JP3867121B2 - 電子写真装置 - Google Patents
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Description
モノクロ電子写真装置での高速化では、複写(プリント)速度として、60枚/分以上(最大100枚/分)が当たり前の状況になってきている。更に、電子写真プロセスに最低必要な部材(帯電、露光、現像、転写、必要に応じてクリーニング、除電)が感光体周りに配置され、この他にも高耐久化のために他の部材が併用されることもあり、感光体周りのスペースは非常に狭いものになっている。このため、前述のように直径100mmの感光体を使用したとしても、露光−現像間の距離はあまり長くできず、感光体の線速が非常に早いことから、書き込み部から現像部までの時間がますます短くなっている。時間で表わすと、長目に設定できても高々200msec程度である。
一方、タンデム方式のフルカラー電子写真装置では、前述のように小径感光体が使用され、複写(プリント)速度として、30枚/分以上が開発されている。このような状況下では、なるべく感光体周りを簡素化したとしても、露光−現像間の時間は、モノクロ電子写真装置と同等以下しか設定することができない。
今後、ビジネス文書等への対応により、更なる高速化が押し進められるものと考えられ、この短時間での高速応答性(充分な光減衰とキャリア移動)を達成することが、大きな鍵となる。
これに対応するためには、少なくとも感光体の高ゲイン(より大きい電位減衰)と高レスポンス(より速い電位減衰)が要求される。前者に関しては量子効率の大きな電荷発生物質の開発に委ねられ、後者に関しては移動度の大きい電荷輸送物質の開発に委ねられている。
量子効率の大きな電荷発生物質は一般的に化学的な反応性の高い化合物であるため、電子写真装置における繰り返し使用によって、その特性の安定性が乏しい材料が多い。
以上のことより、ブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有するチタニルフタロシアニン結晶の中でも特別な結晶型を用い、高速対応できるように露光−現像間時間を200msec以下にレイアウトし、更に感光体表面に照射される露光エネルギーを5erg/cm2以下で使用することにより、上記の問題点を解決できることを見い出した。
また、テトラヒドロフランを用いる方法(例えば、特許文献2参照。)、環状エーテル溶媒に特定の酸化防止剤や紫外線吸収剤を添加する方法(例えば、特許文献3参照。)が提案されている。
しかしながら、これらの方法を用いても、上記欠点に対する効果が充分でなかったり、あるいは添加剤の影響により感度特性が逆に悪化してしまう等の問題があった。
したがって、特有の高感度を有するチタニルフタロシアニンを電荷発生物質に用い、電荷輸送層用塗工液に非ハロゲン系溶媒を用いた場合においても、良好な光減衰特性を示す電子写真感光体、それを用いた電子写真装置及び電子写真用プロセスカートリッジの完成が望まれていた。
具体的には、600dpi以上の解像度で書き込みを行なっても、光源の劣化や不安定さを解消し、かつ感光体の表面電位(露光部、未露光部)の安定性の高い電子写真装置を提供することにある。また、電荷輸送層用塗工液に非ハロゲン系溶媒を用いた場合においても、チタニルフタロシアニン固有の高感度を維持した電子写真装置を提供することにある。
すなわち、上記課題は、本発明の(1)「少なくとも帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、及び電子写真感光体を具備してなり、露光手段から現像手段までの時間が200msec以下の電子写真装置であって、600dpi以上の解像度を有する書き込み光を露光手段から感光体に照射する際の露光エネルギーが感光体表面において5erg/cm2以下であり、かつ電子写真感光体が導電性支持体上に少なくとも電荷発生層と電荷輸送層を順に積層してなる電子写真感光体であり、該電荷発生層中にCuKα線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2°)として、少なくとも27.2°に最大回折ピークを有し、更に9.4°、9.6°、24.0°に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3°にピークを有し、7.3°のピークと9.4°のピークの間にピークを有さず、更に26.3°にピークを有し、26.3°のピーク強度が、最大回折ピーク27.2°のピーク強度に対して0.1〜5%の範囲であるチタニルフタロシアニン結晶を含有し、該電荷発生層を形成するための分散液が有効孔径が3μm以下のフィルターにて濾過されたものであり、該分散液中の前記チタニルフタロシアニン結晶の平均サイズが0.21μm以下であることを特徴とする電子写真装置」、(2)「少なくとも帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、及び電子写真感光体を具備してなり、露光手段から現像手段までの時間が200msec以下の電子写真装置であって、600dpi以上の解像度を有する書き込み光を露光手段から感光体に照射する際の露光エネルギーが感光体表面において5erg/cm 2 以下であり、かつ電子写真感光体が導電性支持体上に少なくとも電荷発生層と電荷輸送層を順に積層してなる電子写真感光体であり、該電荷発生層中にCuKα線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2°)として、少なくとも27.2°に最大回折ピークを有し、更に9.4°、9.6°゜24.0°に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3°にピークを有し、7.3°のピークと9.4°のピークの間にピークを有さず、更に26.3°にピークを有し、26.3°のピーク強度が、最大回折ピーク27.2°のピーク強度に対して0.1〜5%の範囲であるチタニルフタロシアニン結晶を含有し、前記チタニルフタロシアニン結晶が、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2°)として、少なくとも7.0〜7.5°に最大回折ピークを有し、その回折ピークの半値巾が1°以上である一次粒子の平均サイズが0.1μm以下の不定形チタニルフタロシアニンもしくは低結晶性チタニルフタロシアニンを水の存在下で有機溶媒により結晶変換を行ない、結晶変換後の一次粒子の平均サイズが0.20μmよりも大きく成長する前に、有機溶媒より結晶変換後のチタニルフタロシアニンを分別、濾過されたものであることを特徴とする電子写真装置」、(3)「前記電荷輸送層に少なくともトリアリールアミン構造を主鎖および/または側鎖に含むポリカーボネートを含有することを特徴とする前記第(1)項又は第(2)項に記載の電子写真装置」、(4)「前記電荷輸送層上に保護層を有することを特徴とする前記第(1)項乃至第(3)項の何れかに記載の電子写真装置」、(5)「前記保護層に比抵抗1010Ω・cm以上の無機顔料又は金属酸化物を含有することを特徴とする前記第(4)項に記載の電子写真装置」、(6)「前記感光体の電荷輸送層が、非ハロゲン系溶媒を用いて形成されたものであることを特徴とする前記第(1)項乃至第(5)項の何れかに記載の電子写真装置」、(7)「前記非ハロゲン系溶媒として、少なくとも環状エーテル、あるいは芳香族系炭化水素より選ばれる1種を用いることを特徴とする前記第(6)項に記載の電子写真装置」、(8)「前記電子写真感光体の導電性支持体表面が、陽極酸化皮膜処理されたものであることを特徴とする前記第(1)項乃至第(7)項の何れかに記載の電子写真装置」、(9)「少なくとも帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、及び電子写真感光体からなる画像形成要素を複数配列したことを特徴とする前記第(1)項乃至第(8)項の何れかに記載の電子写真装置」、(10)「前記電子写真装置の帯電手段に、接触帯電方式を用いることを特徴とする前記第(1)項乃至第(9)項の何れかに記載の電子写真装置」、(11)「前記電子写真装置の帯電手段に、非接触の近接配置方式を用いることを特徴とする前記第(1)項乃至第(9)項の何れかに記載の電子写真装置」、(12)「前記帯電手段に用いられる帯電部材と感光体間の空隙が200μm以下であることを特徴とする前記第(10)項に記載の電子写真装置」、(13)「前記電子写真装置の帯電手段に、交流重畳電圧印加を行なうことを特徴とする前記第(10)項乃至第(12)項の何れかに記載の電子写真装置」、(14)「前記電子写真装置が、感光体と少なくとも帯電手段、露光手段、現像手段、クリーニング手段から選ばれる1つの手段とが一体となった装置本体と着脱自在なカートリッジを搭載していることを特徴とする前記第(1)項乃至第(13)項のいずれかに記載の電子写真装置。」によって解決される。
図1は、本発明の電子写真プロセスおよび電子写真装置を説明するための概略図であり、下記に示すような変形例も本発明の範疇に属するものである。
