JP2005140734A - 薄膜ガスセンサの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】
追加加熱されても変質することがなく、ガス選択燃焼層の表面状態を熱的に安定化させるような薄膜ガスセンサの製造方法を提供する。
【解決手段】
感知層5cと、触媒を担持するガス選択燃焼層5dと、による二層構造のガス感知層5を有する薄膜ガスセンサの製造方法であって、このガス感知層5の形成方法として、感知層5cの形成後に、スクリーン印刷法によりアルミナゾルバインダを用いたペースト体を塗布し、大気中450℃以上600℃以下の温度で7日以上焼成してガス選択燃焼層5dを熱的に安定化させて形成するような薄膜ガスセンサの製造方法とした。
【選択図】 図1

Description

本発明は、電池による駆動を念頭においた低消費電力型の薄膜ガスセンサの製造方法に関する。
一般的にガスセンサは、ガス漏れ警報器などの用途に用いられており、ある特定ガス、例えば、一酸化炭素(CO)、メタンガス(CH)、プロパンガス(C)、メタノール蒸気(CHOH)等に選択的に感応するデバイスであり、その性格上、高感度、高選択性、高応答性、高信頼性、低消費電力が必要不可欠である。
ところで、家庭用として普及しているガス漏れ警報器には、都市ガス用やプロパンガス用の可燃性ガス検知を目的としたもの、燃焼機器の不完全燃焼ガス検知を目的としたもの、または、両方の機能を合わせ持ったものなどがあるが、いずれもコストや設置性(ガスを検知したいにも拘わらず電源供給可能でない箇所である点)の問題から普及率はそれほど高くない。そこで、普及率の向上を図るべく、設置性の改善、具体的には、電池駆動によるガス漏れ警報器としてコードレス化することが望まれている。
ガス漏れ警報器の電池駆動を実現するためにはガスセンサの低消費電力化が最も重要である。しかしながら、接触燃焼式や半導体式のガスセンサを動作させるためには、ガスセンサのガス感知膜を200℃〜500℃の高温に加熱する必要があり、この加熱が電力を消費する要因である。SnOなどの粉体を焼結して作製したガス感知膜によるガスセンサでは、スクリーン印刷等の方法を用いてガス感知膜の厚みを薄くすることでガス感知膜の熱容量を小さくしているが、このような薄膜化には限界があって充分に薄くできない。このため、電池駆動するにはガス感知膜の熱容量が大きすぎ、これを高温に加熱するには大きな電力が必要で電池の消耗が大きく、電池駆動のガス感知膜によるガスセンサは実用化が困難であった。
そこで、微細加工プロセスにより高断熱・低熱容量のダイヤフラム構造として実用上許容しうる低消費電力の薄膜ガスセンサが開発実用化されて現在に至っている。続いて薄膜ガスセンサについて図を参照しつつ説明する。
図1は、薄膜ガスセンサを概略的に示す縦断面図である。
薄膜ガスセンサは、シリコン基板(以下Si基板)1、熱絶縁支持層2、ヒーター層3、電気絶縁層4、ガス感知層5を備える。熱絶縁支持層2は、詳しくは、熱酸化SiO層2a、CVD−Si層2b、CVD−SiO層2cの三層構造となっている。また、ガス感知層5は、詳しくは、接合層5a,感知層電極5b,感知層5c,ガス選択燃焼層5dを備える。
この感知層5cは例えばアンチモンが添加された二酸化スズ層(以下、Sb−doped SnO層)である。
また、ガス選択燃焼層5dは例えばパラジウム(Pd)や白金(Pt)などを触媒として担持したアルミナ(Al)を、アルミナを主成分とするバインダを用いて焼成したもの(以下、アルミナゾルバインダ選択燃焼層)や、または、PdやPtなどを触媒として担持したアルミナ(Al)を、シリカ(SiO)を主成分とするバインダを用いて焼成したもの(以下、シリカゾルバインダ選択燃焼層)である。
