JP2005154634A - 硬化性水性塗料用樹脂組成物 - Google Patents

硬化性水性塗料用樹脂組成物 Download PDF

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知之 滝原
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Kenichi Kawaguchi
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Abstract

【課題】 密着性、耐水性に優れた塗膜を形成し得る、極めて実用性の高い硬化性水性塗料用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 (a)脂肪酸変性エポキシエステル樹脂、及び(b)ヒドロキシル基と不飽和二重結合を有する重合性単量体、及びカルボキシル基と不飽和二重結合を有する重合性単量体を含む重合性単量体混合物、を有機溶剤の存在下で共重合させて得られる複合重合体を水中に分散して得られる水分散体(A)、と水に分散可能なポリイソシアネート(B)を含有する硬化性水性塗料用樹脂組成物。
【選択図】 なし

Description

本発明は、特に自動車補修用塗料等に用いる新規で有用な硬化性水性塗料用樹脂組成物に関するものである。
近年、環境問題意識の高まりから揮発性有機溶剤の使用量削減が強く求められている。特に、自動車分野を中心にトルエン、キシレン等の有機溶剤に溶解した塗料が使用されてきた。しかし、このような塗料は有機溶剤を多量に含有するため、安全衛生、環境汚染、危険性、臭気等の面で改善の余地があった。これらの要求に応えるため、種々水性塗料組成物が開発されている。特許文献1には、水性エポキシ/アミン系をベースとするコーティング組成物が記載されている。しかしながら自動車補修分野では水性塗料用組成物を利用した場合であっても鋼板に対しての密着性、耐水性の点で必ずしも十分ではなかった。このような塗膜性能面でも強く改良が望まれている。
特開平10−060369号公報
本発明は、前記の問題を解消し、密着性、耐水性に優れた塗膜を形成し得る、極めて実用性の高い硬化性水性塗料用樹脂組成物を提供するものである。
請求項1に記載の発明は、(a)脂肪酸変性エポキシエステル樹脂、及び(b)ヒドロキシル基と不飽和二重結合を有する重合性単量体、及びカルボキシル基と不飽和二重結合を有する重合性単量体を含む重合性単量体混合物、を有機溶剤の存在下で共重合させて得られる複合重合体を水中に分散して得られる水分散体(A)、と水に分散可能なポリイソシアネート(B)を含有する硬化性水性塗料用樹脂組成物である。
請求項2に記載の発明は、水分散体(A)成分のヒドロキシル基価が30〜250mgKOH/g、酸価が5〜100mgKOH/g、重量平均分子量が10,000〜300,000である請求項1に記載の硬化性水性塗料用樹脂組成物である。
本発明の硬化性水性塗料用樹脂組成物は、揮発性有機溶剤を極力削減した環境対応型の硬化性水性塗料用樹脂組成物であり、密着性、耐水性に優れる。本発明の硬化性水性塗料用樹脂組成物は、このすぐれた特性を利用した自動車補修用塗料分野おいて非常に有用である。
本発明の硬化性水性塗料用樹脂組成物は、(a)脂肪酸変性エポキシエステル樹脂及び(b)ヒドロキシル基と不飽和二重結合を有する重合性単量体及びカルボキシル基と不飽和二重結合を有する重合性単量体を含む重合性単量体混合物を有機溶剤の存在下で共重合させて得られる複合重合体を水中に分散して得られる水分散体(A)、と水に分散可能なポリイソシアネート(B)を含有するものであり、これにより、本発明の諸特性を達成することができる。
本発明に係る(a)脂肪酸変性エポキシエステル樹脂は、例えば、脂肪酸とビスフェノール型エポキシ樹脂を含む反応成分を付加、縮合させて得ることができる。脂肪酸としては、例えば、乾性油、半乾性油又は不乾性油から誘導される脂肪酸、合成脂肪酸が挙げられ、乾性油、半乾性油又は不乾性油の具体例としては桐油、大豆油、アマニ油、ヒマシ油、脱水ヒマシ油、サフラワー油、綿実油等が挙げられ、合成脂肪酸としては、例えば、バーサチック酸(シェルケミカル社製商品名)等が挙げられる。
これらの脂肪酸、合成脂肪酸は、1種類を単独で又は2種類以上組み合わせて使用される。
