JP2005194350A - 発光材料及びホスト材料、並びにそれを用いた電界発光素子 - Google Patents

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孝行 庄田
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誠治 秋山
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武 塩谷
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Abstract

【課題】 従来よりも高い発光効率を発揮する発光材料を提供する。
【解決手段】ホスト材料とドーパント材料とからなる発光材料が、制限Hartree−Fock法を用いた非経験的分子軌道計算によって計算したホスト材料がアニオン化したホストアニオンの安定構造におけるSOMOの軌道エネルギーEsomo(host)、及び、ドーパント材料がカチオン化したドーパントカチオンの安定構造におけるSOMO+1の軌道エネルギーEsomo+1(dopant)が、関係式1を満たす。
0eV<Esomo(host)−Esomo+1(dopant)≦3.50eV・・・関係式1
【選択図】 図4

Description

本発明は、燐光を利用して発光する発光材料及びそれに用いられるホスト材料、並びにこれらの材料を用いた電界発光素子に関する。
従来、電界発光素子(EL素子)においては、一般に、無機材料のII−VI族化合物半導体であるZnS、CaS、SrS等のホスト材料に、発光中心であるMnや希土類元素(Eu、Ce、Tb、Sm等)をドーパント材料としてドープしたものを発光層の材料(発光材料)として使用してきた。
しかし、このような無機材料を発光材料として使用したEL素子は、
1)交流駆動が必要であり、通常は50Hz〜1000Hzの交流電圧を印加していた、
2)駆動電圧が高く、例えば200V近い駆動電圧が必要な場合があった、
3)フルカラー化が困難であった、
4)周辺駆動回路のコストが高かった、
という点を、改善すべき点として有していた。
しかし、近年、上記改善すべき点を改良するため、有機薄膜を用いたEL素子の開発が行なわれるようになった。特に、発光効率を高めるため、電極からのキャリアー注入の効率向上を目的として電極の種類の最適化を行ない、芳香族ジアミンからなる正孔輸送層と8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体からなる発光層とを設けたEL素子の開発により、従来のアントラセン等の単結晶を用いたEL素子と比較して発光効率の大幅な改善がなされ、実用特性に近づいている(非特許文献1)。
上記のような低分子材料を用いたEL素子の他にも、発光層のホスト材料として、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリ[2−メトキシ−5−(2−エチルヘキシルオキシ)−1,4−フェニレンビニレン]、ポリ(3−アルキルチオフェン)等の高分子材料を用いたEL素子の開発や、ポリビニルカルバゾール等の高分子からなるホスト材料に、低分子のドーパント材料と電子移動材料とを混合したEL素子の開発も行われている。
さらに、EL素子の発光効率を挙げる試みとして、蛍光ではなく燐光を用いることも検討されている。燐光、即ち、三重項励起状態からの発光を利用すれば、蛍光、即ち、一重項励起状態からの発光を用いた従来のEL素子と比べて、3倍程度の効率向上が期待される。
燐光を用いたEL素子の開発のために、クマリン誘導体やベンゾフェノン誘導体をドーパント材料として発光層に用いることが検討された(第51回応用物理学会連合講演会、28a−PB−7、1990年)。しかし、上記検討では、極めて低い輝度しか得られなかった。
その後、燐光を利用する試みとして、ユーロピウム錯体をドーパント材料に用いることが検討されてきたが、これも高効率の発光には至らなかった。
最近、以下に示す白金錯体(T−1)をドーパント材料として用いることで、高効率の赤色発光が可能なことが報告された(非特許文献2)。その後、以下に示すイリジウム錯体(T−2)を発光層にドーパント材料としてドープすることで、さらに緑色発光で効率が大きく改善されている(非特許文献3)。
Figure 2005194350
Figure 2005194350
上記イリジウム錯体(T−2)を発光層にドープした場合の発光層内の励起子生成に関しては、電界発光スペクトル(EL発光スペクトル)のドーパント材料濃度依存性をみることにより、Direct exciton形成機構というメカニズムが提唱されている(非特許文献4)。このDirect exiciton形成機構では、まず正孔輸送層からイリジウム錯体の最高被占分子軌道(highest occupied molecular orbital;以下適宜、「HOMO」という)へ直接に正孔(ホール)が注入され、続いて主に発光層内のホスト材料によって運ばれてきた電子と再結合することにより、励起子を形成すると解釈されている。
上述したように、EL素子について様々に開発が行なわれているが、フラットパネル・ディスプレイ等の表示素子にEL素子を応用するためには、EL素子の発光効率をさらに改善する必要がある。発光効率を改善する場合、発光ドーパントの三重項励起状態を利用した燐光素子、即ち、燐光を利用したEL素子は、蛍光のみを利用したEL素子に比べて発光効率を上げるのに有効である。そこで、燐光を利用したEL素子に関する技術が、特許文献1や特許文献2に提案されている。
特開2002−69427号公報 特開2003−27048号公報 Appl. Phys. Lett.,51巻,913頁,1987年 Nature, 395巻,151頁,1998年 Appl. Phys. Lett., 75巻,4頁,1999年 Molecular Electronics and Bioelectronics, 13,29(2002)
しかし、従来提案されている燐光を用いたEL素子に関しても、発光効率が不十分であるという課題がある。
また、最近、EL素子用の発光材料を開発する際の指標として、有機分子の中性状態のHOMOと最低空分子軌道(lowest unoccupied molecular orbital;以下適宜、「LUMO」という)とのエネルギー関係を基にした議論が行われているが、そのような中性分子のHOMO、LUMOを基にした指針もEL素子用の発光材料を開発するための十分な有効性を発揮していないのが現状である。
本発明は上記の課題に鑑みて創案されたものである。即ち、本発明は、従来よりも高い発光効率を発揮する発光材料、及び、それを用いた電界発光素子、並びにそれに用いるホスト材料を提供することを目的とする。
本発明の発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討を行なった結果、特定の条件を満たすパラメータを有するホスト材料とドーパント材料とからなる発光材料が、優れた発光効率を発揮することを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明の要旨は、ホスト材料とドーパント材料とからなる発光材料であって、制限Hartree−Fock法を用いた非経験的分子軌道計算によって計算した、該ホスト材料がアニオン化したホストアニオンの安定構造におけるSOMOの軌道エネルギーEsomo(host)、及び、該ドーパント材料がカチオン化したドーパントカチオンの安定構造におけるSOMO+1の軌道エネルギーEsomo+1(dopant)が、下記関係式1を満たすことを特徴とする、発光材料に存する(請求項1)。なお、SOMO+1とは、ドーパントカチオンのSOMOよりエネルギー的にひとつ上の分子軌道を指す。
0eV<Esomo(host)−Esomo+1(dopant)≦3.50eV ・・・関係式1
また、本発明の別の要旨は、ホスト材料と、発光極大波長が500nm以下のドーパント材料とからなる発光材料であって、制限Hartree−Fock法を用いた非経験的分子軌道計算によって計算した、該ホスト材料がアニオン化したホストアニオンの安定構造におけるSOMOの軌道エネルギーEsomo(host)が、3.90eV以下であることを特徴とする、発光材料に存する(請求項2)。
また、該発光材料は、ホスト材料と、発光極大波長が500nm以下のドーパント材料とからなる発光材料であって、PM3パラメータセットを用いた半経験的分子軌道計算によって計算した、該ホスト材料の第1三重項励起状態の安定構造における基底状態からの相対エネルギーΔET1(host)が、3.19eV以上であることが好ましい(請求項3)。
また、本発明の更に別の要旨は、ホスト材料と、発光極大波長が500nm以下のドーパント材料とからなる発光材料であって、PM3パラメータセットを用いた半経験的分子軌道計算によって計算した、該ホスト材料の第1三重項励起状態の安定構造における基底状態に対する相対エネルギーΔET1(host)が、3.19eV以上であることを特徴とする、発光材料に存する(請求項4)。
このとき、該ドーパント材料の酸化電位が、該ホスト材料の酸化電位よりも0.01V以上小さいことが好ましい(請求項5)。
また、本発明の更に別の要旨は、正極と、負極と、該正極及び該負極の間に設けられた発光層とを備える電界発光素子であって、該発光層が、上述した発光材料を含んで構成されることを特徴とする、電界発光素子に存する(請求項6)。
また、本発明の更に別の要旨は、ドーパント材料とともに発光材料を構成するホスト材料であって、制限Hartree−Fock法を用いた非経験的分子軌道計算によって計算した、該ホスト材料がアニオン化したホストアニオンの安定構造におけるSOMOの軌道エネルギーEsomo(host)が、3.90eV以下であることを特徴とする、ホスト材料に存する(請求項7)。
また、本発明の更に別の要旨は、ドーパント材料とともに発光材料を構成するホスト材料であって、PM3パラメータセットを用いた半経験的分子軌道計算によって計算した、第1三重項励起状態の安定構造における基底状態からの相対エネルギーΔET1が、3.19eV以上であることを特徴とする、ホスト材料に存する(請求項8)。
