JP2005205252A - バイオマスを含む高濃度スラリー、および高濃度スラリーの製造方法、並びにバイオマス燃料の製造方法 - Google Patents

バイオマスを含む高濃度スラリー、および高濃度スラリーの製造方法、並びにバイオマス燃料の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 その目的は、高効率、且つ、低エネルギーでバイオマスから燃料ガスおよび固形燃料を製造するため方法を提供する
【解決手段】 100〜250℃に加熱した高圧水に木質系バイオマスが懸濁した低濃度スラリーを調製し、このスラリーにさらに木質系バイオマスを添加して前記スラリーを高濃度化する高濃度スラリーの製造方法、および、前記高濃度スラリーを加圧下、150〜350℃に加熱して改質する改質工程、前記改質工程を経た高濃度スラリーを水溶成分と水不溶成分に分離する分離工程、前記水溶成分をガス化するガス化工程、あるいは、前記水不溶成分を脱水する脱水工程を備えた燃料ガスあるいは固形燃料の製造方法。
【選択図】 図1

Description

本発明は、産業廃棄物や家庭から排出される廃棄系バイオマスを原料として、燃料ガスおよび固形燃料を製造する方法に関するものであり、詳しくは、多量のバイオマスを一時に処理し、効率的に上記燃料に転換し得る方法に関するものである。
林地残材、建築廃材、稲ワラ、籾殻、家畜屎尿、厨芥、下水汚泥などの廃棄物系バイオマスを原料としてエネルギー転換利用する技術は、処分場不足対策、循環型社会構築の観点から多数提案されている。
上記バイオマスを利用したエネルギー転換技術の一つとして、(1)バイオマスを熱分解してガス化する方法(特許文献1〜3)や、(2)亜臨界水または超臨界水による反応を利用してバイオマスをガス化する方法(特許文献4〜6)が提案されている。
上記(1)熱分解によるガス化方法とは、加熱炉において、700〜1000℃の条件下でバイオマスを熱分解しガス化する技術である。しかしながら、かかる方法では、含水率の高い木質系バイオマスを原料とする場合には、投入熱量が水分の蒸発潜熱として消費される割合が高くなるため、効率の良いエネルギー回収ができないといった問題がある。
一方、(2)亜臨界水または超臨界水による反応を利用してバイオマスをガス化する方法は、反応時の媒体として亜臨界あるいは超臨界状態の水を用いるため、環境に対する負荷も低く、また、原料に含水率の高い木質系バイオマスや家庭から排出される厨芥などの廃棄系バイオマスを用いる場合であっても、水分の蒸発潜熱による投入熱量のロスが無いため、効率の良いエネルギー回収が可能となる。例えば、特許文献4には、水などの液体中に、液状および固形状の有機物が分散した液状有機物を超臨界水中で水熱反応させて、最終的に水素を主成分とする燃料ガスを製造する方法が提案されている。
特開2002−38163号 特開2003−261882号 特開2003−41268号 特開2002−105466号 特開平11−172262号 特開平11−172262号
しかしながら、上記(2)亜臨界水または超臨界水による反応を利用する方法は、予め媒体である水にバイオマスを懸濁させスラリー化しておく必要がある。したがって、使用するバイオマスの種類によっては多量の水が必要となる場合がある。特に、木質系バイオマスを使用する場合には、木材に含まれる有機成分に由来する撥水性によりバイオマス濃度を高めることが困難となる傾向がある。本発明者らの検討によれば、木質系バイオマス濃度が10質量%を超えると、ダマ状となって、スラリーを製造することが困難であるという結果が得られている。したがって、上記(2)の技術においても、バイオマス含量の低い、希薄なスラリー状態で処理せざるを得ず、かかる場合には、処理対象物であるバイオマスに対して、多量の水を使用することになるので、この水を亜臨界あるいは超臨界状態とするために多大なエネルギーを投入しなければならなくなって、効率の良いエネルギー回収が不可能になるといった問題があった。
本発明は、上述のような事情に着目してなされたもので、その目的は、高効率、且つ、低エネルギーでバイオマスから燃料ガスおよび固形燃料を製造するための方法を提供することにある。
