JP2005146433A - タイヤコード及び空気入りタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】 接合部の強度とコード径を本体部コード並みに維持することのできる長尺のタイヤコード、また織物端部の経糸同士が接合された処理済みのすだれ織物から経糸をコードとして効率よく取り出して得られる長尺のタイヤコード、及びそのコードを用いて補強された空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】 多数のフィラメントからなる2本のコード11,12の端部同士を接合して得られるタイヤコード1であって、各コード端の接合部13に相当する部分の撚りを解撚して竹箒状とし、前記竹箒状にあるフィラメント同士を突き合わせて交絡状態として該交絡部に接着剤14を付与し、前記接着剤の硬化前にコード長手方向に引っ張り該接合部13において前記フィラメント同士が交絡かつ整列状態で接着される。
【選択図】 図2

Description

本発明は、2本のコード端部同士を接合して得られる接合部の強度とコード径を本体部コード並みに維持したタイヤコード、及びそのタイヤコードで補強された空気入りタイヤに関する。
空気入りタイヤのカーカス層やベルト補強層等の補強材として、シングルのタイヤコードを用いてタイヤ周方向で補強部材間にジョイントを生じさせない構造(ジョイントレスタイヤ)にすること、また緯糸を用いずにコードを引き揃えゴム被覆したものを補強材としてタイヤの軽量化やユニフォミティーを向上することが提案され、これらに用いられるシングルコードは極めて長尺なものを必要とし、またゴムとの接着性や寸法安定性を確保するためコードに接着剤処理や熱処理等を施しておく必要がある。
このような長尺のタイヤコードを得るためには、2本のコード端部を機械的に結ぶノット法や、旋回空気流を利用し撚り掛けるエアージョイント法等により短尺のコードを継ぎ合わせ長尺化することが一般的に行われている(特許文献1)。
また、接着剤処理等の処理済みのシングルタイヤコードは、コードを1本ずつ処理する方法では極めて生産効率が悪く、またコードセッターのような特殊な装置を用いて多数本のコードを同時に処理する方法では、各コードが相互に緯糸で繋がれていないために動き易くトラブルが発生し易い上、各コードのテンションを均一化するための高価な装置を必要とし、手間がかかる割には効率が低く、コスト高になっている。
そこで、タイヤコードを経糸としたすだれ織物長手方向の両端部において、経糸の端部がその片側に隣接する経糸の端部と交互に結接され任意の複数本の経糸が連続してなるすだれ織物を接着剤処理した後、経糸を取り出すことで長尺の処理済みタイヤコードが得られるタイヤ補強用コードすだれ織物が開示されている(特許文献2)。
特開2002−362836号公報 特開平11−245614号公報
ところで、シングルタイヤコードを引き揃えゴム被覆された補強材を作製するには、例えば、多数のコードを櫛状の筬やハーモニカ状のガイド穴に通す等の手段で配列させて押出機やカレンダー装置に供給してゴムをトッピングすることにより、経糸のみからなる長尺のトッピングシートを得ることができ、タイヤの補強材として好適に使用することができる。
しかしながら、前記の長尺のタイヤコードにはノット法やエアージョイント法による接合部が所々に存在しており、これを前記のように押出機等のトッピング工程に供給した場合、コードから突出した接合部の結び目やフィラメントが筬やガイド穴に引っ掛かったり、接合強度の不足からコードが破断することがある。
一旦、コード破断のようなトラブルが起こると押出機の口金部を分解し、コードを整列して筬やガイド穴に通し直すという人手と時間を要する煩雑な作業を必要とし、また、ノットセンサによってコード中の接合部を検出することもできるが、この場合はコード破断が生じないように運転を制御してトッピング加工を行う必要があり、低速運転による手間や作業効率の低下、さらには低速運転中のコード配列の乱れや厚み変化などトッピング精度の低下を招くという問題がある。
また、上記トッピングシートをタイヤ補強材に使用する場合、ノット法やエアージョイント法による接合部の強度不足や突出部がタイヤ性能に悪影響を及ぼすおそれがあることから接合部分を除去して使用する必要があり、その工数増や材料損失の要因となっている。
