JP2005194673A - 溶融紡糸口金パック及び溶融紡糸方法 - Google Patents

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正洋 小西
Takeshi Masuda
剛 益田
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Abstract

【課題】多フィラメントの極細繊維を2000m/分以上で安定な紡糸調子を維持することができる溶融紡糸方法と、溶融紡糸口金パックを提供する。
【解決手段】濾過部を通過したポリマーを中央部に合流させるポリマー集合孔H2を有する溶融紡糸用口金パックにおいて、100個以上の吐出孔群H1が穿設された一枚の紡糸口金1とこの紡糸口金1の直ぐ上流側に設けられた背圧付与部材3とを具備し、前記集合孔H2の下流から前記背圧付与部材3の上面に至る間に形成されたポリマー分配流路Fが逆漏斗形状を有して下流側へ行くに従って円滑に拡流しており、更に、前記ポリマー集合孔H2の出口から前記背圧付与部材3の上面までの垂直距離Lと前記紡糸口金1のポリマー吐出面の直径Dとが「0.02≦L/D≦0.35」という条件を満足する。
【選択図】図2

Description

本発明は、ポリエステル、ポリアミドなどの熱可塑性合成樹脂を溶融紡糸するための溶融紡糸口金パックに関し、さらに詳しくは口金板上面でのポリマーの分配性を良くすることで紡糸切れなく溶融紡糸することの出きる溶融紡糸口金パックに関するものである。
近年、スウェード調の高級衣料用途などへの高付加価値製品用素材としての需要の高まりと共に、単繊維繊度が小さい極細繊維への期待が大きくなってきて、単繊維繊度が0.7dtex以下の極細繊維を安定して溶融紡糸する必要性が生じてきた。しかも、溶融紡糸する極細繊維のフィラメント数に関しても、100フィラメント以上が要求されるようになってきた。なお、前述のような繊維の製造は、一般に、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィンなどの熱可塑性ポリマーを溶融して、溶融したポリマーをスピンブロックに装着された溶融紡糸口金パックへ導き、この溶融紡糸口金パックから溶融ポリマーを紡出し、紡出された繊維を冷却固化させ、引き取りローラによって引き取る溶融紡糸工程で行われることは周知である。
このとき、溶融ポリマーを繊維化するために使用される従来の溶融紡糸口金パックの構造を概観してみると、溶融ポリマーを溶融紡糸口金パック内に導いて、これを口金から繊維として吐出させるまでの過程において、溶融紡糸口金パックには溶融ポリマーを受け入れる導入孔、ポリマー中の異物を濾過するための濾砂やフィルター、口金に穿設された各吐出孔へ溶融ポリマーを良好に分配するための分配板などが設置されている。
このような溶融紡糸口金パックを構成する部品の中で口金に関しては、100フィラメント以上の多フィラメント糸条を効率よく製造しようとすると、一枚の口金に多数の吐出孔を穿孔する必要がある。しかしながら、一枚の口金に100個以上の吐出孔を配置した場合、溶融吐出した糸条の冷却が難しいため、繊維間の密着断糸が発生したり、得られた糸条についても染斑が発生したりして単繊維繊度の均一性が悪化する。また、特に、極細繊維はその単繊維繊度が0.7dtex以下と小さいため、通常の繊度を有する繊維よりも、溶融紡糸時に単繊維切れが発生し易いという問題があり、この問題は、生産効率を上げるために紡糸速度を2000m/分以上に高速化するにしたがってますます顕著になってくる。
そこで、例えば、特開平5−125609号公報に提案されているように、できるだけ高穿孔密度で吐出孔群を口金に穿孔しながら、安定に多フィラメントの極細繊度を溶融紡糸するための口金が提案されている。しかしながら、このような多フィラメントの極細繊維を溶融紡糸しようとすると、口金だけの問題としてではなく、口金の上流側における溶融紡糸口金パック内での溶融ポリマーの流動にも細心の注意をすることが要求される。
すなわち、溶融紡糸工程においてスピンブロック内で加熱されている溶融紡糸口金パックは、パック外周部に比べてパック中央部の温度が低いという問題があり、そのため、パック中央部を通過した溶融ポリマーとパック外周部を通過した溶融ポリマーとは重合度や粘度等、物性の異なった状態になっている。このため、このような溶融紡糸口金パックを使用して口金へそのままの状態のポリマーを導入すると、口金に穿設された吐出孔群へのポリマーの分配性が不均一となったり、紡出したフィラメント群に単繊維切れが発生したりするという問題が生じる。
そこで、このような問題を解決するための従来技術がいろいろと提案されている。その中でも、例えば、パック中央部とパック外周部といったように異なる流路経路を流れることによって熱履歴差を生じたポリマーを紡糸パックの中央部に絞り部を設けて、ポリマーの流れを一箇所に集中させ、熱履歴が異なる各経路を流れてきたポリマーを混合することが行なわれている。ところが、この慣用技術のようにパック中央部に設けた一つの流路にポリマーを合流させることが必須な要件とすると、今度は逆に合流させてパック中央部に集中させたポリマーを口金面に広範囲に穿設された吐出孔群に斑なく分配させることが要求される。もし、この分配がうまく行かないと、パック中央部でポリマーを合流させて熱履歴差を解消しようとしたにもかかわらず、その後に再び熱履歴差を惹起してしまうことになって、ポリマーをパック中央部に集中させることの意味がなくなってしまう。