本発明に係る高濃度スラリーの製造方法とは、100〜250℃で、該温度における水の蒸気圧以上の圧力に保持された高温高圧水にバイオマスが懸濁した低濃度スラリーを調製し、このスラリーにさらにバイオマスを添加して前記スラリーを高濃度化するところに要旨を有するものである。
前記低濃度スラリーの調製は、予め大気圧下、100℃未満で水にバイオマスを懸濁させて、これを攪拌しながら温度100〜250℃に加熱し、且つ、圧力を前記温度における水の蒸気圧以上にして行うのが好ましい。
前記バイオマスとしては木材を使用することが推奨される。
上記方法により製造される高濃度スラリー中のバイオマスの濃度は10質量%以上であるのが好ましい。
本発明は、上記バイオマスを多量に含む高濃度スラリーを製造する方法に加えて、該高濃度スラリーを原料として燃料ガスおよび固形燃料を製造する方法を提供するものである。すなわち、本発明に係る燃料ガスの製造方法とは、前記高濃度スラリーを150〜350℃に加熱し、且つ、圧力を該温度における水の蒸気圧以上にして前記スラリー中の前記バイオマスを改質する改質工程、前記改質工程を経た高濃度スラリーから水溶液を回収する回収工程、および、前記水溶液のガス化工程を備えるところに要旨を有する。
また、本発明に係る固形燃料を製造する方法とは、前記高濃度スラリーを150〜350℃に加熱し、且つ、圧力を該温度における水の蒸気圧以上にして前記スラリー中の前記バイオマスを改質する改質工程、前記改質工程を経た高濃度スラリーから水不溶成分を回収する回収工程、および、前記水不溶成分を脱水し固形燃料とする工程を備えるところに要旨を有している。
さらに本発明は、上記高濃度スラリー、燃料ガスおよび固形燃料の製造方法に加えて、上記高濃度スラリーの製造方法を実施するための装置をも提供するものである。すなわち、上記本発明に係る製造方法を実施するための装置とは、スラリー製造用容器、バイオマスを粉砕する粉砕機、粉砕機で粉砕した粉砕物をスラリー製造用容器に供給する供給手段、前記スラリー製造用容器へ水を供給する水供給手段、前記スラリー製造用容器内で、粉砕物を水または高温・高圧水中に混合・懸濁させる混合手段、スラリー製造用容器内の水および/またはスラリーを加熱する加熱手段を備えるところに要旨を有するものである。
本発明によれば、従来以上に多量のバイオマスを含む高濃度スラリーの調製が可能であるため、これまで廃棄処理されていたバイオマスから効率的に燃料を回収することができる。
本発明者等は、高温・高圧水の特性を利用してバイオマスを分解しエネルギー等へ転換するにあたって、所定条件下において、多段階でバイオマスを添加・混合すれば、多量のバイオマスを含む高濃度スラリーを調製することが可能となり、その結果、従来のバイオマスの処理技術に比べて少ないエネルギー投入量で効率良く有用物を生成し得ることを見出し、本発明を完成した。以下、本発明について詳細に説明する。
本発明に係る高濃度スラリーの製造方法とは、100〜250℃で、該温度における水の蒸気圧以上の圧力に保持された高温高圧水にバイオマスが懸濁した低濃度スラリーを調製し、このスラリーにさらにバイオマスを添加して前記スラリーを高濃度化するところに最大の特徴を有するものである。
上述のように、バイオマスの含有量が高められた高濃度スラリーを調製しておくことで、多量のバイオマスを一時に処理することが可能となるのに加えて、スラリーの媒体である水を亜臨界又は超臨界状態へ加熱加圧する際に必要なエネルギー量を顕著に低減することが可能となったのである。
本発明に係る方法で原料として使用できるバイオマスは、特に限定されるものではなく、木材粉、木材片、チップダスト、のこくず、おがくずなどの木質系バイオマス、ヤシガラ、サトウキビバガス、麦わら、籾殻などの農業系バイオマス、生ごみなどの廃棄物系バイオマスなど様々なバイオマスを用いることができる。上記バイオマスの中でも、資源の有効利用の観点からは木質系バイオマスを使用するのが好ましい。なお、上記木材片としては、例えば建築解体廃棄物や森林伐採時に生じる間伐材、あるいは、公園や街路樹などの剪定枝などが挙げられる。このように本発明によれば、通常であれば廃棄処分されるバイオマスを有効活用できるため、処理場等の問題を解決すると共に、エネルギー問題の解決にもつながる。以下、バイオマスとして木質系バイオマスを使用する場合を例にして説明する。