本発明は、空気入りタイヤの補強材として用いられる処理済みのシングルタイヤコードであって、簡易な接合法により接合部の強度とコード径を本体部コード並みに維持することのできる長尺のタイヤコード、また織物端部の経糸同士が接合された処理済みのすだれ織物から経糸をコードとして効率よく取り出して得られるより安価な長尺のタイヤコード、及びそのタイヤコードを用いて補強されたタイヤ性能を確保した空気入りタイヤを提供することを目的とする。
請求項1の発明は、多数のフィラメントからなる2本のコード端部同士を接合して得られるタイヤコードであって、各コード端の接合部に相当する部分の撚りを解撚して竹箒状とし、前記竹箒状にあるフィラメント同士を突き合わせて交絡状態として該交絡部に接着剤を付与し、前記接着剤の硬化前にコード長手方向に引っ張り該接合部において前記フィラメント同士が交絡かつ整列状態をなして接着されていることを特徴とするタイヤコードである。
この発明のタイヤコードによれば、コード接合部において突き合わされたフィラメント同士が交絡しかつ整列状態で接着されているので、絡み効果と接着剤の接着作用が相乗し接合部の強度とコード径とを本体部コード並みに維持する長尺のタイヤコードが得られ、ゴムのトッピング加工時のコード破断などのトラブルを防止して連続運転を可能とし、また接合部がタイヤ中に含まれてもタイヤ性能を低下させることがない。さらにコード端部での接合を繰り返すことで、無限長さのタイヤコードを得ることができる。
請求項2の発明は、タイヤコードからなる経糸を緯糸と共に製織した長尺のすだれ織物の長手方向の両端部において、前記経糸の端部がその片側に隣接する経糸の端部と交互に接合されて、複数本の経糸が連続してなるすだれ織物から前記経糸を取り出して得られるタイヤコードであって、前記すだれ織物の経糸端部の接合部が、各経糸端の接合部に相当する部分の撚りを解撚して竹箒状とし、前記竹箒状にあるフィラメント同士を突き合わせて交絡状態として該交絡部に接着剤を付与し、前記接着剤の硬化前に経糸長手方向に引っ張り該接合部において前記フィラメント同士が交絡かつ整列状態をなして接着されていることを特徴とするタイヤコードである。
この発明のタイヤコードによれば、すだれ織物長手方向の端部で片側に隣接する任意の経糸同士が接合され連続しているため、接着剤処理等の処理を施した後、このすだれ織物の経糸を側端から順に取り出すことによって、接合部の強度とコード径とを本体部コード並みに維持した、少なくともすだれ織物の長さの2倍以上の長尺のタイヤコードが効率良く得られ、シングルコードの製造コスト低減が図られる。
上記すだれ織物は、各経糸の端部が、織物長手方向の一端部において、その両隣の経糸のうちいずれか一方側の経糸の端部と接合されるとともに、織物長手方向の他端部において、前記両隣の経糸のうち前記とは反対側の経糸の端部と接合されて、各経糸が両端部で交互に連続しているものでもよい。
これにより、各経糸が織物長手方向の両端部で交互に接合されて1本に連続していることになり、このすだれ織物側端から経糸を順次連続して取り出すことにより、すだれ織物の全ての経糸が1本に連続した極めて長尺のコードが得られるようになる。
また、前記すだれ織物において、側端から数えて任意の奇数番目の経糸とこれに隣接する偶数番目の経糸とが端部で接合されず、該経糸の非接合端部を織物長手方向の少なくとも一方の端部に残しておくことにより、該すだれ織物の長さの数倍以上の長さを持つ複数の長尺のタイヤコードを得ることができる。
これらのすだれ織物は、ロール状に巻回されて、経糸の非接合端部が該巻回体の表面側に在るようにすると、すだれ織物をロール状の巻回体から引き出しながら経糸を引き出して取り出す方法を良好に実施でき、またロール状の巻回体から経糸を織物軸方向の一端側より引き出すことで、織物端部で接合された経糸が軸方向に順次連続して引き出されるようになり、経糸の取り出し作業を効率よく行うことができる。
また、これらのすだれ織物は、ロール状に巻回されて、前記経糸の非接合端部が該巻回体の表面側と巻芯側とに混在しているものでもかまわない。この場合も、すだれ織物からの経糸の取り出し作業を上記と同様に効率よく行うことができる。
請求項3の発明は、前記接合部におけるコード径が、本体部コード径の0.7〜1.1倍であることを特徴とする請求項1又は2に記載のタイヤコードである。
これにより、コード接合部がトッピング加工時に筬やガイド穴に引っ掛かったり詰まったりして破断することなくスムーズに通過することができ、コードの破断発生などのトラブルを回避し、トラブル時の煩雑な作業を解放して加工効率を向上する。また、トッピングシート表面に接合部の膨らみや凹みを生じることがなく、シートの外観を良好にするだけでなくユニフォミティーなどタイヤ性能を向上することができる。
