JP2017020957A - 表面プラズモン共鳴測定装置及びそのチップ - Google Patents

表面プラズモン共鳴測定装置及びそのチップ Download PDF

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Abstract

【課題】ウイルスを高感度かつ迅速に検出可能な測定装置を提供する。【解決手段】基板上に配置された、ウイルスと結合する糖鎖又はアプタマーを備えるチップ10と、チップ10に光を照射する光源20と、光を照射されたチップ10上における表面プラズモン共鳴による光の吸収を検出する検出器30と、を備える表面プラズモン共鳴測定装置。【選択図】図3

Description

本発明は検出技術に関し、表面プラズモン共鳴測定装置及びそのチップに関する。
インフルエンザウイルスは、直径100nmのタンパク質に囲まれた球状ウイルスである。インフルエンザウイルス表面には、糖タンパク質であるヘマグルチニン(H)と、グリコシダーゼであるノイラミニダーゼ(N)と、が存在する。インフルエンザウイルスは、これらのタンパク質の種類の違いによって144の亜型に分類されている。例えば、鳥インフルエンザを起こすウイルスは、H5N1亜型と表記される。インフルエンザウイルスの宿主細胞への感染は、ウイルス表面のヘマグルチニン(H)が、細胞表面のシアル酸含有複合糖鎖を受容体として認識して結合することによると考えられている。
インフルエンザはインフルエンザウイルスに起因する急性呼吸器疾患である。インフルエンザは、突然現れる高熱、頭痛、関節痛、筋肉痛など全身の症状が強いのが特徴で、併せてのどの痛み、鼻汁、咳などの症状も見られる。さらに、気管支炎、肺炎、小児では中耳炎、熱性けいれんなどを併発し、重症になることがある。
また、H5N1亜型トリインフルエンザやエボラウイルス感染は、世界中でパンデミック(感染爆発)の発生が懸念されている。特に、強毒性であるH5N1亜型トリインフルエンザは、感染の拡大により日本だけで3200万人が感染し、最悪の場合64万人が死亡すると予測されている。実際、2009年にパンデミックが発生した新型インフルエンザは、毒性が低いにもかかわらず、死者が世界中で2,185人にも上った。パンデミックの発生は、企業の生産能力の低下、交通、電力などの社会機能の麻痺など深刻な経済損失をもたらすものと予測されている。
したがって、ウイルスの脅威に対抗するためには、迅速検出法を用いた早期診断による感染者の封じ込めが不可欠である。早期診断は、感染者の封じ込めの効果が期待されるとともに、感染者への抗ウイルス薬投与などの適切な診療を早期に実施でき、感染者の生存確率を高める。例えば、タミフルやリレンザなどの抗ウイルス剤は、インフルエンザウイルスの増殖を抑制することができ、有効な手段といえるが、最適な効果を得るためには、抗ウイルス剤を感染から48時間以内に投与しなければならない。特に致死率が高いエボラウイルスは、3〜4個程度のウイルスが体内に侵入するだけで、増殖すると考えられている。そのため、感染者の封じ込めのためには、高感度なウイルス検出システムが必要となる。
しかし、これまで実用化されている免疫クロマト診断キットは、数分以内にインフルエンザウイルスの診断結果が出るが、検出感度が十分でなく、ウイルスの亜型に関しての識別能力に乏しい。そのため、ウイルスに罹患しているにもかかわらず、適切な治療が受けられずに患者が重症化したり、ウイルスを拡散させたりする原因となっている。また、免疫クロマト法は抗原抗体反応を基本としているため、熱変性に弱く、長期間保存されている間に抗体の認識能力が低下するといった問題点が生じる。そのため、このような診断キットを一般家庭や発展途上国などにおいて用いることは難しい。
また、現状、リアルタイムPCR(RT−PCR)法によるウイルスのゲノム検出が、最も高感度な検出方法であるが、検出までに数時間かかり、サーマルサイクラーなどの特殊な装置が必要である。そのため、RT−PCR法によるゲノム検出を迅速な感染者の封じ込めに利用するには、限界がある。さらに、表面プラズモン共鳴測定装置によりデオキシリボ核酸(DNA)及びタンパク質を検出した例はあるものの(例えば、特許文献1から3参照。)、ウイルスそのものを高感度かつ迅速に検出した例はない。
特開2009−222401号公報 特開2010−210253号公報 特開2010−256126号公報
ウイルスを高感度かつ迅速に検出可能な装置を提供することを目的の一つとする。