図1において、画像露光部(25)と現像ユニット(26)間を移動する感光体表面の移動時間が200msec以下であることを必須とする。この際、露光手段から現像手段までの時間とは、画像露光部の中心に対面する感光体表面位置から、現像ユニットの中心に対面する感光体表面までの円周を感光体線速で割ることにより求められるものである。
感光体(21)は導電性支持体上に少なくとも電荷発生層、電荷輸送層を含む感光層が設けられてなり、電荷発生層にはCuKα線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、7.3°のピークと9.4゜のピークの間にピークを有さず、更に26.3゜にピークを有するチタニルフタロシアニン結晶を含有してなる。感光体(21)はドラム状の形状を示しているが、シート状、エンドレスベルト状のものであっても良い。帯電ローラ(23)、転写前チャージャ(27)、転写チャージャ(30)、分離チャージャ(31)、クリーニング前チャージャ(33)には、コロトロン、スコロトロン、固体帯電器(ソリッド・ステート・チャージャー)、帯電ローラ、転写ローラを始めとする公知の手段が用いられる。
また、近接配置した帯電部材とは、感光体表面と帯電部材表面の間に200μm以下の空隙(ギャップ)を有するように非接触状態で近接配置したタイプのものである。このギャップは、大きすぎた場合には帯電が不安定になりやすく、また小さすぎた場合には、感光体に残留したトナーが存在する場合に、帯電部材表面が汚染されてしまう可能性がある。したがって、ギャップは10〜200μm、好ましくは10〜100μmの範囲が適当である。空隙の距離から、コロトロン、スコロトロンに代表される公知のチャージ・ワイヤータイプの帯電器、接触方式の帯電ローラ、帯電ブラシ、帯電ブレードなどの接触帯電部材とは区別されるものである。
露光エネルギー=(静止パワー×有効走査期間率)/(有効書き込み幅×感光体線速)
先の帯電方式においてAC成分を重畳して使用する場合や、感光体の残留電位が小さい場合等は、この除電機構を省略することもできる。また、光学的な除電ではなく静電的な除電機構(例えば、逆バイアスを印可したあるいはアース接地した除電ブラシなど)を用いることもできる。
これを負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られ、また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。
かかる現像手段には、公知の方法が適用されるし、また、除電手段にも公知の方法が用いられる。
一方、光照射工程は、像露光、クリーニング前露光、除電露光が図示されているが、他に転写前露光、像露光のプレ露光、およびその他公知の光照射工程を設けて、感光体に光照射を行なうこともできる。
感光体(71)は導電性支持体上に少なくとも電荷発生層、電荷輸送層を含む感光層が設けられてなり、電荷発生層にはCuKα線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、7.3°のピークと9.4゜のピークの間にピークを有さず、更に26.3゜にピークを有するチタニルフタロシアニン結晶を含有してなる。また、このプロセスカートリッジを画像形成装置で用いる際の600dpi以上の解像度を有する画像書き込み光の照射は、最大5erg/cm2以下の露光量(露光エネルギー)にて使用される。
図5において、符号(1C),(1M),(1Y),(1K)はドラム状の感光体であり、導電性支持体上に少なくとも電荷発生層、電荷輸送層を含む感光層が設けられてなり、電荷発生層にはCuKα線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、7.3°のピークと9.4゜のピークの間にピークを有さず、更に26.3゜にピークを有するチタニルフタロシアニン結晶を含有してなる。
図5において、符号(1C)、(1M)、(1Y)及び(1K)はドラム状の感光体であり、この感光体(1C)、(1M)、(1Y)及び(1K)は図中の矢印方向に回転し、その周りに少なくとも回転順に帯電部材(2C)、(2M)、(2Y)及び(2K)、現像部材(4C)、(4M)、(4Y)及び(4K)、クリーニング部材(5C)、(5M)、(5Y)及び(5K)が配置されている。帯電部材(2C)、(2M)、(2Y)及び(2K)は、感光体表面を均一に帯電するための帯電装置を構成する帯電部材である。この帯電部材(2C)、(2M)、(2Y)及び(2K)と、現像部材(4C)、(4M)、(4Y)及び(4K)の間の感光体表面に図示しない露光部材から、600dpi以上の解像度を有するレーザ光(3C)、(3M)、(3Y)及び(3K)が照射され、感光体(1C)、(1M)、(1Y)及び(1K)に静電潜像が形成されるようになっている。ここで画像露光部(3C、3M、3Y、3K)と現像ユニット(4C、4M、4Y、4K)間を移動する感光体表面の時間が200msec以下であることを必須とする。そして、このような感光体(1C)、(1M)、(1Y)及び(1K)を中心とした4つの画像形成要素(6C)、(6M)、(6Y)及び(6K)が、転写材搬送手段である転写搬送ベルト(10)に沿って並置されている。転写搬送ベルト(10)は各画像形成ユニット(6C)、(6M)、(6Y)及び(6K)の現像部材(4C)、(4M)、(4Y)及び(4K)とクリーニング部材(5C)、(5M)、(5Y)及び(5K)の間で感光体(1C)、(1M)、(1Y)及び(1K)に当接しており、転写搬送ベルト(10)の感光体側の裏側に当たる面(裏面)には転写バイアスを印加するための転写ブラシ(11C)、(11M)、(11Y)及び(11K)が配置されている。各画像形成要素(6C)、(6M)、(6Y)及び(6K)は現像装置内部のトナーの色が異なることであり、その他は全て同様の構成となっている。
本発明の対象とする電子写真装置においては、高速でかつ、高解像度の領域を対象とするものである。したがって、感光体線速で150mm/sec以上(より好ましくは200mm/sec以上)の領域でシステムが稼働され、また、LDやLEDによる書き込み光のビーム系も600dpi以上(好ましくは1200dpi以上)に対応して、50μm以下(好ましくは30μm以下)で行なわれる。このような場合、光源の出力を大きくしても、感光体表面に到達する際の露光エネルギーには限界があり、光源の寿命および出力安定性を無視しない限り、連続動作時の感光体表面での露光エネルギーは高々、10erg/cm2以下である。
通常、このような光学系は交換が容易ではなく、電子写真装置本体の寿命と同等に設計されるものである。したがって、素子の作り込み精度(ロット差)、使用環境での安定性、寿命の確実な確保、連続動作時の出力安定性等を考慮すると、素子フル出力の半分程度のパワーで使用すること好ましい。
このようなシステムにおける感光体の特性(光減衰特性)としては、高レスポンス(より速い電位減衰)と高ゲイン(より大きい電位減衰)のいずれもが要求される。このうち、高レスポンスに関しては、昨今の電荷輸送材料の開発により、書き込み〜現像間の時間が100msec以下の高速システムに対応できるようになってきたことは既に述べたとおりである。このことは、レーザ光のような高強度の書き込みにより、感光体の光キャリア発生が相反則不軌の領域になっていることも、この事実を助けている。
Bの光減衰特性においては、5erg/cm2付近の露光量では光減衰が完了しておらず、またAの光減衰と比較して得られる電位(露光部電位に相当)も高い。このため、現像バイアスの設定にもよるが、結果として画像濃度低下を起こしたり、1ドットを確実に現像できない現象を起こしやすい。このため、更に電位を下げるため、5erg/cm2以上の露光量を必要とすることになるが、その結果、高輝度で光源を使用することになり、光源の寿命を低下させるだけでなく、繰り返し使用時の安定性を低下させる。また、必要以上の光量を照射することになり、感光体の光疲労を促進したり、ドットの拡散(ラインが太くなる)といった副作用を生み出す。600dpi以上の解像度を有する書き込みを行なう電子写真装置においてこの問題は非常に顕著であり、解像度を向上させるためには解決しなければならない問題である。
Aの光減衰を示す感光体に、逆に5erg/cm2以上の光量を与えた場合には、前記のようにラインが太くなるという欠点を有するが、電位の下限飽和値を与える光量よりも小さめの光量(図6のAで示せば、4.5erg/cm2以下)で使用することで、この現象は回避される。
本発明の電子写真感光体は、導電性支持体上に少なくとも電荷発生層と電荷輸送層を形成してなる電子写真感光体であって、該電荷発生層中にCuKα線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、7.3°のピークと9.4゜のピークの間にピークを有さず、更に26.3゜にピークを有するチタニルフタロシアニン結晶を含有するものである。
