JP2005189822A - 電子写真感光体、画像形成方法、画像形成装置、画像形成装置用プロセスカートリッジ - Google Patents

電子写真感光体、画像形成方法、画像形成装置、画像形成装置用プロセスカートリッジ Download PDF

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Abstract

【課題】 繰り返し使用しても画質安定性に優れ、高耐久化を実現できる電子写真感光体並びに画像形成装置を提供する。
【解決手段】 導電性支持体上に少なくとも複数の下引き層、感光層を順次積層した電子写真感光体において、該感光層にCuKαの特性X線(波長1.542A)に対するブラッグ角2θの回折ピーク{±0.2°)として、少なくとも27.2°に最大回折ピークを有し、更に9.4°、9.6°、24.0°に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3°にピークを有し、7.3°のピークと9.4°のピークの間にピークを有さず、更に26.3°にピークを有さない結晶型で、一次粒子の平均粒子サイズが0.25μm以下であるチタニルフタロシアニン結晶を含み、かつ複数の下引き層の少なくとも一層には、N−メトキシメチル化ナイロンを含むことを特徴とする電子写真感光体並びにそれを用いた画像形成装置である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、複数の下引き層のうち少なくともN−メトキシメチル化ナイロンが含有された下引き層を有し、さらに平均粒子サイズが0.25μm以下の特定の結晶型を有するチタニルフタロシアニンを含有する感光層が積層してなる電子写真感光体、これを用いた画像形成方法、画像形成装置ならびに画像形成装置用プロセスカートリッジに関する。
近年、電子写真方式を用いた情報処理システム機の発展は目覚ましく、特に情報をデジタル信号に変換して光によって情報記録を行うレーザープリンタやデジタル複写機は、そのプリント品質、信頼性において向上が著しい。急速に普及しているこれらのレーザープリンタやデジタル複写機は、今後高画質化と同時にさらなる高速化あるいは小型化が要求されている。さらに、最近ではフルカラープリントが可能なフルカラーレーザープリンタやフルカラーデジタル複写機の需要も急激に高くなっている。フルカラープリントを行う場合には少なくとも4色のトナー画像を重ね合わせる必要があることから、特に装置の高速化並びに小型化がより一層重要な課題とされている。装置の高速化及び小型化を実現するためには、それらに用いられる電子写真感光体の感度を向上させるとともに感光体の小径化が必要となる。特に、フルカラー化と高速化を両立させる上で有効なタンデム方式の場合には、少なくとも4本の感光体が装置に内包されるため、感光体の小径化の要求度は非常に高い。しかし、感光体の小径化が進むに従い、感光体はより過酷な状況で使用されることになるため、従来の感光体ではその交換速度が大幅に早まることになり、特に高速機においてはより一層深刻な問題となる。従って、装置の高速化並びに小型化を実現するためには、同時に用いられる感光体の高感度化だけでなく、大幅な高耐久化が必要不可欠である。
装置の高速化に対応するために必要な感光体の高感度化に対しては、量子効率の大きな電荷発生材料が必要不可欠である。有機系高感度感光体としては、電荷発生材料にXRD[CuKα線(波長1.542Å)]におけるブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)が、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有するチタニルフタロシアニンが広く用いられており、非常に有効である。しかし、上記チタニルフタロシアニンを用いた感光体は、顔料の凝集や疲労による帯電低下等によって地汚れが顕著に発生する懸念があった。地汚れとは、本来画像を印字しない白地領域に印字され、小さい黒点が無数に発生する現象であり、初期状態においては問題にならなくても繰り返し使用によってその影響が増大するのが特徴である。このように、地汚れは感光体の寿命を決定する大きな要因となっており、上記チタニルフタロシアニンを用いた感光体によって装置の高速化が可能となっても地汚れの影響が大きくなるために、画質安定性に乏しく、高速化と高耐久化の両立が実現されていなかった。そのため、上記チタニルフタロシアニンを用いた従来の感光体は、高速機に用いると感光体の交換頻度が著しく早くなってしまい、安定した画像を長期に渡って提供することが実現できていなかった。
感光体の高耐久化に対しては、画像品質の安定性を高め、特に上記の地汚れの発生を抑制させる必要がある。感光体の繰り返し使用において画像品質に影響を与える二大要因としては、感光体の静電疲労と感光体の摩耗が挙げられる。前者は、画像形成において帯電や露光が繰り返し行われることにより感光体の疲労が進行し、それによって引き起こされる帯電電位の低下もしくは露光部電位(残留電位と同意)の上昇が画像品質の低下を引き起こす。特に、疲労による帯電電位の低下は地汚れの増加に大きな影響を与えることになる。したがって、繰り返し使用による疲労の影響を軽減させることは、感光体の高耐久化に有効である。一方、後者においては、感光体の表面層がクリーニング部材などの摺察により摩耗され、それにより感光体表面層の膜厚が減少すると、電界強度の上昇や感光体表面の傷の増加等により画像品質の低下を引き起こす。特に、膜厚減少によって電界強度が上昇すると地汚れの発生を誘発することになる。但し、感光体の耐摩耗性が向上すると、地汚れ抑制効果は得られるものの、感光体表面の異物や汚染物質が除去されにくくなり、それによってフィルミングや画像流れ等の画像欠陥の発生を引き起こしやすくなる場合があり、単に耐摩耗性を向上させるだけでは必ずしも感光体の高耐久化に対し有効であるとは限らない。
このように、画像形成装置の高速化、小型化、高寿命化を実現するためには、それに用いられる電子写真感光体の高感度化、小径化、高耐久化が必要であることは明白であるが、それらを実現する上で最も大きな課題とされるのは、上記の通り地汚れの抑制にある。すなわち、地汚れを抑制することが可能となれば、画像形成装置の高速化、小型化、高寿命化、さらには高安定化が同時に解決されることになる。
地汚れの発生原因としては、上記の感光体の疲労による影響の他に、導電性支持体上の欠陥や汚れ、感光層の電気的な絶縁破壊、導電性支持体からのキャリア(電荷)注入、電荷発生物質の凝集や電荷発生層の膜厚ムラ、感光層における熱キャリア生成などが挙げられる。これらの中で、地汚れに対し特に大きな影響を及ぼすのは、導電性支持体からのキャリア注入である。これは、感光体に帯電を施した際に、導電性支持体側に誘起されるそれとは逆極性の電荷が局所的にリークし、感光層さらには感光体の表面へ注入され、その部分が現像されやすくなることに起因する。このような点に鑑み、従来技術では導電性支持体と感光層の間に下引き層や中間層を設ける技術が提案されてきた。例えば、特許文献1には硝酸セルロース系樹脂中間層が、特許文献2にはナイロン系樹脂中間層が、特許文献3にはマレイン酸系樹脂中間層が、特許文献4にはポリビニルアルコール樹脂中間層がそれぞれ開示されている。しかしながら、これらの単層かつ樹脂単独の中間層は電気抵抗が高いため、残留電位の上昇を引き起こし、ネガ・ポジ現像においては画像濃度低下を生じる。また、不純物等に起因するイオン伝導性を示すことから、低温低湿下では中間層の電気抵抗が特に高くなるため、残留電位が著しく上昇する一方、高温高湿下では中間層の電気抵抗が低下し、地汚れが発生しやすくなる傾向が見られていた。このため、残留電位を低減させるために、中間層を薄膜化する必要があり、十分な地汚れの抑制が実現されていないのが実情であった。
これらの問題点を解消するため、中間層の電気抵抗を制御する技術として、導電性添加物を中間層バルクに添加する方法が提案された。例えば、特許文献5にはカーボン又はカルコゲン系物質を硬化性樹脂に分散した中間層が、特許文献6には四級アンモニウム塩を添加してイソシアネート系硬化剤を用いた熱重合体中間層が、特許文献7には抵抗調節剤を添加した樹脂中間層が、特許文献8には有機金属化合物を添加した樹脂中間層が開示されている。しかしながら、これら樹脂中間層単体では、残留電位の低減が実現されても地汚れが増加する傾向が見られる上、近年のレーザー光のようなコヒーレント光を使用した画像形成装置においては、モアレ画像を生じるという問題点を有している。
更にはモアレ防止と中間層の電気抵抗を同時に制御する目的で、中間層にフィラーを含有した感光体が提案された。例えば、特許文献9にはアルミニウム又はスズの酸化物を分散した樹脂中間層が、特許文献10には導電性粒子を分散した樹脂中間層が、特許文献11にはマグネタイトを分散した中間層が、特許文献12には酸化チタンと酸化スズを分散した樹脂中間層が、特許文献13、特許文献14、特許文献15、特許文献16、特許文献17、特許文献18には、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム等のホウ化物、窒化物、フッ化物、酸化物の粉体を分散した樹脂の中間層が開示されている。これらのようなフィラーを分散させた中間層は、残留電位の低減に対しては、フィラー量を増加した方が、地汚れを抑制するためにはフィラー量を減少させた方が好ましく、それらを両立することは困難であった。また、樹脂の含有量が少なくなると導電性支持体との接着性が低下し、剥離が生じやすくなる問題も有しており、特に導電性支持体がフレキシブルなベルト状の感光体では、その影響は致命的なものであった。
このような問題点を解決するために、中間層を積層化する考え方が提案された。積層化の構成は2つのタイプに大別され、1つは導電性支持体上にフィラー分散した樹脂層およびフィラーを含有しない樹脂層を順に積層したものであり(図1参照)、もう1つは導電性支持体上にフィラーを含有しない樹脂層およびフィラーを分散した樹脂層を順に設けたものである(図2参照)。
前者の構成を詳しく述べると、上述したような支持体の欠陥を隠蔽するため、導電性支持体上に抵抗の低いフィラーを分散した導電性のフィラー分散層を設け、その上に前記樹脂層を設けたものである。これらは例えば特許文献19、特許文献20、特許文献21、特許文献22、特許文献23、特許文献24、特許文献25、特許文献26、特許文献27等に記載されている。この構成は、導電性フィラーを含有するフィラー分散層によって、モアレの発生を防止することは可能であり、その上に樹脂層を有しているために地汚れ抑制効果も得ることができるが、導電性支持体からのキャリア注入を抑制しているのは、樹脂層のみであるため、前述の樹脂層を単独で用いた場合と同様に、厚膜化すれば著しい残留電位上昇が、薄膜化すれば地汚れの増加が引き起こされることになり、それらの両立を実現する上で十分に満足されるものではなかった。また、フィラー分散層上に絶縁性の樹脂層が積層されている上、フィラー分散層は導電性支持体の欠陥を隠蔽するために膜厚を厚くする(10μm以上)必要があるため、フィラー分散層に含有されるフィラーの抵抗を高めて地汚れを抑制しようとしても、残留電位の影響が顕著に大きくなるため難しい。また、特許文献28、特許文献29、特許文献30には、導電層と中間層、およびチタニルフタロシアニン結晶を含有する感光層を積層した感光体が開示されている。しかしながら、導電層と中間層を積層しただけでは、地汚れの影響を十分に抑制することは難しい。それは、上記の理由に加え、感光層に用いられるチタニルフタロシアニンにも地汚れの要因が含まれているためである。これについては、後に説明する。
一方、後者の構成としては、導電性支持体上にキャリア注入を抑制する樹脂層を設け、その上にフィラーを含有したフィラー分散層を設けたもので、例えば、特許文献31、特許文献32等に記載されている。この構成においては、樹脂層によってキャリア注入を抑制できるが、その上に積層されるフィラーを含有したフィラー分散層は特に導電性のフィラーを含有しなくても残留電位に与える影響が少ないため、キャリア注入の抑制効果も高まり、残留電位と地汚れを両立させる上では、前者の構成よりも有効性が高い。
このように、複数の下引き層を積層させ機能分離させた構成は、モアレ防止や地汚れ抑制、さらに残留電位低減を両立させる上で高い有効性を示すものの、樹脂層を薄膜化させて用いる必要があり、それに用いられる樹脂によっては、地汚れや残留電位の湿度依存性が大きかったり、膜厚依存性が大きくなる傾向が見られ、必ずしも高い安定性を有していなかった。
下引き層に用いられる樹脂についても、多くの検討がなされており、ポリアミドが比較的多く用いられている。その中でもN−アルコキシ(メトキシ)メチル化ナイロンを含有させた下引き層あるいは中間層を用いた方法が数多く開示されており、例えば、特許文献33には下引き層にアルコキシメチル化度が5〜30%のアルコキシメチル化共重合ナイロンを含有させる方法が、特許文献34には、中間層に無機顔料と結着樹脂として架橋したN−アルコキシメチル化ポリアミドを含有される方法が、特許文献35には下引き層がN−アルコキシメチル化ナイロン樹脂よりなり、樹脂中に含有される不純物Na、Ca及びP原子の元素濃度が各々10ppm以下とする方法が、特許文献36には中間層にλ−アミノ−n−ラウリン酸を主成分とするN−アルコキシメチル化ポリアミド共重合体を含有させる方法が、特許文献37には中間層にある構造を有する単位成分を有するポリアミド樹脂を含有させる方法が開示されている。このように、下引き層もしくは中間層にこれらのN−アルコキシメチル化ナイロンを含有させる方法は公知であり、導電性支持体からの電荷の注入性を抑制し地汚れ抑制効果を高めることに対しては有効な方法であることが知られている。
しかしながら、上記のように複数の下引き層を積層したり、N−アルコキシメチル化ナイロンを下引き層もしくは中間層に含有させたこれらの感光体は、地汚れ抑制には有効であるものの、残留電位上昇に与える影響は少なくない。特に、繰り返し使用による残留電位の上昇は深刻であり、それにより必ずしも画質安定性が向上するとは言い難く、大きな課題となっている。また、吸湿性が高い樹脂を用いた場合には湿度によって下引き層あるいは中間層の抵抗が変化し、低温低湿環境においては著しい残留電位上昇を引き起こしたり、高温高湿環境においては帯電低下により地汚れが発生しやすくなったりするなど環境依存性が大きくなる傾向が見られていた。さらに、下引き層はその上に塗工される際、その溶媒に不溶であることが必要であり、塗膜欠陥も地汚れに影響することから、高い塗膜品質と薄層でも膜厚偏差の少ない高い塗工性が要求される。
さらに、地汚れ発生の原因は導電性支持体から感光層への電荷(正孔)注入によるものだけではなく、前述のとおり感光層における影響も無視できない。特に、従来のチタニルフタロシアニンは凝集性が強く、それを電荷発生層に用いた場合には、下引き層からの電荷の注入を抑制したとしても、凝集物や粗大粒子の存在する局所部分において帯電低下や暗減衰の増加が起こり、地汚れとして顕在化されることになる。また、チタニルフタロシアニンの純度も大きく影響し、不純物の含有により帯電低下を顕著に引き起こしたり、疲労による暗減衰の増加を引き起こしたりすることによって地汚れ耐久性は著しく低下する。従って、電荷発生層に使用するチタニルフタロシアニン結晶の分散性や結晶型を制御することによって、地汚れの要因を排除する必要がある。
しかし、従来技術においては、地汚れを抑制させると残留電位上昇や環境依存性が著しく増大したり、残留電位上昇を抑制させると地汚れ抑制効果が不十分となるなど、それらの両立が実現されていなかった。また、地汚れは多くの要因によって生じるものであり、それらの影響を下引き層及び感光層から同時に抑制させた例は少なく、地汚れ抑制効果としても満足されるものではなかった。従って、高寿命かつ高安定な電子写真感光体並びに画像形成装置は未だ実現されていないのが実情であった。
特開昭47−6341号公報 特開昭60−66258号公報 特開昭52−10138号公報 特開昭58−105155号公報 特開昭51−65942号公報 特開昭52―82238号公報 特開昭55―1130451号公報 特開昭58―93062号公報 特開昭58―58556号公報 特開昭60−111255号公報 特開昭59―17557号公報 特開昭60―32054号公報 特開昭64―68762号公報 特開昭64―68763号公報 特開昭64―73352号公報 特開昭64―73353号公報 特開平1−118848号公報 特開平1−118849号公報 特開昭58−95351号公報 特開昭59―93453号公報 特開平4―170552号公報 特開平6―208238号公報 特開平6―222600号公報 特開平8―184979号公報 特開平9―43886号公報 特開平9−190005号公報 特開平9−288367号公報 特開平5−100461号公報 特開平5−210260号公報 特開平7−271072号公報 特開平5−80572号公報 特開平6−19174号公報 特開平9−265202号公報 特開2002−107984号公報 特許第2718044号公報 特許第3086965号公報 特許第3226110号公報
本発明の目的は、繰り返し使用しても画質安定性に優れ、高耐久化を実現できる電子写真感光体を提供することにある。具体的には、残留電位の上昇や帯電低下、また環境依存性への副作用を最小限に抑え、繰り返し使用における地汚れの抑制や絶縁破壊発生を低減することを可能にした高耐久及び高安定な電子写真感光体を提供することにある。
また、上記感光体を用い、繰り返し画像形成(出力)を行っても地汚れ等の異常画像発生の少なく安定かつ高耐久な画像形成装置を提供することにある。具体的には、繰り返し使用によって起こる地汚れや濃度低下といったネガ・ポジ現像システムにおける最大の課題を解決し、高耐久かつ高安定な高速の画像形成装置を提供することにある。更には、上記感光体を用い、高耐久、高安定でかつ取扱いが良好な画像形成装置用プロセスカートリッジを提供することにある。
本発明者らは、上記課題に対し鋭意検討を行った結果、電子写真感光体において複数の下引き層を形成し、その少なくとも一層にN−メトキシメチル化ナイロン樹脂を用い、かつ感光層とりわけ電荷発生層に特定の結晶型を有しかつ平均粒子サイズが0.25μm以下を示すチタニルフタロシアニンを用いることにより、残留電位上昇や環境依存性への副作用が少なく、地汚れ耐久性を顕著に向上できることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下の構成により達成される。
(1)導電性支持体上に少なくとも複数の下引き層及び感光層を順次積層した電子写真感光体において、該感光層にCuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、7.3゜のピークと9.4゜のピークの間にピークを有さず、更に26.3°にピークを有さない結晶型で、一次粒子の平均粒子サイズが0.25μm以下であるチタニルフタロシアニン結晶を含み、かつ複数の下引き層の少なくとも一層には、N−メトキシメチル化ナイロンを含むことを特徴とする電子写真感光体。
