JP2005130855A - インフルエンザウイルスの検出方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 インフルエンザウイルス及び/または該ウイルスで発現するタンパク質に結合するアプタマーを、インフルエンザウイルスを含有するか、または含有する可能性のあるサンプルと接触させることを含む、インフルエンザウイルスの存在または不存在の検出方法を提供する。
【効果】 インフルエンザウイルスまたはその発現するタンパク質を特異的に認識する本発明のアプタマーは、遺伝子型識別試薬として有用である。
【選択図】 図2
Description
Syndrome:SARS)の流行が社会的な問題となっているが、この初期症状はインフル
エンザと識別しにくいものである。SARSを始め、症状が似通った他の疾患とインフルエンザとの識別のために、ウイルスの培養による検出等が行われている。
さらに、アプタマーは抗体に比べて、近縁の分子どうしを識別する能力がより高い場合があることや、結合のためにより小さな領域しか必要としないことが知られている。例えば、テオフィリン(Theophylline)アプタマーは、テオフィリンとN7位のメチル基だけが異なるカフェインを1万4千倍の効率で識別することができる(非特許文献3参照)。
や生産も流行株に合わせたものとする必要がある。また、A型ウイルスの流行時にB型ウイルスによるインフルエンザ患者も発生する場合があるため、これらの型のいずれであるかを識別する必要がある。更に、臨床的に使用されている抗インフルエンザ薬の中には薬効がウイルスの型に依存するものがあることが知られている。このように、インフルエンザの予防対策や治療にとって、ウイルスの型・亜型・株の識別は非常に重要な課題である。
ンパク質の機能をIn vitroでもIn vivoでも阻害することが見出されている(Yamamotoら,
Genes to Cells, 2000 May, 5(5):371-88; Kakiuchiら, Combinatorial Chemistry & High throughput screening, 2003, 6, 155-160; Nishikawaら, Nucleic Acids Res. 2003 Apr 1, 31(7), 1935-43参照)。一般的に、アプタマーは、標的のタンパク質への結合で
必要とするアミノ酸残基数が、抗体に比較して少ない。従って、アプタマーの高親和性モチーフは近縁のタンパク質どうしや、あるいは微生物の亜型や株どうしを識別するために大変価値のある道具として使える可能性がある。しかしながら、本発明者等の知る限りでは、今日までそのような識別は、例えばテオフィリンとカフェインの違いやリン酸化型と非リン酸化型の違いのように、2種類の近縁分子間以外ではまだなされたことがなく、イ
ンフルエンザウイルスにこうした手法を応用したという報告は現時点においてなされていない。
by exponential enrichment) 法によってA型ヒトインフルエンザウイルス亜型H3N2のウ
イルス粒子に特異的に結合するアプタマーの選別を行うことに成功した。その結果得たアプタマーPN30-10-16とPN30-10-1は、亜型H3N2に属するA/パナマ/2007/1999(H3N2)株に対
してそれぞれ解離定数(Kd)42 nM、及び71 nMという高い親和性で結合した。更により高感度の測定法では、アプタマーPN30-10-16とA/パナマ/2007/1999(H3N2)株の解離定数(Kd)は188pMと見積もられた。これらのアプタマーの結合は特異的で、A型の他の亜型やB型
に属するインフルエンザウイルスには結合しなかった。更に、本発明者等は、B型ヒトイ
ンフルエンザウイルスに特異的に結合するアプタマーの選別にも成功した。これらの結果に基づいて更に検討した結果、本発明を完成するに到った。
(1)インフルエンザウイルス及び/または該ウイルスで発現するタンパク質に結合するアプタマーを、インフルエンザウイルスを含有するか、または含有する可能性のあるサンプルと接触させることを含む、インフルエンザウイルスの存在または不存在の検出方法。(2)インフルエンザウイルス及び/または該ウイルスで発現するタンパク質に結合し、他のウイルス及び/または該他のウイルスで発現するタンパク質に結合しないアプタマーを用いる、上記(1)に記載の方法。
(3)インフルエンザウイルスの特定の型及び/または該型で発現するタンパク質に結合
し、他の型及び/または該他の型で発現するタンパク質に結合しないアプタマーを用いる、上記(1)に記載の方法。
(5)インフルエンザウイルスの特定の株及び/または該株で発現するタンパク質に結合し、他の株及び/または該他の株で発現するタンパク質に結合しないアプタマーを用いる、上記(1)に記載の方法。
(6)タンパク質が膜タンパク質である、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の方法。
(8)インフルエンザウイルス及び/または該ウイルスで発現するタンパク質に特異的に結合するアプタマー。
(9)インフルエンザウイルス及び/または該ウイルスで発現するタンパク質に結合し、他のウイルス及び/または該他のウイルスで発現するタンパク質に結合しない、上記(8)に記載のアプタマー。