前記ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールとエピクロルヒドリンの反応によって得られるビスフェノール型エポキシ樹脂等が挙げられる。ビスフェノールとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF等が挙げられる。
前記ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、エピコート828、エピコート1001、エピコート1004、エピコート1007、エピコート1009(何れも、シェルケミカル社製商品名)等が挙げられる。
これらのビスフェノール型エポキシ樹脂の中で、得られる硬化性水性塗料用樹脂組成物の水分散性の点から、エピコート1001及びエピコート1004が好ましい。
前記ビスフェノール型エポキシ樹脂は、1種類を単独で又は2種類以上組み合わせて使用され、また、これらのエポキシ樹脂のエポキシ当量は特に制限されるものではない。
前記の脂肪酸変性エポキシエステル樹脂は、得られる塗膜の密着性の点から、前記脂肪酸とビスフェノール型エポキシ樹脂に加えて、1分子中に1個以上のグリシジル基を有するエポキシ化合物を含む反応成分を付加、縮合して得られたものであることが好ましい。
前記エポキシ化合物としては、例えば、1分子中に1個以上のグリシジル基を有する脂肪族エポキシ化合物、1分子中に1個以上のグリシジル基を有する脂環式エポキシ化合物、1分子中に1個以上のグリシジル基を有する芳香族エポキシ化合物等が挙げられるが、得られる塗膜の密着性の点から、1分子中に1〜4個のグリシジル基を有する脂肪族エポキシ化合物が好ましい。
1分子中に1〜4個のグリシジル基を有する脂肪族エポキシ化合物としては、例えば、一価脂肪族アルコールのグリシジルエーテル、二価脂肪族アルコールのジグリシジルエーテル、三価脂肪族アルコールのジグリシジルエーテル、三価脂肪族アルコールのトリグリシジルエーテル、四価脂肪族アルコールのジグリシジルエーテル、四価以上の脂肪族アルコールのトリグリシジルエーテル、四価以上の脂肪族アルコールのテトラグリシジルエーテル、脂肪族ジカルボン酸のジグリシジルエステル等が挙げられる。
一価脂肪族アルコールとしては、例えば、ラウリルアルコール、アリルアルコール等が挙げられ、二価脂肪族アルコールとしては、例えば、アルキレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ポリ(テトラメチレングリコール)、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等が挙げられ、アルキレングリコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等が挙げられ、三価脂肪酸アルコールとしては、例えば、トリメチロールプロパン、グリセリン等が挙げられ、四価以上の脂肪族アルコールとしては、例えば、ペンタエリスリトール、ソルビトール、グリセリン二量体、グリセリン多量体等が挙げられ、脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、テトラメチレンジカルボン酸等が挙げられる。
前記エポキシ化合物は、1種類を単独で又は2種類以上組み合わせて使用され、また、これらのエポキシ樹脂のエポキシ当量は特に制限されるものではない。
前記脂肪酸の配合割合は、得られる塗膜の密着性の点から、前記脂肪酸変性エポキシエステル樹脂を得るために使用される単量体の総量に対し、10〜80重量%であることが好ましく、30〜60重量%であることがより好ましい。この配合割合が10重量%未満であると、得られる塗膜の硬度が低下する傾向にあり、80重量%を超えると未反応の脂肪酸が残存し、得られる塗膜の耐水性が劣る傾向にある。
前記ビスフェノール型エポキシ樹脂の配合割合は、得られる塗膜の硬度と密着性の点から、前記脂肪酸変性エポキシエステル樹脂を得るために使用される単量体の総量に対して、20〜80重量%であることが好ましく、30〜70重量%であることがより好ましい。この配合割合が20重量%未満では得られる塗膜の密着性が低下する傾向にあり、80重量%を超えると得られる塗膜の硬度が低下する傾向にある。
前記脂肪酸変性エポキシエステル樹脂を得るために、前記脂肪酸と前記ビスフェノール型エポキシ樹脂に加えて前記エポキシ化合物も使用する場合、その配合割合は、得られる塗膜の硬度と密着性の点から、前記脂肪酸変性エポキシエステル樹脂を得るために使用される単量体の総量に対して、2〜50重量%であることが好ましく、2〜40重量%であることがより好ましい。この配合割合が2重量%未満では得られる塗膜の密着性が低下する傾向にあり、50重量%を超えると得られる塗膜の硬度、耐水性が低下する傾向にある。