この結晶型は、特開2001−187794号公報に記載されているものであるが、このチタニルフタロシアニン結晶を用いることで、高感度を失うことなく繰り返し使用によっても帯電性の低下を生じない安定な電子写真感光体を得ることができる。特開2001−187794号公報には、本発明で使用される電荷発生物質およびこれを用いた感光体、電子写真装置などが開示されている。しかしながら、600dpi以上の解像度で使用される様な状況下においては、書き込み光料の適正化を行なわないと、上述のような文字太りの現象を引き起こしてしまい、実質的に解像度低下を引き起こしていた。このような現象は、同公報に記載された材料を用いた感光体においては、それよりも低感度な感光体よりも、顕著に発現する。このように、過去のプロセス(装置)では、必ずしも同公報に記載された材料の実力を充分に引き出していないだけでなく、プロセス条件を適正化してやらないと逆に副作用を生み出すものであった。
初めにチタニルフタロシアニン結晶の合成粗品の合成法について述べる。フタロシアニン類の合成方法は古くから知られており、Moser等による「Phthalocyanine Compounds」(1963年)、「The Phthalocyanines」(1983年)、特開平6−293769号公報等に記載されている。
具体的な方法としては、上記の合成粗品を10〜50倍量の濃硫酸に溶解し、必要に応じて不溶物を濾過等により除去し、これを硫酸の10〜50倍量の充分に冷却した水もしくは氷水にゆっくりと投入し、チタニルフタロシアニンを再析出させる。析出したチタニルフタロシアニンを濾過した後、イオン交換水で洗浄・濾過を行ない、濾液が中性になるまで充分にこの操作を繰り返す。最終的に、綺麗なイオン交換水で洗浄した後、濾過を行ない、固形分濃度で5〜15wt%程度の水ペーストを得る。このように作製したものが本発明に用いる不定形チタニルフタロシアニン(低結晶性チタニルフタロシアニン)である。この際、この不定形チタニルフタロシアニン(低結晶性チタニルフタロシアニン)が、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも7.0〜7.5゜に最大回折ピークを有するものであることが好ましい。特に、その回折ピークの半値巾が1゜以上であることがより好ましい。更に、一次粒子の平均粒子サイズが0.1μm以下であることが好ましい。
先ず、1回目の結晶変換方法について述べる。1回目の結晶変換は、前記不定形チタニルフタロシアニン(低結晶性チタニルフタロシアニン)を、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、7.3°のピークと9.4゜のピークの間にピークを有さず、かつ26.3゜にピークを有さないチタニルフタロシアニン結晶に変換する工程である。
この際、使用される有機溶媒は、所望の結晶型を得られるものであれば、いかなる有機溶媒も使用できるが、特にテトラヒドロフラン、トルエン、塩化メチレン、二硫化炭素、オルトジクロロベンゼン、1,1,2−トリクロロエタンの中から選ばれる1種を選択すると、良好な結果が得られる。これら有機溶媒は単独で用いることが好ましいが、これらの有機溶媒を2種以上混合する、あるいは他の溶媒と混合して用いることも可能である。結晶変換に使用される前記有機溶媒の量は、不定形チタニルフタロシアニンの重量の10倍以上、好ましくは30倍以上の重量であることが望ましい。これは、結晶変換を素早く充分に起こさせると共に、不定形チタニルフタロシアニンに含まれる不純物を充分に取り除く効果が発現されるからである。なお、ここで使用する不定形チタニルフタロシアニンは、アシッド・ペースト法により作製するものであるが、上述のように硫酸を充分に洗浄したものを使用することが望ましい。硫酸が残存するような条件で結晶変換を行なうと、結晶粒子中に硫酸イオンが残存し、でき上がった結晶を水洗処理のような操作をしても完全には取り除くことができない。硫酸イオンが残存した場合には、感光体の感度低下、帯電性低下を引き起こすなど、好ましい結果を得られない。例えば、特開平8−110649号公報(比較例)には、硫酸に溶解したチタニルフタロシアニンをイオン交換水と共に有機溶媒に投入し結晶変換を行なう方法が記載されている。この際、本発明で得られるチタニルフタロシアニン結晶のX線回折スペクトルに類似した結晶を得ることができるが、チタニルフタロシアニン中の硫酸イオン濃度が高く、光減衰特性(光感度)が悪いものであるため、本発明のチタニルフタロシアニンの製造方法としては良好なものではない。
チタニルフタロシアニン結晶の粒子サイズをより細かくするために、本発明者らが観察したところによれば、結晶変換の操作において、前述の不定形チタニルフタロシアニン(低結晶性チタニルフタロシアニン)は、一次粒径が0.1μm以下(そのほとんどが0.01〜0.05μm程度)であるが、結晶変換の際に際しては、結晶成長と共に結晶が変換されることが判った。通常、この種の結晶変換においては、原料の残存をおそれて充分な結晶変換時間を確保し、結晶変換が十二分に行なわれた後に、濾過を行ない、所望の結晶型を有するチタニルフタロシアニン結晶を得るものである。このため、原料として充分に小さな一次粒子を有する原料を用いているにもかかわらず、結晶変換後の結晶としては一次粒子の大きな結晶(概ね0.3〜0.5μm)を得ているものである。
ここでいう粒子サイズとは、体積平均粒径であり、超遠心式自動粒度分布測定装置:CAPA−700(堀場製作所製)により求めたものである。この際、累積分布の50%に相当する粒子径(Median系)として算出されたものである。しかしながら、この方法では微量の粗大粒子を検出できない場合があるため、より詳細に求めるには、チタニルフタロシアニン結晶粉末、あるいは分散液を直接、電子顕微鏡にて観察し、その大きさを求めることが重要である。
その後、分別されたチタニルフタロシアニン結晶は、必要に応じて加熱乾燥される。加熱乾燥に使用する乾燥機は、公知のものがいずれも使用可能であるが、
大気下で行なう場合には送風型の乾燥機が好ましい。更に、乾燥速度を早め、本発明の効果をより顕著に発現させるために減圧下の乾燥も非常に有効な手段である。特に、高温で分解する、あるいは結晶型が変化する様な材料に対しては有効な手段である。特に10mmHgよりも真空度が高い状態で乾燥することが有効である。
1つは、先に作製したチタニルフタロシアニン結晶を有機溶媒中で処理する方法である。使用される有機溶媒としては、27.2゜に最大回折ピークを有する結晶型を、26.3゜に最大回折ピークを有する結晶型に変換できる溶媒であればいかなるものも使用できるが、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、アセトン、2―ブタノン等のケトン類、塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類が良好に用いられる。
有機溶媒の処理に関しては、前記チタニルフタロシアニン結晶を有機溶媒中にそのまま浸漬させておくだけでも構わないが、撹拌、超音波印加などの補助手段を併用することにより、処理時間を短縮することができ、有効である。有機溶媒による処理を行なった後、濾過分別して、再び乾燥を行なうことにより、目的とするチタニルフタロシアニン結晶を得ることができる。
いずれの方法を用いる場合にも、26.3゜のピーク強度が最大回折ピーク27.2゜のピーク強度に対して0.1〜5%の範囲であることが重要である。溶媒中での処理時間あるいは機械的剪断力を与える処理時間により26.3゜のピーク強度が決定されるが、使用する原料(1回目の結晶変換により作製したチタニルフタロシアニン結晶)の状態(例えば、粉末の大きさ、固さ等)によっても異なるため、予備的な実験により、処理時間を決定することが望ましい。
分散液の作製に関しては一般的な方法が用いられ、前記チタニルフタロシアニン結晶を必要に応じてバインダー樹脂とともに適当な溶剤中にボールミル、アトライター、サンドミル、ビーズミル、超音波などを用いて分散することで得られるものである。この際、バインダー樹脂は感光体の静電特性などにより、また溶媒は顔料へのぬれ性、顔料の分散性などにより選択すればよい。
使用するチタニルフタロシアニン結晶を粉末状態で、一般的なX線回折装置にて、X線回折スペクトルを測定する。得られたスペクトルに対して、ベースライン補正を行なった後、26.3±0.2゜のピーク強度、および27.2±0.2゜のピーク強度を求める。その値を用いて、26.3±0.2゜のピーク強度を27.2±0.2゜のピーク強度で割った値が、本発明で言うところのピーク強度比である。
ピーク強度比(%)=
(26.3±0.2゜のピーク強度/27.2±0.2゜のピーク強度)
図7は、本発明に用いられる電子写真感光体の構成例を示す断面図であり、導電性支持体(41)上に、電荷発生材料を主成分とする電荷発生層(45)と、電荷輸送材料を主成分とする電荷輸送層(47)とが、積層された構成をとっている。
また図8は、本発明に用いられる電子写真感光体の別の構成例を示す断面図であり、導電性支持体(41)上に、電荷発生材料を主成分とする電荷発生層(45)と、電荷輸送材料を主成分とする電荷輸送層(47)とが、積層され、その上に保護層(49)が積層された構成をとっている。
