JP2005153260A - ノズルプレートの製造方法、ノズルプレート及びインクジェット記録ヘッド - Google Patents

ノズルプレートの製造方法、ノズルプレート及びインクジェット記録ヘッド Download PDF

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Abstract

【課題】複数枚のマスクの開口の重なりによって形成される貫通孔のレーザー光の出口側の形状を規定することにより、ノズル孔から吐出されるインク滴の安定吐出速度限界を向上させ、着弾精度を向上させることのできるノズルプレートの製造方法を提供すること。
【解決手段】ノズルプレート材料10に対してそれぞれ開口を有する複数のマスク8を重合配置させ、前記マスク8の互いの開口の重なりによって形成される透過部の面積を変化させながら、前記透過部を透過させたレーザー光Lをノズルプレート材料10に照射することにより、ノズル孔となる貫通孔及びそれに連続するテーパー部を形成するようにしたノズルプレートの製造方法であって、前記貫通孔のレーザー光Lの出口側の形状を、円形で、且つ、該円の短径/長径を0.8以上1.0以下とする。
【選択図】 図1

Description

本発明はノズルプレートの製造方法、ノズルプレート及びインクジェット記録ヘッドに関し、詳しくは、ノズル孔となる貫通孔をレーザーアブレーションにより形成するインクジェット記録ヘッドに用いられるノズルプレートの製造方法、ノズルプレート及びそれを有するインクジェット記録ヘッドに関する。
最近、インクジェット記録ヘッドのノズルプレートに高分子材料が使用されるようになってきた。このノズルプレートにノズル孔を形成する方法として、高分子材料の穿孔に適するエキシマレーザーによるアブレーション加工の検討が多くなされている。
エキシマレーザーによるアブレーション加工は、常温、常圧、短時間で、サブミクロン〜ミクロンオーダーの精度で、熱歪みやバリのない孔や溝を形成でき、また、マスクを透過したエキシマレーザー光を、レンズで被加工物に結像させることにより加工を行う所謂マスク加工ができる特徴がある。エキシマレーザーは短パルス(〜20ns)、高輝度(〜数十MW)の紫外光を出力できる。発振波長は、レーザーガスの種類により異なるが、アブレーションに良く使用されるのは、XeCl(波長308nm)、KrF(波長248nm)である。
従来、それぞれ小判穴形状の開口を形成した2枚のマスクを重ね合わせ、それらマスクの互いの開口の重なりによって形成される透過部の面積を変化させながら、その透過部を透過させたレーザー光をノズルプレート材料に照射することにより、ノズル孔となる貫通孔とそれに連続するテーパー部とを加工するようにしたノズルプレートの製造方法が特許文献1に開示されている。
インク滴を吐出曲がり等の不具合なく安定的に吐出させることができるようにするためには、ノズルプレートのノズル孔の出口側形状が重要であり、このノズル孔の出口側形状は、吐出されるインク滴の安定吐出速度限界を左右する。上記のように複数枚のマスクを用い、レーザー光を照射することによりノズル孔を加工形成するものにおいては、ノズル孔の出口側形状は貫通孔を形成する際に決定されるため、その貫通孔の出口側形状が厳密に規定される必要がある。しかし、特許文献1には開口を小判穴形状から円形に変化させて加工を行うことが開示されているだけで、その円形とされた貫通孔の出口側形状についての具体的な規定は何ら開示がない。
特許第2985682号公報
そこで、本発明は、複数枚のマスクの開口の重なりによって形成される貫通孔のレーザー光の出口側の形状を規定することにより、ノズル孔から吐出されるインク滴の安定吐出速度限界を向上させ、着弾精度を向上させることのできるノズルプレートの製造方法を提供することを課題とする。
また、本発明は、複数枚のマスクの開口の重なりによって形成される貫通孔のレーザー光の出口側の形状を規定することにより、ノズル孔から吐出されるインク滴の安定吐出速度限界が向上し、着弾精度が向上したノズルプレートを提供することを課題とする。
