JP2005174798A - 電解質およびそれを用いた電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】 高温状況下に放置されても自己放電を抑えることができる電池およびそれに用いられる電解質を提供する。
【解決手段】 正極21と負極22とをセパレータを介して積層し巻回した電極巻回体20を電池缶11の内部に備える。セパレータには電解液が含浸されている。電解液は、下記に示す構造を有する化合物を含有している。
Figure 2005174798

【選択図】 図1

Description

本発明は、特定の構造を含む化合物を含有した電解質およびそれを用いた電池に関する。
近年、ノート型携帯用コンピュータ,携帯電話あるいはカメラ一体型VTR(ビデオテープレコーダ)などの携帯用電子機器が多く登場し、その小型軽量化が図られている。それに伴い、これらの携帯用電子機器の電源として、軽量で高エネルギー密度を得ることができる二次電池の開発が進められている。高エネルギー密度を得ることができる二次電池としては、例えば、負極活物質として炭素材料などのリチウム(Li)を吸蔵および離脱することが可能な材料を用いたリチウムイオン二次電池や、あるいは負極活物質として金属リチウムを用いたリチウム金属二次電池が知られている。
これらリチウムイオン二次電池あるいはリチウム二次電池では、従来よりサイクル特性などの電池特性を向上させるために、電解質に種々の添加物を添加することが検討されている(例えば、特許文献1から3参照。)。
特開平7−37612号公報 特開平8−167426号公報 特開平9−92329号公報
しかしながら、携帯型電子機器の利用が多くなるに従い、近年においては、輸送時あるいは使用時などに高温状況下に置かれると電池特性が低下してしまうことが問題となってきた。これは温度が高くなるとリチウム塩の一部が分解し、遊離酸が発生することにより自己放電が起こってしまうためであると考えられる。よって、発生した遊離酸の作用を効果的に抑制し、高温状況下における自己放電を抑制することができる電解質の開発が望まれていた。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、高温状況下に放置されても自己放電を抑えることができる電池およびそれに用いられる電解質を提供することにある。
本発明による電解質は、化1に示した構造を有する化合物を含有するものである。
Figure 2005174798
本発明による電池は、正極および負極と共に電解質を備えた電池であって、電解質は、化2に示した構造を有する化合物を含有するものである。
Figure 2005174798
本発明よる電解質によれば、化1に示した構造を有する化合物を含有するようにしたので、化合物中に含まれる窒素の不対電子により遊離酸を効果的に捕らえることができる。特に化合物中には2個の窒素にそれぞれ1組の不対電子が存在するので効果的である。よって、本発明による電池によれば、高温状況下において自己放電の原因となる遊離酸が発生しても、電解質により捕らえることができるので、高温における自己放電率を低くすることができ、高温状況下に放置されても、自己放電による容量の低下を抑制することができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
本発明の一実施の形態に係る電解質は、例えば、溶媒と、溶媒に溶解された電解質塩とを含む液状のいわゆる電解液を含有している。溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、プロピオニトリル、アニソール、酢酸エステル、酪酸エステルあるいはプロピオン酸エステルなどの非水溶媒が挙げられる。溶媒には、いずれか1種を単独で用いてもよいが、2種以上を混合して用いてもよい。
電解質塩としては、例えば、LiClO4 、LiAsF6 、LiPF6 、LiBF4 、LiB(C6 5 4 、LiCH3 SO3 、LiCF3 SO3 、LiClあるいはLiBrなどのリチウム塩が挙げられる。電解質塩には、いずれか1種を単独で用いてもよいが、2種以上を混合して用いてもよい。
電解質塩の濃度は、例えば、溶媒に対して0.3mol/l以上3.0mol/l以下の範囲内であることが好ましい。この範囲内において高いイオン伝導率を得ることができるからである。