(11)インフルエンザウイルスの特定の亜型及び/または該亜型で発現するタンパク質に結合し、他の亜型及び/または該他の亜型で発現するタンパク質に結合しない、上記(8)に記載のアプタマー。
(12)インフルエンザウイルスの特定の株及び/または該株で発現するタンパク質に結合し、他の株及び/または該他の株で発現するタンパク質に結合しない、上記(8)に記載のアプタマー。
(14)膜タンパク質がヘマグルチニンである、上記(13)に記載のアプタマー。
(15)上記(8)〜(14)のいずれかに記載のアプタマーを含有する、インフルエンザウイルスの検出用キット。
成すれば、RNAse等の分解酵素が存在する系、例えば生体内においてもアプタマーを用い
ることができる。
プタマーを選別することによって得ることができる。
ダムな配列がプライマー結合領域に挟まれるような配列として合成するとPCR等の操作上
簡便である。ランダムな配列の長さは特に限定するものではないが、目的とするタンパク質との結合特異性等を考慮すると20〜80塩基、好ましくは25〜30塩基の範囲である。プライマー結合領域はRNAの増幅に用いるPCR反応等のために使用され、その配列は特に限定するものではないが、それ自体は目的のタンパク質に対する結合性を有さないものが好ましい。プライマー結合領域の長さは通常18〜38塩基の範囲である。
反応によってこれを二本鎖DNAに変換する。次いで、場合によってこれを5’及び3’プ
ライマーを用いたPCR反応で増幅する。得られたDNAをRNAポリメラーゼによる転写反応に
かけることにより、目的のRNAプールを得ることができる。
Biochem. 248, 130-138 (1997); Kumar, P.K.ら, Virology, 237, 270-282 (1997))。
具体的には、上記のようにして得られた長さ30塩基、あるいは長さ74塩基のランダム配列(N30またはN74)を含むRNAプールを、結合用緩衝液中で目的のウイルスまたはタン
パク質と共にインキュベートする。インキュベートの際、RNAプールの濃度、及び標的と
なるウイルスまたはタンパク質の濃度は、各々1nM程度以上が適当である。また、両者の比は、モル比で1:1以上が適当である。緩衝液のpHは通常6.0〜8.5が適当である。
れたRNAを逆転写反応によってDNAに変換し、PCR反応で増幅させた後、再度RNAに戻す。このサイクルを繰り返して特異的に結合するRNAを選択する。非特異的結合阻害剤として、
例えば大腸菌由来のtRNAを使用することが好ましい。ランダム配列を含むRNAプールの濃
度に対して阻害剤の濃度は1:1から1:10の範囲が適当である。
B型インフルエンザウイルスに特異的に発現するHAタンパク質とインキュベートさせ、結合したものを選択する、という操作を行う。上記の操作を繰り返すことによって、特異性の非常に高いアプタマーを得ることができる。但し、このいわゆる対向選別法(counter selection strategy)は、選択のための上記サイクルの後半だけで行っても良い。最初から選別条件が厳しいと、好適なアプタマーとなり得る候補の配列を失ってしまう可能性もあり、選別の後半であれば各配列のコピー数が多くなってきているので、選別条件が厳しくなってもその配列を失う危険が小さいからである。あるいは、対向選別法を用いずに直接ターゲットとするウイルスタンパク質だけについての結合性によりRNAの選別を行い、
特異性の高いアプタマーを得ることも可能である。
ーの長さは60〜135塩基であることが好ましい。
類が異なることでワクチンの効果が得られない場合もあり、治療に用いる医薬の決定、ワクチンの選択等においても、その識別は重要な意味を有する。更に、インフルエンザの流行状況をモニタリングすることで、将来の流行予測、ワクチンの製造の上でも有用な情報を得ることができ、更に研究用の試薬としても利用することができる。
の株、A/パナマ/2007/1999(H3N2)とA/愛知/2/1968(H3N2)(以下、それぞれパナマ株、愛
知株と略す)の識別を挙げ、下記実施例において具体的に説明する。A型インフルエンザウイルス粒子の表面には、それぞれ約900コピーのヘマグルチニン(HA)と約300コピーのノイラミニダーゼ(NA)が存在すると言われている。上記パナマ株と愛知株の間で、HAタンパク質のHA1鎖についてアミノ酸残基の相同性は84%程度である。同じ亜型に属するこれらのウイルス株の間でみられるHAの差異はアミノ酸3残基より短い範囲での変異に起因しており、一次配列上でそれ以上に長い範囲にわたる差異はみつからない。現在、製品として入手可能な抗体の中で、A型インフルエンザの同じ亜型に属する2つの異なる株を識別
できることを明確にしているものはない。
イルスに特異的な臨床検査薬を開発するために、一例として本発明者等はA型インフルエ
ンザウイルスの亜型H3N2から2種の株、パナマ株と愛知株を用いて、試験管内選択法によ
ってこれら2株を識別できるようなアプタマーの探索を行った。1種類のウイルス株の方だけに特異的なRNAアプタマーを確保するために、対向選別法を実施した。合計で10サイク
ルの選別を行い、その結果得られた特異的なウイルスに結合するRNAプールについてクロ
ーニングを行った。選別を経たプールにはパナマ株ウイルスに特異的に結合するRNAアプ
タマーが含まれていた。このアプタマーのパナマ株に対する特異性は別の株、愛知株に比較して1,000倍以上であった。このパナマ株特異的なアプタマーは、同じウイルスから精