この薄膜ガスセンサは、様々な気体成分と接触することにより酸化物半導体である感知層5cの電気抵抗値が変化する現象を利用している。Sb−doped SnO層などのn型金属酸化物半導体の感知層5cは、その導電率がガスの濃度により変化する特性を有している。感知層5cが300〜400℃程度に加熱されると粒子表面に酸素が活性化吸着するが、酸素は電子受容性が強くて負電荷吸着するため、粒子表面に空間電荷層が形成され導電率が低下し高抵抗化する。
この高抵抗化層は、可燃性ガスなどの電子供与性の還元性気体が吸着し燃焼反応が起こると表面吸着酸素が消費され、酸素に捕獲されていた電子が半導体内にもどされ、電子密度が増加して導電率が増大し、低抵抗化する。このようにガス検知は金属酸化物半導体の導電率の変化を利用する。
続いて各部構成について説明する。
Si基板1はシリコン(Si)により形成され、貫通孔を有するように形成される。
熱絶縁支持層2はこの貫通孔の開口部に張られてダイアフラム様に形成されており、Si基板1の上に設けられる。
熱絶縁支持層2は、詳しくは、熱酸化SiO層2a、CVD−Si層2b、CVD−SiO層2cの三層構造となっている。
熱酸化SiO層2aは熱絶縁層として形成され、ヒーター層3で発生する熱をSi基板1側へ熱伝導しないようにして熱容量を小さくする機能を有する。また、この熱酸化SiO層2aはプラズマエッチングに対して高い抵抗力を示し、後述するがプラズマエッチングによるSi基板1への貫通孔の形成を容易にする。
CVD−Si層2bは、熱酸化SiO層2aの上側に設けられる。熱酸化SiO層2aはプラズマエッチングに対して高い抵抗力を持つという利点の反面、内部応力が発生するが、CVD−Si層2bを形成することにより、熱酸化SiO層2aとCVD−Si層2bとの内部応力が相殺され、歪みを除去する。
CVD−SiO層2cは、ヒーター層3との密着性を向上させるとともに電気的絶縁を確保する。CVD(化学気相成長法)によるSiO層は内部応力が小さい。
このように熱絶縁支持層2は、熱絶縁機能と支持機能とを共に有する。
ヒーター層3は、薄膜状のNi−Cr膜(ニッケル−クロム膜)であって、熱絶縁支持層2のほぼ中央の上面に設けられる。また、図示しない電源供給ラインも形成される。
電気絶縁層4は、電気的に絶縁を確保するスパッタSiO層からなり、熱絶縁支持層2およびヒーター層3を覆うように設けられる。ヒーター層3と感知電極層5bとの間に電気的な絶縁を確保し、また、電気絶縁層4は感知層5cとの密着性を向上させる。
接合層5aは、例えば、Ta膜(タンタル膜)またはTi膜(チタン膜)からなり、電気絶縁層4の上に設けられる。この接合層5aは、感知電極層5bと電気絶縁層4との間に介在して接合強度を高める機能を有している。
感知電極層5bは、例えばPt膜(白金膜)またはAu膜(金膜)からなり、感知層5cの感知電極となるように左右一対に設けられる。
ガス感知層5cは、Sb−doped SnO層からなり、一対の感知電極層5b,5bを渡されるように電気絶縁層4の上に形成される。
感知層5cに感知層電極5bを接合することにより、感知層電極5bと感知層5cのコンタクト抵抗を小さくし、検知ガス中での一対の感知層電極5b,5bの電極間抵抗に比べてコンタクト抵抗が無視できるほど小さくすることで、ガス感知感度を高めるとともに低消費電力化を図る。
ガス選択燃焼層5dは、先に説明したようにアルミナゾルバインダ選択燃焼層またはシリカゾルバインダ選択燃焼層である。Alは多孔質体であるため、孔を通過する検知ガスが触媒に接触する機会を増やして燃焼反応を促進させる。ガス選択燃焼層5dは、絶縁層4、接合層5a、一対の感知層電極5b,5b、および、感知層5cの表面を覆うように設けられる。
