供す
ること。
【解決手段】焼結磁石ブロック素材を研削加工して形成した、穴のあいた内表面を有する
円筒形状又は円盤形状の磁石であって、表面積/体積の比が3mm−1以上で、かつ体積
が20mm以下であり、研削加工の際の変質損傷部が改質されることによって(BH)
maxを280kJ/m以上に回復させたものであり、該改質は、該磁石の最表面に露
出している結晶粒子の半径に相当する深さ3μm以上に該磁石内部にR金属(但し、Rは
、Nd、Dy、Pr、Tbから選ばれる希土類元素の1種又は2種以上)を拡散浸透し、
Nd2Fe14B主相のNd元素をR金属で置換することによってなされている超小型製品
用のNd−Fe−B系焼結磁石。
【選択図】図1

Description

本発明は、Nd−Fe−B系希土類磁石、特に、超小型モータなどの超小型製品用の微
小、高性能希土類磁石に関する。
Nd−Fe−B系の希土類焼結磁石は、永久磁石の中でも最も高性能磁石として知られ
ており、ハードデスクドライブのボイスコイルモータ(VCM)や磁気断層撮影装置(M
RI)用の磁気回路などに幅広く使用されている。また、この磁石は内部組織がNd
14B主相の周りを薄いNdリッチ副相が取り囲んだミクロ組織を持つことによって保
磁力を発生させ、高い磁気エネルギー積を示すことが知られている。
一方、焼結磁石を実際のモータ等に使用する場合には、研削加工によって最終的な寸法
と同心度などを得ることが実際行われているが、この際に微小な研削クラックや酸化など
によって磁石表面層のNdリッチ相が損傷を受け、その結果として磁石表面部分の磁気特
性が磁石内部の数分の1にまで低下してしまう。
この現象は、特に、体積に対する表面積比率が大きな微小磁石において著しく、例えば
、(BH)maxが360kJ/mである一辺が10mmの角ブロック磁石を1×1×
2mmに切断・研削した場合、(BH)maxは240kJ/m程度に低下し、Nd−
Fe−B系希土類磁石本来の磁気特性が得られない。
Nd−Fe−B系焼結磁石のこのような欠点を改善するため、機械加工によって生じた
変質層を、機械的研磨や化学的研磨で除去する方法が提案されている(例えば、特許文献
1)。また、研削加工した磁石表面に希土類金属を被着して拡散熱処理をする方法が提案
されている(例えば、特許文献2)。また、Nd−Fe−B系磁石表面にSmCo膜を形
成する方法が見られる(例えば、特許文献3)。
特開平9−270310号公報 特開昭62−74048号(特公平6−63086号)公報 特開2001−93715号公報
近年、例えば、携帯電話用振動モータには外径約2mmのNd−Fe−B系円筒状焼結
磁石が多く使用されているが、その磁気特性を実測すると(BH)maxは230kJ/
前後であるため、振動強度を低下させずにさらに小型化することが困難である。さら
に、今後マイクロロボットや体内診断用マイクロモータに要求される高出力・超小型アク
チュエータへの適用は一層難しい状況にある。
本発明では、上記のような従来技術の問題を解決し、高性能な希土類磁石を得ることを
目的とし、特に、小体積の希土類磁石を提供することを目的とする。
本発明者らは、焼結磁石ブロックを切断、穴あけ、研削、研磨等により機械加工した微
小磁石を製造する際の加工損傷による磁気特性の劣化について鋭意調査と対策実験を重ね
た結果、希土類磁石本来の磁気特性を回復させた超小型製品用の微小、高性能希土類磁石
の開発に成功した。
すなわち、本発明は、(1)結晶粒径6〜10μmのNd−Fe−B系焼結磁石ブロッ
ク素材の切断、穴あけ、表面研削により最終的な寸法に形成された、穴のあいた内表面を
有する円筒形状又は円盤形状の焼結希土類磁石であって、最終的な寸法は、表面積/体積
の比が3mm−1以上で、かつ体積が20mm以下であり、該磁石は、研削加工の際に
磁石表面層のNdリッチ相が損傷を受けることにより磁気特性が低下した変質損傷部が改