製したHAタンパク質に同様の親和性で結合した。このことは選別されたアプタマーがインフルエンザウイルス上のHAタンパク質に結合することを示唆する。
識別の検査キットが用いられている。
対するRNAアプタマーを開発すれば、インフルエンザウイルスのA-B型識別検査に有用である。
とができる。アプタマーが放射性標識されている場合には、標的とアプタマーが結合した複合体の量を定量的に検出することができる。また、アプタマーが蛍光標識されている場合には、複合体からの蛍光を検出することができる。更に、アプタマーがアビジンやストレプトアビジンで標識されている場合には、検出するための試薬としてビオチンを用いることができる。当業者であれば、標的とアプタマーの結合を検出するための方法として、当分野で通常行われている方法を適宜利用することができる。
インフルエンザウイルス、A/愛知/2/1968(H3N2)株の精製は既に報告されている方法と
同様に行った(Kida及びYanagawa, J. gen. Virol. 1981 52:103-111参照)。A/パナマ/2007/1999(H3N2)株は組橋英明博士(阪大微生物研究会)より分与していただいた。
と5'-AGAAGAGGAAGGAGAGAGGAAAGG-3'(配列番号3、24.N30と表記する。)である。選別サイクルにおいては大腸菌tRNA(Boehringer-Mannheim)を非特異的な競争阻害剤として用
いた。
フィルターホルダー(Nucleopore)に装着した湿潤済みニトロセルロース・アセテート・フィルター(HA WPフィルター, 0.45μm, 径13.0mm, Millipore)に3回通した。特異的な結合体を選別するために、選別過程の間ずっとtRNAを競争阻害剤として用いた。最初の選別サイクルでは、結合用緩衝液(20 mM Hepes-KOH,pH7.4, 105 mM NaCl)に溶かした(N30プール中の)約4 X 1013通りのRNA配列の異なるコンフォメーションの平衡を促進するために、90℃で2分間処理して変性させた後に、室温で10分間冷却させた(アニーリング)
。プールのRNAとtRNAを合わせてから、パナマ株ウイルスを加え、結合用緩衝液50μl中の最終的な混合液(20 mM Hepes-KOH, pH7.4, 105 mM NaCl, RNA pool 7.8 μM, 9.3 μgパナマ株ウイルス, 競争阻害剤として1.2 μM tRNA)を室温で30分間インキュベートした後、フィルターを通した。フィルターは1 mlの結合用緩衝液で洗浄した。フィルター上に残留したRNAは以前に記述したようにして(Kumarら, Virology, 1997 Oct 27, 237(2):270-82)流出させて回収した。回収したRNAは、50 mM Tris-HCl (pH8.0), 40 mM KCl, 6 mM MgCl2, 0.4 mM dNTPs, 2.5 μM プライマー(24.N30)と5 UのAMV逆転写酵素(生化学工業)を含む20 μlの反応液中で逆転写した。ヌクレオチドと酵素はアニーリングの段階(90℃で2分間処理後、室温で10分間)の後で加えた。逆転写は42 ℃で1 時間行った。
の後、反応液を10%非変性ポリアクリルアミドゲルで分画した。RNAをゲルから抽出し、次の選別と増幅のサイクルに使用した。
イクルを操作した。フィルターへの吸着物やバックグラウンドを除くために、最後の2サ
イクルの選別では96穴タイタープレート(Xenobind plates; XENOPORE Corp.)を使用し
た。タイタープレート選別では、最初に結合用緩衝液の存在下でタンパク質量9.75 μgのウイルスでウェルを表面処理し、残った非特異的吸着部位をBSA(0.1%のストック液)で
ブロックした。次にウェルは洗浄した後に選別に用いた。タイタープレート選別に用いるために、第8回目のサイクルで得られたRNAプールをアニーリングした。次にプールRNA(0.5 μM)とtRNA(50 μM)を200 μlの結合用緩衝液中で混合し、まずBSAのみで表面処理したウェルの中に入れ室温(25℃)で10分間反応させた。未吸着のRNAを回収し、愛知株
ウイルス(0.98 μg)で表面処理したウェルの中に入れ、また10分間反応させた。未吸着の分子を回収し、パナマ株ウイルス(0.98 μg)で表面処理したウェルの中に入れ、20分間の結合時間の後に300 μlの結合用緩衝液で3回洗浄し、未吸着のRNAを除いた。その後
結合したRNAを高温の7 M尿素液で回収した。回収した分子はエタノールで沈殿させ、逆転写、PCRと試験管内転写反応で再生した。第10回目のサイクルも上記の条件を用いて繰り
返したが、愛知株ウイルスへの結合体を除く段階だけをつけ加えて、ウェルからパナマ株への結合体を高温の7 M尿素液によって回収する前に愛知株ウイルス(0.42 μg)を加え
た。
、ウイルスやそのタンパク質の生物活性が損なわれないことがわかっている。その後の選別サイクルでは、ウイルスとRNA(N30プールとtRNA)のモル比は選別の厳しさが順次増していくように操作した(表1)。
選別法を行い、RNAプールをまず愛知株ウイルスに結合させてから、未結合のRNA分子をパナマ株ウイルスに再結合させた。パナマ株ウイルスに結合したRNA分子を溶出させた後、
逆転写、PCR、試験管内転写反応により再生してから次の選別サイクルに用いた。高親和