このような薄膜ガスセンサはダイアフラム構造により高断熱,低熱容量の構造としている。薄膜ガスセンサの構成はこのようなものである。
続いて、薄膜ガスセンサの製造方法について概略説明する。
まず、板状のシリコンウェハーに対して熱酸化法によりその片面(または表裏両面)に熱酸化を施して熱酸化SiO膜たる熱酸化SiO層2aを形成する。
そして、熱酸化SiO層2aを形成した面にCVD−Si膜をプラズマCVD法にて堆積してCVD−Si層2bを形成する。そして、このCVD−Si層2bの上面にCVD−SiO膜をプラズマCVD法にて堆積してCVD−SiO層2cを形成する。
さらに、CVD−SiO層2cの上面にNi−Cr膜をスパッタリング法によりスパッタしてヒーター層3を形成する。そして、このCVD−SiO層2cとヒーター層3との上面にスパッタSiO膜をスパッタリング法によりスパッタして、スパッタSiO層である電気絶縁層4を形成する。
この電気絶縁層4の上に接合層5a、感知層電極5bを形成する。成膜はRFマグネトロンスパッタリング装置を用い、通常のスパッタリング法によって行う。成膜条件は接合層(TaあるいはTi)5a、感知層電極(PtあるいはAu)5bとも同じで、Arガス(アルゴンガス)圧力1Pa、基板温度300℃、RFパワー2W/cm、膜厚は接合層5a/感知層電極5b=500Å/2000Åである。
続いて、一対の感知電極層5b,5bに渡されるように電気絶縁層4上にSb−doped SnO膜がスパッタリング法によりスパッタされ、感知層5cが形成される。
成膜はRFマグネトロンスパッタリング装置を用い、反応性スパッタリング法によって行う。ターゲットには、Sbを0.5wt%含有するSnOを用いる。成膜条件はAr+Oガス圧力2Pa、基板温度150〜300℃、RFパワー2W/cmである。感知層5cの大きさは、50ないし200μm角程度、厚さは0.2ないし1.6μm程度が望ましい。
続いて、電気絶縁層4、接合層5a、一対の感知層電極5b,5b、および、感知層5cを覆うように、ガス選択燃焼層5dが形成される。このガス選択燃焼層5dは、アルミナゾルバインダ選択燃焼層を例に挙げれば、触媒を担持したアルミナ粉末(Pd/アルミナ )、アルミナバインダおよび有機溶剤を混合調製した印刷ペーストをスクリーン印刷で印刷し、室温で乾燥後、500℃で1時間焼き付けして形成する。ガス選択燃焼層5dの大きさは、感知層5cを十分に覆うようにする。このようにスクリーン印刷により厚みを薄くしている。
最後にシリコンウェハー(図示せず)の裏面から微細加工プロセスとしてエッチングによりシリコン除去により貫通孔を形成し、ダイヤフラム構造のSi基板1とする。薄膜ガスセンサの製造方法はこのようになる。
また、ガス選択燃焼層を採用する薄膜ガスセンサとしては特許文献1または特許文献2に記述されているものがある。
特許文献1に記述されているのは“アルミナゾルバインダを用いたガス選択燃焼層”で、その製造方法は、Al、Crなどの多孔質金属酸化物にPd、Ptなどの貴金属触媒を担持した後、バインダとしてアルミナゾルを混合しペースト状にしたものをスクリーン印刷法により感知層を覆うように塗布し、空気中で500℃、1時間以上焼成して形成している。
特許文献2に記述されているのは、“シリカゾルバインダを用いたガス選択燃焼層”で、その製造方法は以下の通りである。
(1)選択燃焼膜用ペースト調整;触媒を担持させた中心粒径2μmのγアルミナ粉末と、別途オルトエチルシリケートに塩酸と純水を加え加水分解して得たエタノール性シリカゾルと、樹脂としてエチルセルロースを溶媒(ブチルカルビトールアセテート)に溶かしたものとを混合し、乳鉢で1時間以上分散してペーストを調整する。