本発明の態様によれば、(a)基板上に配置された、ウイルスと結合する糖鎖又はアプタマーを備えるチップと、(b)チップに光を照射する光源と、(c)光を照射されたチップ上における表面プラズモン共鳴による光の吸収を検出する検出器と、を備える、表面プラズモン共鳴測定装置が提供される。
上記の表面プラズモン共鳴測定装置は、チップ上における光の吸収スペクトルの変化を検出して、チップ上におけるウイルスの存在を検出する。
上記の表面プラズモン共鳴測定装置において、アプタマーが、デオキシリボ核酸、リボ核酸、及びペプチドからなる群から選択される一つであってもよい。糖鎖又はアプタマーが、リンカーを介して基板上に固定されていてもよい。リンカーが備えるアルキル鎖の炭素数が1以上5以下であってもよい。
上記の表面プラズモン共鳴測定装置において、チップが、基板上に設けられた酸化膜と、酸化膜上に設けられた、金からなるパターン構造と、をさらに備えていてもよい。パターン構造が、格子状に配置されたドットパターン構造等のパターン構造であってもよい。
上記の表面プラズモン共鳴測定装置において、パターン構造の表面、及びパターン構造の開口から露出する酸化膜の表面の両方に、糖鎖又はアプタマーが配置されていてもよい。
上記の表面プラズモン共鳴測定装置が、ウイルスを含み得る検査液がチップに接触するよう、検査液を貯蔵する検査液セルをさらに備えていてもよい。
また、本発明の態様によれば、(a)基板と、(b)基板上に配置された、ウイルスと結合する糖鎖又はアプタマーと、を備える、表面プラズモン共鳴測定装置のチップが提供される。
上記のチップにおいて、アプタマーが、デオキシリボ核酸、リボ核酸、及びペプチドからなる群から選択される一つであってもよい。糖鎖又はアプタマーが、リンカーを介して基板上に固定されていてもよい。リンカーが備えるアルキル鎖の炭素数が1以上5以下であってもよい。
上記のチップが、基板上に設けられた酸化膜と、酸化膜上に設けられた、金からなるパターン構造と、をさらに備えていてもよい。また、パターン構造が、格子状に配置されたドットパターン構造等のパターン構造であってもよい。
上記のチップにおいて、パターン構造の表面、及びパターン構造の開口から露出する酸化膜の表面の両方に、糖鎖又はアプタマーが配置されていてもよい。
本発明によれば、ウイルスを高感度かつ迅速に検出可能な表面プラズモン共鳴測定装置及びそのチップを提供可能である。
本発明の実施の形態に係る表面プラズモン共鳴測定装置の模式的な斜視図である。 本発明の実施の形態に係る表面プラズモン共鳴測定装置の模式的な透過上面図である。 図2のIII−III方向から見た、本発明の実施の形態に係る表面プラズモン共鳴測定装置の模式的な断面図である。 本発明の実施の形態に係る表面プラズモン共鳴測定装置のチップの模式的な拡大斜視図である。 本発明の実施の形態に係る表面プラズモン共鳴測定装置の模式的な断面図である。 本発明の実施の形態に係る表面プラズモン共鳴測定装置の模式的な断面図である。 本発明の実施の形態に係る表面プラズモン共鳴測定装置の模式的な断面図である。 本発明の実施の形態に係る表面プラズモン共鳴測定装置の模式的な断面図である。 本発明の実施の形態に係る表面プラズモン共鳴測定装置の模式的な断面図である。 本発明の実施の形態に係る表面プラズモン共鳴測定装置の模式的な断面図である。 本発明の実施の形態に係る表面プラズモン共鳴測定装置のチップの製造方法を説明する上面図である。 本発明の実施の形態に係る表面プラズモン共鳴測定装置のチップの製造方法を説明する断面図である。 本発明の実施の形態に係る表面プラズモン共鳴測定装置のチップの製造方法を説明する断面図である。 本発明の実施の形態に係る表面プラズモン共鳴測定装置のチップの製造方法を説明する断面図である。 本発明の実施の形態に係る表面プラズモン共鳴測定装置のチップの製造方法を説明する断面図である。 本発明の実施の形態に係る表面プラズモン共鳴測定装置のチップの製造方法を説明する断面図である。 本発明の実施の形態に係る表面プラズモン共鳴測定装置のチップの製造方法を説明する断面図である。 本発明の実施の形態に係る表面プラズモン共鳴測定装置のチップの製造方法を説明する断面図である。 本発明の実施の形態に係る表面プラズモン共鳴測定装置のチップの製造方法を説明する断面図である。 本発明の実施の形態に係る表面プラズモン共鳴測定装置のチップの製造方法を説明する斜視図である。 本発明の実施の形態に係る表面プラズモン共鳴測定装置のチップの製造方法を説明する斜視図である。 本発明の実施の形態に係る表面プラズモン共鳴測定装置のチップの製造方法を説明する化学式である。 