JP2005154319A - スチルベン誘導体、その製造方法、および電子写真感光体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 一般式(1)で表されるスチルベン誘導体、その製造方法、およびスチルベン誘導体を含有した電子写真感光体であって、スチルベン誘導体については、特定のホルミル化トリフェニルアミン誘導体と、特定のジリン酸エステル誘導体と、を塩基の存在下に反応させて得る。
【化1】
(一般式(1)中のXは、炭素数7〜15のアルキル基であり、複数のR1、R2、R3、およびR4は、それぞれ独立しており、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換の、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、または炭素数6〜30のアリール基であり、Aは芳香族環を含む二価の有機基である。)
【選択図】 図1
Description
このような有機感光体材料のうち、高い電荷移動度を有する電荷輸送剤として、下記一般式(35)で表されるスチルベン誘導体が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、特許文献2に記載されたスチルベン誘導体は、分子末端に炭素数が1〜6のアルキル基を有しており、結着樹脂との相溶性に優れ、比較的高い電荷移動度を示すものの、容易に結晶化しやすく、均一な厚さの感光層を形成することが困難であるという問題が見られた。また、仮に感光層が形成できたとしても、長時間繰り返し使用した場合には、帯電位が大きく変化するという問題が見られた。さらには、感光層に紙紛が付着しやすいために、現像時にコピー用紙に黒筋や黒点が生じやすいという問題も見られた。
すなわち、本発明の目的は、電子写真感光体の電荷輸送剤等として好適に用いることのできるスチルベン誘導体、その製造方法、および、そのようなスチルベン誘導体を含む電子写真感光体を提供することにある。
すなわち、一般式(1)で表されるスチルベン誘導体は、分子内の所定位置に、特定炭素数を有する長鎖のアルキル基が存在していることにより、例えば、電子写真感光体に用いた場合に、高い電荷移動度を示すとともに、結着樹脂との間の相溶性に優れ、結晶化が生じにくいという効果を得ることができる。また、電子写真感光体として長期間使用したとしても、帯電位の変化が少なく、さらには、潤滑性が向上することから、紙粉やちりが表面に付着するのを有効に防ぐことができ、結果として、現像時における黒スジや黒点の発生を有効に防止することができる。
第1の実施形態は、下記一般式(1)で表されるスチルベン誘導体である(一般式(1)中のA、R1、R2、R3、R4、およびXは、既に上述した定義である。)。
この理由は、アルキル基を構成する炭素数が7未満であると、容易に結晶化しやすく、均一な厚さの感光層等の薄膜を形成することが困難なためである。一方、アルキル基を構成する炭素数が15を超えると所定のスチルベン誘導体を効率良く生産することが困難になるためであり、さらに、アルキル基を構成する炭素数が10以下であれば、当該アルキル基を効率的に導入できるためである。
この理由は、このような特定構造の芳香族環を含む二価の有機基であることより、結着樹脂との間の相溶性に優れており、さらには電荷発生剤から電荷輸送剤への注入効率が高いためである。
第2の実施形態は、下記反応式(1)で表されるように、一般式(1)で表されるスチルベン誘導体の製造方法であって、一般式(2)で表されるホルミル化トリフェニルアミン誘導体と、一般式(3)で表されるジリン酸エステル誘導体とを、塩基の存在下に反応させて、一般式(1)で表されるスチルベン誘導体を得ることを特徴とするスチルベン誘導体の製造方法である。
一般式(2)で表されるホルミル化トリフェニルアミン誘導体は、下記反応式(2)に示すようにフィルスマイヤー法を用いて、合成することが好ましい。
すなわち、一般式(2)で表されるホルミルトリフェニルアミン誘導体は、一般式(4)で表されるアニリン誘導体と、一般式(5)で表されるヨードベンゼン誘導体と、一般式(6)で表されるヨードベンゼン誘導体と、を反応させて、一般式(7)で表されるトリフェニルアミン化合物を合成し、その後、フィルスマイヤー(Vilsmeier)法によりホルミル化し、一般式(2)で表されるホルミル化トリフェニルアミン誘導体を得られることを示している。
