以下、本発明に係る磁気記録媒体及びその製造方法について詳述する。本発明の磁気記録媒体においては、支持体の表面に、第1の塗布層である平滑層が形成されており、この第1の塗布層(平滑層)の上に磁性体を含む第2の塗布層である磁性層が形成されている。そして、第1の塗布層(平滑層)の表面粗さRaが支持体の表面粗さRaより小であり、第2の塗布層(磁性層)の厚さが150nm以下である。
本発明に使用される支持体として、特に制限されるべきものではないが、実質的に非磁性で可撓性のものが好ましい。本発明に用いられる可撓性支持体としてはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、等のポリエステル類、ポリオレフィン類、セルローストリアセテート、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルフォン、芳香族ポリアミド又は脂肪族ポリアミド、ポリベンゾオキサゾールなどの公知のフィルムが使用できる。このうち、ポリエチレンナフタレート、ポリアミドなどの高強度支持体を用いることが好ましい。
また、必要に応じ、磁性面とベース面の表面粗さを変えるため特開平3−224127に示されるような積層タイプの支持体を用いることもできる。これらの支持体にはあらかじめコロナ放電処理、プラズマ処理、易接着処理、熱処理、除塵処理、などを行ってもよい。また、本発明の支持体としてアルミ又はガラス基板を適用することも可能である。
本発明の目的を達成するには、支持体としてWYKO社製TOPO−3Dで測定した算術平均粗さRaが8.0nm程度以下のものが好ましい。本発明は第1及び第2の塗布層により算術平均粗さRaを低く設定できるので、比較的Raの大きなものでも十分対処できる。したがって、コスト的に有利である。これらの支持体は、0.5μm以上の粗大突起がないことが好ましい。また、表面の粗さ形状は必要に応じて支持体に添加されるフィラーの大きさと量により自由にコントロールされるものである。これらのフィラーとしては一例としてはCa、Si、Tiなどの酸化物や炭酸塩の他、アクリル系などの有機粉末が挙げられる。
支持体の最大高さRmaxは1μm以下、十点平均粗さRzは0.5μm以下、中心面山高さRpは0.5μm以下、中心面谷深さRvは0.5μm以下、中心面面積率Srは10%以上、90%以下、平均波長λaは5μm以上、300μm以下が好ましい。所望の電磁変換特性と耐久性を得るため、これら支持体の表面突起分布をフィラーにより任意にコントロールできるものであり、0.01〜1μmの大きさのもの各々を0.1mm2 あたり0〜2000個の範囲でコントロールすることができる。
本発明に用いられる支持体のF−5値は好ましくは5〜50kg/mm2 (≒49〜490MPa)、また、支持体の100°C30分での熱収縮率は好ましくは3%以下、更に好ましくは1.5%以下、80°C30分での熱収縮率は好ましくは1%以下、更に好ましくは0.5%以下である。破断強度は5〜100kg/mm2 (≒49〜980MPa)、弾性率は100〜2000kg/mm2 (≒0.98〜19.6GPa)が好ましい。温度膨張係数は10-4〜10-8/°Cであり、好ましくは10-5〜10-6/°Cである。湿度膨張係数は10-4/RH%以下であり、好ましくは10-5/RH%以下である。これらの熱特性、寸法特性、機械強度特性は、支持体の面内各方向に対し10%以内の差でほぼ等しいことが好ましい。
次に、第1の塗布層(平滑層)を形成する第1の塗布液について説明する。第1の塗布層(平滑層)を形成する手段として、下記の1)又は2)の手段が好ましく採用できる。但し、これら以外の手段の採用を妨げるものではない。1)支持体の表面に、分子中に放射線硬化官能基を有する化合物を含有した塗布液を塗布し、その後、放射線を照射し、塗布液を硬化させて平滑層を形成する。2)支持体の表面に、高分子溶液を塗布・乾燥させて平滑層を形成する。
先ず、1)について説明する。分子中に放射線硬化官能基を有する化合物( 以下、「放射線硬化型化合物」とも言う) は、放射線、たとえば、電子線、紫外線などによるエネルギーが与えられると、重合乃至架橋して高分子化して硬化する性質を有する化合物を言う。そして、放射線硬化型化合物は、それらのエネルギーを与えない限り反応が進まない。そのため放射線硬化型化合物を含む塗布液は、放射線を照射しない限り粘度が安定しており、高い塗膜平滑性を得ることができる。
また、放射線による高いエネルギーにより瞬時に反応が進むため、高い塗膜強度を得ることができる。放射線硬化型化合物の分子量は、200〜2000の範囲であることが好ましい。分子量がこの範囲であると、比較的低分子量であるので、カレンダー工程において塗膜が流動し易く成形性が高く、平滑な塗膜を形成することができる。
2官能以上の放射線硬化型化合物としては、アクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリル酸エステル類、メタクリル酸アミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類等を挙げることができる。
2官能の放射線硬化型化合物の具体例としては、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ブタンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート等に代表される脂肪族ジオールにアクリル酸、メタクリル酸を付加させたものを用いることができる。
また、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオールに、アクリル酸、メタクリル酸を付加したポリエーテルアクリレート、ポリエーテルメタクリレートや公知のニ塩基酸、グリコールから得られたポリエステルポリオールに、アクリル酸、メタクリル酸を付加させたポリエステルアクリレート、ポリエステルメタクリレートも用いることができる。
公知のポリオール、ジオールとポリイソシアネートを反応させたポリウレタンにアクリル酸、メタクリル酸を付加させたポリウレタンアクリレート、ポリウレタンメタクリレートを用いてもよい。ビスフェノールA、ビスフェノールF、水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノールFやこれらのアルキレンオキサイド付加物にアクリル酸、メタクリル酸を付加させたものや、イソシアヌル酸アルキレンオキサイド変性ジアクリレート、イソシアヌル酸アルキレンオキサイド変性ジメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート等の環状構造を有するものも用いることができる。
3官能の放射線硬化型化合物の具体例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパンのアルキレンオキサイド変成トリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、イソシアヌル酸アルキレンオキサイド変成トリアクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変成ジメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパンのアルキレンオキサイド変成トリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールトリメタクリレート、イソシアヌル酸アルキレンオキサイド変成トリメタクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールトリメタクリレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変成ジメチロールプロパントリメタクリレート等を用いることができる。
4官能以上の放射線硬化型化合物の具体例としては、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変成ヘキサアクリレート等を用いることができる。
これらのうち、具体例として好ましいものは、分子量200〜2000の2官能のアクリレート化合物であり、更に好ましいものはビスフェノールA、ビスフェノールF、水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノールFやこれらのアルキレンオキサイド付加物にアクリル酸、メタクリル酸を付加させたものである。
本発明に使用される放射線硬化型化合物は、ポリマー型の結合剤と併用されてもよい。併用される結合剤としては、後述する手段2)の高分子や従来公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応型樹脂やこれらの混合物が使用される。放射線として、紫外線を用いる場合は、重合開始剤を併用することが好ましい。重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤及び光アミン発生剤等を用いることができる。