本発明の実施例1の結果を示すグラフである。 本発明の実施例2の結果を示すグラフである。 本発明の比較例1で用いられたリンカーの化学式である。 本発明の比較例1で作製されたリンカーを固定されたチップの模式的斜視図である。 本発明の比較例1の結果を示すグラフである。 本発明の比較例1で作製された抗体を固定されたチップの模式的斜視図である。 本発明の比較例1で作製された抗原を固定されたチップの模式的斜視図である。 本発明の実施例3の結果を示すグラフである。 本発明の比較例2の結果を示すグラフである。 本発明の比較例2で作製されたチップの模式的斜視図である。 本発明の実施例4の結果を示すグラフである。
以下に本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号で表している。但し、図面は模式的なものである。したがって、具体的な寸法等は以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
本発明の実施の形態に係る表面プラズモン共鳴測定装置は、斜視図である図1、透過上面図である図2及びIII−III方向から見た断面図である図3に示すように、基板上に配置された、ウイルスと結合する糖鎖又はアプタマーを備えるチップ10と、チップ10に光を照射する光源20と、光を照射されたチップ10上における表面プラズモン共鳴による光の吸収を検出する検出器30と、を備える。
表面プラズモン共鳴測定装置は、さらに、光源20、チップ10、及び検出器30を格納する筐体40と、筐体40内部に設けられた、検査液を格納する検査液セル41と、検査液セル41の導入口に設けられた漏斗状の導入ガイド42と、を備える。チップ10は、検査液セル41内に配置される。検査液セル41は、少なくとも一部が、光源20が発する光に対して透明であり、光源20が発した光がチップ10に到達することと、チップ10を透過した光が検出器30に到達することを妨げない。
チップ10は、図4に示すように、基板11と、基板11上に設けられた酸化膜12と、酸化膜12上に設けられた、金(Au)からなるパターン構造13と、を備える。さらに、チップ10は、パターン構造13の表面及びパターン構造13で覆われていない酸化膜12の表面に固定されたリンカー14と、リンカー14に接続された糖鎖又はアプタマー15と、を備える。チップ10は、基板11が図3に示す光源20と対向し、図4に示す糖鎖又はアプタマー15が検査液と接するよう、図3に示す検査液セル41内に配置される。
図4に示す基板11は、光源20が発する光に対して透明であり、例えば結晶石英等からなる。酸化膜12は、例えば、二酸化ケイ素(SiO2)、酸化クロム(Cr23)、酸化ニッケル(NiO)、又は酸化チタン(TiO2)等の誘電体からなる。金(Au)からなるパターン構造13は、図3に示す光源20が発する光に対して不透明であり、例えば斜方格子、六角格子、正方格子、矩形格子、及び平行格子等の格子状に規則的に配置されたドットパターンを備えるが、これに限定されない。図4に示すパターン構造13の膜厚は、例えば10nm以上100nm以下であり、パターン構造13の個々の円形のドットの直径は、例えば100nm以上500nm以下であるが、特に限定されない。
パターン構造13に固定されるリンカー14は、パターン構造13に固定される前において、一方端にパターン構造13の金と反応する基と、他方端に糖鎖又はアプタマー15の基と反応する基と、を備えていれば、特に限定されない。また、パターン構造13で覆われていない酸化膜12に固定されるリンカー14は、酸化膜12に固定される前において、一方端に酸化膜12の表面に存在する水酸基(−OH)と反応する基と、他方端に糖鎖又はアプタマー15の基と反応する基と、を備えていれば、特に限定されない。ただし、リンカー14の長さが短いほど、表面プラズモン共鳴測定装置の感度が良くなる傾向にあるため、リンカー14は有機低分子であることが好ましい。有機低分子が備えるアルキル鎖の炭素数は、例えば1以上5以下、4以下、3以下、又は2以下である。
金(Au)と反応する基としては、メルカプト基(−SH)等が挙げられる。糖鎖又はアプタマー15の基と反応する基としては、アミノ基(−NH2)、アミノオキシ基(−ONH2)、カルボキシル基(−COOH)、アセチレン基、ヒドロキシル基(−OH)、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHS)基、ハロゲン基(−Cl,−Br,−I,−F)、ニトロ基(−NO2)、及びアジド基(−N3)などが挙げられる。酸化膜12の表面に存在する水酸基と反応する基としては、加水分解されて水酸基となるメトキシ基(−OCH3)及びエトキシ基(−OC25)等が挙げられる。