そこで、この問題を解決するために、特開2001−254219号公報において、口金の直ぐ上流位置の口金と対向する側のポリマー分配部材面が、上流方向へ環状の凸部流路を設けることが提案されている。ところが、フィラメント(単繊維)数が100フィラメント以上となり、更に、単繊維繊度が0.2〜0.7dtexとなる極細繊維を2000m/分以上の高速で安定に紡糸しようとすると、以下に述べるような溶融紡糸口金パックが必要とされるが、このような溶融紡糸口金パックを使用して溶融紡糸を行なおうとすると、下記の問題が発生する。
先ず、溶融紡糸口金パックの一部を構成する紡糸口金について考えると、このような100フィラメント以上の極細繊維を一つの口金を用いて溶融紡糸するためには、当然のことながら口金に100個以上の吐出孔群を穿設する必要がある。ところが、前述の特開平5−125609号公報に記載の従来技術からも明らかなように、安定な溶融紡糸を行なおうとすると、口金に穿孔する吐出孔の穿孔密度を上げることには限界がある。そうすると、口金には多くの吐出孔群を穿孔するための広い面積が必要とされ、この故に、口金の直径も必然的に大きくならざるを得ないという問題がある。
そうすると、ポリマーを集中させるために、パック中央部に設けた流路をせっかく通過させたポリマーであっても、この流路を出た後に、口金の中央部へ供給されるポリマーと、口金の外周部へ供給されるポリマーとの間で流路長差が拡大されるという問題が生じることを回避することができない。更に、0.2〜0.7dtexといった単繊維繊度を有する極細繊維を製造するという条件を考えると、例えば、1dtex以上といった通常の単繊維繊度を有する繊維を溶融紡糸する場合と比較すると、一孔当りの吐出孔に供給されるポリマー量は、極細繊維を紡糸する場合の方が必然的に少なくならざるを得ない。そうすると、このようなポリマーの流速が減少することを回避することができず、当然のことながら口金に穿設された吐出孔群へ到達するまでの時間が更に長くなって、パック内にポリマーがより長時間滞在せざるを得ないという問題も発生する。
それにもかかわらず、特開2001−254219号公報に記載の技術のように、更にポリマーの滞留量と滞留時間を多くするような環状の凸部流路を設けるようなことをすると、このような問題が更に顕在化することとなる。
特開平5−125609号公報 特開2001−254219号公報
本発明者等は、単繊維繊度が0.2〜0.7dtexと小さく、更に、100フィラメント以上の多フィラメントの極細繊維を2000m/分以上で溶融紡糸するための溶融紡糸口金パックとしては、口金の直ぐ上流側におけるポリマーの分配性を向上させなければ、単繊維切れなどの問題を改善することができないことを知見した。
したがって、本発明が目的とするところは、前記知見に基づいて、背景技術欄で述べた従来技術が有する諸問題を解決すること、すなわち、口金の直ぐ上流側でのポリマーの分配性を良くすることにある。そして、これにより、紡糸時での単繊維切れの発生もなく、安定な紡糸調子を維持することができる溶融紡糸方法と、この溶融紡糸方法を可能とした溶融紡糸口金パックを提供することにある。
本発明者等は前記課題を達成することができる溶融紡糸口金パックについて鋭意検討を行なった。その結果、請求項1に記載の本発明として、「濾過部を通過したポリマーを中央部に合流させるポリマー集合孔を有する溶融紡糸用口金パックにおいて、100個以上の吐出孔群が穿設された紡糸口金と前記紡糸口金の直ぐ上流側に設けられた背圧付与部材とを具備し、前記集合孔の下流から前記背圧付与部材の上面に至る間に形成されたポリマー分配流路が逆漏斗形状を有して下流側へ行くに従って徐々に拡大しており、更に、前記ポリマー集合孔の出口から前記背圧付与部材の上面までの垂直距離(L)と前記紡糸口金のポリマー吐出面の直径(D)とが「0.02≦L/D≦0.35」という条件を満足することを特徴とする溶融紡糸口金パック」を提供することによって、前記課題を達成することを究明した。
また、請求項2に記載の発明のように、「前記ポリマー集合孔の流路長(L)と前記ポリマー集合孔の直径(D)とが「3.0≦L/D≦20.0」という条件を満足することを特徴とする請求項1に記載の溶融紡糸口金パック」とすることが好ましい。
さらに、請求項3に記載の発明として、「請求項1又は2に記載の溶融紡糸口金パックを用いて、単繊維繊度が0.2〜0.7dtex、且つ、そのフィラメント数が100以上の熱可塑性極細繊維を2000m/分以上で溶融紡糸することを特徴とする溶融紡糸方法」が提供される。
本発明の溶融紡糸口金パックは、口金の直ぐ上流部に背圧付与部材を設けると共に、ポリマー集合孔からこの背圧付与部材3に至るポリマー分配流路の形状を特定形状とし、更にポリマー集合孔の出口から背圧付与部材の上面までの垂直距離(L)と前記紡糸口金のポリマー吐出面の直径(D)とが「0.02≦L/D≦0.35」という条件を満足するようにしたために、口金に穿設された吐出孔群へのポリマーの分配性を向上させて安定な溶融紡糸を可能にするという極めて顕著な効果を奏する。また、本発明の溶融紡糸口金パックでは、100以上の吐出孔群を穿設しなければならない紡糸口金であっても、この紡糸口金のポリマー吐出面の直径(D1)を必要以上に小さくすることを要求しない。