これにより、残留電位や環境依存性に対する副作用を低減し、導電性支持体からの電荷の注入と感光層における電荷発生物質の凝集や純度に起因する地汚れ要因を同時に抑制することが可能となり、高感度化と画質の高安定化を両立し、高耐久化が実現できる。
(2)前記感光層が、電荷発生層と電荷輸送層とを順次積層した積層構成からなることを特徴とする前記(1)に記載の電子写真感光体。
感光層を積層構成とすることにより、導電性支持体から注入された電荷の表面への移動を抑制する上で効果があり、また電荷発生物質の分散安定性を維持しやすく、地汚れ抑制に更なる効果が得られる。
(3)前記結晶型のチタニルフタロシアニンを、平均粒子サイズが0.3μm以下で、その標準偏差が0.2μm以下になるまで分散を行ない、その後有効孔径が3μm以下のフィルターにて濾過を行ない、一次粒子の平均粒子サイズを0.25μm以下とした分散液を使用し、感光層あるいは電荷発生層を塗工したことを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の電子写真感光体。
この方法により、チタニルフタロシアニンの凝集物を排除し、一次粒子の平均粒子サイズが0.25μm以下のチタニルフタロシアニンを含む感光層あるいは電荷発生層を形成することが可能となり、地汚れの抑制に有効となる。
(4)前記チタニルフタロシアニン結晶が、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも7.0〜7.5゜に最大回折ピークを有し、その回折ピークの半値巾が1゜以上である一次粒子の平均粒子サイズが0.1μm以下の不定形チタニルフタロシアニンもしくは低結晶性チタニルフタロシアニンを水の存在下で有機溶媒により結晶変換を行ない、結晶変換後の一次粒子の平均粒子サイズが0.25μmより大きく成長する前に、有機溶媒より結晶変換後のチタニルフタロシアニンを分別、濾過されたものであることを特徴とする前記(1)乃至(3)のいずれかに記載の電子写真感光体。
この方法により、結晶成長過程において含有される粗大粒子を排除することができ、0.25μm以下のチタニルフタロシアニンを含む感光層もしくは電荷発生層を形成することが可能となり、地汚れの抑制に有効となる。
(5)前記チタニルフタロシアニン結晶が、ハロゲン化物を含まない原材料を使用して合成されたものであることを特徴とする前記(1)乃至(4)のいずれかに記載の電子写真感光体。
この方法により、感光体の静電特性において、光感度の低下や帯電性の低下の影響を低減することが可能となり、地汚れ抑制の上でも有効である。
(6)前記チタニルフタロシアニン結晶が不定形チタニルフタロシアニンもしくは低結晶性チタニルフタロシアニンを、水の存在下で有機溶媒により結晶変換を行なうことにより得られたものであり、前記チタニルフタロシアニン結晶の結晶変換に際して、使用される不定形チタニルフタロシアニンもしくは低結晶性チタニルフタロシアニンがアシッド・ペースト法により作製され、十分にイオン交換水で洗浄され、洗浄後のイオン交換水のpHが6〜8の間及び/又はイオン交換水の比伝導度が8以下であることを特徴とする前記(1)乃至(5)のいずれかに記載の電子写真感光体。
この方法により、硫酸の残存量を感光体特性に影響しないレベルに低減することが可能となり、帯電低下や感度劣化を抑制する上で有効であり、結果として地汚れの抑制に対しても有効となる。
(7)前記チタニルフタロシアニン結晶が不定形チタニルフタロシアニンもしくは低結晶性チタニルフタロシアニンを、水の存在下で有機溶媒により結晶変換を行なうことにより得られたものであり、前記チタニルフタロシアニン結晶の結晶変換に際して、使用される有機溶媒量が不定形チタニルフタロシアニンもしくは低結晶性チタニルフタロシアニンの30倍(重量比)以上であることを特徴とする前記(1)乃至(6)のいずれかに記載の電子写真感光体。
この方法により、短時間での結晶変換を確実に行うことができ、不定形チタニルフタロシアニン(低結晶性チタニルフタロシアニン)中に含まれる不純物を取り除くことが可能となり、その結果感度劣化や帯電低下が抑制され、地汚れ耐久性を向上させる上でも有効である。
(8)前記N−メトキシメチル化ナイロンを含有する下引き層の膜厚が、2.0μm未満であることを特徴とする前記(1)乃至(7)のいずれかに記載の電子写真感光体。
これにより、繰り返し使用における残留電位上昇の副作用を軽減させることが可能となり、画質安定性の向上に有効となる。
(9)前記N−メトキシメチル化ナイロンが加熱により架橋されていることを特徴とする前記(1)乃至(8)のいずれかに記載の電子写真感光体。
これにより、湿度依存性の更なる低減が可能となり、地汚れや残留電位における環境安定性の向上に有効となる。
(10)前記N−メトキシメチル化ナイロンを含有する下引き層に、さらに酸触媒が含有されていることを特徴とする前記(9)に記載の電子写真感光体。
これにより、湿度依存性の更なる低減が可能となり、地汚れや残留電位における環境安定性の向上に対しさらに有効となる。また、残留電位の低減に対しても有効である。
(11)前記N−メトキシメチル化ナイロンを含有する下引き層に、さらに架橋剤が含有されていることを特徴とする前記(9)又は(10)に記載の電子写真感光体。
これにより、湿度依存性の更なる低減が可能となり、地汚れや残留電位における環境安定性の向上により一層有効となる。また、疲労による帯電低下の抑制に対しても有効である。
(12)前記複数の下引き層において、N−メトキシメチル化ナイロンを含有する下引き層以外の下引き層には、少なくとも無機顔料とバインダー樹脂が含有されていることを特徴とする前記(1)乃至(11)のいずれかに記載の電子写真感光体。
これにより、レーザー光を用いたネガ・ポジ現像方式において発生しやすいモアレの発生を抑制できると同時に、疲労による帯電劣化を抑制することが可能となり、画質安定性を高める上で有効となる。
(13)前記無機顔料が、金属酸化物であることを特徴とする前記(12)に記載の電子写真感光体。
これにより、残留電位上昇や疲労による帯電劣化の影響が少なくなり、モアレを抑制する上でも高い効果を得ることができる。
(14)前記金属酸化物が、酸化チタンであることを特徴とする前記(13)に記載の電子写真感光体。
これにより、残留電位に与える影響を最小限に、地汚れ抑制効果を高める上で有効である。
(15)前記無機顔料が、平均一次粒径の異なる2種以上の無機顔料の混合物であり、最も大きな平均一次粒径を有する無機顔料の平均一次粒径をD1、最も小さな平均一次粒径を有する無機顔料の平均一次粒径をD2としたとき、0.2<(D2/D1)≦0.5の関係を満たすことを特徴とする前記(12)乃至(14)のいずれかに記載の電子写真感光体。
これにより、モアレ防止効果を維持しつつ、地汚れ抑制効果を顕著に高めることが可能となる。また、同時に残留電位低減効果を得ることができる。
(16)前記D2が、0.2μm未満であることを特徴とする前記(15)に記載の電子写真感光体。
これにより、地汚れ抑制効果をさらに高めることが可能となる。
(17)前記平均一次粒径の異なる2種以上の無機顔料の混合比が、最も大きな平均一次粒径を有する無機顔料の含有量をT1、最も小さな平均一次粒径を有する無機顔料の含有量をT2としたとき、重量比で0.2≦T2/(T1+T2)≦0.8の関係を満たすことを特徴とする前記(15)又は(16)に記載の電子写真感光体。
これにより、モアレ防止効果を維持しつつ、地汚れ抑制効果を顕著に高めることが可能となる。また、同時に残留電位低減効果を得ることができる。
(18)前記N−メトキシメチル化ナイロンを含有する下引き層以外の下引き層に含有されるバインダー樹脂が、熱硬化型樹脂を含むことを特徴とする前記(12)乃至(17)のいずれかに記載の電子写真感光体。
これにより、上層を積層する場合に樹脂の溶け出しがなくなり、塗工液の安定性を高めることが可能となり、画質安定性の高い感光体を安定に製造することができる。
(19)前記熱硬化型樹脂が、アルキッド樹脂及びメラミン樹脂からなることを特徴とする前記(18)に記載の電子写真感光体。
これにより、残留電位上昇に与える影響が少なく、環境依存性も低減され、高安定化が実現される。
(20)前記アルキッド樹脂とメラミン樹脂との重量比が、1/1乃至4/1の範囲内であることを特徴とする前記(19)に記載の電子写真感光体。
これにより、残留電位上昇を抑制できるとともに、塗膜欠陥の発生も低減でき、地汚れ抑制にも有効である。
(21)前記N−メトキシメチル化ナイロンを含有する下引き層以外の下引き層に含有される無機顔料とバインダー樹脂との容積比が、1/1乃至3/1の範囲内であることを特徴とする前記(12)乃至(20)のいずれかに記載の電子写真感光体。
これにより、地汚れ抑制と残留電位低減の両立が可能となる。
(22)前記N−メトキシメチル化ナイロンを含有する下引き層以外の下引き層の膜厚が、前記N−メトキシメチル化ナイロンを含有する下引き層の膜厚よりも厚いことを特徴とする前記(1)乃至(21)のいずれかに記載の電子写真感光体。
これにより、疲労による帯電劣化の影響を軽減し、かつ無機顔料及びバインダー樹脂を含む下引き層の塗膜品質や膜厚均一性が高まり、画質安定性に対し有効となる。
(23)前記N−メトキシメチル化ナイロンを含む下引き層が、導電性支持体上に直接形成されていることを特徴とする前記(1)乃至(22)のいずれかに記載の電子写真感光体。
地汚れ抑制効果が高く、初期及び繰り返し使用による残留電位の上昇を抑制することが可能となり、地汚れ向上と残留電位低減の両立が可能となる。さらに、疲労による暗減衰の抑制、感光層の接着性、導電性支持体の欠陥や汚れの隠蔽性において更なる効果が得られる。
(24)前記電子写真感光体の最表面に、無機顔料を含有した電荷輸送層を積層したことを特徴とする前記(1)乃至(23)のいずれかに記載の電子写真感光体。
これにより、感光体の繰り返し使用による膜厚減少を軽減することが可能となり、経時での電界強度の増加を抑制することができ、地汚れの増加を抑制することが可能となる。
(25)前記無機顔料が金属酸化物であることを特徴とする前記(24)に記載の電子写真感光体。
これにより、耐摩耗性の向上に更なる効果が得られ、経時での電界強度の増加を抑制する上で有効である。
(26)前記金属酸化物がアルミナであることを特徴とする前記(25)に記載の電子写真感光体。
これにより、耐摩耗性が高い上に、画像ボケの影響が少なく、高耐久化に対し有効である。
(27)前記(1)乃至(26)のいずれかに記載の電子写真感光体を用いて、少なくとも帯電、画像露光、現像、転写を繰り返し行うことを特徴とする画像形成方法。
これにより、地汚れの発生を抑制し、高耐久化が可能な画像形成方法が提供される。
(28)少なくとも帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、及び電子写真感光体を具備してなる画像形成装置において、該電子写真感光体が前記(1)乃至(26)のいずれかに記載のものであることを特徴とする画像形成装置。
本発明の感光体を用いることにより、感度、画質安定性並びに耐久性を向上させることが可能となり、画像形成装置の高速化、小型化、高耐久化、高安定化を同時に実現することが可能となる。
(29)少なくとも帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、及び電子写真感光体からなる画像形成要素を複数配列したことを特徴とする前記(28)に記載の画像形成装置。
感光体を小径化しても画質安定性や耐久性が大幅に向上できたことにより、タンデム方式の画像形成装置の小型化並びに高耐久化が実現でき、特に大きなメリットが得られる。
(30)少なくとも帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、及び電子写真感光体を具備してなる画像形成装置において、画像形成時における感光体の線速が250mm/sec以上であることを特徴とする前記(28)又は(29)に記載の画像形成装置。
高感度を有し、同時に地汚れの抑制により画質安定性との両立を実現できたことから、高速の画像形成装置における高耐久化に特に大きなメリットが得られる。
(31)前記画像形成装置が、少なくとも電子写真感光体と、帯電手段、露光手段、現像手段、クリーニング手段から選ばれる少なくとも1つの手段とが一体となった画像形成装置用プロセスカートリッジを搭載し、該画像形成装置用プロセスカートリッジが装置本体と着脱自在であることを特徴とする前記(28)乃至(30)のいずれかに記載の画像形成装置。
高耐久性を有する感光体を用いても、感光体廻りの各種部材の寿命が低ければ画質安定性の向上は実現できない。プロセスカートリッジ化することによりそれらの交換やメンテナンスが容易となり、画像形成装置として更なる長寿命化が実現される。
(32)少なくとも電子写真感光体と、帯電手段、露光手段、現像手段、クリーニング手段から選ばれる少なくとも1つの手段とが一体となった画像形成装置用プロセスカートリッジにおいて、該電子写真感光体が前記(1)乃至(26)のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置用プロセスカートリッジ。
高耐久性を有する感光体を用いているため、画像形成装置用プロセスカートリッジについても長寿命化することが可能となり省資源化に対応できる。また、画像形成装置の長期使用において最も不具合が発生しやすい感光体廻りをプロセスカートリッジ化することにより、その部分だけを容易に交換することが可能であるため、画像形成装置全体としても省資源化に対応できると同時に、長寿命化が可能となる。
本発明の電子写真感光体は、前述のとおり導電性支持体上に少なくとも複数の下引き層及び感光層を順次積層した電子写真感光体において、該感光層にCuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、7.3゜のピークと9.4゜のピークの間にピークを有さず、更に26.3°にピークを有さない結晶型で、一次粒子の平均粒子サイズが0.25μm以下であるチタニルフタロシアニン結晶を含み、かつ複数の下引き層の少なくとも一層には、N−メトキシメチル化ナイロンを含むことが特徴となっている。
ここに示された結晶型のチタニルフタロシアニンは、特開2001−19871号公報に記載されているものであり、本発明で使用される電荷発生物質と同じ結晶型の電荷発生物質及びこれを用いた感光体、画像形成装置が開示されている。このチタニルフタロシアニン結晶を用いることで、高感度を失うことなく繰り返し使用によっても帯電性の低下が少ない高安定な電子写真感光体を得ることができる。しかしながら、非常に長期間繰り返し使用される場合においては、地汚れの増加を引き起こし、感光体の寿命としては満足されるものではなかった。これは、電荷発生層に起因する地汚れ要因は改善されても、導電性支持体より注入される電荷によって引き起こされる地汚れ要因に対しては対処していないことがその原因であると考えられる。
一方、導電性支持体と感光層の間に、複数の下引き層もしくは中間層を積層した構成は、前述のように特許文献31等に記載されている技術であるが、高感度を有する感光層との組み合わせにおいては、感光層における熱キャリアの発生の影響が大きく、必ずしも地汚れを完全に防止できるものではなかった。この傾向は、本発明で用いるようなチタニルフタロシアニンに代表される長波長に吸収を有する電荷発生物質を用いた場合には顕著な問題となるものであった。
このように、電荷発生層あるいは下引き層において、各々地汚れを抑制させる方法は開示されているものの、地汚れ要因は複数存在しており、それらを同時に抑制させないと長期間繰り返し使用される状況下に耐えることは不可能である。それは、非常に小さな地汚れ要因であり、初期状態では問題にならなくても、繰り返し使用されることによって感光体が疲労したり、構成材料の劣化が進行するに伴い、地汚れ要因は成長するためである。従って、地汚れの要因は極力排除するとともに、繰り返し使用における感光体の疲労に対しても安定性を高めることが必要である。しかし、それらを同時に解決し、飛躍的な高耐久化を可能とする方法は開示されていなかった。
本発明は、多くの要因によって引き起こされる地汚れを抑制するとともに、帯電性の経時安定性を高め、さらに残留電位や環境依存性に対する副作用を最小限にすることによって、繰り返し使用に対しても安定した効果を持続させることに成功し、本発明を完成させるに至った。
まず、本発明で用いられる特定の結晶型を有するチタニルフタロシアニン結晶の合成方法について説明する。
初めにチタニルフタロシアニン結晶の合成粗品の合成法について述べる。フタロシアニン類の合成方法は古くから知られており、Moser等による「Phthalocyanine Compounds」(1963年)、「The Phthalocyanines」(1983年)、特開平6−293769号公報等に記載されている。
例えば、第1の方法として、無水フタル酸類、金属あるいはハロゲン化金属及び尿素の混合物を高沸点溶媒の存在下あるいは不存在下において加熱する方法である。この場合、必要に応じてモリブデン酸アンモニウム等の触媒が併用される。第2の方法としては、フタロニトリル類とハロゲン化金属を高沸点溶媒の存在下あるいは不存在下において加熱する方法である。この方法は、第1の方法で製造できないフタロシアニン類、例えば、アルミニウムフタロシアニン類、インジウムフタロシアニン類、オキソバナジウムフタロシアニン類、オキソチタニウムフタロシアニン類、ジルコニウムフタロシアニン類等に用いられる。第3の方法は、無水フタル酸あるいはフタロニトリル類とアンモニアを先ず反応させて、例えば1,3−ジイミノイソインドリン類等の中間体を製造し、次いでハロゲン化金属と高沸点溶媒中で反応させる方法である。第4の方法は、尿素等存在下で、フタロニトリル類と金属アルコキシドを反応させる方法である。特に、第4の方法はベンゼン環への塩素化(ハロゲン化)が起こらず、電子写真用材料の合成法としては、極めて有用な方法であり、本発明においては極めて有効に使用される。
このように本発明で用いられるチタニルフタロシアニン結晶の合成方法としては、特開平6−293769号公報に記載されているように、ハロゲン化チタンを原料に用いない方法が良好に用いられるものである。この方法の最大のメリットは、合成されたチタニルフタロシアニン結晶がハロゲン化フリーであることである。チタニルフタロシアニン結晶は不純物としてのハロゲン化チタニルフタロシアニン結晶を含むと、これを用いた感光体の静電特性において光感度の低下や、帯電性の低下といった悪影響を及ぼす場合が多い(Japan Hardcopy‘89論文集、p.103、1989年)。本発明においても、特開2001−19871号公報に記載されているようなハロゲン化フリーチタニルフタロシアニン結晶をメインに対象にしているものであり、これらの材料が有効に使用される。
次に、不定形チタニルフタロシアニン(低結晶性チタニルフタロシアニン)の合成法について述べる。この方法は、フタロシアニン類を硫酸に溶解した後、水で希釈し、再析出させる方法であり、アシッド・ペースト法あるいはアシッド・スラリー法と呼ばれるものが使用できる。