上記バイオマスは、粉砕して用いるのが好ましい。大きさは、タイラー社の標準篩で5メッシュ(4000μm:JIS Z8801の規定)と200メッシュ(74μm)の範囲のものが好ましく、より好ましくは10メッシュ(1680μm)と150メッシュ(105μm)の範囲のもの、さらに好ましくは20メッシュ(840μm)と100メッシュ(149μm)の範囲のものである。本発明者らの知見によれば、バイオマスの大きさが上記に下限として示した篩を通過してしまう程小さい場合には、機械的な粉砕が困難となる傾向があり、一方上記上限よりも大きい場合には、バイオマスと水との接触面積が小さくなり、結果として燃料ガスの収率が低下し、また固形燃料の着火性が悪化する傾向がある。
本発明法では、まず、上記バイオマスと水とを混合して低濃度スラリーを調製する。このときに用いる木材の量は、木材の種類、また使用する水の量など、処理時の条件によって適宜決定すればよい。しかし、上述したように一時に多量の木材をスラリー化することは困難であるため、スラリーの状態を見ながら、攪拌可能な範囲で添加するのが好ましく、一応の目安としては、使用する水の量に対して1質量%以上とするのが好ましく、より好ましくは5質量%以上である。
低濃度スラリーを調製する際に用いる水は、後述するような高温・高圧状態であってもよく、また、常温・常圧状態であってもよい。バイオマスの添加作業が簡便であり、省エネの点からは、100℃未満の常圧下で低濃度スラリーを調製するのが好ましい。
次いで、上記低濃度スラリーにさらにバイオマスを添加して高濃度スラリーを調製する。バイオマスの添加は、低濃度スラリーを昇温・昇圧した後に行うのが好ましい。この際、前記低濃度スラリーの温度は、100℃以上、250℃以下とするのが好ましい。より好ましくは、150℃以上、200℃以下である。温度が上記下限値より低い場合には、バイオマスと水との反応が有効に生じず、スラリーの高濃度化が進行し難いからである。一方、温度が上記上限値より高い場合には、原料であるバイオマスの分解が進みすぎて、最終的にガス化の原料の回収率が低下する傾向がある。
スラリーを高濃度化する際の圧力は、処理温度における水の蒸気圧以上とするのが好ましい。圧力が蒸気圧未満では液相部が形成されず、バイオマスの分散および可溶化が十分に進まないからである。例えば、前記スラリーの温度を100℃とする場合であれば、圧力は0.11MPa以上とするのが好ましく,150℃であれば0.5MPa以上,200℃であれば1.6MPa以上,250℃であれば4.0MPa以上とするのが好ましい。尚、圧力の上限は特に限定されず、使用する設備等を考慮して適宜設定すればよい。なお、ポンプなどの装置に対する負荷を低減する観点からは、圧力は、上記それぞれの温度における下限値に近い圧力を採用するのが好ましい。
このとき添加するバイオマスの量は、使用する水の量に対して1質量%以上、より好ましくは5質量%以上である。
上述のようにして高濃度化された高濃度スラリー中のバイオマス含有量は、10質量%以上であるのが好ましく、より好ましくは13質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上、さらに20質量%以上であるのが望ましい。バイオマス含有量が上記下限より少ない場合には、従来の方法での処理が可能であり、また、高効率且つ低コストでバイオマスを燃料ガスなどに転換するといった本発明を適用する意義が見出せないからである。なお、バイオマスの含有量の上限は、スラリー状態を保てる程度であれば特に限定されない。
なお、上記説明では、2段階でバイオマスを添加しスラリーを高濃度化する方法について述べたが、本発明は上記記載には限定されず、3段階以上の多段階でバイオマスを増量し、高濃度スラリーとする場合にも適用することができる。
上述のようにして製造された高濃度スラリーは、高濃度石炭・水スラリー燃料(CWM:coal water mixture)のように、火力発電所の燃料などとして、そのまま利用することができる。
また本発明は、上述のようにして調製した高濃度スラリーを原料として燃料ガスおよび固形燃料を製造する方法も提供するものでもある。
すなわち、本発明に係る燃料ガスの製造方法とは、上述のようにして調製した高濃度スラリーを原料として、この高濃度スラリーを150〜350℃に加熱し、且つ、圧力を該温度における水の蒸気圧以上にして前記スラリー中の前記バイオマスを改質する改質工程、前記改質工程を経た高濃度スラリーから水溶液を回収する回収工程、および、前記水溶液のガス化工程を備えるところに特徴を有するものである。