パターン構造13に固定されるリンカー14の具体例としては、γアミノオキシプロピルメルカプタン、及び2−アミノエタンチオールが挙げられる。また、酸化膜12に固定されるリンカー14の具体例としては、γアミノオキシプロピルトリエトキシシラン、及びアミノプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
糖鎖又はアプタマー15は、ウイルスと特異的に結合する物質であれば、特に限定されない。アプタマーは、デオキシリボ核酸(DNA)アプタマー、リボ核酸(RNA)アプタマー、及びペプチドアプタマーを含む。図4においては、糖鎖の一例として、インフルエンザウイルスと特異的に結合する6’−シアリルラクトースを示している。
なお、検査対象ウイルスが例えばインフルエンザウイルスである場合は、インフルエンザウイルスの亜型に応じて、糖鎖又はアプタマー15の種類を変えることが好ましい。例えば、高病原性鳥インフルエンザを起こすインフルエンザウイルス(H5N1亜型)は、末端にN−アセチルノイラミン酸α2,3ガラクトースを有する糖鎖に高い結合親和性を示す。また、ヒトインフルエンザウイルスは、N−アセチルノイラミン酸α2,6ガラクトースを有する糖鎖に高い結合親和性を示す。したがって、インフルエンザウイルスの亜型による糖鎖の認識能力の違いにより、インフルエンザウイルスの亜型を識別することが可能である。インフルエンザウイルス以外のウイルスについても同様である。
また、リンカー14及び糖鎖又はアプタマー15を、パターン構造13の表面及びパターン構造13で覆われていない酸化膜12の表面の両方に固定することにより、酸化膜12の表面への、検査非対象物質の非特異的な付着を抑制することが可能となる。
図2及び図3に示す光源20が発する光は、例えば可視光又は近赤外光である。パターン構造13を備えるチップ10に光が照射されると、パターン構造13において局在プラズモン共鳴(LSPR)が発生し、チップ10を透過した光のスペクトルに吸収ピークが現れる。吸収ピークは、チップ10の糖鎖又はアプタマー15にウイルスが結合することによって、波長シフトする。波長シフトの大きさは、可視光領域よりも近赤外領域の方が大きい傾向にある。したがって、ウイルスが微量である場合は、例えば、近赤外光を発する光源20を用いると、ウイルスを高感度に検出し得る。
チップ10と検出器30の間には、局在プラズモン共鳴による吸光度変化が大きい波長帯域の光を透過させるバンドパスフィルタ50を配置してもよい。検出器30としては、電荷結合素子(CCD)等が使用可能である。検出器30には、例えば処理装置300が接続されている。処理装置300は、チップ10に検査液が接触する前後において、検出器30が検出した、チップ10を透過した光のスペクトルにおける吸収ピークの有意な波長シフトの有無を判定する。処理装置300は、例えば、所定の波長帯域における光の強度が所定の値以上に変化した場合、チップ10表面の糖鎖又はアプタマー15にウイルスが結合したと判定する。また、処理装置300は、所定の波長帯域における光の強度が所定の値以上に変化しなかった場合、チップ10表面の糖鎖又はアプタマー15にウイルスが結合しなかったと判定する。
筐体40の外側には、例えば、検査液中のウイルスの有無を表示する表示部70が設けられている。表示部70は、処理装置300に接続されている。例えば処理装置300がチップ10表面の糖鎖又はアプタマー15にウイルスが結合したと判定した場合、表示部70は赤色のライトを発光させ、処理装置300がチップ10表面の糖鎖又はアプタマー15にウイルスが結合しなかったと判定した場合、表示部70は青色のライトを発光させる。
筐体40内の検査液セル41の下方には、廃液タンク60が設けられている。また、検査液セル41と廃液タンク60の間には、バルブ61が設けられている。検査液セル41内の検査液をチップ10と所定の時間接触させた後、バルブ61が開かれ、検査液セル41内の検査液が、廃液タンク60に流れ落ちる。
次に、実施の形態に係る表面プラズモン共鳴測定装置の使用方法を説明する。まず、図5に示すように、検査液セル41に検査液を入れる前の状態で、光源20から光を発して、チップ10を透過した光を検出器30で検出する。処理装置300は、検出器30が検出した光のスペクトルを、チップ10に検査液が接触する前の光のスペクトルとして記憶する。