光ラジカル重合剤としては、たとえば、ベンジル、ジアセチル等のα−ジケトン類、ベンゾイン等のアシロイン類、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のアシロインエーテル類、チオキサントン、2, 4−ジエチルチオキサントン、チオキサントン−4−スルホン酸等のチオキサントン類、ベンゾフェノン、4, 4' −ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4, 4' −ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、ミヒラーケトン類、アセトフェノン、2−(4−トルエンスルホニルオキシ)−2−フェニルアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、α, α' −ジメトキシアセトキシベンゾフェノン、2, 2' −ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、p−メトキシアセトフェノン、2−メチル[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン等のアセトフェノン類、アントラキノン、1, 4−ナフトキノン等のキノン類、フェナシルクロライド、トリハロメチルフェニルスルホン、トリス(トリハロメチル)−s−トリアジン等のハロゲン化合物、アシルホスフィンオキシド類、ジ−t−ブチルパーオキサイド等の過酸化物等が挙げられる。
また、光ラジカル重合剤として、たとえばIRGACURE−184、同261、同369、同500、同651、同907(チバガイギー社製)、Darocur −1173、同1116、同2959、同1664、同4043(メルクジャパン社製)、KAYACURE−DETX、同 MBP、同 DMBI 、同 EPA、同 OA (日本化薬(株)製)、VICURE−10、同55(STAUFFER Co.LTD 製)、TRIGONALP1(AKZO Co.LTD 製)、SANDORAY 1000 (SANDOZ Co.LTD 製)、DEAP(APJOHN Co.LTD 製)、QUANTACURE−PDO 、同 ITX、同 EPD(WARD BLEKINSOP Co.LTD 製)等の市販品を用いることもできる。
また、光カチオン重合開始剤としては、ジアゾニウム塩類、トリフェニルスルホニウム塩類、メタロセン化合物類、ジアリールヨードニウム塩類、ニトロベンジルスルホナート類、α−スルホニロキシケトン類、ジフェニルジスルホン類、イミジルスルホナート類が挙げられる。光カチオン重合開始剤として、アデカウルトラセットPP−33、OPTMERSP−150、同170(旭電化工業(株)製)(ジアゾニウム塩)、OPTOMERSP−150、170(旭電化工業(株)製)(スルホニウム塩)、IRGACURE261(チバガイギー(株)製)(メタロセン化合物)等の市販品を用いることもできる。
光アミン発生剤としては、ニトロベンジカーバミメート類、イミノスルホナート類が挙げられる。これらの光重合開始剤は、露光条件(たとえば酸素雰囲気下であるか、無酸素雰囲気下であるか)等によって適宜選択され用いられる。また、これらの光重合開始剤は、2種以上組合わせて用いることもできる。
放射線硬化型化合物又は更に他の結合剤や光重合開始剤を含む組成物は、それらを溶解する溶媒にて塗布液とされるが、その溶媒としては、後述するものから適宜選定される。支持体上にこの塗布液を塗布した後、通常、乾燥後に放射線が塗布層に照射される。乾燥は、自然乾燥、加熱乾燥いずれでもよい。
放射線として、電子線を用いる場合、電子線量は総量で1〜20Mradが好ましく、3〜10Mradが更に好ましい。放射線として、紫外線を用いる場合、その量は10〜100mJ/cm2 が好ましい。紫外線(UV)及び電子線(EB)照射装置、照射条件などについては、「UV・EB硬化技術」((株)総合技術センター発行)や「低エネルギー電子線照射の応用技術」(2000年、(株)シーエムシー発行)などに記載されている公知のものを用いることができる。
平滑層の厚さは、平滑層の構成成分等によるが、前記の範囲が好ましい。磁気テープの場合、平滑層の表面性、物理強度が確保されるのであれば、高容量化には薄い程好ましい。
次に、第1の塗布層(平滑層)を形成する手段としての、2)について説明する。用いられる高分子溶液としては、粘度は50cp以下が好ましく、更には30cp以下が好ましい。また、塗布液の表面張力は22mN/m以上が好ましく、24mN/m以下が更に好ましい。高分子としては、数平均分子量は10000〜100000が好ましい。また、平滑層上に塗布層を設けて磁気記録媒体を形成する場合には、塗布層用溶媒に不溶性乃至難溶性の高分子が好ましく、特に水溶性高分子が好ましい。また、高分子のガラス転移温度(Tg)は0〜120°Cが好ましく、10〜80°Cが更に好ましい。0°C未満では端面でのブロッキングが生じる場合があり、120°Cを超えると平滑層内の内部応力が緩和されず、結果として密着力が確保できない場合がある。
用いる高分子としては、特に制限はないが、上記条件を満足するものが好ましく、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル系樹脂等が挙げられる。ポリアミドとしては、ジアミンとジカルボン酸の重縮合化合物、ラクタム類の開環重合化合物、ジアミンとジカルボン酸との1/1(モル比)の塩とカプロラクタム等のラクタム類との共重合物等が挙げられる。
ジアミンとしては、ヒドラジン、メチレンジアミン、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ジアミノシクロヘキサン、ジ(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス−(4−アミノ−3,5−メチルシクロヘキシル)メタン、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4' −ジアミノビフェニル、トリレンジアミン、キシレンジアミン、ナフチレンジアミン、ビス(アミノメチル)ピペラジン、ビス(アミノエチル)ピペラジン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、1−(2−アミノメチル)ピペラジン、1−(2−アミノエチル)ピペラジン、1−(2−アミノプロピル)ピペラジン等が使用できる。
ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタール酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等及びそれらの酸無水物を使用することができる。ラクタム類としては、α−ピロリドン、α−ピペリドン、γ−ブチロラクタム、δ−バレロラクタム、ε−カプロラクタム、ω−カプリルラクタム、ω−ラウロラクタム等が使用される。
また、ポリアミドとしては、アミノ酸重合体が挙げられる。アミノ酸重合体は、人口合成物でも天然高分子、たとえば、コラーゲン等の蛋白質でもよい。更に、ポリアミドとしては、プラスチック材料講座(16)「ポリアミド樹脂」(福本修編、日刊工業新聞社発行);「合成高分子V」(朝倉書店発行、村橋、井本、谷編集);米国特許2130497号;同2130523号;同2149273号;同2158064号;同2223403号;同2249627号;同2534347号;2540352号;2715620号;同2756221号;同2939862号;同2994693号;同3012994号;同3133956号;同3188228号;同3193475号;同3193483号;同3197443号;同3226362号;同3242134号;同3247167号;同3299009号;同3328352号;同3354123号等に記載されているものや、特開平11−283241号公報に記載されている3級アミノ基を有するポリアミド等からも適宜選定して用いられ得る。
ポリアミドイミドとしては、末端にアミノ基を有する低分子量のポリアミドと酸ジ無水物やそのエステルとの反応による方法、末端にアミノ基を有する低分子量のポリアミド酸と二塩基酸クロリドとの反応による方法、トリメリット酸誘導体とジアミンと反応による方法等によって得られる。
ポリアミド成分としては、上記ポリアミドで記載したジアミン及びジカルボン酸又はアミノ酸から形成されるものが挙げられる。トリメリット酸誘導体等との反応で用いるジアミンとしては、上記のジアミンが挙げられる。酸ジ無水物やそのエステルとしては、ピロメリット酸−1,4−ジメチルエステル、ピロメリット酸テトラメチルエステル、ピロメリット酸エチルエステル、2,3,6,7−ナフタリンテトラカルボン酸ジ無水物、3,3' ,4,4' −ビフェニルテトラカルボン酸ジ無水物、1,2,5,6−ナフタリンテトラカルボン酸ジ無水物、2,2' ,3,3' −ビフェニルテトラカルボン酸ジ無水物、2,2' ,6,6' −ビフェニルテトラカルボン酸ジ無水物等が挙げられる。