質されることによって(BH)maxを280kJ/m以上に回復させたものであり、
該改質は、該磁石の最表面に露出している結晶粒子の半径に相当する深さ3μm以上に該
磁石内部にR金属(但し、Rは、Nd、Dy、Pr、Tbから選ばれる希土類元素の1種
又は2種以上)を拡散浸透し、Nd2Fe14B主相のNd元素をR金属で置換することに
よってなされていることを特徴とする、超小型製品用の円筒形状又は円盤形状の焼結希土
類磁石、である。
また、本発明は、(2)Hcj(MA/m)が1.27以上で、Hk/Hcj(%)が
54以上であることを特徴とする円筒形状又は円盤形状の焼結希土類磁石、である。
また、本発明は、(3)内径0.3mmの穴を開けた円筒状の磁石であることを特徴と
する上記(1)又は(2)の焼結希土類磁石、である。
また、本発明は、(4)内径1.9〜3mmの穴を開けた円盤形状の磁石であることを
特徴とする上記(1)又は(2)の焼結希土類磁石、である。
また、本発明は、(5)超小型製品がモータであることを特徴とする上記(1)ないし
(4)のいずれかの焼結希土類磁石、である。
磁石ブロックを切断、穴あけ、研削、研磨等により機械加工すると、磁石表面部は変質
損傷し、磁気特性が低下する。この変質損傷した表面層を有する磁石表面にY及びNdを
始めとしてDy、Pr、Ho、Tbから選ばれる希土類金属の一種以上の単独又は各金属
を相当量含有する合金を成膜して磁石内部に拡散させると、例えば、Nd−Fe−B系希
土類磁石についてみると、これらの希土類金属はNdFe14B主相及びNdリッチ粒
界相のNdと同種の希土類金属であるためにNdと親和性が良く、Ndリッチ相と主に反
応して機械加工によって変質損傷した表面層部分を容易に修復し磁気特性を回復する機能
を果たす。
また、これらの希土類金属の一部が拡散によってNdFe14B主相に入り込んでN
d元素と置換した場合には、いずれの希土類金属も主相の結晶磁気異方性を増加させ、保
磁力が増加して磁気特性を回復させる働きを有している。特に、Tbが主相のNd元素を
全て置換したTbFe14Bの室温における結晶磁気異方性は、NdFe14Bの約
3倍であるために大きな保磁力が得られ易い。Pr−Fe−B系磁石についても同様な回
復機能が得られる。
希土類金属が拡散処理によって浸透する深さは、該磁石の最表面に露出している結晶粒
子の半径に相当する深さ以上とする。例えば、Nd−Fe−B系焼結磁石の結晶粒径はお
よそ6〜10μmであるので、磁石最表面に露出している結晶粒子の半径に相当する3μ
m以上が最低限必要である。これ未満では結晶粒子を包むNdリッチ相との反応が不充分
となり、磁気特性の回復がわずかなものとなる。3μm以上深くなると保磁力が緩やかに
増加し、NdFe14B主相のNdと置換して保磁力をさらに高める効果があるが、過
度に深く拡散すると残留磁化を下げる場合があるため、拡散処理条件を調整して所望の磁
気特性とする深さが望ましい。
本発明において、表面改質による磁気特性の回復は、体積が小さい磁石ほど、また、体
積に対する表面積比の大きい磁石ほど顕著な効果を示す。本発明者らのNd−Fe−B系
焼結磁石のサイズと磁気特性についてのこれまでの研究によれば、磁石サイズがおよそ2
mm角ブロック以下になると、減磁曲線の角型性が悪くなって保磁力の低下を生じること
が明らかになっている。
このサイズにおいては、磁石体積が8mmで表面積/体積比が3mm−1であること
が簡単に計算される。また、円筒形状磁石の場合には、表面積/体積比がさらに増加する
ことになり角型性や保磁力の低下が著しくなる。例として、市販の携帯電話用振動モータ
に搭載されている磁石の外径、内径、長さはそれぞれ2.5mm、1mm、4mm程度で
あり、その体積は約16.5mmに相当する。
したがって、表面積/体積比が2mm−1以上で、より好ましくは3mm−1以上で、
