JP2005150107A - カーボンナノチューブのパターン形成方法およびそのパターン形成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】 高精細なCNTのパターンを、焼成時にCNTを酸化させることなく、しかも有機成分残渣を生じることなく形成し得る方法を提供すること。
【解決手段】 本発明に係るCNTのパターン形成方法は、基板上にカーボンナノチューブと溶媒を含むスラリーを塗布し乾燥することにより粉体層を形成する粉体層形成工程、前記粉体層形成工程で得られた粉体層上にインクジェット法によりバインダーをパターン印刷するバインダー印刷工程、前記バインダー印刷工程においてバインダーが印刷されなかった粉体層の部分のみを基板上から除去することにより前記粉体層のパターンを形成するパターン形成工程、および前記パターン形成方法で得られたパターンを焼成する工程、を経ることを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、カーボンナノチューブ(以下、単に「CNT」:Carbon Nano Tubeという。)のパターン形成方法に関し、特に、電界放出表示素子(以下、単に「FED」:Field Emission Displayという。)などにおいてCNTのパターンを形成するのに有効な技術について提案する。
一般に、ガラス基板やセラミック基板上への高精細な導体パターンの形成における代表的な方法としては感光性導電ペーストを用いたフォトリソ法がある。これは、厚膜印刷用の導体ペーストとして感光性を有するものを使用し、印刷後にマスク露光、現像工程を経ることで高解像度の厚膜導体パターンを形成し得るというものである。この場合、感光性導電ペーストとしては、導電性金属粉体、ガラスフリット、光硬化性樹脂、光重合開始剤、溶剤、その他添加剤等を混合したものが多く用いられている(例えば、特許文献1〜3等参照。)。
しかしながら、この感光性導電ペーストにおける導電性金属粉体としてCNTを用いた場合、従来公知である現像タイプの光硬化性樹脂を完全に焼失させようとする焼成温度(約400〜550℃)では、CNTは酸化しやすく、所望のCNT層が得られない。一方、CNTが酸化しないような温度で焼成しようとすると、光硬化性樹脂などの有機成分が残ってしまい、かかる有機成分が放電の妨げとなるといった問題があった。
このように、FED用途に検討されているCNTペーストのパターンニングに検討されているフォトリソ法や印刷法は優れた方法ではあるが、フォトリソ法は脱バインダー(バインダーの焼失)が高温でしか行えないという欠点があり、また印刷法は高精細のパターンニングに適さないといった欠点があった。
一方で、FED用途に検討されているCNTパターンの形成方法としてCVDが研究されているが、コスト的には高く、しかも基板に影響が出る等の問題があるのが実情である。
特開平11−246638号公報(特許請求の範囲) 特開平5−271576号公報(特許請求の範囲) 特開平2−268870号公報(特許請求の範囲)
本発明は、このような従来技術が抱える問題を解消するためになされたものであり、その主たる目的は、高精細なCNTのパターンを、焼成時にCNTを酸化させることなく、しかも有機成分残渣を生じることなく形成し得る方法を提供することにある。
発明者らは、上記目的の実現に向け鋭意検討した結果、以下に示すような内容を要旨構成とする発明の完成させるに至った。
すなわち、本発明は、基板上にカーボンナノチューブと溶媒を含むスラリーを塗布し乾燥することにより粉体層を形成する粉体層形成工程、前記粉体層形成工程で得られた粉体層上にインクジェット法によりバインダーをパターン印刷するバインダー印刷工程、前記バインダー印刷工程においてバインダーが印刷されなかった粉体層の部分のみを基板上から除去することにより前記粉体層のパターンを形成するパターン形成工程、および前記パターン形成方法で得られたパターンを焼成する工程、を経ることを特徴とするカーボンナノチューブのパターン形成方法である。
好適な態様においては、前記粉体層形成工程で用いるスラリーが、さらに無機バインダーを含むこと、あるいは前記バインダー印刷工程において、熱重量・示差熱分析(TG−DTA)による樹脂の焼失温度が400℃以下である樹脂をバインダーとして用いること、より好ましくは前記バインダーの樹脂として、ポリアルキレンカーボネートまたはアクリル樹脂を用いることが好ましい。
なお、前記粉体層形成工程におけるスラリー中にポリアルキレンカーボネート等の樹脂を少量配合する場合は、前記バインダー印刷工程のバインダーとしては、ポリアルキレンカーボネート等の樹脂の希釈溶媒に不溶な樹脂を用いる態様が好ましい。
また、本発明は他の態様において、前記パターン形成方法により形成されたカーボンナノチューブのパターン形成物である。
さらに、本発明は他の態様において、前記パターン形成方法により形成したカーボンナノチューブのパターンを有する電界放出表示素子である。
本発明に係るCNTのパターン形成方法は、インクジェット法によりバインダーでCNTのパターンを基板上に固着しているので、より高精細なパターンを形成することができる。
