JP4953253B2 - 薄膜ガスセンサの初期安定化処理方法 - Google Patents

薄膜ガスセンサの初期安定化処理方法 Download PDF

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Description

本発明は、電池駆動を念頭においた低消費電力型の薄膜ガスセンサの初期安定化処理方法に関する。
一般的にガスセンサは、ガス漏れ警報器などの用途に用いられている。ガスセンサは、ある特定ガス、例えば、一酸化炭素(CO)、メタンガス(CH)、プロパンガス(C)、メタノール蒸気(CHOH)等に選択的に感応するデバイスであり、その性格上、高感度、高選択性、高応答性、高信頼性、低消費電力が必要不可欠である。
ところで、家庭用として普及しているガス漏れ警報器は、都市ガス用やプロパンガス用の可燃性ガス検知を目的としたもの、燃焼機器の不完全燃焼ガス検知を目的としたもの、または、両方の機能を合わせ持ったもの、などであるが、いずれもコストや設置性(ガス検知が必要であるが電源供給不能の箇所である点)の問題から、ガス漏れ警報器の普及率はそれほど高くない。そこで、ガス漏れ警報器の普及率の向上を図るべく、設置性の改善、具体的には、電池駆動によるガス漏れ警報器としてコードレス化することが望まれている。
ガス漏れ警報器の電池駆動を実現するためにはガスセンサの低消費電力化が最も重要である。しかしながら、接触燃焼式や半導体式のガスセンサを動作させるためには、ガスセンサのガス感知膜が300℃〜500℃の高温に加熱される必要があり、この加熱が電力を消費する要因である。SnOなどの粉体を焼結して作製したガス感知膜によるガスセンサは、スクリーン印刷等の方法を用いてガス感知膜の厚みを可能な限り薄くしてガス感知膜の熱容量を小さくしているが、薄膜化は限界があって、ガス感知膜は充分に薄くならない。このため、ガスセンサを電池駆動する場合、ガス感知膜の熱容量は大きすぎることとなり、ガス感知膜を高温に加熱するには大きい電力が必要となって電池の消耗が大きくなる。このような理由から、ガス感知膜を電池駆動するガスセンサは、実用化が困難であった。
そこで、微細加工プロセスにより高断熱・低熱容量のダイヤフラム構造として、実用上許容しうる低消費電力の薄膜ガスセンサが開発実用化されて現在に至っている。続いてこのような薄膜ガスセンサについて説明する。図5は、従来技術の薄膜ガスセンサを概略的に示す縦断面図である。
この従来技術の薄膜ガスセンサは、シリコン基板(以下Si基板)1、熱絶縁支持層2、ヒータ層3、電気絶縁層4、ガス検出層5を備える。熱絶縁支持層2は、詳しくは、熱酸化SiO層21、CVD−Si層22、CVD−SiO層23の三層構造となっている。また、ガス検出層5は、詳しくは、接合層51、感知電極層52、ガス感応層53、ガス選択燃焼層54を備える。このガス感応層53はアンチモン(Sb)をドープした二酸化スズ層(以下、SnO層)であり、ガス選択燃焼層54はパラジウム(Pd)または白金(Pt)を触媒として担持したアルミナ焼結材(以下、触媒担持Al焼結材)である。そして、ヒータ層3およびガス検出層5(詳しくは感知電極層52を介してガス感応層53)は、図示しない駆動・処理部に接続されている。
この従来技術の薄膜ガスセンサは、様々な気体成分と接触することにより酸化物半導体であるガス感応層53の電気抵抗値(センサ抵抗値)が変化する現象を利用するセンサである。300〜500℃程度に加熱された金属酸化物半導体は、ガス濃度によりその導電率が変化する特性を持つ。金属酸化物半導体は、空気中では酸素を吸着して高抵抗化するが可燃性ガス中では可燃性ガスを吸着して低抵抗化する。
詳しくは以下のような理由による。
SnO層などのn型金属酸化物半導体であるガス感応層53は、空気中にある場合、ガス感応層53の表面に酸素などを活性化吸着する。酸素は電子受容性が強くて負電荷吸着するため、ガス感応層53の表面に空間電荷層が形成される。したがって、ガス感応層53は導電率が低下して高抵抗化する。
そして、SnO層などのn型金属酸化物半導体であるガス感応層53は、可燃性ガスなどの電子供与性の還元性気体中にあるガス感応層53が300〜500℃程度に加熱されることにより可燃性ガスの燃焼反応が起こる場合、ガス感応層53の表面の吸着酸素が消費され、吸着酸素が捕獲していた電子がガス感応層53内にもどされることによりガス感応層53内の電子密度が増加する。したがって、ガス感応層53は導電率が増大して低抵抗化する。
このガス感応層53は、多様なガスの検知が可能である反面、特定のガスを選択的に検知することは困難であった。
そこでガス検出層5は、SnO層であるガス感応層53の表面全体を、触媒担持Al焼結材で構成されたガス選択燃焼層54が覆う構造としている。
このガス選択燃焼層54は、検知ガスよりも酸化活性の強いガスを燃焼させるため、ガス検出層5におけるある特定のガスのみの感度を向上させる機能を有している。さらにそのガス検出層5の大きさや膜厚、Si基板1のダイヤフラム径との比なども工夫されている。これにより、ある特定のガス選択性がさらに高められ、消費電力の低減化が可能となっている。