具体的な方法としては、上記の合成粗品を10〜50倍量の濃硫酸に溶解し、必要に応じて不溶物を濾過等により除去し、これを硫酸の10〜50倍量の充分に冷却した水もしくは氷水にゆっくりと投入し、チタニルフタロシアニンを再析出させる。析出したチタニルフタロシアニンを濾過した後、イオン交換水で洗浄・濾過を行ない、濾液が中性になるまで充分にこの操作を繰り返す。最終的に、綺麗なイオン交換水で洗浄した後、濾過を行ない、固形分濃度で5〜15wt%程度の水ペーストを得る。
この際、イオン交換水で十分に洗浄し、可能な限り濃硫酸を残さないことが重要である。具体的には、洗浄後のイオン交換水が以下のような物性値を示すことが好ましい。即ち、硫酸の残存量を定量的に表せば、洗浄後のイオン交換水のpHや比伝導度で表すことが出来る。pHで表す場合には、pHが6〜8の範囲であることが望ましい。この範囲であることにより、感光体特性に影響を与えない硫酸残存量であると判断出来る。このpH値は市販のpHメーターで簡便的に測定することが出来る。また比伝導度で表せば、8以下であることが望ましい。この範囲であれば、感光体特性に影響を与えない硫酸残存量であると判断出来る。この比伝導度は市販の電気伝導率計で測定することが可能である。比伝導度の下限値は、洗浄に使用するイオン交換水の比伝導度ということになる。いずれの測定においても、上記範囲を逸脱する範囲では、硫酸の残存量が多く、感光体の帯電性が低下したり、光感度が悪化したりするので望ましくない。
このように作製したものが本発明に用いる不定形チタニルフタロシアニン(低結晶性チタニルフタロシアニン)である。この際、この不定形チタニルフタロシアニン(低結晶性チタニルフタロシアニン)が、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも7.0〜7.5゜に最大回折ピークを有するものであることが好ましい。特に、その回折ピークの半値巾が1゜以上であることがより好ましい。更に、一次粒子の平均粒子サイズが0.1μm以下であることが好ましい。
次に、結晶変換方法について述べる。
結晶変換は、前記不定形チタニルフタロシアニン(低結晶性チタニルフタロシアニン)を、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、かつ、前記7.3°のピークと9.4゜のピークの間にはピークを有さず、かつ26.3゜にピークを有さないチタニルフタロシアニン結晶に変換する工程である。
具体的な方法としては、前記不定形チタニルフタロシアニン(低結晶性チタニルフタロシアニン)を乾燥せずに、水の存在下の元で有機溶媒と共に混合・撹拌することにより、前記結晶型を得るものである。
この際、使用される有機溶媒は、所望の結晶型を得られるものであれば、いかなる有機溶媒も使用できるが、特にテトラヒドロフラン、トルエン、塩化メチレン、二硫化炭素、オルトジクロロベンゼン、1,1,2−トリクロロエタンの中から選ばれる1種を選択すると、良好な結果が得られる。これら有機溶媒は単独で用いることが好ましいが、これらの有機溶媒を2種以上混合する、あるいは他の溶媒と混合して用いることも可能である。結晶変換に使用される前記有機溶媒の量は、不定形チタニルフタロシアニン(低結晶性チタニルフタロシアニン)の重量の10倍以上、好ましくは30倍以上の重量であることが望ましい。これは、結晶変換を素早く十分に起こさせると共に、不定形チタニルフタロシアニン(低結晶性チタニルフタロシアニン)に含まれる不純物を十分に取り除く効果が発現されるからである。尚、ここで使用する不定形チタニルフタロシアニン(低結晶性チタニルフタロシアニン)は、アシッド・ペースト法により作製するものであるが、上述のように硫酸を十分に洗浄したものを使用することが望ましい。硫酸が残存するような条件で結晶変換を行うと、結晶粒子中に硫酸イオンが残存し、出来上がった結晶を水洗処理のような操作をしても完全には取り除くことが出来ない。硫酸イオンが残存した場合には、感光体の感度低下、帯電性低下を引き起こすなど、好ましい結果を得られない。例えば、特開平8−110649号公報(比較例)には、硫酸に溶解したチタニルフタロシアニンをイオン交換水と共に有機溶媒に投入し結晶変換を行う方法が記載されている。この際、本発明で得られるチタニルフタロシアニン結晶のX線回折スペクトルに類似した結晶を得ることが出来るが、チタニルフタロシアニン中の硫酸イオン濃度が高く、光減衰特性(光感度)が悪いものであるため、本発明のチタニルフタロシアニンの製造方法としては良好なものではない。以上の結晶変換方法は特開2001−19871号公報に準じた結晶変換方法である。
本発明の電子写真感光体に含有される電荷発生物質においては、チタニルフタロシアニン結晶の粒子サイズをより細かくすることにより、地汚れ抑制効果が高くなり、画質安定性並びに高寿命化に対し有効となる。以下にその作製方法を示す。
感光層に含有されるチタニルフタロシアニン結晶の粒子サイズをコントロールするための方法は、大きく2つの方法が挙げられる。1つはチタニルフタロシアン結晶粒子を合成する際に、0.25μmより大きい粒子を含まない結晶を合成する方法であり、いま1つはチタニルフタロシアニン結晶を分散した後、0.25μmより大きい粗大粒子を取り除いてしまう方法である。勿論、両者を併用して用いることはより大きな効果を併せ持つものである。
先に、微粒子チタニルフタロシアニン結晶の合成方法を述べる。
チタニルフタロシアニン結晶の粒子サイズをより細かくするために、本発明者らが観察したところによれば、前述の不定形チタニルフタロシアニン(低結晶性チタニルフタロシアニン)は、一次粒径が0.1μm以下(そのほとんどが0.01〜0.05μm程度)であるが(図3参照、スケール・バーは0.2μmである)、結晶変換に際しては、結晶成長と共に結晶が変換されることが分かった。通常、この種の結晶変換においては、原料の残存をおそれて充分な結晶変換時間を確保し、結晶変換が十二分に行なわれた後に、濾過を行ない、所望の結晶型を有するチタニルフタロシアニン結晶を得るものである。このため、原料として充分に小さな一次粒子を有する原料を用いているにもかかわらず、結晶変換後の結晶としては一次粒子の大きな結晶(概ね0.3〜0.5μm)を得ているものである(図4参照、スケール・バーは0.2μmである)。
このように作製されたチタニルフタロシアニン結晶を分散するにあたっては、分散後の粒子サイズを小さなもの(0.25μm以下、好ましくは0.2μm以下)にするため、強いシェアを与えることで分散を行ない、更には必要に応じて一次粒子を粉砕する強いエネルギーを与えて分散を行なっている。この結果、前述の如き、粒子の一部が所望の結晶型でない結晶型へと転移してしまうものである。
一方、本発明においては、結晶変換に際して結晶成長がほとんど起こらない範囲(図3に観察される不定形チタニルフタロシアニン粒子のサイズが、結晶変換後において遜色ない小ささ、概ね0.25μm以下に保たれる範囲)で、結晶変換が完了した時点を見極めることで、可能な限り一次粒子サイズの小さなチタニルフタロシアニン結晶を得ようというものである。結晶変換後の粒子サイズは、結晶変換時間に比例して大きくなる。このため前述のように、結晶変換の効率を高くし、短時間で完了させることが重要である。このためには、いくつかの重要なポイントが挙げられる。
1つは、結晶変換溶媒を前述のように適正なものを選択し、結晶変換効率を高めることである。もう1つは、結晶変換を短時間に完了させるために、溶媒とチタニルフタロシアニン水ペースト(前述の如き作製した原料:不定形チタニルフタロシアニン(低結晶性チタニルフタロシアニン))を充分に接触させるために強い撹拌を用いるものである。具体的には、撹拌力の非常に強いプロペラを用いた撹拌、ホモジナイザー(ホモミキサー)のような強烈な撹拌(分散)手段を用いるなどの手法により、短時間での結晶変換を実現させるものである。これらの条件により、原料が残存することなく、結晶変換が充分に行なわれ、かつ結晶成長が起こらない状態のチタニルフタロシアニン結晶を得ることができる。この場合にも、結晶変換に使用する有機溶媒量の適正化が有効な手段である。具体的には、不定形チタニルフタロシアニン(低結晶性チタニルフタロシアニン)の固形分に対して、重量比で10倍以上、好ましくは30倍以上の有機溶媒を使用することが望ましい。これにより、短時間での結晶変換を確実なものとすると共に、不定形チタニルフタロシアニン中に含まれる不純物を確実に取り除くことが出来る。
また、上述のように結晶粒子サイズと結晶変換時間は比例関係にあるため、所定の反応(結晶変換)が完了したら、反応を直ちに停止させる方法も有効な手段である。上述のように結晶変換を行なった後、直ちに結晶変換の起こりにくい溶媒を大量に添加することが前記手段として挙げられる。結晶変換の起こりにくい溶媒としては、アルコール系、エステル系などの溶媒が挙げられる。これらの溶媒を結晶変換溶媒に対して、10倍程度加えることにより、結晶変換を停止することができる。
このようにして作製される結晶は、一次粒径がより小さく、地汚れの抑制に有利となるが、チタニルフタロシアニン顔料作製にかかる次工程(顔料の濾過工程)、分散液での分散安定性を考慮すると、あまり小さすぎても副作用がでる場合がある。即ち、一次粒子が非常に細かい場合には、これを濾過する工程において濾過時間が非常に長くなってしまうという問題が発生する。また、一次粒子が細かすぎる場合には、分散液中での顔料粒子の表面積が大きくなるため、粒子の再凝集の可能性が高くなり、地汚れの発生を促進させる恐れが出てくる。したがって、顔料粒子の粒子サイズは、およそ0.05μm〜0.2μm程度の範囲がより好ましい。
図5には、短時間で結晶変換を行った場合のチタニルフタロシアニン結晶のTEM像を示す(図中のスケール・バーは0.2μmである)。図4の場合とは異なり、粒子サイズが小さく、ほぼ均一であり、図4に観察されるような粗大粒子は全く認められない。このように作製されたチタニルフタロシアニン結晶を分散するにあたっては、合成後のチタニルフタロシアニンの一次粒子は十分に小さいため、図4に示すような粗大粒子を含むチタニルフタロシアニンを分散する際に必要となる強いシェアを与えずとも、所望の平均粒子サイズ(0.25μm以下、好ましくは0.2μm以下)を得ることが可能となる。この結果、過度の分散によって粒子の一部が所望の結晶型とは異なる結晶型に転移してしまう不具合を抑制することが可能となる。
ここでいう平均粒子サイズとは、体積平均粒径であり、超遠心式自動粒度分布測定装置:CAPA−700(堀場製作所製)により求めたものである。この際、累積分布の50%に相当する粒子径(Median系)として算出されたものである。しかしながら、この方法では微量の粗大粒子を検出できない場合があるため、より詳細に求めるには、チタニルフタロシアニン結晶粉末、あるいは分散液を直接、電子顕微鏡にて観察し、その大きさを求めることが重要である。
分散液をさらに観察して微小欠陥について検討した結果、上記現象は次のように説明される。通常、平均粒子サイズを測定する方法において、極端に大きな粒子が数%以上も存在するような場合には、その存在が検出できるが、全体の1%以下程度のような微量になってくると、その測定は検出限界以下になってしまう。その結果、平均粒子サイズの測定だけでは粗大粒子の存在が検出されずに、上述のような微小欠陥に関する解釈を困難にしていた。
図6及び図7に、分散条件を固定して分散時間だけを変更した2種類の分散液の状態を観察した写真を示す。同一条件における分散時間の短い分散液の写真を図6に示すが、分散時間の長い図7と比較して、図6中の黒い粒として観察される粗大粒子が多く残っている様子が観測される。
この2種類の分散液の平均粒径並びに粒度分布を公知の方法に従って、市販の粒度分布測定装置(堀場製作所製:超遠心式自動粒度分布測定装置、CAPA700)により測定した。その結果を図8に示す。図8における「A」が図6に示す分散液に対応し、「B」が図7に示す分散液に対応する。両者を比較すると、粒度分布に関してはほとんど差が認められない。また、両者の平均粒径値は、「A」が0.29μm、「B」が0.28μmと求められ、測定誤差を加味した上では、両者に明らかな差があるとは判断できない。
従って、公知の平均粒径(平均粒子サイズ)の規定だけでは、微量な粗大粒子の残存を検出することはできず、地肌汚れとの関係を明確にすることは難しい。この微量な粗大粒子の存在は、塗工液を顕微鏡レベルで観察することにより、初めて認識されるものであり、これによって地肌汚れとの関係を明らかにすることが可能となった。
このような結果から、凝集を抑制しつつ、結晶変換時に作製される一次粒子をできる限り小さくするために、結晶変換溶媒を前述のように適正なものを選択し、結晶変換効率を高めつつ、結晶変換を短時間に完了させるために、溶媒とチタニルフタロシアニン水ペースト(前述の如き作製した原料)を充分に接触させるために強い撹拌を用いるような手法は有効であることがわかる。
このような結晶変換方法を採用することにより、一次平均粒子サイズの小さな(0.25μm以下、好ましくは0.2μm以下)チタニルフタロシアニン結晶を得ることができる。特開2001−19871号公報に記載された技術に加えて、必要に応じて上述のような技術(微細なチタニルフタロシアニン結晶を得るための結晶変換方法)を併用することは、本発明の効果を高めるために有効な手段である。
続いて、結晶変換されたチタニルフタロシアニン結晶は直ちに濾過されることにより、結晶変換溶媒と分別される。この濾過に際しては、適当なサイズのフィルターを用いることにより行なわれる。この際、減圧濾過を用いることが最も適当である。
その後、分別されたチタニルフタロシアニン結晶は、必要に応じて加熱乾燥される。加熱乾燥に使用する乾燥機は、公知のものがいずれも使用可能であるが、大気下で行なう場合には送風型の乾燥機が好ましい。更に、乾燥速度を早め、本発明の効果をより顕著に発現させるために減圧下の乾燥も非常に有効な手段である。特に、高温で分解する、あるいは結晶型が変化するような材料に対しては有効な手段である。特に10mmHgよりも真空度が高い状態で乾燥することが有効である。
このように得られた特定の結晶型を有するチタニルフタロシアニン結晶は、電子写真感光体用電荷発生物質として極めて有用である。しかしながら、先述のように結晶型が不安定であり、分散液を作製する際に結晶型が転移し易いという欠点を有しているものであった。しかしながら、本発明のように一次粒子を限りなく小さなものに合成することにより、分散液作製時に過剰なシェアを与えることなく、平均粒径の小さな分散液を作製することができ、結晶型も極めて安定に(合成した結晶型を変えることなく)作製することができるものである。
分散液の作製に関しては一般的な方法が用いられ、前記チタニルフタロシアニン結晶を必要に応じてバインダー樹脂とともに適当な溶剤中にボールミル、アトライター、サンドミル、ビーズミル、超音波などを用いて分散することで得られるものである。この際、バインダー樹脂は感光体の静電特性などにより、また溶媒は顔料へのぬれ性、顔料の分散性などにより選択すればよい。
既に述べたように、CuKα線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有するチタニルフタロシアニン結晶は、熱エネルギー・機械的シェア等のストレスにより他の結晶型に容易に結晶転移をすることが知られている。本発明で用いるチタニルフタロシアニン結晶もこの傾向は変わらない。すなわち、微細な粒子を含む分散液を作製するためには、分散方法の工夫も必要であるが、結晶型の安定性と微粒子化はトレード・オフの関係になりがちである。分散条件を最適化することによりこれを回避する方法はあるが、いずれも製造条件を極めて狭くしてしまうものであり、より簡便な方法が望まれている。この問題を解決するために、以下のような方法も有効な手段である。
すなわち、結晶転移が起こらない範囲でできる限り粒子を微細にした分散液を作製後、適当なフィルターで濾過を行い、粗大粒子を取り除く方法である。この方法では、残存する目視では観察できない(あるいは粒径測定では検出できない)微量な粗大粒子をも取り除くことができ、また粒度分布を揃えるという点からも非常に有効な手段である。具体的には、上述のように作製した分散液を有効孔径が3μm以下のフィルター、より好ましくは1μm以下のフィルターにて濾過する操作を行ない、分散液を完成させるというものである。この方法によっても、粒子サイズの小さな(0.25μm以下、好ましくは0.2μm以下)チタニルフタロシアニン結晶のみを含む分散液を作製することができ、これを用いて作製した感光体を電子写真装置に搭載することによって、地汚れに対する余裕度を高めることが可能となり、感光体の高耐久化に対し有効となる。
分散液を濾過するフィルターに関しては、除去したい粗大粒子のサイズによって異なるものであるが、本発明者等の検討によれば、600dpi程度の解像度を必要とする画像形成装置で使用される感光体としては、最低でも3μm以上の粗大粒子の存在は画像に対して影響を及ぼす。したがって、有効孔径が3μm以下のフィルターを使用すべきであり、より好ましくは1μm以下の有効孔径を有するフィルターを使用することである。有効孔径に関しては、細かいほど粗大粒子の除去に効果があるものであるが、あまり細かすぎると、必要な顔料粒子そのものも濾過されてしまったり、また、濾過に時間がかかる、フィルターが目詰まりを起こす、ポンプ等を使用して送液する場合には負荷がかかりすぎる等の問題を生じるため、適切な有効孔径を有するフィルターを選択する必要がある。なお、ここで使用されるフィルターの材質は、当然のことながら濾過する分散液に使用される溶媒に対して耐性のあるものが使用される。
このような分散液の濾過操作を加えることによっても、粗大粒子を取り除くことが可能になり、ひいては分散液を使用した感光体で発生する地汚れを低減化することが出来る。上述のように、より細かいフィルターを使用するほど、その効果は大きなもの(確実なもの)になるが、場合によっては顔料粒子そのものが濾過されてしまう不具合が生じる恐れがある。このような場合には、先に述べた一次粒子を微細化したチタニルフタロシアニンの合成技術と併用することによって、それらの不具合を解消することが可能となり、得られる効果は非常に大きくなる。
即ち、i)微細化チタニルフタロシアニンを合成し、これを使用することにより、分散時間の短縮化・分散ストレスの低減化が図れ、分散における結晶転移の可能性が小さくなる。ii)分散によって残存する粗大粒子サイズが、微細化しない場合よりも小さいため、より小さなフィルターを使用することが可能になり、粗大粒子の除去効果がより確実なものとなる。また、除去されるチタニルフタロシアニン粒子量が低減し、濾過前後における分散液組成の変化が少なく、安定した製造が可能になる。iii)その結果、製造される感光体は安定して地汚れ耐性の高い電子写真感光体が製造されることになる。
続いて、本発明に用いられる電子写真感光体について、図面を用いて詳しく説明する。
図9は、本発明に用いられる電子写真感光体の構成例を示す断面図であり、導電性支持体上に、N−メトキシメチル化ナイロンを含有する下引き層、無機顔料及びバインダー樹脂を含有する下引き層、特定の結晶型を有し平均粒子サイズが0.25μm以下のチタニルフタロシアニン結晶を含有する感光層が順に積層された構成をとっている。