また、本発明に係る前記脂肪酸、ビスフェノール型エポキシ樹脂及びエポキシ化合物を付加、縮合させる方法としては、例えば、通常の付加、縮合反応で行うことができ、特にその方法は制限されるものではなく、例えば、前記の成分を混合し、130〜250℃、4〜10時間加熱する方法で行うことができる。その際、有機溶媒を反応系に添加してもよい。
また、本発明に係る脂肪酸変性エポキシエステル樹脂の酸価は、1mgKOH/g以下であることが好ましく、この酸価が1mgKOH/gを超えると、得られる塗膜の耐水性が低下する傾向にある。 また、本発明に係る脂肪酸変性エポキシエステル樹脂のエポキシ基含有量は、未反応の脂肪酸が残存しない限り、特に制限されるものではない。
本発明における(A)成分の複合重合体は、ヒドロキシル基とカルボキシル基を有することが必要であり、これにより、本発明の優れた諸特性を達成することができる。(A)成分の複合重合体としては、塗膜特性が良好で、製造が容易な点から、ヒドロキシル基と不飽和二重結合を有する重合性単量体と、カルボキシル基と不飽和二重結合を有する重合性単量体とを含む重合性単量体混合物を重合して得られるものが好ましい。特に、アクリル酸及びその誘導体並びにメタクリル酸及びその誘導体等のアクリル化合物を原料に用いて得られる複合重合体が、水分散性の点で好ましい。
前記のヒドロキシル基と不飽和二重結合を有する重合性単量体としては、アクリル酸ヒドロキシアルキル、メタクリル酸ヒドロキシアルキル、それらのラクトン変性物等が挙げられる。アクリル酸ヒドロキシアルキルとしては、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル等のアルキル基の炭素数が1〜6のものが挙げられる。メタクリル酸ヒドロキシアルキルとしては、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル等のアルキル基の炭素数が1〜6のものが挙げられる。また、前記アクリル酸ヒドロキシアルキル及びメタクリル酸ヒドロキシアルキルのラクトン変性物の具体例としては、ε−カプロラクトン等のラクトンで変性した、ラクトン変性アクリル酸2−ヒドロキシエチル、ラクトン変性メタクリル酸2−ヒドロキシエチル等が挙げられる。前記成分は、単独で又は2種類以上組み合わせて使用される。
ヒドロキシル基と不飽和二重結合を有する重合性単量体の配合割合は、不飽和二重結合を含む重合性単量体の全重合性単量体混合物の1〜30重量%であることが好ましく、5〜20重量%であることがより好ましい。
前記、カルボキシル基と不飽和二重結を有する重合性単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸等が挙げられる。カルボキシル基は酸無水物基として存在してもよく、無水マレイン酸等も使用可能である。これらの重合性単量体は、1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
不飽和二重結合を有する重合性単量体中のカルボキシル基と不飽和二重結合を有する重合性単量体の使用量は、得られる硬化性水性塗料用樹脂組成物の水分散性と得られる塗膜の硬化性の点から0.1〜20重量%であることが好ましく、0.5〜10重量%であることがより好ましい。0.1重量%未満であると、硬化性水性塗料用樹脂組成物を合成する際の水分散性が著しく低下し、また、20重量%を超えると、得られる水性樹脂組成物の耐水性が低下する傾向にある。
前記ヒドロキシル基と不飽和二重結合を有する重合性単量体及びカルボキシル基と不飽和二重結合を有する重合性単量体の他にこれら以外の不飽和二重結合を有する重合性単量体を併用することができる。