性の抗ウイルス・アプタマーが濃縮されていく進行状況とその特異性は、フィルター結合定量法で解析した。
た。
号8)、PN30-10-16(配列番号9)、PN30-10-19(配列番号10)、PN30-10-20(配列番号11)、PN30-10-22(配列番号12)、及びPN30-10-23(配列番号13))
モチーフ2(PN30-10-1(配列番号14)、PN30-10-7(配列番号15)、及びPN30-10-8(配列番号16))、及び
モチーフ3(PN30-10-4(配列番号17)、PN30-10-9(配列番号18)、PN30-10-10(配
列番号19)、PN30-10-13(配列番号20)、PN30-10-14(配列番号21)、及びPN30-10-15(配列番号22))。
Biosystems Inc. (ABI))とDNAシークエンサー(Model 373A, ABI)を用いて配列を決定した。個々のアプタマーだけでなく、異なる選別サイクルにおけるプールRNAの結合活性
も調べるために、0.5 mCi/ml [α-32P]CTPを用いて内部標識されたRNAを調製した。結合
と試験管内転写反応の条件は、RNAのウイルスあるいはHAに対するモル比(20 nM RNAに対して200 nM ウイルスあるいはウイルスタンパク質)を変えた以外は選別に用いた条件と
同様であった。フィルターは1 mlの結合用緩衝液で洗浄し、風乾してから、放射活性を画像解析装置(BAS2000, 富士フイルム)で定量した。結合を確実に特異的とするために、
モル濃度で10倍過剰のtRNAを非特異的競争阻害剤として結合反応に加えた。
かった。それに対して、他の2種類のアプタマー、モチーフ2(例えばPN30-10-1(配列番号14)とPN30-10-8(配列番号16))とモチーフ1(例えばPN30-10-16(配列番号9
))はパナマ株ウイルスに特異的に結合した。これらのアプタマーの中でもPN30-10-16は、他のアプタマーに比較してより高い親和性で結合を起こし、選別されたプール(サイクル10、配列を決めたクローンに基づく)内の分子種の半分近くを占めていた。アプタマーPN30-10-1とPN30-10-16の解離定数(Kd)は、それぞれ71 nMと42 nMであると算出され(
表3)、このことから、選別されたプールRNAの中でモチーフ1が高い出現率を示したこ
との説明ができる。
アプタマー(モチーフ2とモチーフ1)のパナマ株ウイルス上における結合部位を調べるために、愛知株とパナマ株のウイルスからそれぞれHAタンパク質を分離し、上記の実験に用いたのと同様なフィルター結合定量法によって解析を行った。
で1.5倍に希釈し、遠心分離(4℃、45,000 gにて30分間)することによってショ糖を除去し、ペレットを0.25mlのTris緩衝液に分散させた後、0.06mlの20% Triton X-100(wt/wt
)を加えて混合し、37℃で2時間静置した。4℃、45,000 gにて30分間遠心分離して得られた上清をイオン交換カラム(Vivapure spin column, type S mini H, Sartorius AG, Germany)に通した。カラムから流出したタンパク質を段階的ショ糖密度勾配(PBS中、重量
比20-60%)の上に重層し、4℃、160,000 gにて20時間遠心分離した。分画した試料をSDS-PAGEにて分析し、精製されたHAを含む分画を集めて実験に使用するまで-80℃にて保存し
た。
結合することはできなかった(図2)。このように、RNAモチーフ2とモチーフ1は同じ効率でパナマ株ウイルスを識別することができた。
高親和性のアプタマー(PN30-10-16)は74ヌクレオチドの長さがあり、様々な解析のためにはより短い方が良いので、ウイルスとHAへの結合を保持したまま、より短いアプタマーの誘導体を作製することを目標に設定した。最初にRNAstructure(version 3.7)でRNA分子の二次構造予測を行ったところ、RNAが長いステム-ループ構造に折りたたまれることを見いだした(図2)。ヌクレオチド番号1-16は別の短いヘアピン・ループに折りたたま
れ、またこの領域は総てのアプタマーでプライマー領域だったので、ウイルスの認識にとっては重要な部位ではないと考えられた。そこで、PN30-10-16アプタマーのヌクレオチド番号20-70からなるRNAを、この領域を含むDNAテンプレート(5'-AGTAATACGACTCACTATAGGGTTAGCAGTCGGCATGCGGTACGACGAACCTTTCCTCTCTCCTTCCTC-3'(配列番号4)、及びプライマー(5'-GAGGAAGGAGAGAGGAAAGG-3'(配列番号5))を用いて2本鎖DNAに転換し、PCRによる
増幅、およびα-32P-CTP存在下でのIn vitroの転写を用いることによって、調製した。
ス粒子やパナマ株のHAに対する結合の解析を行った。結合実験の結果は、PN30-10-16の20-70ヌクレオチド領域がパナマ株ウイルスやHAへの結合に十分であることを明確に示した
。このように得られたPN30-10-16-mini(51-mer、配列番号23)は、インフルエンザウ
イルス(パナマ株)とそのHAタンパク質に高親和性で特異的結合をすることのできるより短いアプタマーである。
実施例3で得られたアプタマーPN30-10-16-miniについて、実施例3と同様にして、フ