更に、本発明は、複数枚のマスクの開口の重なりによって形成される貫通孔のレーザー光の出口側の形状を規定することにより、ノズル孔から吐出されるインク滴の安定吐出速度限界が向上し、着弾精度が向上したノズルプレートを備えたインクジェット記録ヘッドを提供することを課題とする。
本発明の他の課題は以下の記載により明らかとなる。
上記の各課題は以下の各発明によって解決される。
請求項1記載の発明は、ノズルプレート材料に対してそれぞれ開口を有する複数のマスクを重合配置させ、前記マスクの互いの開口の重なりによって形成される透過部の面積を変化させながら、前記透過部を透過させたレーザー光をノズルプレート材料に照射することにより、ノズル孔となる貫通孔及びそれに連続するテーパー部を形成するようにしたノズルプレートの製造方法であって、前記貫通孔のレーザー光の出口側の形状を、円形で、且つ、該円の短径/長径を0.8以上1.0以下とすることを特徴とするノズルプレートの製造方法である。
請求項2記載の発明は、前記ノズルプレート材料は、被加工部が75μm以上150μm以下の厚みを有し、前記透過部を透過させたレーザー光をノズルプレート材料に照射することにより前記貫通孔を形成した後、前記マスクを前記透過部の面積が大きくなる方向に変化させながら更にレーザー光をノズルプレート材料に照射することにより、前記貫通孔に連続するテーパー部を形成することを特徴とする請求項1記載のノズルプレートの製造方法である。
請求項3記載の発明は、前記ノズルプレート材料に保護部材を設け、前記レーザー光は、該保護部材の形成面と反対面に対して照射すると共に該保護部材を貫通しないことを特徴とする請求項1又は2記載のノズルプレートの製造方法である。
請求項4記載の発明は、前記保護部材の厚みが50μm以上200μm以下であることを特徴とする請求項3記載のノズルプレートの製造方法である。
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法により製造されたことを特徴とするノズルプレートである。
請求項6記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法により製造されたノズルプレートを有することを特徴とするインクジェット記録ヘッドである。
本発明によれば、ノズル孔から吐出されるインク滴の安定吐出速度限界を向上させ、着弾精度を向上させることのできるノズルプレートの製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、ノズル孔から吐出されるインク滴の安定吐出速度限界が向上し、着弾精度が向上したノズルプレートを提供することができる。
更に、本発明によれば、ノズル孔から吐出されるインク滴の安定吐出速度限界が向上し、着弾精度が向上したノズルプレートを備えたインクジェット記録ヘッドを提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
図1は、レーザー穿孔装置の一例を示す概略図であり、同図において、1はレーザー発振器、2は第1ミラー、3は第2ミラー、4は第3ミラー、5はCCDカメラ、6はCCDカメラ5への結像レンズ、7はフィールドレンズ、8はマスク、9は対物レンズ、10はノズルプレート材料、11はX−Yテーブルである。
レーザー発振器1から出射したレーザー光Lは、第1ミラー2、第2ミラー3及び第3ミラー4を経て、フィールドレンズ7及び所望の開口を形成するマスク8を透過した後、対物レンズ9によりノズルプレート材料10表面の被加工部に結像される。ここでは2枚のマスク8a、8bを重合させて構成しているが、本発明においてマスク8の枚数は複数枚であればよく、2枚に限定されない。また、ここでは一組の凸レンズであるフィールドレンズ7及び対物レンズ9によってテレセントリック光学系を構成しており、同時に多数の孔加工が可能となる。被加工部とは、レーザー光Lが照射されることにより加工が施されるノズルプレート材料10の部位である。この結像されたレーザー光Lによりノズルプレート材料10の被加工部に加工が施される。
