JP2005166108A - 磁気記録ヘッド、ヘッドサスペンションアッセンブリ、磁気記録装置、複合型ヘッド、および磁気記録再生装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】媒体方向への残留磁化成分による磁界漏洩を抑圧でき、これにより媒体に記録された情報を安定して保存することの可能な磁気記録ヘッド、ヘッドサスペンションアッセンブリ、磁気記録装置、複合型ヘッド、および磁気記録再生装置を提供すること。
【解決手段】磁気ディスク2の記録面に対して平行な長手方向を有する凹部100をライトヘッドの記録磁極部31の側面に形成する。このようにすることで記録磁極部31に形状異方性を生じさせ、非記録時の記録磁極部31先端部の磁気モーメントの向きを制御する。これにより記録磁極部31から媒体方向に向かう残留磁化成分を抑制し、残留磁界が媒体に漏洩することを防止して、記録された情報の安定性を高めた信頼性の高い垂直磁気記録ヘッドを実現する。
【選択図】 図13
【解決手段】磁気ディスク2の記録面に対して平行な長手方向を有する凹部100をライトヘッドの記録磁極部31の側面に形成する。このようにすることで記録磁極部31に形状異方性を生じさせ、非記録時の記録磁極部31先端部の磁気モーメントの向きを制御する。これにより記録磁極部31から媒体方向に向かう残留磁化成分を抑制し、残留磁界が媒体に漏洩することを防止して、記録された情報の安定性を高めた信頼性の高い垂直磁気記録ヘッドを実現する。
【選択図】 図13
Description
本発明は、ハードディスクドライブに代表される磁気記録装置および磁気記録再生装置と、この磁気記録再生装置に用いられる磁気記録ヘッド、複合型ヘッド、およびヘッドサスペンションアッセンブリに関する。特に本発明は、垂直磁気記録方式の磁気記録ヘッドとこの磁気記録ヘッドを用いる磁気記録再生装置に関する。
近年、磁気記録再生装置に関する技術分野では垂直磁気記録方式が注目されている。垂直磁気記録方式のディスクドライブにおいては、単磁極型の磁気記録ヘッド(ライトヘッド)と、2層垂直記録媒体のディスク媒体を使用するのが一般的である。2層垂直記録媒体は、記録層(垂直磁化層)と基板との間に軟磁性層を備えるディスク媒体である。
リング型ヘッドを用いる長手磁気記録方式においては、記録媒体に印加できる磁界はライトヘッドのギャップから漏れる磁界のみである。これに対して垂直磁気記録方式では、単磁極ヘッドの記録磁極から生じる磁界のほとんどを記録媒体の軟磁性層に印加することができる。よって垂直磁気記録方式によれば、長手磁気記録方式よりも高い記録効率を得ることができる。
ところで、通常、ライトヘッドの記録磁極部の磁気モーメントは全体として媒体方向を向かないように設定されている。しかしながら磁気モーメントの挙動が不安定になると、非記録動作時においても媒体方向への残留磁化成分が生じることがある。垂直磁気記録方式においてはこの影響が大きく、媒体方向への残留磁化成分が僅かであっても、記録磁極部から発生する磁界は比較的大きな磁束密度で媒体上に印加される。このような現象によって媒体上に記録された情報が消去されてしまう例が報告されている。
また近年では記録密度の高密度化へのニーズが大きく、ディスク媒体のデータトラック幅はますます狭くなってきている。よって磁壁により分割された安定な磁区構造を形成しにくくなり、このことから磁気モーメントの挙動が不安定になる傾向にある。これに加えてライトヘッドの記録磁極先端は針状化しているために、その形状磁気異方性から媒体方向に向かう残留磁化成分が生じやすくなり、媒体に記録された情報が破壊される可能性がさらに大きくなってきている。
なお、関連する技術が下記特許文献1に開示されている。この文献には、磁極磁性膜に浅い溝(グルーブ)を形成することにより磁性膜の磁区構造を制御するようにした磁気ヘッドの磁区構造の制御方法が開示される。この文献の技術は単磁極ヘッドに応用されるもので、グルーブにより外部磁界印加に伴う磁壁の動きを抑圧して、記録再生動作を安定に行えるようにしている。なおこの文献が公開された当時においてはトラック幅は50μm(50,000nm)程度であったが、近年では0.3μm(300nm)以下のトラック幅が実現されており、磁気記録再生に係わる物理的スケールや諸特性などが大きく異なる。すなわちこの文献に記載の磁気ヘッドはサイズが大きいことから、ビッター法により観察した結果が示されているように、磁壁(図では境界線)により分割された亀の甲状の還流磁区を形成することで、磁壁が移動しない限り外部に磁束が漏洩しない状態になっている。
これに対して本発明に係わる磁気ヘッドは特許文献1の磁気ヘッドに比べてサイズが格段に小さく、記録磁極先端のサイズに対して磁区境界のサイズ(磁壁の厚さ〜数10nmのオーダー)が無視できなくなり、磁壁により分割された磁区という構造を取らずに磁気モーメントが連続的に向きを変えた構造となっている。そのため、磁壁の移動による磁区構造の変化ではなく、磁気モーメントの微妙な回転により残留磁化成分が生じることになり、不規則に磁束が漏洩しやすい状態になっている。
また磁極先端のサイズが磁壁の厚さに近づいてきていても、トラック幅が0.5μm程度までは、媒体方向への残留磁化成分による記録磁化の消去という現象は、それまで行われてきた他の対策で十分に抑制されていた。これに対し最近、トラック幅が300nmよりも狭くなってきたことで、不規則な漏洩磁束による磁化消去現象が記録再生評価において観測されるようになり、磁区構造の制御とは異なる磁束漏洩への対策が重要となってきた。
特開平3−113815号公報(第96頁、図4)
