JP2005154919A - ポリフェニレンスルフィド系長繊維耐熱性布帛及びその製造方法 - Google Patents

ポリフェニレンスルフィド系長繊維耐熱性布帛及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 ポリフェニレンスルフィドの有する耐薬品性や難燃性を維持しつつ高度な耐熱耐酸化性を有し、特に酸素存在下でポリフェニレンスルフィド系布帛の耐熱暴露後の強度保持率に優れたポリフェニレンスルフィド系長繊維耐熱性布帛を提供すること。
【解決手段】 メルトフローレートが、315.6℃、荷重5kg,10minにおいて50〜300g/10minであるポリフェニレンスルフィドを紡出して布帛とした後、上記布帛をガラス転移温度以上の温度で延伸処理することにより、ESCAによる−S−、−SO−、−SO−の組成比較を行ったときに、95アトミック%以上が−S−のスルフィド結合であるポリフェニレンスルフィドからなり、空気中で210℃×1200時間の耐熱加速試験をしたときに、不織布のタテ強力保持率が70%以上である長繊維布帛を提供する。

Description

本発明は、線状ポリフェニレンスルフィド系長繊維からなる耐熱性布帛に関し、さらに詳しくは、耐熱性、耐薬品性、難燃性、強度などの物理的特性に優れたポリフェニレンスルフィド系長繊維からなる耐熱性布帛とその製造方法に関するものである。
ポリアリーレンスルフィド、中でもポリフェニレンスルフィド(以下、「PPS」と略記する)は、耐熱性、耐薬品性、難燃性、電気絶縁性に優れるため、エンジニアリングプラスチックとして広範囲の用途における用いられている。また、PPSの優れた特性を繊維や布帛などとしても活かし、各種工業用フィルターや難燃性被覆材、電池セパレーターなどに用いられている。
PPS系繊維の製造方法としては、PPS系高分子を紡糸前に予め酸化架橋させて高分子量化させる方法が知られている(例えば特許文献1参照)。また、長繊維成形を冷空気により随伴させて行う一般的なスパンボンド法が知られている(例えば特許文献2参照)。また、中途配向繊維を形成し、融点以下、軟化点以上の温度で熱処理する方法も知られている(例えば特許文献3参照)。
PPSは、その高い耐熱性や耐薬品性、難燃性を活かして非常に厳しい環境下で使用されており、特に、耐熱性と耐薬品性を併せ持つのが特徴であるが、さらに耐久性の一層の向上が望まれている。前述したようにPPSは、高温状態でも加水分解を全く受けないなど耐久性に優れたものであるが、唯一の難点は酸化に弱いことであり、他の有機素材と同様に酸素や熱、その他薬品などによって酸化劣化を受ける。特に、高温状態の酸素存在下で使用すると酸素による自働酸化が進み、強度低下などの性能劣化を引き起こす。そして、温度や酸素濃度、循環量などが大きければ大きいほど、自働酸化は急速に進行する。150℃以上の酸素存在下で使われる有機繊維素材としては、耐熱耐酸化性だけでいうと、m−アラミドやポリアミドイミド、ポリイミド繊維などが知られている。しかし、これまでに開示されている技術では、いずれも布帛としての形体は確保できたとしても、唯一の欠点である耐熱耐酸化性を向上させたものはなく、さらに耐熱性の一層の向上が望まれている。
特公昭52−30609号公報 特開昭57−16954号公報 特開昭63−243364号公報
本発明の目的は、PPSからなる耐熱性布帛であって、PPSの有する優れた耐薬品性や難燃性を確保しつつ、耐熱耐酸化性を向上させることにある。特に、酸素存在下でPPS系布帛を耐熱暴露した後の強度保持率を改善することにある。
本発明者らは、前記従来技術の問題点を解決すべく鋭意検討した結果、線状のPPSであって特定の溶融粘度を有するポリマーを紡糸し、各種工程を経た後のイオウ(S)を中心とする結合をESCAにて測定したとき、スルフィド結合が95アトミック%以上で、実質的に酸化により生成する−SO−や−SO−結合がより少ないPPS系布帛は、従来のPPS系布帛よりも耐熱強度に優れた布帛となることを見出し、本発明に至った。
即ち本発明のPPS系長繊維耐熱性布帛は、メルトフローレートが315.6℃、荷重5kg,10minにおいて50〜300g/10minであり、ESCAによる−S−、−SO−、−SO−の組成比較を行ったときに、95アトミック%以上が−S−のスルフィド結合であるPPSからなる長繊維布帛であり、空気中で210℃×1200時間の耐熱加速試験をしたときの不織布のタテ強力保持率が70%以上であるところに特徴を有している。