このような薄膜式ガスセンサは、CH,C等の可燃性ガス検知に低消費電力化を実現するため、そのヒータ層3の駆動方式が工夫されたセンサとしている。この点について図を参照しつつ説明する。図6は、High−Off方式によるヒータ層温度の時間特性を説明する説明図、図7は、High−Low−Off方式によるヒータ層温度の時間特性を説明する説明図である。
High−Off方式は、特にCH,C等の可燃性ガス濃度の検出で用いられる方式である。ヒータ層3の駆動部(図示せず)は、ヒータ層3に図6で示すような電流による駆動信号を流してヒータ層3のヒータ温度を一定期間(例えば0.05〜0.5s)にわたり高温状態(High状態:300〜500℃)に保持し、その後一定期間にわたりヒータ層3に駆動信号を流さない状態(Off状態)として、検出時以外では不要な電力の消費が抑止される。そして、ヒータ層3の駆動部(図示せず)は、このようなHigh−Offによる駆動を所定の周期(例えば30秒周期)で繰り返し、ヒータ層3を間欠駆動している。
このHigh−Off方式のヒータ層3は、High状態でガス検知を行うものであり、ガス検知ではガス感応層53のセンサ抵抗値が感知電極層52を介して測定され、その変化からCH,C等の可燃性ガス濃度が検出される。このとき、ヒータ温度が高温になるとともにガス選択燃焼層54は高温になり、この高温のガス選択燃焼層54がCO,H等の還元性ガスその他の雑ガスを燃焼させる。しかしながら、ガス選択燃焼層54は不活性なCH,C等の可燃性ガスはそのまま通過させる。可燃性ガスは拡散し、ガス感応層53に到達してガス感応層53のSnOと反応する。するとガス感応層53のSnOの抵抗値は可燃性ガスの吸着量に応じて変化する。薄膜ガスセンサは、このような現象を利用してガス機器などのガス漏れ時に発生するCH,C等の可燃性ガスの濃度を検出するものである。
また、High−Low−Off方式は、不完全燃焼(CO)を検知するために用いられる方式である。ヒータ層3の駆動部(図示せず)は、ヒータ層3に図7で示すような電流による駆動信号を流して、一旦、ヒータ層3のヒータ温度を一定期間(例えば、0.05s〜0.5s)にわたり高温状態(High状態:300〜500℃)に保持してガス感応層53のクリーニングを行ってから、低温状態(Low状態:約50〜150℃)に降温してガス検知を行い、その後一定期間ヒータ層3に駆動信号を流さない状態(OFF状態)として、検出時以外では不要な電力の消費を抑止する。そして、ヒータ層3の駆動部(図示せず)は、このようなHigh−Low−Offによる駆動を所定の周期(例えば30秒周期)で繰り返し、ヒータ層3を間欠駆動している。
このようなHigh−Low−Off方式は、CO感度および選択性が高くなる方式として知られている。
また、このHigh−Low−Off方式は、High状態でクリーニングのみならずメタン(CH)検知も行い、かつLow状態でCO検知を行い、メタン・COの両方を検知する方式としても良く、このようなHigh−Low−Off方式の薄膜ガスセンサも存在する。
続いて、従来技術の他の薄膜ガスセンサについて説明する。図8は、従来技術の他の薄膜ガスセンサを概略的に示す縦断面図である。薄膜ガスセンサ200は、Si基板1、熱絶縁支持層2、ヒータ層3、ガス検出層5を備える。熱絶縁支持層2は、詳しくは、熱酸化SiO層21、CVD−Si層22、CVD−SiO層23を備え、三層構造となっている。また、ガス検出層5は、詳しくは、接合層51、感知電極層52、ガス感応層53、ガス選択燃焼層54を備える。先に図5を用いて説明した薄膜ガスセンサ100と比較すると、この薄膜ガスセンサ200は、電気絶縁層4がない構成としてガス検出層5が熱絶縁支持層2のCVD−SiO層23上に当接するように設けられ、さらに、ヒータ層3がCVD−SiO層23上であってガス感応層53に隣接する位置でガス選択燃焼層54により覆われるように設けられる。
続いて、従来技術の他の薄膜ガスセンサについて説明する。図9は、従来技術の他の薄膜ガスセンサを概略的に示す縦断面図である。この薄膜ガスセンサ300は、熱線型半導体式ガスセンサであり、Si基板1、熱絶縁支持層(SiO層)2、ボンディングワイヤ6、ヒータ層を兼ねた感知電極層(Pt層)55、ガス感応層53を備える。ヒータ層を兼ねた感知電極層55がガス感応層53を加熱している状態で、SnO 層であるガス感応層53にガスが吸着すると、一対のボンディングワイヤ6間の抵抗値が変化する。薄膜ガスセンサ300は、この抵抗値の変化を検出する。
さて、薄膜ガスセンサ100のガス感応層53は、製造プロセス上の熱処理工程だけでは、初期変動が大きく実用的でないため、エージングと称される通電加熱処理が一定期間実施される。このエージング処理により、ガス感応層53の酸素や水酸碁といった表面吸着物の平衡状態、ガス感応層53を覆う触媒を担持したガス選択燃焼層54の触媒活性、ガス感応層53の酸化活性、センサ構造体の微構造の変化等は安定化し、製品化後のセンサの特性を安定させる。一般的に、従来技術の連続通電駆動のガスセンサは、このエージング処理を清浄空気中で約2ヶ月間行っている。
しかしながら、ここで従来技術におけるエージングの通電加熱処理は、上記したような通常のガス検出駆動パターンのヒータ駆動方式が採用されることが多く、
(1)薄膜ガスセンサのヒータの温度がHigh−Offとなるように所定の周期(例えば60秒周期)で繰り返す、または、