ィルター結合定量法により、パナマ株ウイルス及び他のインフルエンザウイルス株との結合を評価した。尚、A/ニューカレドニア/20/1999(H1N1)株及びB/ヨハネスブルク/05/1999株はいずれも組橋英明博士(阪大微生物研究会)より分与していただいた。
に対しては、そのタンパク質量に依存した結合が見られたが、パナマ株と同じA型インフルエンザウイルスであっても亜型の異なるA/ニューカレドニアウイルス(H1N1)、及びB型インフルエンザウイルスのB/ヨハネスブルクのHAタンパク質とは有意な結合を観察できな
かった。
表面プラズモン共鳴法ではフィルター結合測定より感度の高く、より精度の高い解離定数の測定が可能と期待されたので、RNAアプタマーPN30-10-16(配列番号9)とHAタンパ
ク質(A/パナマ/2007/1999(H3N2)株)の結合の解離定数を、表面プラズモン共鳴装置BIAcore 2000(Biacore社)によって測定した。
させたRNAを作製し、次のようにして表面プラズモン共鳴法用のセンサーチップに固定化
した。まず、HBS-EP緩衝液(10 mM HEPES, 150 mM NaCl, 3 mM EDTA, 0.005%界面活性剤P20, pH 7.5)に解かした1μMのビオチン化したオリゴdT(24ヌクレオチド長)[5'-(dT)24-3']、約2μlを、ストレプトアビジンでコートされたセンサーチップ(センサーチップSA, Biacore社)に5μl/mlの流速で流して固定化し、緩衝液を20μl/mlの流速で20分間流して未結合のオリゴヌクレオチドを除いた。オリゴAを含むRNAアプタマーPN30-10-16をHBS-EP緩衝液に50nMの濃度で溶かし、その20μlをオリゴdTを固定化したチップに2μl/mlの流速で流してチップ表面上のオリゴdTに結合させた。このアプタマーのチップへの結合の際に表面プラズモン共鳴装置によって検出された応答の強度は、1,000応答単位(RU)であ
った。
定数(kon)と解離速度定数(koff)は、それぞれ2.6 X 105 M-1sec-1及び2.9 X 10-5 sec-1であった。その結果得られた解離定数(Kd)は188 pMであり、実施例1のフィルター
結合測定で求めた値42 μMの約220分の1であった。このことにより、RNAアプタマーPN30-10-16のA/パナマ/2007/1999(H3N2)株HAタンパク質への結合親和性はフィルター結合測定
で調べていた結果より約220倍高いことが判明した。
ム配列領域の配列を相補的配列(小文字で表した。)に置き換えたPN30-10-16c(5'-GGGAGAAUUC CGACCAGAAG ccaaucguca gccguacgcc augucugucu CCUUUCCUCU CUCCUUCCUC UUC -3':配列番号24)を合成し、A/パナマ/2007/1999(H3N2)株HAタンパク質への結合性を表面プラズモン共鳴法によって調べた。上述のSAチップにおいて、PN30-10-16を固定化したチャネルとは別のチャネルに、同様の方法でビオチン化したオリゴdTとオリゴAの結合を介
して別のRNA、PN30-10-16cを固定化した。このチャネルでは、HAタンパク質濃度20 nMに
おいても表面プラズモン共鳴の応答はなく、HAタンパク質とPN30-10-16cの結合は全く検
出されなかった(図4)。このことから、表面プラズモン共鳴測定の特異性が確認されるとともに、RNAアプタマーPN30-10-16のランダム配列領域の重要性が確認された。
HA-モノクローナル抗体とHAタンパク質の結合の解離定数
比較のため、A/パナマ/2007/1999(H3N2)株HAタンパク質とモノクローナル抗体との結合反応も表面プラズモン共鳴法によって解析した。A/パナマ/2007/1999(H3N2)株HAタンパク質に対するモノクローナル抗体(MAB8254, Chemicon International社)は、次のように
して表面プラズモン共鳴のセンサーチップ(センサーチップCM5, Biacore社)へアミノ共役法によって固定化した。まず、センサーチップに70μlのN-ハイドロキシスクシニミド
(N-エチル-N'-(ジメチルアミノプロピル))カルボジイミド(NHS/EDC)を流してから
、10 mM酢酸ナトリウム(pH 5.0)に溶解させた抗HA抗体溶液(20μg/ml)を7μl流し、
続いて70μlの1Mエタノールアミン・ハイドロクロリド(pH 8.5)を流してチップ表面の
未反応基をブロックした。以上の過程は全て、流速10 μl/minのもとで行った。このセンサーチップへ6.3〜100 nMの濃度範囲のA/パナマ/2007/1999(H3N2)株HAタンパク質液60 μlを20 μl/mlの流速で流し、固定化された抗HA抗体との結合反応曲線を測定した(図5)。これらの反応曲線から得られた抗HA抗体・HAタンパク質結合の会合速度定数(kon)と
解離速度定数(koff)は、それぞれ2.0 X 105 M-1sec-1及び6.3 X 10-4 sec-1であった。その結果得られた抗HA抗体とHAタンパク質の結合の解離定数(Kd)は2.3 nMであり、RNA
アプタマー・HAタンパク質結合の解離定数(Kd)の値188 pMの約12倍であった。すなわち、解離定数の比較から、A/パナマ/2007/1999(H3N2)株HAタンパク質に対して、RNAアプタ
マーPN30-10-16は抗HA抗体より12倍高い親和性を持つことが判明した。