第3ミラー4はレーザー光Lについては全反射するが、可視光については高い透過率を持つため、CCDカメラ5による観察が可能である。このため、被加工部への結像位置はCCDカメラ5により確認され、X−Yテーブル11を移動調整することにより位置調整される。
ノズルプレートを作成するための材料であるノズルプレート材料10としては、レーザー光により容易にアブレーション可能な材料が用いられ、例えば、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリサルフォン等の樹脂を好ましく用いることができる。
ここで、上記レーザー発振器1に用いられるレーザーはエキシマレーザーであることが好ましく、レーザー光Lによってノズルプレート材料10の被加工部に貫通孔100(図2(b)参照)を形成する際、対物レンズ9の一次側に配置されるマスク8により形成される透過部80の形状は、ノズルプレートのノズル孔の出口側の形状と同一形状とされ、本発明においては円形とされる。
ここで、本発明では、このように貫通孔100のレーザー光Lの出口側の形状を円形としたものにおいて、該円の短径/長径を0.8以上1.0以下に規定する。なお、図3は、この貫通孔100を形成する際の透過部80の様子を示しているが、図中の長径及び短径の位置は透過部80の形状により決まるものであり、図示する位置に限定されない。
このような透過部80を通してレーザー光Lをノズルプレート材料10に対して照射することにより貫通孔100を形成することで、貫通孔100のレーザー光Lの出口側の形状が、円形で、且つ、該円の短径/長径が0.8以上1.0以下とすると、それによって形成されるノズル孔から吐出されるインク滴の安定吐出速度限界が向上し、着弾精度を向上させることができる。なお、円とは、狭義には、1点からの距離が等しい点の集合と定義されるが、本発明における円とは、狭義の円(真円)に限らず楕円も含む。
また、インク滴の吐出速度は、高周波駆動により高速記録を行う上では速いことが望ましいが、吐出速度を速くするに従って、例えば周囲の環境温度や記録ヘッド自体の発熱によるインク粘度の変化、更にはインクのロット毎のスペックの微差等に起因して、ノズル欠や吐出曲がり等の吐出が不安定となるノズル孔が発生する割合が高くなる。インク滴の安定吐出速度限界とは、このようにノズル孔からインク滴を徐々に速度を速くして吐出を繰り返した際に、ノズル欠や吐出曲がり等の吐出が不安定となるノズル孔の数が記録ヘッドの全ノズル孔のうちの10%となった時の吐出速度と定義する。
このインク滴の安定吐出速度限界の値は大きい程、実際に画像記録を行う際の吐出速度に対するマージンが大きくなることにより、インク滴を安定的に吐出することができるために好ましく、具体的には10m/s以上、より好ましくは12m/s以上あることが望まれる。貫通孔100の出口側の形状を、円形で、且つ、該円の短径/長径を0.8以上1.0以下に規定することで、インク滴の安定吐出速度限界を10m/s以上に向上させることができる。円の短径/長径が0.8以上1.0以下の範囲を外れると、安定吐出速度限界を10m/s以上とすることが難しくなる。円の短径/長径は、より好ましくは、0.98以上1.0以下とすることである。
ノズルプレート材料10にレーザー光を用いて貫通孔100を形成するに先立って、図2(a)に示すようにノズルプレート材料10の表面(インク滴が吐出される側)に撥インク膜12を被覆形成し、ノズルプレート材料10の表面に撥インク性を付与しておくことが好ましい。
撥インク膜12としては、ノズルプレート材料10の表面に撥インク性を付与し得ると共に、上述したようにレーザー光により容易に除去されるものであれば任意であり、例えば含フッ素樹脂溶液をコーティングする方法、含フッ素樹脂分散液をコーティングした後、加熱溶融処理を施す方法等により形成することができる。撥インク膜12の膜厚は、0.1〜0.5μm程度が好ましい。