請求項4の発明は、前記接合部におけるコード強力が、本体部コード強力の60%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤコードである。
これにより、トッピング加工時のコードテンションによるコード破断を防ぐと共に、接合部がそのままタイヤ中に含まれても補強性を低下させることなく、耐久性などのタイヤ基本性能を確保することができる。
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤコードで補強されたことを特徴とする空気入りタイヤである。
本発明の空気入りタイヤによれば、コード接合部の強度やコード径が維持されるので、この接合部がタイヤ中に含まれてもタイヤ強度の低下や接合部が異物化することなく、かつ材料損失を生じずに耐久性やユニフォミティーなどの性能を確保し、またシートの薄肉化によるタイヤ軽量化にも寄与することができる。
この発明のタイヤコードによれば、接合部の強度とコード径を本体部コードに対して維持する長尺のタイヤコードが得られ、さらにコード端部の接合を繰り返すことで無限長さのタイヤコードを得ることもできる。
また、すだれ織物端部に経糸同士の接合部を形成し経糸を側端部から順次取り出すことにより、すだれ織物の少なくとも2倍以上の長尺のタイヤコードが効率よく得られシングルタイヤコードの製造コストを大幅に低減することができる。
しかもこのコードでは、トッピング加工時のコード破断などのトラブルを防止して連続運転を可能とし、トラブル発生時の煩雑な復旧作業から解放し、緯糸無しトッピングシートの生産効率を著しく向上する。
また、本発明の空気入りタイヤは、コード接合部の強度やコード径が維持されているので、この接合部がそのままタイヤ中に含まれてもタイヤ強度を低下させることがなく、耐久性やユニフォミティーなどのタイヤ性能を確保し、軽量化に寄与することができる。
以下に本発明を実施の形態に基づいて説明する。
[第1の実施形態]
図1は本発明の第1の実施形態に係わるタイヤコードを示し、図2はコードの接合方法の1例を模式的に示す図である。
図に示すようにタイヤコード1は、ポリエステル、ナイロン、アラミド、レーヨンなど各種合成繊維からなる多数のフィラメントで構成された繊度500〜5000デシテックス(dtex)のマルチフィラメント糸であって、所定数の撚りがかけられRFL処理等の接着剤処理と熱処理が施された処理済みコードである。
タイヤコード1は2本のコード11,12を接合した長尺のタイヤコードであって、接合部13において一方のコード端部11aと他方のコード端部12aとが突き合わされ、フィラメントが重ね合わされた状態でお互いのフィラメント同士が交絡し、かつ表面にフィラメントの凹凸や飛び出しのない整列した状態で接着され強固に接合されたものである。
図2に示すように、タイヤコード1の接合方法は、先ず両コード11,12端部の接合部に相当する部分の撚りを解撚しフィラメントを竹箒状のばらけ状態11b,12b(図2(b))とし、次に竹箒状にあるフィラメント同士を突き合わせ互いに絡み会わせた交絡状態の接合部13aを形成し、この接合部13aに接着剤14を付与する(図2(c))。フィラメント同士が交絡状態にある接合部13a全体に接着剤14を浸透させた後、この接着剤14が硬化する前にコード長手方向に引張力Fで引っ張ることで(図2(d))、接合部13bにおいて両コード端部のフィラメント同士が絡んだままで竹箒状のフィラメントが引っ張られてほぼ整列した状態とし、接合部13に凹凸やフィラメントの飛び出しが生じないようにコード径D1が調整され、接着剤14が硬化し図2(e)に示す1本のタイヤコード1に接続される。
コード端部11a,12aの撚りを解撚しフィラメントを竹箒状11b,12bとする方法は、錐や毛抜きを用いて手作業で行うもの、圧縮空気を作用させ解撚する方法などが挙げられ、またフィラメント同士を絡み会わせた交絡状態の接合部13aを形成するには、重ね合わせたフィラメントを指先で揉み合わせたり、圧縮空気を利用する方法などが挙げられ、いずれも特に限定されるものではないが、手作業によって加工する方法が最も簡易である。
接合部13に使用される接着剤14は、交絡状態にある接合部13aのフィラメント間に接着剤を浸透させる観点から、溶液型の速乾性接着剤が好ましく、例えばポリ酢酸ビニル系、ポリビニルアルコール系、ポリアクリル酸エステル系等の接着剤が挙げられる。特に接着速度が速く、常温で短時間に簡単な作業で強度の高い接着力が得られることから、シアノアクリレート系1液型の瞬間接着剤を使用するのが好ましい。