その後、図6に示すように、導入ガイド42から検査液セル41に、ウイルスを含有する可能性のある検査液を入れる。検査液の例としては、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)による、被験者のうがい液、及び鼻液等の溶解液が挙げられる。図7に示すように、チップ10が検査液に十分に浸ったら、例えば5分から10分静置し、チップ10上の糖鎖又はアプタマー15と、検査液に含まれ得るウイルスと、を結合させる。
静置後、図8に示すように、バルブ61を開いて、検査液セル41中の検査液を、廃液タンク60に落下させる。さらに、図9に示すように、導入ガイド42から検査液セル41に、水等の洗浄液を複数回流し込んで、チップ10表面及び検査液セル41の内壁を洗浄する。
チップ10表面及び検査液セル41の内壁が乾いた後、図10に示すように、光源20から光を発して、チップ10を透過した光を検出器30で検出する。処理装置300は、検出器30が検出した光のスペクトルを、チップ10に検査液が接触した後の光のスペクトルとして記憶する。
さらに、処理装置300は、チップ10に検査液が接触する前の光のスペクトルと、チップ10に検査液が接触した後の光のスペクトルと、を比較し、吸収ピークの有意な波長シフトがあれば、表示部70に、ウイルスを検出したことを表示させる。また、吸収ピークの有意な波長シフトが無ければ、表示部70に、ウイルスを検出しなかったことを表示させる。
次に、ナノインプリントリソグラフィー法を採用したチップ10の製造方法について説明する。図11に示すように、複数のウェルが設けられたモールド100を用意する。モールド100は、例えばニッケル(Ni)等の金属からなる。例えば、ウェルの径は500nm、深さは500nm、ピッチは1000nmであるが、これらに限定されない。モールド100において、複数のウェルは格子状に配置されている。複数のウェルの配置の態様は、製造されるチップのパターン構造の態様に相似する。
紫外線(UV)硬化樹脂からなる樹脂シートの平坦な表面に、モールド100を押しつけた後、樹脂シートにUVを照射し、図12に示すように、反転レプリカモールド110を作製する。
図13に示すように、表面に蒸着膜119が形成された基板11を用意する。基板11は、例えば結晶石英等からなる。蒸着膜119は、例えば、ケイ素(Si)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、又はチタン(Ti)等の、半金属又は金属からなる。さらに、図14に示すように、下地層としての蒸着膜119上に樹脂をコーティングし、樹脂層120を形成する。樹脂層120は、例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等の熱可塑性樹脂からなる。
次に、図15に示すように、加熱した樹脂層120に反転レプリカモールド110を押しつけ、樹脂層120に、格子状に配置された複数のウェルを形成する。さらに、樹脂層120を冷却後、樹脂層120をマスクとして、アルゴン(Ar)ガス等により異方性エッチングを施し、図16に示すように、樹脂層120に設けられた複数のウェルのそれぞれの底面から基板11表面を露出される。またさらに、図17に示すように、樹脂層120表面及び基板11表面の露出した部分に、ケイ素、クロム、ニッケル、又はチタン等の、半金属又は金属を蒸着し、蒸着膜121を形成する。蒸着膜121の厚さは、例えば蒸着膜119の厚さと同じである。
その後、図18に示すように、蒸着膜121上に金を蒸着して金からなる堆積膜122を形成する。さらに、図19に示すように、樹脂層120をリフトオフすることにより、蒸着膜121上に、金からなるパターン構造13を形成する。次に、基板11、蒸着膜119、121、及びパターン構造13を、450℃から1000℃で加熱する。例えば蒸着膜119、121がケイ素からなる場合は、ガラスの軟化点(500℃から600℃)以上で加熱することが好ましい。加熱により、ケイ素、クロム、ニッケル、又はチタン等からなる蒸着膜119、121が酸化され、図20に示すように、二酸化ケイ素、酸化クロム、酸化ニッケル、又は酸化チタンからなる酸化膜12が、基板11とパターン構造13との間、及び基板11上のパターン構造13から露出する部分に形成される。