この電解質は、また、添加物として、化3に示した構造を有する化合物を含有している。この化合物は構造中に含まれる2個の窒素にそれぞれ一組の不対電子を有しているので、電解質塩の分解などにより発生した遊離酸を効果的に捕らえることができ、遊離酸による自己放電を抑制することができるからである。
Figure 2005174798
化3に示した構造を有する化合物としては、例えば化4に示した化合物が挙げられる。
Figure 2005174798
(式中、R1、R2、R3およびR4は水素基、アルキル基、フェニル基、ピリジン環あるいはそれらの誘導体を表し、これらは同一でも異なっていてもよい。なお、R1、R2、R3およびR4は水素基あるいはアルキル基であることが好ましい。遊離酸による自己放電を特に効果的に抑制することができるからである。
化4に示した化合物について具体的に例を挙げれば、化5あるいは化6に示した化合物などがある。
Figure 2005174798
Figure 2005174798
これら化3に示した構造を有する化合物の濃度は特に限定されない。但し、あまり多くなると、化合物中の窒素の不対電子の数が遊離酸に対して過剰になり、電解質塩と反応し、サイクル特性などの他の特性に悪影響を及ぼしてしまうので好ましくない。例えば、これらの化合物の濃度は溶媒に対して合計で1mol/l以下であることが好ましく、0.5mol/l以下であることがより好ましい。
なお、この電解質は、これらの溶媒,電解質塩および添加物を含むいわゆる電解液とされていてもよいが、更にこれらを保持する高分子化合物を含むことによりゲル状とされていてもよい。高分子化合物としては、電解液を吸収してゲル化するものであればどのようなものでもよく、例えば、ポリビニリデンフルオロライドあるいはビニリデンフルオライドとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体などのフッ素系高分子化合物、ポリエチレンオキサイドあるいはポリエチレンオキサイドを含む架橋体などのエーテル系高分子化合物、またはポリアクリロニトリルが挙げられる。特に、酸化還元安定性の点からは、フッ素系高分子化合物が望ましい。
また、電解液をイオン伝導性ガラスあるいはイオン性結晶などよりなる無機固体伝導体に保持させるようにしてもよく、無機固体伝導体と上述した高分子化合物との混合物に保持させるようにしてもよい。無機固体伝導体としては、例えば、窒化リチウムあるいはヨウ化リチウムなど含むものが挙げられる。
この電解質は、例えば、次のようにして二次電池に用いられる。
図1はこの電解質を用いた二次電池の断面構造を表すものである。この二次電池は、いわゆる円筒型といわれるものであり、ほぼ中空円柱状の電池缶11の内部に、電極巻回体20を有している。電池缶11は、例えばニッケル(Ni)のめっきがされた鉄(Fe)により構成されており、一端部が閉鎖され他端部が開放されている。電池缶11の内部には、電極巻回体20を挟むように巻回周面に対して垂直に一対の絶縁板12,13がそれぞれ配置されている。
電池缶11の開放端部には、電池蓋14と、この電池蓋14の内側に設けられた安全弁機構15および熱感抵抗素子(Positive Temperature Coefficient;PTC素子)16とが、ガスケット17を介してかしめられることにより取り付けられており、電池缶11の内部は密閉されている。電池蓋14は、例えば、電池缶11と同様の材料により構成されている。安全弁機構15は、熱感抵抗素子16を介して電池蓋14と電気的に接続されており、内部短絡あるいは外部からの加熱などにより電池の内圧が一定以上となった場合にディスク板15Aが反転して電池蓋14と電極巻回体20との電気的接続を切断するようになっている。熱感抵抗素子16は、温度が上昇すると抵抗値の増大により電流を制限し、大電流による異常な発熱を防止するものである。ガスケット17は、例えば、絶縁材料により構成されており、表面にはアスファルトが塗布されている。
図2は、図1に示した電極巻回体20のII−II線に沿った断面構成を表すものである。電極巻回体20は、帯状の正極21と帯状の負極22とをセパレータ23を介して積層し、巻回したものであり、中心にはセンターピン24が挿入されている。なお、図2においては、セパレータ23を省略している。電極巻回体20の正極21にはアルミニウム(Al)などよりなる正極リード25が接続されており、負極22にはニッケルなどよりなる負極リード26が接続されている。正極リード25は安全弁機構15に溶接されることにより電池蓋14と電気的に接続されており、負極リード26は電池缶11に溶接され電気的に接続されている。