かかる撥インク膜12の表面側には、貫通孔100の形成に先立って、更に保護部材13を貼付しておくことが、貫通孔100を形成する際の撥インク膜12の損傷を防止し、良好に加工できるようにする観点から好ましい。保護部材13としては、粘着テープ類が挙げられる。
粘着テープ類としては、基材としてポリエチレンテレフタレート、ポリイミド等の樹脂を使用し、粘着剤としてゴム系粘着剤等を塗布したものを使用することができる。
このような保護部材13の厚みは、50μm以上200μm以下とすることが好ましい。保護部材13は、通常、ロール状に巻かれた状態のものを使用時に巻き解いていくため、50μm未満では、強度が弱すぎて、取り扱い性が悪いと共に、巻き解いた際に皺やスジを発生させる問題がある。また、200μmを越えるようなものでは、保護部材13がカールしてしまい、やはり取り扱い性が悪いと共に、後述するアクチュエータ基板Bに接着する際の密着性に劣るようになり、作業性が低下する。より好ましくは、75μm以上150μm以下とすることである。
撥インク膜12及び保護部材13を有するノズルプレート材料10に貫通孔100を形成する場合、それら撥インク膜12及び保護部材13の形成側とは反対側からレーザー光Lを照射するが、この場合、図2(b)に示すように、ノズルプレート材料10及び撥インク膜12を貫通させるが、保護部材13を貫通させない程度の孔加工を行う。
次いで、以上のようにして貫通孔100を形成したノズルプレート材料10に対して、マスク8により開口形状を可変させることによりテーパー部の加工を行うことができる。マスク8は、ここでは2枚のマスク8a、8bを重合させて構成しているが、本発明においてマスク8の枚数は複数枚であればよく、2枚に限定されない。テーパー部は、図1に示すように、2枚のマスク8a、8bを重合配置させ、互いの開口の重なりによって透過部を形成し、それぞれのマスクを移動させてそれらの重合度合いを変化させて透過部の形状を変化させることによって加工する。
図4は、マスク8の移動機構の概略構成を示す平面図である。このマスク8は、2枚のマスク8a、8bを重合させて構成しているが、各マスク8a、8bには、例えば長さ600μm、幅130μmの長円形状を呈するそれぞれ複数の開口、ここでは2つの開口81a、82aと81b、82bとがそれぞれ形成されている。なお、この開口の数はノズルプレート材料10に対して一度に加工される数であり、その数は図示する2つに限定されるものではない。
各マスク8a、8bの一端は、それぞれ支持枠83a、83bに取り付けられている。これら支持枠83a、83bは、図示しないモータによって回動する螺子杆84a、84bと螺合しており、モータの駆動によりそれぞれガイドレール85a、85bに沿って、図中の矢印で示すように開口81a、82a、81b、82bの長さ方向に沿って互いに接離する方向に相対的にスライド移動可能に構成され、これにより開口81a、82aと81b、82bとの重合によって形成される透過部80の面積を可変としている。
テーパー部を形成するには、まず、透過部80の面積が貫通孔100の面積と対応するようにマスク8a、8bの重合度合いが調整されて、上述したように貫通孔100が形成された後、マスク8a、8bをその重合度合いを大きくする方向に若干移動させることにより透過部80の面積を若干大きくし、貫通孔100が形成されているノズルプレート材料10の被加工部に対してレーザー光Lを照射する。これにより最初に形成された貫通孔100よりも若干大径の穴100aが形成される(図5(a))。
次いで、マスク8a、8bの重合度合いを更に大きくし、透過部80の面積を更に大きくし、同じくノズルプレート材料10の被加工部に対してレーザー光Lを照射する。これにより上記穴100aよりも若干大径の穴100bが形成される(図5(b))。
これを同様に繰り返すことにより、貫通孔100に連続するテーパー部200が形成される(図5(c))。このテーパー部200の形成に際しては、既に貫通孔100が形成されているため、レーザーが同じ出力である限り、テーパー部200を加工する際のレーザー光Lが貫通孔100の出口102の加工精度に影響を及ぼすおそれはない。