このような重合性単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル等のアルキル基の炭素数が1〜20のアクリル酸アルキルエステル;アクリル酸シクロヘキシル等のシクロアルキル基の炭素数が3〜20のアクリル酸シクロアルキルエステル;アクリル酸トリシクロデシル、アクリル酸トリシクロデシロキシエチル、アクリル酸トリシクロデシロキシプロピル等のトリシクロアルキル基の炭素数が5〜20のアクリル酸トリシクロアルキルエステル:メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル等のアルキル基の炭素数が1〜20のメタクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸シクロヘキシル等のシクロアルキル基の炭素数が3〜20のメタクリル酸シクロアルキルエステル;メタクリル酸トリシクロデシル、メタクリル酸トリシクロデシロキシエチル、メタクリル酸トリシクロデシロキシプロピル等のトリシクロアルキル基の炭素数が5〜20のメタクリル酸トリシクロアルキルエステル;メタクリル酸アミノメチル、メタクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル等のアルキル基の炭素数が1〜20のメタクリル酸アミノアルキルエステル;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン等のスチレン系単量体;塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、酢酸イソプロペニル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アクリルアミド、メタクリルアミド等のビニル誘導体;マレイン酸ジメチルエステル、マレイン酸ジエチルエステル等の不飽和二塩基酸のジアルキルエステル、ヒンダートアミノ基を有するアクリル酸エステル若しくはメタクリル酸エステル、ベンゾトリアゾール基を有するアクリル酸エステル若しくはメタクリル酸エステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。これらの重合性単量体は、1種類を単独で又は2種類以上組み合わせて使用される。
前記重合性単量体の中では、合成時の重合安定性の点からアクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸シクロアルキルエステルから選ばれるシクロアルキルエステルから選ばれる少なくとも1種類の重合性単量体を使用することが好ましい。これらの重合性単量体の使用量は全重合性単量体中50〜98.9重量%であることが好ましく、70〜94.5重量%であることがより好ましい。
本発明において、前記重合性単量体混合物を重合させる方法としては、通常のラジカル重合方法を利用することができ、特にその方法は制限されるものではない。好ましくは、有機溶媒と重合開始剤の存在下で行われる。好ましい反応温度は50℃〜200℃であり、特に好ましい反応温度は70℃〜150℃である。反応時間は3〜10時間とするのが好ましい。
前記ラジカル重合方法において、有機溶剤としてアルコール系溶剤、エーテル系溶剤等を使用することができる。アルコール系溶剤としては、例えば、メチルアルコール、イソプロピルアルコール等が挙げられ、エーテル系溶剤としては、例えば、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられ、単独又は2種類以上の有機溶剤を併用してもよい。
また、前記ラジカル重合法において、重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物、アゾビス系化合物等を使用することができる。有機過酸化物としては、例えば、イソブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジシクロベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、ジイソブチルパーオキシジカーボネート、2−ジエチルヘキシルパーオキシジカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート等が挙げられ、アゾ系化合物としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチルアゾジイソブチレート、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、(1−フェニルエチル)アゾジフェニルメタン、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニル)、2,2’−アゾビス(2,2,4−トリメチルペンタン)、2−フェニルアゾ−2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)等が挙げられる。