正極21は、例えば、対向する一対の面を有する集電体21Aと、集電体21Aの両面あるいは片面に設けられた活物質層21Bとを有している。集電体21Aは、例えば、アルミニウム、ニッケルあるいはステンレスなどにより構成されている。
活物質層21Bは、例えば、正極活物質としてリチウムを吸蔵および離脱することが可能な正極材料(以下、リチウムを吸蔵・離脱可能な正極材料という。)のいずれか1種または2種以上を含んでおり、必要に応じて炭素材料などの導電剤およびポリフッ化ビニリデンなどの結着剤を含んでいてもよい。リチウムを吸蔵・離脱可能な正極材料としては、例えば、リチウムと遷移金属とを含むリチウム複合酸化物あるいはリチウムリン酸化合物が好ましい。これらは高電圧を発生可能であると共に、高密度であるため、高容量化を図ることができるからである。
リチウム複合酸化物としては、遷移金属として、コバルト(Co),ニッケル,マンガン(Mn),鉄,バナジウム(V)、チタン(Ti)、クロム(Cr)および銅(Cu)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが好ましく、コバルト,ニッケル,マンガン,鉄,バナジウムおよびチタンからなる群のうちの少なくとも1種を含むものが更に好ましい。このうちマンガンを含むリチウム複合酸化物としては、例えば化学式Lix Mn2-y M1y 4 で表されるスピネル型化合物が挙げられる。式中、M1は鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛(Zn)、アルミニウム、スズ(Sn)、クロム、バナジウム、チタン、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、ホウ素(B)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ケイ素(Si)およびゲルマニウム(Ge)からなる群のうち少なくとも1種を表し、xおよびyの値はそれぞれ0.9≦x、0.01≦y≦0.5である。ニッケルを含むリチウム複合酸化物としては、例えば化学式LiNi1-z M2z 2 で表されるものが挙げられる。式中、M2は鉄、コバルト、マンガン、銅、亜鉛、アルミニウム、スズ、クロム、バナジウム、チタン、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ホウ素、ガリウム、インジウム、ケイ素およびゲルマニウムからなる群のうち少なくとも1種を表し、zの値は、0.01≦z≦0.5である。このようなリチウム複合酸化物の具体例としては、LiCoO2 ,LiNiO2 ,LiMn2 4 ,LiNi0.5 Co0.5 2 あるいはLiNi0.5 Co0.3 Mn0.2 2 などが挙げられる。
また、リチウムリン酸化合物としては、例えばLiFePO4 あるいはLiFe0.5 Mn0.5 PO4 が挙げられる。
負極22は、正極21と同様に、例えば、対向する一対の面を有する集電体22Aと、集電体22Aの両面あるいは片面に設けられた活物質層22Bとを有している。集電体22Aは、例えば、銅,ニッケルあるいはステンレスなどにより構成されている。
活物質層22Bは、例えば、負極活物質としてリチウムを吸蔵および離脱することが可能な負極材料(以下、リチウムを吸蔵・離脱可能な負極材料という。)のいずれか1種または2種以上を含んでおり、必要に応じて正極21と同様の結着剤を含んでいてもよい。リチウムを吸蔵・離脱可能な負極材料としては、炭素材料,金属酸化物あるいは高分子材料などが挙げられる。炭素材料としては、人造黒鉛,天然黒鉛,易黒鉛化性炭素、コークス類、グラファイト類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼結体、炭素繊維、活性炭、カーボンブラック類あるいは難黒鉛化性炭素などが挙げられる。コークス類としては、ピッチコークス、ニードルコークス、石油コークスなどが挙げられる。なお、有機高分子化合物焼結体とは、フェノール類やフラン類などの高分子材料を適当な温度で焼成して炭素化したものをいう。また、金属酸化物としては、酸化鉄,酸化ルテニウム,酸化モリブデン、酸化スズあるいは酸化タングステンなどが挙げられ、高分子材料としては、ポリアセチレンあるいはポリピロールなどが挙げられる。