また、接着剤14の硬化前にコード長手方向に引張力Fを与える方法は、例えば定長型の1軸型引張装置を用いて接合部を定張力下で硬化させるもの、瞬間接着剤を用いる場合は、接合部13の両側を手で把持しコード長手方向に張力を与えて目視で接合部13のフィラメント整列状態を確認しながら硬化させる方法が簡易である。
上記により得られたタイヤコード1の接合部13におけるコード径D1は、本体部コード径D0の0.7〜1.1倍であり、好ましくは0.8〜1.05倍であって、さらには0.9〜1.03倍であることが望ましい。
接合部コード径D1がD0の0.7倍未満であると、フィラメント同士の絡み合いが不足し十分な接合強度が確保できず、トッピング時テンションによるコード破断やタイヤの補強性を低下させる。D1が1.1倍を超えると、コード1が筬やガイド穴を通過する際に接合部13が筬の目や穴に引っ掛かったりする確率が急上昇し、コード破断などのトラブルが多発するようになる。なお、ここでD1には、接合部13から部分的に飛び出したフィラメントも含まれる。
これにより、コード接合部13のコード径D1が本体部コード並みに維持され、従来の接合方法によるこぶ状の結び目やフィラメントのひげ状飛び出しがなくなり、トッピング加工時にタイヤコード1の接合部13が櫛状の筬やハーモニカ状のガイド穴に引っ掛かったり詰まったりしてコード破断やガイド穴の詰まりを生じることなく、またカレンダーのロール溝からの脱線を防ぐことができ、これらのトラブル時の煩雑な復旧作業を解放して加工効率を向上する。また、シート表面に接合部13の膨らみや凹みを生じることなくトッピングシートの外観を良好にすると共にユニフォミティーなどタイヤ性能を向上することができる。
接合部13におけるコード強力は、本体部コード強力の60%以上であることが好ましく、さらに70%以上であることがより好ましい。これにより、トッピング加工時の巻取り側及び引出し側の反対方向から掛かる両テンションによるコード破断の発生を防ぐと共に、接合部13がタイヤ中、特にカーカス層にそのまま含まれても補強性を低下させることなく、タイヤ耐久性を確保することができる。
また、接合部13の長さLは、特に限定されるものではないが、5〜25mm程度であり、接合部13のフィラメントの良好な絡み状態が得られ、接合強度が確保される長さであればよい。長さLが短すぎると、突き合わされたフィラメント同士の良好かつ十分な交絡状態が得られず接合強度が不足し、長すぎるとフィラメントの交絡作業や接着剤の浸透に工数がかかり、またフィラメントが接合部13から飛び出しやすくなり、接合後のコードの直線性を低下させるなどトッピング時のコード破断の原因となり好ましくない。
このようにして得られたタイヤコード1は、その接合部13がフィラメント同士の絡み効果と接着剤による接着力が相乗効果を発揮して本体部コード並みの強度とコード径を有する長尺のタイヤコードとなり、コード端部の接合を繰り返すことでさらに長尺化され、無限長さのタイヤコードとすることも可能であり、ゴムのトッピング工程においてコード破断などのトラブルを発生することなく空気入りタイヤに用いるに好適な補強材を得ることができる。
なお、上記タイヤコード1は2本の未処理コードがその端部において接合され長尺化された後、接着剤処理と熱処理を施して処理済みのシングルのタイヤコードとしたものでもよい。
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、処理済みのすだれ織物から、隣接する経糸端部同士が接合された経糸をタイヤコードとして取り出すことで、効率よく得られる長尺のタイヤコードである。
図3は第2の実施形態に係るすだれ織物2の1例を示し、図4はその一部の拡大図である。図に示すように、このすだれ織物2は、ポリエステルやナイロン、アラミド、レーヨンなどのタイヤコードを経糸とし、数百〜数千の多数本の経糸20と、これらの経糸20の長手方向所要間隔毎に打ち込まれて各経糸20を繋ぐ緯糸30とにより、数十〜数千mの長尺に製織されたものである。
緯糸30は、織物の側端部で折返すことにより1本の緯糸を連続して打ち込むほか、両側端部で折り返し切断した緯糸を打ち込んで製織する(タックイン方式)こともできる。この緯糸30の打ち込み間隔は、接着剤処理や熱処理等の加工および取扱い上の問題が生じず、しかも処理後のすだれ織物2からの経糸20の引き出し作業を容易にする範囲で、例えば10〜100mm程度の比較的大きな範囲に設定することができる。