更に、適当な円筒基体上にポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、ポリテトラフロロエチレン系フッ素樹脂などの素材に前記導電性粉体を含有させた熱収縮チューブによって導電性層を設けてなるものも、本発明の導電性支持体(41)として良好に用いることができる。
電荷発生層(45)は、電荷発生物質として、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有する結晶型)に変換する工程である。特に、前記結晶型のうち、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、7.3°のピークと9.4゜のピークの間にピークを有さず、更に26.3゜にピークを有するチタニルフタロシアニン結晶が良好に用いられ、26.3゜のピーク強度が最大回折ピーク27.2゜のピーク強度に対して0.1〜5%の範囲であるチタニルフタロシアニン結晶は特に良好に用いられる。また、この結晶の一次粒子の平均粒子サイズが0.3μm未満(好ましくは0.25μm以下、より好ましくは0.2μm以下)であることは、本発明の効果を一層顕著にするものであり、有効な手段である。
電荷発生層(45)は、前記顔料を必要に応じてバインダー樹脂とともに適当な溶剤中にボールミル、アトライター、サンドミル、超音波などを用いて分散し、これを導電性支持体上に塗布し、乾燥することにより形成される。
電荷輸送物質には、正孔輸送物質と電子輸送物質とがある。電荷輸送物質としては、例えばクロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、ベンゾキノン誘導体等の電子受容性物質が挙げられる。
電荷輸送物質の量は結着樹脂100重量部に対し、20〜300重量部、好ましくは40〜150重量部が適当である。また、電荷輸送層の膜厚は5〜100μm程度とすることが好ましい。
ここで用いられる溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトンなどが用いられる。中でも、環境への負荷低減等の意図から、非ハロゲン系溶媒の使用は望ましいものである。具体的には、テトラヒドロフランやジオキソラン、ジオキサン等の環状エーテルやトルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、及びそれらの誘導体が良好に用いられる。
式中、R1、R2、R3はそれぞれ独立して置換もしくは無置換のアルキル基又はハロゲン原子、R4は水素原子又は置換もしくは無置換のアルキル基、R5、R6は置換もしくは無置換のアリール基、o、p、qはそれぞれ独立して0〜4の整数、k、jは組成を表わし、0.1≦k≦1、0≦j≦0.9、nは繰り返し単位数を表わし5〜5000の整数である。Xは脂肪族の2価基、環状脂肪族の2価基、または下記一般式で表わされる2価基を表わす。なお、(I)式は2つの共重合種が交互共重合体の形で記載されているが、ランダム共重合体でも構わない。
式中、R7、R8は置換もしくは無置換のアリール基、Ar1,Ar2,Ar3は同一又は異なるアリレン基を表わす。X,k,jおよびnは、(I)式の場合と同じである。なお、(II)式は2つの共重合種が交互共重合体の形で記載されているが、ランダム共重合体でも構わない。
式中、R9,R10は置換もしくは無置換のアリール基、Ar4,Ar5,Ar6は同一又は異なるアリレン基を表わす。X,k,jおよびnは、(I)式の場合と同じである。なお、(III)式は2つの共重合種が交互共重合体の形で記載されているが、ランダム共重合体でも構わない。
式中、R11,R12は置換もしくは無置換のアリール基、Ar7,Ar8,Ar9は同一又は異なるアリレン基を表わす。X,k,jおよびnは、(I)式の場合と同じである。なお、(IV)式は2つの共重合種が交互共重合体の形で記載されているが、ランダム共重合体でも構わない。
式中、R13,R14は置換もしくは無置換のアリール基、Ar10,Ar11,Ar12は同一又は異なるアリレン基、X1,X2は置換もしくは無置換のエチレン基、又は置換もしくは無置換のビニレン基を表わす。X,k,jおよびnは、(I)式の場合と同じである。なお、(V)式は2つの共重合種が交互共重合体の形で記載されているが、ランダム共重合体でも構わない。
式中、R15,R16,R17,R18は置換もしくは無置換のアリール基、Ar13,Ar14,Ar15,Ar16は同一又は異なるアリレン基、Y1,Y2,Y3は単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表わし同一であっても異なってもよい。X,k,jおよびnは、(I)式の場合と同じである。なお、(VI)式は2つの共重合種が交互共重合体の形で記載されているが、ランダム共重合体でも構わない。
式中、R21は置換もしくは無置換のアリール基、Ar20,Ar21,Ar22,Ar23は同一又は異なるアリレン基を表わす。X,k,jおよびnは、(I)式の場合と同じである。なお、(VIII)式は2つの共重合種が交互共重合体の形で記載されているが、ランダム共重合体でも構わない。
式中、R26,R27は置換もしくは無置換のアリール基、Ar29,Ar30,Ar31は同一又は異なるアリレン基を表わす。X,k,jおよびnは、(I)式の場合と同じである。なお、(X)式は2つの共重合種が交互共重合体の形で記載されているが、ランダム共重合体でも構わない。
保護層(49)に使用される材料としてはABS樹脂、ACS樹脂、オレフィン−ビニルモノマー共重合体、塩素化ポリエーテル、アリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリレート、ポリアリルスルホン、ポリブチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリメチルベンテン、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリスチレン、AS樹脂、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エポキシ樹脂等の樹脂が挙げられる。中でも、ポリカーボネートもしくはポリアリレートが最も良好に使用できる。
また、感光体の保護層に用いられるフィラー材料のうち有機性フィラー材料としては、ポリテトラフルオロエチレンのようなフッ素樹脂粉末、シリコーン樹脂粉末、a−カーボン粉末等が挙げられ、無機性フィラー材料としては、銅、スズ、アルミニウム、インジウムなどの金属粉末、シリカ、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス、アンチモンをドープした酸化錫、錫をド−プした酸化インジウム等の金属酸化物、チタン酸カリウムなどの無機材料が挙げられる。特に、フィラーの硬度の点からは、この中でも無機材料を用いることが有利である。特に、シリカ、酸化チタン、アルミナが有効に使用できる。
また、使用するフィラーの体積平均粒径は、0.1μm〜2μmの範囲が良好に使用され、好ましくは0.3μm〜1μmの範囲である。この場合、平均粒径が小さすぎると耐摩耗性が充分に発揮されず、大きすぎると塗膜の表面性が悪くなったり、塗膜そのものが形成できなかったりするからである。
もう一つの理由としては、フィラー、特に金属酸化物の表面における帯電性の違いによるものである。通常、液体中に分散している粒子はプラスあるいはマイナスに帯電しており、それを電気的に中性に保とうとして反対の電荷を持つイオンが集まり、そこで電気二重層が形成されることによって粒子の分散状態は安定化している。粒子から遠ざかるに従いその電位(ゼータ電位)は徐々に低くなり、粒子から充分に離れて電気的に中性である領域の電位はゼロとなる。したがって、ゼータ電位の絶対値の増加によって粒子の反発力が高くなることによって安定性は高くなり、ゼロに近づくに従い凝集しやすく不安定になる。
一方、系のpH値によってゼータ電位は大きく変動し、あるpH値において電位はゼロとなり等電点を持つことになる。したがって、系の等電点からできるだけ遠ざけて、ゼータ電位の絶対値を高めることによって分散系の安定化が図られることになる。
本発明の構成においては、フィラーとしては前述の等電点におけるpHが、少なくとも5以上を示すものが画像ボケ抑制の点から好ましく、より塩基性を示すフィラーであるほどその効果が高くなる傾向があることが確認された。等電点におけるpHが高い塩基性を示すフィラーは、系が酸性であった方がゼータ電位はより高くなることにより、分散性及びその安定性は向上することになる。
ここで、本発明におけるフィラーのpHは、ゼータ電位から等電点におけるpH値を記載した。この際、ゼータ電位の測定は、大塚電子(株)製レーザーゼータ電位計にて測定した。
これらフィラー材料は、適当な分散機を用いることにより分散できる。また、保護層の透過率の点から使用するフィラーは1次粒子レベルまで分散され、凝集体が少ない方が好ましい。