(2)ペースト膜付着工程;上記のペーストを、感知層7を被覆するように所定の形状に付着させ厚さ10〜40μmのペースト膜を形成する。
(3)焼成工程:このウェハーを大気中500℃で1時間加熱してアルミナを焼結し基板上に固着させ、選択燃焼層とする。
特開2000−292397号公報(図1〜図3) 特開2000−5865号公報(図1〜図4)
本発明者はガス選択燃焼層について鋭意研究し、新たな実験の結果、特許文献1に記載された方法で形成した“アルミナゾルバインダを用いたガス選択燃焼層”や、特許文献2に記載された方法で形成した“シリカゾルバインダを用いたガス選択燃焼層”では、大気中での加熱が不十分であって、ガス選択燃焼層のガス反応サイトを含む表面状態が熱的に安定化しておらず、追加的加熱により変質することを知見した。
そこで本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、追加加熱されても変質することなく、ガス選択燃焼層の表面状態を熱的に安定化させるような薄膜ガスセンサの製造方法を提供することにある。
このような本発明の請求項1に係る薄膜ガスセンサの製造方法は、
貫通孔を有するSi基板と、この貫通孔の開口部に張られるダイアフラム様の熱絶縁支持層と、熱絶縁支持層上に設けられる薄膜状のヒーター層と、熱絶縁支持層およびヒーター層を覆うように設けられる電気絶縁層と、電気絶縁層上に設けられる一対の感知電極層と、一対の感知電極層を渡されるように設けられる感知層と、感知層の表面に設けられるガス選択燃焼層と、を備える薄膜ガスセンサの製造方法であって、
感知層の形成後、スクリーン印刷法によりアルミナゾルバインダを用いたペースト体を塗布し、大気中で450℃以上600℃以下の温度で7日以上焼成してガス選択燃焼層を形成することを特徴とする。
また、本発明の請求項2に係る薄膜ガスセンサの製造方法は、
請求項1に記載の薄膜ガスセンサの製造方法において、
好ましくはペースト体を大気中で450℃以上600℃以下の温度で10日以上焼成してガス選択燃焼層を形成することを特徴とする。
また、本発明の請求項3に係る薄膜ガスセンサの製造方法は、
貫通孔を有するSi基板と、この貫通孔の開口部に張られるダイアフラム様の熱絶縁支持層と、熱絶縁支持層上に設けられる薄膜状のヒーター層と、熱絶縁支持層およびヒーター層を覆うように設けられる電気絶縁層と、電気絶縁層上に設けられる一対の感知電極層と、一対の感知電極層を渡されるように設けられる感知層と、感知層の表面に設けられるガス選択燃焼層と、を備える薄膜ガスセンサの製造方法であって、
感知層の形成後、スクリーン印刷法によりシリカゾルバインダを用いたペースト体を塗布し、大気中で500℃以上600℃以下の温度で10時間以上焼成してガス選択燃焼層を形成することを特徴とする。
また、本発明の請求項4に係る薄膜ガスセンサの製造方法は、
請求項3に記載の薄膜ガスセンサの製造方法において、
好ましくはペースト体を大気中で500℃以上600℃以下の温度で20時間以上焼成してガス選択燃焼層を形成することを特徴とする。
本発明の製造方法でガス選択燃焼層を形成することにより、焼成後のガス選択燃焼層におけるガス反応サイトを含む表面状態が熱的に安定化し、ガス選択燃焼層の触媒作用が、温湿度・雰囲気などの環境条件によって変化することがなくなり、その結果、薄膜ガスセンサの経時特性が安定化する。