(2)薄膜ガスセンサのヒータの温度がHigh−Low−Offとなるように所定の周期(例えば150秒周期)で繰り返す、
というものである。
また、エージングの他の先行技術として、例えば、特許文献1(特開2003−294668号公報,発明の名称;ガスセンサのエージング方法及び該手法により作製されたガスセンサ),特許文献2(特開平5−256807号公報,発明の名称「ガスセンサのエージング方法)に記載されたものが知られている。
特許文献1に記載の従来技術は、センサを使用するにつれて経時的に変化していく感応体部位をあらかじめ減少させるために、センサを使用する湿度雰囲気に設定された恒温恒湿槽中に一定時間放置した後に、使用時に設定される動作温度にて数時間通電を行うというものである。この特許文献1には、先に説明した間欠駆動のガスセンサについてのエージングが開示されている。
また、特許文献2に記載の従来技術は、金属酸化物半導体からなる検知部と、この検知部を所定温度に加熱するヒータと、を備えるガスセンサを通電しながら行うガスセンサのエージング方法において、微量の妨害ガスを活性炭により除去した雰囲気ガスを用いるようにしたエージング方法が開示されている。このエージング方法は、先に説明した間欠駆動が実施されるよりも前の従来技術である連続通電駆動のガスセンサについて第1,第2のエージングを行う、というものである。
特開2003−294668号公報(段落番号[0047],[0048]) 特開平5−256807号公報(段落番号[0006])
エージングに要する期間に関し、特許文献1では間欠駆動による通電で30日(特許文献1の例えば段落番号[0046],[0047]など)も要する点が開示され、また、特許文献2でも連続通電で60日(特許文献2の例えば段落番号[0006]など)要する点が開示され、一般的にエージングは長期間要するものであった。
間欠駆動によるヒータ駆動を行う薄膜ガスセンサでは同じ条件でエージング、つまり先に説明したHigh−Off方式ならば60秒周期のヒータ駆動、High−Low−Off方式ならば150秒周期のヒータ駆動によるエージングをする必要がある。しかしながら、センサ構造体に与える熱履歴(加熱積算時間)を増やすには時間を要するというものであり、センサ特性を安定化させるのに極端に長いエージング期間が必要になる。また、特許文献1,2等の従来技術によるエージングでも長期間(最低でも一ヶ月)を要しており、従来技術ではエージングが薄膜ガスセンサの製造コストを上昇させる原因となっていた。
例えば、一般的な電池駆動式ガス警報器に搭載するガスセンサについて考察する。このようなガスセンサは、消費電力を低減するため、通常駆動周期約60s又は約30sに一度数100msだけONする間欠駆動がなされている。このようなパルス駆動を行う薄膜ガスセンサの初期変動の一例を見ると、周期60sでは約1年相当のパルス数が必要であり、周期30sでは約0.5年間かかってしまう。これは、従来の連続通電のエージングに比べ、センサ構造体に与える熱履歴(加熱積算時間)が極端に少なく(周期60sの場合、連続通電に対し、1/600)なるためである。間欠駆動でも加熱積算時間を増加させたいという要請があった。
そこでこの発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、間欠駆動で動作する薄膜ガスセンサであっても、短期間でセンサ特性の初期変動を安定させ、エージング期間を短縮したエージング方法を採用する薄膜ガスセンサの初期安定化処理方法を提供することにある。
薄膜ガスセンサは、間欠駆動によるガス検出駆動パターンで動作する。このような薄膜ガスセンサは、ガス検出駆動パターンの周期より短い周期でエージングが行われることにより、薄膜ガスセンサのセンサ構造体へ熱履歴(加熱積算時間)が短期間で与えられるようになる。ガス感応層の酸素や水酸碁といった表面吸着物の平衡状態、ガス感応層を覆う触媒を担持したガス選択燃焼層の触媒活性、ガス感応層の酸化活性、センサ構造体の微構造の変化などというセンサ抵抗の初期変動は、短期間で安定化する。
請求項に記載の発明によれば、
吸着したガスによりその電気抵抗値が変化するガス感応層と、
このガス感応層の近傍に設けられて、該ガス感応層を加熱するヒータ層と
を備え、
前記ヒータ層に与える電力を制御し、所定の駆動時間間隔でパルス駆動によって該ヒータ層を加熱するガス検出駆動パターンで駆動される薄膜ガスセンサの初期安定化処理方法であって、
前記ガス検出駆動パターンの駆動時間間隔よりも短い初期化用時間間隔で予め定められた回数のパルス駆動を行う第1のエージング工程と、
この第1のエージング工程に続いて前記ガス検出駆動パターンと同じ駆動時間間隔でパルス駆動を行う第2のエージング工程と
による初期化安定化処理を行うことを特徴とする薄膜ガスセンサの初期安定化処理方法が提供される。
この方法によれば、第1のエージング工程でガス感応層に対して短期間で安定化に必要な回数のパルスが印加され、さらに第2のエージング工程でガス感応層に対して通常のガス検出駆動パターンでパルスが印加される。本発明の第1,第2のエージング工程によるエージングが施されたガス感応層は、短い期間のエージングであるにも拘わらず、通常のガス検出駆動パターンによるエージングと同等の効果が確保される。
請求項に記載の発明によれば、
前記薄膜ガスセンサは、貫通孔を有するSi基板と、