図10は、本発明に用いられる電子写真感光体の別の構成例を示す断面図であり、導電性支持体上に、N−メトキシメチル化ナイロンを含有する下引き層、無機顔料及びバインダー樹脂を含有する下引き層、特定の結晶型を有し平均粒子サイズが0.25μm以下のチタニルフタロシアニン結晶を含有する電荷発生層、電荷輸送物質を主成分とする電荷輸送層が順に積層された構成をとっている。
図11は、本発明に用いられる電子写真感光体の別の構成例を示す断面図であり、導電性支持体上に、N−メトキシメチル化ナイロンを含有する下引き層、無機顔料及びバインダー樹脂を含有する下引き層、特定の結晶型を有し平均粒子サイズが0.25μm以下のチタニルフタロシアニン結晶を含有する電荷発生層、電荷輸送物質を主成分とする電荷輸送層、さらに無機顔料を含有する電荷輸送層が順に積層された構成をとっている。
図12は、本発明に用いられる電子写真感光体の更に別の構成例を示す断面図であり、導電性支持体上に、無機顔料及びバインダー樹脂を含有する下引き層、N−メトキシメチル化ナイロンを含有する下引き層、特定の結晶型を有し平均粒子サイズが0.25μm以下のチタニルフタロシアニン結晶を含有する感光層が順に積層された構成をとっている。
図13は、本発明に用いられる電子写真感光体の更に別の構成例を示す断面図であり導電性支持体上に、無機顔料及びバインダー樹脂を含有する下引き層、N−メトキシメチル化ナイロンを含有する下引き層、特定の結晶型を有し平均粒子サイズが0.25μm以下のチタニルフタロシアニン結晶を含有する電荷発生層、電荷輸送物質を主成分とする電荷輸送層が順に積層された構成をとっている。
図14は、本発明に用いられる電子写真感光体の更に別の構成例を示す断面図であり、導電性支持体上に、無機顔料及びバインダー樹脂を含有する下引き層、N−メトキシメチル化ナイロンを含有する下引き層、特定の結晶型を有し平均粒子サイズが0.25μm以下のチタニルフタロシアニン結晶を含有する電荷発生層、電荷輸送物質を主成分とする電荷輸送層、さらに無機顔料を含有する電荷輸送層が順に積層された構成をとっている。
導電性支持体としては、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を、蒸着またはスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいは、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板およびそれらを、押し出し、引き抜きなどの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理した管などを使用することができる。また、特開昭52−36016号公報に開示されたエンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも導電性支持体として用いることができる。
この他、上記支持体上に導電性粉体を適当な結着樹脂に分散して塗工したものも、本発明の導電性支持体として用いることができる。この導電性粉体としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、またアルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などの金属粉、あるいは導電性酸化スズ、ITOなどの金属酸化物粉体などがあげられる。また、同時に用いられる結着樹脂には、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などの熱可塑性、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂があげられる。このような導電性層は、これらの導電性粉体と結着樹脂を適当な溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエンなどに分散して塗布することにより設けることができる。
更に、適当な円筒基体上にポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、テフロン(登録商標)などの素材に前記導電性粉体を含有させた熱収縮チューブによって導電性層を設けてなるものも、本発明の導電性支持体として良好に用いることができる。
次に、下引き層について述べる。本発明における下引き層は、複数の層が積層された構成となっており、下引き層の少なくとも一層にはN−メトキシメチル化ナイロンを含有している。
はじめに、N−メトキシメチル化ナイロンを含有した下引き層について説明する。この下引き層は、主に感光体の帯電時に電極(導電性支持体)に誘起される逆極性の電荷が、導電性支持体から感光層に注入されるのを防止する機能を有する層で、主に地汚れを抑制させることを目的とした層である。負帯電の場合には正孔注入防止、正帯電の場合には電子注入防止の機能を有する。電荷の注入を抑制する層としては、酸化アルミ層に代表される陽極酸化被膜、SiOに代表される無機系の絶縁層、特開平3−191361号公報に記載されるような金属酸化物のガラス質ネットワークから形成される層、特開平3−141363号公報に記載されるようなポリフォスファゼンからなる層、特開平3−101737号公報に記載されるようなアミノシラン反応生成物からなる層、この他には絶縁性のバインダー樹脂からなる層、硬化性のバインダー樹脂からなる層等が挙げられる。中でも湿式塗工法で形成可能な絶縁性のバインダー樹脂あるいは硬化性のバインダー樹脂から構成される層が良好に使用できる。さらに、これらの下引き層は、その上に無機顔料及びバインダー樹脂を含有する下引き層あるいは感光層等が積層されるため、これらを湿式塗工法で設ける場合には、塗工溶媒に対し不溶性を有し塗膜が侵されない材料あるいは構成からなることが肝要である。
ここに使用できるバインダー樹脂は、N−メトキシメチル化ナイロンである。本発明におけるN−メトキシメチル化ナイロンは、下記構造を含むポリアミド樹脂である。
これらのN−メトキシメチル化ナイロンは、アルコール可溶性の樹脂であって、ケトン系溶媒には不溶性を示し、また浸漬塗工においても均一な薄膜を形成することができ、塗工性に優れている。特に、この下引き層は残留電位上昇の影響を最小限にするために薄膜にする必要がある上、膜厚の均一性が要求されるため、塗工性は画質安定性において重要な意味を持っている。また、N−メトキシメチル化ナイロンは高い絶縁性を示し、導電性支持体から注入される電荷のブロッキング性に非常に優れているため、薄膜でも地汚れの抑制効果は非常に高い。さらに、残留電位の上昇が少なく、下引き層を複数積層してもその副作用が少ない。その上、一般にアルコール可溶性のポリアミド系樹脂は湿度依存性が大きく、それにより低湿環境下では抵抗が高くなり残留電位上昇が、高湿環境下では抵抗が低くなり、帯電低下が引き起こされ、環境依存性が大きいことが大きな課題であった。しかし、N−メトキシメチル化ナイロンは環境依存性が大幅に低減され、画像形成装置の使用環境が変化しても常に安定した画質を維持することが可能である。加えて、絶縁性樹脂を積層させる場合、その膜厚を増加させるに従い残留電位が著しく増加するのに対し、N−メトキシメチル化ナイロンを用いた場合には残留電位の膜厚依存性が小さく、そのため残留電位への影響を低減し、かつ高い地汚れ抑制効果を得ることが可能となる。
N−メトキシメチル化ナイロンにおけるメトキシメチル基の置換率は、特に限定されるものではないが、15mol%以上であることが好ましい。N−メトキシメチル化ナイロンを用いたことによる上記効果は、メトキシメチル化度によって影響され、メトキシメチル基の置換率がこれより低い場合には、湿度依存性が増加したり、アルコール溶液とした場合に白濁したりする傾向が見られ、塗工液の経時安定性がやや低下する場合がある。
本発明においては、N−メトキシメチル化ナイロンを単独で使用することも可能であるが、場合によっては架橋剤や酸触媒を添加することも可能であり、湿度依存性の更なる低減に対し大きな効果を得ることができる。架橋剤としては従来公知のメラミン樹脂、イソシアネート樹脂等市販されている材料を、触媒としては、酸性触媒が用いられ、酒石酸等の汎用触媒を用いることが可能である。但し、酸触媒の添加によって下引き層の絶縁性が低下し、地汚れ抑制効果が低減される恐れがあるため、添加量はごく微量にする必要がある。樹脂に対して5wt%以下が好ましい。また、場合によっては他のバインダー樹脂を混合させることも可能である。混合可能なバインダー樹脂としては、アルコール可溶性を示すポリアミド樹脂が用いられ、液の経時安定性が高まる場合がある。
また、導電性高分子や、帯電極性に合わせてアクセプター(ドナー)性の樹脂あるいは低分子化合物、その他各種添加剤を加えることも可能であり、残留電位の低減に対し有効となる場合がある。但し、上層を浸積塗工によって積層させる場合には、それらの添加剤が溶け出す恐れがあるため、添加量は最小限に留める必要がある。
塗工溶媒としては、N−メトキシメチル化ナイロンはアルコール可溶性を示すため、アルコール系溶媒、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等もしくはそれらの混合溶媒が用いられる。
N−メトキシメチル化ナイロンを含有する下引き層は、従来公知の浸漬塗工法、スプレーコート、リングコート、ビートコート、ノズルコート法などにより塗布される。塗布後は、加熱乾燥することによって膜形成が完了されるが、硬化させる場合には必要に応じて加熱あるいは光照射等の硬化処理を行うこともできる。
N−メトキシメチル化ナイロンを含有する下引き層の膜厚は、0.1μm以上、2.0μm未満、好ましくは0.3μm以上、1.0μm以下が適当である。この下引き層の膜厚がそれ以上に厚くなると、帯電と露光の繰返しによって、残留電位の上昇が発生しやすくなり、また、膜厚が薄すぎると地汚れ抑制効果が乏しくなる。
次に、本発明におけるN−メトキシメチル化ナイロンを含有する下引き層以外の下引き層について説明する。
N−メトキシメチル化ナイロンを含有する下引き層が、主に導電性支持体からの電荷の注入を抑制し地汚れを低減させる機能を有していたのに対し、N−メトキシメチル化ナイロンを含有する下引き層以外の下引き層は、主にモアレ防止と疲労による残留電位や暗減衰の低減、並びに感光層との接着性を高める機能を有する。したがって、N−メトキシメチル化ナイロンを含有する下引き層以外の下引き層には、少なくとも無機顔料とバインダー樹脂が含有されていることが好ましく、特に有効である。無機顔料とバインダー樹脂を含む下引き層を単層で形成した場合には、地汚れと残留電位の両立が難しく、残留電位を低減させようとすると、どうしても地汚れ抑制効果が不十分となるし、地汚れを抑制させようとすると、どうしても残留電位が高くなってしまう。一方、N−メトキシメチル化ナイロンを含有する下引き層を単層で形成した場合には、モアレを防止できないばかりでなく、膜厚の最適化を行っても著しい残留電位上昇と疲労による暗減衰の増加を引き起こす傾向が見られ、地汚れの抑制効果も大幅に低下する。すなわち、下引き層を単層で形成した場合には、例え地汚れ抑制や残留電位低減、環境依存性の低減に有効なN−メトキシメチル化ナイロンを用いたとしても、画質安定性や耐久性を高めることは不可能であり、下引き層を複数にし、その複数の下引き層のうち少なくとも一層にN−メトキシメチル化ナイロンを含有させることによって、地汚れ抑制効果が飛躍的に向上し、かつ残留電位や環境依存性等に与える副作用も低減し、高耐久化を実現することが可能となる。
前述のモアレとは、レーザー光のようなコヒーレント光による書き込みを行う際に感光層内部での光干渉によってモアレと呼ばれる干渉縞が画像に形成される画像欠陥の一種である。基本的に、入射されたレーザー光をこの下引き層によって光散乱させることによりモアレ発生を防止するため、屈折率の大きな材料を含有させる必要がある。モアレを防止する上では、バインダー樹脂に無機顔料を分散させた構成が最も有効である。使用される無機顔料としては、白色の顔料が有効に使用され、金属酸化物、例えば、酸化チタン、フッ化カルシウム、酸化カルシウム、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化錫などが良好に用いられる。
また、下引き層には、感光体表面に帯電される電荷と同極性の電荷を、感光層から導電性支持体側へ移動できる機能を有することが残留電位低減の観点から好ましく、無機顔料はその役割をも果たしている。例えば、負帯電型の感光体の場合、下引き層は電子伝導性を有することによって残留電位を大幅に低減できる。これらの無機顔料としては、前述の金属酸化物が有効に用いられるが、抵抗の低い金属酸化物を用いたり、バインダー樹脂に対する金属酸化物の添加比率を必要以上に増加させたりすることによって残留電位を低減させる効果が高くなる反面、地汚れ抑制効果が低下する恐れもある。従って、感光体における下引き層の層構成や膜厚によってそれらを使い分けたり、添加量を調整したりすることによって、地汚れ抑制と残留電位低減の両立を図ることが必要である。
本発明においては、地汚れ抑制、疲労による残留電位及び暗減衰の低減、モアレ防止、感光層の接着性等を両立するために、下引き層を機能分離し少なくとも二層を積層した構成を採用した。この場合、無機顔料及びバインダー樹脂を含む下引き層が、N−メトキシメチル化ナイロンを含有する下引き層の上層に形成されるか下層に形成されるかによって二つの層構成が考えられる。
前者の無機顔料及びバインダー樹脂を含有する下引き層が、導電性支持体上に形成されたN−メトキシメチル化ナイロンを含有する下引き層と感光層との間に形成される層構成では、高い地汚れ抑制効果を発揮しつつ、残留電位上昇や疲労による帯電劣化の影響が非常に少なく、静電安定性に優れている。また、感光層との接着性も向上し、感光体の高耐久化において有効性が高い。この場合、無機顔料としては特に導電性フィラーを用いなくても残留電位に与える影響が少なく、前述の金属酸化物の中でも酸化チタンが有効に使用できる。
一方、後者の無機顔料及びバインダー樹脂を含む下引き層が、導電性支持体とN−メトキシメチル化ナイロンを含有する下引き層との間に形成される場合には、地汚れの抑制効果は十分に得られるが、疲労による残留電位上昇や帯電劣化の影響が増加する。それを抑制するためには、無機顔料のバインダー樹脂に対する添加比率を大幅に高めるか、抵抗の低い無機顔料を添加することによって導電性を高めることによって可能となる。これに用いられる無機顔料としては、残留電位の点から酸化錫等の導電性金属酸化物が好ましい。
但し、無機顔料として、導電性金属酸化物を用いた場合には、残留電位を低減させる上では有効であるが、地汚れが増加する恐れがある。したがって、本発明においては、上記金属酸化物の中でも酸化チタンを用いることが画質安定性の面から最も好ましい。その場合、層構成としては、必然的に前者の無機顔料及びバインダー樹脂を含む下引き層が、導電性支持体上に形成されたN−メトキシメチル化ナイロンを含有する下引き層と感光層との間に形成される方が好ましい。これにより地汚れ、疲労による残留電位上昇、帯電低下等を同時に抑制することが可能となり、さらに導電性支持体の欠陥の隠蔽性や感光層の接着性についても両立が可能となり、高画質化並びに高耐久化に対して有効かつ有用である。なお、用いる酸化チタンとしては、残留電位上昇を軽減する上で、高純度の方がより好ましい。純度としては99.0%以上が好ましく、99.5%以上がより好ましい。
本発明の無機顔料の平均一次粒径としては、0.01μm〜0.8μmが好ましく、0.05μm〜0.5μmがより好ましい。但し、平均一次粒径が0.1μm以下の無機顔料のみを用いた場合には、地汚れの低減に対し有効であるが、モアレ防止効果が低下する傾向があり、一方、平均一次粒径が0.4μmよりも大きな金属酸化物のみを用いた場合には、モアレ防止効果に優れるものの、地汚れの抑制効果がやや低減する傾向が見られる。この場合、異なる平均一次粒径を有する無機顔料を混合して用いることによって、地汚れの低減とモアレの低減を両立できる場合があり、また残留電位の低減にも効果が見られる場合があり有効である。
本発明においては、平均一次粒径の異なる2種以上の無機顔料を混合させる場合、最も大きな平均一次粒径を有する無機顔料の平均一次粒径をD1、最も小さな平均一次粒径を有する無機顔料の平均一次粒径をD2としたとき、0.2<(D2/D1)≦0.5の関係を満たすことが好ましい。これにより、モアレ防止効果と地汚れ抑制効果を両立することが可能となる。また、この場合、最も小さな平均一次粒径を有する無機顔料の平均一次粒径D2は、0.2μm未満であることが好ましい。これにより、地汚れ抑制効果が十分に発揮される。
また、これらの平均一次粒径が異なる2種以上の無機顔料の混合比は、最も大きな平均一次粒径を有する無機顔料の含有量をT1、最も小さな平均一次粒径を有する無機顔料の含有量をT2としたとき、重量で0.2≦T2/(T1+T2)≦0.8の関係を満たすことが好ましい。これよりも小さい場合には、地汚れ抑制効果が低下する恐れがあり、これよりも大きいとモアレ防止効果が低下する恐れがある。
これらのN−メトキシメチル化ナイロンを含有する下引き層以外の下引き層に用いられるバインダー樹脂としては、従来下引き層に用いられてきた汎用樹脂を使用することができるが、この下引き層の上層に積層される際に用いられる溶媒に不溶性を示すバインダー樹脂が適している。これらバインダー樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、ポリアミド、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等が挙げられる。これらの樹脂の中でも、硬化型樹脂は、硬化されていることによって下引き層の上に感光層が塗工される際に有機溶剤による溶出の影響が極めて少ないことから、最も好ましく用いられる。上記硬化型樹脂の中でも、残留電位や環境安定性の面から、アルキッド−メラミン樹脂が好適である。
但し、この場合、主剤と硬化剤の比率が適当でないと、熱硬化による体積収縮が大きくなり、塗膜欠陥が発生しやすくなったり、残留電位が上昇したりする恐れがある。特に、下引き層の塗膜欠陥は、電荷のリークを引き起こし、黒斑点や地汚れの発生を促すことから、注意が必要である。また、硬化剤の含有比率が増加するに伴い、残留電位上昇が大きくなる傾向が見られる。本発明において、下引き層の樹脂としてアルキッド−メラミン樹脂を用いた場合には、アルキッド樹脂とメラミン樹脂の含有比率は重量比で1/1乃至4/1の範囲内であることが好ましい。これにより、塗膜欠陥の発生もなく、また残留電位上昇の影響を軽減することが可能となる。
無機顔料とバインダー樹脂の含有比率は、用いる無機顔料種や層構成、またN−メトキシメチル化ナイロンを含有する下引き層の膜厚によって調整する必要があるが、地汚れと残留電位の両立を図る上で、無機顔料とバインダー樹脂の容積比として1/1乃至3/1の範囲が好ましい。両者の容積比が1/1未満である場合には、モアレ防止能が低下するだけでなく、繰り返し使用における残留電位の上昇が増大する恐れがある。一方、容積比が3/1以上の領域ではバインダー樹脂における結着能が低下するだけでなく、塗膜表面性が悪化し、上層の成膜性に悪影響を与える場合がある。この影響は感光層が積層タイプで構成され、上層に電荷発生層のような薄層を形成する場合には、電荷発生層の膜厚の均一性が低下することにより局所的な帯電低下が起こり、地汚れ抑制効果が低下する恐れがある。更に、両者の容積比が3/1以上の場合には、無機顔料表面のバインダー樹脂による被覆率が低下し、電荷発生物質と直接接触することで、地汚れに対して悪影響を与える場合がある。