以上のように本発明によれば、追加加熱されても変質することがなく、ガス選択燃焼層の表面状態を熱的に安定化させるような薄膜ガスセンサの製造方法を提供することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態の薄膜ガスセンサの製造方法について図を参照しつつ説明する。なお、薄膜ガスセンサについては図1で示した構造と同じであるとして重複する説明を省略する。また、製造方法については、特にガス選択燃焼層5dの形成方法が相違するが、後は同じであるものとして重複する説明を省略する。
本形態では、まず、“アルミナゾルバインダを用いたガス選択燃焼層”の焼成方法について説明する。スクリーン印刷法によりアルミナゾルバインダを用いたペースト体を塗布し、大気中で十分時間をかけて焼成し、焼成後のガス選択燃焼層の特性を安定化させるものであり、“アルミナゾルバインダを用いたガス選択燃焼層”の場合は、大気中450℃以上600℃以下の温度で7日以上、好ましくは10日以上焼成してガス選択燃焼層を形成する点が特徴である。
続いてこのようなガス選択燃焼層の焼成条件を採用した理由について図を参照しつつ説明する。図2は“アルミナゾルバインダを用いたガス選択燃焼層”の熱処理日数と、比表面積およびガス転化率との関係を示す特性図、図3は触媒酸化活性評価装置の構成図、図4は“アルミナゾルバインダを用いたガス選択燃焼層”のCO、H、CHに対する恒温反応槽温度−ガス添加率特性図である。
図2の*印は、“アルミナゾルバインダを用いたガス選択燃焼層”(Alに7W%のPdを担持させ、バインダとしてアルミナゾルを用いた場合)の実験結果である。前述の「空気中で500℃、1時間焼成」という標準アニール条件に加えて、更に「空気中、450℃」で(1)3.5、(2)7.0、(3)11.0日の間加熱処理をすると、比表面積(Micrometrics社製ASAP2000を用いたBET一点法により測定)は、7.0日までは徐々に小さくなり、7.0日を越えると93m/gで一定になることが分かる。
更に、それぞれのガス選択燃焼層のサンプルの触媒酸化活性を実験的に調べた。実験装置として用いる触媒酸化活性評価装置は、図3に示すように、気化器10、恒温反応槽20、除湿器30、ガス濃度分析装置(ガスクロマトグラフィ)40を備えている。
試験すべきガス選択燃焼層サンプル(標準アニール条件に加えて、更に「空気中、450℃」で、(1)3.5日、(2)7.0日、(3)11.0日の間加熱処理をした4種の粉末サンプルの何れかから一つ選択したサンプル)を、恒温反応槽内のU字管の所定位置に石英ウールではさんで設置した状態とする。
実験は、入口側から(1)CO;500ppm、(2)H;5,000ppm、(3)CH;5,000ppmのガスの何れか一つを一定の流速で流した。ガス選択燃焼層サンプルを通って、これらのガスがどの程度酸化されるかを出口側のガス分析装置(ガスクロマトグラフィ)40を使って測定した。
恒温反応槽20の温度が低い場合はガス選択燃焼層サンプルの触媒酸化活性が低いため、入口側のガス濃度と出口側のガス濃度は同じであり、ガス転化率=0%である。恒温反応槽20の温度を上げていくとガス選択燃焼層サンプルでガスが酸化され、出口側でガス濃度がゼロになる(完全に酸化される)温度に達する(ガス転化率=100%)。
実験結果について図4を用いて説明する。図4中において「初期」とは、前述の「空気中で500℃、1時間焼成」という標準アニール条件で処理したサンプルを示す。CO、H,CHともに、初期、3.5日、7.0日と450℃での熱処理時間を長くするにつれて曲線が高温側に移動するが、11.0日の熱処理の場合は、7.0日の場合と重なり、もはや曲線の移動が見られない。