保護層の形成法としては通常の塗布法が採用される。なお保護層の厚さは0.1〜10μm程度が適当である。また、以上の他に真空薄膜作成法にて形成したa−C、a−SiCなど公知の材料を保護層として用いることができる。
上述したように、感光層(電荷輸送層)に高分子電荷輸送物質を使用したり、あるいは感光体の表面に保護層を設けることは、各々の感光体の耐久性(耐摩耗性)を高めるだけでなく、タンデム型フルカラー画像形成装置中で使用される場合には、モノクロ画像形成装置にはない新たな効果をも生み出すものである。
フルカラーの画像の場合、様々な形態の画像が入力されるが、逆に定型的な画像も入力される場合がある。例えば、日本語の文書等における検印の存在などである。検印のようなものは通常、画像領域の端の方に位置され、また使用される色も限定される。ランダムな画像が常に書き込まれているような状態においては、画像形成要素中の感光体には、平均的に画像書き込み、現像、転写が行なわれることになるが、上述のように特定の部分に数多くの画像形成が繰り返されたり、特定の画像形成要素ばかり使用された場合には、その耐久性のバランスを欠くことにつながる。このような状態で表面の耐久性(物理的・化学的・機械的)の小さな感光体が使用された場合には、この差が顕著になり、画像上の問題になりやすい。一方、感光体を高耐久化した場合には、このような局所的な変化量が小さく、結果的に画像上の欠陥として現れにくくなるため、高耐久化を実現すると共に、出力画像の安定性をも増すことになり、非常に有効である。
(合成例1)
1,3−ジイミノイソインドリン29.2gとスルホラン200mlを混合し、窒素気流下でチタニウムテトラブトキシド20.4gを滴下する。滴下終了後、徐々に180℃まで昇温し、反応温度を170℃〜180℃の間に保ちながら5時間撹拌して反応を行なった。反応終了後、放冷した後析出物を濾過し、クロロホルムで粉体が青色になるまで洗浄し、つぎにメタノールで数回洗浄し、さらに80℃の熱水で数回洗浄した後乾燥し、粗チタニルフタロシアニンを得た。粗チタニルフタロシアニンを20倍量の濃硫酸に溶解し、100倍量の氷水に撹拌しながら滴下し、析出した結晶をろ過、ついで洗浄液が中性になるまで水洗いを繰り返し、チタニルフタロシアニン顔料のウェットケーキを得た。得られたこのウェットケーキ2gをテトラヒドロフラン20gに投入し、4時間攪拌を行なった後、濾過を行ない、乾燥して、チタニルフタロシアニン結晶を得た。
更に、このチタニルフタロシアニン結晶30gをテトラヒドロフラン300gに浸漬し、2回目の結晶変換を行なった。12時間浸漬放置した後、濾過分別し、上記と同じ条件で減圧乾燥を行ない、本発明で用いるチタニルフタロシアニン結晶を得た。これを顔料1とする。
合成例1における2回目の結晶変換操作を下記の通りの条件に変更した以外は、合成例1と同様に処理を行ない、本発明のチタニルフタロシアニン結晶を得た。これを顔料2とする。
(2回目の結晶変換処理)
1回目の結晶変換処理を行なったチタニルフタロシアニン結晶30gを、市販のミキサーにより機械的剪断力を5分間与えた後、粉末を取り出した。
合成例1における2回目の結晶変換操作を下記の通りの条件に変更した以外は、合成例1と同様に処理を行ない、本発明のチタニルフタロシアニン結晶を得た。これを顔料3とする。
(2回目の結晶変換処理)
1回目の結晶変換処理を行なったチタニルフタロシアニン結晶30gを、2kgのφ6mmのジルコニアボールと共に、φ90mmのガラスポットに投入し、乾式ミリングを10分間行なった後、粉末を取り出した。
合成例1における2回目の結晶変換溶媒をテトラヒドロフランから2−ブタノンに変更した以外は、合成例1と同様に処理を行ない、本発明のチタニルフタロシアニン結晶を得た。これを顔料4とする。
合成例1において、1回目の結晶変換溶媒として、テトラヒドロフランの代わりに2−ブタノンを用い、2回目の結晶変換を行わない以外は、合成例1と同様に処理を行ない、チタニルフタロシアニン結晶を得た。これを顔料5とする。
上述のように得られた水ペーストの乾燥粉末と、合成例1〜3および比較合成例1〜2で得られたチタニルフタロシアニン結晶についてのX線回折スペクトルを以下に示す条件で測定した。水ペーストの乾燥粉末のX線回折スペクトルを図9に示す。
X線管球:Cu
電圧:40kV
電流:20mA
走査速度:1°/分
走査範囲:3°〜40°
時定数:2秒
比較合成例1で得られたチタニルフタロシアニン結晶のX線回折スペクトルを図11に示すが、26.3°にピークを示さないものであった。
比較合成例2で得られたチタニルフタロシアニン結晶のX線回折スペクトルを図12に示すが、最低角が7.5°に存在するものであった。
特開平1−299874号(特許第2512081号)公報、実施例1に記載の方法に準じて、顔料を作製した。すなわち、先の合成例1で作製したウェットケーキを乾燥し、乾燥物1gをポリエチレングリコール50gに加え、100gのガラスビーズと共に、サンドミルを行なった。結晶転移後、希硫酸、水酸化アンモニウム水溶液で順次洗浄し、乾燥して顔料を得た。これを顔料6とする。
特開平3−269064号(特許第2584682号)公報、製造例1に記載の方法に準じて、顔料を作製した。すなわち、先の合成例1で作製したウェットケーキを乾燥し、乾燥物1gをイオン交換水10gとモノクロルベンゼン1gの混合溶媒中で1時間撹拌(50℃)した後、メタノールとイオン交換水で洗浄し、乾燥して顔料を得た。これを顔料7とする。
特開平2−8256号(特公平7−91486号)公報の製造例に記載の方法に準じて、顔料を作製した。すなわち、フタロジニトリル9.8gと1−クロロナフタレン75mlを撹拌混合し、窒素気流下で四塩化チタン2.2mlを滴下する。滴下終了後、徐々に200℃まで昇温し、反応温度を200℃〜220℃の間に保ちながら3時間撹拌して反応を行なった。反応終了後、放冷し130℃になったところ熱時ろ過し、次いで1−クロロナフタレンで粉体が青色になるまで洗浄、次にメタノールで数回洗浄し、さらに80℃の熱水で数回洗浄した後、乾燥し顔料を得た。これを顔料8とする。
特開昭64−17066号(特公平7−97221号)公報、合成例1に記載の方法に準じて、顔料を作製した。すなわち、α型TiOPc5部を食塩10gおよびアセトフェノン5gと共にサンドグラインダーにて100℃にて10時間結晶変換処理を行なった。これをイオン交換水及びメタノールで洗浄し、希硫酸水溶液で精製し、イオン交換水で酸分がなくなるまで洗浄した後、乾燥して顔料を得た。これを顔料9とする。
特開平11−5919号(特許第3003664号)公報、実施例1に記載の方法に準じて、顔料を作製した。すなわち、O−フタロジニトリル20.4部、四塩化チタン部7.6部をキノリン50部中で200℃にて2時間加熱反応後、水蒸気蒸留で溶媒を除き、2%塩化水溶液、続いて2%水酸化ナトリウム水溶液で精製し、メタノール、N,N−ジメチルホルムアミドで洗浄後、乾燥し、チタニルフタロシアニンを得た。このチタニルフタロシアニン2部を5℃の98%硫酸40部の中に少しずつ溶解し、その混合物を約1時間、5℃以下の温度を保ちながら攪拌する。続いて硫酸溶液を高速攪拌した400部の氷水中に、ゆっくりと注入し、析出した結晶を濾過する。結晶を酸が残量しなくなるまで蒸留水で洗浄し、ウエットケーキを得る。そのケーキをTHF100部中で約5時間攪拌を行ない、ろ過、THFによる洗浄を行ない乾燥後、顔料を得た。これを顔料10とする。
特開平3−255456号(特許第3005052号)公報、合成例2に記載の方法に準じて、顔料を作製した。すなわち、左記の合成例1で作製したウェットケーキ10部を塩化ナトリウム15部とジエチレングリコール7部に混合し、80℃の加熱下で自動乳鉢により60時間ミリング処理を行なった。次に、この処理品に含まれる塩化ナトリウムとジエチレングリコールを完全に除去するために充分な水洗を行なった。これを減圧乾燥した後にシクロヘキサノン200部と直径1mmのガラスビーズを加えて、30分間サンドミルにより処理を行ない、顔料を得た。これを顔料11とする。
特開平11−5919号(特許第3003664号)公報、実施例4に記載の方法に準じて、顔料を作製した。すなわち、先の比較合成例7で得られたウェットケーキを5%の塩酸で洗浄し、中性になるまで水洗・濾過を行ない、乾燥した。更にこれをTHFと共にボールミルで10時間分散し、濾過・乾燥して顔料粉末を得た。これを顔料12とする。
特開平5−134437号(特許第3196260号)公報、製造例1及び製造例2に記載の方法に準じて、顔料を作製した。
即ち、フタロジニトリル97.5gをα−クロロナフタレン750ml中に加え、次に窒素雰囲気下で四塩化チタン22mlを滴下する。滴下後昇温し、撹拌しながら200〜220℃で3時間反応させた後、放冷し、100〜130℃で熱時濾過し、100℃に加熱したα−クロロナフタレン200mlで洗浄した。更に200mlのN−メチルピロリドンで熱懸洗処理(100℃、1時間)を3回行なった。続いてメタノール300mlで室温にて懸洗しさらにメタノール500mlで1時間熱懸洗を3回行なった。これをフタロシアニン1とする。