以上述べたように、垂直磁気記録方式による既存の磁気記録ヘッドにおいては非記録動作時における残留磁化成分の影響が大きく、ディスク媒体に記録済みの情報が消去されたり、変化したりするなどといった不具合が有る。特に、高密度記録のためトラック幅を狭くした場合にはこのような事態を生じ易く、何らかの対策が望まれる。
本発明は上記事情によりなされたもので、その目的は、媒体方向への残留磁化成分による磁界漏洩を抑圧でき、これにより媒体に記録された情報を安定して保存することの可能な磁気記録ヘッド、ヘッドサスペンションアッセンブリ、磁気記録装置、複合型ヘッド、および磁気記録再生装置を提供することにある。
本発明は上記事情によりなされたもので、その目的は、媒体方向への残留磁化成分による磁界漏洩を抑圧でき、これにより媒体に記録された情報を安定して保存することの可能な磁気記録ヘッド、ヘッドサスペンションアッセンブリ、磁気記録装置、複合型ヘッド、および磁気記録再生装置を提供することにある。
上記目的を達成するために、本願発明の一態様によれば、記録媒体の記録面に対して垂直に記録用磁束を発生させる記録磁極部を具備し、垂直磁気記録方式により前記記録媒体に情報を記録する磁気記録ヘッドにおいて、前記記録磁極部は、前記記録面に対して平行な長手方向を有して当該記録磁極部の表面に凹状に形成される凹部を備えることを特徴とする磁気記録ヘッドが提供される。
このような手段を講じることにより、記録磁極部先端に対して新たな形状磁気異方性を付与する。これにより、特に磁極表面の凹部近傍における磁気モーメントの方向は、静磁エネルギーが最小になるように凹部の長手方向に沿う向きに安定しようとする。さらに、記録磁極内部の磁気モーメントも交換結合により表面のモーメントと連続的につながっているため、磁極先端部全体の磁気モーメントの方向を凹部の長手方向に揃えるように働く。従って媒体方向に向かう残留磁化成分を抑制することで記録方向への磁界漏洩を抑圧することができ、非記録時における記録磁極安定性をより高めることが可能になる。
本発明によれば、媒体方向への残留磁化成分による磁界漏洩を抑圧でき、これにより媒体に記録された情報を安定して保存することの可能な磁気記録ヘッド、ヘッドサスペンションアッセンブリ、磁気記録装置、複合型ヘッド、および磁気記録再生装置を提供することができる。
図1は、本発明に係わる磁気記録再生装置および磁気記録装置(以下、磁気ディスク装置と総称する)の実施の形態を示す外観斜視図である。この磁気ディスク装置は、筐体1の内部に磁気ディスク2と、磁気ヘッド3と、磁気ヘッド3を搭載するヘッドサスペンションアッセンブリ(サスペンションとアーム)4と、アクチュエータ5と、回路基板6とを備える。
磁気ディスク2はスピンドルモータ7に取り付けられて回転され、垂直磁気記録方式により各種のディジタルデータが記録される。磁気ヘッド3はいわゆる複合型ヘッドであり、本実施形態に係わる単磁極構造のライトヘッドと、GMR膜やTMR膜などを用いたリードヘッドとが共通のスライダ機構に搭載される。リードヘッドにはシールド型MR再生素子などが用いられる。
ヘッドサスペンションアッセンブリ4は磁気ヘッド3を磁気ディスク2の記録面に対向支持する。アクチュエータ5はボイスコイルモータ(VCM)により、ヘッドサスペンションアッセンブリ4を介して磁気ヘッド3を磁気ディスク2の任意の半径位置に位置決めする。回路基板6にはヘッドICを備え、アクチュエータ5の駆動信号および、磁気ヘッド3を読み書き制御するための制御信号などを生成する。
図2は、図1の磁気ディスク2のセクタフォーマットを示す模式図である。図1の磁気ディスク装置はセクタサーボ方式を用いる。セクタサーボ方式では、磁気ディスク2の各トラック21が、サーボセクタ22とデータセクタ23とに分割される。サーボセクタ22にはトラック位置決め情報が予め記録される。データセクタ23はユーザ情報を記録再生するための領域である。サーボセクタ22の情報は、一旦記録されると書き換えられることはない。ユーザ情報の記録時には、サーボセクタ22の位置決め情報からデータを記録するためのデータセクタを探し出し、目的のデータセクタ内の情報のみが書き換えられる。
ところで、非記録時に残留磁化が磁気ヘッド3から漏洩すると、その影響を受けてトラック21の情報が書き換えられることがある。データセクタ23の情報が書き換えられた場合にはその部分の情報が破壊されるに留まり、他に影響が及ぶことは無い。しかし、サーボセクタ22の情報が書き換えられた場合には位置決め情報が失われるため、その影響は格段に大きい。
磁気ディスク装置はより多くの情報を記録できるように日々改良されている。同じ面積を有するディスクにより多くの情報を記録するためには、データの記録密度を向上させる必要がある。垂直磁気記録方式を用いれば情報をより高密度に記録することが可能となり、本実施形態に係わる磁気ディスク装置においても垂直磁気記録方式を採用するようにする。この方式に適用される磁気ディスク2は、ガラスまたはアルミ基板上に、軟磁性を有する裏打ち層と、垂直磁気異方性を有する情報記録層とが積層された構造を有する。
図3は、垂直磁気記録方式に用いられる単磁極構造の磁気記録ヘッドの一般的な構成を示す外観斜視図である。このライトヘッドは、記録磁極部31と、記録ヨーク部32と、励磁コイル33と、リターンヨーク部34などを備える。記録磁極部31は、一般的には飽和磁束密度の高い軟磁性薄膜により柱状に形成される。記録ヨーク部32は、記録磁極部31に磁極に磁束を集中させる。励磁コイル33は、印加される記録電流により磁束を励起させる。リターンヨーク部34は励起された磁束の経路を制御し、磁気ディスク2の軟磁性裏打ち層に及ぶ磁路を形成する。