また、テーパー部200は、図示するように階段状に形成されるものに限らず、透過部80の面積の時間変化を一定にすることにより、断面が滑らかな漏斗状に形成することもできる。
以上のようにして貫通孔100及びテーパー部200が形成された後、保護部材13を剥離すると、貫通孔100がノズル孔aとされたノズルプレートAが作成される。
作成されたノズルプレートAは、ノズル孔aに対応する複数のインク室bが形成されたアクチュエータ基板Bの前端面B1に接着され、これによりインクジェット記録ヘッドHが作成される(図6)。アクチュエータ基板Bは、ここではインク室bの側壁をせん断変形させることによりインク室b内の容積を変化させ、そのとき発生する圧力によってインク室b内のインクをインク滴としてノズル孔aから吐出するものを例示しているが、インク室b内のインクをノズル孔aからインク滴として吐出可能であればいかなる構造であってもよい。
なお、以上の説明では、ノズルプレート材料10に貫通孔100を形成した後、テーパー部200を加工するようにしたが、逆にテーパー部200を形成した後に貫通孔100を形成するようにしてもよい。
ノズルプレート材料10は、貫通孔100を形成する際の被加工部の厚みd(図2(b)参照)が75μm以上150μm以下の厚みを有していることが好ましい。
エキシマレーザーは、レーザー光が必ずしも一定の方向に出ず、パルス毎に方向が微妙に揺らいでいる。また、発光強度分布もパルス毎に揺らいでいる。本発明者の検討したところによると、この揺らぎがノズルプレート製造の際のノズル出口側の加工精度に影響を与えていることがわかっている。
すなわち、ノズルプレート材料10に対して一度にn個のノズルをm回に分けて加工する場合、n個毎にノズルの軸が少しばらついた加工となる。厳密にいえば、n個の中でも精度は一定ではなく、このようなノズルプレートを有するインクジェット記録ヘッドにより画像記録を行うと、画像品質が悪くなる。
これは以下の理由によるものと考えられる。つまり、エキシマレーザーにより加工された孔の断面を見ると、光のエネルギー密度が大きければ、レーザー光の入射側(ノズル入口)と抜け側(ノズル出口)の孔径は近くなり、逆の場合は、入射側に比べて抜け側の径は小さく、テーパー角としては大きな値となる。このとき、レーザー光の方向や強度分布が揺らぐと、加工毎に右側のテーパーが小さかったり、その逆であったりすることとなる。例えば右側のテーパーが小さければ、図7に示すように、結果として軸が右に倒れたことと同じとなり、ノズル出口側の加工精度を低下させ、射出されるインク滴の曲がりが発生して着弾精度が悪化する。
エキシマレーザーは、1〜3mrad(=1m進むと1〜3mm広がる)程度の広がり角を持っており、図8に示すように平行光成分Pだけからなるわけではない。広がり角の大きい部分θに由来する光は、ノズルプレート材料に当たった後、ノズル孔を掘り進む際、右もしくは左側のテーパー角に非対称に影響し、その成分の揺らぎはすぐに実質的なノズル軸に影響する。
θ成分は、対物レンズのより周囲を通過する部分を含むため、収差が大きく不均一になり易い。さらに平行光成分Pだけに比べ、使用されるレーザー光の範囲が図示AからBと広い範囲の影響を受けるため、変動し易くなる。レーザー光が平行光成分Pのみであれば、初期の光学的な調整がしっかりなされている限り角度のばらつきは小さいが、上述の通りエキシマレーザーには広がり角の大きい部分θの成分も含むため、これがノズル出口側の加工精度を低下させ、このノズルプレートを有するインクジェット記録ヘッドにより記録形成される画像の品質を低下させてしまうと考えられる。