無機顔料とバインダー樹脂を含有する下引き層の膜厚は、用いる無機顔料種や層構成、N−メトキシメチル化ナイロンを含有する下引き層の膜厚によって調整する必要があるが、無機顔料に酸化チタンを用いた場合には地汚れと残留電位との両立を図る上で、1〜10μm、好ましくは2〜6μmが適当である。膜厚が1μm未満ではモアレ防止効果が低下したり、疲労による帯電低下が増加する場合があり、必要以上に厚くなると残留電位の上昇を引き起こす恐れがある。また、無機顔料に導電性の金属酸化物を用いた場合には、膜厚を厚くしても残留電位の影響は少なく、3〜20μm、好ましくは5〜15μmが適当である。下引き層の膜厚は、N−メトキシメチル化ナイロンを含有する下引き層よりも厚いことが好ましい。これにより、疲労による帯電低下の抑制が可能となり地汚れ抑制に有効となる。また、モアレ防止効果を高める上でも有効となる。
無機顔料は、溶剤及びバインダー樹脂と共に従来公知の方法、例えばボールミル、サンドミル、アトライラー等により分散することにより塗工液を得ることができる。バインダー樹脂は分散前に添加しても分散後に樹脂溶液として添加しても良い。また、必要に応じて硬化(架橋)に必要な薬剤、溶剤、添加剤、硬化促進剤等を加えることも可能であり有効である。これらの塗工液を用い、従来公知の方法、例えば浸漬塗工法、スプレーコート、リングコート、ビートコート、ノズルコート法などを用いて導電性基体上に形成される。塗布後は乾燥や加熱、必要に応じて光照射等の硬化処理により乾燥あるいは硬化させることにより作製できる。
次に感光層について説明する。
感光層は電荷発生物質と電荷輸送物質を含む単層構成の感光層でも構わないが、前述のように電荷発生層と電荷輸送層で構成される積層型の方が感度、耐久性、地汚れ抑制において優れた特性を示し、本発明においては良好に使用される。
本発明における電荷発生層には、電荷発生物質として、CuKα線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、7.3゜のピークと9.4゜のピークの間にピークを有さず、更に26.3°にピークが見られないチタニルフタロシアニン結晶が用いられる。さらに、この特定の結晶型を有するチタニルフタロシアンを結晶合成時あるいは分散濾過処理により、平均粒子サイズを0.25μm以下にすることによって達成される。上記のとおり、下引き層を複数化したり、N−メトキシメチル化ナイロンを含有する下引き層を積層させることにより地汚れの抑制効果は顕著に高まるが、これらの効果は導電性支持体からの電荷の注入を抑制したことによるものであり、その上に形成される電荷発生層の凝集や純度の低下によって引き起こされる地汚れに対しては別な対策が必要である。本発明は、下引き層と電荷発生層における双方の地汚れ要因を同時に抑制できたことにより、飛躍的な高耐久化が実現されたものである。
上記チタニルフタロシアニンの製造方法並びに一次粒子の平均粒子サイズを0.25μm以下にする方法は前述のとおりである。
電荷発生層は、前記チタニルフタロシアニンを必要に応じてバインダー樹脂とともに適当な溶剤中にボールミル、アトライター、サンドミル、超音波などを用いて分散し、これを導電性支持体上に塗布し、乾燥することにより形成される。
必要に応じて電荷発生層に用いられるバインダー樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミド、ポリビニルベンザール、ポリエステル、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリフェニレンオキシド、ポリアミド、ポリビニルピリジン、セルロース系樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。これらの中でも、ポリビニルブチラールが最も好ましく用いられる。バインダー樹脂の含有量は、電荷発生物質100重量部に対し0〜500重量部、好ましくは10〜300重量部が適当である。
電荷発生層の形成に用いられる溶剤としては、例えばイソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルセルソルブ、酢酸エチル、酢酸メチル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、モノクロロベンゼン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、リグロイン等が挙げられる。但し、電荷発生層を未架橋のN−メトキシメチル化ナイロンを含有する下引き層の上に積層する場合には、下引き層表面を溶解させる場合があるため、アルコール以外の溶媒を用いた方が好ましい。これらの中で安定に使用できる溶剤としては、メチルエチルケトンやアセトン等のケトン系溶剤が好ましい。
電荷発生層用塗布液の塗工法としては、浸漬塗工法、スプレーコート、ビートコート、ノズルコート、スピナーコート、リングコート等の方法を用いることができる。電荷発生層の膜厚は、0.01〜5μm程度が適当であり、好ましくは0.1〜2μmである。
また、電荷発生層には他の電荷発生物質や増感剤、分散剤、シリコーンオイル等の添加剤を混合させることも可能である。
電荷輸送層は、電荷輸送物質およびバインダー樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを電荷発生層上に塗布、乾燥することにより形成できる。また、必要により可塑剤、レベリング剤、酸化防止剤等を添加することもできる。
電荷輸送物質には、正孔輸送物質と電子輸送物質とがある。電子輸送物質としては、例えばクロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、ベンゾキノン誘導体等の電子受容性物質が挙げられる。
正孔輸送物質としては、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体、ポリ−γ−カルバゾリルエチルグルタメートおよびその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒド縮合物およびその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、ポリシラン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジェン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、エナミン誘導体等その他公知の材料が挙げられる。これらの電荷輸送物質は単独、または2種以上混合して用いられる。
バインダー樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性または熱硬化性樹脂が挙げられる。
また、電荷輸送層には電荷輸送物質としての機能とバインダー樹脂の機能を併せ持った高分子電荷輸送物質も良好に使用される。これら高分子電荷輸送物質から構成される電荷輸送層は耐摩耗性に優れたものである。高分子電荷輸送物質としては、公知の材料が使用できるが、特に、トリアリールアミン構造を主鎖および/または側鎖に含むポリカーボネートが良好に用いられる。中でも、式(I)〜(X)式で表わされる高分子電荷輸送物質が良好に用いられ、これらを以下に例示し、具体例を示す。
式中、R、R、Rはそれぞれ独立して置換もしくは無置換のアルキル基又はハロゲン原子、Rは水素原子又は置換もしくは無置換のアルキル基、R、Rは置換もしくは無置換のアリール基、o、p、qはそれぞれ独立して0〜4の整数、k、jは組成を表し、0.1≦k≦1、0≦j≦0.9、nは繰り返し単位数を表し5〜5000の整数である。Xは脂肪族の2価基、環状脂肪族の2価基、または下記一般式で表される2価基を表す。尚、(I)式は2つの共重合種が交互共重合体の形で記載されているが、ランダム共重合体でも構わない。
101、R102は各々独立して置換もしくは無置換のアルキル基、アリール基またはハロゲン原子を表す。l、mは0〜4の整数、Yは単結合、炭素原子数1〜12の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキレン基、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CO−、−CO−O−Z−O−CO−(式中Zは脂肪族の2価基を表す。)または、
(aは1〜20の整数、bは1〜2000の整数、R103、R104は置換または無置換のアルキル基又はアリール基を表す)を表す。ここで、R101とR102、R103とR104は、それぞれ同一でも異なってもよい。)
式中、R、Rは置換もしくは無置換のアリール基、Ar、Ar、Arは同一又は異なるアリレン基を表す。X、k、jおよびnは、(I)式の場合と同じである。
尚、(II)式は2つの共重合種が交互共重合体の形で記載されているが、ランダム共重合体でも構わない。
式中、R、R10は置換もしくは無置換のアリール基、Ar、Ar、Arは同一又は異なるアリレン基を表す。X、k、jおよびnは、(I)式の場合と同じである。
尚、(III)式は2つの共重合種が交互共重合体の形で記載されているが、ランダム共重合体でも構わない。
式中、R11、R12は置換もしくは無置換のアリール基、Ar、Ar、Arは同一又は異なるアリレン基、pは1〜5の整数を表す。X、k、jおよびnは、(I)式の場合と同じである。尚、(IV)式は2つの共重合種が交互共重合体の形で記載されているが、ランダム共重合体でも構わない。
式中、R13、R14は置換もしくは無置換のアリール基、Ar10、Ar11、Ar12は同一又は異なるアリレン基、X、Xは置換もしくは無置換のエチレン基、又は置換もしくは無置換のビニレン基を表す。X、k、jおよびnは、(I)式の場合と同じである。尚、(V)式は2つの共重合種が交互共重合体の形で記載されているが、ランダム共重合体でも構わない。
式中、R15、R16、R17、R18は置換もしくは無置換のアリール基、Ar13、Ar14、Ar15、Ar16は同一又は異なるアリレン基、Y、Y、Yは単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表し同一であっても異なってもよい。X、k、jおよびnは、(I)式の場合と同じである。尚、(VI)式は2つの共重合種が交互共重合体の形で記載されているが、ランダム共重合体でも構わない。
式中、R19、R20は水素原子、置換もしくは無置換のアリール基を表し、R19とR20は環を形成していてもよい。Ar17、Ar18、Ar19は同一又は異なるアリレン基を表す。X、k、jおよびnは、(I)式の場合と同じである。尚、(VII)式は2つの共重合種が交互共重合体の形で記載されているが、ランダム共重合体でも構わない。
式中、R21は置換もしくは無置換のアリール基、Ar20、Ar21、Ar22、Ar23は同一又は異なるアリレン基を表す。X、k、jおよびnは、(I)式の場合と同じである。尚、(VIII)式は2つの共重合種が交互共重合体の形で記載されているが、ランダム共重合体でも構わない。
式中、R22、R23、R24、R25は置換もしくは無置換のアリール基、Ar24、Ar25、Ar26、Ar27、Ar28は同一又は異なるアリレン基を表す。X、k、jおよびnは、(I)式の場合と同じである。尚、(IX)式は2つの共重合種が交互共重合体の形で記載されているが、ランダム共重合体でも構わない。
式中、R26、R27は置換もしくは無置換のアリール基、Ar29、Ar30、Ar31は同一又は異なるアリレン基を表す。X、k、jおよびnは、(I)式の場合と同じである。尚、(X)式は2つの共重合種が交互共重合体の形で記載されているが、ランダム共重合体でも構わない。
電荷輸送物質の量はバインダー樹脂100重量部に対し、20〜300重量部、好ましくは40〜150重量部が適当である。また、電荷輸送層の膜厚は5〜100μmが好ましく、10〜40μm程度とすることがより好ましい。
ここで用いられる溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトンなどが用いられる。中でも、環境への負荷低減等の意図から、非ハロゲン系溶媒の使用は望ましく、具体的にはテトラヒドロフランやジオキソラン、ジオキサン等の環状エーテルやトルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、及びそれらの誘導体が地汚れ抑制効果の面でも良好に用いられる。
本発明において電荷輸送層中に可塑剤やレベリング剤を添加してもよい。可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレートなど一般の樹脂の可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量は、バインダー樹脂に対して0〜30重量%程度が適当である。レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなどのシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいは、オリゴマーが使用され、その使用量はバインダー樹脂に対して、0〜1重量%が適当である。
これまでは、感光層が積層構成の場合について述べたが、本発明においては感光層が単層構成でも構わない。感光層を単層構成とするためには、少なくとも上述の電荷発生物質とバインダー樹脂を含有する単一層を設けることで感光層は構成され、バインダー樹脂としては電荷発生層や電荷輸送層の説明に挙げられた材料が良好に使用される。また、単層感光層には電荷輸送物質を併用することで、高い光感度、高い電荷輸送性、低い残留電位が発現され、良好に使用できる。この際、使用する電荷輸送物質は、感光体表面に帯電させる極性に応じて、正孔輸送物質、電子輸送物質のいずれかが選択される。更に、上述した高分子電荷輸送物質もバインダー樹脂と電荷輸送物質の機能を併せ持つため、単層感光層には良好に使用される。
本発明の電子写真感光体には、感光体の耐摩耗性を抑制するために、感光体の最表面に無機顔料を含有した電荷輸送層を形成してもよい。感光体の最表面に無機顔料が含有されていることにより、感光体の耐摩耗性が向上し、繰り返し使用されても感光層の膜厚変化が低減でき、それにより電界強度の変化も低減できるために、地汚れの増加を少なくすることができる。
無機顔料を含有した電荷輸送層には、少なくとも無機顔料、バインダー樹脂、電荷輸送物質が含有される。
無機顔料としては一般に広く用いられている金属酸化物が好適に用いられる。例えば、酸化チタン、酸化錫、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス、アンチモンをドープした酸化錫、錫をド−プした酸化インジウムなどが挙げられる。これらの中でもアルミナが感光体の耐摩耗性に優れ、また画像流れ等の影響が少ない点から有効である。画像流れは、地汚れの黒ポチ一つの大きさを増大させるために、地汚れがより顕在化されやすくなる。したがって、地汚れを顕在化させないようにするためにも、画像流れの影響が少ない高抵抗金属酸化物が好ましく、α−アルミナは有効かつ有用である。無機顔料の含有量としては、使用する無機顔料種、また電子写真プロセス条件によっても異なるが、表面に形成した層の全固形分に対し5重量%以上50重量%以下、好ましくは10重量%以上30重量%以下が適当である。無機顔料をそれ以上含有させると残留電位の上昇を引き起こし、また画像流れ等の影響が増加し、添加量がそれ以下の場合には感光体の耐摩耗性に効果が得られないだけでなく、感光体表面に傷が形成されやすくなり、画像欠陥が発生しやすくなる。また、使用する無機顔料の一次粒子の平均粒径は、0.01μm〜2μmの範囲が良好に使用され、好ましくは0.1μm〜0.9μmの範囲、さらに好ましくは0.2〜0.5μmの範囲である。平均粒径がそれより小さすぎると耐摩耗性が十分に発揮されず、大きすぎると塗膜の表面性が悪くなったり、フィルミングや異物付着等の影響が増加する。なお、本発明における無機顔料の平均粒径とは、特別な記載のない限り体積平均粒径を示し、超遠心式自動粒度分布測定装置:CAPA−700(堀場製作所製)により求めたものである。この際、累積分布の50%に相当する粒子径(Median系)として算出されたものである。
また、これらの無機顔料は、少なくとも一種の表面処理剤で表面処理させることが可能であり、そうすることが無機顔料の分散性の面から好ましい。無機顔料の分散性の低下は残留電位の上昇だけでなく、塗膜の透明性の低下や塗膜欠陥の発生、さらには耐摩耗性の低下をも引き起こすため、高耐久化あるいは高画質化を妨げる大きな問題に発展する恐れがある。表面処理剤としては、従来用いられている表面処理剤すべてを使用することができる。例えば、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコアルミネート系カップリング剤、高級脂肪酸等、あるいはこれらとシランカップリング剤との混合処理や、Al、TiO、ZrO、シリコーン、ステアリン酸アルミニウム等が用いられ、あるいはそれらを混合して用いることも可能である。表面処理量については、用いる無機顔料の平均一次粒径によって異なるが、3〜30wt%が適しており、5〜20wt%がより好ましい。表面処理量がこれよりも少ないと無機顔料の分散効果が得られず、また多すぎると残留電位の著しい上昇を引き起こす。これらの無機顔料は、適当な分散機、例えばボールミル、アトライター、サンドミル、超音波などを用いて分散することができる。
また、無機顔料を有する電荷輸送層に用いられるバインダー樹脂としては、前述の電荷輸送層に用いられるバインダー樹脂を使用することができる。その中でも、ポリカーボネート、ポリアリレートは耐摩耗性あるいは解像度の面から好適に用いられる。また、前述の高分子電荷輸送物質を用いると材料によっては耐摩耗性が顕著に向上し、地汚れ耐久性の向上に対して有効となる場合がある。
さらに、無機顔料を有する電荷輸送層には、電荷を輸送する機能を持たせるために電荷輸送物質が含有される。電荷輸送物質に関しては前述の電荷輸送層に含有される低分子の電荷輸送物質を用いることができる。バインダー樹脂として高分子電荷輸送物質を用いた場合には、低分子電荷輸送物質は必ずしも含有する必要はない。