また、本発明の更に別の要旨は、正極と、負極と、該正極及び該負極の間に設けられた発光層とを備える電界発光素子であって、該発光層が、上述したホスト材料を含んで構成されることを特徴とする、電界発光素子に存する(請求項9)。
本発明によれば、高い発光効率を有する発光材料を得ることができ、これを用いることにより、高い発光効率を有する電界発光素子を得ることが可能となる。
さらに、本発明によれば、青色の発光をする電界発光素子に用いて好適な、高い発光効率を有するホスト材料を得ることができる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
I.本発明の発光材料
本発明の発光材料は、ホスト材料と、ドーパント材料とからなるものである。また、本発明の発光材料は、EL素子の発光層を構成する材料として用いて好適なものであり、電圧の印加によって燐光を発生するものである。
以下、まず、EL素子に用いられた場合に本発明の発光材料が燐光を発する発光メカニズムについて図を用いて説明し、次いで、ホスト材料及びドーパント材料それぞれについて説明する。
1.発光メカニズム
i.Direct exciton形成機構
図1〜図4は、本発明の発光材料をEL素子の発光層に用いた場合について、正孔輸送層、発光層、及び電子輸送層を備えた一般的なEL素子を例にとり、その発光メカニズム(Direct exciton形成機構)にかかる分子軌道エネルギーを説明するためのエネルギー相関図である。なお、図1〜図4において、破線の矢印は電子の移動を表わす。
本発明の発光材料をEL素子の発光層に用いた場合、図1に示すように、発光層に正孔及び電子が供給されていないときには、ホスト材料及びドーパント材料はそれぞれ、HOMO以下の軌道エネルギーを有する分子軌道が電子で満たされ、また、LUMO以上の軌道エネルギーを有する分子軌道が空軌道(電子をもたない軌道)となっている。
その後、図2に示すように、発光層に正孔の供給源(例えば、正孔輸送層)から正孔が供給されると、供給された正孔はドーパント材料のHOMOに注入され、ドーパント材料がカチオン化したドーパントカチオンが生成する。生成したドーパントカチオンでは、正孔を注入された分子軌道(即ち、電子を奪われた分子軌道)がSOMO(single occupied molecular orbital;半占分子軌道)を形成する。なお、この際にドーパントカチオンのSOMOよりエネルギー的にひとつ上の分子軌道をSOMO+1と呼ぶ。
一方、発光層に電子の供給源(例えば、電子輸送層)から電子が供給されると、供給された電子はホスト材料のLUMOに注入され、ホスト材料がアニオン化したホストアニオンが生成する。生成したホストアニオンでは、電子を注入された分子軌道がSOMOを形成する。
次いで、図3に示すように、ホストアニオンのSOMOからドーパントカチオンのSOMO+1に電子が移動し、ドーパントカチオンが三重項励起子となる。このSOMOとSOMO+1とに電子を1個ずつ有する三重項励起子では、図3に白抜き矢印で示すように、SOMO+1にある電子がSOMOへ移動することとなり、このSOMO+1からSOMOへの電子の移動によって、三重項励起子から光(燐光)が生じることになる。
ii.三重項励起子の生成効率の向上
本発明の発光材料をEL素子の発光層に用いた場合の発光メカニズムは以上のようになる。したがって、本発明の発光材料を発光層として用いたEL素子(以下適宜、「本発明のEL素子」という)の発光効率を高める重要な因子は、従来議論されているようなホスト材料及びドーパント材料それぞれの中性分子のHOMO,LUMOのエネルギー関係ではなく、ドーパントカチオンのSOMO+1とホストアニオンのSOMOとのエネルギー関係である。
このため、ドーパントカチオンのSOMO+1とホストアニオンのSOMOのエネルギー関係を所定の条件に合うようにホスト材料及びドーパント材料を用いることで、それらからなる発光材料を用いたEL素子の発光効率を高めることが可能となる。
上記の所定の条件について説明する。ホストアニオンのSOMOの軌道エネルギーEsomo(host)と、ドーパントカチオンのSOMO+1の軌道エネルギーEsomo+1(dopant)との差(以下適宜、「励起子形成エネルギー差」という)Esomo(host)−Esomo+1(dopant)を、ホストアニオンとドーパントカチオンとのエネルギー相関図で示せば、図4のようになる。図4から分かるように、励起子形成エネルギー差Esomo(host)−Esomo+1(dopant)が小さいほど、ホストアニオンのSOMOからドーパントカチオンのSOMO+1へ電子が移動し易くなる。つまり、励起子形成エネルギー差Esomo(host)−Esomo+1(dopant)が小さいほど、三重項励起子の生成効率が高くなり、したがって、本発明のEL素子の発光効率が高くなる。よって、この励起子形成エネルギー差Esomo(host)−Esomo+1(dopant)を小さくすることができるようなホスト材料及びドーパント材料を用いることが、EL素子の発光効率を高めるためには重要であるといえる。
ホストアニオンのSOMO及びドーパントカチオンのSOMO+1の軌道エネルギーEsomo(host),Esomo+1(dopant)は、如何なる方法によって求めても良く、特に制限は無い。しかし、ホスト材料及びドーパント材料の中性分子のHOMO及びLUMOの軌道エネルギーに対応する値は、比較的簡単に実験的に求めることが可能であるものの、ホストアニオンのSOMOの軌道エネルギーEsomo(host)や、ドーパントカチオンのSOMO+1の軌道エネルギーEsomo+1(dopant)は、実験的に求めることが困難である。
そこで本発明の発明者らは、ホストアニオン及びドーパントカチオンの軌道エネルギーEsomo(host),Esomo+1(dopant)を、基底関数系としてLanL2MBを選択し、制限Hartree−Fock法を用いた非経験的分子軌道計算(以下適宜、単に「非経験的分子軌道計算」という)により計算することとした。
即ち、本発明の発光材料は、ホスト材料及びドーパント材料からなる発光材料であって、非経験的分子軌道計算によって計算した、ホストアニオンのSOMOの軌道エネルギーEsomo(host)と、ドーパントカチオンのSOMO+1の軌道エネルギーEsomo+1(dopant)との差(励起子形成エネルギー差)Esomo(host)−Esomo+1(dopant)が、下記関係式1を満たすことを特徴とする。
0eV<Esomo(host)−Esomo+1(dopant)≦3.50eV ・・・関係式1
詳細には、本発明の発光材料は、ホスト材料及びドーパント材料からなる発光材料であって、非経験的分子軌道計算によって計算した、ホストアニオンのSOMOの軌道エネルギーEsomo(host)と、ドーパントカチオンのSOMO+1の軌道エネルギーEsomo+1(dopant)との差(励起子形成エネルギー差)Esomo(host)−Esomo+1(dopant)が、通常0eVより大きく、また、通常3.5eV以下、好ましくは3.3eV以下、より好ましくは3.1eV以下である。
また、ドーパント材料として、従来発光効率を高めることが特に困難であった青色の燐光を発するドーパント材料、即ち、発光極大波長が500nm以下のドーパント材料を用いる場合には、そのドーパント材料と共に発光材料を構成するホスト材料がアニオン化したホストアニオンのSOMOの軌道エネルギーEsomo(host)は、通常0eV以上、また、通常3.90eV以下、好ましくは3.70eV以下、より好ましくは3.50eV以下である。
ただし、ホストアニオン、ドーパントカチオン、及び三重項励起子は、通常、それぞれエネルギー的に安定した(エネルギーが最も低い)状態となる構造、即ち、安定構造となっているため、ホストアニオン、ドーパントカチオン、及び三重項励起子の軌道エネルギーについて取り扱う際には、それぞれの安定構造における軌道エネルギーを計算することが重要である。したがって、上述したホストアニオンのSOMOの軌道エネルギーEsomo(host)、ドーパントカチオンのSOMO+1の軌道エネルギーEsomo+1(dopant)、励起子形成エネルギー差Esomo(host)−Esomo+1(dopant)を計算する際には、それぞれ安定構造におけるエネルギーを求める。
なお、安定構造を求める場合には、例えば、初期構造として公知の3次元グラフィックプログラムで結合長、結合角等の標準値を用い、常識的に安定でありそうな構造を作成して、その構造から出発して最もエネルギー的に安定する構造を求める手法などにより安定構造を決定することができる。
iii.励起子の失活の防止
さらに、本発明の発光素子の発光効率を向上させるためには、発光層内の三重項励起子の生成効率を高める他に、生成した三重項励起子の失活を抑えることが重要である。
三重項励起子の失活は、三重項励起子、即ち、第1三重項励起状態(以下適宜、「T1状態」という)となっているドーパント材料分子が、その安定構造において基底状態に対して有している相対的なエネルギー(以下適宜、単に「三重項励起子の相対エネルギー」という)ΔET1(dopant)よりも、T1状態となっているホスト材料分子が、その安定構造において基底状態に対して有している相対的なエネルギー(以下適宜、単に「ホスト材料の相対エネルギー」という)ΔET1(host)の方が小さい場合に起こり易い。
上記のような場合には、三重項励起子からホスト材料にエネルギーの移動が起こり易く、三重項励起子が失活し易いのである。なお、T1状態となったホスト材料が基底状態となる際に光を発することもあるが、そのときに発せられる光は目的とする波長の光ではないため、三重項励起子の失活は好ましいことではない。
したがって、三重項励起子の失活を防ぐためには、安定構造における三重項励起子の相対エネルギーΔET1(dopant)よりも、安定構造におけるホスト材料の相対エネルギーΔET1(host)の方が大きくなるよう、ホスト材料及びドーパント材料を用いることが望ましい。