リチウムを吸蔵・離脱可能な負極材料としては、また、リチウムと合金を形成可能な金属元素あるいは半金属元素の単体,合金または化合物が挙げられる。なお、合金には2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とからなるものも含める。その組織には固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物あるいはそれらのうちの2種以上が共存するものがある。
リチウムと合金を形成可能な金属元素あるいは半金属元素としては、例えば、マグネシウム、ホウ素、ヒ素(As)、アルミニウム、ガリウム、インジウム、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、銀(Ag)、亜鉛、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、パラジウム(Pd)あるいは白金(Pt)が挙げられる。これらの合金あるいは化合物としては、例えば化学式Ds t Liu で表されるものが挙げられる。この化学式において、Dはリチウムと合金を形成可能な金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を表し、EはリチウムおよびD以外の元素のうちの少なくとも1種を表す。s、tおよびuの値はそれぞれs>0、t≧0、u≧0である。
中でも、長周期型周期表における14族の金属元素あるいは半金属元素の単体、合金または化合物が好ましく、より好ましいのはケイ素あるいはスズ、またはこれらの合金あるいは化合物、特に好ましいのはケイ素またはこれらの合金あるいは化合物である。これらは結晶質のものでもアモルファスのものでもよい。
このような合金あるいは化合物について具体的に例を挙げれば、SiB4 ,SiB6 ,Mg2 Si,Mg2 Sn,Ni2 Si,TiSi2 ,MoSi2 ,CoSi2 ,NiSi2 ,CaSi2 ,CrSi2 ,Cu5 Si,FeSi2 ,MnSi2 ,NbSi2 ,TaSi2 ,VSi2 ,WSi2 ,ZnSi2 ,SiC,Si3 4 ,Si2 2 O,SiOv (0<v≦2),SnOw (0<w≦2),SnSiO3 ,LiSiOあるいはLiSnOなどがある。
この二次電池では、また、正極21は、活物質層21Bが設けられていない露出領域21Cと、活物質層21Bが集電体21Aの外面側のみに設けられた外面活物質領域21Dと、活物質層21Bが集電体21Aの両面に設けられた両面活物質領域21Eとを有しており、負極22は、活物質層22Bが設けられていない露出領域22Cと、活物質層22Bが集電体22Aの外面側のみに設けられた外面活物質領域22Dと、活物質層22Bが集電体22Aの両面に設けられた両面活物質領域22Eとを有している。正極21の露出領域21Cは、巻回中心側に2周以上、巻回外周側に1周以上設けられており、負極22の露出領域22Cは、巻回中心側および巻回外周側のそれぞれに1周以上設けられている。放熱性を向上させると共に、電池の外部から圧力が加わった場合に、電池の巻回中心側と巻回外周側とで選択的に短絡を生じさせて熱拡散を促進し、安全性を向上させるためである。特に、巻回中心側に露出領域21Cを露出領域22Cよりも1周以上設けるのは、正極21の内側に負極22があると正極リード25の溶接痕がセパレータ23を突き破り短絡してしまう可能性があるからである。また、外面活物質領域21Dは巻回中心側に1周近く設けられ、外面活物質領域22Dは巻回中心側に設けられている。
なお、図3に示したように、正極21は、露出領域21Cを巻回中心側に1周以上有していれば2周以下でもよく、負極22は、露出領域22Cを巻回中心側に1周以上有している必要はない。また、正極21は、集電体21Aの内面側のみに活物質層21Bが設けられた内面活物質領域21Fを巻回外周側に有し、負極22の巻回外周側に設けられた露出領域22Cと対向するように配置されていてもよい。この場合も、放熱性が十分に向上し安全性を確保することができるからである。なお、図3においてはセパレータ23を省略している。
セパレータ23は、例えばポリプロピレンあるいはポリエチレンなどのポリオレフィン系の材料よりなる多孔質膜、またはセラミック製の不織布などの無機材料よりなる多孔質膜により構成されており、これら2種以上の多孔質膜を積層した構造とされていてもよい。
セパレータ23には本実施の形態に係る電解質が含浸されている。
この二次電池は、例えば、次のようにして製造することができる。