この理由は、かかるアニリン誘導体と、2種類のヨードベンゼン誘導体との添加割合が、1:2未満の値になると、目的物であるトリフェニルアミン化合物の生成量が低下する場合があるためである。一方、かかるアニリン誘導体と、ヨードベンゼンとの添加割合が、1:4を超えると、未反応のヨードベンゼンが多く残留するため、目的物であるトリフェニルアミン化合物の精製が困難になる場合があるためである。
この理由は、一般式(5)で表される長鎖アルキル基が付加したヨードベンゼン誘導体と、一般式(6)で表されるヨードベンゼン誘導体との添加割合が、1:0.5未満になると、一般式(6)で表されるヨードベンゼン誘導体が反応できず、目的物であるトリフェニルアミン化合物の生成量が低下する場合があるためである。一方、添加割合が、1:2を超えると、未反応の一般式(6)で表されるヨードベンゼン誘導体が多く残留するため、目的物であるトリフェニルアミン化合物の精製が困難になる場合があるためである。
この理由は、このような反応条件であれば、比較的簡易な製造設備を用いて、所望の反応を効率的に実施できるためである。
(i)オキシ塩化リン、ホスゲン、塩化オキサリル、塩化チオニル、トリフェニルホスフィン−臭素、ヘキサクロロトリホスファザトリエン等のハロゲン化剤
(ii)N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルホルムアニリド(MFA)、N−ホルミルモルホリン、N,N−ジイソプロピルホルムアミド
特に、本発明では、フィルスマイヤー試薬として、オキシ塩化リンと、溶媒としても使用できるDMFとの組み合わせが好適に用いられる。
さらに、フィルスマイヤー試薬の使用量に関して、一般式(7)で表されるトリフェニルアミン化合物1モルに対して、0.9〜3倍モル量の範囲内の値とすることが好ましく、1〜2倍モル量の範囲内の値とすることがより好ましい。
なお、フィルスマイヤー法における、トリフェニルアミン化合物のホルミル化の反応条件に関して、通常130℃以下の温度で行い、反応時間を0.5〜5時間の範囲内の値とすることが好ましい。
一般式(3)で表されるジリン酸エステル誘導体は、下記反応式(3)に示すように、合成することができる。
ここで、合成反応を生じさせるに際して、ビスクロロメチル誘導体1モルに対して、亜リン酸トリエチルの使用割合を、少なくとも2倍モル当量とすることが好ましく、2.5〜4倍モル量の範囲内の値とすることがより好ましい。
また、通常、かかる反応温度を80〜150℃の範囲内の値とし、反応時間を8〜20時間の範囲内の値とすることが好ましい。
また、ジリン酸エステル誘導体を作成する際に、所定量の第三級アミンを添加することも好ましい。この理由は、第三級アミンによって、反応系からハロゲン化アルキルが除去されるため、ジリン酸エステル誘導体の合成反応を促進できるためである。好適な第三級アミンとしては、例えばトリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、4−(ジメチルアミノ)ピリジン等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
(1) 反応温度と反応時間
また、一般式(2)で表されるホルミル化トリフェニルアミン誘導体と、一般式(3)で表されるジリン酸エステル誘導体との反応は、通常−10〜30℃で行うことが好ましく、その反応時間を1〜12時間の範囲内の値とすることが好ましい。
一般式(2)で表されるホルミル化トリフェニルアミン誘導体と、一般式(3)で表されるジリン酸エステル誘導体との反応に使用する好適な溶媒としては、当該反応に影響を及ぼさないものであればよいが、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素が挙げられる。
また、かかる反応に使用する塩基としては、ナトリウムメトキシドやナトリウムエトキシド等のナトリウムアルコキシド、水素化ナトリウムや水素化カリウム等の金属水素化物が好適なものとして挙げられる。