次いで、フタロシアニン1をサンドグラインドミルにて20時間磨砕処理しを行ない、続いて水400ml、o−ジクロロベンゼン40mlの懸濁液中に入れ、60℃で1時間加熱処理を行なった。これをフタロシアニン2とする。
更に、特開平5−134437号公報実施例1に準じて、フタロシアニン1およびフタロシアニン2をそれぞれ6重量部および4重量部混合し、n−プロパノール200重量部を加え、サンドグラインドミルで10時間粉砕、微粒化分散処理を行なった。これを乾燥して、フタロシアニン粉末を得た。これを顔料13とする。
1,3−ジイミノイソインドリン292部とスルホラン1800部を混合し、窒素気流下でチタニウムテトラブトキシド204部を滴下する。滴下終了後、徐々に180℃まで昇温し、反応温度を170℃〜180℃の間に保ちながら5時間撹拌して反応を行なった。反応終了後、放冷した後析出物を濾過し、クロロホルムで粉体が青色になるまで洗浄し、つぎにメタノールで数回洗浄し、さらに80℃の熱水で数回洗浄した後乾燥し、粗チタニルフタロシアニンを得た。得られた熱水洗浄処理した粗チタニルフタロシアニン顔料のうち60部を96%硫酸1000部に3〜5℃下で撹拌、溶解し、ろ過した。得られた硫酸溶液を氷水35000部中に撹拌しながら滴下し、析出した結晶を濾過、ついで洗浄液が中性になるまで水洗を繰り返し、チタニルフタロシアニン顔料の水ペーストを得た。
この水ペーストにテトラヒドロフラン1500部を加え、室温下でホモミキサー(ケニス、MARK,,fモデル)により強烈に撹拌(2000rpm)し、ペーストの濃紺色の色が淡い青色に変化したら(撹拌開始後20分)、撹拌を停止し、直ちに減圧濾過を行なった。濾過装置上で得られた結晶をテトラヒドロフランで洗浄し、顔料のウェットケーキ98部を得た。これを減圧下(5mmHg)、70℃で2日間乾燥して、チタニルフタロシアニン結晶78部を得た。更に、このチタニルフタロシアニン結晶30gをテトラヒドロフラン300gに浸漬し、2回目の結晶変換を行なった。12時間浸漬放置した後、濾過分別し、上記と同じ条件で減圧乾燥を行ない、本発明で用いるチタニルフタロシアニン結晶を得た。これを顔料14とする。
なお、表1中の26.3°のピーク強度とは、前述の通り、26.3°のピーク強度の27.2°のピーク強度の比である。この計算に際して、図10のように26.3°のピークが明確に観測されない場合には、ピーク強度=0として計算を行なった。
直径60mmのアルミニウムシリンダー(JIS1050)に、下記組成の下引き層塗工液、電荷発生層塗工液、および電荷輸送層塗工液を、順次塗布・乾燥し、3.5μmの下引き層、電荷発生層、25μmの電荷輸送層を形成し、積層感光体を作製した(感光体1とする)。なお、電荷発生層の膜厚は、780nmにおける電荷発生層の透過率が20%になるように調整した。電荷発生層の透過率は、下記組成の電荷発生層塗工液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムを巻き付けたアルミシリンダーに感光体作製と同じ条件で塗工を行ない、比較対照を電荷発生層を塗工していないポリエチレンテレフタレートフィルムとし、市販の分光光度計(島津:UV−3100)にて、780nmの透過率を評価した。
酸化チタン(CR−EL:石原産業社製) 70部
アルキッド樹脂 15部
(ベッコライトM6401−50−S(固形分50%)、
大日本インキ化学工業製)
メラミン樹脂 10部
(スーパーベッカミンL−121−60(固形分60%)、
大日本インキ化学工業製)
2−ブタノン 100部
下記組成の分散液を下に示す条件のビーズミリングにより作製した。
顔料1 15部
ポリビニルブチラール(積水化学製:BX−1) 10部
2−ブタノン 280部
市販のビーズミル分散機に直径0.5mmのPSZボールを用い、ポリビニルブチラールを溶解した2−ブタノンおよび顔料を全て投入し、ローター回転数1500r.p.m.にて30分間分散を行ない、分散液を作製した。
作製した分散液中のチタニルフタロシアニン結晶粒子サイズを堀場製作所:CAPA−700で測定した。その結果、平均粒径は0.24μmであった。
◎電荷輸送層塗工液
ポリカーボネート 10部
(TS2050:帝人化成社製 粘度平均分子量は約5万である)
下記構造式の電荷輸送物質 7部
感光体作製例1で使用した電荷発生層塗工液に用いたチタニルフタロシアニン顔料(顔料1)をそれぞれ、合成例2〜3(顔料2〜3)、比較合成例1〜10(顔料2〜13)で作製したチタニルフタロシアニン顔料に変更した以外は、感光体作製例1と同様に感光体を作製した。なお、電荷発生層の膜厚は、感光体作製例1と同様に、すべての塗工液を用いた場合に780nmの透過率が20%になるように調整した。
感光体作製例2〜13で使用した電荷発生層塗工液の平均粒子サイズは、先ほどと同様に堀場製作所:CAPA−700で測定した。その結果、各塗工液の平均粒径は以下の通りであった。
作製例2:0.23μm
作製例3:0.24μm
作製例4:0.24μm
作製例5:0.25μm
作製例6:0.26μm
作製例7:0.30μm
作製例8:0.28μm
作製例9:0.24μm
作製例10:0.27μm
作製例11:0.24μm
作製例12:0.28μm
作製例13:0.26μm
以上のように作製した感光体作製例1〜13の電子写真感光体を図1に示す電子写真装置(露光−現像間は、150msec)に搭載し、画像露光光源を780nmの半導体レーザ(ポリゴン・ミラーによる画像書き込み)として、600dpiの解像度で書き込みを行ない、帯電部材として図2に示すような非接触近接帯電方式の帯電ローラー(両端に厚さ50μmの絶縁性テープを巻き付けたもの)を用い、下記の帯電、露光条件にて、1ドットライン画像およびベタ画像を出力した。また、同時に、現像部位置における感光体の表面電位(未露光部および画像露光部)を測定するために、現像器が装着される位置に電位計がセットできるような治具を用いて、感光体の表面電位を測定した。露光部電位の測定においては、所定の光量にてベタ書き込み行なった場合の表面電位を測定した(評価環境は、23℃−55%RHである)。以上の結果を表2に示す。
帯電条件:
DCバイアス:−900V
ACバイアス:2.0kV(peak to peak)
周波数:1.5kHz
画像露光条件:
感光体表面での露光エネルギーとして、4.5erg./cm2、6.0erg./cm2の2条件
また、感光体作製例1〜5で作製した感光体を用いた場合には、露光量4.5erg/cm2の場合には良好な画像を形成したが、露光量6.0erg/cm2の場合にはライン太りを生じた。
感光体作製例1〜14で作製した感光体を、先の参考例1と同じ装置に搭載して、3万枚の画像出力を行なった。帯電条件は、参考例1の場合と同じであるが、露光条件は露光量4.5erg./cm2のみとした。出力した画像は、書き込み率6%のチャートである。また、初期および3万枚ラン後に、白ベタ画像を出力して地肌部の汚れをランクとして評価した。更に、初期および3万枚ラン後に、感光体の未露光部および露光部の表面電位を参考例1と同じ方法により測定した。これらの評価は、22℃−55%RH、10℃−15%RH、30℃−90%RHの3環境にて行なった。結果を表3に示す。
22℃−55%RH環境下での評価結果
これに対し、感光体作製例4〜5を用いた場合には、高温高湿、低温低湿下での電位変動量が大きく、また高温高湿下での地汚れが悪いことが分かる。また、感光体作製例6〜10の感光体を用いた場合には、露光部電位が高く、また3環境での電位安定性、地汚れ特性で劣ることが分かる。感光体作製例11〜13の感光体を用いた場合には、その他の場合に比べて明らかに露光部電位が高く、また3環境における電位安定性も劣ることが分かる。
感光体作製例1における電荷輸送層塗工液を以下の組成のものに変更した以外は、感光体作製例1と同様に感光体を作製した。
◎電荷輸送層塗工液
下記組成の高分子電荷輸送物質 10部
(重量平均分子量:約140000)
感光体作製例1における電荷輸送層の膜厚を20μmとし、電荷輸送層上に下記組成の保護層塗工液を塗布乾燥し、5μmの保護層を設けた以外は感光体作製例1と同様に感光体を作製した。
◎保護層塗工液
ポリカーボネート 10部
(TS2050:帝人化成社製 粘度平均分子量は約5万である)
下記構造式の電荷輸送物質 7部
感光体作製例15における保護層塗工液中のアルミナ微粒子を以下のものに変更した以外は、感光体作製例15と同様に感光体を作製した。
酸化チタン微粒子 4部
(比抵抗:1.5×1010Ω・cm、平均一次粒径:0.5μm)
感光体作製例15における保護層塗工液中のアルミナ微粒子を以下のものに変更した以外は、感光体作製例15と同様に感光体を作製した。
酸化錫−酸化アンチモン粉末 4部
(比抵抗:106Ω・cm、平均1次粒径0.4μm)
感光体作製例1におけるアルミニウムシリンダー(JIS1050)を以下の陽極酸化皮膜処理を行ない、次いで下引き層を設けずに、感光体作製例1と同様に電荷発生層、電荷輸送層を設け、感光体を作製した。