例えば、結晶石英からなる基板上に、熱酸化膜を介さずに、金からなるパターン構造を形成すると、アンモニア過酸化水素水による洗浄で、パターン構造が基板上から消失する場合がある。これに対し、実施の形態に係るチップの製造方法によれば、加熱により、酸化膜12とパターン構造13の界面が粗面化され、酸化膜12とパターン構造13の密着性が向上する。そのため、アンモニア過酸化水素水による洗浄で、基板11表面からパターン構造13が消失することを抑制することが可能となる。
また、ケイ素、クロム、ニッケル、又はチタン等の半金属又は金属は、屈折率が高いため、図19に示す蒸着膜119、121の厚さが薄くても、局在プラズモン共鳴のスペクトル分解能を劣化させる。そのため、微量物質の検出が困難となる。これに対し、二酸化ケイ素、酸化クロム、酸化ニッケル、又は酸化チタンは、非酸化物よりも屈折率が低いため、局在プラズモン共鳴のスペクトル分解能を劣化させず、微量物質の検出を妨げない。
次に、図21に示すように、パターン構造13の表面及びパターン構造13で覆われていない酸化膜12の表面にリンカー14を固定する。パターン構造13上において、リンカー14は、金−硫黄(Au−S)結合により、パターン構造13上に固定される。また、酸化膜12上においては、リンカー14は、ケイ素−酸素―ケイ素(Si−O−Si)結合により、酸化膜12上に固定される。リンカー14は、例えば、パターン構造13の表面及びパターン構造13で覆われていない酸化膜12の表面上で、自己組織化単分子膜(SAM)を形成する。その後、図22に示すように、開環した糖のアルデヒド基と、リンカーのアミノオキシ基と、を反応させて、リンカーに糖を結合し、図4に示すチップ10が得られる。
従来、生体物質を基板上に捕捉するためには、標的となる生体物質と特異的に結合する抗体等のタンパク質を基板上に固定している。タンパク質と標的となる生体物質との特異的な結合は、タンパク質の三次元構造による。そのため、基板上にタンパク質を固定する際には、タンパク質の構造が変化しないようにする必要がある。したがって、基板に接触することによってタンパク質の構造が変化しないよう、基板とタンパク質の間に、長いリンカーを挟んでいる。
これに対し、本発明者は、鋭意研究の末、パターン構造を有する基板上に長いリンカーを挟んでタンパク質を固定したチップにおける局在プラズモン共鳴の分解能が低いことを見出した。さらに本発明者は、パターン構造を有する基板上に短いリンカーを挟んで糖鎖又はアプタマーを固定したチップにおける局在プラズモン共鳴の分解能が高いことを見出した。
理論に拘束されるものではないが、タンパク質のような複雑な三次元構造をとらない糖鎖又はアプタマーは、長いリンカーを用いずに基板上に固定しても、ウイルスとの特異性が失活しないものと考えることができる。また、抗体等のタンパク質は一般的に長さが10nmから15nmあるのに対し、糖鎖及びアプタマーは一般的に長さが1nmから2nmである。そのため、理論に拘束されるものではないが、リンカーと糖鎖又はアプタマーの合計長が短くなることにより、パターン構造近傍の局在プラズモン増強場に、糖鎖又はアプタマーに結合されたウイルスが近づくため、局在プラズモン共鳴の分解能が高くなるものと考えることができる。
よって、以上説明した実施の形態に係る表面プラズモン共鳴測定装置は、ウイルスと結合する糖鎖又はアプタマーを備えるチップを用いて、ウイルスを短時間で高感度に検出することが可能である。また、糖鎖及びアプタマーは、高温環境下でも変性しにくい。そのため、実施の形態に係る表面プラズモン共鳴測定装置は、高温環境下でもウイルスを短時間で高感度に検出することが可能である。
(実施例1)
石英基板、石英基板上に配置された酸化ケイ素膜、及び酸化ケイ素膜上に斜方格子上に配置された金からなるドットパターン構造を備えるチップを用意した。ドットパターン構造のぞれぞれのドットの厚さは40nm、直径は400nm、間隔は800nmであった。用意したチップを炉に入れ、室温から0.1時間で450℃まで昇温後、1時間450℃加熱した。次に、チップを10分間オゾン酸化処理し、さらにチップを5分間、75℃でアンモニア過水(NH3/H22/H2O=10/10/50mL)処理し、不純物を除去した。その後、チップを水ですすぎ、スピンコータ(Slope 0.1秒、回転数5000rpm、10秒)で乾燥させた。
再度、チップを10分間オゾン酸化処理した後、アミノオキシシランカップリング剤(3−aminooxypropyl triethoxysilane HCl salt、医化学創薬株式会社)0.1w/w%水溶液に室温で1時間浸漬させ、チップの酸化ケイ素膜表面の水酸基と、リンカーとしてのアミノオキシシランカップリング剤と、を反応させた。その後、チップを水ですすぎ、スピンコータで乾燥させ、さらに100℃の恒温槽で1時間加熱した。