ここで、かかる塩基の添加量を、ホルミル化トリフェニルアミン誘導体1モルに対して、1.1〜1.2モルの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる塩基の添加量が1.1モル未満の値となると、一般式(2)で表されるホルミル化トリフェニルアミン誘導体と、一般式(3)で表されるジリン酸エステル誘導体と、の間の反応性が著しく低下する場合があるためである。
一方、かかる塩基の添加量が1.2モルを超えると、一般式(2)で表されるホルミル化トリフェニルアミン誘導体と、一般式(3)で表されるジリン酸エステル誘導体と、の間の反応を制御することが著しく困難になる場合があるためである。
一般式(3)で表されるジリン酸エステル誘導体と、一般式(2)で表されるホルミル化トリフェニルアミン誘導体と、の間の反応を実施するにあたり、添加割合を、モル比で1:1.5〜1:2.4の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかるホルミル化トリフェニルアミン誘導体と、ジリン酸エステル誘導体との添加割合が、1:1.5未満の値になると、ホルミル化トリフェニルアミン誘導体と、ジリン酸エステル誘導体とが1:1で対応して反応しやすくなるためである。また、かかる添加割合が、1:2.4を超えると、未反応のホルミル化トリフェニルアミン誘導体が精製を困難にする場合があるためである。
したがって、一般式(3)で表されるジリン酸エステル誘導体と、一般式(2)で表されるホルミル化トリフェニルアミン誘導体との添加割合を、モル比で1:1.8〜1:2.2の範囲内の値とすることがより好ましい。
第3の実施形態は、導電性基体上に感光層を設けた電子写真感光体であって、感光層に、一般式(1)で表されるスチルベン誘導体を含有することを特徴とする電子写真感光体である。
なお、電子感光体には、単層型と積層型とがあるが、本発明のスチルベン誘導体は、いずれにも適用可能である。
ただし、特に正負いずれの帯電型にも使用できること、構造が簡単で製造が容易であること、層を形成する際の被膜欠陥を抑制できること、層間の界面が少なく、光学的特性を向上できること等の観点から、単層型に適用することが好ましい。
(1) 基本的構成
図2(a)に示すように、単層型感光体10は、導電性基体12上に単一の感光層14を設けたものである。
この感光層は、例えば、一般式(1)で表されるスチルベン誘導体(正孔輸送剤)と、電荷発生剤と、結着樹脂と、さらに必要に応じて電子輸送剤を適当な溶媒に溶解または分散させ、得られた塗布液を導電性基体上に塗布し、乾燥させることで形成することができる。かかる単層型感光体は、単独の構成で正負いずれの帯電型にも適用可能であるとともに、層構成が簡単であって、生産性に優れているという特徴がある。
また、得られた単層型感光体は、一般式(1)で表されるスチルベン誘導体を含んでいることから、残留電位が低下しているとともに、所定感度を有しているという特徴がある。
さらに、単層型感光体の感光層に、電子輸送剤を含有させる場合には、電荷発生剤と正孔輸送剤との電子の授受が効率よく行われるようになり、感度等がより安定する傾向が見られる。
本発明に用いられる電荷発生剤としては、例えば、無金属フタロシアニン、オキソチタニルフタロシアニン、ペリレン顔料、ビスアゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタロシアニン顔料、スクアライン顔料、トリスアゾ顔料、インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
特に、半導体レーザー等の光源を使用したレーザービームプリンタやファクシミリ等のデジタル光学系の画像形成装置には、700nm以上の波長領域に感度を有する感光体が必要となるため、例えば、無金属フタロシアニンやオキソチタニルフタロシアニン等のフタロシアニン系顔料が好適に用いられる。
一方、ハロゲンランプ等の白色の光源を使用した静電式複写機等のアナログ光学系の画像形成装置には、可視領域に感度を有する感光体が必要となるため、例えば、ペリレン顔料やビスアゾ顔料等が好適に用いられる。
本発明の電子写真感光体においては、正孔輸送剤である本発明のスチルベン誘導体とともに、従来公知の他の正孔輸送剤を感光層に含有させることも好ましい。