なお、このときのエネルギーの相関を相関図5を用いて表わすと、安定構造における三重項励起子の相対エネルギーΔET1(dopant)と、安定構造におけるホスト材料の相対エネルギーΔET1(host)との関係は、図5に示すようにエネルギーΔET1(dopant)よりもエネルギーΔET1(host)の方が大きくなることが望ましい。
即ち、本発明の発光材料は、ホスト材料及びドーパント材料からなる発光材料であって、三重項励起子、即ち、T1状態のドーパント材料の基底状態に対する相対エネルギーΔET1(dopant)よりも、T1状態のホスト材料の基底状態に対する相対エネルギーΔET1(host)の方が大きいことが望ましい。
そこで、本発明の発明者らは、第1三重項励起状態となったホスト材料やドーパント材料(即ち、三重項励起子)のそれぞれの基底状態に対する相対エネルギーΔET1(dopant),ΔET1(host)をPM3パラメータセットを用いた半経験的分子軌道計算により計算することとした。
これにより、ホスト材料(又はドーパント材料)が定まれば、それと共に発光材料を構成するべき望ましいドーパント材料(又はホスト材料)を判断することができる。
例えば、青色の燐光を発するドーパント材料、即ち、発光極大波長が500nm以下のドーパント材料を用いる場合、そのドーパント材料と共に発光材料を構成するホスト材料は、PM3パラメータセットを用いた半経験的分子軌道計算によって計算した、第1三重項励起状態のホスト材料の基底状態に対する相対エネルギーΔET1(host)が通常3.19eV以上、好ましくは3.20eV以上、より好ましくは3.22eV以上であることが望ましい。なお、相対エネルギーΔET1(host)が上記範囲内となるホスト材料を、青色の燐光を発するドーパント材料以外のドーパント材料に用いてもよい。
iv.ドーパントカチオンの生成促進
さらに、前述の発光メカニズムに沿って本発明のEL素子の発光効率を向上させるためには、ドーパント材料のLUMOに効率よく正孔が注入され、効率よくドーパントカチオンが生成することも重要である。そのためには、ホスト材料の酸化電位Op(host)が、ドーパント材料の酸化電位Op(dopant)よりも大きいことが望ましい。
よって、例えば青色の燐光を発するドーパント材料、即ち、発光極大波長が500nm以下のドーパント材料を用いる場合には、ホスト材料の酸化電位Op(dopant)とドーパント材料の酸化電位Op(dopant)との差Op(host)−Op(dopant)は、通常0.01V以上、好ましくは0.02V以上である。なお、上記の酸化電位の値はすべて飽和カロメル電極(以下適宜、「SCE」と略記する)を基準電極とした電位である。
なお、酸化電位の測定方法としては、例えば、飽和カロメル電極を用いたサイクリックボルタンメトリー法を挙げることができる。
さらに、発光層に対して正孔を供給する供給源(上記の例では、正孔輸送層)の酸化電位Op(HTM)よりもホスト材料の酸化電位Op(dopant)の方が大きいことが望ましい。それによりホスト材料への正孔の注入が抑制され、ドーパント材料への正孔の注入がより促進されるからである。
v.軌道エネルギーの計算
次に、励起子形成エネルギー差、即ち、ホストアニオンのSOMOの軌道エネルギーEsomo(host)と、ドーパントカチオンのSOMO+1の軌道エネルギーEsomo+1(dopant)との差Esomo(host)−Esomo+1(dopant)の計算に用いる非経験的分子軌道計算について説明する。
分子軌道法では、シュレディンガー方程式で用いる波動関数を、原子軌道の線形結合で表される分子軌道からなるスレーター行列式で近似し、その波動関数を構成する分子軌道をつじつまの合った場(self−consistent field、略してSCF。SCFに関しては“Modern Quantum Chemistry", A. Szabo and N.S. Ostlund, McGraw−Hill publishing company, New York, 1989を参照)の近似を用いて求めることが広く使われる。
一般的な有機分子の基底状態の電子配置にみられる偶数電子の閉殻電子配置系(分子軌道エネルギーの低い順番に電子が2個づつつまり、不対電子を持たない系)では、全ての占有軌道がαスピンとβスピンとを持つ電子2個によって占められるとする制限Hartree−Fock法により電子状態を計算することが広く用いられる。
一方、不対電子を1つ有する開殻電子系の計算では、上の不対電子軌道を除く閉殻部分の分子軌道にはαスピンとβスピンとを持つ電子2個によって占められるとする制限Hartree−Fock法と、αスピンの占める軌道とβスピンの占める軌道が異なってもよいとする非制限Hartree−Fock法とがある。
制限Hartree−Fock法及び非制限Hartree−Fock法のいずれの方法を用いて計算を行なってもよいが、本発明者らは、奇数電子系であるドーパントカチオン及びホストアニオンの軌道エネルギーEsomo(host),Esomo+1(dopant)を計算するために、制限Hartree−Fock法を用いた(制限、非制限Hartree−Fock法に関しても前述の“Modern Quantum Chemistry", A. Szabo and N.S. Ostlund, McGraw−Hill publishing company, New York, 1989を参照)。
非経験的分子軌道法による制限Hartee−Fock計算では、分子軌道を線形結合により記述するための原子軌道にどのような関数系(基底関数系)を用いるか決めなくてはならない。本発明では、ドーパント材料とホスト材料とを同じ計算レベル(計算の精度)で計算するべきであること、及び、実用的な計算時間内で計算するべきであることから、基底関数系としてLanL2MBを選択した{J.Chem.Phys.51,2657(1969)及びJ.Chem.Phys.64,5142(1976)参照}。
なお、ドーパントカチオン及びホストアニオンの軌道エネルギーEsomo(host),Esomo+1(dopant)を計算するために用いることができる具体的計算プログラムとしては、Gaussian98 rev.9(Gaussian 98, Revision A.9, M. J. Frisch, G. W. Trucks, H. B. Schlegel, G. E. Scuseria, M. A. Robb, J. R. Cheeseman, V. G. Zakrzewski, J. A. Montgomery, Jr., R. E. Stratmann, J. C. Burant, S. Dapprich, J. M. Millam, A. D. Daniels, K. N. Kudin, M. C. Strain, O. Farkas, J. Tomasi, V. Barone, M. Cossi, R. Cammi, B. Mennucci, C. Pomelli, C. Adamo, S. Clifford, J. Ochterski, G. A. Petersson, P. Y. Ayala, Q. Cui, K. Morokuma, D. K. Malick, A. D. Rabuck, K. Raghavachari, J. B. Foresman, J. Cioslowski, J. V. Ortiz, A. G. Baboul, B. B. Stefanov, G. Liu, A. Liashenko, P. Piskorz, I. Komaromi, R. Gomperts, R. L. Martin, D. J. Fox, T. Keith, M. A. Al−Laham, C. Y. Peng, A. Nanayakkara, M. Challacombe, P. M. W. Gill, B. Johnson, W. Chen, M. W. Wong, J. L. Andres, C. Gonzalez, M. Head−Gordon, E. S. Replogle, and J. A. Pople, Gaussian, Inc., Pittsburgh PA, 1998.)が挙げられる。
上記の制限Hartee−Fock計算により、ホストアニオンのSOMOの軌道エネルギーEsomo(host)、及び、ドーパントカチオンのSOMO+1の軌道エネルギーEsomo+1(dopant)をそれぞれ求めることにより、その軌道エネルギーの差Esomo(host)−Esomo+1(dopant)を計算することができる。
vi.相対エネルギーの計算
次に、相対エネルギーΔET1(host)の計算に用いる半経験的分子軌道計算について説明する。
半経験的分子軌道法とは、上記のように、分子軌道計算においてSCFの近似を用いて計算を行なう場合に、計算時間のかかる積分計算を種々の実験値を使って求めたパラメータで近似することにより計算時間を短縮する方法である。
半経験的分子軌道法に用いるパラメータは任意であるが、例えば、PM3パラメータセットを用いることができる。
また、半経験的分子軌道法により相対エネルギーを計算する具体的方法としては、例えば、配置間相互作用法(Configuration Interaction;略してCI法。CI法に関しては “Modern Quantum Chemistry", A. Szabo and N.S. Ostlund, McGraw−Hill publishing company, New York, 1989を参照。)を用いることができる。このCI法は、PM3パラメータセットを用いたSCF計算の結果得られた分子軌道から出発し、HOMOからエネルギーの低い順に3個の占有軌道、及び、LUMOからエネルギーの高い順に3個の非占有軌道を選択し、選択した合計6個の分子軌道に6個の電子を配置することにより生じる全ての電子配置を混合させることで、SCF計算の波動関数の精度を高める方法である。
さらに、半経験的分子軌道法に用いる具体的な計算プログラムとしては、例えば、MOPACのバージョンMOPAC93を用いることができる{PM3及びMOPACに関してはJ.J. P. Stewart, Journal of Computer−Aided Molecular Design, 4,1(1990)ならびにその中の引用文献を参照}。