しかし、ノズルプレート材料10の被加工部の厚みdが75μm以上150μm以下とすると、ここに貫通孔100を形成すると、エキシマレーザーのレーザー光Lのうち、対物レンズ9の略中央部を通過して被加工部に対して略平行に入射する対称で比較的光量の安定したレーザー光L1の寄与が大きくなり、反面、対物レンズ9の収差の大きい部分を経由し、光量が不安定で斜めから入射するレーザー光L2は、貫通孔100の入口101付近で蹴られて出口102付近までは届きにくいため、貫通孔100先端の出口102部分の加工精度を高めることができる。その結果、この貫通孔100をノズル孔とするインクジェット記録ヘッドから吐出されるインクの着弾精度を高めることができ、また、これにより記録形成される画像の品質を向上させることができる。
ノズルプレート材料10の被加工部の厚みdが75μm未満であると、斜めから入射するレーザー光L2が貫通孔100の入口101で蹴られる割合が少なくなり、出口102側まで届いてしまうため、ノズル孔の出口側の加工精度が劣るようになり、これにより記録形成される画像品質も低下し易くなる。また、150μmを越える厚さでは、加工時間が長くなると共に、厚さ方向でピントがぼけることによる形状劣化が発生し易くなる。
更に、ノズルプレート材料10が十分な厚みを有している場合には、テーパー部200を形成する際、最初に、貫通孔100を形成するための被加工部の厚みdが75μm以上150μm以下となる厚みを残してテーパー部の一部201を形成し(図9(a))、その後、上記被加工部に貫通孔100を形成し(図9(b))、更にその後、残りのテーパー部を形成することによりテーパー部200を完成させる(図9(c))ようにしてもよい。
(実施例1)
ノズルプレート材料として、厚さ75μmの6枚のポリイミド樹脂シートを用意し、それぞれ長孔が形成された2枚のマスクの重なり度合いを変化させることにより透過部を変化させ、エキシマレーザー(λ=248nm)を用いて、貫通孔の出口側形状を、円形で、且つ、短径/長径が表1に記載の通りとなるようにそれぞれ256個の貫通孔とそれに連続するテーパー部を形成し、これをノズル孔とするノズルプレートを作成した。
なお、各ノズルプレート材料に対する加工条件は、貫通孔の出口側の短径/長径以外はすべて同一とした。
得られたノズルプレートを、256個のインク室を有し、その側壁を分極されたPZTにより構成してなるアクチュエータ基板の前端面に接着剤を用いて接着し、インクジェット記録ヘッドA〜Fを作成した。
得られた各記録ヘッドA〜Fについて、駆動電圧を徐々に大きくして吐出速度を上げていき、各記録ヘッドの安定吐出速度限界を測定した。その結果を表1に示す。
Figure 2005153260
(実施例2)
ノズルプレート材料として、厚さ75μmの7枚のポリイミド樹脂シートを用意し、各ノズルプレート材料の片面に、表2に示す通りの厚みを有する保護部材をそれぞれ貼着した後、それぞれ長孔が形成された2枚のマスクの重なり度合いを変化させることにより透過部を変化させて、その保護部材の貼着面と反対面にそれぞれエキシマレーザー(λ=248nm)を用いて貫通孔の出口側形状が円形で、且つ、短径/長径が、すべて上記実施例1の記録ヘッドEの場合と同様の0.98(短径:26.70μm、長径:27.15μm)となるようにそれぞれ256個の貫通孔とそれに連続するテーパー部を形成し、これをノズル孔とするノズルプレートを作成した。
なお、各ノズルプレート材料に対する加工条件は、保護部材の厚み以外はすべて同一とした。
また、保護部材は、ロール状に巻回されたものを一旦巻き解いた状態のものをそれぞれ使用した。
得られた各ノズルプレートを、256個のインク室を有し、その側壁を分極されたPZTにより構成してなるアクチュエータ基板の前端面に接着剤を用いて接着し、それぞれインクジェット記録ヘッドE1〜E7を作成した。
得られた各記録ヘッドE1〜E7を用いて、同一の駆動条件で記録媒体(コニカ社製「QPペーパー」)上にベタ画像を形成し、その濃度ムラについて以下の基準に基づいて目視評価した。その結果を表2に示す。
◎:全く濃度ムラは見られない
○:ほとんど濃度ムラは見られない
△:わずかに濃度ムラがあるが、画質上問題なし
×:濃度ムラが目立つ
Figure 2005153260