まず、上記改質工程について説明する。改質工程では、高温・高圧水の性質を利用して、高濃度スラリー中のバイオマスを分解・低分子化し、燃料ガスの原料となるガス化原料を生成する。例えば、木質系バイオマスを原料に用いた場合であれば、単糖、オリゴ糖などのヘミセルロース、セルロース由来物、リグニン分解物、あるいは有機酸などがガス化原料として得られる。
改質処理は、加圧下、150℃以上,350℃以下で行うのが好ましい。温度が上記上限値よりも高い場合には、バイオマスの分解よりも、改質反応により生成したガス化原料の熱分解が顕著になり(無機化、CO2の生成)、目的物であるガス化原料の収量が低減する場合がある。一方、温度が上記下限値よりも低い場合には、改質反応が進行し難くなる傾向がある。
改質反応時の圧力は、反応時の温度における蒸気圧以上とするのが好ましい。圧力が、当該温度における蒸気圧に満たない場合には、液相を保持することが困難だからである。例えば、反応時の水の温度が250℃であれば,圧力を4.0MPa以上とすればよく、また350℃であれば,圧力を16.6MPa以上とすればよい。
上記改質反応は、30分未満で行うのが好ましい。
上記改質反応終了後、改質工程を経た高濃度スラリーから水溶液を回収する(回収工程)。水溶液成分の回収には、上記高濃度スラリー中の水不溶成分を沈降させて、上澄み液を分離する方法、高濃度スラリーをろ過して水不溶成分を除去する方法、あるいは遠心分離機やフィルタープレスなど使用する方法を採用できる。
上記回収工程で回収された水溶液中には、上述のガス化原料が含まれている。ここで、回収された水溶液は、ガス化工程で、水素などを主成分とする燃料ガスへと転換される。上記ガス化原料のガス化は、前記回収工程で得られた水溶液を昇温昇圧して水の超臨界状態にしたり、あるいは、亜臨界状態下において、触媒と接触させることによって行われる。このとき使用可能な触媒としては、ラネーニッケルなどのNi系触媒、白金などの貴金属系や、活性アルミナ、Rh/CeO/SiO2触媒、Fe触媒などを使用することができる。
上記触媒の形状は特に限定されず、粒状,円柱状,球状,ペレット状,ハニカム状など種々の形態の採用が可能である。また、上記触媒の大きさは、ガス化工程で使用する反応器への充填性等に応じて適宜決定すればよい。
上記ガス化原料のガス化を行う反応装置としては、固定床流通式反応装置、流動床型反応装置などが使用可能である。尚、反応時間等は、反応装置のサイズや処理対象であるガス化原料に応じて適宜決定すればよい。上記反応装置への高濃度スラリーの供給は、液の空間速度が0.1hr-1以上,10hr-1以下となるようにするのが好ましく、より好ましくは0.2hr-1以上,5hr-1以下である。
上術のようにしてガス化原料の転換を行った後、反応液からガス成分を気液分離して、水素を主成分とする燃料ガスを得る。
以上、本発明に係る燃料ガスを製造する方法について述べたが、本発明は、燃料ガスを得ると同時に、固形燃料を得ることも目的としている。すなわち、本発明に係る固形燃料の製造方法とは、上記燃料ガスの製造方法の場合と同様、バイオマスを原料とし、これを水に懸濁させた高濃度スラリーを調製した後に、改質反応を行う。そして、改質工程を経た高濃度スラリーから水不溶成分を回収し、これを脱水工程において、含水量を十分に低減し、成型して固形燃料とするものである。
上記水不溶成分の脱水は、ろ過機、フィルタープレス、ベルトプレス、遠心脱水機などを使用することができる。なお、このとき得られるろ液は、ガス化工程に供給してもよいし、スラリーの高濃度化の際に使用する水として再利用してもよい。
上述のようにして得られる固形燃料は、原料であるバイオマスに比べて含水量が低下されており、また高い発熱量を有するため、石炭代替材料として、発電用の水蒸気ボイラーや高炉吹込み用の固形燃料としても利用することができる。
次に、本発明に係る高濃度スラリーの製造方法を実施するための装置について説明する。図1に、高濃度スラリー製造装置の一実施例を示した。