本発明の耐熱性布帛において上記PPSは、95%モル以上がPPSの繰返し単位からなるものであることが好ましく、また上記長繊維布帛は長繊維不織布であるものがよい。更に本発明の布帛においては、1〜10デニールの長繊維からなる充填率が5〜40%であることが望ましく、また、少なくともいずれか一方向の160℃乾熱収縮率が25%以下の長繊維不織布からなるものであることがより好ましい。
また本発明の他の構成は、上記特性を備えたPPS系長繊維耐熱性布帛を製造するための有用な方法として位置付けられるもので、メルトフローレートが315.6℃、荷重5kg,10minにおいて50〜300g/10minであるPPSを紡出して布帛となした後、該布帛をガラス転移温度以上の温度で延伸処理することにより、ESCAによる−S−、−SO−、−SO−の組成比較を行ったときに、95アトミック%以上が−S−のスルフィド結合であるPPSからなり、空気中で210℃×1200時間の耐熱加速試験を行ったときの不織布のタテ強力保持率を70%以上とするところに特徴を有している。
上記方法を実施するに当っては、前記延伸処理の際、或いは延伸処理の前もしくは後に、加熱ロールによるプレス加工および/またはエンボス加工を施すことが望ましい。
本発明によれば、PPSが本来有している耐薬品性や難燃性に加えて、更に耐熱性の改善されたPPS系布帛を得ることができる。そして本発明のPPS系布帛は、工業用フィルターなどを始めとして広範囲な用途に使用することができ、産業用資材としての実用性を高め利用分野を拡大する効果が絶大である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、いわゆるPPS系布帛といっても、耐薬品性や難燃性を併せ持ったまま、耐熱耐酸化性を大幅に改善したものであり、ASTMのD-1238-82法で荷重5kg、温度315.6℃の条件で測定したPPSのメルトフローレートが50〜300g/10minである線状ポリマーを紡糸してなるPPS系長繊維布帛であり、紡糸後の耐熱性布帛をESCAで、−S−、−SO−、−SO−の組成比較を行った場合、95アトミック%以上が−S−のスルフィド結合であることによって達成されるもので、酸素存在下での耐熱試験において、空気中210℃×1200時間後の布帛のタテ強力保持率で70%以上を達成できる。
本発明でいうPPSとは、その95%モル以上がPPSの繰返し単位からなるもので、PPS系耐熱性布帛は、その長繊維からなるシート状物であり、PPSのガラス転移温度以上の温度にて、PPS系長繊維よりなるシートを延伸することによって得ることができる。その際、加熱ロールによるプレス加工やエンボス加工を施すことも有効である。
本発明で用いる線状PPS系ポリマーとは、ASTMのD-1238-82法で、荷重5kg、温度315.6℃の条件で測定したメルトフローレートが50〜300g/10minの範囲にある線状ポリマーであり、このポリマーを紡糸して得られる繊維は、ESCAでスルフィド結合を中心とするスルホンやスルホキシドの組成比率を比較したときに、スルフィド結合が95アトミック%以上、好ましくは98アトミック%以上、さらに好ましくは100アトミック%であることが肝要である。
非常に厳しい用途に適用する場合は、単なる耐熱性や耐薬品性のみならず、例えばフィルター形態の保持などに必要な強度も併せ持つ必要がある。そのため、例えば繊維としての高い強力を得るため、重合段階でトリクロロベンゼンなどを用いて分子中に未反応の塩素基を残しておき、紡糸前のポリマーの段階で酸素雰囲気あるいはチッソ雰囲気で高温処理することによって、未反応塩素基による架橋反応を起こさせて重合度を高め、繊維として必要な初期強度を得る方法がある。しかしこの様な方法は、比較的低分子量のポリマーを一次的に架橋反応させたものであり、ESCAでイオウ原子を中心とする結合を測定すると、既に−SO−の結合が含まれ、一次的な架橋により重合度を高めるこの様な方法では、長期に渡る耐熱性を確保することは難しい。
本発明で用いるより好ましいPPSは、ASTMのD-1238-82法で荷重5kg、温度315.6℃の条件で測定したメルトフローレートが50〜300g/10minからなる線状ポリマーを紡糸したものであり、ESCAでイオウ原子を中心とする結合状態を測定しても、その95アトミック%以上、より好ましくは98アトミック%以上、さらに好ましくは100アトミック%がスルフィド結合であることが望ましい。
本発明に係るPPS系長繊維は、1〜10デニールのものが望ましい。1デニール未満では酸化劣化が著しく、10デニールを超えるとフィルター性能が低下するとともに、寸法安定性も悪くなるからである。