また、本発明においては、分散剤や可塑剤、レベリング剤等の各種添加剤を添加することも可能であり、有効である。分散剤は、無機顔料の分散性を高める効果を有し、これにより解像度の向上が実現される。また、分散剤は無機顔料の一部に吸着することにより表面改質を行うため、分散剤の種類によっては、無機顔料表面への電荷トラップを低減し、残留電位の低減に大きな効果を発揮するものもある。このような分散剤としては高酸価の分散剤が有効であり、BYKケミー社製の「BYK−P104」が好適に用いられ、特に無機顔料としてαアルミナを用いた場合には、分散性や残留電位低減効果が非常に高くなる。可塑剤やレベリング剤としては、前記の電荷輸送層に含有される可塑剤やレベリング剤を用いることができる。
無機顔料を含有する電荷輸送層の形成法としては、通常の塗布法が採用されるが、最も好ましいのはスプレーコートであり、これにより無機顔料の分散性が高まる効果が得られる。なお、無機顔料を含有する電荷輸送層の膜厚は0.1〜10μm程度が適当であり、好ましくは1μm〜6μmである。
本発明においては、耐環境性の改善のため、とりわけ、感度低下及び残留電位の上昇を防止する目的で、電荷輸送層、電荷発生層、下引き層及び中間層、保護層等の各層に、酸化防止剤を添加することができる。
このような酸化防止剤の具体例として、以下のものを挙げることができる。
(フェノール系化合物)
2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]クリコ−ルエステル、トコフェロール類など。
(パラフェニレンジアミン類)
N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジ−t−ブチル−p−フェニレンジアミンなど。
(ハイドロキノン類)
2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノンなど。
(有機硫黄化合物類)
ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3’−チオジプロピオネートなど。
(有機燐化合物類)
トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィンなど。
これら化合物は、ゴム、プラスチック、油脂類などの酸化防止剤として知られており、市販品を容易に入手できる。本発明における酸化防止剤の添加量は、添加する層の総重量に対して0.01〜10重量%である。
続いて、本発明の画像形成装置を図面を用いて詳しく説明する。
図15は、本発明の画像形成プロセスおよび画像形成装置を説明するための概略図であり、下記に示すような変形例も本発明の範疇に属するものである。
図15において、感光体1は導電性支持体上に少なくとも複数の下引き層を有し、かつ下引き層の少なくとも一層にはN−メトキシメチル化ナイロンを含有しており、さらに感光層にはCuKα線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、7.3°のピークと9.4゜のピークの間にピークを有さず、更に26.3°にピークを有さず、平均一次粒子サイズが0.25μm以下であるチタニルフタロシアニン結晶を含み、複数の下引層の少なくとも一層にはN−メトキシメチル化ナイロンを含有してなる。感光体1はドラム状の形状を示しているが、シート状、エンドレスベルト状のものであっても良い。帯電ローラ3、転写前チャージャ7、転写チャージャ10、分離チャージャ11、クリーニング前チャージャ13には、コロトロン、スコロトロン、固体帯電器(ソリッド・ステート・チャージャー)、帯電ローラ、転写ローラを始めとする公知の手段が用いられる。
帯電方式としては、従来公知のスコロトロンに代表されるコロナ放電方式、帯電ローラや帯電ブラシを感光体に接触させることによる接触帯電方式、画像形成領域において感光体と帯電部材とが200μm以下の空隙(ギャップ)を有するようにした近接配置方式(図16参照)が好適に用いられる。図16において、21はギャップ形成部材であり、22は金属シャフトであり、23は画像形成領域であり、24は非画像形成領域である。このような帯電方式は、高電圧を印加するため感光体の絶縁破壊を生じやすいという欠点を有しているが、本発明に用いられる感光体は、下引き層を複数有し、更に感光層には電荷発生物質の粗大粒子が含有されていないため、感光体の耐圧性が極めて高い。このため、感光体の絶縁破壊に対する耐性が高く、絶縁破壊による画質劣化を抑制し、感光体の更なる高寿命化が実現される。また、電圧印加時、直流電圧に交流電圧を重畳させることも可能であり、帯電ムラの抑制に有効となる。
このような帯電部材により感光体に帯電が施されるが、通常の画像形成装置においては、感光体に起因する地汚れの影響が増加することから、感光体にかかる電界強度はより低く設定することが好ましい。地汚れの面から好ましい電界強度は40V/μm以下であり、30V/μm以下がより好ましい。これは、地汚れの発生が電界強度に依存し、電界強度が上昇すると地汚れ発生確率が上昇するためである。しかしながら、感光体にかかる電界強度を低下させることは、光キャリア発生効率を低下させ、光感度を低下させる。また、感光体表面と導電性支持体との間にかかる電界強度が低下するため、感光層で生成する光キャリアの直進性が低下し、クローン反発による拡散が大きくなり、結果として解像度の低下を生じる。一方、本発明の電子写真感光体を用いることにより、地汚れ発生確率を極端に低下させることが出来るため、電界強度を必要以上に低下させる必要はなくなり、40V/μm以上の電界強度下でも使用できるようになる。このため、感光体光減衰におけるゲイン量を十分に確保でき、後述の現像(ポテンシャル)に対しても大きな余裕度を生み出し、解像度も低下させることなく現像が出来るようになる。
画像露光部5には、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの高輝度を確保できる光源が使用される。
除電ランプ2等の光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を用いることができる。そして、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。これらの光源のうち、発光ダイオード、及び半導体レーザーは照射エネルギーが高く、また600〜800nmの長波長光を有するため、前述の電荷発生材料であるフタロシアニン顔料が高感度を示すことから良好に使用される。かかる光源等は、図15に示される工程の他に光照射を併用した転写工程、除電工程、クリーニング工程、あるいは前露光などの工程を設けることにより、感光体に光が照射される。
現像ユニット6により感光体1上に現像されたトナーは、転写紙9に転写されるが、全部が転写されるわけではなく、感光体1上に残存するトナーも生ずる。このようなトナーは、ファーブラシ14およびクリーニングブレード15により、感光体より除去される。クリーニングは、クリーニングブラシだけで行なわれることもあり、クリーニングブラシにはファーブラシ、マグファーブラシを始めとする公知のものが用いられる。
電子写真感光体に正(負)帯電を施し、画像露光を行なうと、感光体表面上には正(負)の静電潜像が形成される。これを負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られ、また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。かかる現像手段には、公知の方法が適用されるし、また、除電手段にも公知の方法が用いられる。
以上の図示した電子写真プロセスは、本発明における実施形態を例示するものであって、もちろん他の実施形態も可能である。
以上に示すような画像形成手段は、複写装置、ファクシミリ、プリンター内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形でそれら装置内に組み込まれてもよい。プロセスカートリッジとは、感光体を内蔵し、他に帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段、除電手段等を含んだ1つの装置(部品)である。プロセスカートリッジの形状等は多く挙げられるが、一般的な例として、図17に示すものが挙げられる。図17において、31は感光体であり、33は帯電手段であり、34はクリーニング手段であり、35は露光手段であり、36は現像手段であり、37は転写手段である。感光体31は導電性支持体上に少なくとも複数の下引き層が形成され、そのうち少なくとも一層にはN−メトキシメチル化ナイロンが含有されており、感光層にはCuKα線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、7.3°のピークと9.4゜のピークの間にピークを有さず、更に26.3°にピークを有さず、平均一次粒子サイズが0.25μm以下であるチタニルフタロシアニン結晶を含有してなる。
図18は、本発明のタンデム方式のフルカラー電子写真装置を説明するための概略図であり、下記するような変形例も本発明の範疇に属するものである。
図18において、符号1C,1M,1Y,1Kはドラム状の感光体であり、感光体は導電性支持体上に少なくとも複数の下引き層が形成され、そのうち少なくとも一層にN−メトキシメチル化ナイロンが含有されており、感光層にはCuKα線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、7.3°のピークと9.4゜のピークの間にピークを有さず、更に26.3°にピークを有さず、平均一次粒子サイズが0.25μm以下であるチタニルフタロシアニン結晶を含有してなる。
この感光体1C,1M,1Y,1Kは図中の矢印方向に回転し、その周りに少なくとも回転順に帯電部材3C,3M,3Y,3K、現像部材6C,6M,6Y,6K、クリーニング部材15C,15M,15Y,15Kが配置されている。帯電部材3C,3M,3Y,3Kは、感光体表面を均一に帯電するための帯電装置を構成する帯電部材である。この帯電部材3C,3M,3Y,3Kと現像部材6C,6M,6Y,6Kの間の感光体の外側より、図示しない露光部材からのレーザー光5C,5M,5Y,5Kが照射され、感光体1C,1M,1Y,1Kに静電潜像が形成されるようになっている。そして、このような感光体1C,1M,1Y,1Kを中心とした4つの画像形成要素46C,46M,46Y,46Kが、転写材搬送手段である転写搬送ベルト40に沿って並置されている。転写搬送ベルト40は各画像形成要素46C,46M,46Y,46Kの現像部材6C,6M,6Y,6Kとクリーニング部材15C,15M,15Y,15Kの間で感光体1C,1M,1Y,1Kに当接しており、転写搬送ベルト40の感光体側の裏側に当たる面(裏面)には転写バイアスを印加するための転写ブラシ41C,41M,41Y,41Kが配置されている。各画像形成要素46C,46M,46Y,46Kは現像装置内部のトナーの色が異なることであり、その他は全て同様の構成となっている。
図18に示す構成のカラー電子写真装置において、画像形成動作は次のようにして行われる。まず、各画像形成要素46C,46M,46Y,46Kにおいて、感光体1C,1M,1Y,1Kが矢印方向(感光体と連れ周り方向)に回転する帯電部材3C,3M,3Y,3Kにより帯電され、次に感光体の外側に配置された露光部(図示しない)でレーザー光5C,5M,5Y,5Kにより、作成する各色の画像に対応した静電潜像が形成される。次に現像部材6C,6M,6Y,6Kにより潜像を現像してトナー像が形成される。現像部材6C,6M,6Y,6Kは、それぞれC(シアン),M(マゼンタ),Y(イエロー),K(ブラック)のトナーで現像を行う現像部材で、4つの感光体1C,1M,1Y,1K上で作られた各色のトナー像は転写紙上で重ねられる。転写紙9は給紙コロ48によりトレイから送り出され、一対のレジストローラ49で一旦停止し、上記感光体上への画像形成とタイミングを合わせて転写搬送ベルト40に送られる。転写搬送ベルト40上に保持された転写紙9は搬送されて、各感光体1C,1M,1Y,1Kとの当接位置(転写部)で各色トナー像の転写が行われる。感光体上のトナー像は、転写ブラシ41C,41M,41Y,41Kに印加された転写バイアスと感光体1C,1M,1Y,1Kとの電位差から形成される電界により、転写紙9上に転写される。そして4つの転写部を通過して4色のトナー像が重ねられた記録紙9は定着装置42に搬送され、トナーが定着されて、図示しない排紙部に排紙される。また、転写部で転写されずに各感光体1C,1M,1Y,1K上に残った残留トナーは、クリーニング装置15C,15M,15Y,15Kで回収される。尚、図18の例では画像形成要素は転写紙搬送方向上流側から下流側に向けて、C(シアン),M(マゼンタ),Y(イエロー),K(ブラック)の色の順で並んでいるが、この順番に限るものでは無く、色順は任意に設定されるものである。また、黒色のみの原稿を作成する際には、黒色以外の画像形成要素(46C,46M,46Y)が停止するような機構を設けることは本発明に特に有効に利用できる。更に、図18において帯電部材は感光体と当接しているが、図16に示したような帯電機構にすることにより、両者の間に適当なギャップ(10〜200μm程度)を設けてやることにより、両者の摩耗量が低減できると共に、帯電部材へのトナーフィルミングが少なくて済み良好に使用できる。
以上に示すような画像形成手段は、複写装置、ファクシミリ、プリンター内に固定して組み込まれていてもよいが、各々の電子写真要素はプロセスカートリッジの形でそれら装置内に組み込まれてもよい。プロセスカートリッジとは、感光体を内蔵し、他に帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段、除電手段等を含んだ1つの装置(部品)である。
以上、詳細かつ具体的な発明から明らかなように、本発明によれば、地汚れ等の異常画像の発生が少なく、異なる環境においても安定した画像を得ることが可能となり、さらに高速で繰り返し使用した場合でも、安定な画像を維持することが可能な高耐久かつ高安定な画像出力を可能とする電子写真感光体が提供される。具体的には、繰り返し使用における地汚れ発生の低減、残留電位の低減、環境依存性の低減、モアレの抑制等を可能にした高耐久な電子写真感光体が提供される。
また、上記感光体を用い、繰り返し画像形成を行っても異常画像の抑制効果が維持され、経時で安定な画像出力が可能な画像形成装置が提供される。具体的には、地汚れや画像濃度低下といったネガ・ポジ現像使用時の最大の課題を解決し、高耐久で、高速で、かつ高安定な画像出力が可能な画像形成装置が提供される。更には、上記感光体を用い、高耐久で取扱いが良好な画像形成装置用プロセスカートリッジが提供される。
以下、本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明が実施例により制約を受けるものではない。なお、部はすべて重量部である。
まず、本発明に用いた電荷発生材料の比較合成例及び本発明の合成例について述べる。
(比較合成例1)
特開2001−19871号公報に準じて、顔料を作製した。すなわち、1,3−ジイミノイソインドリン29.2部とスルホラン200部を混合し、窒素気流下でチタニウムテトラブトキシド20.4部を滴下する。滴下終了後、徐々に180℃まで昇温し、反応温度を170℃〜180℃の間に保ちながら5時間撹拌して反応を行なった。反応終了後、放冷した後析出物を濾過し、クロロホルムで粉体が青色になるまで洗浄し、つぎにメタノールで数回洗浄し、さらに80℃の熱水で数回洗浄した後乾燥し、粗チタニルフタロシアニンを得た。粗チタニルフタロシアニンを20倍量の濃硫酸に溶解し、100倍量の氷水に撹拌しながら滴下し、析出した結晶をろ過、ついで洗浄液が中性になるまで水洗いを繰り返し(洗浄後のイオン交換水のpH値は6.8であった)、チタニルフタロシアニン顔料のウェットケーキ(水ペースト)を得た。得られたこのウェットケーキ(水ペースト)40部をテトラヒドロフラン200部に投入し、4時間攪拌を行なった後、濾過を行ない、乾燥して、チタニルフタロシアニン粉末を得た。これを顔料1とする。上記ウェットケーキの固形分濃度は、15wt%であった。結晶変換溶媒のウェットケーキに対する重量比は33倍である。尚、比較合成例1の原材料には、ハロゲン化物を使用していない。
得られたチタニルフタロシアニン粉末を、下記の条件によりX線回折スペクトル測定したところ、Cu−Kαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θが27.2±0.2°に最大ピークと最低角7.3±0.2°にピークを有し、かつ7.3°のピークと9.4°のピークの間にピークを有さず、かつ26.3°にピークを有さないチタニルフタロシアニン粉末を得た。その結果を図19に示す。
また、比較合成例1で得られた水ペーストの一部を80℃の減圧下(5mmHg)で、2日間乾燥して、低結晶性チタニルフタロシアニン粉末を得た。水ペーストの乾燥粉末のX線回折スペクトルを図20に示す。
(X線回折スペクトル測定条件)
X線管球:Cu
電圧:50kV
電流:30mA
走査速度:2°/分
走査範囲:3°〜40°
時定数:2秒
(比較合成例2)
特開平1―299874号(特許第2512081号)公報の実施例1に記載の方法に準じて、顔料を作製した。すなわち、先の比較合成例1で作製したウェットケーキを乾燥し、乾燥物1部をポリエチレングリコール50部に加え、100部のガラスビーズと共に、サンドミルを行なった。結晶転移後、希硫酸、水酸化アンモニウム水溶液で順次洗浄し、乾燥して顔料を得た。これを顔料2とする。比較合成例2の原材料には、ハロゲン化物を使用していない。
(比較合成例3)
特開平3―269064号(特許第2584682号)公報の製造例1に記載の方法に準じて、顔料を作製した。すなわち、先の比較合成例1で作製したウェットケーキを乾燥し、乾燥物1部をイオン交換水10部とモノクロルベンゼン1部の混合溶媒中で1時間撹拌(50℃)した後、メタノールとイオン交換水で洗浄し、乾燥して顔料を得た。これを顔料3とする。比較合成例3の原材料には、ハロゲン化物を使用していない。
(比較合成例4)
特開平2―8256号(特公平7―91486号)公報の製造例に記載の方法に準じて、顔料を作製した。すなわち、フタロジニトリル9.8部と1−クロロナフタレン75部を撹拌混合し、窒素気流下で四塩化チタン2.2部を滴下する。滴下終了後、徐々に200℃まで昇温し、反応温度を200℃〜220℃の間に保ちながら3時間撹拌して反応を行なった。反応終了後、放冷し130℃になったところ熱時ろ過し、次いで1−クロロナフタレンで粉体が青色になるまで洗浄、次にメタノールで数回洗浄し、さらに80℃の熱水で数回洗浄した後、乾燥し顔料を得た。これを顔料4とする。比較合成例4の原材料には、ハロゲン化物を使用している。
(比較合成例5)
特開昭64―17066号(特公平7―97221号)公報の合成例1に記載の方法に準じて、顔料を作製した。すなわち、α型TiOPc5部を食塩10部およびアセトフェノン5部と共にサンドグラインダーにて100℃にて10時間結晶変換処理を行なった。これをイオン交換水及びメタノールで洗浄し、希硫酸水溶液で精製し、イオン交換水で酸分がなくなるまで洗浄した後、乾燥して顔料を得た。これを顔料5とする。比較合成例5の原材料には、ハロゲン化物を使用している。
(比較合成例6)