また、本発明に係るCNTのパターン形成方法は、ポリアルキレンカーボネートのような低温焼成性(低温脱バインダー性)に優れたバインダーを用いることにより、高精細なCNTのパターンを、焼成時にCNTを酸化させることなく、しかも有機成分残渣を生じることなく形成することができる。
以下、本発明のパターン形成方法について詳細に説明する。
(1)まず、基板上にCNTと溶媒を含むスラリーを塗布し乾燥することにより粉体層(CNT層)を形成する。
この工程において、用い得る基板としては、特に限定されるものではなく、ガラス基板やセラミック基板、セラミックのグリーンシート、メタル基板等へのパターニングが可能である。
また、用い得るCNTは特に限定はされないが、アーク放電法やレーザー蒸着法、ベンゼンなどの熱分解法などで製造したシングルウォールやマルチウォールのCNTを用いることができる。例えば、アーク放電法では、グラファイトの電極を近接させ、直流または交流でアークを飛ばすことで、容器内壁にCNTを含んだ煤を作製し、この煤を精製することで、CNTを取り出すことができる。
CNT層の形成に用いられるスラリーは、CNTを水又は溶剤の媒体および必要に応じ少量のポリビニルアルコールやポリビニルブチラール、ニトロセルロース等の樹脂と混合したものを撹拌、分散してスラリー化することにより得られる。またこのスラリーは、CNT層と基板の密着性向上のために、必要に応じ、銀粉や低融点ガラスフリット、アルカリ珪酸ガラス、シリカ等を無機バインダーとして配合することができる。
基板上へのスラリーの塗布は、例えばドクターブレード法、スプレー法、スクリーン印刷等公知の方法を用いることができ、形成された均一な塗膜を乾燥することによりCNT層を得る。
なお、本発明に係るCNTのパターン形成方法は、基板上に形成されるCNT層に用いられるスラリーとして、パターン形成において基板上から除去したCNTを含有する溶液を固形分調整することにより得られるスラリーを用いることにより、CNTを再利用することができる。
(2)次に、前記(1)の工程で得られたCNT層上にインクジェット法によりバインダーをパターン印刷する。
この工程について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係るCNTのパターン形成工程の一態様を模式的に示す断面図である。図1に示すように、バインダーがインクジェットによりインク滴3となって粉体層1にジェット印刷され(図1(a)参照)、これによりバインダーがジェット印刷された部分4が所定の除去手段に対し除去不可能とされる。すなわち、CNT層に所定の除去手段に対し除去不可能部分4と除去可能部分5とが形成される(図1(b)参照)。ここで、バインダーの樹脂としては、熱重量・示差熱分析(TG−DTA)による樹脂の焼失温度が400℃以下、このましくは350℃以下の温度で焼失するものであれば特に限定されるものではない。例えば、ポリアルキレンカーボネートまたはアクリル樹脂、なかでもポリアルキレンカーボネートを用いることが好ましい。次いで、ジェット印刷により所定の除去手段に対し除去不可能となった部分4以外のCNT層部分5を、該除去手段を用いて除去することにより所望のパターンを得る(図1(c)参照)。
なお、ポリアルキレンカーボネートとしては、EMPOWER MATERIALS社製のQPAC25(ポリエチレンカーボネート)やQPAC40(ポリプロピレンカーボネート)が挙げられる。また、アクリル樹脂としては、LR-981(三菱レーヨン製)などが挙げられる。これらの樹脂の熱重量・示差熱分析(TG−DTA)による焼失温度は、QPAC25およびQPAC40が300℃、LR-981が375℃である。
(3)次に、前記(2)の工程においてバインダーが印刷されなかった部分のみを基板上から除去することにより前記粉体層のパターンを形成する。
本発明においてバインダーがジェット印刷されていない部分の除去手段としては、媒体を用いて圧力をかける手段、超音波を用いる手段、溶媒を用いて溶解除去する手段等が挙げられる。圧力をかけて除去させる手段において利用し得る媒体は、気体でも液体でもよく、例えば風圧により除去する手段、液体スプレーにより除去する手段等が挙げられる。
また、バインダーがジェット印刷されていない部分の除去手段として、溶媒を用いて溶解除去する手段を採用する場合においては、該溶媒としてCNT層を固着したバインダー樹脂を溶解しない溶媒を用いることが必要であるが、特にスラリーを形成する際に用いた溶媒と同一の溶媒を用いることことが好ましく、例えば、水、アルコール、その混合液、グリコール系溶剤等が挙げられる。同一の溶媒を用いた場合には、CNTを含む回収液は、例えば、上澄み液を除去する方法や濾過によって一部溶媒を除去した後にスラリーの固形分を微調整するという極めて簡便な工程を経て、CNT層の形成に用いるスラリーとして再利用可能なスラリーを得ることができる。
(4)次に、前記(3)の工程において得られたパターンを焼成することにより、CNTのパターン形成物を得る。
この焼成工程においては、前述のようにして不要なCNTを除去した後の基板を、空気中または酸素濃度を調整した雰囲気下で約300℃の加熱処理を行い、所望のCNTのパターン形成物を得る。