このような正孔輸送剤としては、高い正孔輸送能を有する種々の化合物、例えば下記の一般式(HTM−1〜HTM−13)で表される化合物等があげられる。
本発明に用いられる電子輸送剤としては、キノン誘導体およびナフトキノン誘導体を含む化合物が好ましい。この理由は、この理由は、電子輸送剤として、特定の化合物を使用することにより、電子受容性に優れており、また電荷発生剤との相溶性が優れていることから、感度特性や耐久性に優れた湿式現像用電子写真感光体を提供することができるためである。
各成分を分散させるための結着樹脂は、従来より感光層に使用されている種々の樹脂を使用することができる。例えばスチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アクリル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂;シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、その他架橋性の熱硬化性樹脂;エポキシアクリレート、ウレタン−アクリレート等の光硬化型樹脂等の樹脂が使用可能である。
特に、ポリカーボネート樹脂は、透明性や耐熱性に優れているばかりか、機械的特性や正孔輸送剤との相溶性にも優れていることから好ましい結着樹脂である。
また、感光層には、上記各成分のほかに、電子写真特性に悪影響を与えない範囲で、従来公知の種々の添加剤、例えば酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、一重項クエンチャー、紫外線吸収剤等の劣化防止剤、軟化剤、可塑剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、アクセプター、ドナー等を配合することができる。また、感光層の感度を向上させるために、例えばテルフェニル、ハロナフトキノン類、アセナフチレン等の公知の増感剤を電荷発生剤と併用してもよい。
本発明の電子写真感光体が単層型の感光体である場合、電荷発生剤は、結着樹脂100重量部に対して0.1〜50重量部、好ましくは0.5〜30重量部の割合で配合すればよい。本発明のスチルベン誘導体(正孔輸送剤)は、結着樹脂100重量部に対して20〜500重量部、好ましくは30〜200重量部の割合で配合すればよい。電子輸送剤を含有させる場合、電子輸送剤の割合を結着樹脂100重量部に対して5〜100重量部、好ましくは10〜80重量部とするのが適当である。
また、単層型感光体における感光層の厚さは5〜100μm、好ましくは10〜50μmである。
そして、このような感光層が形成される導電性基体としては、導電性を有する種々の材料を使用することができ、例えば鉄、アルミニウム、銅、スズ、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼、真鍮等の金属や、上記金属が蒸着またはラミネートされたプラスチック材料、ヨウ化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で被覆されたガラス等があげられる。
分散液を作るための溶剤としては、種々の有機溶剤が使用可能であり、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類;n−ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族系炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル類;ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等があげられる。これらの溶剤は単独でまたは2種以上を混合して用いられる。
さらに、電荷輸送剤や電荷発生剤の分散性、感光層表面の平滑性を良くするために界面活性剤、レベリング剤等を使用してもよい。
図3(a)に示すように、積層型感光体20は、導電性基体12上に、蒸着または塗布等の手段によって、電荷発生剤を含有する電荷発生層24を形成し、次いでこの電荷発生層24上に、一般式(1)で表されるスチルベン誘導体(正孔輸送剤)の少なくとも1種と結着樹脂とを含む塗布液を塗布し、乾燥させて電荷輸送層22を形成することによって作製される。