図4は、図3のライトヘッドにおいて記録時に生じる磁束の流れを示す模式図である。情報記録時には励磁コイル33に電流が通電され、これにより磁束が発生する。発生した磁束は記録磁極部31に集中し、これにより記録磁極部31と媒体軟磁性裏打ち層41との間で大きな記録磁界が発生する。この記録磁界により磁気ディスク2の垂直記録層42に情報が記録される。軟磁性層41に入った磁束は、ライトヘッドのリターンヨーク部34を経由して記録ヨーク部32に戻る閉磁路を形成する。次に、本実施形態に係わる記録磁極部31につき詳しく説明する。
[第1の実施形態]
図5は、図3の記録磁極部31の第1の実施形態を示す外観斜視図である。図5において、NHは記録用磁束を発生させる方向への記録磁極部31の長さ(すなわち記録磁極部31の側面の長さ)であり、ネックハイトと称する。Twは記録磁極部31のトラック幅であり、磁気ディスク2のトラック幅に対応する。PTは記録方向への長さ、すなわち記録磁極部31の膜厚である。
図5は、図3の記録磁極部31の第1の実施形態を示す外観斜視図である。図5において、NHは記録用磁束を発生させる方向への記録磁極部31の長さ(すなわち記録磁極部31の側面の長さ)であり、ネックハイトと称する。Twは記録磁極部31のトラック幅であり、磁気ディスク2のトラック幅に対応する。PTは記録方向への長さ、すなわち記録磁極部31の膜厚である。
ところで、本実施形態では、記録磁極部31の4つの側面のうち一つに凹部100を形成するようにする。この実施形態では磁気ディスク2のトラック幅方向に対して平行な側面に凹部100を形成する。凹部100は媒体側対向面、すなわち磁気ディスク2の記録面に対して平行な長手方向を有して凹状に形成される。凹部100の長手方向の長さをwとする。なお、w≧1/2Twであること、すなわちwはトラック幅の半分よりも長いことが好ましい。hは、凹部100の中央と記録磁極部31の媒体対向面との間の長さであり、凹部100の形成される位置を示す。なおh≦1/2NHとし、凹部100を、記録磁極部31の磁束発生方向の長さの中央よりも磁気ディスク2寄りに形成することが好ましい。
凹部100は、成膜直後の記録磁極部31に集束イオンビームを照射して形成することができる。このほか、記録磁極部31の成膜工程に平行して凹部100を形成するようにしても良い。
次に、本実施形態に係わる磁気ディスク装置を用いた実験結果を説明する。本実施形態では磁気ヘッド3を用いて磁気ディスク2に情報を記録/再生し、磁気ディスク2における位置決め誤差量を計測した。実験では、図4の記録磁極部31を有するライトヘッドと、トラック幅0.12μmのGMR素子を有するシールド間距離70nmのシールド型GMRヘッドとを備える磁気ヘッド3を用いた。これらのライトヘッドおよびリードヘッドは、いずれも同じスライダ上に搭載される。
磁気ディスク2には、CoZrNbからなる軟磁性裏打ち層と、厚さ20nmのCoCrPtからなる垂直磁気記録層と、厚さ3nmのカーボン保護層とをこの順にガラス基板上に積層した2.5インチ垂直磁気記録ディスクを用いた。なお、軟磁性裏打ち層の厚みが300nmのディスク(ディスク(A)とする)と、軟磁性裏打ち層の厚みが100nmのディスク(ディスク(B)とする)との2種類の磁気ディスク2を用意し、各ディスクにつき動作特性を測定した。
動作試験は、磁気ディスク装置の特定のトラック上で記録/再生を10周分繰り返し、記録再生回数が20000回〜50000回を超えるまで、各周ごとにトラック上のヘッド位置決め誤差量を測定するようにした。磁気ディスク2の各トラックには120個のサーボセクタが断続的に埋められており、各サーボセクタ間をさらに細分する形で500個のデータセクタが形成される。情報はデータセクタに対してのみ記録されるため、トラックを一周するごとに記録のオン/オフが500回実施されることになる。なおサーボセクタにはサーボデータを上書きしないこととする。次に、比較例として、凹部100の無い記録磁極部を有する垂直記録ヘッドを用いた実験結果を示す。
<比較例1>
この比較例では、CoFeNi軟磁性単層膜からなり、記録磁極部31の先端部のトラック幅(Tw)、膜厚(PT)、およびネックハイト(NH)がそれぞれ異なる磁気ヘッドを8種類用意し、それぞれサンプル(a)〜(h)とする。表1に、サンプル(a)〜(h)のトラック幅、膜厚、ネックハイトを示す。
この比較例では、CoFeNi軟磁性単層膜からなり、記録磁極部31の先端部のトラック幅(Tw)、膜厚(PT)、およびネックハイト(NH)がそれぞれ異なる磁気ヘッドを8種類用意し、それぞれサンプル(a)〜(h)とする。表1に、サンプル(a)〜(h)のトラック幅、膜厚、ネックハイトを示す。
図6は、表1のサンプル(a)〜(h)の磁気ヘッド(凹部無し)とディスク(A)とを組み合せ、記録再生の繰り返し回数と位置決め誤差量とを測定した結果を示すグラフである。図6に示されるように、トラック幅が0.3μm以上のヘッド(サンプル(a),(サンプル(b))を用いた場合には、ヘッドの位置決め誤差は記録再生回数によらず安定した誤差範囲内におさまっている。
これに対しトラック幅が0.3μmよりも小さくなると、トラック幅および膜厚が減少するにつれ、記録再生回数の増加とともに位置決め精度が悪化する(サンプル(c)〜(h))。記録回数が一定回数を超えると位置決めが完全に不能となり、測定対象とするトラックでの試験が中断されてしまった。