さらに、CO,H,CHそれぞれのガスに対して、ガス転化率が90%になる温度を、「450℃熱処理日数」に対してプロットしたものを図2に示す。これからも、「450℃熱処理日数」が7.0日までは「ガス転化率が90%に到達する温度」は漸増するが、7.0日以降は変化しないことが分かる。すなわちこれら実験結果より、「450℃熱処理日数」が7.0日以上で、ガス選択燃焼層5dの触媒酸化活性は安定化する。
450℃という温度は、薄膜ガスセンサで感知層5cおよびガス選択燃焼層5dがヒーター層3で加熱されて到達する最高温度であり、熱処理はこの450℃よりも高温で実施する必要がある。従って、スクリーン印刷法により“アルミナゾルバインダを用いたガス選択燃焼層”となるペースト体を形成し、このペースト体を大気中450℃、7日以上、望ましくは10日以上焼成することが必要である。
なお、焼成温度が450℃より高い場合には焼成時間は7日より短縮できる可能性があるが、薄膜ガスセンサに形成されたAl配線などの耐熱性を考慮すれば、焼成温度は600℃を超えることはできない。
本形態では、これら実験結果・諸条件を考慮して、最終的な焼成条件として、“アルミナゾルバインダを用いたガス選択燃焼層”の場合は、大気中450℃以上600℃以下の温度で、最低7日、好ましくは7日以上10日以内、さらに好ましくは10日以上焼成してガス選択燃焼層を形成する点が特徴である。なお、上限として少なくとも11日焼成すれば本発明の目標を達成できる。
続いて、“シリカゾルバインダを用いたガス選択燃焼層”の焼成方法について説明する。スクリーン印刷法によりシリカゾルバインダを用いたペースト体を塗布し、大気中で十分時間をかけて焼成し、焼成後のガス選択燃焼層の特性を安定化させるものであり、“シリカゾルバインダを用いたガス選択燃焼層”の場合は、ペースト体を大気中500℃以上600℃以下の温度で、10時間以上、望ましくは20時間以上にわたり焼成する点が特徴である。
このような製造方法を採用することにより、ガス選択燃焼層5dの触媒酸化活性が安定化し、その結果、薄膜ガスセンサの経時特性が安定化することが期待できる。
続いてこのようなガス選択燃焼層の焼成条件を採用した理由について図を参照しつつ説明する。図5は“シリカゾルバインダを用いたガス選択燃焼層”の熱処理時間−比表面積の関係を示す特性図である。
図5の□印は、“シリカゾルバインダを用いたガス選択燃焼層”(Alに7W%のPdを担持させ、バインダとしてシリカゾルを用いた場合)の実験結果である。■印は、前述の「空気中で500℃、1時間焼成」という標準アニール条件で加熱処理をしたシリカゾルによるガス選択燃焼層の比表面積(Micrometrics社製ASAP2000を用いたBET一点法により測定)である。
「空気中で500℃、1時間焼成」という標準アニール条件に加えて、更に「空気中、500℃」で(1)1.0、(2)7.0、(3)24.0時間の間加熱処理をすると、比表面積は、10時間までは徐々に小さくなり10時間を超えると約124m/gで一定になることが分かる。
また、「空気中で500℃、1時間焼成」という標準アニール条件に加えて、更に「空気中、550℃」で24.0時間の間加熱処理をした場合の比表面積を×印で示すが、前述した500℃処理の場合と比表面積はほとんど変わらないことが分かる。
また、焼成温度の上限として、薄膜ガスセンサに形成されたAl配線などの耐熱性を考慮すれば、焼成温度は600℃を超えることはできない。
本形態では、これら実験結果・諸条件を考慮して、“シリカゾルバインダを用いたガス選択燃焼層”の場合は、スクリーン印刷法によりシリカゾルバインダを用いたペースト体を塗布し、ペースト体を大気中500℃以上600℃以下の温度で、最低10時間、好ましくは10時間以上20時間未満、さらに好ましくは20時間以上焼成する点が特徴である。なお、上限として少なくとも24時間焼成すれば本発明の目標を達成できる。