この緯糸30には、接着剤処理により経糸20と緯糸30が強固に接着された状態になると、経糸20の切り離しが困難になる場合があるので、緯糸にテフロン(登録商標)コーティング加工を施して接着性を低下させておいてもよい。
こうして製織したすだれ織物2は、通常の手段により必要な接着剤処理及び熱処理等の処理を、通常のタイヤコード用ディッピングマシンを用いて容易に行なえる。
本発明のすだれ織物2においては、織物長手方向の両端部a,bにおいて、前記経糸20の端部がその片側に隣接する経糸20の端部と両端で交互に接合されて、複数本の経糸20が連続している。図において、21は一方の側端から奇数番目の経糸、22は前記側端から偶数番目の経糸を示し、4はその接合部分を示している。
前記経糸20の接合の具体的形態として、図3に示すように、各経糸がその両端で交互に連続するように、各経糸21または22の端部が、織物長手方向の一端部aにおいては、その両隣の経糸のうちのいずれか一方側の経糸22または21の端部と、また織物長手方向の他端部bにおいては、前記両隣の経糸のうち前記とは反対側の経糸22または21の端部とそれぞれ接合されている。
すなわち、織物長手方向の一端部aでは、前記奇数番目の経糸21の端部21aが次の偶数番目の経糸22の端部22aと接合されるとともに、織物長手方向の他端部bでは、前記偶数番目の経糸22の端部22bが次の奇数番目の経糸21の端部21bと接合されて、各経糸21,22が両端部a,bで交互に連続している。
前記すだれ織物2の場合、各経糸21,22がその両端で交互に接合されて1本に連続している。そのため、このすだれ織物2の各経糸20を側端から順次引き出す等の手段によりコードとして取り出すことによって全ての経糸20が連続した長尺のタイヤコードが得られ、シングルコードの製造コストを大幅に低減することができる。
前記の経糸端部における接合は、上記の第1の実施形態と同様に行われ、すなわち経糸両端部21aと22a、及び21bと22bの接合部に相当する部分の撚りをそれぞれ解撚してフィラメントを竹箒状とし、前記竹箒状にあるフィラメント同士を突き合わせ交絡状態にして接着剤を付与し、前記接着剤の硬化前に経糸長手方向に引張力を与えて接合部4において前記フィラメント同士が交絡かつ整列状態になるように接着されたことによる。
これにより、すだれ織物2から取り出されたタイヤコードは、その接合部4において織物本体部の経糸20並みの接合強度とコード径を有する長尺のタイヤコードとなり、ゴムのトッピング加工においてコード破断などのトラブルを発生することのないタイヤ補強材に適したものとなる。
なお、前記の経糸端部における接合は、すだれ織物2の製織方向の始端側の端部については製織開始時に、また終端側の端部については製織終了時に行うのが好適であるが、このほか、製織後の適当な時期、接着剤処理等の処理の前後に接合することもできる。
また、すだれ織物2は、一般に織始めおよび織終りの両端部に、50〜150mmの程度の幅で緯糸30の打込み密度を密にしたタビー6a,6bが形成されており、経糸20の端部は前記タビー6a,6bより所要の長さ延出しているので、経糸端部を接合して本発明を実施するのは容易である。
[変形例]
図5及び図6は、前記のすだれ織物2の接合形態の変形例として、側端から数えて任意の奇数番目の経糸21とこれに隣接する偶数番目の経糸22とを端部で接合することなく、経糸端部21,22を非接合端部20a,20bとして残した場合を示している。
図5に示すすだれ織物2aは、織物長手方向の一端部aにおいて、非接合の経糸21,22の双方の端部21a,22aを非接合端部20aとして残した場合を示し、図6に示すすだれ織物2bは、織物長手方向の一端部aに、非接合の経糸20の端部20aを、他端部bに非接合の経糸20の端部20bをそれぞれ残した場合を示している。
この変形例のすだれ織物2a,2bによれば、該すだれ織物から各経糸20を上記第2の実施形態と同様に引き出して取り出すことにより、織物端部の非接合部で分離した複数本分(図の場合は3本以上)の経糸長さのタイヤコードを得ることができる。
前記の非接合部の個所は、該すだれ織物2a,2bから得ようとするコードの長さや本数に応じて任意に設定でき、また異なった長さのタイヤコードを取り出すことも可能になる。