また、上記構造とは逆に、図3(b)に示すように、導電性基体12上に電荷輸送層22を形成し、その上に電荷発生層24を形成してもよい。
ただし、電荷発生層24は、電荷輸送層22に比べて膜厚がごく薄いため、その保護のためには、図3(a)に示すように、電荷発生層24の上に電荷輸送層22を形成することがより好ましい。
なお、電荷発生剤、正孔輸送剤、電子輸送剤、結着剤等については、単層型感光体と同様の内容とすることができる。
そして、本発明の積層型電子写真感光体は、感光体の残留電位が低下するとともに、所定感度を有しているという特徴がある。
なお、積層型感光体における感光層の厚さは、電荷発生層が0.01〜5μm程度、好ましくは0.1〜3μm程度であり、電荷輸送層が2〜100μm、好ましくは5〜50μm程度である。
(1)スチルベン誘導体の合成
(1)−1 トリフェニルアミン化合物の合成
下記式(20)で表されるトリフェニルアミン化合物の合成を、下記の反応式(4)に沿って実施した。
すなわち、容量500mlの二つ口フラスコ内に、無水炭酸カリウム46.4g(0.34mol)および粉末銅2.5g(0.04mol)を加え、2時間加熱して、均一になるまで攪拌した。次いで、室温まで冷却した後、下記式(18)で表される4−オクチルアニリン誘導体26.7g(0.13mol)と、化学式(19)で表されるヨードベンゼン68.9g(0.34mol)とを添加した後、180℃に加熱し、12時間反応させた。次いで、室温まで冷却した後、100mlのトルエンを添加し、ろ過処理を実施した。得られたろ液からトルエンおよびヨードベンゼンを減圧留去し、残渣をトルエンで溶解し、活性白土処理を行った後、トルエンを減圧留去した。その後、残渣をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム溶媒)を用いて精製し、式(20)で表されるトリフェニルアミン化合物85.8gを得た(収率71%)。
下記式(21)で表されるホルミル化トリフェニルアミン誘導体を、下記の反応式(5)に沿って実施した。
すなわち、500mlのフラスコ内に、式(20)で表されるトリフェニルアミン化合物28.6g(0.08mol)と、ジメチルホルムアミド(DMF)200mlと、オキシ塩化リン15.2g(0.1mol)と、を収容して、70℃で、薄層クロマトグラフィーで原料であるトリフェニルアミン化合物のスポットがなくなるまで、1時間攪拌させた。その後、得られた反応液をイオン交換水400mlと、トルエン200mlとの混合液に滴下し、生成されたトルエン層を、イオン交換水により洗浄した。得られた有機層に、無水硫酸ナトリウムおよび活性白土を加え、乾燥および吸着処理を行った。その後、トルエンを減圧留去し、得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム溶媒)にて精製し、式(21)で表されるホルミル化トリフェニルアミン誘導体24.7gを得た(収率80%)。
式(23)で表されるジリン酸エステル誘導体の合成を、下記の反応式(6)に沿って実施した。
すなわち、500mlのフラスコ内に、式(22)で表される1,4−ビス(クロロメチル)ベンゼン52.5g(0.3mol)と、亜リン酸トリエチル130g(0.78mol)と、を収容して、8時間以上加熱還流した。その後、冷却して、析出結晶をろ別した。さらに、結晶をn−へキサンを用いて洗浄したのち、クロロホルム/n−ヘキサンを用いて再結晶させ、式(23)で表されるジリン酸エステル誘導体98.1gを得た(収率86.4%)。
次いで、式(8)で表されるスチルベン誘導体の合成を、下記の反応式(7)に沿って実施した。
すなわち、0℃で500mlの二つ口フラスコ内に、(1)−3で得られた式(23)で表されるジリン酸エステル誘導体7g(0.019mol)を加えた後、アルゴン置換を行って、さらにTHF50mlと、28%NaOMe8.56g(0.044mol)と、を収容した。その後、均一になるまで約30分攪拌した。次いで、この容器内に、上述した式(21)で表されるホルミル化トリフェニルアミン誘導体20g(0.037mol)を添加した後、室温で約12時間撹拌した。次いで、反応液をイオン交換水に注いだ後、トルエンを用いて抽出をおこなった。その後、有機層をイオン交換水にて5回洗浄し、有機層を無水硫酸マグネシウムにて乾燥して、溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィ(展開溶媒:クロロホルム/ヘキサン)で精製して、式(8)で表されるスチルベン誘導体10.3gを得た(収率65%)。