更に、以上に述べた本発明の溶融紡糸口金パックと、この溶融紡糸口金パックを使用した溶融紡糸方法を用いることによって、単繊維繊度が0.2〜0.7dtex、且つ、そのフィラメント数が100以上の熱可塑性極細繊維を2000m/分以上で単繊維切れや繊度斑の発生もなく、安定に溶融紡糸することができ、背景技術欄で述べたような従来の溶融紡糸口金パックが有する問題を一挙に解決することができるという極めて顕著な効果を奏する。
先に述べた従来技術では、単繊維繊度が0.2〜0.7dtex、且つ、そのフィラメント数が100以上の熱可塑性極細繊維を2000m/分以上で溶融紡糸するような溶融紡糸口金パックとして、満足できる状態にはないが、本発明は、このような従来の溶融紡糸口金パックが有する問題を一挙に解決するものであって、本発明の溶融紡糸口金パックでは、100以上の吐出孔群を穿設しなければならないにもかかわらず、口金の直径を必要以上に小さくすることを要求しない。すなわち、本発明の溶融紡糸口金パックにおいては、口金の直ぐ上流部に背圧付与部材を設けると共に、ポリマー集合孔から前記背圧付与部材に至るポリマー分配流路の形状をこれから述べるある特定の条件を満足させることによって、口金に穿設された吐出孔群へのポリマーの分配性を向上させて安定な溶融紡糸を具現化するのである。
以下、このような特徴を有する本発明の溶融紡糸口金パックに関し、概略正断面図である図1に模式的に例示した実施態様を参照しながら以下に詳細に説明する。
ここで、図1に例示した本発明の溶融紡糸口金パックの実施態様例について簡単に説明すると、図1の溶融紡糸口金パックは、紡糸口金1、口金支持部材2、背圧付与部材3、ポリマーの濾過分配部材4、ブリッジ・プレート5、濾砂6、フィルター7及び8、ポリマー導入部材9、シール材10、そして、締結ボルト11を含んで構成されている。なお、H1は口金1に穿設された吐出孔群、H2はパック中央部に設けられたポリマー集合孔、そして、H3はポリマー導入孔である。
このとき、図1に例示した溶融紡糸口金パックでは、ポリマーの流れ方向に沿って上流側から下流側へと順に、ポリマー導入部材9、濾過分配部材4、そして、口金支持部材2からなる3つの部材に分割されている。このように溶融紡糸口金パックをポリマー導入部、ポリマーの濾過分配部、そして、口金部と大きく3つの部材に分割することによって、溶融紡糸口金パックに要求される機能を付与するためのパック部品を装着したり、必要とされる機能を具現化したりするための加工が容易にできるという利点がある。
また、これらの3つの部材は、それぞれシール材を外縁部に有する背圧付与部材3とフィルター8とを介して、口金支持部材2及び濾過分配部材4と、濾過分配部材4及びポリマー導入部材9とが締結ボルト11によって、外縁部に形成された各シール材をそれぞれ所定の締め付け力で締結されている。したがって、各シール材をポリマー漏れを起こさない所定の締付け力で締め付けることができるために、溶融紡糸口金パックのシール必要箇所のシール力を高めることができ、これによって、紡糸口金パックからのシール不良によるポリマー漏れが起こるのを極めて良好に防止することができる。
以上に述べたように構成される溶融紡糸口金パックにおいて、スピンブロックから図示省略したギヤポンプなどの計量供給手段によって、計量されて供給される溶融ポリマーは、ポリマー導入部材9に設けられたポリマー導入孔H3へと導入される。そして、このようにして導入されたポリマーは、拡流されて濾過分配部材4へ流入し、ここでポリマー中の異物などが濾過される。
その際、前記濾過分配部材4には、前記フィルター8と共に、濾砂6が充填された濾過層とブリッジ・プレート5、及びフィルター7などがパック部品として設けられている。ただし、フィルター7と8は、濾砂6が下流側へと流れ出たり、濾過層の形状が崩れたりしないように濾過層の上下に濾砂6をサンドイッチするように設けられている。また、前記ブリッジ・プレート5は、フィルター8、濾過層、そして、フィルター7に加わるポリマーの濾過圧力を支えて、フィルター7が変形するのを防止すると共に、ポリマー中に含まれる異物などの濾過処理が終了したポリマーをパック中央部に集合させて前記ポリマー集合孔H2へ良好に導く役割を果たす。
このようにして、前記濾過分配部材4では、フィルター7と6、及び濾砂6が充填された濾過層によって、ポリマー中の異物が濾過されると共に、パック外周部とパック中央部をそれぞれ流れてきたポリマーを集合孔H2で合流させて絞ることによって、粘度などのポリマー物性が均一化される。なお、溶融紡糸口金パック中の異なる経路を流れてきた各ポリマーをパック中央部に形成した絞り部(集合孔H2)へ集中させて、その物性を均一化しようとする技術は既に背景技術欄で述べたように公知である。次いで、このような公知技術では、一般に、集合孔H2へポリマーを集中させて物性が均一化されたポリマーは、引き続いて集合孔H2の直ぐ下流に形成された分配流路から直接的に口金1へとポリマーが分配供給され、口金1に穿設された吐出孔群H1から紡出されて繊維化される。