この貫通孔の開口部に張られるダイヤフラム様の熱絶縁支持層と
を備え、
前記ヒータ層およびガス感応層は、前記熱絶縁支持層における一方の面上にそれぞれ設けられることを特徴とする請求項に記載の薄膜ガスセンサの初期安定化処理方法が提供される。
先に説明した第1,第2のエージング工程によるエージングが、ヒータ層およびガス感応層が熱絶縁支持層の面上にそれぞれ設けられた構成を採用する薄膜ガスセンサのガス感応層に施されたならば、そのガス感応層は、短い期間のエージングであるにも拘わらず、通常のガス検出駆動パターンによるエージングがなされたガス感応層と同等の効果が確保される。
請求項に記載の発明によれば、
前記薄膜ガスセンサは、貫通孔を有するSi基板と、
この貫通孔の開口部に張られるダイヤフラム様の熱絶縁支持層と、
この熱絶縁支持層上に設けられるヒータ層と、
前記熱絶縁支持層および前記ヒータ層を覆うように設けられる電気絶縁層と、
この電気絶縁層上に設けられるガス感応層と
を具備することを特徴とする請求項に記載の薄膜ガスセンサの初期安定化処理方法が提供される。
先に説明した第1,第2のエージング工程によるエージングが、熱絶縁支持層がヒータ層の面上に形成され、さらにガス感応層が熱絶縁支持層の面上に設けられた構成を採用する薄膜ガスセンサのガス感応層に施されたならば、そのガス感応層は、短い期間のエージングであるにも拘わらず、通常のガス検出駆動パターンによるエージングがなされたガス感応層と同等の効果が確保される。
請求項に記載の発明によれば、
前記第1のエージング工程の初期化用時間間隔は、前記第2のエージング工程における駆動時間間隔の1/2〜1/60の範囲内の時間間隔であることを特徴とする請求項のいずれかに記載の薄膜ガスセンサの初期安定化処理方法が提供される。
第1のエージング工程の初期化用時間間隔は第2のエージング工程における駆動時間間隔の1/2〜1/60の範囲内の時間間隔であるときに特に好ましい点を知見した。
請求項に記載の発明によれば、
前記第1のエージング工程における前記ヒータ層の温度は、前記第2のエージング工程における前記ヒータ層の温度の±10%の範囲内であることを特徴とする請求項のいずれかに記載の薄膜ガスセンサの初期安定化処理方法が提供される。
第1のエージング工程のヒータ層の温度は、第2のエージング工程におけるヒータ層の温度の駆動時間間隔の±10%の範囲内であるときに特に好ましい点を知見した。
求項に係る発明によれば、通常のガス検出駆動パターンによるエージングと同等の効果が確保される薄膜ガスセンサの初期安定化処理方法とすることができる。
また、請求項に係る発明によれば、ヒータ層およびガス感応層が熱絶縁支持層の面上にそれぞれ設けられた構成を採用した薄膜ガスセンサに対し、抵抗値の安定化など通常のガス検出駆動パターンによるエージングと同等の効果が確保される薄膜ガスセンサの初期安定化処理方法とすることができる。
また、請求項に係る発明によれば、熱絶縁支持層がヒータ層の面上に形成され、さらにガス感応層が熱絶縁支持層の面上に設けられた構成を採用した薄膜ガスセンサに対し、抵抗値の安定化など通常のガス検出駆動パターンによるエージングと同等の効果が確保される薄膜ガスセンサの初期安定化処理方法を提供することができる。
また、請求項に係る発明によれば、第1のエージング工程の初期化用時間間隔は第2のエージング工程における駆動時間間隔の1/2〜1/60の範囲内の時間間隔としたきに、抵抗値の安定化など通常のガス検出駆動パターンによるエージングと同等の効果が確保される薄膜ガスセンサの初期安定化処理方法とすることができる。
また、請求項に係る発明によれば、第1のエージング工程のヒータ層の温度は、第2のエージング工程におけるヒータ層の温度の駆動時間間隔の±10%の範囲内であるときに、抵抗値の安定化など通常のガス検出駆動パターンによるエージングと同等の効果が確保される薄膜ガスセンサの初期安定化処理方法とすることができる。
総じて以上のような本発明によれば、間欠駆動で動作する薄膜ガスセンサであっても、短期間でセンサ特性の初期変動を安定させ、エージング期間を短縮したエージング方法を採用する薄膜ガスセンサの初期安定化処理方法を提供することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態の薄膜ガスセンサの初期安定化処理方法について図を参照しつつ説明する。なお、本形態の薄膜ガスセンサの初期安定化処理方法は、主にエージング時におけるヒータ層3の駆動方式を改良する点に特徴があり、薄膜ガスセンサの構造そのものは、図5で示した従来技術の薄膜ガスセンサ100と同じである。
すなわち薄膜ガスセンサ100は、図5で示すように、Si基板1、熱絶縁支持層2、ヒータ層3、電気絶縁層4、ガス検出層5を備える。熱絶縁支持層2は、詳しくは、熱酸化SiO層21、CVD−Si層22、CVD−SiO層23の三層構造となっている。また、ガス検出層5は、詳しくは、接合層51、感知電極層52、ガス感応層53、ガス選択燃焼層54を備える。このガス感応層53はSbをドープしたSnO層であり、ガス選択燃焼層54は触媒担持Al焼結材である。そして、ヒータ層3およびガス検出層5(詳しくは感知電極層52を介してガス感応層53)は、駆動・処理部(図示せず)に接続されている。
続いて各部構成について説明する。