得られたスチルベン誘導体の赤外吸収スペクトルを図1に示す。さらに、得られたスチルベン誘導体の融点を、微量融点測定装置(YANAKO社製)を用いて測定したところ、105℃〜112℃であることを確認した。
得られたスチルベン誘導体を正孔輸送剤として、単層型の電子写真感光体を作成して、初期表面電位、半減露光量および残留電位を測定した。すなわち、正孔輸送剤として、式(8)で表される得られたスチルベン誘導体(HTM−Aと称する。)を120重量部と、電荷発生剤として、下記式(24)で表されるX型無金属フタロシアニン(CGM−Aと称する。)を5重量部と、結着樹脂として、下記式(25)で表されるZ型ポリカーボネート樹脂100重量部と、を溶媒としてのテトラヒドロフラン800重量部に対して添加した。次いで、ボールミルを用いて50時間混合分散して、単層型感光層用の塗布液を作成した。得られた塗布液を、導電性基材(アルミニウム素管)上に、ディップコート法にて塗布し、100℃、30分間の条件で熱風乾燥して、膜厚25μmの単層型感光層を有する電子写真感光体を得た。
得られた電子写真感光体における初期電気特性、すなわち、半減露光量(E1/2)および残留電位(VR)を、ドラム感度試験機(GENTEC社製)を用いて、表面電位が700Vになるように帯電させて測定した。なお、半減露光量(E1/2)については、ハロゲンランプの光からバンドパスフィルターを用いて取り出した波長780nmの単色光(半値幅:20nm、光強度:1.5μJ/m2)を露光して、表面電位が1/2になるまでに要した時間を測定した。さらに、残留電位については、露光開始から3.3msec経過した時点での表面電位を測定し、それを残留電位とした。それぞれ得られた結果を、表1に示す。
実施例2〜4では、実施例1の塗布液中に、電子輸送材料として、式(15)〜(17)で表されるキノン誘導体(ETM−A〜ETM−C)をそれぞれ20重量部添加したほかは、実施例1と同様に単層型感光層を作成して、評価した。
実施例5では、実施例1の塗布液中に、正孔輸送剤として、式(8)で表されるスチルベン誘導体(HTM−A)のかわりに、式(9)で表されるスチルベン誘導体(HTM−B)を添加したほかは、実施例1と同様に単層型感光層を作成して、評価した。
実施例6〜8では、実施例1の塗布液中に、正孔輸送剤として、式(8)で表されるスチルベン誘導体(HTM−A)のかわりに、式(9)で表されるスチルベン誘導体(HTM−B)を添加し、さらに電子輸送材料として、式(15)〜(17)で表されるキノン誘導体(ETM−A〜ETM−C)をそれぞれ20重量部添加したほかは、実施例1と同様に単層型感光層を作成して、評価した。
実施例9では、実施例1の塗布液中に、正孔輸送剤として、式(8)で表されるスチルベン誘導体(HTM−A)のかわりに、式(10)で表されるスチルベン誘導体(HTM−C)を添加したほかは、実施例1と同様に単層型感光層を作成して、評価した。
実施例10〜12では、実施例1の塗布液中に、正孔輸送剤として、式(8)で表されるスチルベン誘導体(HTM−A)のかわりに、式(10)で表されるスチルベン誘導体(HTM−C)を添加し、さらに電子輸送材料として、式(15)〜(17)で表されるキノン誘導体(ETM−A〜ETM−C)をそれぞれ20重量部添加したほかは、実施例1と同様に単層型感光層を作成して、評価した。
比較例1では、実施例1の塗布液中に、正孔輸送剤として、式(8)で表されるスチルベン誘導体(HTM−A)のかわりに、下記式(26)で表されるスチルベン誘導体(HTM−F)を添加したほかは、実施例1と同様に単層型感光層を作成した。しかしながら、成膜直後に、単層型感光層が結晶化してしまい、評価を中止した。