上記の各すだれ織物2,2a,2bは、通常、図7のように、接着剤処理等の処理後にロール状に巻回しておくが、この際、側端の経糸20の端部20c及び経糸20の非接合端部20aが、該すだれ織物2の巻回体5表面に存るように巻回しておくことが好ましい。これにより、例えばすだれ織物2をロール状の巻回体5から引き出しながら、経糸20を取り出し長尺のタイヤコードを得る方法を容易に実施できるようになる。
また、図8に示すように、すだれ織物2の巻回体5を巻心51を上下方向にして軸方向一方端側を上方に解放させて支持装置8に支持し、経糸20を巻回体5の上方端側から軸方向に引き出すことで、すだれ織物2の側端部から経糸20を順次引き出し、巻回体端部52で折り返して下方側の経糸20を連続して取り出すことができる。取り出された経糸20は、回転自在のガイド部材54とガイドローラ53を経てボビン55等に巻き取られる。この取り出し方法は特開2000−199168号公報に記載の方法に基づいて容易に実施することができる。
さらに、図9に示すように、すだれ織物2の2本の巻回体5a,5bを巻心51を軸として上下に2本立てとして軸方向両端側を解放させて支持装置8に支持し、巻回体5aの最下端側の経糸端部20dと巻回体5bの最上端側の経糸端部20eとを上記第2の実施形態の接合法に従い接合部4aで接合し、経糸20を巻回体5aの上方端側から軸方向に順次引き出すことで、2本の巻回体5a,5bのすだれ織物2から連続して経糸20を取り出すことができ、シングルコードの製造効率を向上すると共により長尺なコードが得られるようになる。
上記第1及び第2の実施形態のようにして得られた長尺のタイヤコードは、必要な本数をガイド穴に通す等の手段で配列させて、押出機やカレンダー装置に供給しゴムをトッピングすることにより、加工中にコード破断やカレンダーロール溝からの脱線などのトラブルを発生することなく緯糸を有さない長尺のトッピングシートを得ることができ、例えば図10に示す空気入りタイヤ7のカーカス層71やベルト層72或いはベルト補強層74やベルト端部補強層75、サイド補強層73などに、緯糸による弊害を解消したタイヤ補強材として好適に使用することができ、さらに、従来のすだれ織物をトッピングした場合に生じる経糸と緯糸との織り目による段差を無くしてトッピングシートの薄肉化を図りタイヤの軽量化やコスト低減に寄与することができる。
また、この処理済みのシングルタイヤコードは、そのままタイヤ成型工程でタイヤ周方向にほぼ0°の角度でスパイラル状に巻付け、その上にトレッドやサイドのゴムを被覆して加硫一体化することにより、タイヤ周方向でジョイント部を生じさせない、例えばベルト補強層74やベルト端部補強層75、サイド補強層73などの補強コードとして使用することができる。
そして、前記トッピングシートやシングルコードをタイヤ補強材に使用する場合、コードの接合部強度やコード径が本体部コード並みに維持されるので、使用時に接合部分を除去する必要がなく、タイヤ製造工数増やタイヤ材料の損失を生じることなく空気入りタイヤの耐久性やユニフォミティー等の性能を確保することができる。
以下に実施例によって本発明を更に説明するが、本発明をこれらの実施例に限定するものでないことは言うまでもない。
[実施例1]
ナイロン66、1400dtex/2(撚り数38回/10cm)の2本の処理済みタイヤコードを、図2に示すようにコード両端部を斜めに切断処理した後、各先端部10mmの撚りを毛抜きを用いて解撚しフィラメントを竹箒状のばらけ状態とし、次に竹箒状にあるフィラメント同士を突き合わせ、指先でフィラメントを揉み合わせて互いに絡み会わせた交絡状態とし、この接合部に瞬間接着剤(東亜合成(株)製、アロンアルファ201)を付与して接合部全体に浸透させ、接合部をコード長手方向に手で持って引っ張りフィラメント同士が絡んだままでほぼ整列した状態として接着剤を硬化させ図2(e)に示すような接合部13を形成し、図1に示す長尺のタイヤコードを得た。
このタイヤコードの接合部と本体部のコード径及び引張強さをJIS L1017に準拠し測定した。結果を表1に示す。
さらに、上記と同様の接合部を平均150m毎に有する長尺のタイヤコードを用いて、図11の押出機口金内部9の概略図に示すように、多数本のコード91を配列するハーモニカ状のガイド穴95を有するダイスロート93とゴム厚みを決めるダイインサート92及びトッピングゴムを供給する押出機(図示せず)を備えたスチーラスチックシステム(米国、スチーラスチック社製)を使用し、コード打ち込み密度22本/25mm、ゴム厚み1.1mm、シート幅10cmのトッピングシート94に加工し、さらにこのシートをコードに沿って8mm幅(コード7本を含む)にスリットしてベルト補強層用のテープ状補強材(A)を作製した。また、接合部を含まない同構造のタイヤコードを用いて同様にテープ状補強材(B)を作製し、両コードのスチーラスチックシステムによるトッピング加工時のコード破断有無と工程性を評価した。結果を表1に示す。