質結合の解離速度定数(koff = 2.9 X 10-5sec-1)は、抗HA抗体・HAタンパク質結合の解離速度定数(koff = 6.3 X 10-4sec-1)より約22分の1であり、RNAアプタマーPN30-10-16は抗HA抗体よりも、HAタンパク質からの解離が遅いことがわかる。
B型インフルエンザウイルスに対するRNAアプタマーを得るために、次のような選別を行った。インフルエンザウイルス、B/ヨハネスブルク/05/1999株は組橋英明博士(阪大微生物研究会)より分与していただいた。このウイルス株のHAタンパク質(HA1鎖とHA2鎖からなる。)を実施例2と同様に次の方法で精製し、このタンパク質を選別の標的として用いた。約30%ショ糖を含むウイルス保存試料からショ糖を除去するために、試料をTris緩衝
液(50mM Tris, 25 mM NaCl, pH7.5)で1.5倍に希釈し、遠心分離(4℃、45,000 gにて30分間)した。ペレットを0.25 mlのTris緩衝液に分散させた後、0.06mlの20% Triton X-100(wt/wt)を加えて混合し、37℃で2時間静置した。4℃、45,000 gにて30分間遠心分離して得られた上清をイオン交換カラム(Vivapure spin column, type S mini H, Sartorius社)に通した。カラムから流出したタンパク質をショ糖密度勾配(PBS中、重量比20-60%
)の上に重層し、4℃、160,000 gにて20時間遠心分離した。分画した試料をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動にて分析し(図6)、レーン4番から6番までの試料を精製されたHAタンパク質として集め、30%ショ糖を含む保存用緩衝液(50 mM Tris-HCl, 25 mM NaCl,
1 mM CaCl2, pH 7.5)に対して透析し、実験に使用するまで-80℃にて保存した(図6)。
可変配列を持つ5'-端のプライマー領域(38塩基長)と3'-端のプライマー領域(20塩基長)で挟まれるように設計した。まず、一本鎖DNAライブラリーとして、5'-TCTAATACGACTCACTATAGGAGCTCAGCCTTCACTGC--N74--GGCACCACGGTCGGATCCAC-3'(配列番号25)を合成した。5'-プライマーと3'-プライマーに用いた配列は、それぞれ5'-TCTAATACGACTCACTATAGGAGCTCAGCCTTCACTGC(配列番号26、以下38.N74と表記する。)とGTGGATCCGACCGTGGTGCC-3'(配列番号27、20.N74と表記する。)であり、5'プライマーにはT7プロモーターが含まれている。約1X1014分子のDNAランダムライブラリーに対して0.25μMずつの5'-プライマ
ーと3'-プライマーの存在下で8サイクルのPCRを行った。増幅されたDNAライブラリーは、T7 Ampliscribe kit(Epicentre Technologies社)を用いた転写(in vitro transcription)でRNAライブラリーに変換させた。
℃で2分間処理して変性させた後に室温で10分間冷却させた(アニーリング)。選別サイ
クルにおいては大腸菌tRNA(Boehringer-Mannheimd社)を非特異的な競争阻害剤として用いた。RNAとHAタンパク質を室温で10分間反応させた後、「Pop-top」フィルターホルダー(Nucleopore社)に装着した湿潤済みニトロセルロース・アセテート・フィルター(HA W
Pフィルター, 0.45μm, 径13.0mm, Millipore社)に通し、タンパク質に結合したRNAをフィルター上に捕捉させて、フィルターを1 mlの結合用緩衝液で洗浄した。フィルター上にタンパク質と共に結合したRNAは溶出用緩衝液(0.4 M 酢酸ナトリウム, 5 mM EDTA, 7 M 尿素, pH5.5)により回収し、鳥類骨髄芽球症ウイルス逆転写酵素(Roche Diagnosis社)によって42 ℃で1 時間、逆転写した。得られたcDNAはPCR(6〜12サイクル)で増幅し、
次の選別サイクルで用いるRNAを調製するための鋳型とした。非特異的にフィルターに吸
着するRNAを除外するため、転写されたRNAプールは次の選別サイクルに用いる前にニトロセルロース・アセテート・フィルターに3回通した。特異性の高いRNAを選別するために、表2に示すように選別サイクルが進むにつれて精製HAタンパク質の濃度を段階的に下げた。第2サイクル目と第4サイクル目の選別では、フィルターの代わりにイオン交換カラム(Vivapure spin column, type S mini H, Sartorius 社)を用いた。第7サイクル目の選別では、フィルターへの吸着物を除くために96穴タイタープレート(Xenobind plate; XENOPORE Corp.社)を使用した。
標識されたRNAを作製した。結合反応では、モル濃度で10倍過剰の大腸菌tRNAを非特異的
競争阻害剤として加え、RNAとHAタンパク質を1対4のモル比で混合し結合させた後、フィ
ルターを通した。フィルターは1 mlの結合用緩衝液で洗浄し、フィルターに残留した標識RNAの放射活性を画像解析装置(BAS2000, 富士フイルム)で定量した。結合活性は、反応液に入れたRNA全量の内、フィルター結合したRNA量のパーセンテージで表した(表2)。第9サイクルの選別後では、RNAプールの約27%がHAタンパク質に結合した。