したがって、例えばT1状態となったホスト材料の基底状態に対するエネルギーΔET1(host)を求める場合には、上記のCI法を用い、T1状態のホスト材料分子のエネルギーが安定になる分子構造を安定構造として求め、その安定状態を保ったまま、CI法による計算により基底状態のホスト材料分子のエネルギーとT1状態のホスト分子のエネルギーとの差を求める。これにより、相対エネルギーホスト材料のΔET1(host)を求めることができる。
2.ホスト材料
ホスト材料は、ドーパント材料とともに発光材料を構成するものであって、ドーパント材料との関係で上記関係式1の関係を満たすもの、または、安定構造における三重項励起子の相対エネルギーΔET1(dopant)よりも、安定構造におけるホスト材料の相対エネルギーΔET1(host)の方が大きいものであれば、任意の化合物を用いることができる。
また、ドーパント材料が500nm以下の発光極大波長を有するものである場合には、制限Hartree−Fock法を用いた非経験的分子軌道計算によって計算したホストアニオンのSOMOの軌道エネルギーEsomo(host)が3.90eV以下となる化合物であれば、任意の化合物を用いることができる。或いは、PM3パラメータセットを用いた半経験的分子軌道計算によって計算した、第1三重項励起状態の安定構造における基底状態からの相対エネルギーΔET1が、3.19eV以上である化合物であれば、任意の化合物を用いることができる。
ホスト材料の具体例として、500nm以下の発光極大波長を有するドーパント材料がとともに発光材料を構成するホスト材料の例を挙げると、以下に示す化合物が挙げられる。
Figure 2005194350
Figure 2005194350
Figure 2005194350
Figure 2005194350
上記の例示物の中でも、高いT1準位、低いSOMO準位、高い酸化電位の観点から、H−1,H−4〜H−6,H−9〜H−14,H−25〜H−28が好ましく、H−5,H−6,H−9〜H−12,H−14,H−25〜H−28がより好ましく、H−9,H−10,H−12,H−25が更に好ましく、H−10が最も好ましい。
また、ホスト材料の分子量は、通常300以上、好ましくは400以上、より好ましくは500以上、また、通常4000以下程度、好ましくは3000以下程度、より好ましくは2000以下である。分子量が大きすぎると昇華性が低下し、例えば蒸着による薄膜形成が困難になる傾向があり、また、合成の過程において、EL素子とした際にEL素子の駆動寿命を損なう虞があり、さらに、除去が困難な不純物が生成しがちである。一方、分子量が小さすぎると、例えば昇華温度が低くなりすぎるため、やはり蒸着による薄膜形成が困難になる虞があり、融点やガラス転移点が低下して耐熱性が低下したり、あるいは容易に結晶化が起こって製膜性(アモルファス性)が低下したりする虞がある。
さらに、ホスト材料は、後述するEL素子を形成した場合に、正孔輸送層を構成する正孔輸送物質と同種の化合物であってもよい。
また、ホスト材料は低分子材料及び高分子材料の何れであってもよく、さらに、それらの混合物であってもよい。なお、高分子材料を用いる場合には、正孔輸送性の高分子材料や電子輸送性の化合物を含有していても良いが、上述した関係式1を満たすことが望ましい。
なお、ホスト材料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良いが、併用する場合にはすべてのホスト材料が上述した関係式1を満たすことが望ましい。
3.ドーパント材料
ドーパント材料としては、EL素子の発光層に含有された場合に燐光を生じさせうる化合物であれば他に制限は無く、任意の化合物を用いることができる。
また、例えば青色の発光をするEL素子のドーパント材料としては、発光ピーク波長が500nm以下に存在するものであれば、何ら制限されることはなく、任意の化合物を用いることができる。その好ましい例としては、下記一般式2で示される化合物が挙げられる。
M(L)m(SL)n ・・・一般式2
ただし、一般式2において、MはIr、Pt、Au及びPdのうちのいずれかを表わす。好ましくはIrまたはPtを表わし、より好ましくはIrを表わす。
また、Lは任意の配位子を表わす。好ましくは、青色発光性、発光効率、素子駆動寿命の観点から、化合物群(A)から選ばれる2座配位子を表わす。
Figure 2005194350
また、整数mは配位子Lの数である。通常1,2または3を表わし、好ましくは2または3を表わす。
SLは任意の補助配位子を表わす。好ましくは、青色発光性、発光効率、素子駆動寿命の観点から、下記化合物群(B)から選ばれる2座配位子を表す。
Figure 2005194350
整数nは補助配位子SLの数である。通常0,1または2を表わし、好ましくは0または1を表わす。
さらに、金属M、配位子L、補助配位子SL及び整数m,nは、以下の関係式3を満たすものとする。
(配位子Lの価数の絶対値)×m+(補助配位子SLの価数の絶対値)×n=(金属Mの価数) ・・・関係式3
なお、mが2以上の場合の1分子中に含まれる複数の配位子L、およびnが2の場合の1分子中に含まれる複数の補助配位子SLは同一であっても異なっていてもよい。つまり、配位子L及び補助配位子SLは、同種のものを用いても良い。
さらに、1分子中に複数の配位子Lが含まれる場合、或いは、複数の補助配位子SLが含まれる場合には、配位子L及び補助配位子SLは、合成が容易であるという点では、それぞれ同種のものを用いることが好ましく、また、異なる複数の機能を併せ持つ化合物を設計できるという点、及び、色目の微調整がしやすいという点では、それぞれ異種のものを用いることが好ましい。
また、前記一般式2で表される化合物の分子量は、通常300以上、好ましくは400以上、より好ましくは500以上、また、通常2000以下、好ましくは1500以下、更に好ましくは1000以下である。分子量が大きすぎると昇華性が低下し、例えば蒸着による層形成が困難になる傾向があり、後述するようにEL素子に使用する場合にEL素子製造が困難になる虞がある。一方、分子量が小さすぎると、例えば昇華温度が低くなりすぎるため、やはり蒸着による層形成が困難になる虞がある。
表1に、一般式2で表わされるドーパント材料のうち、好ましいものの金属M、配位子L、補助配位子SL、及び数m,nの組み合わせの具体例を挙げるが、本発明に用いるドーパント材料はこれら例示に何ら限定されるものではない。
Figure 2005194350
なお、ドーパント材料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
4.ホスト材料とドーパント材料との比率
本発明の発光材料中におけるホスト材料とドーパント材料との比率について特に制限は無く、任意の比率とすることができる。ただしその比率は、ホスト材料に対するドーパント材料の量として、通常0.001重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、また、通常20重量%以下、好ましくは10重量%以下である。この範囲の上限を上回るとドーパント材料同士が2量体を形成するなど、濃度消光が起きて発光効率が低下する虞がある。また、下限を下回ると発光または発光効率の向上に寄与できない可能性があるからである。
II.本発明の電界発光素子
本発明のEL素子は、正極と、負極と、正極及び負極の間に設けられた発光層とを備え、発光層が、上述した発光材料を含んで構成されることを特徴とする。
以下、本発明のEL素子の構造の一例について、図面を参照しながら説明するが、本発明のEL素子の構造は以下の図示のものに限定されるものではない。
図6〜8は本発明のEL素子の一実施形態を模式的に示す断面図であり、1は基板、2は陽極、3は陽極バッファ層、4は正孔輸送層、5は発光層、6は正孔阻止層、7は電子輸送層、8は陰極を各々表わす。以下、図6に示すEL素子を中心に説明する。
1.基板
基板1はEL素子の支持体となるものであり、石英やガラスの板、金属板や金属箔、プラスチックフィルムやシートなどが用いられる。特にガラス板や、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホンなどの透明な合成樹脂の板が好ましい。
合成樹脂基板を使用する場合にはガスバリヤ性に留意する必要がある。基板のガスバリヤ性が小さすぎると、基板を通過した外気により有機EL素子が劣化する虞がある。このため、合成樹脂基板の少なくとも片面に緻密なシリコン酸化膜等を設けてガスバリヤ性を確保してもよい。
2.陽極
基板1上には陽極2が設けられるが、陽極2は後述する正孔輸送層4への正孔注入の役割を果たすものである。この陽極は、通常、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属、インジウムおよび/またはスズの酸化物などの金属酸化物、ヨウ化銅などのハロゲン化金属、カーボンブラック、あるいは、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子などにより構成される。
陽極2の形成は通常、スパッタリング法、真空蒸着法などにより行われることが多い。また、銀などの金属微粒子、ヨウ化銅などの微粒子、カーボンブラック、導電性の金属酸化物微粒子、導電性高分子微粉末などの場合には、適当なバインダー樹脂溶液に分散し、基板1上に塗布することにより陽極2を形成することもできる。さらに、導電性高分子の場合は電解重合により直接基板1上に薄膜を形成したり、基板1上に導電性高分子を塗布して陽極2を形成することもできる(Appl. Phys. Lett., 60巻,2711頁,1992年参照)。
陽極2は異なる2種類以上の物質からなる層を積層して、形成することも可能である。
陽極2の厚みは、必要とする透明性により異なる。透明性が必要とされる場合は、可視光の透過率を、通常60%以上、好ましくは80%以上とすることが望ましく、この場合、厚みの下限は通常5nm、好ましくは10nmであり、上限は通常1000nm、好ましくは500nmである。不透明でよい場合は陽極2の厚みは基板1と同程度でもよい。
また、さらには上記の陽極2の上に異なる導電材料を積層することも可能である。
3.正孔輸送層
図6に示すEL素子において、陽極2の上には正孔輸送層4が設けられる。