かつ体積がおよそ100mm以下、さらには20mm以下の小型磁石においては、特
に表面層改質による効果が著しく、市販の振動モータに搭載されているNd−Fe−B系
磁石の(BH)maxがおよそ240kJ/mに対して、本発明においては、280k
J/m以上、例えば300〜360kJ/mの高い値が得られる。また、本発明の円
筒状又は円盤形状の焼結磁石は、実施例に示されるように、Hcj(MA/m)が1.2
7以上で、Hk/Hcj(%)が54以上である。
従来、焼結磁石ブロック素材の機械加工により製造した微小磁石は、(BH)maxは
240kJ/m程度に低下し、Nd−Fe−B系希土類磁石本来の磁気特性が得られな
かった。本発明は、表面積/体積の比が3mm−1以上で、かつ体積が20mm以下の
円筒形状又は円盤形状の焼結希土類磁石で(BH)maxが280kJ/m以上の微小
磁石を実現した。
以下、本発明の微小、高性能希土類磁石の製造方法を製作工程にしたがって更に詳しく
説明する。本発明で対象とする希土類磁石ブロック素材は、原料粉末の焼結法や原料粉末
をホットプレスした後に熱間塑性加工法によって製作されたものである。これらの希土類
磁石ブロック素材を切断、穴あけ、研削、研磨等により機械加工して穴のあいた内表面を
有する円筒形状又は円盤形状の微小磁石を製作する。これにより、表面積/体積の比が3
mm−1以上で、かつ体積が20mm以下の微小磁石を製作する。機械加工により形成
する磁石の形状は、好ましくは、実施例に記載するように、例えば、内径0.3mmの微
小な穴を開けた円筒状の磁石や、内径1.9〜3mmの微小な穴を開けた円盤形状の磁石
である。
微小磁石として好適な合金系としては、Nd−Fe−B系やPr−Fe−B系などが代
表的なものとして例示される。なかでも、Nd−Fe−B系焼結磁石は最も磁気特性が高
いにもかかわらず機械加工による特性低下が大きいものである。
変質損傷した表面層を有する磁石表面に成膜する金属は、磁石を構成するNd等の希土
類金属リッチ相の修復強化を目的とするために、Y及びNdを始めとしてDy、Pr、H
o、Tbから選ばれる希土類金属の一種以上の単独又はY、Nd、Dy、Pr、Ho、T
bなどの希土類金属を相当量含有する合金、例えば、Nd−Fe合金やDy−Co合金等
を用いる。
磁石表面への成膜法については特に限定されるものではなく、蒸着、スパッタリング、
イオンプレーティング、レーザーデポジション等の物理的成膜法や、CVDやMO−CV
D等の化学的気相蒸着法、及びメッキ法などの適用が可能である。但し、成膜ならびに加
熱拡散の各処理においては、10−7Torr以下ならびに酸素、水蒸気等の大気由来ガ
スが数十ppm以下の清浄雰囲気内で行うことが望ましい。
R金属を加熱により磁石表面から拡散浸透させる際の雰囲気が、通常入手される高純度
アルゴンガス程度の純度の場合は、アルゴンガス内に含まれる大気由来ガス、すなわち、
酸素、水蒸気、二酸化炭素、窒素等により、該磁石加熱時に表面に被着させたR金属が、
酸化物、炭化物、窒化物となり、効率よく内部組織相まで拡散到達しないことがある。従
って、R金属の加熱拡散時の雰囲気に含まれる大気由来不純物ガス濃度を50ppm程度
以下、望ましくは10ppm程度以下とするのが望ましい。
円筒や円盤などの形状をした微小磁石の表面の全部又は一部に極力均一な膜を形成する
には、複数のターゲットから磁石表面に3次元的に金属成分を成膜させるスパッタリング
法、又は金属成分をイオン化させて、静電気的な吸引強被着特性を利用して成膜させるイ
オンプレーティング法が特に有効である。
また、スパッタリング作業における希土類磁石のプラズマ空間内の保持については、一
個あるいは複数個の磁石を線材や板材で回転自在に保持する方法や、複数個の磁石を金網
製の籠に装填して転動自在に保持する方法を採用することができる。このような保持方法