次に、チップをγ−(アミノオキシ)プロピルメルカプタンHCl(Carbosynth Limited)0.1w/w%メタノール溶液に室温で41時間浸漬させ、チップのパターン構造の金と、リンカーとしてのγ−(アミノオキシ)プロピルメルカプタンと、を反応させた。その後、チップを水ですすぎ、スピンコータで乾燥させた。
その後、チップを3’−シアリルラクトース酢酸水溶液(フナコシ、0.1mM、pH5.3)に60℃で1.5時間浸漬させ、酸化ケイ素膜及びドットパターン構造上のリンカーのアミノオキシ基と、H5N1亜型鳥インフルエンザウイルスと結合する3’−シアリルラクトースと、を反応させた。その後、チップを水ですすぎ、スピンコータで乾燥させた。
3’−シアリルラクトースが固定されたチップに光を照射し、チップを透過した光のスペクトルを測定した。次に、3’−シアリルラクトースが固定されたチップのドットパターン構造上に、H1N1亜型季節性インフルエンザウイルスを1pg/mLで含む検査液を滴下し、10分間室温で放置した。その後、水ですすいで自然乾燥させ、チップを透過した光のスペクトルを測定した。その結果、図23に示すように、チップを透過した光のスペクトルにおける吸収ピークは、ほとんどシフトしなかった。
次に、3’−シアリルラクトースが固定されたチップのドットパターン構造上に、H5N1亜型鳥インフルエンザウイルスを1fg/mLで含む検査液10μLをドットパターン構造上に滴下し、10分間室温で放置した。当該検査液には、個数にして、H5N1亜型鳥インフルエンザウイルスを10個程度含んでいるものと考えられる。その後、水ですすいで自然乾燥させ、チップを透過した光のスペクトルを測定した。その結果、図23に示すように、チップを透過した光のスペクトルにおける吸収ピークは、高波長側にシフトした。
実施例1の結果は、実施例1に係る表面プラズモン共鳴測定装置が、H5N1亜型鳥インフルエンザウイルスを短時間に高感度で検出可能であること、H1N1亜型季節性インフルエンザウイルスを誤検出しないことを示している。
(実施例2)
糖鎖としてH1N1亜型季節性インフルエンザウイルスと結合する6’−シアリルラクトースを固定した以外は、実施例1と同様のチップを用意した。用意したチップに光を照射し、チップを透過した光のスペクトルを測定した。次に、PBS10μLをドットパターン構造上に滴下し、10分間室温で放置した。その後、水ですすいで自然乾燥させ、チップを透過した光のスペクトルを測定したところ、チップを透過した光のスペクトルにおける吸収ピークは、ほとんどシフトしなかった。
また、6’−シアリルラクトースが固定されたチップのドットパターン構造上に、H5N1亜型鳥インフルエンザウイルスを1pg/mLで含む検査液を滴下し、10分間室温で放置した。その後、水ですすいで自然乾燥させ、チップを透過した光のスペクトルを測定した。その結果、図24に示すように、チップを透過した光のスペクトルにおける吸収ピークは、ほとんどシフトしなかった。
次に、6’−シアリルラクトースが固定されたチップのドットパターン構造上に、H1N1亜型季節性インフルエンザウイルスを1pg/mLで含む検査液を滴下し、10分間室温で放置した。その後、水ですすいで自然乾燥させ、チップを透過した光のスペクトルを測定した。その結果、図24に示すように、チップを透過した光のスペクトルにおける吸収ピークは、高波長側にシフトした。
実施例2の結果は、実施例2に係る表面プラズモン共鳴測定装置が、H1N1亜型季節性インフルエンザウイルスを短時間に高感度で検出可能であること、H5N1亜型鳥インフルエンザウイルスを誤検出しないことを示している。
(比較例1)
石英基板、石英基板上に配置された酸化ケイ素膜、及び酸化ケイ素膜上に斜方格子上に配置された金からなるドットパターン構造を備えるチップを用意した。ドットパターン構造のぞれぞれのドットの厚さは40nm、直径は400nmであった。用意したチップを炉に入れ、室温から0.1時間で450℃まで昇温後、1時間450℃加熱した。次に、チップを10分間オゾン酸化処理し、さらにチップを5分間、75℃でアンモニア過水(NH3/H22/H2O=10/10/50mL)処理し、不純物を除去した。
再度、チップを10分間オゾン酸化処理した後、チップに光を照射し、チップを透過した光のスペクトルを測定した。