Si基板1はシリコン(Si)により形成され、貫通孔を有するように形成される。
熱絶縁支持層2はこの貫通孔の開口部に張られてダイヤフラム様に形成されており、Si基板1の上に設けられる。
熱絶縁支持層2は、詳しくは、熱酸化SiO層21、CVD−Si層22、CVD−SiO層23の三層構造となっている。
熱酸化SiO層21は、熱絶縁層として形成され、ヒータ層3で発生する熱をSi基板1側へ熱伝導しないようにして熱容量を小さくする機能を有する。また、この熱酸化SiO層21はプラズマエッチングに対して高い抵抗力を示し、後述するがプラズマエッチングによるSi基板1への貫通孔の形成を容易にする。
CVD−Si層22は、熱酸化SiO層21の上側に形成される。
CVD−SiO層23は、ヒータ層3との密着性を向上させるとともに電気的絶縁を確保する。CVD(化学気相成長法)によるSiO層は内部応力が小さい。
ヒータ層3は、薄膜状のNi−Cr膜(ニッケル−クロム膜)であって、熱絶縁支持層2のほぼ中央の上面に設けられる。また、図示しない電源供給ラインも形成される。この電源ラインは、駆動・処理部(図示せず)に接続される。
電気絶縁層4は、電気的に絶縁を確保するスパッタSiO層からなり、熱絶縁支持層2およびヒータ層3を覆うように設けられる。ヒータ層3と感知電極層52との間に電気的な絶縁を確保し、また、電気絶縁層4はガス感応層53との密着性を向上させる。
接合層51は、例えば、Ta膜(タンタル膜)またはTi膜(チタン膜)からなり、電気絶縁層4の上に設けられる。この接合層51は、感知電極層52と電気絶縁層4との間に介在して接合強度を高める機能を有している。
感知電極層52は、例えば、Pt膜(白金膜)またはAu膜(金膜)からなり、ガス感応層53の感知電極となるように左右一対に設けられる。
ガス感応層53は、SbをドープしたSnO層からなり、一対の感知電極層52,52を渡されるように電気絶縁層4の上に形成される。
ガス選択燃焼層54は、白金(Pt)またはパラジウム(Pd)である触媒を担持した焼結体であり、先に説明したように触媒担持Al焼結材である。ガス選択燃焼層54は、ガス感応層53の表面に設けられる。Alは多孔質体であるため、孔を通過する検知ガスが触媒に接触する機会を増加させて燃焼反応を促進させる。ガス選択燃焼層54は、電気絶縁層4、接合層51、一対の感知電極層52,52およびガス感応層53の表面を覆うように設けられる。
このような薄膜ガスセンサはダイヤフラム構造により高断熱,低熱容量の構造としている。
図示しないが、駆動・処理部は、駆動部と処理部とを一体に構成したものであり、ヒータ層3を電気により駆動するように接続され、また、ガス電極層52を介してガス感応層53のセンサ抵抗値の変化を検出するように接続される。駆動・処理部によりガス検出駆動が行われる。
薄膜ガスセンサ100の構成はこのようなものである。
続いて、本形態の薄膜ガスセンサの製造方法および初期安定化処理方法について概略説明する。
まず、熱酸化SiO層21が、板状のシリコンウェハー(図示せず)の片面(または表裏両面)に設けられる。熱酸化SiO層21は熱酸化法により熱酸化が施されて形成された熱酸化SiO膜である。
CVD−Si層22は、熱酸化SiO層21の上面に設けられる。このCVD−Si層22は、プラズマCVD法にて堆積して形成したCVD−Si膜である。
CVD−SiO層23は、CVD−Si層22の上面に設けられる。このCVD−SiO層23は、プラズマCVD法により堆積して形成したCVD−SiO膜である。
ヒータ層3は、CVD−SiO層23の上面に設けられる。このヒータ層3は、スパッタリング法により蒸着して形成したNi−Cr膜である。
電気絶縁層4は、CVD−SiO層23とヒータ層3との上面に設けられる。この電気絶縁層4は、スパッタリング法により蒸着して形成したスパッタSiO膜である。
接合層51は、電気絶縁層4の上に形成される。
感知電極層52は、接合層51の上に形成される。
これら接合層51および感知電極層52の成膜は、RFマグネトロンスパッタリング装置を用い、通常のスパッタリング法によって行う。成膜条件は接合層(TaあるいはTi)51、感知電極層(PtあるいはAu)52とも同じで、Arガス(アルゴンガス)圧力1Pa、基板温度300℃、RFパワー2W/cm、膜厚は接合層51/感知電極層52=500Å/2000Åである。
ガス感応層53は、一対の感知電極層52,52の間を渡されるように電気絶縁層4上に設けられる。ガス感応層53は、スパッタリング法により蒸着して形成したSb−doped SnO膜である。
成膜はRFマグネトロンスパッタリング装置を用い、反応性スパッタリング法によって行う。ターゲットにはSbを0.5wt%含有するSnOを用いる。成膜条件はAr+Oガス圧力2Pa、基板温度150〜300℃、RFパワー2W/cmである。ガス感応層53の大きさは、50ないし200μm角程度、厚さは0.2ないし1.6μm程度が望ましい。
ガス選択燃焼層54は、電気絶縁層4、接合層51、一対の感知電極層52,52およびガス感応層53を覆うように形成される。このガス選択燃焼層54は、PdやPtという触媒を担持したアルミナ粉末、バインダーおよび有機溶剤を混合調製した印刷ペーストをスクリーン印刷で印刷し、室温で乾燥後、500℃で1時間焼き付けすることにより形成される。ガス選択燃焼層54の大きさは、ガス感応層53を十分に覆う大きさとする。このようにスクリーン印刷により厚みを薄くしている。