なお、このような本発明に係るCNTパターンの形成方法において、CNTを基板面内から立ち上がった方向に配向させるには、CNTを含むスラリーを塗布後、電界や磁界を塗膜と垂直方向に印加しながら溶媒が揮発する温度で乾燥させればよい。電界や磁界の大きさ、印加時間などは、スラリーの粘度、CNTの種類、濃度などにより適宜調節することができる。
また、CNTが低融点ガラスフリットなどの絶縁物質で被覆されている場合には、酸やアルカリによるエッチングなどの化学的手法により、CNTを露出させて、CNTの機能を充分に発揮させることが好ましい。
以下に実施例および比較例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものでないことはもとよりである。なお、「部」および「%」とあるのは、特に断りのない限りすべて質量基準である。
(実施例1)
(1)スラリーの作製
以下に示す材料を配合し、攪拌機により攪拌した後、3本ロールミルにより練肉し粘度調整して、下記組成比のスラリーを作製した。
CNT : 5%
銀粉 : 2%
低融点ガラスフリット : 1.5%
ポリビニルアルコール : 1%
アルコール(エタノール): 60%
界面活性剤 : 0.5%
蒸留水 : 30%
(2)スラリーの塗布
前記工程(1)で作製したスラリーを、ガラス基板全面に、400 メッシュのポリエステルスクリーンを用いてスクリーン印刷にて塗布し、80℃で20分間乾燥して膜厚10μmの塗膜(CNT層)を形成した。
(3)インクジェット法による除去不可能化
前記工程(2)で得られたCNT層に、ポリプロピレンカーボネート QPAC40(EMPOWER MATERIALS社製)10%と溶剤(ジエチレングリコールモノエチルアセテート)90%よりなるバインダーをパターン状にジェット印刷し、該バインダーが滴下された部分を乾燥することにより固着し、前記スラリーの作製において用いた溶媒(エタノールと蒸留水の混合溶媒)に対しCNT層をパターン状に除去不可能とした。除去不可能としたCNTパターンは、40μm×40μmである。
(4)ジェット印刷していない部分の除去
CNT層のうち、前記工程(3)においてジェット印刷されていない部分を、エタノールと蒸留水の混合溶媒をスプレーすることにより除去した。この工法により、非溶解性とされていないCNT層部分が除去され、所望とするCNT層のパターンが得られる。
(5)焼成
以上の工程により作製した基板を、300℃で焼成しCNTのパターン形成物を形成した。
このようにして得られたCNTパターンは、CNTが焼成時に焼失することはなく、しかも焼成時にバインダー樹脂が完全に焼失した、高精細なパターンであった。
(実施例1)
実施例1の(3)において、ポリプロピレンカーボネート QPAC40(EMPOWER MATERIALS社製)10%と溶剤(ジエチレングリコールモノエチルアセテート)90%に換えて、アクリル樹脂 LR-981(三菱レーヨン製)5%と溶剤(ジエチレングリコールモノエチルアセテート)95%としたこと以外は実施例1と同様にしてCNTのパターン形成物を形成した。
実施例1と同様、CNTが焼成時に焼失することはなく、しかも焼成時にバインダー樹脂が完全に焼失した、高精細なCNTパターンが得られた。
本発明に係るCNTパターンの形成方法の一形態を模式的に示す説明図。
符号の説明
1 CNT層
2 基板(ガラス基板)
3 インクジェットのインク滴
4 バインダーがジェット印刷された部分
5 バインダーがジェット印刷されなかった部分

Claims (6)

  1. 基板上にカーボンナノチューブと溶媒を含むスラリーを塗布し乾燥することにより粉体層を形成する粉体層形成工程、前記粉体層形成工程で得られた粉体層上にインクジェット法によりバインダーをパターン印刷するバインダー印刷工程、前記バインダー印刷工程においてバインダーが印刷されなかった粉体層の部分のみを基板上から除去することにより前記粉体層のパターンを形成するパターン形成工程、および前記パターン形成方法で得られたパターンを焼成する工程、を経ることを特徴とするカーボンナノチューブのパターン形成方法。
  2. 前記粉体層形成工程で用いるスラリーが、さらに無機バインダーを含むことを特徴とする請求項1に記載のパターン形成方法。
  3. 前記バインダー印刷工程において、熱重量・示差熱分析(TG−DTA)による樹脂の焼失温度が400℃以下である樹脂をバインダーとして用いることを特徴とする請求項1または2に記載のパターン形成方法。
  4. 前記バインダー印刷工程におけるバインダーの樹脂として、ポリアルキレンカーボネートまたはアクリル樹脂を用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
  5. 前記請求項1〜4のいずれか1項に記載のパターン形成方法により形成されたカーボンナノチューブのパターン形成物。
  6. 前記請求項1〜4のいずれか1項に記載のパターン形成方法により形成したカーボンナノチューブのパターンを有する電界放出表示素子。
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