サブクローニングした後、大腸菌にトランスフォームした。プラスミドDNAの個々のクロ
ーンをプラスミド精製キット(Promega社)で単離し、DNA塩基配列をDye Terminator Sequencing kit(Applied Biosystems Inc. 社)とDNAシークエンサー(Model 373A, Applied Biosystems Inc. 社)を用いて配列を解読し、そのDNA塩基配列に相当するRNA塩基配列を求めた。配列が解読されたRNAのクローンは配列によって4つのクラスに分類され、存在比率の高い順番(42% > 33% > 17% > 8%)にクラスA、クラスB、クラスC、クラスDと名付けた(図7)。
クラスB(アプタマーJN74-9-B11、-B16、-B18、及び-B40:配列番号29)
クラスC(アプタマーJN74-9-C19及び-C25:配列番号30)
クラスD(アプタマーJN74-9-D6:配列番号31)
が予測された(図8)。フィルター結合測定によって求めたRNA配列の4クラスとHAタンパク質(160nM)の結合効率は、それぞれ76%、48%、30%、16%であった(図9)。
)について、塩基配列の重要性や金属イオンの効果、異なる型のインフルエンザウイルスを識別する能力など、アプタマーとしての特異性や親和性をフィルター結合定量により解析を行った。
タンパク質に付加された糖鎖を認識しているのかを明らかにするために、糖加水分解酵素によってHAタンパク質の糖鎖を除去してRNAアプタマーの結合に対する影響を調べた。
スタンパク質量22 mg)からショ糖を除去するために、試料をリン酸緩衝液(20mM リン酸ナトリウム, pH6.5)3 mlを加え1.5倍に希釈し、遠心分離(4℃、45,000 gにて1時間)した。ペレットを1.5 mlのリン酸緩衝液に分散させた後、界面活性剤N-ドデシル-β-D-マルトシド(Calbiochem-Novabiochem Co.社)66 mgを含むリン酸緩衝液1.5 mlを加えて混合
し、37℃で2時間震盪した後、4℃、45,000 gにて1時間遠心して上清を回収した。糖質加
水分解酵素N-グリコシダーゼF(Roche Diagnosis社)250単位/250μlとエンドグリコシダーゼ(Endo Hf, New England BioLabs Inc.社)250,000単位/250μlを加えて、37℃で24
時間震盪した後、再度エンドグリコシダーゼ250,000単位/250 μlを追加してさらに37℃
で24時間震盪した。4 M NaCl水溶液を加えて、タンパク質溶液に含まれるNaCl濃度を300 mMに調整した後、限外ろ過膜(Amicon Centriprep, 50,000MWCO; Millipore Co.社)を用いて体積を約0.5 mlまで濃縮した。この試料を、ゲルろ過カラム(Superose 12 HR 10; Pharmacia Biotech社)に0.02%N-ドデシル-β-D-マルトシドを含む緩衝液(10 mM Tris-HCl, 5 mM MgCl2, pH 7.5)で流すことによってHAタンパク質と糖質加水分解酵素を分離し
た。分画した試料をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動にて分析し、HAタンパク質を含む分画を集めて、RNAアプタマーとの結合実験に用いた(図10)。
に対してHAタンパク質濃度を変化させて(5〜140 nM)結合反応させ、フィルター結合測
定によって解析した。RNAとHAタンパク質の混合液をニトロセルロース・フィルターに通
した後、フィルターを1 mlの結合用緩衝液で洗浄し、HAタンパク質とともにフィルターに結合した内部標識RNAを画像解析装置(BAS2000, 富士フイルム)で定量した。この測定値を解析ソフトウェアPRISM(Graphpad Software Inc.社)で解析することによって、解離
定数を求めた(図11)。RNAアプタマーJN74-9-A20の結合は、糖鎖を除去していないHA
タンパク質に対しても糖鎖を除去したHAタンパク質に対してもほぼ同等の解離定数(Kd
〜45 nM)を表したので、HAタンパク質の糖鎖はこのRNAアプタマーとの結合には関与していないことが示された。
ンに依存的であり、マグネシウムイオンが存在しない状態では結合しなかった(図12)。
ネスブルク/05/1999株のウイルス粒子に対しても結合することがわかった(図13)。このとき、JN74-9-A20はウイルス粒子表面のHAタンパク質に結合しているものと考えられる。
知/2/1968(H3N2)株とA/パナマ/2007/1999(H3N2)株のそれぞれからHAタンパク質を精製し
、これらのHAタンパク質及びB/ヨハネスブルク/05/1999株ウイルス粒子に対する結合をフ
ィルター結合測定で調べた。その結果、RNAアプタマーJN74-9-A20はA型ウイルスのHAタンパク質とは結合を示さなかった(図13)。
ために、ランダム配列領域の配列をJN74-9-A20のものとは相補的にしたRNA、JN74-9-A20c(配列番号32)を合成し、B/ヨハネスブルク/05/1999株のHAタンパク質との結合を調べた。JN74-9-A20cはHAタンパク質と結合する能力がなく、JN74-9-A20塩基配列のランダム
配列領域の重要性が示された。