正孔輸送層4に用いられる正孔輸送材料に要求される条件としては、陽極からの正孔注入効率が高く、かつ、注入された正孔を効率よく輸送することができる材料であることが必要である。そのためには、イオン化ポテンシャルが小さく、可視光の光に対して透明性が高く、しかも正孔移動度が大きく、さらに安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時や使用時に発生しにくいことが要求される。また、発光層の発光を消光するような物質を含まないことが必要とされる。
上記の一般的要求以外に、車載表示用の応用を考えた場合、EL素子にはさらに耐熱性が要求される。従って、ガラス転移温度Tgとして70℃以上の値を有する材料が望ましい。さらに燐光素子においては、発光層の励起三重項準位よりも発光層に隣接する正孔輸送層の励起三重項準位が低いと発光効率の低下の原因となる為、励起三重項準位は高いことが望ましい。
このような正孔輸送材料としては、例えば、例えば、4,4′−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニルで代表される2個以上の3級アミンを含み2個以上の縮合芳香族環が窒素原子に置換した芳香族ジアミン(特開平5−234681号公報参照)、4,4′,4′′−トリス(1−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン等のスターバースト構造を有する芳香族アミン化合物(J. Lumin., 72−74巻、985頁、1997年参照)、トリフェニルアミンの四量体から成る芳香族アミン化合物(Chem. Commun., 2175頁、1996年参照)、2,2′,7,7′−テトラキス−(ジフェニルアミノ)−9,9′−スピロビフルオレン等のスピロ化合物(Synth. Metals, 91巻、209頁、1997年参照)等が挙げられる。なお、これらの化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
また、上記の化合物以外にも、ポリビニルカルバゾールやポリシラン(Appl. Phys. Lett. ,59巻,2760頁,1991年参照)、ポリフォスファゼン(特開平5−310949号公報参照)、ポリアミド(特開平5−310949号公報参照)、ポリビニルトリフェニルアミン(特開平7−53953号公報参照)、トリフェニルアミン骨格を有する高分子(特開平4−133065号公報参照)、トリフェニルアミン単位をメチレン基等で連結した高分子(Synthetic Metals,55−57巻,4163頁,1993年参照)、芳香族アミンを含有するポリメタクリレート(J. Polym. Sci., Polym. Chem.Ed.,21巻,969頁,1983年参照)等の高分子材料が挙げられる。
上記の正孔輸送材料を、塗布法あるいは真空蒸着法により前記陽極2上に積層することにより正孔輸送層4を形成する。
塗布法で形成する場合は、例えば正孔輸送材料を1種または2種以上と、必要により正孔のトラップにならないバインダー樹脂や塗布性改良剤などの添加剤とを混合し、溶解して塗布溶液を調製し、スプレー法、印刷法、スピンコート法、ディップコート法、ダイコート法などの通常のコーティング法や、インクジェット法等により陽極2上に塗布し、乾燥して正孔輸送層4を薄膜形成する。
バインダー樹脂としては、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル等が挙げられる。バインダー樹脂は、添加量が多いと正孔移動度を低下させるので少ない方が望ましく、正孔輸送層4中の含有量で50重量%以下が好ましい。
また、正孔輸送層4は、フィルム、基板、ロール等の媒体に、前述の薄膜形成方法によってあらかじめ薄膜を形成しておき、媒体上の薄膜を熱転写または圧力転写することにより薄膜形成することもできる。
正孔輸送層4を真空蒸着法にて形成する場合には、正孔輸送材料を真空容器内に設置されたるつぼに入れ、真空容器内を適当な真空ポンプで10-4Pa程度にまで排気した後、るつぼを加熱して、正孔輸送材料を蒸発させ、るつぼと向き合って置かれた、陽極2が形成された基板1上に正孔輸送層4を形成させる。
正孔輸送層4の膜厚の下限は、通常1nm、好ましくは5nm程度であり、上限は通常300nm、好ましくは100nm程度である。このように薄い膜を一様に形成するためには、一般に真空蒸着法がよく用いられる。
4.発光層
正孔輸送層4の上には、発光層5が設けられる。
発光層5は、上述した本発明の発光材料を含有する。本発明の発光材料のみからなる層であってもよいし、本発明の発光材料のほかに、蛍光色素や燐光色素等の発光色素、前述の正孔輸送層4または後述の正孔阻止層6および電子輸送層7の材料として挙げた各種電荷輸送性材料等の公知の電荷輸送性材料などを併用して含ませた層であってもよい。なお、本発明の発光材料に含まれるホスト材料及びドーパント材料、並びに、併用する発光色素や電荷輸送材料などの化合物は、それぞれ1種を単独で用いても良いし、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いても良い。
上記の併用しても良い他の発光色素には特に制限が無く、公知の発光色素を任意に用いることができる。その具体例としては、例えば、ペリレン系化合物誘導体、ピレン系化合物誘導体、アントラセン系化合物誘導体、クマリン系化合物誘導体、キナクリドン系化合物誘導体、ナフタル酸系化合物誘導体等の蛍光色素や、従来の技術の項に前述した文献等に記載した各種Ir錯体をはじめ、公知の燐光色素などが挙げられる。
なお、発光色素などを併用した場合、特開2000−164362号公報に記載されているように、併用する発光色素または本発明の発光材料に含まれるドーパント材料を、他のドーパントの発光を助ける励起エネルギー移動用のドーパントとして用いることもできる。
また、併用しても良い電荷輸送性材料にも特に制限は無く、公知の電荷輸送材料を任意に用いることができる。好ましいものの具体例としては、4,4′−N,N′−ジカルバゾールビフェニルなどのカルバゾール誘導体(WO 00/70655号公報参照)、2,2′,2′′−(1,3,5−ベンゼントリル)トリス[1−フェニル−1H−ベンズイミダゾール](Appl.Phys.Lett.,78巻,1622頁,2001参照)、ポリビニルカルバゾール(特開2001−257076号公報参照)等が挙げられる。
さらに、ドーパント材料がドープされる領域は、発光層5の、層全体であってもその一部分であってもよく、各層の膜厚方向において均一にドープされても、膜厚方向において濃度分布があっても構わない。
また、ドーパント材料の発光層へのドープは、前述した正孔輸送層4または後述する正孔阻止層6および電子輸送層7の形成方法と同様に、塗布法あるいは真空蒸着法などにて行われる発光層形成時に行なわれる。
塗布法の場合は、発光層形成用の塗布溶液中に、ドーパント材料や、必要に応じてこれと併用される他の蛍光色素などを含有させ、前述した正孔輸送層4または後述する電子輸送層7と同様に形成することができる。
また、真空蒸着法の場合には、例えば、ホスト材料とドーパント材料とを別のるつぼに入れて、これらを共蒸着させたり、発光材料、即ちホスト材料及びドーパント材料を予め所定比で混合し、同一のるつぼを用いて蒸発させてもよい。
これらの層形成方法のうち、通常は真空蒸着法が用いられる。
なお、発光層5の膜厚の下限は、通常1nm以上、好ましくは5nm以上程度であり、上限は通常300nm以下、好ましくは100nm以下程度である。
5.正孔阻止層
図6に示す構造の有機EL素子において、発光層5の上には正孔阻止層6が設けられる。
正孔阻止層6は発光層5の上に、発光層5の陰極側の界面に接するように積層され、発光層5から移動してくる正孔が陰極8に到達するのを阻止し、陰極8から注入された電子を効率よく発光層5の方向に輸送することができる化合物(正孔阻止材料)より形成される。また、発光層5で再結合によって生成するエキシトンを発光層内に閉じこめるために、発光層を形成する材料(本発明の発光材料など)よりは広いバンドギャップを有することが必要である。この場合のバンドギャップは、電気化学的に決定される酸化電位−還元電位の差、または、光吸収端から求められる。正孔阻止層は電荷キャリアとエキシトンの両方を発光層内に閉じこめて、発光効率を向上させる機能を有する。
このような条件を満たす正孔阻止材料として、好ましくは、下記一般式4で表わされる混合配位子錯体が挙げられる。
Figure 2005194350
一般式4中、R11〜R16は、それぞれ独立に、水素原子または任意の置換基を表わす。Q3はアルミニウム、ガリウム、インジウムから選ばれる金属原子を表わす。Y1は以下の一般式4−1、一般式4−2、一般式4−3のいずれかで表わされる基を表わす。
Figure 2005194350
Figure 2005194350
Figure 2005194350
上記一般式4−1、一般式4−2、及び一般式4−3中、Ar21〜Ar25は、置換基を有していても良い芳香族炭化水素環基または置換基を有していても良い芳香族複素環基を表わし、Y2はシリコンまたはゲルマニウムを表わす。
さらに、一般式4において、R11〜R16は各々独立に水素原子または任意の置換基を表す。具体例としては、水素原子;塩素、臭素等のハロゲン原子;メチル基、エチル基等の炭素数1〜6のアルキル基;ベンジル基等のアラルキル基;ビニル基等の炭素数2〜6のアルケニル基;シアノ基;アミノ基;アシル基;メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の炭素数2〜6のアルコキシカルボニル基;カルボキシル基;フェノキシ基、ベンジルオキシ基などのアリールオキシ基;ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基等のアルキルアミノ基;ジベンジルアミノ基、ジフェネチルアミノ基などのアラルキルアミノ基;トリフルオロメチル基等のハロアルキル基;水酸基;フェニル基、ナフチル基等の芳香族炭化水素環基;チエニル基、ピリジル基等の芳香族複素環基が挙げられる。