末端にアミノ基を有する低分子量のポリアミド酸は、上記ジアミと酸ジ無水物やそのエステルと反応させることにより形成できる。二塩基酸クロリドとしては、上記ジカルボン酸のクロリドが挙げられる。用いられるポリアミドイミドとしては、「ポリアミド樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社発行)等に記載されているものから適宜選定され得る。
ポリエステルとしては、ジカルボン酸とグリコールから合成されるものが挙げられる。ジカルボン酸としては、芳香族、脂肪族、脂環族のものなどが挙げられ、具体的には上記と同様のものが挙げられるが、芳香族のものが好ましい。
グリコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAなどの脂肪族、脂環族、芳香族グリコール等が挙げられる。
ポリウレタンとしては、ポリオール、ジイソシアネート、鎖延長剤等から公知の方法で製造されるものが挙げられる。ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール等が用いられる。ポリエステルポリオールのポリエステル成分としては、上記ポリエステルのジオールが挙げられる。ジイソシアネートとしては、磁性層に用いる結合剤のところで記載されるものが挙げられる。鎖延長剤としては、多価アルコール、ポリアミン(たとえば、上記ジアミン等)等が用いられる。
上記した平滑層形成に用いる高分子は、必要により−COOM、−SO3 M、−OSO3 M、−P=O(OM)2 、−O−P=O(OM)2 、(以上につきMは水素原子、又はアルカリ金属、アンモニウムを示す)、OH、NR2 、N+R3 (Rは炭化水素基)、エポキシ基、SH、CN、などから選ばれる少なくとも一つ以上の極性基を共重合又は付加反応で導入したものを用いることが好ましい。このような極性基の量は0.1〜3meq/gから適宜選定されることが好ましい。
上記の1)又は2)の手段において、平滑層用塗布液の溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、テトラヒドロフラン、等のケトン類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルシクロヘキサノール、などのアルコール類、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、乳酸エチル、酢酸グリコール等のエステル類、グリコールジメチルエーテル、グリコールモノエチルエーテル、ジオキサン、などのグリコールエーテル系、ベンゼン、トルエン、キシレン、クレゾール、クロルベンゼン、などの芳香族炭化水素類、メチレンクロライド、エチレンクロライド、四塩化炭素、クロロホルム、エチレンクロルヒドリン、ジクロルベンゼン、等の塩素化炭化水素類、N、N−ジメチルホルムアミド、ヘキサン等、及び水等が使用できる。
これら溶媒は必ずしも100%純粋ではなく、主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解物、酸化物、水分等の不純分が含まれても構わない。これらの不純分は30%以下が好ましく、10%以下が更に好ましい。これら溶媒の中でも、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール、水、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、酢酸ブチル等の単独又は組み合わせが好ましい。
なお、平滑層用塗布液には、所望の表面性を得るためにフィラーを含有させることも可能である。フィラーの最大径は50nm以下が好ましい。50nmを超えるとドロップアウト(DO)の原因となる場合がある。しかし、このような平滑層用塗布液の組成を変更して本発明の範囲を外れた平滑層を形成するような塗布液を支持体の他方に塗布してバック層などを形成してテープ状磁気記録媒体を形成してもよい。その場合、更にその平滑層の上に他の組成の層を形成してもよい。
また、平滑層は磁性層用塗布液に対して安定であることが望まれる。従って、平滑層のメチルエチルケトン(MEK)/シクロヘキサノン混合溶液(1:1)へ溶出量は0.0〜0.4mg/cm2 であることが好ましく、0.0〜0.2mg/cm2 であることが更に好ましい。
本発明で設けられる第2の塗布層である磁性層は、強磁性粉末と結合剤を主体とする塗布型に好適であるが、強磁性金属薄膜型であってもよい。後者の場合は、蒸着、スパッタなど公知の方法で磁性層を設けることができる。塗布型の場合、磁性層の厚さは0.02〜0.5μmが好ましく、0.05〜0.2μmが更に好ましい。
第1の塗布層である平滑層上に磁性層を設ける場合、平滑層を担持する支持体は平滑層を形成した後に巻き取られていない状態で磁性層等を設けることが好ましいが、巻き取られているものを用いてもよい。
以下、本発明が塗布型磁気記録媒体である場合、その構成要素毎に説明する。先ず、第2の塗布層である磁性層について説明する。
支持体の表面に、第1の塗布層(平滑層)を形成し、この平滑層を乾燥させるか、UV硬化させた後に、この上に磁性体を含む第2の塗布層である磁性層を形成する。磁性層の抗磁力Hcは160kA/ m以上であることが好ましく、強磁性金属粉末ではBmは0.2〜0.5T、六方晶フェライト粉末では0.1〜0.3Tであることが好ましい。
本発明の磁性層に使用する強磁性粉末としては、特に制限されるべきものではないが、α−Feを主成分とする強磁性金属粉末、六方晶フェライト粉末が好ましい。これらの強磁性金属粉末には所定の原子以外にAl、Si、S、Sc、Ca、Ti、V、Cr、Cu、Y、Mo、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、Te、Ba、Ta、W、Re、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、P、Co、Mn、Zn、Ni、Sr、Bなどの原子を含んでも構わない。特に、Al、Si、Ca、Y、Ba、La、Nd、Co、Ni、Bの少なくとも1つをα−Fe以外に含むことが好ましく、Co、Y、Alの少なくとも一つを含むことが更に好ましい。
Coの含有量はFeに対して0原子%以上40原子%以下が好ましく、15原子%以上35%以下が更に好ましく、20原子%以上35原子%以下が最も好ましい。Yの含有量は1.5原子%以上12原子%以下が好ましく、3原子%以上10原子%以下が更に好ましく、4原子%以上9原子%以下が最も好ましい。Alは1.5原子%以上12原子%以下が好ましく、3原子%以上10原子%以下が更に好ましく、4原子%以上9原子%以下が最も好ましい。
これらの強磁性粉末には後述する分散剤、潤滑剤、界面活性剤、帯電防止剤などで分散前にあらかじめ処理を行っても構わない。具体的には、特公昭44−14090号、特公昭45−18372号、特公昭47−22062号、特公昭47−22513号、特公昭46−28466号、特公昭46−38755号、特公昭47−4286号、特公昭47−12422号、特公昭47−17284号、特公昭47−18509号、特公昭47−18573号、特公昭39−10307号、特公昭46−39639号、米国特許第3026215号、同3031341号、同3100194号、同3242005号、同3389014号などに記載されている。
強磁性粉末には少量の水酸化物、又は酸化物が含まれてもよい。強磁性金属粉末は公知の製造方法により得られたものを用いることができ、下記の方法を挙げることができる。複合有機酸塩(主としてシュウ酸塩)と水素などの還元性気体で還元する方法、酸化鉄を水素などの還元性気体で還元してFe又はFe−Co粒子などを得る方法、金属カルボニル化合物を熱分解する方法、強磁性金属の水溶液に水素化ホウ素ナトリウム、次亜リン酸塩又はヒドラジンなどの還元剤を添加して還元する方法、金属を低圧の不活性気体中で蒸発させて微粉末を得る方法などである。
このようにして得られた強磁性金属粉末は公知の徐酸化処理、すなわち有機溶剤に浸漬したのち乾燥させる方法、有機溶剤に浸漬したのち酸素含有ガスを送り込んで表面に酸化膜を形成したのち乾燥させる方法、有機溶剤を用いず酸素ガスと不活性ガスの分圧を調整して表面に酸化皮膜を形成する方法のいずれを施したものでも用いることができる。
本発明の磁性層の強磁性金属粉末をBET法による比表面積(SBET)で表せば45〜80m2 /gが好ましく、50〜70m2 /gが更に好ましい。45m2 /g未満ではノイズが高くなり、80m2 /gを超えると表面性が得にくく好ましくない。本発明の磁性層の強磁性金属粉末の結晶子サイズは80〜180Åが好ましく、100〜180Åが更に好ましく、110〜175Åが最も好ましい。強磁性金属粉末の長軸長は0.01μm以上0.15μm以下が好ましく、0.03μm以上0.15μm以下が更に好ましく、0.03μm以上0.12μm以下が最も好ましい。強磁性金属粉末の針状比は3以上15以下が好ましく、5以上12以下が更に好ましい。強磁性金属粉末の飽和磁化σs は100〜180A・m2 /kgが好ましく、110〜170A・m2 /kgが更に好ましく、125〜160A・m2 /kgが最も好ましい。強磁性金属粉末の抗磁力は160〜280kA/mが好ましく、176〜240kA/mが更に好ましい。