このような製造方法を採用することにより、ガス選択燃焼層5dの触媒酸化活性が安定化し、その結果、薄膜ガスセンサの経時特性が安定化することが期待できる。
以上本形態の薄膜ガスセンサの製造方法について説明した。このため、“アルミナゾルバインダを用いたガス選択燃焼層”、“シリカゾルバインダを用いたガス選択燃焼層”のいずれにおいても、ガス選択燃焼層の触媒酸化活性は安定化し、その結果、薄膜ガスセンサの経時特性が安定化するという効果が期待される。
薄膜ガスセンサを概略的に示す縦断面図である。 “アルミナゾルバインダを用いたガス選択燃焼層”の熱処理日数と、比表面積およびガス転化率と、の関係を示す特性図である。 触媒酸化活性評価装置の構成図である。 “アルミナゾルバインダを用いたガス選択燃焼層”のCO、H、CHに対する恒温反応槽温度−ガス添加率特性図である。 “シリカゾルバインダを用いたガス選択燃焼層”の熱処理時間−比表面積の関係を示す特性図である。
符号の説明
1:Si基板
2:絶縁支持層
2a:熱酸化SiO
2b:CVD−Si
2c:CVD−SiO
3:ヒーター層
4:電気絶縁層
5:ガス感知層
5a:接合層
5b:感知層電極
5c:感知層(Sb−doped SnO層)
5d:ガス選択燃焼層(アルミナゾルバインダガス選択燃焼層,シリカゾルバインダガス選択燃焼層)
10:気化器
20:恒温反応糟
30:除湿器
40:ガス濃度分析装置(ガスクロマトグラフィ)

Claims (4)

  1. 貫通孔を有するSi基板と、この貫通孔の開口部に張られるダイアフラム様の熱絶縁支持層と、熱絶縁支持層上に設けられる薄膜状のヒーター層と、熱絶縁支持層およびヒーター層を覆うように設けられる電気絶縁層と、電気絶縁層上に設けられる一対の感知電極層と、一対の感知電極層を渡されるように設けられる感知層と、感知層の表面に設けられるガス選択燃焼層と、を備える薄膜ガスセンサの製造方法であって、
    感知層の形成後、スクリーン印刷法によりアルミナゾルバインダを用いたペースト体を塗布し、大気中で450℃以上600℃以下の温度で7日以上焼成してガス選択燃焼層を形成することを特徴とする薄膜ガスセンサの製造方法。
  2. 請求項1に記載の薄膜ガスセンサの製造方法において、
    好ましくはペースト体を大気中で450℃以上600℃以下の温度で10日以上焼成してガス選択燃焼層を形成することを特徴とする薄膜ガスセンサの製造方法。
  3. 貫通孔を有するSi基板と、この貫通孔の開口部に張られるダイアフラム様の熱絶縁支持層と、熱絶縁支持層上に設けられる薄膜状のヒーター層と、熱絶縁支持層およびヒーター層を覆うように設けられる電気絶縁層と、電気絶縁層上に設けられる一対の感知電極層と、一対の感知電極層を渡されるように設けられる感知層と、感知層の表面に設けられるガス選択燃焼層と、を備える薄膜ガスセンサの製造方法であって、
    感知層の形成後、スクリーン印刷法によりシリカゾルバインダを用いたペースト体を塗布し、大気中で500℃以上600℃以下の温度で10時間以上焼成してガス選択燃焼層を形成することを特徴とする薄膜ガスセンサの製造方法。
  4. 請求項3に記載の薄膜ガスセンサの製造方法において、
    好ましくはペースト体を大気中で500℃以上600℃以下の温度で20時間以上焼成してガス選択燃焼層を形成することを特徴とする薄膜ガスセンサの製造方法。
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