前記の芳香族炭化水素環基および芳香族複素環基はさらに置換基を有していてもよい。芳香族炭化水素環基および芳香族複素環基が有しうる置換基としては、例えば、フッ素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基等の炭素数1〜6のアルキル基;ビニル基等の炭素数2〜6のアルケニル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の炭素数2〜6のアルコキシカルボニル基;メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;フェノキシ基、ベンジルオキシ基などのアリールオキシ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のアルキルアミノ基;アセチル基等のアシル基;トリフルオロメチル基等のハロアルキル基;シアノ基等が挙げられる。
中でも、R11〜R16として好ましくは水素原子、アルキル基、ハロゲン原子またはシアノ基が挙げられる。またR14としては、シアノ基が特に好ましい。
さらに、一般式4中、Ar21〜Ar25として、具体的には、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基等の芳香族炭化水素環基またはチエニル基、ピリジル基等の芳香族複素環基が挙げられる。中でも5員環、6員環、5員環および/または6員環が2個または3個縮合したもの、あるいはこれらが直接結合で2個または3個結合したものが好ましい。芳香族炭化水素環基と芳香族複素環基では、芳香族炭化水素環基が好ましい。
なおAr21〜Ar25はさらに置換基を有していてもよい。Ar21〜Ar25が有しうる置換基としては、例えばR11〜R16が芳香族炭化水素環基または芳香族複素環基の場合に有しうる置換基として、前述したものと同様の基が挙げられる。
以下に、前記一般式4で表わされる化合物の好ましい具体例を以下に示すが、これらに限定するものではない。
Figure 2005194350
Figure 2005194350
また、正孔阻止材料としては、前記一般式4の混合配位子錯体の他に、以下の構造式で示される1,2,4−トリアゾール環残基を少なくとも1個有する化合物も用いることができる。
Figure 2005194350
上記構造式で表わされる1,2,4−トリアゾール環残基を少なくとも1個有する化合物の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。なお、以下の構造式において、t−Bu−は3級ブチル基を表わし、Et−はエチル基を表わす。
Figure 2005194350
なお、上記構造式中には記載していないが、これらの1,2,4−トリアゾール環残基を少なくとも1個有する化合物におけるベンゼン環およびナフタレン環は、更に置換基を有していても良い。その置換基としては、例えば一般式4におけるR11〜R16が芳香族炭化水素環基または芳香族複素環基である場合に有しうる置換基として、前述したものと同様の基が挙げられる。
さらに、正孔阻止材料として、以下の構造式で示されるフェナントロリン環を少なくとも1個有する化合物も用いることができる。
Figure 2005194350
上記構造式で表わされるフェナントロリン環を少なくとも1個有する化合物の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
Figure 2005194350
これらのフェナントロリン環を少なくとも1個有する化合物についても、前記1,2,4−トリアゾール環残基を有する化合物の場合と同様、ベンゼン環およびナフタレン環は、更に置換基を有していても良い。その置換基としては、例えば一般式4におけるR11〜R16が芳香族炭化水素環基または芳香族複素環基である場合に有しうる置換基として、前述したものと同様の基が挙げられる。
また、正孔阻止材料として、以下の構造式5で表わされる、2,4,6位が置換されたピリジン環を少なくとも1個有する化合物も用いることができる。
Figure 2005194350
構造式5中、R41、R42およびR43は、各々独立に、水素原子または任意の置換基を表わす。連結基Qはn′価の連結基を表し、ピリジン環と連結基Qはピリジン環の2〜6位のいずれか1つと直接結合している。また、n′は1〜8の整数である。なお、R41、R42およびR43となりうる置換基としては、例えば一般式4におけるR11〜R16が芳香族炭化水素環基または芳香族複素環基である場合に有しうる置換基として、前述したものと同様の基が挙げられる。
上記構造式5で表わされる、2,4,6位が置換されたピリジン環を少なくとも1個有する化合物の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
Figure 2005194350
なお、上述した各々の正孔阻止材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
また、正孔阻止層6の膜厚の上限は通常100nm以下、好ましくは50nm以下であり、下限は通常0.3nm以上、好ましくは0.5nm以上である。正孔阻止層6も正孔輸送層4や電子輸送層7と同様の方法で形成することができるが、通常は真空蒸着法が用いられる。
6.陰極
陰極8は、正孔阻止層6およびまたは後述する電子輸送層7を介して発光層5に電子を注入する役割を果たす。陰極8として用いられる材料は、前記陽極2に使用される材料から選択することが可能であるが、効率よく電子注入を行うには、仕事関数の低い金属が好ましく、スズ、マグネシウム、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀等の適当な金属またはそれらの合金が用いられる。具体例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、アルミニウム−リチウム合金等の低仕事関数合金電極が挙げられる。
陰極8の膜厚は通常、陽極2と同様である。低仕事関数金属から成る陰極を保護する目的で、この上にさらに、仕事関数が高く大気に対して安定な金属層を積層することはEL素子の安定性を増すため、好ましい。この目的のために、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金等の金属が使われる。
陰極からの電子注入を効率的に行なうことを目的として、図7および図8に示す如く、正孔阻止層6と陰極8の間には電子輸送層7が設けられる。
電子輸送層7に用いられる電子輸送材料としては、陰極8からの電子注入効率が高く、かつ、注入された電子を効率よく正孔輸送層4の方向へ輸送することができることが必要である。そのためには、電子親和力が大きく、しかも電子移動度が大きく、さらに安定性に優れトラップとなる不純物が製造時や使用時に発生しにくい化合物であることが要求される。
このような条件を満たす材料としては、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体(特開昭59−194393号公報参照)、10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリンの金属錯体、オキサジアゾール誘導体、ジスチリルビフェニル誘導体、シロール誘導体、3−または5−ヒドロキシフラボン金属錯体、ベンズオキサゾール金属錯体、ベンゾチアゾール金属錯体、トリスベンズイミダゾリルベンゼン(米国特許第5,645,948号参照)、キノキサリン化合物(特開平6−207169号公報参照)、フェナントロリン誘導体(特開平5−331459号公報参照)、2−t−ブチル−9,10−N,N′−ジシアノアントラキノンジイミン、n型水素化非晶質炭化シリコン、n型硫化亜鉛、n型セレン化亜鉛等が挙げられる。
また、上述のような電子輸送材料に、アルカリ金属をドープする(特開平10−270171号公報、特願2000−285656号、特願2000−285657号などに記載)ことにより、電子輸送性が向上するため好ましい。
さらに、電子輸送層7の膜厚は、通常下限は1nm以上、好ましくは5nm以上程度であり、上限は通常300nm以下、好ましくは100nm以下程度である。
なお、電子輸送層も正孔輸送層と同様の方法で形成することができるが、通常は真空蒸着法が用いられる。
また、正孔注入の効率をさらに向上させ、かつ、有機層全体の陽極2への付着力を改善させる目的で、図8に示す如く、正孔輸送層4と陽極2との間に陽極バッファ層3を挿入することも行なわれている。陽極バッファ層3を挿入することで、初期のEL素子の駆動電圧が下げると同時に、EL素子を定電流で連続駆動した時の電圧上昇も抑制される効果が得られる。
陽極バッファ層3に用いられる材料に要求される条件としては、陽極2とのコンタクトがよく均一な薄膜が形成でき、熱的に安定、すなわち、融点及びガラス転移温度Tgが高く、融点としては300℃以上、ガラス転移温度Tgとしては100℃以上が要求される。さらに、イオン化ポテンシャルが低く陽極2からの正孔注入が容易なこと、正孔移動度が大きいことが挙げられる。
この条件を満たすために、陽極バッファ層3の材料として、これまでにポルフィリン誘導体やフタロシアニン化合物(特開昭63−295695号公報参照)、ヒドラゾン化合物、アルコキシ置換の芳香族ジアミン誘導体、p−(9−アントリル)−N,N′−ジ−p−トリルアニリン、ポリチエニレンビニレンやポリ−p−フェニレンビニレン、ポリアニリン(Appl. Phys. Lett., 64巻、1245頁,1994年参照)、ポリチオフェン(OpticalMaterials, 9巻、125頁、1998年参照)、スターバスト型芳香族トリアミン(特開平4−308688号公報参照)等の有機化合物や、スパッタ・カーボン膜(Synth. Met., 91巻、73頁、1997年参照)や、バナジウム酸化物、ルテニウム酸化物、モリブデン酸化物等の金属酸化物(J.Phys. D, 29巻、2750頁、1996年参照)が報告されている。