強磁性金属粉末の含水率は0.01〜2%とするのが好ましい。結合剤の種類によって、強磁性金属粉末の含水率は最適化するのが好ましい。強磁性金属粉末のpHは、用いる結合剤との組合せにより最適化することが好ましい。その範囲は4〜12であるが、好ましくは6〜10である。強磁性金属粉末は必要に応じ、Al、Si、P又はこれらの酸化物などで表面処理を施しても構わない。その量は強磁性金属粉末に対し0.1〜10%であり、表面処理を施すと脂肪酸などの潤滑剤の吸着が100mg/m2 以下になり好ましい。強磁性金属粉末には可溶性のNa、Ca、Fe、Ni、Srなどの無機イオンを含む場合がある。これらは、本質的に無い方が好ましいが、200PPM以下であれば特に特性に影響を与えることは少ない。
また、本発明に用いられる強磁性金属粉末は、空孔が少ない方が好ましく、その値は20容量%以下、更に好ましくは5容量%以下である。また、形状については、先に示した粒子サイズについての特性を満足すれば、針状、米粒状、紡錘状のいずれでも構わない。強磁性金属粉末自体のSFDは小さい方が好ましく、0.8以下が好ましい。強磁性金属粉末のHcの分布は、小さくする必要がある。なお、SFDが0.8以下であると、電磁変換特性が良好で、出力が高く、また、磁化反転がシャープでピークシフトも少なくなり、高密度デジタル磁気記録に好適である。Hcの分布を小さくするためには、強磁性金属粉末においては、ゲータイトの粒度分布をよくする、焼結を防止するなどの方法がある。
次に六方晶フェライト粉末について述べる。本発明に用いられる六方晶フェライトとして、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、鉛フェライト、カルシウムフェライトの各置換体、Co置換体等がある。
具体的には、マグネトプランバイト型のバリウムフェライト及びストロンチウムフェライト、スピネルで粒子表面を被覆したマグネトプランバイト型フェライト、更に一部スピネル相を含有したマグネトプランバイト型のバリウムフェライト及びストロンチウムフェライト等が挙げられ、その他所定の原子以外にAl、Si、S、Sc、Ti、V、Cr、Cu、Y、Mo、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、Te、Ba、Ta、W、Re、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、P、Co、Mn、Zn、Ni、Sr、B、Ge、Nbなどの原子を含んでも構わない。
一般にはCo−Zn、Co−Ti、Co−Ti−Zr、Co−Ti−Zn、Ni−Ti−Zn、Nb−Zn−Co、SbーZn−Co、Nb−Zn等の元素を添加した物を使用することができる。原料・製法によっては特有の不純物を含有するものもある。
粒子サイズは、六角板径で通常10〜100nm、好ましくは10〜60nmであり、特に好ましくは10〜50nmである。特にトラック密度を上げるためMRヘッドで再生する場合、低ノイズにする必要があり、板径は40nm以下が好ましいが、10nmより小さいと熱揺らぎのため安定な磁化が望めない。100nmを超えるとノイズが高く、いずれも高密度磁気記録には向かない。
板状比(板径/板厚)は、1〜15が望ましい。好ましくは1〜7である。板状比が小さいと、磁性層中の充填性は高くなり好ましいが、十分な配向性が得られない。15より大きいと、粒子間のスタッキングによりノイズが大きくなる。この粒子サイズ範囲のBET法による比表面積は10〜100m2 /gを示す。比表面積は、概ね粒子板径と板厚からの算術計算値と符号する。
粒子板径・板厚の分布は、通常狭いほど好ましい。数値化は、粒子TEM写真より500粒子を無作為に測定することにより比較できる。分布は、正規分布ではない場合が多いが、計算して平均サイズに対する標準偏差で表すと、σ/平均サイズ=0.1〜2.0である。粒子サイズ分布をシャープにするには、粒子生成反応系をできるだけ均一にするとともに、生成した粒子に分布改良処理を施すことも行われている。たとえば、酸溶液中で超微細粒子を選別的に溶解する方法等も知られている。
磁性体で測定される抗磁力Hcは、通常40〜400kA/m程度まで作成できる。Hcは高い方が高密度記録に有利であるが、記録ヘッドの能力で制限される。本発明では、磁性体のHcは160〜320kA/m程度であるが、好ましくは176〜280kA/mである。ヘッドの飽和磁化が1.4テスラを超える場合は、176kA/m以上にすることが好ましい。Hcは粒子サイズ(板径・板厚)、含有元素の種類と量、元素の置換サイト、粒子生成反応条件等により制御できる。
飽和磁化σsは40〜80A・m2 /kgである。σsは高い方が好ましいが、微粒子になるほど小さくなる傾向がある。σs改良のため、マグネトプランバイトフェライトにスピネルフェライトを複合すること、含有元素の種類と添加量の選択等がよく知られている。また、W型六方晶フェライトを用いることも可能である。磁性体を分散する際に磁性体粒子表面を分散媒、ポリマーに合った物質で処理することも行われている。表面処理材は無機化合物、有機化合物が使用される。主な化合物としてはSi、Al、P、等の酸化物又は水酸化物、各種シランカップリング剤、各種チタンカップリング剤が代表例である。量は磁性体に対して0.1〜10%である。
磁性体のpHも分散に重要である。通常4〜12程度で分散媒、ポリマーにより最適値があるが、媒体の化学的安定性、保存性から6〜11程度が選択される。磁性体に含まれる水分も分散に影響する。分散媒、ポリマーにより最適値があるが通常0.01〜2.0%が選ばれる。
六方晶フェライトの製法としては、(1)酸化バリウム・酸化鉄・鉄を置換する金属酸化物とガラス形成物質として酸化ホウ素等を所望のフェライト組成になるように混合した後溶融し、急冷して非晶質体とし、次いで再加熱処理した後、洗浄・粉砕してバリウムフェライト結晶粉体を得るガラス結晶化法、(2)バリウムフェライト組成金属塩溶液をアルカリで中和し、副生成物を除去した後100°C以上で液相加熱した後洗浄・乾燥・粉砕してバリウムフェライト結晶粉体を得る水熱反応法、(3)バリウムフェライト組成金属塩溶液をアルカリで中和し、副生成物を除去した後乾燥し1100°C以下で処理し、粉砕してバリウムフェライト結晶粉体を得る共沈法等があるが、本発明は製法を選ばない。
本発明に使用される結合剤としては、従来より公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応型樹脂や、これらの混合物が使用される。熱可塑系樹脂としては、ガラス転移温度(Tg)が−100〜150°C、数平均分子量が1, 000〜200, 000、好ましくは10, 000〜100, 000、重合度が約50〜1000程度のものである。
このような例としては、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、スチレン、ブタジエン、エチレン、ビニルブチラール、ビニルアセタール、ビニルエーテル、等を構成単位として含む重合体又は共重合体、ポリウレタン樹脂、各種ゴム系樹脂がある。
また、熱硬化性樹脂又は反応型樹脂としてはフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化型樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル系反応樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ−ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂とイソシアネートプレポリマーの混合物、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートの混合物、ポリウレタンとポリイソシアネートの混合物等が挙げられる。
これらの樹脂については朝倉書店発行の「プラスチックハンドブック」に詳細に記載されている。また、公知の電子線硬化型樹脂を各層に使用することも可能である。これらの例とその製造方法については特開昭62−256219に詳細に記載されている。
以上の樹脂は単独又は組合せて使用できるが、好ましいものとして塩化ビニル樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル酢酸ビニルビニルアルコール共重合体、塩化ビニル酢酸ビニル無水マレイン酸共重合体、から選ばれる少なくとも1種とポリウレタン樹脂の組合せ、又はこれらにポリイソシアネートを組み合わせたものが挙げられる。
ポリウレタン樹脂の構造は、ポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリウレタン、ポリエーテルポリエステルポリウレタン、ポリカーボネートポリウレタン、ポリエステルポリカーボネートポリウレタン、ポリカプロラクトンポリウレタンなど公知のものが使用できる。ここに示したすべての結合剤について、より優れた分散性と耐久性を得るためには必要に応じ、−COOM、−SO3 M、−OSO3 M、−P=O(OM)2 、−O−P=O(OM)2 、(以上につきMは水素原子、又はアルカリ金属塩基)、OH、NR2 、N+R3 (Rは炭化水素基)、エポキシ基、SH、CN、などから選ばれる少なくとも一つ以上の極性基を共重合又は付加反応で導入したものを用いることが好ましい。このような極性基の量は10-1〜10-8モル/gであり、好ましくは10-2〜10-6モル/gである。