最後にシリコンウェハー(図示せず)は、その裏面から微細加工プロセスとしてエッチングによりシリコンが除去され、貫通孔が形成されたSi基板1となる。これによりダイヤフラム構造の薄膜ガスセンサ100となる。そして、ヒータ層3および感知電極層52は、駆動・処理部と電気的に通信可能に接続される。
薄膜ガスセンサ100の製造方法はこのようなものである。
続いて、このように構成された薄膜ガスセンサの初期安定化処理方法について図を参照しつつ説明する。図1は、ヒータ層の駆動方式を説明する駆動パターン図である。先に説明して作製した薄膜ガスセンサ100は、第1のエージング工程が施され、続いて第2のエージング工程が施されて、ガス検出層5の初期安定化が行なわれる。
第1のエージング工程は、ガス検出駆動パターンの駆動時間間隔よりも短い初期化用時間間隔Tで、予め定められた回数繰り返して通電される連続パルスによりパルス駆動を行う。
第2のエージング工程は、第1のエージング工程に続いて通常のガス検出駆動パターンと同じ駆動時間間隔Tのパルス駆動を行う。
ここに第1のエージング工程のガス検出駆動パターンの初期化用時間間隔Tは、第2のエージング工程のガス検出駆動パターンの駆動時間間隔Tの1/2〜1/60の時間間隔である。
なお、薄膜ガスセンサのヒータの通常のガス検出駆動パターンは、High−Off方式の場合はパルス時間間隔として60秒周期で繰り返すというパターンであり、また、薄膜ガスセンサのヒータの温度をHigh−Low−Off方式の場合はパルス時間間隔として150秒周期で繰り返す、というパターンである。つまり第2のエージング工程の駆動時間間隔Tは、例えば60秒〜150秒という時間間隔が考えられる。したがって、第1のエージング工程のガス検出駆動パターンの初期化用時間間隔Tは、例えば1秒〜75秒という時間間隔が考えられる。
また、第1のエージング工程のガス検出駆動パターンのヒータ温度は、第2のエージング工程のガス検出駆動パターンのヒータ温度の±10%の温度である。なお、ガス検出駆動パターンのヒータ温度は、ガス漏れ(メタン検出)でヒータ温度約350℃〜500℃、CO検出で50℃〜150℃であり、使用目的に応じて適宜設定される。
例えば、第2のエージング工程のパルス状に高温になるガス検出駆動パターンは、ヒータ温度を450℃、パルス幅を500ms、駆動時間間隔Tを60sとするならば、第1のエージング工程のガス検出駆動パターンは、ヒータ温度を405℃〜495℃、パルス幅を500ms、初期化用時間間隔Tを1sとしている。
なお、以後の説明はHigh−Off方式の場合のガス検出駆動パターンを想定して説明するものとする。
初期安定化処理はこのように短期間で多数のパルス駆動を行う第1のエージングを採用している。
続いて、このような第1のエージングを採用する根拠について図を参照しつつ説明する。図2はパルス数−変化率特性図であり、パルス数を横軸に表し、また、変化率(後述)を縦軸に表している。この図2のパルス数−変化率特性図は、ガス検出駆動パターンよりも短い周期で薄膜ガスセンサにパルス通電する回数が増えていくにつれて、薄膜ガスセンサのセンサ抵抗値が経時的に変化する特性を表す。この図2の特性では、センサ抵抗値の経時的な変化を変化率として表している。このセンサ抵抗値の変化率とは、従来技術のような通常のガス検出駆動パターンのみによるエージングを行って初期安定化させた薄膜ガスセンサによるセンサ抵抗値を基準としてどれだけ変化しているかを指している。また、メタン2000ppm中における6個の薄膜ガスセンサのセンサ抵抗値の平均値を用いている。つまり本発明による6個の薄膜ガスセンサによるセンサ抵抗値の平均値を、従来技術の薄膜ガスセンサによるセンサ抵抗値で割って算出した値を変化率としている。このようなセンサ抵抗値の変化率は、1.0に近い値が好ましい値であり、例えば0.8〜1.2の範囲内にあることが望ましい。
このうち通常のガス検出駆動パターンの駆動時間間隔T(60s)でエージングを行うと、センサ抵抗値の変化率は、最初は1.6程度であるが、パルス数増加に従って変化率が減少していき、パルス数53万パルス付近で変化率が0.8程度となる。ここでパルス数53万パルスとは、センサの通常の駆動周期を60sとした場合、約1年分のパルス数を意味している。このパルス数約53万パルスを超えると、センサ抵抗値の変化率は0.8〜1.0程度で安定的に推移していき、センサの通常の駆動周期を60sとした場合に約12年相当のパルス数となるパルス数約643万パルス付近では、センサ抵抗値の変化率が1.0程度まで増加していく。このような図2のパルス数−変化率特性図が示す特性を考慮すれば、センサ抵抗の初期変動は、パルス数約53万パルス程度印加することで安定化するものと予想される。
そこで、第1のエージング工程のガス検出駆動パターンの初期化用時間間隔Tを後述するように期間を短くしてパルス数53万パルスまで印加し、続いて、第2のエージング工程の駆動時間間隔Tで初期安定化処理を行う。ここに、第1のエージング工程の初期化用時間間隔Tとしては30s,10s,3s,1sのうち何れかを採用する。また、第2のエージング工程の駆動時間間隔Tはいずれの場合でも60sする。ここに測定結果をまとめたものを次表に示す。
Figure 0004953253