また、正孔注入・輸送性の低分子有機化合物と電子受容性化合物を含有する層(特開平11−251067号公報、特開2000−159221号公報等に記載)や、芳香族アミノ基等を含有する非共役系高分子化合物に、必要に応じて電子受容性化合物をドープしてなる層(特開平11−135262号公報、特開平11−283750号公報、特開2000−36390号公報、特開2000−150168号公報、特開平2001−223084号公報、およびWO97/33193号公報などに記載)、またはポリチオフェン等の導電性ポリマーを含む層(特開平10−92584号公報参照)なども挙げられる。
上記陽極バッファ層材料としては、低分子・高分子いずれの化合物を用いることも可能である。
低分子化合物のうち、よく使用されるものとしては、ポルフィン化合物またはフタロシアニン化合物が挙げられる。これらの化合物は中心金属を有していてもよいし、無金属のものでもよい。これらの化合物の好ましい例としては、ポルフィン、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィン、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィンコバルト(II)、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィン銅(II)、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィン亜鉛(II)、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィンバナジウム(IV)オキシド、5,10,15,20−テトラ(4−ピリジル)−21H,23H−ポルフィン29H,31H−フタロシアニン銅(II)、フタロシアニン亜鉛(II)、フタロシアニンチタン、フタロシアニンオキシドマグネシウム、フタロシアニン鉛、フタロシアニン銅(II)、4,4′4′′,4′′′−テトラアザ−29H,31H−フタロシアニンなどが挙げられる。
陽極バッファ層の場合も、低分子化合物の場合は、前述の正孔輸送層と同様にして薄膜形成可能であるが、無機物の場合には、さらに、スパッタ法や電子ビーム蒸着法、プラズマCVD法が用いられる。
以上の様にして、低分子化合物を用いて形成される陽極バッファ層3の膜厚の下限は、通常3nm、好ましくは10nm程度であり、上限は通常100nm、好ましくは50nm程度である。
一方、高分子化合物を用いる場合は、例えば、前記高分子化合物や電子受容性化合物、さらに必要により、正孔のトラップとならない、バインダー樹脂やレベリング剤等の塗布性改良剤などの添加剤を混合し溶解した塗布溶液を調整し、スプレー法、印刷法、スピンコート法、ディップコート法、ダイコート法などの通常のコーティング法や、インクジェット法等により陽極2上に塗布し、乾燥することにより陽極バッファ層3を薄膜形成することができる。
バインダー樹脂としては、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル等が挙げられる。バインダー樹脂は該層中の含有量が多いと正孔移動度を低下させる虞があるので、少ない方が望ましく、50重量%以下が好ましい。
また、フィルム、支持基板、ロール等の媒体に、前述の薄膜形成方法によってあらかじめ薄膜を形成しておき、媒体上の薄膜を、陽極2上に熱転写または圧力転写することにより、薄膜形成することも出来る。
以上の様にして、高分子化合物を用いて形成される陽極バッファ層3の、膜厚の下限は通常5nm以上、好ましくは10nm以上程度であり、上限は通常1000nm以下、好ましくは500nm以下程度である。
以上、図6に示す層構成の素子を中心に説明してきたが、本発明のEL素子における陽極・陰極と発光層との間には、その性能を損なわない限り、上記説明にある層の他にも、任意の層を有していてもよく、また発光層以外の任意の層を省略してもよい。
尚、図6とは逆の構造、すなわち、基板1上に陰極8、電子輸送層7、発光層5、正孔輸送層4、陽極2の順に積層することも可能であり、既述したように少なくとも一方が透明性の高い2枚の基板の間に本発明のEL素子を設けることも可能である。同様に、図7および図8に示した前記各層構成とは逆の構造に積層することも可能である。
さらには、図6に示す層構成を複数段重ねた構造(発光ユニットを複数積層させた構造)とすることも可能である。その際には段間(発光ユニット間)の界面層(陽極がITO、陰極がAlの場合はその2層)の代わりに、例えばV25等を電荷発生層(CGL)として用いると段間の障壁が少なくなり、発光効率・駆動電圧の観点からより好ましい。
なお、本発明のEL素子は、単一の素子、アレイ状に配置された構造からなる素子、陽極と陰極がX−Yマトリックス状に配置された構造を有する素子のいずれであってもよい。
本発明のEL素子によれば、高い発光効率を得ることができ、特に、500nm以下の発光波長において高い発光効率を有する発光素子を得ることができる。
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
<実施例1>
(1)軌道エネルギー差Esomo(host)−Esomo+1(dopant)の計算
ホスト材料として、上記の例示化合物H−10を用いた。上記のホスト材料H−10がアニオン化したホストアニオンに関して、非経験的分子軌道計算(基底関数系としてLanL2MBを用いた開殻系の非制限Hartree−Fock計算。以下適宜、「ROHF/LanL2MB計算」という)による構造最適化計算を行ない、安定構造におけるSOMOの軌道エネルギーEsomo(host)を計算した。結果を表2に示す。
ホスト材料H−10と組み合わせるドーパント材料として、下記の構造を有する化合物D−1を選択した。ドーパント材料D−1がカチオン化したドーパントカチオンに関して、ROHF/LanL2MB計算による構造最適化計算を行ない、安定構造におけるSOMO+1の軌道エネルギーEsomo+1(dopant)を計算した。
Figure 2005194350
計算したホストアニオンのSOMOの軌道エネルギーEsomo(host)と、ドーパントカチオンのSOMO+1の軌道エネルギーEsomo+1(dopant)とから、励起子生成エネルギー差Esomo(host)−Esomo+1(dopant)を計算した。結果を表2に示す。
(2)ホスト材料の相対エネルギーΔET1(host)の計算
上記のホスト材料H−10に関して、半経験的分子軌道計算(PM3法)を用いて、T1状態の安定構造における基底状態に対する相対エネルギーΔET1(host)を計算した。結果を表2に示す。
(3)ホスト材料の合成
以下の化学反応式に示す反応により、EL素子のホスト材料とする例示化合物H−10を合成した。以下、具体的操作を説明する。
Figure 2005194350
窒素雰囲気下、水素化ナトリウム(55%,2.4g)の無水DMF(80ml)懸濁液に、カルバゾール(9.2g)の無水DMF(80ml)溶液を15分かけて滴下し、50℃で45分撹拌した後、氷浴中、1,2,3,4,5−ペンタフルオロトルエン(1.8g)を滴下し、氷浴中で10分、50℃で15分、80℃で25分、100℃で15分、120℃で40分、加熱還流下で3時間撹拌した。
これを室温まで冷却後、沈殿を濾別し、メタノールで洗浄後、水(200ml)に分散させてから沸騰洗浄し、目的物(6.6g)を得た。また、先の濾液(DMF溶液)と洗液(メタノール溶液)との混合物から析出した沈殿を濾過、水(200ml)に分散させてから沸騰洗浄し、目的物(2.1g)を得た。この目的物の気化温度を測定したところ、気化温度は512℃であった。
得られた目的物を、1H−NMR及びDEI−MSによって分析した。結果を以下に示す。分析の結果、得られた目的物が例示化合物H−10であることが確認された。
1H-NMR(270MHz, CDCl3), 7.75(dd, 4H), 7.33-7.27(m, 8H), 7.18(dd, 8H), 7.12-7.03(m, 8H), 6.75-6.61(m, 12H), 2.04(s, 3H)
DEI-MS m/z = 917(M+)
(4)酸化電位の測定
SCEを参照電極として、サイクリックボルタンメトリーでホスト材料H−10及びドーパント材料D−1の酸化電位を測定し、その結果から、ホスト材料H−10の酸化電位Op(host)とドーパント材料D−1の酸化電位Op(dopant)との差Op(host)−Op(dopant)を算出した。
(5)発光素子の作製
図8に示す構造を有する有機EL素子を以下の方法で作製した。
ガラス基板1の上にインジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜2を150nm堆積したITO基板(スパッター成膜品;シート抵抗15Ω)を、フォトリソグラフィと塩酸エッチングを用いて2mm幅のストライプ状にパターニングし、陽極を形成した。
パターン形成した陽極(ITO基板)を、アセトンによる超音波洗浄、純水による水洗、イソプロピルアルコールによる超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行なった。
陽極バッファ層3の材料として、下記構造を有する、芳香族アミノ基を有する非共役系高分子化合物PB−1と、電子受容性化合物A−1とを用いた。
Figure 2005194350
Figure 2005194350
非共役系高分子化合物PB−1及び電子受容性化合物A−1を、以下の条件で陽極上にスピンコートした。
溶媒 安息香酸エチル
塗布液濃度 2[重量%]
PB−1:A−1(重量比) 10:1
スピナ回転数 1500[rpm]
スピナ回転時間 30[秒]
乾燥条件 100℃1時間
上記のスピンコートにより、膜厚30nmの均一な薄膜(陽極バッファ層)が形成された。
次に、陽極バッファ層を成膜した基板を真空蒸着装置内に設置した。真空蒸着装置の粗排気を油回転ポンプにより行なった後、真空蒸着装置内の真空度が1.4×10-4Pa以下になるまでクライオポンプを用いて排気した。
真空蒸着装置内に配置されたセラミックるつぼに、正孔輸送材料として上記のホスト材料H−1を入れ、るつぼの周囲のタンタル線ヒーターでるつぼを加熱して蒸着を行なった。この時のるつぼの温度は、315℃〜329℃の範囲で制御した。蒸着時の真空度1.5×10-4Pa、蒸着速度0.17nm/秒で、膜厚60nmの正孔輸送層4を得た。