本発明に用いられるこれらの結合剤の具体的な例としては、ユニオンカーバイト社製VAGH、VYHH、VMCH、VAGF、VAGD、VROH、VYES、VYNC、VMCC、XYHL、XYSG、PKHH、PKHJ、PKHC、PKFE、日信化学工業社製、MPR−TA、MPR−TA5、MPR−TAL、MPR−TSN、MPR−TMF、MPR−TS、MPR−TM、MPR−TAO、電気化学社製1000W、DX80、DX81、DX82、DX83、100FD、日本ゼオン社製MR−104、MR−105、MR110、MR100、MR555、400X−110A、日本ポリウレタン社製ニッポランN2301、N2302、N2304、大日本インキ社製パンデックスT−5105、T−R3080、T−5201、バーノックD−400、D−210−80、クリスボン6109、7209、東洋紡社製バイロンUR8200、UR8300、UR−8700、RV530、RV280、大日精化社製、ダイフェラミン4020、5020、5100、5300、9020、9022、7020、三菱化成社製、MX5004、三洋化成社製サンプレンSP−150、旭化成社製サランF310、F210などが挙げられる。
本発明の磁性層に用いられる結合剤は、強磁性粉末に対し、5〜50質量%の範囲、好ましくは10〜30質量%の範囲で用いられる。塩化ビニル系樹脂を用いる場合は、5〜30質量%、ポリウレタン樹脂を用いる場合は、2〜20質量%、ポリイソシアネートは、2〜20質量%の範囲でこれらを組み合わせて用いることが好ましいが、たとえば、微量の脱塩素によりヘッド腐食が起こる場合は、ポリウレタンのみ又はポリウレタンとイソシアネートのみを使用することも可能である。
本発明において、ポリウレタンを用いる場合は、ガラス転移温度(Tg)が−50〜150°C、好ましくは0°C〜100°C、更に好ましくは30°C〜90°C、破断伸びが100〜2000%、破断応力は通常、0.05〜10kg/mm2 (≒0.49〜98MPa)、降伏点は0.05〜10kg/mm2 (≒0.49〜98MPa)が好ましい。
本発明に用いるポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、4,4' −ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、o−トルイジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等のイソシアネート類、また、これらのイソシアネート類とポリアルコールとの生成物、また、イソシアネート類の縮合によって生成したポリイソシアネート等を使用することができる。
これらのイソシアネート類の市販されている商品名としては、日本ポリウレタン社製、コロネートL、コロネートHL、コロネート2030、コロネート2031、ミリオネートMR、ミリオネートMTL、武田薬品社製、タケネートD−102、タケネートD−110N、タケネートD−200、タケネートD−202、住友バイエル社製、デスモジュールL、デスモジュールIL、デスモジュールN、デスモジュールHL、等がありこれらを単独又は硬化反応性の差を利用して二つもしくはそれ以上の組合せで各層とも用いることができる。
次に、本発明の磁性層に使用されるカーボンブラックについて説明する。カーボンブラックとしては、ゴム用ファーネス、ゴム用サーマル、カラー用ブラック、アセチレンブラック、等を用いることができる。比表面積は5〜500m2 /g、DBP吸油量は10〜400ml/100g、粒子径は5nm〜300nm、好ましくは10〜250nm、更に好ましくは20〜200nmである。pHは2〜10、含水率は0.1〜10%、タップ密度は0.1〜1g/ml、が好ましい。
本発明に用いられるカーボンブラックの具体的な例としては、キャボット社製、BLACKPEARLS2000、1300、1000、900、905、800、700、VULCANXC−72、旭カーボン社製、#80、#60、#55、#50、#35、三菱化成工業社製、#2400B、#2300、#900、#1000#30、#40、#10B、コロンビアンカーボン社製、CONDUCTEXSC、RAVEN150、50、40、15、RAVEN−MT−P、日本EC社製、ケッチェンブラックEC、などが挙げられる。
カーボンブラックを分散剤などで表面処理したり、樹脂でグラフト化して使用しても、表面の一部をグラファイト化したものを使用しても構わない。また、カーボンブラックを磁性塗料に添加する前にあらかじめ結合剤で分散しても構わない。これらのカーボンブラックは単独、又は組合せで使用することができる。カーボンブラックを使用する場合は磁性体に対する量の0.1〜30%で用いることが好ましい。
カーボンブラックは磁性層の帯電防止、摩擦係数低減、遮光性付与、膜強度向上などの働きがあり、これらは用いるカーボンブラックにより異なる。従って本発明に使用されるこれらのカーボンブラックは、粒子サイズ、吸油量、電導度、pHなどの先に示した諸特性をもとに目的に応じて使い分けることはもちろん可能であり、最適化すべきものである。本発明の磁性層で使用できるカーボンブラックはたとえば「カーボンブラック便覧」カーボンブラック協会編を参考にすることができる。
次に、本発明に使用される研磨剤について説明する。研磨剤としてはα化率90%以上のα−アルミナ、β−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、コランダム、人造ダイアモンド、窒化珪素、炭化珪素チタンカーバイト、酸化チタン、二酸化珪素、窒化ホウ素、など主としてモース硬度6以上の公知の材料が単独又は組合せで使用される。また、これらの研磨剤同士の複合体(研磨剤を他の研磨剤で表面処理したもの)を使用してもよい。
これらの研磨剤には、主成分以外の化合物又は元素が含まれる場合もあるが、主成分が90%以上であれば効果に変わりはない。これら研磨剤の粒子サイズは、0.01〜2μmが好ましく、0.05〜1.0μmが更に好ましく、0.05〜0.5μmが最も好ましい範囲である。特に電磁変換特性を高めるためには、その粒度分布が狭い方が好ましい。また、耐久性を向上させるには、必要に応じて粒子サイズの異なる研磨剤を組み合わせたり、単独の研磨剤でも粒径分布を広くして同様の効果をもたせることも可能である。
タップ密度は0.3〜2g/ml、含水率は0.1〜5%、pHは2〜11、比表面積は1〜30m2 /g、が好ましい。本発明に用いられる研磨剤の形状は針状、球状、サイコロ状、のいずれでもよいが、形状の一部に角を有するものが研磨性が高く好ましい。
具体的には、住友化学社製AKP−12、AKP−15、AKP−20、AKP−30、AKP−50、HIT20、HIT−30、HIT−55、HIT60、HIT70、HIT80、HIT100、レイノルズ社製、ERC−DBM、HP−DBM、HPS−DBM、不二見研磨剤社製、WA10000、上村工業社製、UB20、日本化学工業社製、G−5、クロメックスU2、クロメックスU1、戸田工業社製、TF100、TF140、イビデン社製、ベータランダムウルトラファイン、昭和鉱業社製、B−3などが挙げられる。
次に、本発明の磁性層に使用される添加剤について説明する。添加剤としては潤滑効果、帯電防止効果、分散効果、可塑効果、などをもつものが使用される。二硫化モリブデン、二硫化タングステングラファイト、窒化ホウ素、フッ化黒鉛、シリコーンオイル、極性基をもつシリコーン、脂肪酸変性シリコーン、フッ素含有シリコーン、フッ素含有アルコール、フッ素含有エステル、ポリオレフィン、ポリグリコール、アルキル燐酸エステル及びそのアルカリ金属塩、アルキル硫酸エステル及びそのアルカリ金属塩、ポリフェニルエーテル、フェニルホスホン酸、αナフチル燐酸、フェニル燐酸、ジフェニル燐酸、p−エチルベンゼンホスホン酸、フェニルホスフィン酸、アミノキノン類、各種シランカップリング剤、チタンカップリング剤、フッ素含有アルキル硫酸エステル及びそのアルカリ金属塩、炭素数10〜24の一塩基性脂肪酸(不飽和結合を含んでも、また、分岐していても構わない)、及び、これらの金属塩(Li、Na、K、Cuなど)又は、炭素数12〜22の一価、二価、三価、四価、五価、六価アルコール、(不飽和結合を含んでも、また、分岐していても構わない)、炭素数12〜22のアルコキシアルコール、炭素数10〜24の一塩基性脂肪酸(不飽和結合を含んでも、また、分岐していても構わない)と炭素数2〜12の一価、二価、三価、四価、五価、六価アルコールのいずれか一つ(不飽和結合を含んでも、また、分岐していても構わない)とからなるモノ脂肪酸エステル又はジ脂肪酸エステル又はトリ脂肪酸エステル、アルキレンオキシド重合物のモノアルキルエーテルの脂肪酸エステル、炭素数8〜22の脂肪酸アミド、炭素数8〜22の脂肪族アミン、などが使用できる。