まず、例えば、リチウムを吸蔵・離脱可能な正極材料と、導電剤と、結着剤とを混合して正極合剤を調製し、この正極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させて正極合剤スラリーとする。次いで、この正極合剤スラリーを集電体21Aに塗布し溶剤を乾燥させたのち、圧縮成型して活物質層21Bを形成し、正極21を作製する。
また、例えば、リチウムを吸蔵・離脱可能な負極材料と、結着剤とを混合して負極合剤を調製し、この負極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させて負極合剤スラリーとする。次いで、この負極合剤スラリーを集電体22Aに塗布し溶剤を乾燥させたのち、圧縮成型して活物質層22Bを形成し、負極22を作製する。
続いて、集電体21Aに正極リード25を溶接などにより取り付けると共に、集電体22Aに負極リード26を溶接などにより取り付ける。そののち、正極21と負極22とをセパレータ23を介して積層して巻回し、正極リード25の先端部を安全弁機構15に溶接すると共に、負極リード26の先端部を電池缶11に溶接して、巻回した正極21および負極22を一対の絶縁板12,13で挟み電池缶11の内部に収納する。正極21および負極22を電池缶11の内部に収納したのち、電解液を電池缶11の内部に注入し、セパレータ23に含浸させる。そののち、電池缶11の開口端部に電池蓋14,安全弁機構15および熱感抵抗素子16をガスケット17を介してかしめることにより固定する。これにより、図1に示した二次電池が完成する。
この二次電池では、充電を行うと、例えば、正極21からリチウムイオンが離脱し、電解質を介して負極22に吸蔵される。一方、放電を行うと、例えば、負極22からリチウムイオンが離脱し、電解質を介して正極21に吸蔵される。また、この二次電池では、高温状況下に放置されると、電解質塩の一部が分解し、遊離酸が発生する。これにより自己放電が起こり、容量が低下してしまう。但し、本実施の形態では、上述した添加物を電解質に含んでいるので、化合物中に含まれる各々の窒素の不対電子により遊離酸が捕らえられ、高温時における自己放電が抑制される。
このように本実施の形態の電解質によれば、化3に示した構造を有する化合物を含有するようにしたので、化合物中に含まれる窒素の不対電子により遊離酸を効果的に捕らえることができる。特に化合物中には2個の窒素に各々1組の不対電子が存在するので効果的である。よって、本実施の形態の二次電池によれば、高温状況下において自己放電の原因となる遊離酸が発生しても、電解質により捕らえることができるので、高温時における自己放電率を低くすることができ、高温状況下に放置されても、自己放電による容量の低下を抑制することができる。
更に、本発明の具体的な実施例について詳細に説明する。
(実施例1〜2)
実施の形態において説明した二次電池を作製した。その際、電極巻回体20の構造は図3に示したものとし、電解質には、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとの容積比が2:8の混合溶媒と、添加物である化5および化6に示した化合物のいずれかと、電解質塩であるLiPF6 とを混合したものを用いた。添加物の添加量は表1に示したように0.01〜1.0mol/lの範囲で変化させ、電解質塩の添加量は1mol/lとした。これは溶媒に対する濃度である。また、正極材料としては、活物質としてのLiCoO2 と、導電剤としてのケッチェンブラックと、結着剤としてのポリフッ化ビニリデンとを質量比が93:3:4になるようにして用いた。更に、負極材料としては、活物質としての平均粒子径が15μmの炭素材と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデンとを質量比が94:6になるようにして用いた。
Figure 2005174798
作製した実施例1〜2の二次電池について、サイクル特性および高温状況に放置した後の自己放電率を調べた。
なお、サイクル特性は、最初の充放電において得られた放電容量(以下、初回容量という)に対する300サイクル目の放電容量の比率として容量保持率を求めることにより行った。充放電は、23℃において電池電圧を4.2Vに設定して1Cの定電流で2時間充電を行ったのち、1Cの定電流で電池電圧が2.5Vに達するまで行った。なお、1Cとは初回容量を1時間で放電しきる電流値をいう。得られた結果を表1に示す。