ポリヌクレオチド・キナーゼによって放射性標識し、8%ポリアクリルアミド/7 M尿素ゲ
ルで電気泳動してゲルから溶出させて回収した。標識RNAの三次構造の折れたたみを行わ
せるために、95℃2分間の過熱処理の後、ゆっくりと室温に冷却させた。このように調製
した5'-端標識RNA(1,100 Kcpm)は8μlの緩衝液(20 mM HEPES, 1 mM EDTA, pH 8.0)に溶解させ、2.5μgの大腸菌tRNA (0.8μl)とENUの飽和エタノール溶液5μlとを加えた。90℃で2分間の処理によって修飾反応を行った後、15μgの大腸菌tRNA(4.8 μl)を添加
して反応を停止させ、RNAをエタノール沈澱によって回収した。以上の反応条件によって
、ENUはRNAの1分子当たり約1ケ所のリン酸結合部を加水分解が容易なフォスフォトリエステルに修飾する。この過程でHAタンパク質との結合に不可欠なリン酸結合が修飾されているRNA分子は、HAタンパク質と複合体形成することができない。HAタンパク質と複合体形
成する修飾RNAの集団から失われているRNAのバンドを、ゲル電気泳動によるフットプリントから検出した。20 pmolの修飾RNAを25 μlの結合用緩衝液の中で92℃、2分間処理し室
温で10分間冷却させた後、RNAと HAタンパク質の複合体を形成させるために160 nMのHAタンパク質を加えて25℃で10分間静置した。複合体をニトロセルロース・フィルターに結合させた後、回収し、200 μlの緩衝液(100 mM Tris/HCl, pH 9.0)中で50℃、5分間処理
して部分的加水分解をさせた。切断されたRNAをエタノール沈澱で回収し、10%ポリアクリルアミド/7 M尿素ゲルの電気泳動で分析し、HAタンパク質の非存在下のときと挙動の異
なるRNAアルカリ加水分解物のバンドを調べた(図14、レーン「-HA」とレーン「+HA」
の差。矢頭で示した。)。対照として、未修飾のRNAをRnase T1で分解した試料と、未修
飾のRNAをアルカリで部分的加水分解した試料も同時に電気泳動し、バンド同定に用いた
(図14、それぞれ、レーン「T1」とレーン「OH」)。
リン酸結合部の修飾はHAタンパク質との結合を強く阻害することがわかった。このことから、A63、G65、U66、U67の部位のリン酸結合はHAタンパク質との結合に重要と考えられる。これら部位は互いに近接しており、RNA分子JN74-9-A20の予測二次構造上で一ケ所の1本鎖ループ領域に並んでいる(図14)。以上の結果は、RNAアプタマーとHAタンパク質の
結合には、最適化された塩基配列だけでなく、ランダム配列領域のリン酸結合にも重要な役割があることを示している。
Claims (15)
- インフルエンザウイルス及び/または該ウイルスで発現するタンパク質に結合するアプタマーを、インフルエンザウイルスを含有するか、または含有する可能性のあるサンプルと接触させることを含む、インフルエンザウイルスの存在または不存在の検出方法。
- インフルエンザウイルス及び/または該ウイルスで発現するタンパク質に結合し、他のウイルス及び/または該他のウイルスで発現するタンパク質に結合しないアプタマーを用いる、請求項1記載の方法。
- インフルエンザウイルスの特定の型及び/または該型で発現するタンパク質に結合し、他の型及び/または該他の型で発現するタンパク質に結合しないアプタマーを用いる、請求項1記載の方法。
- インフルエンザウイルスの特定の亜型及び/または該亜型で発現するタンパク質に結合し、他の亜型及び/または該他の亜型で発現するタンパク質に結合しないアプタマーを用いる、請求項1記載の方法。
- インフルエンザウイルスの特定の株及び/または該株で発現するタンパク質に結合し、他の株及び/または該他の株で発現するタンパク質に結合しないアプタマーを用いる、請求項1記載の方法。
- タンパク質が膜タンパク質である、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
- 膜タンパク質がヘマグルチニンである、請求項6記載の方法。
- インフルエンザウイルス及び/または該ウイルスで発現するタンパク質に特異的に結合するアプタマー。
- インフルエンザウイルス及び/または該ウイルスで発現するタンパク質に結合し、他のウイルス及び/または該他のウイルスで発現するタンパク質に結合しない、請求項8記載のアプタマー。
- インフルエンザウイルスの特定の型及び/または該型で発現するタンパク質に結合し、他の型及び/または該他の型で発現するタンパク質に結合しない、請求項8記載のアプタマー。
- インフルエンザウイルスの特定の亜型及び/または該亜型で発現するタンパク質に結合し、他の亜型及び/または該他の亜型で発現するタンパク質に結合しない、請求項8記載のアプタマー。
- インフルエンザウイルスの特定の株及び/または該株で発現するタンパク質に結合し、他の株及び/または該他の株で発現するタンパク質に結合しない、請求項8記載のアプタマー。
- タンパク質が膜タンパク質である、請求項8〜12のいずれか1項記載のアプタマー。
- 膜タンパク質がヘマグルチニンである、請求項13記載のアプタマー。
- 請求項8〜14のいずれか1項記載のアプタマーを含有する、インフルエンザウイルス
の検出用キット。
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