これに対して、本発明の溶融紡糸口金パックでは、特開2001−254219号公報に記載の従来技術と異なり、ポリマーの流れを整流するための手段とポリマーの通過によって生じる圧力降下を利用して背圧を付与する手段とを兼用する背圧付与部材3を口金1の直ぐ上流に設けることを一大特徴とする。つまり、本発明では、従来技術のように、集合孔H2から吐出孔群H1へ直接的にポリマーを供給するのではなく、いったん背圧付与部材3を介して吐出孔群H2へと間接的にポリマーを供給することを一つの特徴とするのである。なお、この背圧付与部材3には、ポリマー中の微少な異物を除去とポリマー流を細流化する機能とを付与しておくことが好ましく、このような機能を付与することで、極細繊維を紡糸するために、その孔径が更に小さくされた吐出孔H1の詰まりを抑制する効果が生じる。
このように、本発明の溶融紡糸口金パックでは、口金1の直ぐ上流側に背圧付与部材3を設けているために、この背圧付与部材3の作用によって、背圧付与部材3と前記集合孔H2との間に流れ込むポリマーの圧力は、背圧付与部材3をポリマーが通過する通過面の全面に渡って略一定の圧力値に維持されるようになって、ここでの圧力変動の発生が抑制される。そうすると、ポリマー分配流路でのポリマー流の速度分布などに係る流動状態の影響が小さくなって、ポリマー圧力に関して言えば、背圧付与部材3の全面に渡って略均等なポリマー圧力が作用することになる。このために、単位面積当りに背圧付与部材3を通過するポリマーの流量が一定となり、ポリマーは背圧付与部材3の全面に渡って均一に通過することとなる。
したがって、口金中央部に配置された吐出孔であっても、あるいは口金外周部に配置された吐出孔であっても略均等にポリマーが供給されることとなる。このために、口金中央部の吐出孔群へ供給されるポリマー量と口金外周部の吐出孔群へ供給されるポリマー量との間に斑が生じるようなことがなくなる。また、背圧付与部材3に異物濾過機能を持たせた場合においても、ポリマーが背圧付与部材3の全面に渡って均一に単位面積当りで一定の流量で通過するため、ここで異物が捕捉された場合であっても、その濾過抵抗(濾加圧)の増大が背圧付与部材3の一部で局部的に大きくなることはないという効果も奏する。ただし、異物の捕捉は、通常、集合孔H2の上流側に設けられた前述の濾過層やフィルター7と6で主として行なわれることを付言しておく。
なお、背圧付与部材3によって新たに発生させる圧力としては、ポリマー吐出量、フィラメント数、単繊維繊度などの紡糸条件、更には、口金1、溶融紡糸口金パックあるいはギヤポンプなどの耐圧、口金1に穿設する吐出孔H1の形状などによって最適な値が決定されるために、これらの条件に合わせて適宜最適な値を使用すればよいが、通常は、0.1〜10.0Kgf/cm(0.01〜1.0MPa)程度であって、特に、0.5〜5.0Kgf/cm(0.05〜0.5MPa)が好ましく使用される。何故ならば、背圧付与部材3によって新たに発生させられる圧力が0.1Kgf/cm(0.01MPa)よりも小さいと背圧付与部材3を設ける効果は余りなく、逆に、10.0Kgf/cm(1.0MPa)を超えると口金1、溶融紡糸口金パックなどの耐圧の面で問題となるからである。
更に、本発明の溶融紡糸口金パックでは、この特徴に加えて、集合孔H2から背圧付与部材3に至るまでにポリマーが通過する分配流路が重要である。そこで、この点について、図2を参照しながら詳細に説明する。
なお、図2は、図1に例示した実施態様例の主要部を部分的に拡大した模式正断面図である。この図2において、参照符号Fはその詳細説明を後述する“ポリマー分配流路”、Lはポリマー集合孔H2の出口から背圧付与部材3の上面までの垂直距離(mm)、Dは口金1のポリマー吐出面の直径(mm)、D’は前記ポリマー分配流路Fからのポリマーが背圧付与部材3を通過するポリマー通過面の直径(mm)、Lはポリマー集合孔H2の流路長(mm)、そして、Dはポリマー集合孔の直径(mm)をそれぞれ示している。なお、以下、“口金1のポリマー吐出面の直径”を単に“口金直径”と称することにする。
ただし、本発明では、口金1のポリマー吐出面の直径Dは、背圧付与部材3のポリマー通過面の直径Dは、図2に示したように、実用上は、口金直径Dと略同じ大きさとなるから、DとD’とは略等しいと考えることができる。また、“ポリマー分配流路Fからのポリマーが背圧付与部材3を通過するポリマー通過面の直径”については、口金1のポリマー流入面に対して、このポリマー通過面を垂直下方に投影した場合に、吐出孔群H1が穿孔されている領域(穿孔部の面積)をこのポリマー通過面が完全に覆うという条件を満足することが必要である。
本発明の溶融紡糸口金パックの特徴として、前述の背圧付与部材3と共に、集合孔H2から背圧付与部材3に至るまでにポリマーが通過するポリマー分配流路Fが重要であって、このポリマー分配流路Fが0.02≦L/D≦0.35という条件を満足することが肝要である。なお、「0.02≦L/D≦0.35」という条件式では、口金1のポリマー吐出面の直径Dを使用しているが、これは次のような理由による。前記条件式「0.02≦L/D≦0.35」に関しては、Dに代えて背圧付与部材3のポリマー通過面の直径D’を採用することが好ましいのではあるが、D’値は、図2に示したように、実用上、D値にほぼ対応するからである。したがって,本発明においては、前記条件式において、D’に代えてDを使用することにしたものである。