これらの重合開始剤は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
重合に際して、前記各重合性単量体は、予め混合物とした上で反応系に添加してもよいし、別に反応系に添加してもよく、また、この混合物を分割して反応系に添加してもよい。
重合開始剤の使用量は、共重合体(A)成分の目的とする分子量により決められるものであるが、通常、(A)成分の重合に使用される不飽和二重結合を有する重合性単量体の総量に対し、0.1〜10重量%とすることが好ましい。
また、必要に応じて、連鎖移動剤を用いて分子量調整をしてもよい。連鎖移動剤としては、例えば、n−ドデシルメルカプタン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
本発明の硬化性水性塗料用樹脂組成物において、(A)成分の水分散体のヒドロキシル基価は30〜250mgKOH/gであることが好ましい。ヒドロキシル基価が30mgKOH/g未満では、反応性が低下し、架橋点が少なくなり得られる塗膜の耐水性、耐溶剤性が不十分となる傾向にあり、250mgKOH/gを超えると得られる塗膜の硬化性が低下し、得られる塗膜の硬度が低下する傾向にある。
また、(A)成分の酸価は5〜100mgKOH/gであることが好ましい。酸価が5mgKOH/g未満では、硬化性水性塗料用樹脂組成物を合成する際の水分散性が著しく低下し、100mgOH/gを超えると、得られる塗膜の耐水性が低下する傾向にある。
また、(A)成分の水分散体の重量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によるポリスチレン換算値)は、10,000〜300,000であることが好ましく、40,000〜250,000であることがより好ましい。当該重量平均分子量が10,000未満であると、得られる硬化性水性塗料用樹脂組成物の、耐水性、耐溶剤性が低下する傾向にあり、300,000を超えると、得られる硬化性水性塗料用樹脂組成物の密着性が低下する傾向にある。
また、(a)脂肪酸変性エポキシエステル樹脂の配合割合は(A)成分中に5〜80重量%であることが好ましい。脂肪酸変性エポキシエステル樹脂の配合割合が5重量%未満では、得られる塗膜の密着性、耐水性が著しく低下し、80重量%を超えると、得られる塗膜の硬度、耐溶剤性、硬化性が低下する傾向にある。
本発明で使用する(B)成分の水に分散可能なポリイソシアネートとしては、水分散が可能なポリイソシアネート化合物が用いられる。
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のイソシアネート化合物並びにこれらのアダクト体、ビューレット体及びイソシアヌレート体が挙げられる。ポリイソシアネートの中では耐水性の点からヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体が好ましい。
(A)成分と(B)成分の混合比率は(A)成分のヒドロキシル基と(B)成分のイソシアネート基の当量比(−OH/−NCO)が1.0/1.0〜1.0/2.0となる割合で前記ポリイソシアネートを使用することが好ましく、1/1.5となる割合で使用することがより好ましい。
本発明の硬化性水性塗料用樹脂組成物は、必要に応じて、無機顔料、有機顔料、体質顔料等を含有するものであってもよい。無機顔料としては、例えば、チタン白、カーボンブラック等が挙げられ、有機顔料としては、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料等が挙げられ、体質顔料としては炭酸カルシウム,硫酸バリウム、タルク等が挙げられる。これらの無機顔料、有機顔料、体質顔料等を含有させる方法としては、例えば、通常の顔料分散方法を利用することができる。また、本発明の硬化性水性塗料用樹脂組成物に、顔料を加えずにそのままクリヤー塗料として用いることも可能である。
また、本発明の硬化性水性塗料用樹脂組成物においては、必要に応じて各添加剤、例えば、アルミペースト、可塑剤、塗膜強化用樹脂、顔料分散剤、顔料沈降防止剤、塗面調整剤、レオロジーコントロール剤、樹脂ビーズ、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、pH調整剤、防錆剤、消泡剤、造膜助剤、硬化促進剤等を塗料化の際又は塗料化後に添加することも可能である。