本発明に係る高濃度スラリーの製造装置とは、スラリー製造用容器1、バイオマスを粉砕する粉砕機2、粉砕機2で粉砕した粉砕物をスラリー製造用容器1に供給する供給手段3、前記スラリー製造用容器1へ水を供給する水供給手段4、前記スラリー製造用容器1内で、粉砕物を水または高温・高圧水中に混合・懸濁させる混合手段5、スラリー製造用容器1内の水および/またはスラリーを加熱する加熱手段6を備えるところに特徴を有するものである。
まず、原料であるバイオマスは、粉砕機2へと供給される。粉砕機2としては、反発式粉砕機、圧潰式粉砕機、衝撃式粉砕機、ロールクラッシャーなどが使用できる。ここで、所定の大きさにまで粉砕されたバイオマスは、供給手段3を介してスラリー製造用容器1へと送られる。上記供給手段3は、粉砕物を連続的に供給できるものであれば良く、粉砕物を一時的に貯蔵する貯蔵槽と、貯蔵槽に蓄えられた粉砕物を所定量・連続的にスラリー製造容器1へと供給する手段とから構成されたものが好ましい。具体的には、図1に示した駆動手段31を有するスクリューコンベアー32以外にも、バケットコンベア、振動コンベア、空気コンベアなどが使用できる。なお、前記供給手段3は、スラリー製造用容器1へ連続的にバイオマスを供給できるように、複数個設けてもよい。
粉砕されたバイオマスは、供給手段3によってスラリー製造用容器1へと供給される。スラリー製造用容器1には、スラリー製造用容器1へ水を高圧力で供給する水供給手段4、バイオマスと水とを混合・攪拌するための攪拌手段5および、系内の温度を制御する加熱手段6が設けられている。前記スラリー製造用容器1は、高温・高圧状態が保持できるものであれば特に限定されず、従来公知のものが使用できる。
前記水供給手段4は、前記スラリー製造用容器1内へ供給する水を貯めておくタンク42と、前記タンク42から前記スラリー製造用容器1へ水を供給するための圧入ポンプ41から構成されたものであるのが好ましい。なお、前記圧入ポンプ41は、水を供給する役割に加えて、スラリー製造用容器1内の圧力を所定圧力に保持する手段としても機能する。
前記攪拌手段5としては、図示したような羽根51(プロペラ形翼、タービン形翼、平羽根翼など)をモーター52で回転させる攪拌機のみに限られず、例えば、後述する搬送手段8から分岐した循環手段7を設ける態様であっても良い。すなわち、循環手段7を採用する場合には、スラリー製造用容器1の下部からスラリーを一部抜き出し、該スラリーをスラリー製造用容器1の上部からスラリー製造用容器1内へ再度供給することで、スラリー製造用容器1内のスラリーを攪拌することができる。尚、このときスラリー製造用容器1から抜き出したスラリーの温度が低下しないように、循環手段7には温度保持手段、例えば加熱機など(図示せず)を設けておくのが好ましい。攪拌手段5としては、上記回転羽根攪拌機や循環ポンプ式以外にも、空気吹き込み攪拌機などを使用することができる。
上記スラリー製造用容器1に設ける加熱手段6は、スラリー製造用容器1内のスラリーあるいは水を加熱できるものであればよく、従来公知のものを使用できる。なお、前記スラリー製造用容器1に設ける加熱手段6の数は限定されず、複数設けてもよい。また、上記スラリー製造用容器1が加熱機能を有するものであれば、特別に加熱手段6を設けなくてもよい。
上記スラリー製造用容器1で製造された高濃度スラリーは、搬出手段8を介してスラリー製造用容器1から搬出される。
次に、本発明に係る燃料ガスおよび/または固形燃料の製造方法を実施するための装置について説明する。図2には燃料ガスおよび/または固形燃料の製造装置の一実施例を示した。
図2中、スラリー製造装置11は図1と同一の構成である。このスラリー製造装置11で得られた高濃度スラリーは、高圧ポンプ12により加熱反応器13へと供給される。このとき、高濃度スラリーは、高濃度化工程における温度・圧力を保持したまま、加熱反応器13へと供給してもよく、また、一度冷却した後、加熱反応器13へと供給してもよい。しかしながら、より少ないエネルギー投入量で糖類などを得る観点からは、高濃度化工程における温度を保持したまま、改質反応を行う加熱反応器13へと供給するのが好ましい。