これらの具体例としては、脂肪酸では、カプリン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、イソステアリン酸、などが挙げられる。
エステル類ではブチルステアレート、オクチルステアレート、アミルステアレート、イソオクチルステアレート、ブチルミリステート、オクチルミリステート、ブトキシエチルステアレート、ブトキシジエチルステアレート、2ーエチルヘキシルステアレート、2ーオクチルドデシルパルミテート、2ーヘキシルドデシルパルミテート、イソヘキサデシルステアレート、オレイルオレエート、ドデシルステアレート、トリデシルステアレート、エルカ酸オレイル、ネオペンチルグリコールジデカノエート、エチレングリコールジオレイル、アルコール類ではオレイルアルコール、ステアリルアルコール、ラウリルアルコール、などが挙げられる。
また、アルキレンオキサイド系、グリセリン系、グリシドール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加体、等のノニオン界面活性剤、環状アミン、エステルアミド、第四級アンモニウム塩類、ヒダントイン誘導体、複素環類、ホスホニウム又はスルホニウム類、等のカチオン系界面活性剤、カルボン酸、スルフォン酸、燐酸、硫酸エステル基、燐酸エステル基、などの酸性基を含むアニオン界面活性剤、アミノ酸類、アミノスルホン酸類、アミノアルコールの硫酸又は燐酸エステル類、アルキルベダイン型、等の両性界面活性剤等も使用できる。
これらの界面活性剤については、「界面活性剤便覧」(産業図書株式会社発行)に詳細に記載されている。これらの潤滑剤、帯電防止剤等は必ずしも100%純粋ではなく、主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解物、酸化物等の不純分が含まれても構わない。これらの不純分は30%以下が好ましく、更に好ましくは10%以下である。
本発明で使用されるこれらの潤滑剤、界面活性剤は個々に異なる物理的作用を有するものであり、その種類、量、及び相乗的効果を生み出す潤滑剤の併用比率は目的に応じ最適に定められるべきものである。磁性層で脂肪酸を用い表面へのにじみ出しを制御する、エステル類を用い表面へのにじみ出しを制御する、界面活性剤量を調節することで塗布の安定性を向上させる、潤滑剤の添加量を調整して潤滑効果を向上させるなど考えられる。なお、ここに示した例のみに限られるものではない。一般には潤滑剤の総量として磁性体粉末に対し、0.1%〜50%、好ましくは2%〜25%の範囲で選択される。
本発明で用いられる添加剤のすべて又はその一部は、磁性塗料製造のどの工程で添加しても構わない、たとえば、混練工程前に磁性体と混合する場合、磁性体と結合剤と溶剤による混練工程で添加する場合、分散工程で添加する場合、分散後に添加する場合、塗布直前に添加する場合などがある。また、目的によってはカレンダーした後、又はスリット終了後、磁性層表面に潤滑剤を塗布することもできる。本発明で用いられる有機溶剤は公知のものが使用でき、たとえば特開昭6−68453に記載の溶剤を用いることができる。
次に、本発明の磁気記録媒体の層構成(各層の厚さ)について説明する。支持体の厚さとして、2〜100μmのものが採用でき、好ましくは2〜80μmのものが採用できる。コンピューターテープの支持体は、3.0〜6.5μm(好ましくは、3.0〜6.0μm、更に好ましくは、4.0〜5.5μm)の範囲の厚さのものが採用できる。
平滑層と磁性層との間に、密着性向上のための下塗層を設けても構わない。この下塗層厚さは0.01〜0.5μm、好ましくは0.02〜0.5μmである。本発明において、帯電防止やカール補正などの効果を出すために磁性層側と反対側にバック層を設けることが好ましい。この厚さは0.1〜4μm、好ましくは0.3〜2.0μmである。これらの下塗層、バック層としては公知のものが使用できる。
本発明の媒体の磁性層の厚さは、用いるヘッドの飽和磁化量やヘッドギャップ長、記録信号の帯域により最適化されるものである。磁性層を異なる磁気特性を有する2層以上に分離してもかまわず、公知の重層磁性層に関する構成が適用できる。
一般に、コンピュータデータ記録用の磁気テープは、ビデオテープ、オーディオテープに比較して、繰り返し走行性が強く要求される。このような高い走行耐久性を維持させるために、バック層には、カーボンブラックと無機粉末が含有されていることが好ましい。
カーボンブラックは、平均粒子サイズの異なる二種類のものを組み合わせて使用することが好ましい。この場合、平均粒子サイズが10〜20nmの微粒子状カーボンブラックと平均粒子サイズが230〜300nmの粗粒子状カーボンブラックを組み合わせて使用することが好ましい。
一般に、上記のような微粒子状のカーボンブラックの添加により、バック層の表面電気抵抗を低く設定でき、また、光透過率も低く設定できる。磁気記録装置によっては、テープの光透過率を利用し、動作の信号に使用しているものが多くあるため、このような場合には特に微粒子状のカーボンブラックの添加は有効になる。
また、微粒子状カーボンブラックは、一般に液体潤滑剤の保持力に優れ、潤滑剤併用時、摩擦係数の低減化に寄与する。一方、粒子サイズが230〜300nmの粗粒子状カーボンブラックは、固体潤滑剤としての機能を有しており、また、バック層の表面に微小突起を形成し、接触面積を低減化して、摩擦係数の低減化に寄与する。
微粒子状カーボンブラックの具体的な商品としては、以下のものを挙げることができる。RAVEN2000B(18nm)、RAVEN1500B(17nm)(以上、コロンビアカーボン社製)、BP800(17nm)(キャボット社製)、PRINNTEX90(14nm)、PRINTEX95(15nm)、PRINTEX85(16nm)、PRINTEX75(17nm)(以上、デグサ社製)、#3950(16nm)(三菱化成工業社製)。
また、粗粒子カーボンブラックの具体的な商品の例としては、サーマルブラック(270nm)(カーンカルブ社製)、RAVENMTP(275nm)(コロンビアカーボン社製)を挙げることができる。
バック層において、平均粒子サイズの異なる二種類のものを使用する場合、10〜20nmの微粒子状カーボンブラックと230〜300nmの粗粒子状カーボンブラックとの含有比率(質量比)は、前者:後者=98:2〜75:25の範囲にあることが好ましく、更に好ましくは、95:5〜85:15の範囲である。
バック層中のカーボンブラック(二種類のものを使用する場合には、その全量)の含有量は、結合剤100質量部に対して、通常30〜80質量部の範囲であり、好ましくは、45〜65質量部の範囲である。
無機粉末は、硬さの異なる二種類のものを併用することが好ましい。具体的には、モース硬度3〜4.5の軟質無機粉末とモース硬度5〜9の硬質無機粉末とを使用することが好ましい。モース硬度が3〜4.5の軟質無機粉末を添加することで、繰り返し走行による摩擦係数の安定化を図ることができる。しかもこの範囲の硬さでは、摺動ガイドポールが削られることもない。また、この無機粉末の平均粒子サイズは、30〜50nmの範囲にあることが好ましい。
モース硬度が3〜4.5の軟質無機粉末としては、たとえば、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、及び酸化亜鉛を挙げることができる。これらは、単独で、又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
バック層内の軟質無機粉末の含有量は、カーボンブラック100質量部に対して10〜140質量部の範囲にあることが好ましく、更に好ましくは、35〜100質量部である。
モース硬度が5〜9の硬質無機粉末を添加することにより、バック層の強度が強化され、走行耐久性が向上する。これらの無機粉末をカーボンブラックや軟質無機粉末とともに使用すると、繰り返し摺動に対しても劣化が少なく、強いバック層となる。また、この無機粉末の添加により、適度の研磨力が付与され、テープガイドポール等への削り屑の付着が低減する。特に軟質無機粉末と併用すると、表面の粗いガイドポールに対しての摺動特性が向上し、バック層の摩擦係数の安定化も図ることができる。
硬質無機粉末は、その平均粒子サイズが80〜250nm(更に好ましくは、100〜210nm)の範囲にあることが好ましい。
モース硬度が5〜9の硬質無機質粉末としては、たとえば、α−酸化鉄、α−アルミナ、及び酸化クロム(Cr2 O3 )を挙げることができる。これらの粉末は、それぞれ単独で用いてもよいし、又は併用してもよい。これらの内では、α−酸化鉄又はα−アルミナが好ましい。硬質無機粉末の含有量は、カーボンブラック100質量部に対して通常3〜30質量部であり、好ましくは、3〜20質量部である。
バック層に前記軟質無機粉末と硬質無機粉末とを併用する場合、軟質無機粉末と硬質無機粉末との硬さの差が、2以上(更に好ましくは、2.5以上、特に、3以上)であるように軟質無機粉末と硬質無機粉末とを選択して使用することが好ましい。
バック層には、前記それぞれ特定の平均粒子サイズを有するモース硬度の異なる二種類の無機粉末と、前記平均粒子サイズの異なる二種類のカーボンブラックとが含有されていることが好ましい。