本発明の硬化性水性塗料用樹脂組成物においては、通常の塗装方法に従い、各種基材や物品の表面等の塗装に供することができる。塗装に際しては、例えば、エアスプレ−塗装機、エアレススプレ−塗装機、静電塗装機、ロ−ルコ−タ−塗装機、浸漬、ハケ等を用いて塗装することができる。
本発明の硬化性水性塗料用樹脂組成物においては、鉄、非鉄金属、プラスチック等の素材などに直接塗装するために供することができ、プライマー、エナメル塗料、メタリック塗料、クリヤー塗料等として使用することができる。特に金属用プライマーとして塗装されることが好ましい。
本発明の硬化性水性塗料用樹脂組成物においては、金属に塗布後、室温(20℃)〜150℃で1〜100分間加熱乾燥することが好ましい。加熱することで乾燥時間を短縮することができる。加熱乾燥条件は、塗装環境条件等を考慮して適宜選択される。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例において、「部」及び「%」は、特に断りのない限り、それぞれ重量部及び重量%を意味する。
(水分散体(A)成分の製造例1)
冷却器、温度計、滴下ロート、窒素ガス吹き込み管および撹拌機を備えた2リットル四つ口フラスコに、大豆油脂肪酸140部及びビスフェノール型エポキシ樹脂(エピコート1001:シェルケミカル社製商品名)170部、トリメチロールプロパンのグリシジルエーテル及びトリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテルの混合物(デナコールEX421:ナガセ化成工業株式会社製商品名)40部を加え、酸価が1mgKOH/g以下になるまで220℃で加熱して付加、縮合反応を進め、脂肪酸変性エポキシエステル樹脂を得た。
次いで、ブチルセロソルブ120部、プロピレングリコールモノメチルエーテル45部を仕込み、140℃に加熱した。これに、スチレン120部、メタクリル酸メチル12部、アクリル酸ブチル12部、アクリル酸6部、プロピレングリコールモノメチルエーテル90部及び2,2'−アゾビスイソブチロニトリル3部を均一に溶解攪拌した混合液を2時間掛けて滴下し、その後140℃で2時間保温した。その後、80℃に冷却し、N,N−ジメチルアミノエタノールを6部加えて中和を行い、さらにイオン交換水を650部加えて水分散体を得た。加熱残分35重量%、pH8.5、粘度2500mPa・s/25℃であった。
(水分散体(A)成分の製造例2)
冷却器、温度計、滴下ロート、窒素ガス吹き込み管および撹拌機を備えた2リットル四つ口フラスコに、大豆油脂肪酸140部及びビスフェノール型エポキシ樹脂(エピコート1001:シェルケミカル社製商品名)170部、トリメチロールプロパンのグリシジルエーテル及びトリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテルの混合物(デナコールEX421:ナガセ化成工業株式会社製商品名)40部を加え、酸価が1mgKOH/g以下になるまで220℃で加熱して付加、縮合反応を進め、脂肪酸変性エポキシエステル樹脂を得た。
次いで、ブチルセロソルブ120部、プロピレングリコールモノメチルエーテル45部を仕込み、140℃に加熱した。これに、スチレン107部、メタクリル酸メチル12部、アクリル酸ブチル10部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル15部、アクリル酸6部、プロピレングリコールモノメチルエーテル90部及び2,2'−アゾビスイソブチロニトリル3部を均一に溶解攪拌した混合液を2時間掛けて滴下し、その後140℃で2時間保温した。その後、80℃に冷却し、N,N−ジメチルアミノエタノールを6部加えて中和を行い、さらにイオン交換水を650部加えて水分散体を得た。加熱残分35.4重量%、pH8.3、粘度2800mPa・s/25℃であった。
(水分散体(A)成分の製造例3)
冷却器、温度計、滴下ロート、窒素ガス吹き込み管および撹拌機を備えた2リットル四つ口フラスコに、大豆油脂肪酸100部及びビスフェノール型エポキシ樹脂(エピコート1001:シェルケミカル社製商品名)120部、トリメチロールプロパンのグリシジルエーテル及びトリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテルの混合物(デナコールEX421:ナガセ化成工業株式会社製商品名)30部を加え、酸価が1mgKOH/g以下になるまで220℃で加熱して付加、縮合反応を進め、脂肪酸変性エポキシエステル樹脂を得た。