◎陽極酸化皮膜処理
支持体表面の鏡面研磨仕上げを行ない、脱脂洗浄、水洗浄を行なった後、液温20℃、硫酸15vol%の電解浴に浸し、電解電圧15Vにて30分間陽極酸化皮膜処理を行なった。更に、水洗浄を行なった後、7%の酢酸ニッケル水溶液(50℃)にて封孔処理を行なった。その後純水による洗浄を経て、7μmの陽極酸化皮膜が形成された支持体を得た。
感光体作製例1におけるチタニルフタロシアニン結晶を、合成例1で作製した顔料1から、合成例4で作製した顔料14に変更した以外は、感光体作製例1と同様に感光体を作製した。なお、顔料14を用いた電荷発生層塗工液の平均粒径は、0.20μmであった。
図15および図16に顔料1の分散液および顔料14の分散液の電子顕微鏡写真を示す。図から明らかなように、顔料14の粒子サイズは顔料1の粒子サイズに比べ、粒子サイズが細かくまた、粒子サイズが均一に揃っていることが分かる。
感光体作製例1における電荷発生層塗工液を以下のものに変更した以外は、感光体作製例1と同様に感光体を作製した。
◎電荷発生層塗工液
下記組成の分散液を下に示す条件のビーズミリングにより作製した。
合成例1で作製したチタニルフタロシアニン顔料(顔料1) 15部
ポリビニルブチラール(積水化学製:BX−1) 10部
2−ブタノン 280部
市販のビーズミル分散機に直径0.5mmのPSZボールを用い、ポリビニルブチラールを溶解した2−ブタノンおよび顔料を全て投入し、ローター回転数1500r.p.m.にて30分間分散を行ない、分散液を作製した。分散液をビーズミル装置より取り出して、アドバンテック社製、コットンワインドカートリッジフィルター、TCW−3−CS(有効孔径3μm)を用いて、濾過を行なった。濾過に際しては、ポンプを使用し、加圧状態で濾過を行なった。
作製した分散液中のチタニルフタロシアニン結晶粒子サイズを堀場製作所:CAPA−700で測定した。その結果、平均粒径は0.21μmであった。
また、感光体作製例20で使用した電荷発生層塗工液および感光体作製例1で使用した電荷発生層塗工液をスライドガラス上に薄く塗工し、光学顕微鏡(50倍)にて塗膜の状態を観察した(それぞれ図17及び図18に電子顕微鏡写真を示す)。その結果、感光体作製例1で使用した電荷発生層塗工液中にはわずかな粗大粒子の存在(図18における黒っぽい粒)が認められたが、感光体作製例20で使用した電荷発生層塗工液中には粗大粒子の存在は認められなかった。
以上のように作製した感光体作製例1〜5および14〜20の電子写真感光体を図1に示す電子写真装置(露光−現像間は、150msec)に搭載し、画像露光光源を780nmの半導体レーザ(ポリゴン・ミラーによる画像書き込み)として、600dpiの解像度で書き込みを行ない、帯電部材として帯電部材として図2に示すような帯電ローラーの両端部に厚さ50μmの絶縁テープを巻き付けた近接配置用の帯電部材(感光体と帯電部材表面間の空隙が50μm)を用い、下記の帯電、露光条件にて、書き込み率6%のチャートを用い、連続して10万枚の印刷を行ない、初期及び10万枚後の画像を評価した(ランニング環境は、22℃−55%RHである)。初期および10万枚後に白ベタ画像を出力して地汚れ(下記のランク)の評価を行なった。また、10万枚後に、ハーフトーン画像を出力し、画像評価を行なった。更に、10万枚出力における感光体表面の摩耗量(保護層を有する場合は保護層の摩耗量)を測定した。
以上の結果を表4に示す。
帯電条件:
DCバイアス:−900V
ACバイアス:2.0kV(peak to peak)
周波数:1.5kHz
画像露光条件:
感光体表面での露光エネルギーとして、4.5erg./cm2の光を照射した。
5:地汚れほとんどなし、
4:わずかにあり、
3:実使用限界レベル、
2以下:実使用には耐えないレベル
参考例7及び実施例1、2のハーフトーン画像を拡大して観察すると、参考例7の画像に比べ、実施例1、2のドットは輪郭がはっきりしていた。
感光体作製例1および作製例20の感光体を用い、参考例1で用いた装置の光学系を変更し、1200dpiおよび400dpiでの書き込みを行ない(露光量は4.5erg./cm2、6.0erg./cm2の2条件)、参考例1と同様に画像評価を行なった。結果を表5に示す。
参考例9において10万枚のランニング試験の後、30℃−90%RH環境下で1ドット画像を出力し、画像評価を行なった。
参考例9における帯電部材を近接配置用帯電部材からスコロトロン・チャージャーに変更し、感光体非画像部の表面電位を参考例9と同じ(−900V)にあわせるようにセッティングした。これ以外の条件を変更せずに、参考例9と同様に10万枚のランニング試験を行なった。10万枚のランニング試験の後、参考例16と同様に30℃−90%RH環境下で1ドット画像を出力し、画像評価を行なった。
参考例9における帯電部材を近接配置用帯電部材から接触用帯電部材(空隙無し)に変更し、帯電条件を参考例9と同じ条件にセッティングした。これ以外の条件を変更せずに、参考例2と同様に10万枚のランニング試験を行なった。10万枚のランニング試験の後、参考例16と同様に30℃−90%RH環境下で1ドット画像を出力し、画像評価を行なった。
参考例18における帯電条件を以下のように変更した以外は、参考例18と同様に評価を行なった。
帯電条件:
DCバイアス:−1580V(感光体非画像部の表面電位が−900V)
ACバイアス:なし
参考例9における帯電条件を以下のように変更した以外は、参考例9と同様に評価を行なった。10万枚のランニング試験の後、参考例16と同様に30℃−90%RH環境下で1ドット画像を出力し、画像評価を行なった。
帯電条件:
DCバイアス:−1580V(感光体非画像部の表面電位が−900V)
ACバイアス:なし
参考例9で使用した帯電部材(近接帯電ローラー)のギャップを100μmに変更した以外は、参考例9と同様に評価を行なった。10万枚のランニング試験の後、参考例16と同様に30℃−90%RH環境下で1ドット画像を出力し、画像評価を行なった。
参考例9で使用した帯電部材(近接帯電ローラー)のギャップを150μmに変更した以外は、参考例9と同様に評価を行なった。10万枚のランニング試験の後、参考例16と同様に30℃−90%RH環境下で1ドット画像を出力し、画像評価を行なった。
参考例9で使用した帯電部材(近接帯電ローラー)のギャップを250μmに変更した以外は、参考例9と同様に評価を行なった。10万枚のランニング試験の後、参考例16と同様に30℃−90%RH環境下で1ドット画像を出力し、画像評価を行なった。
以上の参考例16〜23における評価結果を表6に示す。
感光体作製例1の電荷輸送層塗工液を以下の組成に変更した以外は、感光体作製例1と同様に感光体を作製した。
◎電荷輸送層塗工液
ポリカーボネート 10部
(TS2050:帝人化成社製 粘度平均分子量は約5万である)
下記構造式の電荷輸送物質 7部
感光体作製例10の電荷輸送層塗工液を以下の組成に変更した以外は、感光体作製例10と同様に感光体を作製した。
◎電荷輸送層塗工液
ポリカーボネート 10部
(TS2050:帝人化成社製 粘度平均分子量は約5万である)
下記構造式の電荷輸送物質 7部
感光体作製例1の電荷輸送層塗工液を以下の組成に変更した以外は、感光体作製例1と同様に感光体を作製した。
◎電荷輸送層塗工液
ポリカーボネート 10部
(TS2050:帝人化成社製 粘度平均分子量は約5万である)
下記構造式の電荷輸送物質 7部
感光体作製例1の電荷輸送層塗工液を以下の組成に変更した以外は、感光体作製例1と同様に感光体を作製した。
◎電荷輸送層塗工液
ポリカーボネート 10部
(TS2050:帝人化成社製 粘度平均分子量は約5万である)
下記構造式の電荷輸送物質 7部
以上のように作製した感光体作製例21〜24の感光体を参考例1の場合と同様に、図1に示す電子写真装置(露光−現像間は、150msec)に搭載し、画像露光光源を780nmの半導体レーザ(ポリゴン・ミラーによる画像書き込み)として、600dpiの解像度で書き込みを行ない、帯電部材として図2に示すような非接触近接帯電方式の帯電ローラー(両端に厚さ50μmの絶縁性テープを巻き付けたもの)を用い、下記の帯電、露光条件にて、1ドットライン画像およびベタ画像を出力した。また、同時に、現像部位置における感光体の表面電位(未露光部および画像露光部)を測定するために、現像器が装着される位置に電位計がセットできるような治具を用いて、感光体の表面電位を測定した。露光部電位の測定においては、所定の光量にてベタ書き込み行なった場合の表面電位を測定した。以上の結果を参考例1および比較例5と併せて表7に示す。
帯電条件:
DCバイアス:−900V
ACバイアス:2.0kV(peak to peak)
周波数:1.5kHz
画像露光条件:
感光体表面での露光エネルギーとして、4.5erg./cm2
感光体作製例1のアルミシリンダーを直径30mmのものに変え、感光体作製例1と同じ組成の感光体を作製した。
感光体作製例8のアルミシリンダーを直径30mmのものに変え、感光体作製例8と同じ組成の感光体を作製した。