なお、このような条件を満足する溶融紡糸口金パックを使用すると、何故、口金1へのポリマー流の分配性が良くなって、ポリマーの異常滞留による熱劣化の発生が抑制され、紡糸調子が安定になるのか、その理由は実際にはよく分からないが、以下に述べるような理由が推定される。
先ず、本発明が必須の要件とする背圧付与部材3を具備せず、更に、集合孔H2から口金1のポリマー流入面までの間にポリマーが流れる“ポリマー分配流路F”が図2に示したような逆漏斗形状であって、かつ下流側へ行くに従ってその流路が円滑に拡流する流路断面形状を呈している溶融紡糸口金パックについて考える。そうすると、前記ポリマー分配流路Fは、逆漏斗形状を呈しているために、口金中央から口金周辺へと行くに従って、ポリマー分配流路Fは段々と狭くなっていることになる。つまり、このポリマー分配流路Fは、口金中央部では、Lの高さを持っているが、外周部へ行くに従って段々と低くなって、最外周部ではその高さが図2の例では、0(ゼロ)に近い低さにまでなってしまう。これに対して、口金1に穿設する吐出孔H1の数は、吐出孔H1の穿孔密度が口金1の全面に渡って略均等な密度で穿孔されているとすると、吐出孔H1の数は、当然のことながら口金中心から口金外周部へ行くに従って距離の2乗に比例して増加することになる。
このような状況下で、口金1の略全面に渡って穿設された各吐出孔H1でのポリマー吐出斑をなくすために、口金中央部の吐出孔H1のみならず口金外周部の吐出孔H1へも均等に同僚のポリマーを供給しようとすると、口金外周部のポリマー分配流路Fではポリマー流速を上げる必要が生じ、他方で口金中央部のポリマー分配流路Fではポリマー流速を下げなければならない。その際、ポリマー分配流路Fにおいて何らかの原因でポリマーの供給圧力に変動が発生するような事態が生じると、その圧力変動の影響は口金外周部において特に大きくなって、この部分でポリマーの吐出斑が生じ易くなるものと考えられる。
つまり、口金外周部へは前述のように大量のポリマーを供給しなければならないのにもかかわらず、ポリマーを分配供給するためのポリマー分配流路Fは口金外周部へ行くに従って逆に狭くなっているために、この部分へのポリマーの安定供給が最も影響を受け易くなっていると考えられる。そうすると、口金中央部には充分なポリマーが供給されるのに対して、口金外周部には吐出孔H1から吐出されるポリマーの見かけの吐出線速度が口金1の外周部において遅くなって、口金1の外周へのポリマー分配性が口金1の中央よりも悪くなると考えられる。このために、口金1の中央部吐出孔と比べ、口金1の外周部吐出孔から紡出されるポリマーの量に差が生じて、特に口金1の外周部吐出孔においてポリマーの吐出が不安定となって紡糸調子を悪化させるものと推定される。
これに対して、本発明の溶融紡糸口金パックでは背圧付与部材3を具備しているため、前述のポリマー分配流路Fを流れるポリマー圧力は、背圧付与部材3によって適当な圧力値に維持され、したがって、当然のことながら、吐出孔群H1へのポリマー供給圧力は背圧付与部材3の直前で常に一定に維持される。このため、本発明の溶融紡糸口金パックは、特開2001−254219号公報などに提案されている従来技術において回避すべきとされていた、図2に例示したようなポリマー分配流路Fを積極的に採用することができるに至ったものである。しかしながら、本発明者らが図2に例示したポリマー分配流路Fを使用して溶融紡糸実験を行なった結果、このポリマー分配流路Fの形状が意外にも安定紡糸を行なう上で大きな影響を持つことを見出した。そこで、以下、このポリマー分配流路Fが満足する条件について、詳細に説明することにする。
できるだけ多くのフィラメント群を一つの口金から安定に紡出するためには、一枚の口金1に穿設する吐出孔群H1の穿孔密度を上げて口金直径D’を小さくするようにすれば、口金1の外周部に配置された吐出孔H1にポリマーを分配する際の分配流路長を短くすることができ、しかも、前述のように口金外周部におけるポリマー分配流路Fも相対的に狭くしなくてもよい。このために、口金外周部におけるポリマーの滞留時間が短縮されると共に、口金外周部に流れるポリマー流速も比較的遅い状態に維持することができ、ここを流れるポリマーの圧力変動にかかわるような前述の問題もある程度解消される。
しかしながら、吐出孔H1の穿孔密度を上げると、口金1から紡出後の繊維の冷却過程に問題が生じて安定紡糸ができなくなり、今度はこの面で大きな問題となることは既に背景技術欄で述べたところである。すなわち、口金1から紡出されたフィラメント群間に冷却風が充分に貫流できるようにして、紡出後のフィラメント間の密着を防止するためには、口金1に穿設する吐出孔H1の穿設距離はある程度大きくすることが好ましく、このために必然的に口金直径Dは大きくならざるを得ない。また、多フィラメントの極細繊維を紡糸するためには、必然的に口金1に穿設する吐出孔H1の数を増やさなければならず、吐出孔H1の数を増やそうとすると、これもまた、口金直径Dを大きくせざるを得ないのである。しかも、穿設する吐出孔H1の数を増やそうとすればするほど、この問題はより顕在化する。したがって、多くの吐出孔を広範囲に穿孔しなければならない場合には、口金直径Dが大きくなることを許容した上で、安定な溶融紡糸を保証する必要がある。