次いで、ブチルセロソルブ85部、プロピレングリコールモノメチルエーテル55部を仕込み、140℃に加熱した。これに、スチレン180部、メタクリル酸メチル20部、アクリル酸ブチル15部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル25部、アクリル酸10部、プロピレングリコールモノメチルエーテル115部及び2,2'−アゾビスイソブチロニトリル2部を均一に溶解攪拌した混合液を2時間掛けて滴下し、その後140℃で2時間保温した。その後、80℃に冷却し、N,N−ジメチルアミノエタノールを10部加えて中和を行い、さらにイオン交換水を650部加えて水分散体を得た。加熱残分35.0重量%、pH8.4、粘度3100mPa・s/25℃であった。
(水分散体(A)成分の製造例4)
冷却器、温度計、滴下ロート、窒素ガス吹き込み管および撹拌機を備えた2リットル四つ口フラスコに、大豆油脂肪酸100部及びビスフェノール型エポキシ樹脂(エピコート1001:シェルケミカル社製商品名)120部、トリメチロールプロパンのグリシジルエーテル及びトリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテルの混合物(デナコールEX421:ナガセ化成工業株式会社製商品名)30部を加え、酸価が1mgKOH/g以下になるまで220℃で加熱して付加、縮合反応を進め、脂肪酸変性エポキシエステル樹脂を得た。
次いで、ブチルセロソルブ85部、プロピレングリコールモノメチルエーテル55部を仕込み、140℃に加熱した。これに、スチレン170部、メタクリル酸メチル20部、アクリル酸ブチル15部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル25部、アクリル酸20部、プロピレングリコールモノメチルエーテル115部及び2,2'−アゾビスイソブチロニトリル2部を均一に溶解攪拌した混合液を2時間掛けて滴下し、その後140℃で2時間保温した。その後、80℃に冷却し、N,N−ジメチルアミノエタノールを20部加えて中和を行い、さらにイオン交換水を650部加えて水分散体を得た。加熱残分35.7重量%、pH8.6、粘度3500mPa・s/25℃であった。
(水分散体(A)成分の製造例5)
冷却器、温度計、滴下ロート、窒素ガス吹き込み管および撹拌機を備えた2リットル四つ口フラスコにブチルセロソルブ110部、プロピレングリコールモノメチルエーテル100部を仕込み、130℃に加熱した。これに、スチレン340部、メタクリル酸メチル50部、アクリル酸ブチル40部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル50部、アクリル酸20部及び2,2'−アゾビスイソブチロニトリル3部を均一に溶解攪拌した混合液を2時間掛けて滴下し、その後140℃で2時間保温した。その後、80℃に冷却し、N,N−ジメチルアミノエタノールを40部加えて中和を行い、さらにイオン交換水を250部加えて水分散体を得た。加熱残分50重量%、pH8.5、粘度1500mPa・s/25℃であった。
(実施例1〜4及び比較例1,2)
(プライマー塗料の作製例)
酸化チタン(CR97:石原産業株式会社製商品名)10部、タルク50部、顔料分散剤(フローレンTG−750W:共栄社化学株式会社製商品名)8.0部、防錆顔料(リン酸亜鉛:菊地色素工業株式会社製商品名)5部、消泡剤(BYK028:ビックケミージャパン株式会社製商品名)0.4部、ヌレ剤(フローレンKL-260:共栄社化学株式会社製商品名)0.4部、イオン交換水10.0部を混合し、その混合物にガラスビースを加えてペイントシェーカーで60分分散した。
このようにして得られた分散液に、上記の製造例1〜5で製造した水分散体(A)を固形分換算値で40.0部添加した。さらに、増粘剤(SNシックナー634:サンノプコ株式会社製商品名)0.1部、25%アンモニア水0.2部、イオン交換水10部を加えて塗料を得た。さらに得られた塗料にポリイソシアネート(バイヒジュール3100:住化バイエルウレタン株式会社製商品名)をプロピレングリコールモノメチルエーテルで加熱残分75重量%に調整ものをOH基/NCO基当量で1.0/1.5になるように加えてプライマー塗料とした。
(エナメル塗料の作製例)
前記のプライマー塗料に組み合わせて塗装されるエナメル塗料を、以下の手順で作製した。