表1では、通常のガス検出駆動パターンよりも短い周期で通電したセンサ抵抗が安定する期間(第1エージング工程)と、通常のガス検出駆動パターンの周期に戻した後にセンサ抵抗が安定するまでの期間(第2エージング工程)と、その合計期間と、をセンサの安定化処理期間としてまとめたものである。
続いて図2や表1から見て取れる薄膜ガスセンサの傾向について説明する。
表1の(1)〜(5)部分は、検知パターンより短い周期でのヒータ温度を通常の検知パターンと同じヒータ温度で行い、検知パターンより短い周期として、60s,30s,10s,3s,1sで行った場合の実験結果であり、周期が短くなるにつれてセンサの安定化処理期間が短くなることが分かる。なお、60sでは365日かけて安定化処理を行っている。また、図2からも明らかなように、初期化用時間間隔Tとして30s,10s,3s,1s採用したときの何れでも同様の傾向、つまり、最初は1.6程度の変化率であったが、パルス数53万パルス程度で変化率が約0.8程度となり以降は安定的に推移するというものであった。特に短期となる初期化用時間間隔Tを3sや1sでも通常のエージングと同様の結果が得られ、短縮化が可能であることが確認された。
なお、初期化用時間間隔Tを3sにした場合は、第1,第2のエージングによる安定化処理期間が20.8日に、また、初期化用時間間隔Tを1sにした場合は、第1,第2のエージングによる安定化処理期間が23.8日となっており、従来技術の365日よりも大幅な短縮を実現している。この実験結果からは初期化用時間間隔Tを3sとするエージングが好ましい。
また、表1の(4)部分に対して(6)部分及び(7)部分はパラメータとして検知パターンより短い周期でのヒータ温度を通常の検知パターンより高い又は低いヒータ温度で行った場合の実験結果であるが、センサの安定化処理期間が若干変化するものの本発明の効果は十分に得られることが分かる。
この結果からも明らかなように、センサ抵抗値は周期によらず、パルス数に依存していることが分かる。また、この薄膜ガスセンサでは、メタン2000ppm中の抵抗値は、パルス数増加に従い低下し、パルス数53万パルス以降は安定的に推移している。
そして、第1のエージング工程の周期1s〜30sの何れの条件でも安定化するまでの通電期間は、通常駆動周期よりも短縮される。なお、薄膜ガスセンサを間欠駆動するガス警報器では、ガス漏れ(メタン検出)で約30s前後〜約60s前後、CO検出でも〜300sである。ヒータ温度も通常駆動時のヒータ温度より高くても、低くても安定化するまでの通電期間は、通常駆動周期よりも短縮される。
これは薄膜ガスセンサへのエージングによる初期安定化は、ガス感応層53の酸素や水酸碁といった表面吸着物の平衡状態、ガス感応層53を覆う触媒を担持したガス選択燃焼層54の触媒活性、ガス感応層53の酸化活性、センサ構造体の微構造の変化を安定させる処理であり、特に熱履歴(加熱積算時間が大きいこと)に影響されるためと推定される。そこで、第1のエージングによりある程度までの期間は初期化用時間間隔で予め定められた回数のパルス駆動を行うことで熱履歴(加熱積算時間)を増やし、以後はむしろ第2のエージングにより通常の検出と同じガス検出駆動パターンの駆動時間間隔でパルスを印加して実際に使用するときと同じ条件でパルス駆動を行うことで、通常のガス検出駆動パターンでエージングした薄膜ガスセンサと同じ性能を確保できる(変化率1.0)というものであり、長期間の安定性に優れたセンサになる。
続いて他の薄膜ガスセンサについて説明する。なお、この薄膜ガスセンサ200の構造は、先に図8を用いて説明した従来技術の薄膜ガスセンサ200と同じ構造である。しかしながら、従来技術の薄膜ガスセンサは、通常の駆動パターンによるエージングが施されているが、この薄膜ガスセンサは、さらに上記した第1,第2のエージング工程が施された点が相違している。このような薄膜ガスセンサ200は、先に説明した薄膜ガスセンサ100に適用した初期安定化処理が適用され得るものであり、第1,第2のエージング工程によるエージングが施されたガス感応層53は、短い期間のエージングであるにも拘わらず、通常のガス検出駆動パターンによるエージングがなされたガス感応層と同等の効果が確保される。
続いて他の薄膜ガスセンサについて説明する。なお、この薄膜ガスセンサ300の構造は、先に図9を用いて説明した従来技術の薄膜ガスセンサ300と同じ構造である。しかしながら、従来技術の薄膜ガスセンサは、通常の駆動パターンによるエージングが施されているが、この薄膜ガスセンサは、さらに上記した第1,第2のエージング工程が施された点が相違している。このような薄膜ガスセンサ300は、先に説明した薄膜ガスセンサ100に適用した初期安定化処理が適用され得るものであり、第1,第2のエージング工程によるエージングが施されたガス感応層53は、短い期間のエージングであるにも拘わらず、通常のガス検出駆動パターンによるエージングがなされたガス感応層と同等の効果が確保される。
この実施例1は、図5を用いて説明した本形態の薄膜ガスセンサ100の初期安定化処理方法についての実施例である。