本発明でいうPPSに代表されるポリアリーレンスルフィドとは、−Ar−S−(Arはアリーレン基を意味する)で表されるアリーレンスルフィドを繰返し単位とする芳香族ポリマーである。アリーレン基としては、p‐フェニレンの他に、例えばm‐フェニレン、ナフチレン基など様々のものが知られているが、耐熱性、加工性および経済性の観点から、p‐フェニレンスルフィドの繰返し単位が最も好ましい。
本発明でいうPPSの、ASTMのD-1238-82法で荷重5kg、温度315.6℃の条件で測定したメルトフローレートは50〜300g/10minである。十分な長期耐熱性や強度を得るためには、線状ポリマーでなお且つ重合度がより高いほうが好ましい。しかし、メルトフローレートが50g/10min未満では、高温でもあまりにも粘性が高くなって紡糸時の圧損が上昇するなど、生産性の面では好ましくない。また、低粘性で流動性の高いものはカレンダー加工性も良好であるので好ましい。
一方、メルトフローレートが300 g/10minを超えると、即ち分子量が過度に小さくなると、紡糸時の圧損上昇などは抑えられるものの分子量分布が大きくなり、低圧損状態でより高分子量のポリマーが含まれたときに、高分子量ポリマーの溶融状態が悪くなって紡糸時に糸切れなどの悪影響を及ぼす可能性がある。また長期耐熱性の観点からも、過度の低分子量化は望ましくない。この様な観点からPPSの好ましいメルトフローレートは50〜300 g/10min、さらに好ましくは80〜150g/10minの範囲である。
また、線状ポリマー状のPPSは、架橋型や半架橋型のPPSに比べると長期耐熱性に優れるばかりでなく、溶融時の熱安定性も良好であるため加工性にも優れる。
上記でいう、線状PPSを紡糸してなる長繊維布帛は、ESCAにてその繊維(布帛)の表面のイオウ原子に関する化学結合状態を調べたときに、−S−のスルフィド結合が95アトミック%以上、好ましくは98アトミック%以上を占めるもので、更に好ましくは100アトミック%がスルフィド結合である。
先述した如く、比較的低分子量のポリマーを酸素存在下などで高温下に処理した半架橋型ポリマーや、更には、繊維や布帛などの状態で硫酸や過酸化水素などの強酸化剤で表面のみを架橋反応させて耐熱性を高める方法などもあるが、これらの方法では、比較的短いスパンでの耐熱性などにおいては強度面でも優れるものの、本発明で意図する長期耐熱性という観点からすると、既に酸化や架橋が進んでいることになるため、本発明で意図するレベルの長期耐熱性を得ることは困難である。
よって、本発明に係るPPS長繊維耐熱性布帛とは、ESCAでイオウ原子の化学状態を測定したときに、95アトミック%以上がスルフィド結合であることを必須とする。
本発明で使用するPPSは、極性有機溶媒中で、アルカリ金属硫化物とジハロ芳香族化合物を重合反応させる方法により得ることができる。アルカリ金属硫化物は、例えば、硫化ナトリウム、硫化リチウム、硫化カリウム等、あるいはこれらの混合物などが使用できる。これらの中でも、硫化ナトリウムは安価で最も経済的に優れることから一般的に用いられる。
また、ジハロ化合物としては、例えば、p−ジクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼンなどのジハロベンゼン、1,4−ジクロロナフタレン等のジハロナフタレン、その他、ジハロ安息香酸、ジハロベンゾフェノン、ジハロフェニルエーテルなどが例示されるが、物性や経済性の観点からするとp−ジクロロベンゼンが最も好ましく使用される。その他、一般的には、多少の分岐構造を与えるため、1分子当り3個以上のハロゲン置換基を有するトリクロロベンゼン等のポリハロ芳香族化合物を少量併用することがあるが、本発明では、この様な半架橋構造を実質的に有さないものが好ましい。
本発明に係るPPSの長繊維からなる布帛は、一般的に知られているスパンボンド法などによって布帛とすることができる。
一般的に知られたスパンボンド法とは、線状PPSポリマーを高温状態で溶融し、溶融ポリマーを細孔から吐出して糸条体とし、該糸条体を高速の気流に随伴させて少なくとも毎分1000m程度の速度で細糸化し、該フィラメントを捕集面上に捕集することによって、連続フィラメントがランダムな方向に多数配列した実質的に平面状の薄膜を形成させながら、目付を大きくする場合には、該薄膜が幾重にも重なる様に捕集面を移動させることによって、連続フィラメントよりなるウエブに形成することができる。また用途や目付の違いによっては、積層されたウエブを厚み方向に交絡する様にニードルパンチ法やウオーターパンチ法によって交絡処理を行うこともできる。
本発明に係る長繊維不織布の充填率は、5〜40%であることが望ましい。5%未満ではフィルター性能に劣り、40%を超えるとフィルターの寿命が著しく低下するからである。