その原因を調査すると、位置決めが出来なくなった原因は、一部のサーボセクタににおいてサーボ情報が消失したためであることが判明した。これは、比較例のヘッドがデータセクタへの記録後にサーボセクタ上を通過するとき、記録電流が流れない非記録状態であるにも関わらず磁気ディスク2のサーボ情報を消してしまったためと考えられる。すなわち、数千回に一回程度の確率で、非記録状態においても不規則な残留磁化成分が記録磁極部31先端に発生し、これによりサーボ情報が消去されたためと考えられる。このような現象はヘッド先端部のサイズが小さくなるほど高い確率で生じ、サンプル(h)では記録動作を一度行っただけで位置決めが出来なくなってしまった。この結果は、ディスク(B)と各サンプル(a)〜(h)とを組み合せた場合においても変わらなかった。
<比較例2>
次に、第2の比較例につき説明する。この比較例ではヘッド(c)〜(h)のネックハイト(NH)を0.2μmまで短くしたサンプル(i)〜(n)を用意し、比較例1と同様の実験を行った。表2に、サンプル(i)〜(n)のトラック幅、膜厚、ネックハイトを示す。
次に、第2の比較例につき説明する。この比較例ではヘッド(c)〜(h)のネックハイト(NH)を0.2μmまで短くしたサンプル(i)〜(n)を用意し、比較例1と同様の実験を行った。表2に、サンプル(i)〜(n)のトラック幅、膜厚、ネックハイトを示す。
図7は、表2の(i)〜(n)のヘッド(凹部無し)とディスク(A)とを組み合せ、記録再生の繰り返し回数と位置決め誤差量とを測定した結果を示すグラフである。図7によれば、いずれのヘッドもネックハイトを0.3μmから0.2μmと短くしたことにより、安定な位置決め動作が得られる記録再生回数が増加していることが判る。特にサンプル(i)〜(k)に関しては、記録再生回数が50000回までの範囲内ではヘッドの位置決め誤差量の悪化が見られていない。このように位置決め誤差が改善された要因は、ネックハイトを短くしたことにより不規則な残留磁化成分が減少したためであると考えられる。
このことは記録磁極部31の形状磁気異方性により説明することができる。細長い磁性体においては長軸方向では反磁界が小さく、短軸方向では反磁界が大きくなるために、磁気モーメントは長軸方向を向きやすく短軸方向を向きにくくなる。よってネックハイトを短くすると、記録磁極部31中の媒体方向に向かう残留磁化成分を減少させることができる。特にサンプル(i)〜(k)において残留磁化成分を十分に抑制できていることから、ネックハイトをトラック幅と同程度の長さかそれよりも短くすることは、位置決め誤差量の改善に効果があることが判る。
<比較例3>
次に、第3の比較例につき説明する。この比較例では、記録磁極部31の先端部を非磁性中間層を挟んだ軟磁性膜の積層構造にしたライトヘッドを用いた。
図8は、この比較例において用いたライトヘッドの記録磁極部31を示す外観斜視図である。この記録磁極部31は、非磁性中間層300bと、この非磁性中間層300bを挟む軟磁性膜300aとを備える。
次に、第3の比較例につき説明する。この比較例では、記録磁極部31の先端部を非磁性中間層を挟んだ軟磁性膜の積層構造にしたライトヘッドを用いた。
図8は、この比較例において用いたライトヘッドの記録磁極部31を示す外観斜視図である。この記録磁極部31は、非磁性中間層300bと、この非磁性中間層300bを挟む軟磁性膜300aとを備える。
この比較例では、比較例1で不具合の生じたサンプル(c)とトラック幅が同じで、0.15μm厚の2枚の軟磁性膜の間に非磁性カーボンを20nm挟んだサンプル(c’)を用意した。また、サンプル(d)〜(f)とトラック幅が同じで、0.1μm厚の2枚の軟磁性膜の間に非磁性カーボンを20nm挟んだサンプル(d’)〜(f’)を用意した。そして、各サンプル(c’)〜(f’)とディスク(A)と組み合せ、上記と同様の動作試験を行った。
記録磁極の先端部を積層化すると、仮に磁化がトラック幅方向を向いた場合に層間で反平行な磁化状態が形成されることが予想される。よって単層よりも静磁気的に安定な状態が得られるために、媒体方向への残留磁化成分の抑制効果が期待される。
図9は、サンプル(c’)〜(f’)の記録磁極部(凹部無し)とディスク(A)とを組み合せて記録再生の繰り返し回数と位置決め誤差量とを測定した結果を示すグラフである。図9に示されるように、サンプル(c)に比べて軟磁性層を積層化したサンプル(c’)では記録回数によらず安定な位置決め動作が継続され、ある程度の改善効果が見られる。しかしながらサンプル(d’)〜(f’)においてはサンプル(d)〜(f)と同様に、記録回数の増加に伴って位置決め不良が生じ、試験継続が出来なくなってしまっている。比較例1に比べると軟磁性膜の磁化はやや安定化するものの、トラック幅、膜厚が小さいところでは限界があることがわかる。
<本発明に係わる実験結果>
さて、<比較例1>〜<比較例3>においては記録磁極部31に凹部100を形成していない。次に、本発明に係わる実験結果として、記録磁極部31に凹部100を形成した場合の測定例を説明する。
本例では、表1のサンプル(c)〜(h)にそれぞれ凹部100を形成したサンプル(c’’)〜(h’’)と、表2のサンプル(l)〜(n)にそれぞれ凹部100を形成したサンプル(l’’)〜(n’’)とを用意した。表3に、サンプル(c’’)〜(h’’)、サンプル(l’’)〜(n’’)のトラック幅、膜厚、ネックハイトを示す。
さて、<比較例1>〜<比較例3>においては記録磁極部31に凹部100を形成していない。次に、本発明に係わる実験結果として、記録磁極部31に凹部100を形成した場合の測定例を説明する。
本例では、表1のサンプル(c)〜(h)にそれぞれ凹部100を形成したサンプル(c’’)〜(h’’)と、表2のサンプル(l)〜(n)にそれぞれ凹部100を形成したサンプル(l’’)〜(n’’)とを用意した。表3に、サンプル(c’’)〜(h’’)、サンプル(l’’)〜(n’’)のトラック幅、膜厚、ネックハイトを示す。