ところが、口金直径Dを大きくして、広い範囲に吐出孔群H1を穿設すると、必然的にポリマーの口金1の外周部に配置される吐出孔群H1については、集合孔H2の出口から流れ出たポリマーがこれらの吐出孔群H1に流入するまでの流路長が当然のことながら長くなることを回避することができない。しかも、口金1の上部に滞留するポリマー量は、口金直径Dが大きくなるほど増加するが、前述のように口金直径Dを小さくすることには限界があるため、口金1の上部に滞留するポリマー量の増加を許容することが要求される。
それにもかかわらず、特開2001−254219号公報に提案されているように、ポリマーの滞留量と滞留時間を更に多くするような環状の凸部流路を設けるようなことをすると、口金外周部に配置される吐出孔群H1へと流れるポリマーは、口金1の中央部に配置される吐出孔群H1へと流れるポリマーより更にポリマー分配流路F中に長時間に渡って滞留することになる。そうすると、異なる経路を流れてきた各ポリマーの熱履歴差を解消させるために、これらのポリマーをパック中央部に設けた集合孔H2へ導くことによって物性を均一化させることの意義が失われてしまう。
以上に述べたような理由から、本発明の溶融紡糸口金パックでは、従来技術のように、上流方向に向かって環状の凸部流路を設けてポリマーの滞留量を逆に増加させるようなことを行なわない。逆に、本発明の溶融紡糸口金パックでは、先ず図2に示したように、上流側とは反対側の下流側へ向かって逆漏斗状にポリマーが流れる流路が円滑に拡流するポリマー分配流路Fを形成させる。そうすると、このポリマー分配流路Fは、その流路断面が下流側へ向かって逆漏斗状に円滑に拡流されているために、ポリマーが異常に滞留する部分も形成されることなく、滑らかにその流れを拡げながら流下することができる。したがって、口金1の中央部へも外周部へも、異常滞留の発生なしにポリマーを滑らかに供給することができる。
しかしながら、100フィラメント以上の極細繊維を溶融紡糸するための大きな口金直径Dを有する溶融紡糸口金パックにおいて、このようなことを行なえば、口金中央部と口金外周部でポリマーの吐出斑が発生することは、既に背景技術欄で述べた通りであって、このような問題を解消するために、まさに特開2001−254219号公報において環状の凸部流路を設けることが提案されているのである。このように従来技術において、このような重大な問題が提起されているにもかかわらず、前述のようなポリマー分配流路Fの形状を採用することができるのが、従来技術と異なる本発明の大きな特徴であって、これは前記背圧付与部材3を具備することによるの作用の結果でもある。
その上、本発明の溶融紡糸口金パックは、そのポリマー分配流路Fとして、「0.02≦L/D≦0.35」という条件も採用することができ、これによって、ポリマー分配流路Fに滞留するポリマー量を更に劇的に減少させることができるのである。これに対して、前記背圧付与部材3を具備しない従来技術では、このような「L/D≦0.35」という条件を採用すると、口金周辺部に向かうに従ってポリマー分配流路Fが狭くなり過ぎて、口金中央部と口金周辺部とで吐出されるポリマー量に関し、口金周辺部でポリマー吐出量が少なくなる現象が生じることは、既に繰り返し述べたとおりである。
ところが、背圧付与部材3を具備する本発明の溶融紡糸口金パックでは、従来のものと異なって、前述のような「0.02≦L/D≦0.35」という条件を積極的に採用することができるのである。このために、ポリマー分配流路Fに滞留するポリマー量を劇的に減少させることができ、これに伴って、ポリマー分配流路Fに滞留するポリマーの滞留時間も短縮されることになり、この部分におけるポリマーの異常滞留に伴う熱劣化問題を解消することができる。
ここで、前記「0.02≦L/D≦0.35」という条件をもう少し詳しくみてみると、先ず口金直径Dを短縮することには限界があるため、どうしても最小のD値(あるいは最適なD値)として一定の値が決定されてしまう。そこで、この一定値を基準として、「0.02≦L/D≦0.35」という条件を考察すると、ポリマー分配流路Fの上方に滞留するポリマー量は、集合孔H2の出口から背圧付与部材3の上面までの垂直距離であるLをなるべく小さな値とすることによって、減少させることができると考えることができる。したがって、L/D≦0.35という条件が必要となるものと考えられる。
しかしながら、L/D<0.02になると、背圧付与部材3を設けたといえども、ポリマー分配流路Fが余りにも狭くなり過ぎて、口金1の外周部に配置された吐出孔群H1へ供給されるポリマー量と、口金1の中央部に配置された吐出孔群H1へ供給されるポリマー量との間のポリマーの分配バランスが崩れてしまい、背圧付与部材3の設置効果が充分に発揮されなくなるものと考えられる。このため、このような条件では、ポリマー分配流路Fでのポリマーの滞留時間を短縮するという利点はあっても、ポリマーの分配性で逆に問題が生じるものと考えられる。