また、本発明に係る長繊維不織布の160℃乾熱収縮率は、少なくともいずれか一方向で25%以下であることが望ましい。25%を超えると寸法安定性が低下し、取扱い性が極端に悪くなるからである。より好ましくは、5〜15%である。
本発明におけるPPS系ポリマーには、必要に応じて無機または有機の滑剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、結晶核剤などの添加剤を配合することができる。
本発明のPPS系長繊維耐熱性布帛は、前述した如くスパンボンド法などによって得られるウエブを2軸延伸することによって最も好ましく得られる。2軸延伸の方法としては、フィルムの延伸に通常採用される遂次二軸延伸、同時二軸延伸、さらには二軸延伸後、追加延伸を行う方法など、2方向に延伸する方法であればいずれの方法でもよいが、タテ延伸後にヨコ延伸を行う遂次二軸延伸が特に好ましい。また、繊維間の接着性を高めるために、二軸延伸の前に前記スパンボンド法で得られたウエブを熱接着することもできる。接着方法としては加熱ロールによる接着が最も一般的で、ロールの材質としては金属、PTFE、シリコンゴムなどが好ましい。
遂次二軸延伸の場合は、一般的に加熱ロール群によるタテ延伸の後、テンターによりヨコ延伸を行うのが一般的である。延伸倍率は特に限定されないが、タテ、ヨコそれぞれ1.5〜7倍、より好ましくは2〜4倍、延伸時の温度はガラス転移温度よりも高い温度が好ましく、70〜170℃の範囲が好ましい。
また、二軸延伸後の布帛の熱収縮をコントロールするため熱処理することも有効である。熱処理温度は、ガラス転移温度以上、融点以下が好ましく、90〜290℃、好ましくは150〜240℃の範囲である。
前記工程によって得られたPPS系長繊維布帛は、そのままでも使用できるが、その後さらにプレス加工すると高密度で更に高強力を得ることができ、熱プレスやエンボス加工、超音波樹脂加工を施すことも有効である。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。実施例および比較例に用いた諸物性は下記の方法で測定した。
[メルトフローレート]:荷重5kg、温度315.6℃の条件にて、ASTMのD-1238-82法に従って測定した。
[ESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)]:アルバック・ファイ社のESCA5800型を使用し、光源にはMgを用いて、布帛(繊維)表面50Åまでの化学構造を定性定量する。スルフィド結合−S−は結合エネルギー163.5eV付近、酸化によって生成するスルホキシド−SO−は166eV付近、さらにスルホン−SO2-は168eV付近に検出されるので、その構成比をアトミック%で表した。
[長期耐熱性評価]:空気雰囲気下で210℃×1200時間、空気の循環量300L/minにサンプルを暴露させた。オーブンとしては、ヤマト科学社製のオーブン「DH−60」を用いた。サンプルはタテ方向で幅5cm、長さ30cmのものを必要数用いた。
[引張試験]:耐熱試験前後の布帛の強度は、JIS L 1906(2000) 5.3.1に従って、幅5cm、長さ30cmサンプルを、つかみ間隔20cm、引張速度10cm/minにてn=3で行い、その平均値を求めた。
[目付]:JIS L 1906(2000) 5.2に従い、25cm×20cmのサンプルをN=3で測定し、その平均値を求めた。
[充填率(%)]:シートの厚み(m)をJIS L 1096のダイヤルゲージ法により7g/cmの荷重下で測定した。シートの目付(g/m)を厚み(m)と密度で割り、百分率(%)で表わした。
[複屈折率(△n)]:ベレックコンペンセーターを装着した偏光顕微鏡を使用し、デターデーションと繊維径よりn=5で求め、平均値を求めた。
実施例1
線状高分子のポリパラフェニレンスルフィド系ポリマーで、メルトフローレートが105g/10minであるものを窒素雰囲気中で予備乾燥し、直径0.3mm、長さ0.6mmのオリフィス315個を有する短形ノズルから吐出量1.5g/穴・分、温度320℃で押出し、そのまま500mm幅のスリット状エアージェット装置に供給し、エアー圧1.5kg/cm2で供給し、紡糸後サクションされたネット上に振り落としてウエブ形成を行った。その後、オルガン社製のニードル「FPD−75−40S」を用いて、深さ8mm、ペネ数40個/cmでニードルパンチし、90℃のフラットカレンダーでプレスした。得られたウエブは目付253g/m2であった。これを温度150℃の延伸ロール群で縦方向に延伸比3倍で延伸し、その後ピンテンターを配した熱処理機により170℃で横方向に2倍の延伸を行った。そして、圧着面積比率18%のエンボスローラーにて部分融着させた。