本例では、図5において、hがネックハイトNHのおよそ1/4であり、wがトラック幅Twのおよそ3/4以上(すなわちTwとほぼ同じ)となるように凹部100を形成した。記録磁極部31の軟磁性膜の組成にはCoFeNiを用いた。このほか、例えばCoFe、CoFeN、NbFeNi、FeTaZr、FeTaNなどの材料を用いることもできる。またこれらの磁性材料を主成分としてさらに添加元素を加えても良い。
図10は、サンプル(c’’)〜(h’’)、(l’’)〜(n’’)の記録磁極部(凹部有り)とディスク(A)とを組み合せて記録再生の繰り返し回数と位置決め誤差量とを測定した結果を示すグラフである。図10によれば、全てのサンプルにおいて位置決め誤差が安定的に維持されていることが判る。すなわち、比較例においては記録回数の増加とともにヘッド位置決め不良の生じていたトラック幅でも、本例では記録回数によらず、継続的に安定な位置決め動作を維持することが可能になる。
さらに、軟磁性裏打ち層の厚みを薄くしたディスク(B)との組み合わせによっても、全てのヘッドに対して同様に安定した位置決め動作の結果が得られた。これにより、記録磁極部31に凹部100を形成することにより磁気ディスクの軟磁性膜の厚みとほぼ無関係に、位置決め制御を安定化できることが判る。このような効果を得られる要因は、凹部100を記録磁極部31の側面に形成したことにより形状磁気異方性が生じたことであると考えられる。
図11は、図5の記録磁極部31において生じる磁気モーメントの向きを示す模式図である。図11において、磁気モーメントが媒体方向を向こうとすると凹部100の表面に磁荷を生じ、これにより静磁エネルギーが増加する。従って磁気モーメントは凹部100と平行な方向を向きやすくなり、この傾向は凹部100に近づくほど大きくなる。これにより、記録磁極部31に生じる媒体方向に向かう残留磁化成分が抑制され、従って非記録時の記録磁極部31安定性を向上させることが可能になる。
以上をまとめると本実施形態では、磁気ディスク2の記録面に対して平行な長手方向を有する凹部100をライトヘッドの記録磁極部31の側面に形成するようにしている。このようにすることで記録磁極部31に形状異方性を生じさせ、非記録時の記録磁極部31先端部の磁気モーメントの向きを制御する。これにより記録磁極部31から媒体方向に向かう残留磁化成分を抑制し、残留磁界が媒体に漏洩することを防止して、記録された情報の安定性を高めた信頼性の高い垂直磁気記録ヘッドを実現することができる。
具体的には、本実施形態によれば、トラック幅が0.3μm以下、膜厚が0.2μm以下、およびネックハイトがトラック幅よりも長い記録磁極部31を用いても、非記録時の不安定性を抑制することが可能となり、高信頼性な垂直磁気記録再生装置を提供することが可能となる。このようなことから、狭トラック記録においても、記録媒体に記録された情報を安定して保存することが可能となる。
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態につき説明する。この実施形態では記録磁極部31の図5と同じ側面に凹部100を形成し、表1のサンプル(e)(すなわちトラック幅Tw=0.2μm、膜厚PT=0.2μm、ネックハイトNH=0.3μm)に対してhとwとを表4のように変更したサンプル(e’’1)〜(e’’6)を用意した。そして、各サンプルにつきヘッド位置決め誤差量を測定した。
次に、本発明の第2の実施形態につき説明する。この実施形態では記録磁極部31の図5と同じ側面に凹部100を形成し、表1のサンプル(e)(すなわちトラック幅Tw=0.2μm、膜厚PT=0.2μm、ネックハイトNH=0.3μm)に対してhとwとを表4のように変更したサンプル(e’’1)〜(e’’6)を用意した。そして、各サンプルにつきヘッド位置決め誤差量を測定した。
図12は、サンプル(e’’1)〜(e’’6)の記録磁極部(凹部有り)とディスク(A)とを組み合せて記録再生の繰り返し回数と位置決め誤差量とを測定した結果を示すグラフである。図12によれば、凹部100の位置が媒体側対向面から遠く幅が短いサンプル(e”4)〜(e”6)において、位置決め誤差量がやや大きくなっているものの、第1の実施形態と同様に、記録回数によらず継続的に安定な位置決め動作を維持できていることが判る。また、軟磁性裏打ち層の厚みを薄くしたディスク(B)との組み合わせによっても、全てのヘッドに対して同様に安定した位置決め動作の結果が得られた。これにより本実施形態においても、磁気ディスクの軟磁性膜の厚みとほぼ無関係に位置決め制御を安定化できることが判る。
サンプル(e”4)〜(e”6)においては、凹部の短小化による形状異方性付与効果の減少や凹部が媒体対向面から離れたことによるによる媒体対向面近傍での磁化方向制御効果の減少により位置決め誤差量が増加したと推定できる。このことから、記録磁極部31中の媒体方向に向かう残留磁化成分を十分に抑制して非記録時の記録磁極部31の安定性を十分に確保するためには、凹部100の高さhをネックハイトNHの1/2以下とし、凹部100の長さwをトラック幅Twの1/2以上とすることが有効であると考えられる。
さらに、同様の条件下で調査を継続した結果、サンプル(e”4)〜(e”6)においては1万回の記録再生試験後のサーボ信号振幅を調査すると1周あたり10%の振幅ばらつきが見られた。これに対してサンプル(e”1)〜(e”3)では振幅ばらつきが1周あたり7%以下と小さくなっており、このことから本実施形態によれば、振幅のばらつきを抑制することにも一定の効果が得られることが判る。
[第3の実施形態]