前述の現象は、2000m/分以上の高速で紡糸され、且つ繊維径が細くなるほど急激に起こると考えられる。しかしながら、以上に述べた本発明の溶融紡糸口金パックを使用することによって、単繊維繊度が0.2〜0.7dtex、且つ、そのフィラメント数が100以上の熱可塑性極細繊維を2000m/分以上で単繊維切れなく、安定に溶融紡糸することができる。なお、紡糸後に、これを一旦巻き取るか、あるいは巻き取らないかは別として、延伸して超極細繊維を得るという場合には、紡糸工程における工程調子の安定化は極めて重要であって、このようにして安定に溶融紡糸することができれば、溶融紡糸工程において得られた未延伸糸を延伸することによって、0.4dtex以下の超極細繊維であっても容易に得ることができる。なお、本発明の溶融紡糸口金パックとこれを用いた溶融紡糸方法においては、紡糸速度は2000m/分以上で大きな効果を発揮するが、その上限の速度は、実用的には8000m/分であり、好ましくは6000m/分である。また、一枚の紡糸口金1に穿設する吐出孔H1の数も本発明の主旨を満足する限り限定する必要はないが、その上限の個数としては300個が実用的である。
このように、本発明の溶融紡糸口金パックでは、ポリマー分配流路Fが重要な役割を果たすが、当然のことながら、濾過層などの異なる経路を流下してきた各ポリマーをパック中央部に合流させて集中させる集合孔H2についても、考慮する必要があり、この点について次に説明する。
集合孔H2は、異なった経路を流れてきた物性の異なるポリマーをパック中央に集合させてその物性を均一化するという役割を果たさせるものである。したがって、集合孔H2の孔径Dはこのような作用を奏することが肝要であって、このDは溶融紡糸に使用するポリマーの種類、溶融粘度、紡糸速度、フィラメント数、単繊維繊度などの条件に応じて変わってくるため、その値は適宜実験などによって最適な値を選定することが好ましい。ただし、その孔径Dが大きくなりすぎると、ポリマーの集中効果が薄れる。また、特に、この集合孔H2にスタチック・ミキサー(静的混合素子)を入れる場合を考えたとしても、この集合孔H2の孔径は、最大でも20mm程度が限界であると考えられる。
次に、本発明の溶融紡糸口金パックに限らず、他の溶融紡糸口金パックであっても、長期間に渡って連続的に溶融紡糸を行なうと、前記フィルター7と8やこれらに挟まれた前記濾過層などで捕捉された異物などの影響で、溶融紡糸口金パックの濾過圧力が経時的に上昇して行く。このために、濾過部でのポリマーの圧力変動の影響が背圧付与部材3に作用するポリマー圧力の変動に大きな影響を及ぼさないようにするために、集合孔H2において、その上方に位置する濾過部の経時的に上昇する圧力変動の影響をカットできるようにすることが好ましいと考えられる。
したがって、集合孔H2に関しても背圧を付与するための役割を負担させ、ポリマーが集合孔H2を通過する際にある程度の圧力損失を生じさせることが好ましいと考えられる。そして、これによって、濾過部を通過するポリマー流に適度な圧力を付与することができ、濾過部で発生した圧力変動が直接的にポリマー分配流路Fを流れるポリマーの圧力変動に連動しないようにしておくことが好ましいと考えられる。そのためには、L/Dが重要であって、L/D≧3.0であることが好ましいものと考えられ、もし、L/D<3.0となると、パック内部の圧力変動が直接的に背圧付与部材3に作用することになり、背圧付与部材3が備える圧力変動を少なくするという効果が薄れると考えられる。
また、L/Dが20.0より大きくなると、集合孔H2でのポリマー流の圧力損失が大きくなり過ぎ、この集合孔H2に高圧を作用させてポリマーを流す必要が生じる。そうすると、溶融紡糸口金パックの耐圧構造に問題が生じると共に、このようにして発生させた圧力降下については、上流側へと累積されて行くために、ポリマーを送り出すギヤポンプなどの計量供給装置には極めて大きな圧力が作用することによるため、これを駆動するための負荷が上昇すると共に、極めて高い耐圧性能が要求されるなどの面で悪影響が及ぶ。しかも、Lが長くなると、溶融紡糸口金パックの全長が長くなって、その重量も増大するために、作業者が分解や組み立てを行なったり、これを運搬したりする際の作業性に問題がある。その上、スピンブロックをコンパクトに設計するという点でも問題がある。したがって、好ましいL/D値は、3.0≦L/D≦20.0であって、特に好ましくは、11.0≦L/D≦15.0である。
なお、本発明の溶融紡糸口金パックを使用して溶融紡糸するのに適した熱可塑性ポリマーとしては、ポリエチレンテレフタレート(以後、「ポリエステル」と称することにする)、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレンなどを例示することができるが、これらのポリマーの中でも、ポリエステルを対象とすることが好ましい。
ただし、本発明において前記ポリエステルとは、芳香族ジカルボン酸を主たる酸成分とする繊維形成能を有するポリエステルを指す。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン―2,6―ナフタレンジカルボキシレート等を挙げることができる。