図3の通電時間(週)−変化率特性図は、薄膜ガスセンサ100をガス検出駆動パターンより短い周期(初期化用時間間隔T)で一定期間通電した後、通常のガス検出駆動パターンの周期(駆動時間間隔T)に戻した後の経時変化を、メタン2000ppm中の抵抗値変化率で示したものである。ここでは、ガス検出駆動パターンより短い周期(初期化用時間間隔T)を3s、通電パルス数を53万パルスとし、通常のガス検出駆動パターンの周期(駆動時間間隔T)を60sとした。
これによると、ガス検出駆動パターンより短い周期(初期化用時間間隔T)3sで53万パルス通電した後、通常のガス検出駆動パターンの周期(駆動時間間隔T)に戻した後、1週間でセンサ抵抗が安定していることが分かる(表1の第2のエージングの(4)に該当)。
図4の通電時間(週)−変化率特性図は、同様な実験を、ガス検出駆動パターンより短い周期(初期化用時間間隔T)を1s、通電パルス数を53万パルスとした場合の結果である。
これによると、ガス検出駆動パターンより短い周期(初期化用時間間隔T)1sで一定期間通電した後、通常のガス検出駆動パターンの周期(駆動時間間隔T)に戻した後、2週間でセンサ抵抗が安定していることが分かる(表1の第2のエージングの(5)に該当)。
以上本発明の薄膜ガスセンサの初期安定化処理方法について説明した。本発明によれば、間欠駆動で動作する薄膜ガスセンサを、駆動パターンの周期より短い周期(初期化用時間間隔T)でエージングを行うことにより、センサ構造体への熱履歴(加熱積算時間)を短期間で与え、ガス感応層の酸素や水酸碁といった表面吸着物の平衡状態、ガス感応層を覆う触媒を担持したガス選択燃焼層の触媒活性、ガス感応層の酸化活性、センサ構造体の微構造の変化という初期変動が短期間で安定するようにし、その結果、センサ抵抗を安定化させるものである。このような初期安定化処理が施されて、センサ抵抗値の長期安定性に優れた薄膜ガスセンサが得られる。
総じて以上のような本発明によれば、間欠駆動で動作する薄膜ガスセンサであっても、短期間でセンサ特性の初期変動を安定させ、エージング期間を短縮したエージング方法を採用する薄膜ガスセンサの初期安定化処理方法を提供することができる。

ヒータ層の駆動方式を説明する駆動パターン図である。 パルス数−変化率特性図である。 通電時間(週)−変化率特性図である。 通電時間(週)−変化率特性図である。 従来技術の薄膜ガスセンサを概略的に示す縦断面図である。 High−Off方式によるヒータ層温度の時間特性を説明する説明図である。 High−Low−Off方式によるヒータ層温度の時間特性を説明する説明図である。 従来技術の他の薄膜ガスセンサを概略的に示す縦断面図である。 従来技術の他の薄膜ガスセンサを概略的に示す縦断面図である。
符号の説明
100,200,300:薄膜ガスセンサ
1:Si基板
2:絶縁支持層
21:熱酸化SiO
22:CVD−Si
23:CVD−SiO
3:ヒータ層
4:電気絶縁層
5:ガス検出層
51:接合層
52:感知電極層
53:感知層(SnO層)
54:ガス選択燃焼層(Pd担持Al焼結材)
55:ヒータ層を兼ねた感知電極層
6:ボンディングワイヤ

Claims (5)

  1. 吸着したガスによりその電気抵抗値が変化するガス感応層と、
    このガス感応層の近傍に設けられて、該ガス感応層を加熱するヒータ層と
    を備え、
    前記ヒータ層に与える電力を制御し、所定の駆動時間間隔でパルス駆動によって該ヒータ層を加熱するガス検出駆動パターンで駆動される薄膜ガスセンサの初期安定化処理方法であって
    記ガス検出駆動パターンの駆動時間間隔よりも短い初期化用時間間隔で予め定められた回数のパルス駆動を行う第1のエージング工程と、
    この第1のエージング工程に続いて前記ガス検出駆動パターンと同じ駆動時間間隔でパルス駆動を行う第2のエージング工程と
    によ初期化安定化処理を行うことを特徴とする薄膜ガスセンサの初期安定化処理方法
  2. 前記薄膜ガスセンサは、貫通孔を有するSi基板と、
    この貫通孔の開口部に張られるダイヤフラム様の熱絶縁支持層と
    を備え、
    前記ヒータ層およびガス感応層は、前記熱絶縁支持層における一方の面上にそれぞれ設けられることを特徴とする請求項1に記載の薄膜ガスセンサの初期安定化処理方法
  3. 前記薄膜ガスセンサは、貫通孔を有するSi基板と、
    この貫通孔の開口部に張られるダイヤフラム様の熱絶縁支持層と、
    この熱絶縁支持層上に設けられるヒータ層と、
    前記熱絶縁支持層および前記ヒータ層を覆うように設けられる電気絶縁層と、
    この電気絶縁層上に設けられるガス感応層と
    を具備することを特徴とする請求項1に記載の薄膜ガスセンサの初期安定化処理方法
  4. 前記第1のエージング工程の初期化用時間間隔は、前記第2のエージング工程における駆動時間間隔の1/2〜1/60の範囲内の時間間隔であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の薄膜ガスセンサの初期安定化処理方法
  5. 前記第1のエージング工程における前記ヒータ層の温度は、前記第2のエージング工程における前記ヒータ層の温度の±10%の範囲内であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の薄膜ガスセンサの初期安定化処理方法。
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