図13は、図3の記録磁極部31の第3の実施形態を示す外観斜視図である。本実施形態では磁気ディスク2のトラック幅方向に対して垂直な側面、すなわちビット長方向に凹部100を形成する。図5尾と同様に、凹部100は磁気ディスク2の記録面に対して平行な長手方向を有する。この実施形態では表1のサンプル(e)(すなわちトラック幅Tw=0.2μm、膜厚PT=0.2μm、ネックハイトNH=0.3μm)に対して図13のように凹部100を形成し、hとwとを表5のように変更したサンプル(e’’1)〜(e’’6)を用意した。各サンプルの記録磁極部31の軟磁性膜の組成には、第1の実施形態と同様の材料を用いることができる。そして、各サンプルにつきヘッド位置決め誤差量を測定した。
図13は、図3の記録磁極部31の第3の実施形態を示す外観斜視図である。本実施形態では磁気ディスク2のトラック幅方向に対して垂直な側面、すなわちビット長方向に凹部100を形成する。図5尾と同様に、凹部100は磁気ディスク2の記録面に対して平行な長手方向を有する。この実施形態では表1のサンプル(e)(すなわちトラック幅Tw=0.2μm、膜厚PT=0.2μm、ネックハイトNH=0.3μm)に対して図13のように凹部100を形成し、hとwとを表5のように変更したサンプル(e’’1)〜(e’’6)を用意した。各サンプルの記録磁極部31の軟磁性膜の組成には、第1の実施形態と同様の材料を用いることができる。そして、各サンプルにつきヘッド位置決め誤差量を測定した。
図14は、サンプル(e’’’1)〜(e’’’6)の記録磁極部(凹部有り)とディスク(A)とを組み合せて記録再生の繰り返し回数と位置決め誤差量とを測定した結果を示すグラフである。図14によっても、凹部100の位置が媒体側対向面から遠く幅が短いサンプル(e’’’4)〜(e’’’6)において、位置決め誤差量がやや大きくなっているものの、第2の実施形態と同様に、記録回数によらず継続的に安定な位置決め動作を維持できていることが判る。また、ディスク(B)との組み合わせによっても、全てのヘッドに対して同様に安定した位置決め動作の結果が得られた。これにより本実施形態においても、磁気ディスクの軟磁性膜の厚みとほぼ無関係に位置決め制御を安定化できることが判る。
サンプル(e’’’4)〜(e’’’6)においては、形状異方性の減少により位置決め誤差量が増加したと推定できる。このことから、記録磁極部31中の媒体方向に向かう残留磁化成分を十分に抑制して非記録時の記録磁極部31の安定性を十分に確保するためには、凹部100の高さhをネックハイトNHの1/2以下とし、凹部100の長さwをトラック幅Twの1/2以上とすることが有効であると考えられる。
さらに、同様の条件下で調査を継続した結果、サンプル(e’’’4)〜(e’’’6)においては1万回の記録再生試験後のサーボ信号振幅を調査すると1周あたり10%の振幅ばらつきが見られた。これに対してサンプル(e’’’1)〜(e’’’3)では振幅ばらつきが1周あたり7%以下と小さくなっており、このことから本実施形態によれば、振幅のばらつきを抑制することにも一定の効果が得られることが判る。
さらに本実施形態では、図13に示す位置に凹部100を形成するようにすることで、記録分解能や媒体ノイズなどの記録再生特性を改善し、面記録密度を図5よりも高めることができると考えられる。すなわち図5と比較すると、ビットの境界を決定する側面に凹部がなくなることから、ビット間の磁化遷移領域に対して記録磁極の磁気モーメントが真っ直ぐに向きやすくなり、図5の場合よりも磁化遷移領域を急峻に書き込むことなどが可能になる。
[第4の実施形態]
図15は、図3の記録磁極部31の第4の実施形態を示す外観斜視図である。本実施形態では、記録磁極部31の磁気ディスク2のトラック幅方向に対して平行な側面に凹部100aを形成し、トラック幅方向に対して垂直な側面に凹部100bを形成するようにする。凹部100a,100bの長手方向の長さをそれぞれw1,w2とし、w1,w2のいずれもトラック幅Twのおよそ1/2以上とする。また凹部100a,100bの形成位置をそれぞれh1,h2で表し、h1,h2のいずれもネックハイトNHのおよそ1/3とする。本実施形態において実施した実験に用いたサンプルのサイズを表6に示す。サンプル(c’’’’)〜(h’’’’)およびサンプル(l’’’’)〜(n’’’’)は、凹部100a,100bを形成した以外は表3のサンプル(c)〜(h)およびサンプル(l)〜(n)と同様である。各サンプルの記録磁極部31の軟磁性膜の組成には第1〜第3の実施形態と同様の材料を用いることができる。そして、各サンプルにつきヘッド位置決め誤差量を測定した。
図15は、図3の記録磁極部31の第4の実施形態を示す外観斜視図である。本実施形態では、記録磁極部31の磁気ディスク2のトラック幅方向に対して平行な側面に凹部100aを形成し、トラック幅方向に対して垂直な側面に凹部100bを形成するようにする。凹部100a,100bの長手方向の長さをそれぞれw1,w2とし、w1,w2のいずれもトラック幅Twのおよそ1/2以上とする。また凹部100a,100bの形成位置をそれぞれh1,h2で表し、h1,h2のいずれもネックハイトNHのおよそ1/3とする。本実施形態において実施した実験に用いたサンプルのサイズを表6に示す。サンプル(c’’’’)〜(h’’’’)およびサンプル(l’’’’)〜(n’’’’)は、凹部100a,100bを形成した以外は表3のサンプル(c)〜(h)およびサンプル(l)〜(n)と同様である。各サンプルの記録磁極部31の軟磁性膜の組成には第1〜第3の実施形態と同様の材料を用いることができる。そして、各サンプルにつきヘッド位置決め誤差量を測定した。