引続き、ホスト材料(カルバゾール誘導体)H−10と、ドーパント材料(有機イリジウム錯体)D−1とを別々のセラミックるつぼに入れ、2元同時蒸着法により成功輸送層4上に成膜を行なった。
ホスト材料H−10のるつぼ温度は324℃〜330℃、ドーパント材料D−1のるつぼ温度は263℃〜265℃の範囲にそれぞれ制御し、蒸着速度0.08nm/秒で膜厚30nm、ドーパント材料の含有率5重量%の発光層5を、正孔輸送層4の上に積層した。なお、蒸着時の真空度は1.5×10-4Pa、基板温度は室温とした。
続いて、下記構造を有する混合配位子錯体HB−1をセラミックるつぼに入れ、発光層5の上に成膜を行なった。
Figure 2005194350
るつぼ温度は186℃〜188℃の範囲で制御し、蒸着速度0.10nm/秒で、膜厚10nmの正孔阻止層6を積層した。なお、蒸着時の真空度は1.0×10-4Pa、基板温度は室温とした。
次いで、下記構造を有するアルミニウムの8−ヒドロキシキノリン錯体ET−1をセラミックるつぼに入れ、正孔阻止層6上に成膜を行なった。
Figure 2005194350
るつぼ温度は285〜300℃の範囲で制御し、蒸着速度0.13nm/秒で、膜厚35nmの電子輸送層7を積層した。なお、蒸着時の真空度は8.6×10-5Pa、基板温度は室温とした。
ここで、電子輸送層6までの蒸着を行なったEL素子を、一度真空蒸着装置内より大気中に取り出した。2mm幅のストライプ状シャドーマスクを、陰極蒸着用のマスクとして、陽極2のITOストライプとは直交するようにEL素子に密着させた後、EL素子を別の真空蒸着装置内に設置し、有機層(成功輸送層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層)と同様に、真空蒸着装置内の真空度が2.0×10-6Torr(約2.7×10-4Pa)以下になるまでクラインポンプで排気した。
陰極8として、まず、フッ化リチウム(LiF)をモリブデンボートで加熱して、蒸着速度0.01nm/秒、真空度2.4×10-6Torr(約3.2×10-4Pa)で、電子輸送層7の上に膜厚0.5nmとなるように成膜した。
次に、アルミニウムを、同様にモリブデンボートにより加熱して、蒸着速度0.40nm/秒、真空度4.0×10-6Torr〜10.0×10-6Torr(約5.3×10-4Pa〜13.3×10-4Pa)で、LiF層の上に膜厚80nmのアルミニウム層を形成して陰極8を完成させた。
なお、以上の2層型陰極8の蒸着時の基板温度は室温に保持した。
以上の様にして、2mm×2mmのサイズの発光面積部分を有する有機EL素子が得られた。
この有機EL素子に電圧を印加し、発光開始電圧、最大発光輝度、発光特性、及び、発光スペクトルの最大波長を測定した結果を表2に示す。なお、表2において、発光開始電圧は輝度1cd/m2での値を示し、最大発光輝度は電流密度0.25A/cm2での値を示し、発光効率、輝度/電流、及び、電圧はそれぞれ輝度100cd/m2での値を示す。
(比較例1)
ホスト材料として例示化合物H−10に代えて上記例示化合物H−1を用いた他は、実施例1と同様にして、ホストアニオンの安定構造におけるSOMOの軌道エネルギーEsomo(host)、励起子生成エネルギー差Esomo(host)−Esomo+1(dopant)、及び、ホスト材料H−1の相対エネルギーΔET1(host)を計算し、ホスト材料H−1の酸化電位Op(host)とドーパント材料の酸化電位Op(dopant)との差Op(host)−Op(dopant)を測定し、また、EL素子を作製してそのEL素子の発光効率を測定した。結果を表2に示す。
(比較例2)
ホスト材料として例示化合物に代えて上記例示化合物H−3を用いた他は、実施例1と同様にして、ホストアニオンの安定構造におけるSOMOの軌道エネルギーEsomo(host)、励起子生成エネルギー差Esomo(host)−Esomo+1(dopant)、及び、ホスト材料H−3の相対エネルギーΔET1(host)を計算し、ホスト材料H−3の酸化電位Op(host)とドーパント材料の酸化電位Op(dopant)との差Op(host)−Op(dopant)を測定し、また、EL素子を作製してそのEL素子の発光効率を測定した。結果を表2に示す。
Figure 2005194350
実施例1及び比較例1,2のEL素子はいずれも、その発光スペクトルの極大波長が500nm以下であるので、観測された発光はすべてドーパント材料D−1からのものと同定された。
表2より明らかなように、本発明の発光材料を用いた実施例1のEL素子は、他の比較例1,2のEL素子に比べ、発光開始電圧が低く、また、輝度/電流の値が高い。このことから、従来よりも少ない電気エネルギーによって発光をさせることができることが確認された。また、表2より、実施例1のEL素子は、他の比較例1,2のEL素子に比べ、発光効率が高いことが確認された。
本発明の発光材料、ホスト材料、及び、EL素子は、フラットパネル・ディスプレイ(例えば、OAコンピュータ用や壁掛けテレビ)、車載表示素子、携帯電話表示や面発光体としての特徴を活かした光源(例えば、複写機の光源、液晶ディスプレイや計器類のバックライト光源)、表示板、標識灯など、産業上の様々な分野において広く用いることができる。
本発明の発光材料をEL素子の発光層に用いた場合の発光メカニズムについて、その分子軌道エネルギーを説明するためのエネルギー相関図である。 本発明の発光材料をEL素子の発光層に用いた場合の発光メカニズムについて、その分子軌道エネルギーを説明するためのエネルギー相関図である。 本発明の発光材料をEL素子の発光層に用いた場合の発光メカニズムについて、その分子軌道エネルギーを説明するためのエネルギー相関図である。 本発明の発光材料をEL素子の発光層に用いた場合の、ホストアニオンのSOMOの軌道エネルギーEsomo(host)と、ドーパントカチオンのSOMO+1の軌道エネルギーEsomo+1(dopant)との差Esomo(host)−Esomo+1(dopant)を表わすエネルギー相関図である。 本発明の発光材料において、安定構造における三重項励起子の相対エネルギーΔET1(dopant)と、安定構造におけるホスト材料の相対エネルギーΔET1(host)との関係を表わすエネルギー相関図である。 本発明のEL素子の実施の形態の一例を示した模式的断面図である。 本発明のEL素子の実施の形態の別の例を示した模式的断面図である。 本発明のEL素子の実施の形態の別の例を示した模式的断面図である。
符号の説明
1 基板
2 陽極
3 陽極バッファ層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 正孔阻止層
7 電子輸送層
8 陰極

Claims (9)

  1. ホスト材料とドーパント材料とからなる発光材料であって、
    制限Hartree−Fock法を用いた非経験的分子軌道計算によって計算した、該ホスト材料がアニオン化したホストアニオンの安定構造におけるSOMOの軌道エネルギーEsomo(host)、及び、該ドーパント材料がカチオン化したドーパントカチオンの安定構造におけるSOMO+1の軌道エネルギーEsomo+1(dopant)が、下記関係式1を満たす
    ことを特徴とする、発光材料。
    0eV<Esomo(host)−Esomo+1(dopant)≦3.50eV ・・・関係式1
  2. ホスト材料と、発光極大波長が500nm以下のドーパント材料とからなる発光材料であって、
    制限Hartree−Fock法を用いた非経験的分子軌道計算によって計算した、該ホスト材料がアニオン化したホストアニオンの安定構造におけるSOMOの軌道エネルギーEsomo(host)が、3.90eV以下である
    ことを特徴とする、発光材料。
  3. PM3パラメータセットを用いた半経験的分子軌道計算によって計算した、該ホスト材料の第1三重項励起状態の安定構造における基底状態からの相対エネルギーΔET1(host)が、3.19eV以上である
    ことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の発光材料。
  4. ホスト材料と、発光極大波長が500nm以下のドーパント材料とからなる発光材料であって、
    PM3パラメータセットを用いた半経験的分子軌道計算によって計算した、該ホスト材料の第1三重項励起状態の安定構造における基底状態に対する相対エネルギーΔET1(host)が、3.19eV以上である
    ことを特徴とする、発光材料。
  5. 該ドーパント材料の酸化電位が、該ホスト材料の酸化電位よりも0.01V以上小さい
    ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の発光材料。
  6. 正極と、負極と、該正極及び該負極の間に設けられた発光層とを備える電界発光素子であって、
    該発光層が、請求項1〜5のいずれか1項に記載の発光材料を含んで構成される
    ことを特徴とする、電界発光素子。
  7. ドーパント材料とともに発光材料を構成するホスト材料であって、
    制限Hartree−Fock法を用いた非経験的分子軌道計算によって計算した、該ホスト材料がアニオン化したホストアニオンの安定構造におけるSOMOの軌道エネルギーEsomo(host)が、3.90eV以下である
    ことを特徴とする、ホスト材料。
  8. ドーパント材料とともに発光材料を構成するホスト材料であって、
    PM3パラメータセットを用いた半経験的分子軌道計算によって計算した、第1三重項励起状態の安定構造における基底状態からの相対エネルギーΔET1(host)が、3.19eV以上である
    ことを特徴とする、ホスト材料。
  9. 正極と、負極と、該正極及び該負極の間に設けられた発光層とを備える電界発光素子であって、
    該発光層が、請求項6又は請求項7に記載のホスト材料を含んで構成される
    ことを特徴とする、電界発光素子。
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