加熱反応器13はスラリーの導入および排出が可能に構成されており、また、改質処理に適した温度にまで高めるためのヒーター14が備えられている。この加熱反応器13に供給された高濃度スラリーは、加熱反応器13内で所定の温度・圧力にまで高められ、バイオマスの加水分解反応が行われる。なお、反応時の温度制御は、前記ヒーター14により行い、圧力の制御は、前記スラリー製造装置11と加熱反応器13との間に設けられた高圧ポンプ12と、後述する固液分離フィルター15と気液分離器17との間に設けられた圧力保持バルブ16により行う。すなわち、改質反応を行う場合には、圧力保持バルブ16で圧力を設定すると共に、高圧ポンプ12によって加熱反応器13内を昇圧し、高濃度スラリーをヒーター14で加熱し、加熱反応器13内が、上記温度における水の蒸気圧以上となるように制御すればよい。
改質反応終了後、高濃度スラリーは加熱反応器13から排出され、次いで、固液分離フィルター15で、水溶液と水不溶成分とに分離する。このとき使用するフィルターは、複数個、並列に配置してもよい。複数個のフィルターを使用する場合、一方のフィルターには生成液を流して水不溶成分を分離すると共に、他方のフィルターでは分離した水不溶成分を回収するようにすれば、連続的に処理を行うことができる。
尚、上述のフィルターは、本発明の方法を実施する上で必須のものではなく、上記フィルターに代えて、圧力保持バルブ16の下流側にタンク(図示せず)を備え、ここで、加水分解工程を経た高濃度スラリーを脱水機(例えば、ろ過機、フィルタープレス、ベルトプレス、遠心脱水機など)などを使って、液体成分と脱水された水不溶成分とに分離することもできる。
水不溶成分と分離された水溶液は、圧力保持バルブ16を通過して、気液分離器17へと送られる。上記水溶液は、圧力保持バルブ16を通過する際、大気圧にまで急激に減圧されるため、それまで水溶液中に溶存していた低沸点成分が気化しガスとして表れる。これらの水溶液とガス成分とは、気液分離器17において分離され、ガスはガスバッグ19に、液体成分は液回収部18にそれぞれ回収される。
尚、液回収部18に回収された液体成分は、生成物が水で希釈された状態であるので、逆浸透膜などにより、有用成分を濃縮するのが好ましい。こうして得られた水溶液は、ガス化工程へと送られ、燃料ガスへと転換される。
一方、上記固液分離フィルター15で分離された水不溶成分は、脱水された後、固体燃料として使用することができる。この固体燃料は、原料であるバイオマスに比べて、含水率が低く、また、発熱量が高くなっているため、石炭のように発電などの水蒸気ボイラーや高炉吹込み用の燃料として利用することができる。
以下、実験例によって本発明をさらに詳述するが、下記実験例は本発明を制限するものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施することはすべて本発明の技術範囲に包含される。以下、「部」とあるのは、質量部を意味する。
〔実験例1〕
大気圧下、25℃で、水:15.0部に、バイオマスとして木粉(種類:マツ、サイズ:60〜80メッシュ)1.5部を混合し、低濃度スラリーを調製した(バイオマス含有量:9質量%)。この低濃度スラリーをオートクレーブに仕込み、200℃、圧力1.6MPaで10分間加熱処理した。その後、さらに木粉1.5部を加え、スラリーを高濃度化した(バイオマス含有量:17質量%)。なお、本実験例では、低濃度スラリー、高濃度スラリーのいずれも攪拌可能な状態であった。
〔実験例2〕 大気圧下、25℃で、水:15.0部に、バイオマスとして木粉:3.0部を混合した(バイオマス含有量:17質量%)。本実験例では、木粉が水を吸収してしまい、攪拌およびスラリー化することができなかった。
上記実験例1および2より、本発明に係る方法によれば、バイオマス量が多量であっても、スラリー化することが可能であることが分かる。
〔実験例3〕
バイオマスとして木粉(種類:マツ、サイズ:60〜80メッシュ)を用い、この木粉の使用量を表1に示すように変化させ、処理温度を150℃,250℃,350℃として改質処理を行った。(実験a〜k)。それぞれの場合について、バイオマス濃度に対する投入熱量の値の関係を図3に示す。
図3より、スラリー濃度が10質量%未満では、いずれの処理温度であっても、投入熱量が著しく増大することが分かる。本発明法によれば、スラリー濃度を高めることが可能となるので、投入熱量を低減でき、効率的な木粉の処理が可能であることが分かる。
〔実験例4〕