感光体作製例9のアルミシリンダーを直径30mmのものに変え、感光体作製例9と同じ組成の感光体を作製した。
以上のように作製した感光体作製例25〜27の感光体を、帯電部材と共に1つの電子写真装置用プロセスカートリッジに装着し、更に図5に示すフルカラー電子写真装置(露光−現像間は、100msec)に搭載した。4つの画像形成要素は以下に示すプロセス条件にてフルカラー画像3万枚の画像評価を行なった。評価は、初期及び3万枚後の白ベタ画像、フルカラー画像を評価した。また、黒現像部での感光体画像部と非画像部の表面電位を参考例1と同様な方法で評価した。
結果を表8に示す。
帯電条件:
DCバイアス:−800V、
ACバイアス:1.5kV(peak to peak)
周波数:2.0kHz
帯電部材:参考例1に使用したものと同じ
書き込み:書き込み:780nmのLD(ポリゴン・ミラー使用)、1200dpiで書き込みを行なった。
光量:感光体表面での露光エネルギーとして、4.5erg./cm2、6.0erg./cm2の2条件
(測定例1)
合成例1で得られた顔料(最低角7.3°)に特開昭61−239248号公報に記載の顔料(最大回折ピークを7.5°に有する)と同様に作製したものを3重量%添加し、乳鉢で混合して、先程と同様にX線回折スペクトルを測定した。測定例1のX線回折スペクトルを図13に示す。
(測定例2)
比較合成例1で得られた顔料(最低角7.5°)に特開昭61−239248号公報に記載の顔料(最大回折ピークを7.5°に有する)と同様に作製したものを3重量%添加し、乳鉢で混合して、先程と同様にX線回折スペクトルを測定した。測定例2のX線回折スペクトルを図14に示す。
以上のことから、本願発明のチタニルフタロシアニン結晶における最低角ピークである7.3°は、公知のチタニルフタロシアニン結晶における7.5°のピークとは異なるものであることが判る。
2C、2M、2Y、2K………帯電部材
3C、3M、3Y、3K………レーザ光
4C、4M、4Y、4K………現像部材
5C、5M、5Y、5K………クリーニング部材
6C、6M、6Y、6K………画像形成要素
7………転写紙
8………給紙コロ
9………レジストローラ
10………転写搬送ベルト
11C、11M、11Y、11K………転写ブラシ
12………定着装置
21………感光体
22………除電ランプ
23………帯電部材
25………画像露光部
26………現像ユニット
27………転写前チャージャ
28………レジストローラ
29………転写紙
30………転写チャージャ
31………分離チャージャ
32………分離爪
33………クリーニング前チャージャ
34………ファーブラシ
35………ブレード
41………導電性支持体
45………電荷発生層
47………電荷輸送層
49………保護層
50………感光体
51………帯電ローラー
52………ギャップ形成部材
53………金属シャフト
54………画像形成領域
55………非画像形成領域
61………感光体
62a………駆動ローラ
62b………駆動ローラ
63………帯電チャージャ
64………像露光源
65………転写チャージャ
66………クリーニング前露光
67………クリーニングブラシ
68………除電光源
69………現像ユニット
71………感光体
73………帯電ローラ
75………画像露光部
76………クリーニングブラシ
77………現像ローラ
78………転写ローラ
Claims (14)
- 少なくとも帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、及び電子写真感光体を具備してなり、露光手段から現像手段までの時間が200msec以下の電子写真装置であって、600dpi以上の解像度を有する書き込み光を露光手段から感光体に照射する際の露光エネルギーが感光体表面において5erg/cm2以下であり、かつ電子写真感光体が導電性支持体上に少なくとも電荷発生層と電荷輸送層を順に積層してなる電子写真感光体であり、該電荷発生層中にCuKα線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2°)として、少なくとも27.2°に最大回折ピークを有し、更に9.4°、9.6°、24.0°に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3°にピークを有し、7.3°のピークと9.4°のピークの間にピークを有さず、更に26.3°にピークを有し、26.3°のピーク強度が、最大回折ピーク27.2°のピーク強度に対して0.1〜5%の範囲であるチタニルフタロシアニン結晶を含有し、該電荷発生層を形成するための分散液が有効孔径が3μm以下のフィルターにて濾過されたものであり、該分散液中の前記チタニルフタロシアニン結晶の平均サイズが0.21μm以下であることを特徴とする電子写真装置。
- 少なくとも帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、及び電子写真感光体を具備してなり、露光手段から現像手段までの時間が200msec以下の電子写真装置であって、600dpi以上の解像度を有する書き込み光を露光手段から感光体に照射する際の露光エネルギーが感光体表面において5erg/cm 2 以下であり、かつ電子写真感光体が導電性支持体上に少なくとも電荷発生層と電荷輸送層を順に積層してなる電子写真感光体であり、該電荷発生層中にCuKα線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2°)として、少なくとも27.2°に最大回折ピークを有し、更に9.4°、9.6°゜24.0°に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3°にピークを有し、7.3°のピークと9.4°のピークの間にピークを有さず、更に26.3°にピークを有し、26.3°のピーク強度が、最大回折ピーク27.2°のピーク強度に対して0.1〜5%の範囲であるチタニルフタロシアニン結晶を含有し、前記チタニルフタロシアニン結晶が、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2°)として、少なくとも7.0〜7.5°に最大回折ピークを有し、その回折ピークの半値巾が1°以上である一次粒子の平均サイズが0.1μm以下の不定形チタニルフタロシアニンもしくは低結晶性チタニルフタロシアニンを水の存在下で有機溶媒により結晶変換を行ない、結晶変換後の一次粒子の平均サイズが0.20μmよりも大きく成長する前に、有機溶媒より結晶変換後のチタニルフタロシアニンを分別、濾過されたものであることを特徴とする電子写真装置。
- 前記電荷輸送層に少なくともトリアリールアミン構造を主鎖および/または側鎖に含むポリカーボネートを含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の電子写真装置。
- 前記電荷輸送層上に保護層を有することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の電子写真装置。
- 前記保護層に比抵抗1010Ω・cm以上の無機顔料又は金属酸化物を含有することを特徴とする請求項4に記載の電子写真装置。
- 前記感光体の電荷輸送層が、非ハロゲン系溶媒を用いて形成されたものであることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の電子写真装置。
- 前記非ハロゲン系溶媒として、少なくとも環状エーテル、あるいは芳香族系炭化水素より選ばれる1種を用いることを特徴とする請求項6に記載の電子写真装置。
- 前記電子写真感光体の導電性支持体表面が、陽極酸化皮膜処理されたものであることを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載の電子写真装置。
- 少なくとも帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、及び電子写真感光体からなる画像形成要素を複数配列したことを特徴とする請求項1乃至8の何れかに記載の電子写真装置。
- 前記電子写真装置の帯電手段に、接触帯電方式を用いることを特徴とする請求項1乃至9の何れかに記載の電子写真装置。
- 前記電子写真装置の帯電手段に、非接触の近接配置方式を用いることを特徴とする請求項1乃至9の何れかに記載の電子写真装置。
- 前記帯電手段に用いられる帯電部材と感光体間の空隙が200μm以下であることを特徴とする請求項10に記載の電子写真装置。
- 前記電子写真装置の帯電手段に、交流重畳電圧印加を行なうことを特徴とする請求項10乃至12の何れかに記載の電子写真装置。
- 前記電子写真装置が、感光体と少なくとも帯電手段、露光手段、現像手段、クリーニング手段から選ばれる1つの手段とが一体となった装置本体と着脱自在なカートリッジを搭載していることを特徴とする請求項1乃至13のいずれかに記載の電子写真装置。
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