このテープ状補強材(A)、(B)を用いて、図10に示す空気入りラジアルタイヤ7のスチールベルト層72上にタイヤ周方向に対してほぼ0°の角度でスパイラル状にジョイントレスで巻き付けたベルト補強層74とベルト端部補強層75を形成した、サイズ205/65R15のタイヤを試作(タイヤA、タイヤBとする)し、下記試験法に従い高速耐久性を評価した。結果を表2に示す。
なお、カーカス層71はポリエステル、1670dtex/2、打ち込み密度23本/25mmの1プライ、ベルト層72はスチールコード2+2×0.25、打ち込み密度20本/25mmの2プライとした。
高速耐久性:標準リムを用いて空気圧220kPaに調整し、JATMA規定の標準荷重の85%を負荷し、ドラム径1700mmの鋼製ドラムを備えたドラム試験機により速度140Km/時間から走行を開始し、10分毎に10Km/時間ずつ速度アップしてタイヤ故障発生時の速度(Km/時間)を測定した。結果を故障発生時の速度をタイヤBを100とする指数で表した。また走行後のタイヤを解体し、故障状態とベルト補強層74,75のコード切れ発生の有無を観察した。
Figure 2005146433
Figure 2005146433
表1から明らかなように、接合部のコード径は本体部より若干小さい値となってトッピング時にスチーラスチックシステムのガイド穴をスムーズに通過し、また引張強さは本体部の95%を維持しバックテンションによるコード破断の発生もなく、工程性に問題はなかった。また、表2に示す通り、接合部を含むタイヤAはベルト補強層の強度を十分確保して接合部を含まないタイヤBと同等の高速耐久性を有し、故障形態はいずれもスチールベルト端部の接着破壊によるセパレーションであってコード切れ発生も無く、タイヤAの高速耐久性能はタイヤBと遜色が無いことが分かる。
[実施例2]
実施例1と同様の方法で接合した接合部を平均200m毎に有するポリエステル、1670dtex/2(撚り数45回/10cm)の処理済みの長尺タイヤコードを作製した。このコードを用いて、スチーラスチックシステムを使用しコード打ち込み密度23本/25mm、ゴム厚み1.2mm、シート幅20cmのシートにトッピング加工し、このシートをコードに対して90°の角度で所定長さに裁断したシート片を並列し突き合わせジョイントしたカーカス用補強材(C)を作製し、また、接合部を含まない同構造のタイヤコードを用いて同様にカーカス用補強材(D)を作製した。このカーカス用補強材(C)、(D)を用いて、図10に示す空気入りラジアルタイヤのカーカス層71に1プライで適用し、サイズ185/70R14のタイヤを試作(タイヤC、タイヤDとする)した。なお、ベルト層72はスチールコード2+2×0.25、打ち込み密度20本/25mmの2プライとした。
両コードのトッピング加工時のコード破断発生有無と工程性を評価し、さらに、タイヤC、Dの高荷重耐久性を下記試験法に従い評価した。結果を表3に示す。
高荷重耐久性:標準リムを用いて空気圧220kPaに調整し、ドラム径1700mmの鋼製ドラムを備えたドラム試験機により、速度120Km/時間で、JATMA規定の標準荷重の90%を負荷して8時間走行した後、標準荷重の100%負荷で10時間、次に標準荷重の110%負荷で22時間走行し、故障が発生しなければそのまま走行時間を延長しタイヤ故障が発生するまで走行させた。故障発生までの走行距離をタイヤDを100とする指数で表し、また走行後のタイヤを解体し故障状態を観察した。
Figure 2005146433
表3に示すように、両コード共にトッピング時のコード破断発生が無く、工程性に問題はなかった。また、タイヤCとタイヤDとはほぼ同等の高荷重耐久性を有し、故障形態はいずれもカーカス巻き上げ端部の接着破壊(セパレーション)によるもので、タイヤCとタイヤDの耐久性能は同等にあると言える。
[実施例3]
ポリエステル、1670dtex/2(撚り数45回/10cm)のタイヤコードを経糸とするすだれ織物(コード打ち込み密度23本/25mm、織物幅1m、織物長500m、緯糸は30番手綿糸、緯糸打ち込み間隔2cm)を作製した。この際、このすだれ織物両端部の経糸端部を、実施例1と同様の接合方法で図3のすだれ織物2に示すように接合し、織物全体の経糸が1本に連続するコードとなるように接合部を形成した。