により三次元的に微小磁石の表面全体に均一な膜を形成することができる。
上記の成膜用希土類金属は、磁石表面に単に被覆されているだけでは磁気特性の回復が
認められないため、成膜した希土類金属成分の少なくとも一部が磁石内部に拡散してNd
などの希土類金属リッチ相と反応していることが必須である。このため、通常は成膜した
後に500〜1000℃において短時間の熱処理を行って成膜金属を拡散させる。スパッ
タリングの場合には、スパッタリング時のRF及びDC出力を上げて成膜することにより
成膜中の磁石を上記温度範囲、例えば800℃位にまで上昇させることができるため、実
質的に成膜させながら同時に拡散を行うこともできる。
図4に、本発明の磁石を得るための製造方法を実施するのに好適な3次元スパッタ装置
の概念を示す。図4において、輪状をした成膜金属からなるターゲット1およびターゲッ
ト2を対向させて配置し、その間に水冷式の銅製高周波コイル3を配置する。円筒形状磁
石4の筒内部には、電極線5が挿入されており、該電極線5はモータ6の回転軸に固定さ
れて円筒形状磁石4を回転できるように保持している。
ここで、円筒形状磁石4の筒内部と電極線5との回転時の滑り防止のために、電極線5
は微細な波形にねじられて筒内部に接触している。微小磁石の重さは数十mg程度なので
電極線5と円筒形状磁石4との回転時の滑りはほとんど起きない。
さらに、陰極切り替えスイッチ(A)により円筒形状磁石4の逆スパッタが実施可能な
機構を有している。逆スパッタ時は電極線5を通じて磁石4を負電位にして、磁石4の表
面のエッチングをする。通常スパッタ作業時はスイッチ(B)に切り替えて行う。通常ス
パッタ時は電極線5に電位を与えずにスパッタ成膜をするのが一般的であるが、成膜する
金属の種類や膜質制御のため、場合によっては電極線5を通じて磁石4に正のバイアス電
位を与えてスパッタ成膜をすることもある。通常スパッタ中は、Arイオンとターゲット
1、2から発生する金属粒子、及び金属イオンが混在したプラズマ空間7を形成して、円
筒形状磁石4の表面の上下左右前後から3次元的に金属粒子が飛来して成膜される。
このような方法で成膜した磁石は、成膜しながら拡散させていない場合は、スパッタ装
置内を大気圧に戻した後にスパッタ装置に連結したグローブボックスに大気に触れずに移
送して、同じく該グローブボックス内に設置した小型電気炉に装填して膜を磁石内部に拡
散させるために熱処理を行う。
なお、一般に希土類金属は酸化され易いため、成膜後の磁石表面にNiやAlなどの耐
食性金属や撥水性のシラン系被膜を形成して実用に供することが望ましい。また、改質表
面金属がDyやTbの場合にはNdと比較して空気中での酸化進行が著しく遅いため、磁
石の用途によっては耐食性被膜を設けることを省略することも可能である。
以下、本発明を実施例にしたがって詳細に説明する。
Nd12.5Fe78.5Co組成の合金インゴットからストリップキャスト法
によって厚さ0.2〜0.3mmの合金薄片を製作した。次に、この薄片を容器内に充填
し、500kPaの水素ガスを室温で吸蔵させた後に放出させることにより、大きさ約0
.15〜0.2mmの不定形粉末を得て、引き続きジェットミル粉砕をして粒径約3μm
の微粉末を製作した。この微粉末にステアリン酸カルシウムを0.05wt%添加混合し
た後に磁界中プレス成形をし、真空炉に装填して1080℃で1時間焼結をして、18m
m角の立方体磁石ブロック素材を得た。
次いで、この立方体磁石ブロック素材に砥石切断と外径研削、及び超音波穴あけ加工を
して外径1mm、内径0.3mm、長さ3mmの円筒形状磁石を製作した。この状態のま
まのものを比較例試料(1)とした。体積2.14mm、表面積13.67mm
表面積/体積の比は6.4mm−1である。