特開平11―5919号(特許第3003664号)公報の実施例1に記載の方法に準じて、顔料を作製した。すなわち、O−フタロジニトリル20.4部、四塩化チタン7.6部をキノリン50部中で200℃にて2時間加熱反応後、水蒸気蒸留で溶媒を除き、2%塩酸、続いて2%水酸化ナトリウム水溶液で精製し、メタノール、N,N−ジメチルホルムアミドで洗浄後、乾燥し、チタニルフタロシアニンを得た。このチタニルフタロシアニン2部を5℃の98%硫酸40部の中に少しずつ溶解し、その混合物を約1時間、5℃以下の温度を保ちながら攪拌する。続いて硫酸溶液を高速攪拌した400部の氷水中に、ゆっくりと注入し、析出した結晶を濾過する。結晶を酸が残量しなくなるまで蒸留水で洗浄し、ウエットケーキを得る。そのケーキをTHF100部中で約5時間攪拌を行ない、ろ過、THFによる洗浄を行ない乾燥後、顔料を得た。これを顔料6とする。比較合成例6の原材料には、ハロゲン化物を使用している。
(比較合成例7)
特開平3―255456号(特許第3005052号)公報の合成例2に記載の方法に準じて、顔料を作製した。すなわち、先の比較合成例1で作製したウェットケーキ10部を塩化ナトリウム15部とジエチレングリコール7部に混合し、80℃の加熱下で自動乳鉢により60時間ミリング処理を行なった。次に、この処理品に含まれる塩化ナトリウムとジエチレングリコールを完全に除去するために充分な水洗を行なった。これを減圧乾燥した後にシクロヘキサノン200部と直径1mmのガラスビーズを加えて、30分間サンドミルにより処理を行ない、顔料を得た。これを顔料7とする。比較合成例7の原材料には、ハロゲン化物を使用していない。
(比較合成例8)
特開平8―110649号公報のチタニルフタロシアニン結晶体の製造方法に準じて、顔料を作製した。即ち、1,3−ジイミノイソインドリン58部、テトラブトキシチタン51部をα−クロロナフタレン300部中で210℃にて5時間反応後、α−クロロナフタレン、ジメチルホルムアミド(DMF)の順で洗浄した。その後、熱DMF、熱水、メタノールで洗浄、乾燥して50部のチタニルフタロシアニンを得た。チタニルフタロシアニン4部を0℃に冷却した濃硫酸400部中に加え、引き続き0℃、1時間撹拌した。フタロシアニンが完全に溶解したことを確認した後、0℃に冷却した水800部/トルエン800部混合液中に添加した。室温で2時間撹拌後、析出したフタロシアニン結晶体を混合液より濾別し、メタノール、水の順で洗浄した。洗浄水の中性を確認した後、洗浄水よりフタロシアニン結晶体を濾別し、乾燥して、2.9部のチタニルフタロシアニン結晶体を得た。これを顔料8とする。比較合成例8の原材料には、ハロゲン化物を使用していない。
(合成例1)
比較合成例1の方法に従って、チタニルフタロシアニン顔料の水ペーストを合成し、次のように結晶変換を行ない、比較合成例1よりも一次粒子の小さなフタロシアニン結晶を得た。
比較合成例1で得られた結晶変換前の水ペースト60部にテトラヒドロフラン400部を加え、室温下でホモミキサー(ケニス、MARKIIfモデル)により強烈に撹拌(2000rpm)し、ペーストの濃紺色の色が淡い青色に変化したら(撹拌開始後20分)、撹拌を停止し、直ちに減圧濾過を行なった。濾過装置上で得られた結晶をテトラヒドロフランで洗浄し、顔料のウェットケーキを得た。これを減圧下(5mmHg)、70℃で2日間乾燥して、チタニルフタロシアニン結晶8.5部を得た。これを顔料9とする。合成例1の原材料には、ハロゲン化物を使用していない。上記ウェットケーキの固形分濃度は、15wt%であった。結晶変換溶媒のウェットケーキに対する重量比は44倍である。
比較合成例1で作製された結晶変換前チタニルフタロシアニン(水ペースト)の一部をイオン交換水でおよそ1重量%になるように希釈し、表面を導電性処理した銅製のネットですくい取り、チタニルフタロシアニンの粒子サイズを透過型電子顕微鏡(TEM、日立:H−9000NAR)にて、75000倍の倍率で観察を行なった。平均粒子サイズは、以下のように求めた。
上述のように観察されたTEM像をTEM写真として撮影し、映し出されたチタニルフタロシアニン粒子(針状に近い形)を30個任意に選び出し、それぞれの長径の大きさを測定する。測定した30個体の長径の算術平均を求めて、平均粒子サイズとした。
以上の方法により求められた比較合成例1における水ペースト中の平均粒子サイズは、0.06μmであった。
また、比較合成例1及び合成例1における濾過直前の結晶変換後チタニルフタロシアニン結晶を、テトラヒドロフランでおよそ1重量%になるように希釈し、上の方法と同様に観察を行なった。上記のようにして求めた平均粒子サイズを表1に示す。なお、比較合成例1及び合成例1で作製されたチタニルフタロシアニン結晶は、必ずしも全ての結晶の形が同一ではなかった(三角形に近い形、四角形に近い形など)。このため、結晶の最も大きな対角線の長さを長径として、計算を行なった。
表1から、比較合成例1で作製された顔料1は、平均粒子サイズが大きいだけでなく、粗大粒子を含んでいる。これに対し、合成例1で作製された顔料9は、平均粒子サイズが小さいだけでなく、個々の1次粒子の大きさもほぼ揃っていることが分かる。
以上の比較合成例2〜8で作製した顔料は、前述と同様の方法でX線回折スペクトルを測定し、それぞれの公報に記載のスペクトルと同様であることを確認した。また、合成例1で作製した顔料のX線回折スペクトルは、比較合成例1で作製した顔料のスペクトルと一致した。表2にそれぞれのX線回折スペクトルと比較合成例1で得られた顔料におけるX線回折スペクトルのピーク位置の特徴を示す。
次に、前述のようにして合成した電荷発生物質を用いた電荷発生層塗工用の分散液の作製方法について説明する。
(分散液作製例1)
比較合成例1で作製した顔料1を下記組成の処方にて、下記に示す条件にて分散を行い電荷発生層用塗工液として、分散液を作製した。
チタニルフタロシアニン顔料(顔料1) 15部
ポリビニルブチラール(積水化学製:BX−1) 10部
2−ブタノン 280部
市販のビーズミル分散機に直径0.5mmのPSZボールを用い、ポリビニルブチラールを溶解した2−ブタノンおよび顔料を全て投入し、ローター回転数1200r.p.m.にて30分間分散を行ない、分散液を作製した。これを分散液1とする。
(分散液作製例2〜8)
分散液作製例1で使用した顔料1に変えて、それぞれ比較合成例2〜8を使用して分散液作製例1と同じ条件にて分散液を作製した。これを顔料番号に対応して、それぞれ分散液2〜8とする。
(分散液作製例9)
分散液作製例1で使用した顔料1に変えて、合成例1で作製した顔料9を使用して分散液作製例1と同じ条件にて分散液を作製した。これを分散液9とする。
(分散液作製例10)
分散液作製例1で作製した分散液1を、アドバンテック社製、コットンワインドカートリッジフィルター、TCW−1−CS(有効孔径1μm)を用いて、濾過を行なった。濾過に際しては、ポンプを使用し、加圧状態で濾過を行なった。これを分散液10とする。
(分散液作製例11)
分散液作製例10で使用したフィルターを、アドバンテック社製、コットンワインドカートリッジフィルター、TCW−3−CS(有効孔径3μm)に変えた以外は、分散液作製例10と同様に加圧濾過を行ない分散液を作製した。これを分散液11とする。
(分散液作製例12)
分散液作製例10で使用したフィルターを、アドバンテック社製、コットンワインドカートリッジフィルター、TCW−5−CS(有効孔径5μm)に変えた以外は、分散液作製例10と同様に加圧濾過を行ない分散液を作製した。これを分散液12とする。
(分散液作製例13)
分散液作製例1における分散条件において、ローター回転数を1000r.p.m.にて20分間に変更した以外はすべて分散液作製例1と同様にして分散を行った。これを分散液13とする。
(分散液作製例14)
分散液作製例13で作製した分散液をアドバンテック社製、コットンワインドカートリッジフィルター、TCW−1−CS(有効孔径1μm)を用いて、濾過を行なった。濾過に際しては、ポンプを使用し、加圧状態で濾過を行なった。
以上のように作製した分散液中の顔料粒子の粒度分布を、堀場製作所:CAPA−700にて測定した。結果を表3に示す。
分散液14については、濾過の途中でフィルターが目詰まりを起こして、全ての分散液を濾過することが出来なかったため、評価は実施できなかった。
続いて、前述の電荷発生層塗工用分散液を用いた電子写真感光体の作製方法について説明する。
(比較例1)
直径60mmのアルミニウムシリンダー(JIS1050)に、下記組成の下引き層1用塗工液、下引き層2用塗工液、電荷発生層塗工液、および電荷輸送層塗工液を、順次塗布・乾燥し、0.5μmの下引き層1、3.5μmの下引き層2、電荷発生層、24μmの電荷輸送層を積層し、電子写真感光体を作製した。これを電子写真感光体1とする。なお、各層の塗工後に指触乾燥を行った後、下引き層1は135℃、下引き層2は135℃、電荷発生層は90℃、電荷輸送層は135℃で20分間加熱乾燥を行った。また、電荷発生層の膜厚は、780nmにおける電荷発生層の透過率が20%になるように調整した。電荷発生層の透過率は、下記組成の電荷発生層塗工液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムを巻き付けたアルミシリンダーに感光体作製と同じ条件で塗工を行ない、電荷発生層を塗工していないポリエチレンテレフタレートフィルムを比較対照とし、市販の分光光度計(島津:UV−3100)にて、780nmの透過率を評価した。
◎下引き層1用塗工液
N−メトキシメチル化ナイロン(FR101:鉛市製) 5部
メタノール 70部
n−ブタノール 30部
◎下引き層2用塗工液
酸化チタン(CR−EL:石原産業社製、平均一次粒径:約0.25μm)70部
アルキッド樹脂[ベッコライトM6401−50−S(固形分50%)、
大日本インキ化学工業製] 14部
メラミン樹脂[スーパーベッカミンL−121−60(固形分60%)、
大日本インキ化学工業製] 8部
2−ブタノン 80部
無機顔料とバインダー樹脂の容積比は、約2/1である。アルキッド樹脂とメラミン樹脂の重量比は、約1.5/1である。
◎電荷発生層塗工液
前述の分散液1を用いた。
◎電荷輸送層塗工液
ポリカーボネート(TS2050:帝人化成社製) 10部
下記構造式の電荷輸送物質 7部
テトラヒドロフラン 80部
シリコーンオイルのテトラヒドロフラン溶液(KF−50(100cs)
:信越化学工業製) 0.2部
(比較例2〜10、実施例1〜3)
比較例1で使用した電荷発生層塗工液である分散液1をそれぞれ、分散液2〜13に変更した以外は、すべて比較例1と同様にして電子写真感光体2〜13を作製した。比較例2〜10、実施例1〜3で使用した電荷発生層塗工液は、表4に示す。
(比較例11)
実施例1において、下引き層1を設けない以外は、すべて実施例1と同様にして電子写真感光体14を作製した。
(比較例12)
実施例1において、下引き層2を設けない以外は、すべて実施例1と同様にして電子写真感光体15を作製した。
(実施例4)
実施例1において、下引き層1の膜厚を1.2μmとした以外は、すべて実施例1と同様にして電子写真感光体16を作製した。
(実施例5)
実施例1において、下引き層1の膜厚を2.0μmとした以外は、すべて実施例1と同様にして電子写真感光体17を作製した。
(実施例6)
実施例1において、下引き層2の塗工液を下記組成に変更した以外は、すべて実施例1と同様にして電子写真感光体18を作製した。
◎下引き層2用塗工液
酸化チタン(CR−EL:石原産業社製、平均粒径:約0.25μm) 90部
アルキッド樹脂[ベッコライトM6401−50−S(固形分50%)、
大日本インキ化学工業製] 14部
メラミン樹脂[スーパーベッカミンG−821−60(固形分60%)、
大日本インキ化学工業製] 10部
2−ブタノン 100部
無機顔料とバインダー樹脂の容積比は、約2.3/1である。アルキッド樹脂とメラミン樹脂の重量比は、約1.2/1である。
(実施例7)
実施例4において、下引き層2の塗工液を下記組成に変更した以外は、すべて実施例4と同様にして電子写真感光体19を作製した。
◎下引き層2用塗工液
酸化錫(S−1、三菱金属工業製) 60部
アルキッド樹脂[ベッコライトM6401−50−S(固形分50%)、
大日本インキ化学工業製] 14部
メラミン樹脂[スーパーベッカミンL−121−60(固形分60%)、
大日本インキ化学工業製] 10部
2−ブタノン 70部
無機顔料とバインダー樹脂の容積比は、約1.2/1である。アルキッド樹脂とメラミン樹脂の重量比は、約1.2/1である。
(実施例8)
実施例7において、導電性支持体上に下引き層2を10μm形成し、その上に下引き層1を0.6μm積層した以外はすべて実施例7と同様にして電子写真感光体20を作製した。
(実施例9)
実施例1において、下引き層2の塗工液を下記組成に変更した以外は、すべて実施例1と同様にして電子写真感光体21を作製した。
◎下引き層2用塗工液
酸化チタン(CR−EL:石原産業社製、平均一次粒径:約0.25μm)50部
酸化チタン(PT−401M:石原産業社製、平均一次粒径:約0.07μm)
30部
アルキッド樹脂[ベッコライトM6401−50−S(固形分50%)、
大日本インキ化学工業製] 16部
メラミン樹脂[スーパーベッカミンL−145−60(固形分60%)、
大日本インキ化学工業製] 9部
2−ブタノン 80部
無機顔料とバインダー樹脂の容積比は、約2/1である。また、アルキッド樹脂とメラミン樹脂の重量比は、約1.5/1である。D2/D1は0.28、無機顔料の混合比は約0.38である。
(実施例10)
実施例1において、下引き層2の塗工液を下記組成に変更した以外は、すべて実施例1と同様にして電子写真感光体22を作製した。
◎下引き層2用塗工液
酸化チタン(CR−EL:石原産業社製、平均一次粒径:約0.25μm)40部
酸化チタン(TTO−F1:石原産業社製、平均一次粒径:約0.04μm)
40部
アルキッド樹脂[ベッコライトM6401−50−S(固形分50%)、
大日本インキ化学工業製] 16部
メラミン樹脂[スーパーベッカミンL−145−60(固形分60%)、
大日本インキ化学工業製] 9部
2−ブタノン 80部
無機顔料とバインダー樹脂の容積比は、約2/1である。また、アルキッド樹脂とメラミン樹脂の重量比は、約1.5/1である。D2/D1は0.16、無機顔料の混合比は約0.5である。
(実施例11)
実施例1において、下引き層1用塗工液を下記組成のものに変更した以外は、すべて実施例1と同様にして電子写真感光体23を作製した。
◎下引き層1用塗工液
N−メトキシメチル化ナイロン(FR101:鉛市製) 5部
酒石酸のメタノール溶液(固形分10%) 2部
メタノール 70部
n−ブタノール 30部
(実施例12)
実施例1において、下引き層1用塗工液を下記組成のものに変更した以外は、すべて実施例1と同様にして電子写真感光体24を作製した。
◎下引き層1用塗工液
N−メトキシメチル化ナイロン(FR101:鉛市製) 5部
メラミン樹脂[スーパーベッカミンL−121−60(固形分60%)、
大日本インキ化学工業製] 8部
酒石酸のメタノール溶液(固形分10%) 2部
メタノール 120部
n−ブタノール 50部
(比較例13)
実施例1において、下引き層1用塗工液を下記組成のものに変更した以外は、すべて実施例1と同様にして電子写真感光体25を作製した。
◎下引き層1用塗工液
共重合ナイロン(アミランCM8000:東レ製) 5部
メタノール 70部
n−ブタノール 30部
(比較例14)
比較例13において、下引き層1の膜厚を1.0μmに変更した以外はすべて比較例13と同様にして電子写真感光体26を作製した。
(比較例15)
実施例1において、下引き層1用塗工液を下記組成のものに変更した以外は、すべて実施例1と同様にして電子写真感光体27を作製した。
◎下引き層1用塗工液
アルキッド樹脂[ベッコライトM6401−50−S(固形分50%)、
大日本インキ化学工業製] 14部
メラミン樹脂[スーパーベッカミンG−821−60(固形分60%)、
大日本インキ化学工業製] 10部
2−ブタノン 100部
(比較例16)
比較例14において、下引き層2用塗工液を下記組成のものに変更した以外は、すべて比較例14と同様にして電子写真感光体28を作製した。
◎下引き層2用塗工液
酸化チタン(CR−EL:石原産業社製) 90部
アルキッド樹脂[ベッコライトM6401−50−S(固形分50%)、
大日本インキ化学工業製] 14部
メラミン樹脂[スーパーベッカミンG−821−60(固形分60%)、
大日本インキ化学工業製] 10部
2−ブタノン 100部
無機顔料とバインダー樹脂の容積比は、約2.3/1である。また、アルキッド樹脂とメラミン樹脂の重量比は、約1.2/1である。
(比較例17)
比較例13において、導電性支持体上に下記組成の下引き層2を10μm形成し、その上に下引き層1を0.3μm積層した以外はすべて比較例13と同様にして電子写真感光体29を作製した。
◎下引き層2用塗工液
酸化錫(S−1、三菱金属工業製) 80部
アルキッド樹脂[ベッコライトM6401−50−S(固形分50%)、
大日本インキ化学工業製] 18部
メラミン樹脂[スーパーベッカミンL−121−60(固形分60%)、
大日本インキ化学工業製] 6部
2−ブタノン 80部
無機顔料とバインダー樹脂の容積比は、約2.1/1である。また、アルキッド樹脂とメラミン樹脂の重量比は、約2.5/1である。
(実施例13)
実施例1における電荷輸送層塗工液を以下の組成のものに変更した以外は、すべて実施例1と同様にして電子写真感光体30を作製した。
◎電荷輸送層塗工液
下記組成の高分子電荷輸送物質(重量平均分子量:約135000) 10部
塩化メチレン 100部
(実施例14)
実施例1における電荷輸送層の膜厚を20μmとし、電荷輸送層上に下記組成の無機顔料含有電荷輸送層塗工液をスプレー塗工法によって塗布並びに乾燥し、4μmの無機顔料含有電荷輸送層を設けた以外はすべて実施例1と同様にして電子写真感光体31を作製した。
◎無機顔料含有電荷輸送層塗工液
アルミナ(平均一次粒径:0.4μm、スミコランダムAA−03
:住友化学工業製) 2部
湿潤分散剤(固形分50%、BYK−P104:BYKケミー製) 0.025部
ポリカーボネート(TS2050:帝人化成社製、粘度平均分子量:5万)10部
下記構造式の電荷輸送物質 7部
シクロヘキサノン 500部
テトラヒドロフラン 150部
(比較例18)
実施例14において、下引き層1を形成しなかった以外は、すべて実施例14と同様にして電子写真感光体32を作製した。
(比較例19)
実施例14において、電荷発生層用塗工液を分散液1に変更した以外はすべて実施例14と同様にして電子写真感光体33を作製した。
(比較例20)
実施例1において、電荷発生層用塗工液を下記組成の塗工液に変更した以外は、すべて実施例1と同様にして電子写真感光体34を作製した。
◎電荷発生層用塗工液
下記構造のフルオレノン系ビスアゾ顔料 12部
ポリビニルブチラール 5部
2−ブタノン 200部
シクロヘキサノン 400部
(実施例1〜14および比較例1〜20)