図16は、サンプル(c’’’’)〜(n’’’’)の記録磁極部(凹部有り)とディスク(A)とを組み合せて記録再生の繰り返し回数と位置決め誤差量とを測定した結果を示すグラフである。図16に示されるように、全てのサンプルにつき12nm以下の位置決め誤差量を得ることができる。さらに、いずれのサンプルにおいても、記録回数によらず誤差量は増加していない。さらにディスク(B)との組み合わせによっても、全てのヘッドに対して同様に安定した位置決め動作の結果が得られた。これにより本実施形態によっても、磁気ディスクの軟磁性膜の厚みとほぼ無関係に位置決め制御を安定化できることが判る。
本実施形態において、形状異方性を考慮すると、凹部100a,100bの位置および長さは図5および図13の構成よりも媒体方向に向かう残留磁化成分を生じやすい条件をもたらすといえる(h:1/4→1/3、w:3/4→1/2)。これにも拘わらず、位置決め誤差量の測定結果はむしろ改善傾向にある。このことから、記録磁極部31側面のトラック幅方向およびビット長方向の両方に凹部100a,100bを形成することは、非記録時の記録磁極部31の安定性を向上させる効果があると考えられる。
[第5の実施形態]
図17は、図3の記録磁極部31の第5の実施形態を示す外観斜視図である。本実施形態では、記録磁極部31の磁気ディスク2のトラック幅方向に対して平行な側面に、凹部100cと100dとを形成するようにする。凹部100cの形成位置をh1とし、凹部100dは凹部100cに対してh2だけ磁気ディスク2から離れる位置に形成されるとする。図17においてはh1をネックハイトNHのおよそ1/4とし、h2をネックハイトNHのおよそ1/2とする。各凹部100c,100dの長さwを、トラック幅Twのおよそ1/2以上とする。
図17は、図3の記録磁極部31の第5の実施形態を示す外観斜視図である。本実施形態では、記録磁極部31の磁気ディスク2のトラック幅方向に対して平行な側面に、凹部100cと100dとを形成するようにする。凹部100cの形成位置をh1とし、凹部100dは凹部100cに対してh2だけ磁気ディスク2から離れる位置に形成されるとする。図17においてはh1をネックハイトNHのおよそ1/4とし、h2をネックハイトNHのおよそ1/2とする。各凹部100c,100dの長さwを、トラック幅Twのおよそ1/2以上とする。
本実施形態では、凹部100c、100dを有する以外は表3のサンプル(c)〜(h)およびサンプル(l)〜(n)と同様のサンプルを用いた。各サンプルの記録磁極部31の軟磁性膜の組成には第1〜第4の実施形態と同様の材料を用いることができる。そして、各サンプルにつきヘッド位置決め誤差量を測定した。
各サンプル(c)〜(h)およびサンプル(l)〜(n)の記録磁極部(凹部有り)とディスク(A)とを組み合せて記録再生の繰り返し回数と位置決め誤差量とを測定した結果、図16とほぼ同様のグラフが得られた。すなわち全てのサンプルにつき12nm以下の位置決め誤差量を得ることができ、いずれのサンプルにおいても記録回数によらず誤差量は増加しない。さらにディスク(B)との組み合わせによっても、全てのヘッドに対して同様に安定した位置決め動作の結果が得られた。これにより本実施形態によっても、磁気ディスクの軟磁性膜の厚みとほぼ無関係に位置決め制御を安定化できることが判る。
本実施形態において、形状異方性を考慮すると、凹部100c,100dの位置および長さは図5および図13の構成よりも媒体方向に向かう残留磁化成分を生じやすい条件をもたらすといえる(w:3/4→1/2)。これにも拘わらず、位置決め誤差量の測定結果はむしろ改善傾向にある。このことから、記録磁極部31側面のトラック幅方向に2つの凹部100c,100dを形成することは、非記録時の記録磁極部31の安定性を向上させる効果があると考えられる。
さらに本実施形態では、記録磁極部31の磁気ディスク2のトラック幅方向に対して垂直な側面(すなわちビット長方向)に2つの凹部を形成し、h1,h2,およびwを図17と同様としたサンプルについても同様の実験を実施した。その結果、記録磁極部31の磁気ディスク2のトラック幅方向に対して平行な側面に凹部100c,100dを形成した場合と同様の結果を得た。
したがって、トラック幅方向、あるいはビット長方向のいずれの側面に凹部を形成するかによらず、同じ側面に凹部を形成することにより非記録時の記録磁極部31安定性を向上させる効果があると考えらる。さらには、凹部の幅も影響すると考えられるものの、2つ以上形成した場合にはさらに高い効果を得られることが期待できる。
なお、上記の各実施形態において、記録磁極部31のトラック幅方向の幅は、0.3μm以下であることが好ましい。これは、非記録時に磁気ディスク2に向かう残留磁化成分が残る可能性をさらに低減するためである。また各実施形態において、ネックハイトNHを記録磁極幅よりも長くすることが好ましい。これも、非記録時に磁気ディスク2に向かう残留磁化成分が残る可能性をさらに低減するためである。
また各実施形態において、記録磁極部31の先端部を非磁性中間層を挟む軟磁性膜の積層構造とすると、単層よりも静磁気的に安定な状態を得ることができる。また各実施形態において、記録磁極部31の磁気ディスク2の対向面からネックハイトの2分の1以下の位置に凹部を形成すると、残留磁化成分を抑制する効果をより高めることができる。また各実施形態において、凹部の長手方向への長さを記録磁極部31の幅Twの半分以上とすることによっても、残留磁化成分を抑制する効果をより高めることができる。
以上述べたように、各実施形態において示した様々な磁気ヘッドを用いることにより、狭トラック加工のヘッドにおいても、非記録時の不安定性による既記録情報の乱れを抑制することができ、より信頼性の高い垂直磁気記録装置を提供することが可能となる。