また、これらポリエステルは第3成分として、ブタジオールのようなアルコール成分又はイソフタル酸等のジカルボン酸を共重合させた共重合体でも良く、更にこれら各種ポリエステルの混合体でも良い。なお、これらのうちポリエチレンテレフタレート系重合体が最適である。また、これらポリエステルには、必要に応じて艶消し剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、末端停止剤、蛍光増白剤等が含まれていても良い。
以下、本発明の溶融紡糸方法について、実施例により具体的に説明する。なお、本実施例に用いる評価は下記の方法によって評価した。
(1) 紡糸調子
紡糸速度を2800m/分と一定に維持して、吐出孔一孔当り0.18g/分でポリエステルを紡出して連続紡糸を行って巻取機に巻き取った。その際、巻取長10mに対して糸条が断糸しなかった回数(N1)と、巻取長10mに対して断糸した回数(N2)とをそれぞれカウントして、{N2/(N1+N2)}×100を算出し、紡糸調子を百分率で評価した。つまり、この値が大きくなるほど紡糸調子が悪いこととなる。
(2)複屈折率(ΔN)
オリンパスBH−2偏光顕微鏡を使用し、コンペンセーター法により単繊維のレターデーションと単繊維径を測定し、複屈折率を計算した。
[実施例1及び2、比較例1及び2]
図1に例示した溶融紡糸口金パックを用い、図2の濾過分配部材4に設けたポリマー集合孔の孔径Dが5mmとし、また、使用した口金1のポリマー吐出面の直径Dとしては64mmのものを使用し、また、背圧付与部材3は、日本金網(株)製の平織組織にて400メッシュの金網フィルターを4枚重ねたものを用いた。なお、このときの条件については、L/D及びL/Dは表1に示す通りであった。
35℃のオルソ−クロロフェノール溶液を溶媒として使用して公知の方法によって算出した固有粘度が0.63のポリエチレンテレフタレートからなる溶融ポリマーを孔径が0.15mm、吐出孔長が0.6mmの吐出孔13を144個穿設した溶融紡糸口金1から紡出し、定法にしたがって、ガラス転移温度以下に冷却した後、油剤を付与し、フィラメント間に交絡を付与し、引取ローラで紡糸速度2800m/分で引き取り、最終的に複屈折率(ΔN)が0.05の144フィラメントからなる極細繊維の未延伸糸条パッケージとして巻き取った。このとき得られた結果を表1に示す。
Figure 2005194673
表1より明らかな如く、本発明の溶融紡糸口金パックを使用して極細繊維を溶融紡糸した場合(実施例1及び2)は、0.7dtex以下の単繊維繊度を有する極細繊維の未延伸糸を紡糸調子の悪化もなく得られた。これに対して、本発明の溶融紡糸口金パックを使用しなかった場合(比較例1及び2)では、紡糸調子が著しく悪化した。
以上に述べた本発明の溶融紡糸口金パックと、このパックを使用した溶融紡糸方法を用いることによって、紡糸速度が2000m/分以上において、単繊維繊度が0.2〜0.7dtexであって、且つ、そのフィラメント数が100以上である低配向の未延伸糸をフィラメント切れの発生もなく、安定な紡糸調子を維持しながら製造することができる。
本発明の溶融紡糸口金パックの実施態様の一つを説明するために模式的に例示した概略正断面図である。 図1に例示した実施態様例の主要部を部分的に拡大した模式正断面図である。
符号の説明
1 紡糸口金
3 背圧付与部材
4 濾過分配部材
ポリマー集合孔出口から背圧付与部材の上面までの距離
口金のポリマー吐出面の直径
’ 背圧付与部材のポリマー通過面の直径
集合孔の流路長
集合孔の直径
H1 吐出孔
H2 ポリマー集合孔

Claims (3)

  1. 濾過部を通過したポリマーを中央部に合流させるポリマー集合孔を有する溶融紡糸用口金パックにおいて、100個以上の吐出孔群が穿設された紡糸口金と前記紡糸口金の直ぐ上流側に設けられた背圧付与部材とを具備し、前記集合孔の下流から前記背圧付与部材の上面に至る間に形成されたポリマー分配流路が逆漏斗形状を有して下流側へ行くに従って徐々に拡大しており、更に、前記ポリマー集合孔の出口から前記背圧付与部材の上面までの垂直距離(L)と前記紡糸口金のポリマー吐出面の直径(D)とが「0.02≦L/D≦0.35」という条件を満足することを特徴とする溶融紡糸口金パック。
  2. 前記ポリマー集合孔の流路長(L)と前記ポリマー集合孔の直径(D)とが「3.0≦L/D≦20.0」という条件を満足することを特徴とする請求項1に記載の溶融紡糸口金パック。
  3. 請求項1又は2に記載の溶融紡糸口金パックを用いて、単繊維繊度が0.2〜0.7dtex、且つ、そのフィラメント数が100以上の熱可塑性極細繊維を2000m/分以上で溶融紡糸することを特徴とする溶融紡糸方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2017502181A (ja) * 2014-01-10 2017-01-19 エーリコン テクスティル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフトOerlikon Textile GmbH & Co. KG 紡糸ノズル装置

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