以上のように作製した電子写真感光体1〜34を図15に示す画像形成装置に搭載し、画像露光光源を780nmの半導体レーザー(ポリゴン・ミラーによる画像書き込み)、帯電部材として接触方式の帯電ローラ、転写部材として転写ベルトを用い、25℃55%RHの環境下で暗部電位(VD)が900(−V、電界強度約37.5V/μm)及び1200(−V、電界強度約50V/μm)になるように印加電圧を調整し、その際の各々の露光部電位(VL)を測定した。また、現像バイアスは各々600(−V)及び900(−V)に設定し、白ベタ及びハーフトーン画像を出力し画像評価を行った。次に、10℃15%RHの環境下で暗部電位(VD)が1200(−V、電界強度約50V/μm)になるように印加電圧を調整し、その際の露光部電位(VL)を測定した。また、現像バイアスは900(−V)に設定し、白ベタ及びハーフトーン画像を出力し画像評価を行った。なお、画像評価のレベルは、以下の4段階で表した。◎:非常に良好なレベル、○:若干画質劣化が見られるが問題ないレベル、△:明らかに画像欠陥が認められるレベル、×:画像欠陥の影響が大きく画像品質が非常に悪いレベル。これらの結果を表4に示す。
本発明の特定の結晶型を有し、平均粒子サイズが0.25μm以下のチタニルフタロシアニンを電荷発生層に用い、さらに下引き層を複数とし、そのうち一層にN−メトキシメチル化ナイロンを含有させたことにより、初期における画像は良好でかつ低温低湿環境においても電位変動が比較的少ないことがわかった。一方、本発明の結晶型を示さない電荷発生層を形成した場合には、帯電低下や感度劣化する傾向が見られ、電界強度を増加させると地汚れが明らかに増加した。また、チタニルフタロシアニンの平均粒子サイズが0.25μmよりも大きくなると、その粗大粒子の影響により地汚れが目立つようになり、光学顕微鏡により観察を行った結果、凝集物と地汚れの位置が一致していることが確認された。また、本発明の特定の結晶型を有し、平均粒子サイズが0.25μm以下のチタニルフタロシアニンを電荷発生層に用いても、N−メトキシメチル化ナイロンを含有する下引き層1を形成しない場合には高電界強度において地汚れが目立つようになり、無機顔料及びバインダー樹脂を含有する下引き層2を形成しない場合にはモアレが発生し、またVLが顕著に増加するとともに帯電低下も大きく、地汚れが増加した。下引き層の膜厚を増加すると、N−メトキシメチル化ナイロンによる下引き層の場合にはVLへの影響が少なく、地汚れ抑制と両立可能であるが、N−メトキシメチル化ナイロン以外の下引き層の場合には明らかに膜厚依存性が認められた。
(実施例15〜28及び比較例21〜40)
実施例1〜14および比較例1〜20で使用した支持体に変えて、直径30mmの導電性支持体を用い、実施例1〜14および比較例1〜20と同様にして塗工を行い電子写真感光体を作製した。感光体番号は表5に記載するが、支持体径が異なるだけなので、感光体番号は実施例1〜14および比較例1〜20に対応した番号と同一の番号を用いた。
それらをプロセスカートリッジに装着し、タンデム方式のフルカラーレーザープリンタにセットした。画像露光光源は780nmの半導体レーザー(ポリゴン・ミラーによる画像書き込み)を用い、帯電部材は帯電ローラの両端の非画像形成領域に50μm厚の絶縁テープを巻き付けることにより感光体に近接配置させた。その際、DCバイアスは900(−V)とし、ACバイアス[Vpp(Peak to peak):1.9kV、周波数:1.0kHz]を重畳させ、現像バイアスは650(−V)とした。各感光体サンプルを搭載したプロセスカートリッジは、それぞれ同じ現像剤を充填してシアンステーション、マゼンタステーション、シアンステーション、ブラックステーションにセットし、1万枚毎にステーションをローテーションさせながらトータル4万枚の画像出力を繰り返し行い、その後の画像評価を行った。試験環境は、28℃75%RHで行った。なお、画像評価のレベルは、以下の4段階で表した。◎:非常に良好なレベル、○:若干画質劣化が見られるが問題ないレベル、△:明らかに画像欠陥が認められるレベル、×:画像欠陥の影響が大きく画像品質が非常に悪いレベル。また、試験前後の膜厚差から摩耗量を算出した。これらの結果を表5に示す。
交流を重畳させた近接帯電方式を用いた場合でも、本発明の特定の結晶型を有し、平均粒子サイズが0.25μm以下のチタニルフタロシアニンを電荷発生層に用い、さらに下引き層を複数とし、そのうち一層にN−メトキシメチル化ナイロンを含有させたことにより、地汚れ抑制効果が高いことが明らかとなり、さらに4万枚印刷後においても高い効果を維持することが実現された。一方、本発明の結晶型を示さない電荷発生物質を用いた場合には、4万枚印刷後には地汚れの影響が顕著に増加した。また、チタニルフタロシアニンの平均粒子サイズが0.25μmよりも大きく、粗大粒子を含有すると、その粗大粒子の影響により地汚れが目立つようになり、4万枚印刷後にはその影響が非常に増大していることがわかった。本発明の特定の結晶型を有し、平均粒子サイズが0.25μm以下のチタニルフタロシアニンを電荷発生層に用いても、N−メトキシメチル化ナイロンを含有する下引き層1を形成しない場合には地汚れ抑制効果の経時安定性が低下し、4万枚印刷後には地汚れが目立つようになった。無機顔料及びバインダー樹脂を含有する下引き層2を形成しない場合には、モアレが初期から発生しており、また経時でVLが顕著に増加し、地汚れが顕著に増加した。感光体表面に無機顔料を含有した電荷輸送層を設けることにより感光体の摩耗量が低減されると、電界強度の変化が低減できたことにより地汚れ抑制の経時安定性がさらに高められるが、電荷発生層に本発明以外の電荷発生材料を用いたり、平均粒子サイズが0.25μmよりも大きなチタニルフタロシアニンを用いたり、N−メトキシメチル化ナイロンを含有する下引き層を形成しなかった場合には、地汚れが早期に発生し、高耐久化は実現できないことがわかった。これにより、本発明の電子写真感光体は、タンデム方式の画像形成装置において、地汚れ抑制効果を高めると同時に4万枚印刷後においてもその効果を維持することが可能となり、これにより高耐久化が実現され、高速化と高安定化の両立が実現できた。
(比較合成例9)
比較合成例9における結晶変換溶媒を塩化メチレンから2−ブタノンに変更した以外は、比較合成例1と同様に処理を行ない、チタニルフタロシアニン結晶を得た。
比較合成例1の場合と同様に、比較合成例9で作製したチタニルフタロシアニン結晶のXDスペクトルを測定した。これを図21に示す。図21より、比較合成例9で作製されたチタニルフタロシアニン結晶のXDスペクトルにおける最低角は、比較合成例1で作製されたチタニルフタロシアニンの最低角(7.3°)とは異なり、7.5°に存在することが判る。
(測定例1)
合成例1で得られた顔料(最低角7.3°)に特開昭61−239248号公報に記載の顔料(最大回折ピークを7.5°に有する)と同様に作製したものを3重量%添加し、乳鉢で混合して、先程と同様にX線回折スペクトルを測定した。測定例1のX線回折スペクトルを図22に示す。
(測定例2)
比較合成例9で得られた顔料(最低角7.5°)に特開昭61−239248号公報に記載の顔料(最大回折ピークを7.5°に有する)と同様に作製したものを3重量%添加し、乳鉢で混合して、先程と同様にX線回折スペクトルを測定した。測定例2のX線回折スペクトルを図23に示す。
図22のスペクトルにおいては、低角側に7.3°と7.5°の2つの独立したピークが存在し、少なくとも7.3°と7.5°のピークは異なるものであることが判る。一方、図23のスペクトルにおいては、低角側のピークは7.5°のみに存在し、図22のスペクトルとは明らかに異なっている。
以上のことから、本願発明のチタニルフタロシアニン結晶における最低角ピークである7.3°は、公知のチタニルフタロシアニン結晶における7.5°のピークとは異なるものであることが判る。
積層感光体の構成例の説明図である。 他の積層感光体の構成例の説明図である。 不定形チタニルフタロシアニンのTEM像を示す。 結晶チタニルフタロシアニンのTEM像を示す。 時短間で結晶変換を行った場合の結晶チタニルフタロシアニンのTEM像を示す。 分散時間の短い結晶チタニルフタロシアニン分散液の写真を示す。 同じく分散時間の長い結晶チタニルフタロシアニン分散液の写真を示す。 図6と図7の結果をグラフ化したものである。 本発明に用いられる電子写真感光体の構成例の説明図である。 本発明に用いられる電子写真感光体の別の構成例の説明図である。 本発明に用いられる電子写真感光体の更に別の構成例の説明図である。 本発明に用いられる電子写真感光体の更に別の構成例の説明図である。 本発明に用いられる電子写真感光体の更に別の構成例の説明図である。 本発明に用いられる電子写真感光体の更に別の構成例の説明図である。 本発明の画像形成プロセス及び画像形成装置の説明図である。 感光体と帯電部材を近接配置方式とした例の説明図である。 プロセスカートリッジの一例の説明図である。 本発明のタンデム方式のフルカラー電子写真装置の一例の説明図である。 比較合成例1で得られたチタニルフタロシアニン粉末のX線回折スペクトル図である。 合成例1で得られた水ペーストの乾燥粉末のX線回折スペクトル図である。 比較合成例9で得られたチタニルフタロシアニン結晶のXDスペクトル図である。 測定例1のX線回折スペクトル図である。 測定例2のX線回折スペクトル図である。
符号の説明
1 感光体
2 除電ランプ
3 帯電ローラ
5 画像露光部
6 現像ユニット
9 転写紙
21 ギャップ形成部材
22 金属シャフト
23 画像形成領域
24 非画像形成領域
31 感光体
33 帯電手段
34 クリーニング手段
35 露光手段
36 現像手段
37 転写手段
40 転写搬送ベルト
42 定着装置
48 給紙コロ
49 レジストローラ
1C、1M、1Y、1K 感光体
3C、3M、3Y、3K 帯電部材
5C、5M、5Y、5K レーザー光
6C、6M、6Y、6K 現像部材
15C、15M、15Y、15K クリーニング部材
41C、41M、41Y、41K 転写ブラシ
46C、46M、46Y、46K 画像形成要素

Claims (32)

  1. 導電性支持体上に少なくとも複数の下引き層及び感光層を順次積層した電子写真感光体において、該感光層にCuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、7.3゜のピークと9.4゜のピークの間にピークを有さず、更に26.3°にピークを有さない結晶型で、一次粒子の平均粒子サイズが0.25μm以下であるチタニルフタロシアニン結晶を含み、かつ複数の下引き層の少なくとも一層には、N−メトキシメチル化ナイロンを含むことを特徴とする電子写真感光体。
  2. 前記感光層が、電荷発生層と電荷輸送層とを順次積層した積層構成からなることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
  3. 前記結晶型のチタニルフタロシアニンを、平均粒子サイズが0.3μm以下で、その標準偏差が0.2μm以下になるまで分散を行ない、その後有効孔径が3μm以下のフィルターにて濾過を行ない、一次粒子の平均粒子サイズを0.25μm以下とした分散液を使用し、感光層あるいは電荷発生層を塗工したことを特徴とする請求項1又は2に記載の電子写真感光体。
  4. 前記チタニルフタロシアニン結晶が、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも7.0〜7.5゜に最大回折ピークを有し、その回折ピークの半値巾が1゜以上である一次粒子の平均粒子サイズが0.1μm以下の不定形チタニルフタロシアニンもしくは低結晶性チタニルフタロシアニンを水の存在下で有機溶媒により結晶変換を行ない、結晶変換後の一次粒子の平均粒子サイズが0.25μmより大きく成長する前に、有機溶媒より結晶変換後のチタニルフタロシアニンを分別、濾過されたものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電子写真感光体。
  5. 前記チタニルフタロシアニン結晶が、ハロゲン化物を含まない原材料を使用して合成されたものであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電子写真感光体。
  6. 前記チタニルフタロシアニン結晶が不定形チタニルフタロシアニンもしくは低結晶性チタニルフタロシアニンを、水の存在下で有機溶媒により結晶変換を行なうことにより得られたものであり、前記チタニルフタロシアニン結晶の結晶変換に際して、使用される不定形チタニルフタロシアニンもしくは低結晶性チタニルフタロシアニンがアシッド・ペースト法により作製され、十分にイオン交換水で洗浄され、洗浄後のイオン交換水のpHが6〜8の間及び/又はイオン交換水の比伝導度が8以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の電子写真感光体。
  7. 前記チタニルフタロシアニン結晶が不定形チタニルフタロシアニンもしくは低結晶性チタニルフタロシアニンを、水の存在下で有機溶媒により結晶変換を行なうことにより得られたものであり、前記チタニルフタロシアニン結晶の結晶変換に際して、使用される有機溶媒量が不定形チタニルフタロシアニンもしくは低結晶性チタニルフタロシアニンの30倍(重量比)以上であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の電子写真感光体。
  8. 前記N−メトキシメチル化ナイロンを含有する下引き層の膜厚が、2.0μm未満であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の電子写真感光体。
  9. 前記N−メトキシメチル化ナイロンが加熱により架橋されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の電子写真感光体。
  10. 前記N−メトキシメチル化ナイロンを含有する下引き層に、さらに酸触媒が含有されていることを特徴とする請求項9に記載の電子写真感光体。
  11. 前記N−メトキシメチル化ナイロンを含有する下引き層に、さらに架橋剤が含有されていることを特徴とする請求項9又は10に記載の電子写真感光体。
  12. 前記複数の下引き層において、N−メトキシメチル化ナイロンを含有する下引き層以外の下引き層には、少なくとも無機顔料とバインダー樹脂が含有されていることを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の電子写真感光体。
  13. 前記無機顔料が、金属酸化物であることを特徴とする請求項12に記載の電子写真感光体。
  14. 前記金属酸化物が、酸化チタンであることを特徴とする請求項13に記載の電子写真感光体。
  15. 前記無機顔料が、平均一次粒径の異なる2種以上の無機顔料の混合物であり、最も大きな平均一次粒径を有する無機顔料の平均一次粒径をD1、最も小さな平均一次粒径を有する無機顔料の平均一次粒径をD2としたとき、0.2<(D2/D1)≦0.5の関係を満たすことを特徴とする請求項12乃至14のいずれかに記載の電子写真感光体。
  16. 前記D2が、0.2μm未満であることを特徴とする請求項15に記載の電子写真感光体。
  17. 前記平均一次粒径の異なる2種以上の無機顔料の混合比が、最も大きな平均一次粒径を有する無機顔料の含有量をT1、最も小さな平均一次粒径を有する無機顔料の含有量をT2としたとき、重量比で0.2≦T2/(T1+T2)≦0.8の関係を満たすことを特徴とする請求項15又は16に記載の電子写真感光体。
  18. 前記N−メトキシメチル化ナイロンを含有する下引き層以外の下引き層に含有されるバインダー樹脂が熱硬化型樹脂を含むことを特徴とする請求項12乃至17のいずれかに記載の電子写真感光体。
  19. 前記熱硬化型樹脂が、アルキッド樹脂及びメラミン樹脂からなることを特徴とする請求項18に記載の電子写真感光体。
  20. 前記アルキッド樹脂とメラミン樹脂との重量比が、1/1乃至4/1の範囲内であることを特徴とする請求項19に記載の電子写真感光体。
  21. 前記N−メトキシメチル化ナイロンを含有する下引き層以外の下引き層に含有される無機顔料とバインダー樹脂との容積比が、1/1乃至3/1の範囲内であることを特徴とする請求項12乃至20のいずれかに記載の電子写真感光体。
  22. 前記N−メトキシメチル化ナイロンを含有する下引き層以外の下引き層の膜厚が、前記N−メトキシメチル化ナイロンを含有する下引き層の膜厚よりも厚いことを特徴とする請求項1乃至21のいずれかに記載の電子写真感光体。
  23. 前記N−メトキシメチル化ナイロンを含む下引き層が、導電性支持体上に直接形成されていることを特徴とする請求項1乃至22のいずれかに記載の電子写真感光体。
  24. 前記電子写真感光体の最表面に、無機顔料を含有した電荷輸送層を積層したことを特徴とする請求項1乃至23のいずれかに記載の電子写真感光体。
  25. 前記無機顔料が金属酸化物であることを特徴とする請求項24に記載の電子写真感光体。
  26. 前記金属酸化物がアルミナであることを特徴とする請求項25に記載の電子写真感光体。
  27. 請求項1乃至26のいずれかに記載の電子写真感光体を用いて、少なくとも帯電、画像露光、現像、転写を繰り返し行うことを特徴とする画像形成方法。
  28. 少なくとも帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、及び電子写真感光体を具備してなる画像形成装置において、該電子写真感光体が請求項1乃至26のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置。
  29. 少なくとも帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、及び電子写真感光体からなる画像形成要素を複数配列したことを特徴とする請求項28に記載の画像形成装置。
  30. 少なくとも帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、及び電子写真感光体を具備してなる画像形成装置において、画像形成時における感光体の線速が250mm/sec以上であることを特徴とする請求項28又は29に記載の画像形成装置。
  31. 前記画像形成装置が、少なくとも電子写真感光体と、帯電手段、露光手段、現像手段、クリーニング手段から選ばれる少なくとも1つの手段とが一体となった画像形成装置用プロセスカートリッジを搭載し、該画像形成装置用プロセスカートリッジが装置本体と着脱自在であることを特徴とする請求項28乃至30のいずれかに記載の画像形成装置。
  32. 少なくとも電子写真感光体と、帯電手段、露光手段、現像手段、クリーニング手段から選ばれる少なくとも1つの手段とが一体となった画像形成装置用プロセスカートリッジにおいて、該電子写真感光体が請求項1乃至26のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置用プロセスカートリッジ。
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