上記実験例1で調製したバイオマス含有量が17質量%の高濃度スラリーを350℃(圧力:18MPa)で10分間改質処理した。次いで、この加熱処理後のスラリーを固液分離(ろ過)して水溶液を回収した。ニッケル系触媒(担体:シリカアルミナ、ニッケル:64%、平均粒径:10μm)を充填し、温度350℃に保たれた固定床触媒装置に得られた水溶液を供給し(空間速度2hr-1)、水溶成分を軽質成分に転換するガス化処理を行った。得られたガスの組成は次の通りである。水素:16.3mol%、メタン:32.6mol%、一酸化炭素:0.7mol%、二酸化炭素:50.4mol%。
また、上記スラリーを固液分離した際に得られた水不溶成分を脱水処理して固形燃料とし、この固形燃料の発熱量を測定した。固形燃料の発熱量は、次のようにして測定した。
熱量測定装置を使用した。酸素を圧入した耐圧製の密閉容器の中で、秤量した固形燃料を燃焼させ、その際に発生する熱量を一定量の水に伝え、その水の温度上昇を測定し、固形燃料1kg当たりの発熱量(J)を求めた。
実験例4で得られた固形燃料の発熱量は3.10×107J/kg(7400kcal/kg)であり、極めて発熱量の高い固形燃料を製造することができた。
高濃度スラリー製造装置の一例を示す説明図である。 燃料製造装置の一例を示す説明図である。 実験例3の結果を示すグラフである。
符号の説明
1 スラリー製造用容器
2 粉砕機
3 バイオマス供給手段
31 駆動手段
32 スクリューコンベアー
4 水供給手段
5 攪拌手段
51 羽根
52 モーター
6 加熱手段
7 循環手段
71 圧力保持バルブ
8 搬出手段
81 圧力保持バルブ
11 スラリー製造装置
12 高圧ポンプ
13 加熱反応器
14 ヒーター
15 固液分離フィルター
16 圧力保持バルブ
17 気液分離器
18 液回収部
19 ガスバッグ

Claims (7)

  1. 100〜250℃で、該温度における水の蒸気圧以上の圧力に保持された高温高圧水にバイオマスが懸濁した低濃度スラリーを調製し、このスラリーにさらにバイオマスを添加して前記スラリーを高濃度化することを特徴とする高濃度スラリーの製造方法。
  2. 前記低濃度スラリーの調製は、予め大気圧下、100℃未満で水にバイオマスを懸濁させて、これを攪拌しながら温度100〜250℃に加熱し、且つ、圧力を前記温度における水の蒸気圧以上にして行う請求項1に記載の高濃度スラリーの製造方法。
  3. 前記バイオマスとして木材を使用する請求項1または2に記載の高濃度スラリーの製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の方法により製造される高濃度スラリーであって、前記高濃度スラリー中のバイオマスの濃度が10質量%以上である高濃度スラリー。
  5. 請求項4に記載の高濃度スラリーを原料として燃料ガスを製造する方法であって、
    前記高濃度スラリーを150〜350℃に加熱し、且つ、圧力を該温度における水の蒸気圧以上にして前記スラリー中の前記バイオマスを改質する改質工程、
    前記改質工程を経た高濃度スラリーから水溶液を回収する回収工程、および、
    前記水溶液のガス化工程を備えることを特徴とする燃料ガスの製造方法。
  6. 請求項4に記載の高濃度スラリーを原料として固形燃料を製造する方法であって、
    前記高濃度スラリーを150〜350℃に加熱し、且つ、圧力を該温度における水の蒸気圧以上にして前記スラリー中の前記バイオマスを改質する改質工程、
    前記改質工程を経た高濃度スラリーから水不溶成分を回収する回収工程、および、
    前記水不溶成分を脱水し固形燃料とする工程を備えることを特徴とする固形燃料の製造方法。
  7. 請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法を実施するための装置であって、
    スラリー製造用容器、バイオマスを粉砕する粉砕機、粉砕機で粉砕した粉砕物をスラリー製造用容器に供給する供給手段、前記スラリー製造用容器へ水を供給する水供給手段、前記スラリー製造用容器内で、粉砕物を水または高温・高圧水中に混合・懸濁させる混合手段、スラリー製造用容器内の水および/またはスラリーを加熱する加熱手段を備えることを特徴とする高濃度スラリーの製造装置。

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