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。例えば凹部を形成する代わりに、凸部を形成するようにしても良い。要するに、記録磁極部31の先端に形状異方性を生じさせることができれば良い。また凹部の数は1個または2個に限らない。ただし、凹部の数と磁気記録能力との間にはトレードオフの関係が有るので、凹部の数の最適値が有ると予想される。その値に応じて最適な数の凹部を形成するようにすれば良い。
また各実施形態において、加工装置の性能から、凹部の幅の下限はおよそ20nmまでが限界であった。また深さに関しては評価が困難なため明確ではない。しかし、幅および深さとも例えば5〜50nm程度の範囲にあれば、充分な効果を期待することができる。
また本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
上記の各実施形態においては、磁気ディスク装置を例にとり本発明の詳細を開示した。これに限らず本発明は、磁気ディスク装置だけでなく、テープ媒体やドラム状媒体などを用いる記録再生装置に対しても同様の効果を発揮し得る。さらには、磁気記録媒体の形状によらず、垂直磁気記録方式を採用する磁気記録再生装置全般において、その効果を幅広く発揮することが可能である。
1…筐体、2…磁気ディスク、3…磁気ヘッド、4…ヘッドサスペンションアッセンブリ、5…アクチュエータ、6…回路基板、7…スピンドルモータ、21…トラック、22…サーボセクタ、23…データセクタ、31…記録磁極部、32…記録ヨーク部、33…励磁コイル、34…リターンヨーク部、41…媒体軟磁性裏打ち層、42…垂直記録層、100,100a,100b,100c,100d…凹部、300b…非磁性中間層、300a…軟磁性膜
Claims (15)
- 記録媒体の記録面に対して垂直に記録用磁束を発生させる記録磁極部を具備し、垂直磁気記録方式により前記記録媒体に情報を記録する磁気記録ヘッドにおいて、
前記記録磁極部は、
前記記録媒体のトラック幅方向に対して平行な側面と、
前記記録面に対して平行な長手方向を有して前記記録媒体のトラック幅方向に対して平行な側面に凹状に形成される凹部とを備え、
前記記録磁極部の前記記録媒体のトラック幅方向への長さは、0.3μm以下であることを特徴とする磁気記録ヘッド。 - 記録媒体の記録面に対して垂直に記録用磁束を発生させる記録磁極部を具備し、垂直磁気記録方式により前記記録媒体に情報を記録する磁気記録ヘッドにおいて、
前記記録磁極部は、
前記記録媒体のトラック幅方向に対して垂直な側面と、
前記記録面に対して平行な長手方向を有して前記記録媒体のトラック幅方向に対して垂直な側面に凹状に形成される凹部とを備えることを特徴とする磁気記録ヘッド。 - 前記記録磁極部の前記記録媒体のトラック幅方向への長さは、0.3μm以下であることを特徴とする請求項2に記載の磁気記録ヘッド。
- 前記記録磁極部の前記記録媒体のトラック幅方向への長さは、当該記録磁極部の前記記録用磁束を発生させる方向への長さよりも短いことを特徴とする請求項1または2に記載の磁気記録ヘッド。
- 前記凹部の前記長手方向への長さは、当該凹部の形成される側面の前記記録面に対して平行な方向への長さの1/2よりも長いことを特徴とする請求項1または2に記載の磁気記録ヘッド。
- 前記凹部は、同じ側面に複数形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の磁気記録ヘッド。
- 前記凹部は、当該凹部の形成される側面において前記記録磁極部の前記記録用磁束を発生させる方向への長さの中央よりも前記記録媒体寄りに形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の磁気記録ヘッド。
- 前記記録磁極部は、少なくともその前記記録媒体への近接部において複数の軟磁性膜に非磁性中間層を介在させる積層構造をなすことを特徴とする請求項1または2に記載の磁気記録ヘッド。
- 請求項1乃至8のいずれかに記載の磁気記録ヘッドと、当該磁気ヘッドを磁気記録媒体の記録面に対向支持する支持機構とを具備することを特徴とするヘッドサスペンションアッセンブリ。
- 請求項1乃至8のいずれかに記載の磁気記録ヘッドを具備し、当該磁気記録ヘッドを用いて前記記録媒体に前記情報を記録することを特徴とする磁気記録装置。
- 前記記録媒体は、
軟磁性裏打ち層と、
この軟磁性裏打ち層に積層される垂直配向磁気記録層とを具備することを特徴とする請求項10に記載の磁気記録装置。 - 請求項1乃至8のいずれかに記載の磁気記録ヘッドと、
当該磁気記録ヘッドを用いて前記記録媒体に記録された情報を読み取る再生ヘッドと、
前記磁気記録ヘッドと前記再生ヘッドとを共通に搭載し、当該磁気記録ヘッドと再生ヘッドとを前記記録面に対してスライド稼働させるスライド機構とを具備することを特徴とする複合型ヘッド。 - 請求項12に記載の複合型ヘッドと、当該複合型ヘッドを磁気記録媒体の記録面に対向支持する支持機構とを具備することを特徴とするヘッドサスペンションアッセンブリ。
- 請求項12に記載の複合型ヘッドを具備し、当該複合型ヘッドを用いて前記記録媒体に前記情報を記録し、当該記録された情報を前記複合型ヘッドを用いて読み取ることを特徴とする磁気記録再生装置。
- 前記記録媒体は、
軟磁性裏打ち層と、
この軟磁性裏打ち層に積層される垂直配向磁気記録層とを具備することを特徴とする請求項14に記載の磁気記録再生装置。
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