次に、RFL接着剤処理と熱処理を常法に従いディッピングマシンを用いて処理し、処理済みタイヤコードのすだれ織物を得、この織物の巻回体から、図8に示す方法で経糸を側端部から順次取り出して長尺のタイヤコードを得た。
このタイヤコードの取り出し作業において、コードの破断や接合部での取り出し不具合を起こすことなく、すだれ織物全体から全ての経糸を1本のタイヤコードとして取り出すことができた。
さらに、このタイヤコードを用いて、実施例2のカーカス用補強材(C)を作製した。この際、スチーラスチックシステムを使用したトッピング加工において、コード破断などのトラブルを一切発生することなく全てのコードをトッピングすることができた。すなわち、すだれ織物から経糸を取り出して得られたタイヤコードにおいても、コード接合部の強度低下やコードゲージの増大などの異常が発生していないことを示し、これによりシングルコードの製造効率を大幅に改善し、シングルコードのコスト低減を実現することができる。
この発明のタイヤコードは、コード接合部の強度とコード径を本体部コードに対して維持する長尺のシングルタイヤコードであり、緯糸無しトッピングシートを効率よく製造することができることから、空気入りタイヤのカーカス、ベルト、ベルト補強層、サイドウォール等の各部位の補強材として使用することができる。また、タイヤ以外の工業用品や車両用部品等、例えば工業用ベルト、空気バネ、自動車用フレキシブルカップリングなどの補強材としても有用である。
実施例のタイヤコードを示す正面図である。 実施例のタイヤコードの接合法を説明する模式図である。 実施例のすだれ織物を示す一部を省略した平面図である。 同上の拡大図である。 他の実施例のすだれ織物を示す一部を省略した平面図である。 さらに他の実施例のすだれ織物を示す一部を省略した平面図である。 図5の実施例のすだれ織物をロール状に巻回した斜視図である。 経糸の引き出し方法の1例の概略を示す斜視図である。 経糸の引き出し方法の他の例の概略を示す斜視図である。 実施例の空気入りラジアルタイヤの半断面図である。 押出機口金の内部を示す概略図である。
符号の説明
1,11,12……タイヤコード
13……接合部
14……接着剤
2,2a,2b……すだれ織物
4……すだれ織物端部の接合部
5……ロール状の巻回体
7……空気入りラジアルタイヤ
20……経糸
21……奇数番目の経糸
22……偶数番目の経糸
30……緯糸

Claims (5)

  1. 多数のフィラメントからなる2本のコード端部同士を接合して得られるタイヤコードであって、
    各コード端の接合部に相当する部分の撚りを解撚して竹箒状とし、前記竹箒状にあるフィラメント同士を突き合わせて交絡状態として該交絡部に接着剤を付与し、前記接着剤の硬化前にコード長手方向に引っ張り該接合部において前記フィラメント同士が交絡かつ整列状態をなして接着されている
    ことを特徴とするタイヤコード。
  2. タイヤコードからなる経糸を緯糸と共に製織した長尺のすだれ織物の長手方向の両端部において、前記経糸の端部がその片側に隣接する経糸の端部と交互に接合されて、複数本の経糸が連続してなるすだれ織物から前記経糸を取り出して得られるタイヤコードであって、
    前記すだれ織物の経糸端部の接合部が、各経糸端の接合部に相当する部分の撚りを解撚して竹箒状とし、前記竹箒状にあるフィラメント同士を突き合わせて交絡状態として該交絡部に接着剤を付与し、前記接着剤の硬化前に経糸長手方向に引っ張り該接合部において前記フィラメント同士が交絡かつ整列状態をなして接着されている
    ことを特徴とするタイヤコード
  3. 前記接合部におけるコード径が、本体部コード径の0.7〜1.1倍である
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載のタイヤコード。
  4. 前記接合部におけるコード強力が、本体部コード強力の60%以上である
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤコード。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤコードで補強された
    ことを特徴とする空気入りタイヤ。
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