次に、図4に示す3次元スパッタ装置を用い、この円筒形状磁石表面へ金属膜を成膜し
た。ターゲットとして、ディスプロシウム(Dy)金属を用いた。円筒形状磁石の筒内部
には、電極線として直径0.2mmのタングステン線を挿入させた。用いた輪状ターゲッ
トの大きさは、外径80mm、内径30mm、厚さ20mmとした。
実際の成膜作業は以下の手順で行った。上記円筒形状磁石の筒内部にタングステン線を
挿入してセットし、スパッタ装置内を5×10−5Paまで真空排気した後、高純度Ar
ガスを導入して装置内を3Paに維持した。次に、陰極切り替えスイッチを(A)側にし
て、RF出力20WとDC出力2Wを加えて10分間の逆スパッタを行って磁石表面の酸
化膜を除去した。続いて、切り替えスイッチを(B)側にして、RF出力80WとDC出
力120Wを加えて6分間の通常スパッタを行った。
得られた成膜磁石は、装置内を大気圧に戻した後にスパッタ装置に連結したグローブボ
ックスに大気に触れずに移送して、同じく該グローブボックス内に設置した小型電気炉に
装填して初段を700〜850℃で10分間、2段目を600℃で30分間の熱処理を行
った。これらを本発明試料(1)〜(4)とした。なお、熱処理における磁石の酸化を防
止するため、グローブボックス内は精製Arガスを循環させ、酸素濃度を2ppm以下に
、露点を−75℃以下に維持した。
各試料の磁気特性は、4.8MA/mのパルス着磁を印加した後に振動試料型磁力計を
用いて測定した。表1に、各試料の磁気特性値を、図1に、比較例試料(1)及び本発明
試料(1)と(3)の減磁曲線を抜粋して示す。
表1から明らかなように、Dy金属成膜とその後の熱処理によって本発明試料はいずれ
も比較例試料より高い最大エネルギー積BHmaxを示し、特に、試料(3)においては
比較例試料(1)と比較して38%の回復が認められた。この理由は、機械加工によって
損傷を受けたNdリッチ層が修復強化されたことによると推察され、その結果として、図
1の減磁曲線の形状から明らかなように、未処理の比較例試料と比較して表面改質された
本発明試料の角型性(Hk/Hcj)が著しく改善されている。ここで、Hkは、減磁曲
線上において磁化の値が残留磁化の90%に相当するときの磁界を意味する。
Figure 2006148108
上記測定後の試料についてDy膜の観察を行った。まず、本発明試料(1)について、
樹脂に埋め込み研磨した後に硝酸アルコールで軽くエッチングをし、500倍の光学顕微
鏡で観察した。その結果、約2μmの皮膜が試料の外周全面に均一に形成されていること
がわかった。
また、本発明試料(2)については、分析型走査型電子顕微鏡を用いて磁石の内部構造
を観察した。その結果、図2(a)の反射電子像に示すように、試料表面部はDy成膜と
その後の熱処理によって内部と異なった構造を呈していた。また、図2(b)のDy元素
像によれば、表面層に高濃度のDyが存在すると同時に、試料内部にもDy元素が拡散浸
透していることがわかり、拡散深さはおよそ10μmであることがわかった。なお、像中
央部に見られるDy高濃度箇所は研磨時に剥がれた表層が一部転写したためと推測される
実施例1において製作した外径1mm、内径0.3mm、長さ3mmの円筒形状磁石に
、Nd、Dy、Pr、Tb、及びAlの各金属をそれぞれ成膜した。ここでNdとAlの
ターゲット寸法は、実施例1のDyと同じく外径80mm、内径30mm、厚さ20mm
とし、PrとTbターゲットは、上記Alターゲットの試料に対向する面にのみ厚さ2m
mの各金属を貼付固定して製作した。
Nd金属ターゲットを3次元スパッタ装置に取り付けた後、円筒形状磁石をタングステ
ン電極線に2個セットし、Nd金属を磁石表面に成膜した。同様に他の金属を成膜した。
成膜作業は、装置内にArガスを導入して装置内圧力を3Paに維持し、RF出力20W
とDC出力2Wを加えて10分間の逆スパッタを行い、続いてRF出力100WとDC出