バック層には、潤滑剤を含有させることができる。潤滑剤は、磁性層に使用できる潤滑剤として挙げた潤滑剤の中から適宜選択して使用できる。バック層において、潤滑剤は、結合剤100質量部に対して通常1〜5質量部の範囲で添加される。
次に、本発明の磁気記録媒体の製造方法について説明する。磁性塗料を製造する工程は、少なくとも混練工程、分散工程、及びこれらの工程の前後に必要に応じて設けた混合工程からなる。個々の工程はそれぞれ2段階以上に分かれていても構わない。本発明に使用する磁性体、結合剤、カーボンブラック、研磨剤、帯電防止剤、潤滑剤、溶剤などすべての原料はどの工程の最初又は途中で添加しても構わない。また、個々の原料を2つ以上の工程で分割して添加しても構わない。たとえば、ポリウレタンを混練工程、分散工程、分散後の粘度調整のための混合工程で分割して投入してもよい。
本発明の目的を達成するためには、従来の公知の製造技術を一部の工程として用いることができる。混練工程ではオープンニーダ、連続ニーダ、加圧ニーダ、エクストルーダなど強い混練力をもつものを使用することが好ましい。ニーダを用いる場合は磁性体と結合剤のすべて又はその一部(ただし全結合剤の30%以上が好ましい)及び磁性体100部に対し15〜500部の範囲で混練処理される。これらの混練処理の詳細については特開平1−106338、特開平1−79274に記載されている。また、磁性層液を分散させるにはガラスビーズを用いることができるが、高比重の分散メディアであるジルコニアビーズ、チタニアビーズ、スチールビーズが好適である。これら分散メディアの粒径と充填率は最適化して用いられる。分散機は公知のものを使用することができる。
磁気記録媒体としてデイスクの形態を採用する場合、配向装置を用いず無配向でも十分に等方的な配向性が得られることもあるが、コバルト磁石を斜めに交互に配置すること、ソレノイドで交流磁場を印加するなど、公知のランダム配向装置を用いることが好ましい。等方的な配向とは強磁性金属粉末の場合、一般的には面内2次元ランダムが好ましいが、垂直成分をもたせて3次元ランダムとすることもできる。六方晶フェライトの場合は一般的に面内及び垂直方向の3次元ランダムになりやすいが、面内2次元ランダムとすることも可能である。また、異極対向磁石など公知の方法を用い、垂直配向とすることで円周方向に等方的な磁気特性を付与することもできる。特に高密度記録を行う場合は垂直配向が好ましい。また、スピンコートを用い円周配向をしてもよい。
磁気記録媒体としてテープの形態を採用する場合、コバルト磁石やソレノイドを用いて長手方向に配向する。乾燥風の温度、風量、塗布速度を制御することで塗膜の乾燥位置を制御できる様にすることが好ましく、塗布速度は20m/分〜1000m/分、乾燥風の温度は60°C以上が好ましい、また、磁石ゾーンに入る前に適度の予備乾燥を行なうこともできる。
カレンダ処理ロールとしてエポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド等の耐熱性のあるプラスチックロール又は金属ロールで処理することが好ましい。処理温度は、好ましくは50°C以上、更に好ましくは100°C以上である。線圧力は好ましくは200kg/cm(≒196kN/m)以上、更に好ましくは300kg/cm(≒294kN/m)以上である。
本発明の磁気記録媒体の磁性層の飽和磁束密度は、強磁性金属微粉末を用いた場合0.2〜0.5Tとなり、六方晶フェライトをもちいた場合は0.1〜0.3Tとなる。抗磁力Hcは、通常、120〜400kA/mであるが、136〜240kA/mであることが好ましい。抗磁力の分布は、狭い方が好ましく、SFD(スイッチング・フィールド・ディストリビューション)及びSFDrは0.6以下が好ましい。
磁気記録媒体としてデイスクの形態を採用する場合、角形比は2次元ランダムでは、通常、0.55〜0.67であり、好ましくは0.58〜0.64である。3次元ランダムでは、0.45〜0.55が好ましく、垂直配向では、垂直方向に通常、0.6以上、好ましくは0.7以上、反磁界補正を行った場合は通常、0.7以上、好ましくは0.8以上である。2次元ランダム、3次元ランダムとも配向度比は0.8以上が好ましい。2次元ランダムの場合、垂直方向の角形比、垂直方向のBr及び垂直方向のHcは面内方向の0.1〜0.5倍以内とすることが好ましい。磁気記録媒体としてテープの形態を採用する場合、角型比は0.7以上、好ましくは0.8以上である。
本発明の磁気記録媒体のヘッドに対する摩擦係数は、温度−10〜40°C、湿度0〜95%の範囲において、通常0.5以下、好ましくは0.3以下である。表面固有抵抗は、磁性面で104 〜1012オーム/sqが好ましく、帯電位は、−500V〜+500Vが好ましい。
磁性層の0.5%伸びでの弾性率は、面内各方向で100〜2000kg/mm2 (≒980〜19600N/mm2 )が好ましく、破断強度は、10〜70kg/mm2 (≒98〜686N/mm2 )が好ましく、磁気記録媒体の弾性率は、面内各方向で100〜1500kg/mm2 (≒980〜14700N/mm2 )が好ましく、残留伸びは0.5%以下が好ましい。100°C以下のあらゆる温度での熱収縮率は1%以下が好ましく、0.5%以下が更に好ましく、0.1%以下が最も好ましい。
磁性層のガラス転移温度(110Hzで測定した動的粘弾性測定の損失弾性率の極大点)は、50°C以上120°C以下が好ましい。損失弾性率は1×103 〜8×104 N/cm2 の範囲にあることが好ましく、損失正接は0.2以下であることが好ましい。損失正接が大き過ぎると粘着故障が発生しやすい。
これらの熱特性や機械特性は、媒体の面内各方向で10%以内でほぼ等しいことが好ましい。磁性層中に含まれる残留溶媒は、好ましくは100mg/m2 以下、更に好ましくは10mg/m2 以下である。塗布層が有する空隙率は、下層、上層とも好ましくは30容量%以下、更に好ましくは20容量%以下である。空隙率は高出力を果たすためには小さい方が好ましいが、目的によってはある値を確保した方がよい場合がある。たとえば、繰り返し使用が重視されるディスク媒体では空隙率が大きい方が走行耐久性は好ましいことが多い。
磁性層の算術平均粗さRaは、WYCO社製TOPO−3Dを用いて約250μm×250μmの面積での測定で、4.0nm以下が好ましく、3.8nm以下が更に好ましく、3.5nm以下が最も好ましい。磁性層の最大高さRmaxは、0.5μm以下が好ましく、十点平均粗さRzは、0.3μm以下が好ましく、中心面山高さRpは、0.3μm以下が好ましく、中心面谷深さRvは、0.3μm以下が好ましく、中心面面積率Srは、20%以上、80%以下が好ましく、平均波長λaは、5μm以上、300μm以下が好ましい。
磁性層の表面突起は0.01〜1μmの大きさのものを0〜2000個の範囲で任意に設定することが可能であり、これにより電磁変換特性、摩擦係数を最適化することが好ましい。これらは支持体のフィラーによる表面性のコントロールや磁性層に添加する粉体の粒径と量、カレンダー処理のロール表面形状などで容易にコントロールすることができる。具体的には、磁性層の表面の原子間力顕微鏡により測定された高さ20nm以上の突起密度が40個/900μm2 以下であることが好ましい。カールは±1mm以内とすることが好ましい。
以上、本発明に係る磁気記録媒体及びその製造方法の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、各種の態様が採り得る。
たとえば、本実施形態では、支持体の表面側において、平滑層と磁性層とを設ける二層構成が採用されているが、平滑層と磁性層との間に非磁性の中間層を設ける構成をも採用できる。
本発明の実施例を、比較例と対比して説明する。なお、以下の各例において、「部」の表示は「重量部」 を意味する。以下の例において、平滑層の処理方法P1〜P4について図1の表に示す。この表において、「素材」の欄には、塗布液の構成を、「B型粘度」の欄には、塗布液のブルックフィールド型粘度計により測定した粘度を、「塗膜の硬化手段」の欄には、塗布液の硬化(乾燥)方法を、それぞれ示す。
また、以下の例において、実施例1としてのフレキシブルディスクの磁性層に使用するバリウムフェライト系の磁性塗料(1)の組成、及び実施例2としての磁気テープの磁性層に使用する強磁性金属系の磁性塗料(2)の組成は以下のように調整した。
(1)磁性塗料1の組成
バリウムフェライト磁性粉 100部
組成:Ba/Zn/Co/Nb=1/0.7/0.1/0.3(モル比)
塩化ビニル系共重合体 MR555(日本ゼオン社製) 5部
ポリウレタン樹脂 UR8200(東洋紡社製) 3部
α−アルミナ HIT55(住友化学社製) 10部
カ−ボンブラック #55(旭カーボン社製) 1部
フェニルスルホン酸 2部
ブチルステアレート 10部
ブトキシエチルステアレート 5部
イソヘキサデシルステアレート 3部
ステアリン酸 2部
メチルエチルケトン 125部
シクロヘキサノン 125部
(2)磁性塗料2の組成
強磁性金属粉末 100部
組成:Co/Fe=21原子%、Al/Fe=7原子%、Y/Fe=5原子%
平均長軸長:0.06μm、平均針状比:6
Hc:2310Oe(185kA/m)、σs:137A・m2 /kg