比較例2〜4では、実施例1の塗布液中に、正孔輸送剤として、式(8)で表されるスチルベン誘導体(HTM−A)のかわりに、式(26)で表されるスチルベン誘導体(HTM−F)を添加し、さらに電子輸送材料として、式(15)〜(17)で表されるキノン誘導体(ETM−A〜ETM−C)をそれぞれ20重量部添加したほかは、実施例1と同様に単層型感光層を作成した。しかしながら、成膜直後に、単層型感光層が結晶化してしまい、評価を中止した。
比較例5では、実施例1の塗布液中に、正孔輸送剤として、式(8)で表されるスチルベン誘導体(HTM−A)のかわりに、下記式(27)で表されるスチルベン誘導体(HTM−G)を添加したほかは、実施例1と同様に単層型感光層を作成した。しかしながら、成膜直後に、単層型感光層が結晶化してしまい、評価を中止した。
比較例6〜8では、実施例1の塗布液中に、正孔輸送剤として、式(8)で表されるスチルベン誘導体(HTM−A)のかわりに、式(27)で表されるスチルベン誘導体(HTM−G)を添加し、さらに電子輸送材料として、式(15)〜(17)で表されるキノン誘導体(ETM−A〜ETM−C)をそれぞれ20重量部添加したほかは、実施例1と同様に単層型感光層を作成した。しかしながら、成膜直後に、単層型感光層が結晶化してしまい、評価を中止した。
比較例9では、実施例1の塗布液中に、正孔輸送剤として、式(8)で表されるスチルベン誘導体(HTM−A)のかわりに、下記式(28)で表されるスチルベン誘導体(HTM−H)を添加したほかは、実施例1と同様に単層型感光層を作成して、評価した。
比較例10〜12では、実施例1の塗布液中に、正孔輸送剤として、式(8)で表されるスチルベン誘導体(HTM−A)のかわりに、式(28)で表されるスチルベン誘導体(HTM−H)を添加し、さらに電子輸送材料として、式(15)〜(17)で表されるキノン誘導体(ETM−A〜ETM−C)をそれぞれ20重量部添加したほかは、実施例1と同様に単層型感光層を作成して、評価した。
実施例13では、実施例1の塗布液中に、正孔輸送剤として、式(8)で表されるスチルベン誘導体(HTM−A)を120重量部加え、さらに式(17)で表される電子輸送剤(ETM−C)を20重量部加えたほかは、実施例1と同様に単層型感光層を作成して、以下に示すように帯電変化測定および画像評価を行った。
○:スジおよび黒点の数が4未満である。
△:スジおよび黒点の数が4〜9である。
×:スジおよび黒点の数が10以上である。
実施例14では、実施例1の塗布液中に、正孔輸送剤として、式(8)で表されるスチルベン誘導体(HTM−A)のかわりに、上述した式(11)で表されるスチルベン誘導体(HTM−D)を120重量部加え、さらに電子輸送剤(ETM−C)を20重量部加えたほかは、実施例1と同様に単層型感光層を作成し、実施例13と同様に帯電変化測定と画像評価を行った。
実施例15では、実施例1の塗布液中に、正孔輸送剤として、式(8)で表されるスチルベン誘導体(HTM−A)のかわりに、上述した式(12)で表されるスチルベン誘導体(HTM−E)を120重量部加え、さらに電子輸送剤(ETM−C)を20重量部加えたほかは、実施例1と同様に単層型感光層を作成し、実施例13と同様に帯電変化測定と画像評価を行った。
比較例13〜19では、実施例1の塗布液中に、正孔輸送剤として、式(8)で表されるスチルベン誘導体(HTM−A)のかわりに、下記式(29)〜(34)および上述した式(28)で表されるスチルベン誘導体(HTM−I〜N、H)を120重量部それぞれ添加し、さらに電子輸送材料として式(17)で表されるキノン誘導体(ETM−C)を20重量部添加したほかは、実施例1と同様に単層型感光層を作成し、実施例13と同様に帯電変化測定と画像評価を行った。
また、一般式(1)で表されるスチルベン誘導体は、高い正孔輸送能を有することから、電子写真感光体における正孔輸送剤として好適に使用されるほか、太陽電池、エレクトロルミネッセンス素子等の種々の分野での利用が可能である。
Claims (6)
- 前記一般式(1)中のXが、炭素数7〜10のアルキル基であることを特徴とする請求項1に記載のスチルベン誘導体。
- 前記感光層が、電荷発生剤および電子輸送剤をさらに含有した単層型であることを特徴とする請求項5に記載の電子写真感光体。
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