得られた布帛は、充填率8%、目付41g/m2、タテ強度115N/5cm、160℃乾熱収縮率が3%であった。そして、ESCAにてイオウ原子の化学結合状態を分析すると、スルフィド結合−S−が100アトミック%で、−SO−、−SO−は検出されなかった。そして、空気中210℃1200時間の耐熱暴露後のタテ強度保持率を測定すると78%と高い耐久性が得られた。
実施例2
線状高分子のポリパラフェニレンスルフィド系ポリマーで、メルトフローレートが220g/10minであるものを、前記実施例1と同様にしてスパンボンド加工、延伸、エンボス加工を施し、目付281g/m2の布帛を得た。ESCAでの分析でも実施例1と同様にスルフィド結合が100アトミック%であった。これを、実施例1と同様にして耐熱暴露後の強度保持率を測定したところ、72%の値が得られた。
比較例1
半架橋型ポリパラフェニレンスルフィド系ポリマーで、部分的架橋後のメルトフローレートが288g/minであるものに、実施例1、2と同様のスパンボンド加工、延伸、エンボス加工を施し、272g/m2の布帛を得た。ESCAの分析では、スルフィド結合−S−が92アトミック%で、−SO−は未検出であったが、−SO−は8アトミック%検出された。前記実施例1,2と同様に耐熱暴露後の強度保持率を調べたところ、54%と非常に低いものであった。
上記実施例1,2および比較例1に見られるように、線状ポリマーからなり、メルトフローレートが50〜300g/10minの範囲で、なお且つESCAでイオウの化学結合状態でスルフィド結合が100アトミック%である実施例1,2は、空気循環での210℃1200時間の耐熱試験後で、布帛の強度保持率が70%以上と高い値を示している。一方、比較例1によって確認できるように、メルトフローレートは同等であっても、半架橋型で且つ未使用布帛のイオウ原子の化学状態で−S−結合が95アトミック%以下であるポリフェニレンスルフィド系布帛は、同じポリパラフェニレンスルフィドでも54%という低い耐熱性しか得られていない。
本発明に係る耐熱性布帛は、各種工業用フィルター、各種カンバス、電気絶縁材、電池セパレーター、断熱材、衣料基材、防火服、特殊防護服など広範な分野で好適に使用することができる。

Claims (7)

  1. メルトフローレートが、315.6℃、荷重5kg,10minにおいて50〜300g/10minであり、ESCAにより−S−、−SO−、−SO−の組成比較を行ったときに、95アトミック%以上が−S−のスルフィド結合であるポリフェニレンスルフィドからなる長繊維布帛であって、空気中で210℃×1200時間の耐熱加速試験を行ったときのタテ強力保持率が70%以上であることを特徴とするポリフェニレンスルフィド系長繊維耐熱性布帛。
  2. 前記ポリフェニレンスルフィドの95%モル以上が、フェニレンスルフィドの繰返し単位を有するものである請求項1記載のポリフェニレンスルフィド系長繊維耐熱性布帛。
  3. 前記長繊維布帛が長繊維不織布である請求項1または2記載のポリフェニレンスルフィド系長繊維耐熱性布帛。
  4. 1〜10デニールの長繊維の充填率が5〜40%である請求項1〜3のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド系長繊維耐熱性布帛。
  5. 少なくとも一方向の160℃乾熱収縮率が25%以下の長繊維不織布からなる請求項1〜4のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド系長繊維耐熱性布帛。
  6. メルトフローレートが315.6℃、荷重5kg,10minにおいて50〜300g/10minであるポリフェニレンスルフィドを紡出して布帛となした後、該布帛をガラス転移温度以上の温度で延伸処理し、ESCAによる−S−、−SO−、−SO−の組成比較を行ったときに95アトミック%以上が−S−のスルフィド結合であるポリフェニレンスルフィドからなり、空気中で210℃×1200時間の耐熱加速試験をしたときのタテ強力保持率が70%以上である長繊維布帛とすることを特徴とするポリフェニレンスルフィド系長繊維耐熱性布帛の製造方法。
  7. 前記延伸処理の際、または延伸処理の前もしくは後に、加熱ロールによるプレス加工および/またはエンボス加工を施す請求項6記載のポリフェニレンスルフィド系長繊維耐熱性布帛の製造方法。
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