アクリル樹脂(ヒタロイド3675:日立化成工業株式会社製商品名)100部、酸化チタン(CR97:石原産業株式会社製商品名)50部、顔料分散剤(BYK161:ビックケミージャパン株式会社製商品名)5部、表面調整剤(BYK355:ビックケミージャパン株式会社製商品名)0.2部、酢酸ブチル20部を混合し、その混合物にガラスビースを加えてペイントシェーカーで60分分散した。
このようにして得られた分散液にポリイソシアネート(スミジュールN3300:住化バイエルウレタン株式会社製商品名)11部と酢酸ブチル35部を加えてエナメル塗料とした。
(試験板の作製例)
プライマー塗料を、処理鋼板(パルテック社製)および未処理鋼板(パルテック社製)に乾燥膜厚が30〜40μmとなるようにスプレー塗装し、室温(25℃)で10分間放置した。その後、70℃で30分間乾燥した。そして、プライマー塗料の上にエナメル塗料を乾燥膜厚が30〜40μmとなるようにスプレー塗装し、室温で10分間放置した。その後、70℃で30分間乾燥した。得られた塗膜板の性能を以下に示す評価基準で評価した。
(密着性)
JIS K−5400のゴバン目試験方法に準拠して密着性の評価を行った。すなわち、塗膜上にナイフを用いて2mm間隔で縦横各10本の線を引き、形成された100個のゴバン目を覆うようにセロファンテープを接着させた。テープを剥がしたときに、塗膜上に残存するゴバン目の数を計測し、下記基準に従って密着性を評価した。得られた結果を表1、2に示した。
○:100個のゴバン目の全てが残存している。
△:51〜99個のゴバン目が残存している。
×:50個以下のゴバン目が残存している。
(耐水性:温水処理後の塗膜外観及び密着性の評価)
密着性の評価の場合と同様にして作製した塗膜板を、40℃の温水に1週間浸漬させた。このようにして温水処理を行った塗膜板の塗膜外観を観察し、以下の基準に従って耐水性を評価した。
○:変化なし。
△:わずかにブリスタあり。
×:ブリスタあり。
××:白化及びブリスタあり。
また、温水処理後の塗膜板について、密着性の評価の場合と同様にしてテープの接着及び剥離を行い、以下の基準に従って密着性を評価した。
○:100個のゴバン目の全てが残存している。
△:51〜99個のゴバン目が残存している。
×:50個以下のゴバン目が残存している。
(塗膜硬度)
JIS K−5400の鉛筆引っかき試験方法に従い、塗膜のキズが認められない鉛筆の硬度記号で結果を示した。
これらの結果を表1、2に纏めて示した。
Figure 2005154634
※)ポリイソシアネート;バイヒジュール3100(住化バイエルウレタン株式会社製商品名)
Figure 2005154634
※)ポリイソシアネート;バイヒジュール3100(住化バイエルウレタン株式会社製商品名)
表1に示したように、実施例1〜4の硬化性水性塗料用樹脂組成物を用いて得られた塗膜は、密着性、耐水性に優れている。
これに対して、ポリイソシアネートを含有しない比較例1の場合は密着性、耐水性、塗膜硬度が不十分であり、また、脂肪酸変性エポキシエステル樹脂を含有しない比較例2の場合は、密着性が不十分であった。
以上、説明した通り、本発明の硬化性水性塗料用樹脂組成物によれば上記の脂肪酸変性エポキシエステル樹脂及び有機溶剤の存在下で、ヒドロキシル基と不飽和二重結合を有する重合性単量体及びカルボキシル基と不飽和二重結合を有する重合性単量体を含む不飽和二重結合を有する重合性単量体混合物を共重合させて得られる複合重合体を水中に分散した水分散体(A)と、さらに、水に分散可能なポリイソシアネート(B)とを組み合わせることにより、揮発性有機溶剤を極力削減した環境対応型の硬化性水性塗料用樹脂組成物で、密着性、耐水性に優れる硬化性水性塗料用樹脂組成物が得られる。

Claims (2)

  1. (a)脂肪酸変性エポキシエステル樹脂及び(b)ヒドロキシル基と不飽和二重結合を有する重合性単量体、及びカルボキシル基と不飽和二重結合を有する重合性単量体を含む重合性単量体混合物を有機溶剤の存在下で共重合させて得られる複合重合体を水中に分散して得られる水分散体(A)、と水に分散可能なポリイソシアネート(B)を含有する硬化性水性塗料用樹脂組成物。
  2. 水分散体(A)成分のヒドロキシル基価が30〜250mgKOH/g、酸価が5〜100mgKOH/g、重量平均分子量が10,000〜300,000である請求項1に記載の硬化性水性塗料用樹脂組成物。

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