なお、保護部材の厚みが40μmよりも薄くなると、保護部材自体の強度が弱く、ノズルプレート材料に貼着する際に、シワやスジの発生が見られるようになり、また、厚みが220μmを越えるようになると、ロール状に巻かれたときのカールの癖が強く残るようになってノズルプレート材料との密着性に劣るようになり、いずれの場合もノズルプレート材料との貼着作業に注意を要するようになった。厚みが40μm以上220μm未満では、このようなことは見られず、保護部材の取り扱い性は極めて良好であった。
レーザー穿孔装置の一例を示す概略図 (a)貫通孔を形成する前のノズルプレー材料の断面図、(b)貫通孔を形成したノズルプレー材料の断面図 貫通孔を形成する際の透過部の様子を示す平面図 マスクの移動機構の概略構成を示す平面図 (a)〜(c)はテーパー部の製造方法の一例を示す工程説明図 インクジェット記録ヘッドの一例を示す分解斜視図 レーザー光により貫通孔を形成したノズルプレートの断面図 エキシマレーザーによる加工状況を示す模式図 (a)〜(c)はテーパー部の製造方法の他の例を示す工程説明図
符号の説明
A:ノズルプレート
a:ノズル孔
B:アクチュエータ基板
B1:前端面
b:インク室
H:インクジェット記録ヘッド
8:マスク
80:透過部
10:ノズルプレート材料
100:貫通孔
200:テーパー部

Claims (6)

  1. ノズルプレート材料に対してそれぞれ開口を有する複数のマスクを重合配置させ、前記マスクの互いの開口の重なりによって形成される透過部の面積を変化させながら、前記透過部を透過させたレーザー光をノズルプレート材料に照射することにより、ノズル孔となる貫通孔及びそれに連続するテーパー部を形成するようにしたノズルプレートの製造方法であって、前記貫通孔のレーザー光の出口側の形状を、円形で、且つ、該円の短径/長径を0.8以上1.0以下とすることを特徴とするノズルプレートの製造方法。
  2. 前記ノズルプレート材料は、被加工部が75μm以上150μm以下の厚みを有し、前記透過部を透過させたレーザー光をノズルプレート材料に照射することにより前記貫通孔を形成した後、前記マスクを前記透過部の面積が大きくなる方向に変化させながら更にレーザー光をノズルプレート材料に照射することにより、前記貫通孔に連続するテーパー部を形成することを特徴とする請求項1記載のノズルプレートの製造方法。
  3. 前記ノズルプレート材料に保護部材を設け、前記レーザー光は、該保護部材の形成面と反対面に対して照射すると共に該保護部材を貫通しないことを特徴とする請求項1又は2記載のノズルプレートの製造方法。
  4. 前記保護部材の厚みが50μm以上200μm以下であることを特徴とする請求項3記載のノズルプレートの製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法により製造されたことを特徴とするノズルプレート。
  6. 請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法により製造されたノズルプレートを有することを特徴とするインクジェット記録ヘッド。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007130816A (ja) * 2005-11-08 2007-05-31 Ricoh Co Ltd 液滴吐出ヘッド及びその製造方法並びにインクジェット記録装置
US7521648B2 (en) * 2003-03-26 2009-04-21 Continental Automotive Systems Us, Inc. Apparatus and method of maintaining a generally constant focusing spot size at different average laser power densities
JP2019077167A (ja) * 2017-10-24 2019-05-23 東芝テック株式会社 液体吐出ヘッド及び液体吐出装置

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