塩化ビニル系共重合体 MR110(日本ゼオン社製)12部
ポリウレタン樹脂 UR8200(東洋紡社製) 3部
α−アルミナ HIT55(住友化学社製) 2部
カーボンブラック #55(旭カーボン社製) 1部
ブチルステアレート 1部
ステアリン酸 5部
メチルエチルケトン 100部
シクロヘキサノン 20部
トルエン 60部
上記の塗料それぞれについて、各成分をニーダで混練したのち、サンドミルを用いて4時間分散処理を行った。得られた分散液にポリイソシアネートを3部を加え、更にシクロヘキサノン40部を加え、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、磁性層形成用の塗布液を調製した。
得られた磁性層塗布液を、乾燥後の厚さが所定量になるように、厚さ4.4μmで算術平均粗さが7.0nmのアラミド支持体(商品名:ミクトロン)上に塗布を行い、塗布層がまだ湿潤状態にあるうちに0.6Tの磁力を持つコバルト磁石と0.6Tの磁力を持つソレノイドにより配向させた。乾燥後、金属ロールのみから構成される7段のカレンダーで温度85°Cにて分速200m/minでカレンダー処理を行った。
実施例2としての磁気テープには、磁性層の形成後に、裏面にバック層を形成した。バック層塗布液の組成(3)は以下のように調整した。
(3)バック層塗布液の組成
カーボンブラック 100部
平均粒子サイズ:20nm、DBP吸油量:200ml/100g
アルミナ 1部
平均粒子サイズ:200nm
ニトロセルロース RS1/2(ダイセル社製) 50部
ウレタン樹脂 N−2301(日本ポリウレタン社製)45部(固形分)
メチルエチルケトン/シクロヘキサノン 1000部
上記の塗布液を混合したのち、サンドミルを用いて3時間分散処理を行った。得られた分散液に、ポリイソシアネート(日本ポリウレタン社製、製品名:コロネート3041)を5部(固形分で)、メチルエチルケトン/トルエンを500部加え、更に20分間攪拌混合し、バック層用の塗布液を調製した。
得られた塗布液を、乾燥後の厚さが所定量になるように、支持体の裏面に塗布した。
上記のように作成した、実施例1としてのフレキシブルディスク、及び実施例2としての磁気テープの各々の性能を下記の測定法により評価した。
(1)SN比(ディスク)
記録ヘッドとしてMIGヘッド(ギャップ:0.15μm、1.8T)を、再生用ヘッドとしてMRヘッドをスピンスタンドに取り付けて測定した。回転数2500〜3500rpm、半径30mmの条件で、ノイズとしてDCノイズを測定した。なお、面記録密度は、1Gbit/(25.4mm)2 、(トラックピッチ:1μm、ビット長:0.03μm)とした。
(2)CN比(テープ)
記録ヘッドとしてMIGヘッド(ギャップ:0.15μm、1.8T)を、再生用ヘッドとしてMRヘッドをドラムテスターに取り付けて測定した。ヘッド−メディア相対速度1〜3m/minの条件で、ノイズとして変調ノイズを測定した。なお、面記録密度は、0.57Gbit/(25.4mm)2 、(トラックピッチ:6.8μm、ビット長:0.165μm)とした。
(3)平滑層の表面突起(20nm以上)の密度は、デジタルインスツルメンツ社製のナノスコープ3(AFM:原子間力顕微鏡)を用いて、稜角70°の四角錘のSiNの探針を使用して、30μm平方角(900μm2 )中の、突起を測定した。
(4)カッピング測定(テープ)
テープを長さ10mmに切断し、これを平坦なガラス板の上に静置し、レーザ変位計を使用して、テープの最大浮き上がり量Hを測定した。そして、Hが1mm超を「大」と、Hが0.2〜1mmの範囲を「小」と、Hが0.2mm未満を「なし」と判定した。
(5)表面粗さRa
既述のように、各層の表面粗さは、WYKO社製TOPO−3Dで250μm角を測定した算術平均粗さRaで示した。
実施例1としてのフレキシブルディスクの製造条件及び評価結果を図2の表に、実施例2としての磁気テープの製造条件及び評価結果を図3の表に、それぞれ示す。
図2の実施例1において、FD1〜FD5は、平滑層を設けない比較例である。これらの磁性層の厚さは、0.05〜0.5μmの範囲にある。
FD6〜FD17は、平滑層を図1のP1の条件で形成したもので、これらの平滑層の厚さは、0.2〜1.0μmの範囲にあり、磁性層の厚さは、0.05〜0.5μmの範囲にある。このうち、FD11、FD12、FD16及びFD17は、磁性層の厚さが0.15μmを超える比較例である。
FD18は、平滑層を図1のP2の条件で形成したもので、この平滑層の厚さは、0.5μmであり、磁性層の厚さは、0.1μmである。
FD19は、平滑層を図1のP3の条件で形成したもので、この平滑層の厚さは、0.5μmであり、磁性層の厚さは、0.1μmである。
FD20は、平滑層を図1のP4の条件で形成したもので、この平滑層の厚さは、0.5μmであり、磁性層の厚さは、0.1μmである。
平滑層を設けない比較例(FD1〜FD5)の場合、表面粗さRaは、いずれも大きく(4.3〜7.5nm)、平滑層の表面突起(20nm以上)の密度は高く、最低のもの(FD5)でも52個であり、40個を超えている。また、SN比も悪い(−4.3〜0.3dB)。
磁性層の厚さが0.15μmを超える比較例(FD11、FD12、FD16及びFD17)の場合、表面粗さRaは、他の例と遜色なく(1.5〜2.2nm)、平滑層の表面突起(20nm以上)の密度も他の例と遜色ないものの(6〜14個)、SN比は、他の例と比べて劣る(0.2〜0.6dB)。
上記の比較例以外の各例(実施例)の場合、表面粗さRaは比較的小さく(1.6〜3.6nm)、平滑層の表面突起(20nm以上)の密度の低いものが多く(9〜47個)、SN比も、比較例と比べて優れている(1.0〜3.6dB)。
図3の実施例2において、T1〜T5は、平滑層を設けない比較例である。これらの磁性層の厚さは、0.05〜0.5μmの範囲にある。また、バック層の厚さは、いずれも0.4μmである。磁性層の厚さと、バック層の厚さとの差は、0.1〜0.35の範囲にある。
T6〜T16は、平滑層を図1のP1の条件で形成したもので、これらの平滑層の厚さは、0.3〜0.7μmの範囲にあり、磁性層の厚さは、0.05〜0.20μmの範囲にある。このうち、T13は、磁性層の厚さが0.15μmを超える比較例である。これらの平滑層と磁性層の厚さの合計は、0.35〜0.8μmの範囲にある。また、バック層の厚さは、0.4〜0.8μmの範囲にある。平滑層と磁性層との合計した厚さと、バック層の厚さとの差は、0〜0.4μmの範囲にある。このうち、T9、T13及びT14の平滑層と磁性層との合計した厚さと、バック層の厚さとの差が、いずれも0.4μmであり、0.3μmを超えている。
T17は、平滑層を図1のP3の条件で形成したもので、この平滑層の厚さは、0.6μmであり、磁性層の厚さは、0.1μmである。したがって、平滑層と磁性層との合計した厚さは、0.7μmである。また、バック層の厚さは、0.4μmであることより、平滑層と磁性層との合計した厚さと、バック層の厚さとの差は、0.3μmである。
T18は、平滑層を図1のP4の条件で形成したもので、この平滑層の厚さは、0.6μmであり、磁性層の厚さは、0.1μmである。したがって、平滑層と磁性層との合計した厚さは、0.7μmである。また、バック層の厚さは、0.4μmであることより、平滑層と磁性層との合計した厚さと、バック層の厚さとの差は、0.3μmである。
平滑層を設けない比較例(T1〜T5)の場合、表面粗さRaは、いずれも大きく(4.3〜6.1nm)、平滑層の表面突起(20nm以上)の密度は比較的高い(32〜45個)。また、CN比も悪い(−4.3〜0.3dB)。カッピングは、「なし」のものもあるが(T4及びT5)、総合評価ではいずれも×であった。
磁性層の厚さが0.15μmを超える比較例(T13)の場合、表面粗さRaは、他の例と遜色なく(1.6nm)、平滑層の表面突起(20nm以上)の密度も他の例と遜色なく(7個)、CN比も他の例と遜色ないものの(2.5dB)、平滑層と磁性層との合計した厚さと、バック層の厚さとの差は、0.4μm(0.3μmを超える)であるためか、カッピングが「大」であり、総合評価では×であった。
平滑層と磁性層との合計した厚さと、バック層の厚さとの差が0.4μm(0.3μmを超える)であるT9及びT14の場合、表面粗さRaは、他の例と遜色なく(2.1及び1.4nm)、平滑層の表面突起(20nm以上)の密度も他の例と遜色なく(12及び9個)、CN比も他の例と遜色ないものの(2.2及び2.8dB)、層の厚さの差が大きいためか、いずれもカッピングが「大」であり、総合評価では×であった。
T18の場合、カッピングが「小」であるものの、表面粗さRaは比較的大きく(3.6nm)、平滑層の表面突起(20nm以上)の密度も比較的高く(30個)、CN比も劣り(0.2dB)、総合評価では×であった。
上記の例以外の各例の場合、表面粗さRaは比較的小さく(1.5〜2.8nm)、平滑層の表面突起(20nm以上)の密度の低いものが多く(7〜24個)、CN比も、上記の例と比べて優れており(1.4〜3.1dB)、カッピングも「小」か「なし」であり、総合評価では○か◎であった。