力200Wを加えて5分間スパッタを行った。
各金属皮膜の厚さは、磁石2個の内1個を樹脂に埋め込んで顕微鏡観察した結果、Al
が3.5μm、希土類金属は2.5〜3μmの範囲であった。一方、他の磁石はグローブ
ボックス内の小型電気炉に装填し、800℃で10分間と600℃で30分間の拡散熱処
理を行って本発明試料(5)から(8)、及び比較例試料(2)とした。
なお、比較例試料(1)は表1より再掲載し、比較例試料(3)はNdを成膜したまま
熱処理を施さない試料である。得られた磁石試料の磁気特性を表2に示す。表2から明ら
かなように、成膜金属がAlの場合には金属膜のない比較例試料(1)とほぼ同等の磁気
特性であり、表面改質の効果が見られない。また、比較例試料(3)は拡散熱処理を実施
しないために拡散層が形成されず、磁気特性の回復はみられない。一方、本発明試料はい
ずれも保磁力Hcjと最大エネルギー積BHmaxが大幅に回復した。
Figure 2006148108
Nd12Dy2.5Fe76.5Co組成の焼結磁石ブロックを、切断、研削、
及び穴あけをして、外径10mm、内径3mm、長さ1.4mmの円盤形状磁石を製作し
た。体積100mm、表面積200mm、表面積/体積の比は2.0mm−1である
。その表裏面にTb膜を形成した。スパッタリング条件は、RF出力40WとDC出力2
Wを加えて10分間の逆スパッタを行った後、RF出力150WとしてDC出力を100
〜800Wまで可変させてスパッタ条件の異なる磁石を製作した。
ここで成膜したTb膜厚は、予めDC出力と膜厚との関係を調べた後に実施して、10
0Wのときに20分間、800Wのときに5分間として、いずれの磁石の成膜厚さもおよ
そ3μmとなるようにスパッタ時間の制御をした。また、本実施例においては成膜後の拡
散熱処理を実施せずに、成膜時の磁石試料の温度上昇によりTb金属の熱拡散を意図した
。成膜時の試料温度はDC出力の増加にしたがって上昇し、DC出力が600Wのときに
試料の赤熱が認められたため、このときの温度が約700℃と推定された。Tb金属の拡
散深さは、磁気特性測定後に各試料を埋め込んで分析型走査電子顕微鏡を用い、Tb元素
像の磁石試料表面からの分布状況から測定した。
得られた磁石試料の磁気特性を表3に示す。表3から明らかなようにDC出力の増加に
したがって試料加熱が起こり、拡散深さ(t)が3μm以上の本発明試料(9)〜(13
)において287kJ/m(約36MGOe)以上の高いエネルギー積が得られた。一
方、試料加熱が不充分と推測される比較例試料(4)〜(6)は、Tb金属の磁石中への
拡散がほとんど認められないため低い値にとどまっている。このように、スパッタ条件を
適宜選択することによってTb金属の磁石中への拡散を成膜と同時に行って、後の熱処理
工程を省略することもできる。
Figure 2006148108
Nd12.5Fe78.5Co組成の合金から、実施例1と同様の工程で外径5
.2mm、内径1.9mm、厚さ3mmの円盤形状をした焼結磁石を製作した。この磁石
に外径研削と内径研削加工を施した後、平面研削盤を使用して外径5mm、内径2mm、
厚さが0.1mm,0.2mm,0.5mm,0.8mm,1.2mm,1.8mmの各
種寸法の円盤状磁石を得た。体積は約2mm〜30mm、表面積/体積の比は約21
mm−1〜2mm−1の範囲である。
これらの磁石をステンレス鋼電極線に通して保持し、神港精機製のアーク放電型イオン
プレーティング装置に取り付けた。そして、装置内を1×10−4Paまで真空排気した
後に高純度Arガスを導入して装置内を2Paに維持した。上記ステンレス鋼線に−60
0Vの電圧を印加して20rpmで回転させながら、電子銃によって溶解蒸発させ、かつ
熱電子放射電極とイオン化電極によってイオン化したDy粒子を、15分間磁石表面に堆