また、高温状況下に放置された後の自己放電率は、次のようにして求めた。まず、23℃において充電したのち、60℃で30日間放置した。その後、23℃に戻し、放電を行い容量を求め、初回容量に対する高温状況下に放置された後の容量の割合を1から引いたものに100を掛けることにより、即ち、[ 1−(高温状況下に放置された後の容量/初回容量)] ×100により算出した。なお、充放電はサイクル特性を求めたときと同じ条件で行った。得られた結果を表1に示す。
表1から分かるように、添加物を添加した実施例1〜2によれば、添加していない比較例よりも高温時の自己放電率を低くすることができた。これは、化合物中に含まれる各々の窒素の不対電子により遊離酸を捕らえることができたためであると考えられる。また、添加物を添加してもサイクル特性の低下は見られなかった。よって、化3に示した構造を有する化合物を含むようにすれば、高温状況下における自己放電を抑制するのに有効であることが分かった。
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態および実施例に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば上記実施の形態および実施例では、電極巻回体20の構造を具体的に例を挙げて説明したが、本発明は他の巻回構造とした場合にも適用することができる。また、本発明は、巻回構造を有する楕円型あるいは多角形型の二次電池、または正極および負極を折り畳んだりあるいは積み重ねた構造を有する二次電池についても同様に適用することができる。更に、いわゆるコイン型,ボタン型あるいはカード型などの二次電池についても適用することができる。加えて、二次電池に限らず、一次電池についても適用することができる。
また、本実施の形態および実施例では、正極活物質としてリチウム複合酸化物を用いる場合について説明したが、リチウム以外のアルカリ金属と遷移金属とを含むカルコゲン化合物、特に、リチウム以外のアルカリ金属と遷移金属とを含む酸化物を用いてもよい。これらの化合物の結晶構造としては、例えば層状化合物あるいはスピネル型化合物が挙げられる。層状化合物としては、例えば化学式Aq M31-r M4r 2 で表される化合物が挙げられる。式中、Aはナトリウムまたはカリウムを表し、M3は、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、銅、亜鉛、クロム、バナジウムおよびチタンからなる群のうち少なくとも1種を表し、M4は、鉄、コバルト、マンガン、銅、亜鉛、アルミニウム、スズ、ホウ素、ガリウム、クロム、バナジウム、チタン、マグネシウム、カルシウムおよびストロンチウムからなる群のうち少なくとも1種を表し、qおよびrの値はそれぞれ0.5≦q≦1.1、0<r<1である。
本発明の一実施の形態に係る二次電池の構成を表す断面図である。 図1に示した電極巻回体のII−II線に沿った構成を表す断面図である。 図1に示した電極巻回体のII−II線に沿った他の構成を表す断面図である。
符号の説明
11…電池缶、12,13…絶縁板、14…電池蓋、15…安全弁機構、16…熱感抵抗素子、17…ガスケット、20…電極巻回体、21…正極、21A,22A…集電体、21B,22B…活物質層、21C,22C…露出領域、21D,22D…外面活物質領域、21E,22E…両面活物質領域、21F…内面活物質領域、22…負極、23…セパレータ、24…センターピン、25…正極リード、26…負極リード。

Claims (4)

  1. 化1に示した構造を有する化合物を含有することを特徴とする電解質。
    Figure 2005174798
  2. 化2および化3に示した化合物のうち少なくとも一方を含有することを特徴とする請求項1記載の電解質。
    Figure 2005174798
    Figure 2005174798
  3. 正極および負極と共に電解質を備えた電池であって、
    前記電解質は、化4に示した構造を有する化合物を含有することを特徴とする電池。
    Figure 2005174798
  4. 化5および化6に示した化合物のうち少なくとも一方を含有することを特徴とする請求項3記載の電池。
    Figure 2005174798
    Figure 2005174798
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