積させて膜厚2μmの磁石試料を製作した。
次に、この試料をグローブボックス内の小型電気炉に装填して、初段目を850℃で1
0分間、2段目を550℃で60分間の拡散熱処理を行って、試料厚さ0.1mmの本発
明試料(14)から厚さ1.2mmの本発明試料(18)とした。なお、研削加工後の磁
石を厚さ順に比較例試料(7)〜(11)とした。
図3に、これら試料の厚さ寸法、表面積/体積、体積をパラメータにしたときの磁気特
性(BH)maxの結果を示す。図3より、Dy金属を成膜して拡散熱処理をした本発明
試料(14)〜(18)は、未処理の比較例試料(7)〜(11)に対していずれの寸法
においても(BH)maxの回復が見られた。特に、磁石試料の体積が20mmより小
さく、かつ表面積に対する体積比が3mm−1より大きい場合、さらには体積が10mm
より小さく、かつ表面積に対する体積比が5mm−1より大きい場合において、表面改
質による磁気特性の回復効果が著しいことが判った。
本発明は、(BH)maxが280kJ/m以上の、表面積/体積の比が3mm−1
以上で、かつ体積が20mm以下の円筒形状又は円盤形状の焼結希土類磁石を超小型製
品用に提供することができる。また、その結果として、微小で、高性能磁石を用いた超小
型・高出力モータなどの実現に貢献するものである。さらに、従来適用が難しい状況にあ
ったマイクロロボットや体内診断用マイクロモータに要求される高出力・超小型アクチュ
エータへの適用を可能にする。
本発明試料(1)と(3)、及び比較例試料(1)の減磁曲線を示すグラフである。 Dy成膜後に熱処理した本発明試料(2)のSEM像(a:反射電子像、b;Dy元素像)を示す図面代用写真である。 本発明及び比較例試料の、磁石試料寸法と(BH)maxの関係図である。 本発明の磁石を得るための製造方法に好適に使用できる3次元スパッタ装置のターゲット周辺の模式図である。
符号の説明
1、2:金属ターゲット
3 :水冷式高周波コイル
4 :円筒形状磁石
5 :電極線
6 :モータ
7 :プラズマ空間

Claims (5)

  1. 結晶粒径6〜10μmのNd−Fe−B系焼結磁石ブロック素材の切断、穴あけ、表面研
    削により最終的な寸法に形成された、穴のあいた内表面を有する円筒形状又は円盤形状の
    焼結希土類磁石であって、最終的な寸法は、表面積/体積の比が3mm−1以上で、かつ
    体積が20mm以下であり、該磁石は、研削加工の際に磁石表面層のNdリッチ相が損
    傷を受けることにより磁気特性が低下した変質損傷部が改質されることによって(BH)
    maxを280kJ/m以上に回復させたものであり、該改質は、該磁石の最表面に露
    出している結晶粒子の半径に相当する深さ3μm以上に該磁石内部にR金属(但し、Rは
    、Nd、Dy、Pr、Tbから選ばれる希土類元素の1種又は2種以上)を拡散浸透し、
    Nd2Fe14B主相のNd元素をR金属で置換することによってなされていることを特徴
    とする、超小型製品用の円筒形状又は円盤形状の焼結希土類磁石。
  2. Hcj(MA/m)が1.27以上で、Hk/Hcj(%)が54以上であることを特徴
    とする請求項1記載の円筒形状又は円盤形状の焼結希土類磁石。
  3. 内径0.3mmの穴を開けた円筒状の磁石であるあることを特徴とする請求項1又は2記
    載の焼結希土類磁石。
  4. 内径1.9〜3mmの穴を開けた円盤形状の磁石であるあることを特徴とする請求項1又
    は2記載の焼結希土類磁石。
  5. 超小型製品がモータであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の焼結希
    土類磁石。
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