また、オゾン酸化処理されたチップを水ですすぎ、スピンコータ(Slope 0.1秒、回転数5000rpm、10秒)で乾燥させた。乾燥後、図25に示すようにアルキル鎖の炭素数が10であるNHSチオール(ProChimia Surfaces Sp. z o.o.)99w/w%エタノール溶液に室温で1時間浸漬させ、図26に示すようにチップのパターン構造の金と、リンカーとしてのNHSチオールと、を反応させた。その後、チップを水ですすぎ、スピンコータで乾燥させた。
アルキル鎖の炭素数が10であるNHSチオールを固定したチップに光を照射し、チップを透過した光のスペクトルを測定した。その結果、図27に示すように、NHSチオールのみが固定された段階であるにもかかわらず、チップを透過した光のスペクトルにおける吸収ピークは、高波長側にシフトした。
次に、アルキル鎖の炭素数が10であるNHSチオールを固定したチップをH1抗体(アブカム)溶液に25℃で約10分間浸漬させ、図28に示すように、ドットパターン構造上のリンカーのNHS基と、H1抗体のアミノ基と、を反応させた。その後、チップを水ですすぎ、スピンコータで乾燥させた。
H1抗体を固定したチップに光を照射し、チップを透過した光のスペクトルを測定した。その結果、図27に示すように、NHSチオールのみが固定された段階と比べて、チップを透過した光のスペクトルにおける吸収ピークは、ほとんどシフトしなかった。
次に、アルキル鎖の炭素数が10であるNHSチオールを介してH1抗体を固定したチップをH1抗原(アブカム)溶液に25℃で約10分間浸漬させ、図29に示すように、H1抗体と、H1抗原と、を反応させた。その後、チップを水ですすぎ、スピンコータで乾燥させた。
H1抗原を固定したチップに光を照射し、チップを透過した光のスペクトルを測定した。その結果、図27に示すように、NHSチオールのみが固定された段階と比べて、チップを透過した光のスペクトルにおける吸収ピークは、ほとんどシフトしなかった。
別途、アルキル鎖の炭素数が10であるNHSチオールを固定したチップをエタノールアミン(和光純薬工業)溶液に25℃で約60分間浸漬させ、ドットパターン構造上のリンカーのNHS基と、エタノールアミンのアミノ基と、を反応させた。その後、チップを水ですすぎ、スピンコータで乾燥させた。
エタノールアミンを固定したチップに光を照射し、チップを透過した光のスペクトルを測定した。その結果、図27に示すように、NHSチオールのみが固定された段階と比べて、チップを透過した光のスペクトルにおける吸収ピークは、ほとんどシフトしなかった。
比較例1の結果から、リンカーとしてアルキル鎖の炭素数が10であるNHSチオールを固定すると、それだけでチップを透過した光のスペクトルにおける吸収ピークが大きくシフトしてしまい、その後、リンカーにさらに物質を固定しても、吸収ピークは大きくシフトしないことが明らかになった。
(実施例3)
実施例1と同様の方法で、リンカー及び糖鎖が固定される前のオゾン酸化処理されたチップを用意し、チップを透過した光のスペクトルを測定した。次に、実施例1と同様の方法で、チップのパターン構造に、アルキル鎖の炭素数が3であるγ−(アミノオキシ)プロピルメルカプタンを固定した。γ−(アミノオキシ)プロピルメルカプタンを固定したチップを透過した光のスペクトルを測定したところ、図30に示すように、吸収ピークは、ほとんどシフトしなかった。
次に、実施例1と同様の方法で、チップのパターン構造上のγ−(アミノオキシ)プロピルメルカプタンに、6’−シアリルラクトースを固定した。6’−シアリルラクトースを固定したチップを透過した光のスペクトルを測定したところ、図30に示すように、吸収ピークは、ほとんどシフトしなかった。
実施例3の結果から、鎖長の短いリンカー及び糖鎖は、チップを透過した光のスペクトルに大きな影響を与えないことが示された。
(比較例2)
チップの酸化ケイ素膜表面をアミノオキシシランカップリング剤で修飾しなかった以外は、実施例2と同様のH1N1亜型季節性インフルエンザウイルスと結合する6’−シアリルラクトースを固定したチップを用意した。用意したチップに光を照射し、チップを透過した光のスペクトルを測定した。
次に、チップ上に、H5N1亜型鳥インフルエンザウイルスを10μg/mLで含む検査液を滴下し、10分間室温で放置した。その後、水ですすいで自然乾燥させ、チップを透過した光のスペクトルを測定した。その結果、図31に示すように、6’−シアリルラクトースはH5N1亜型鳥インフルエンザウイルスと結合しないにもかかわらず、チップを透過した光のスペクトルにおける吸収ピークは、高波長側にシフトした。
理論に拘束されるものではないが、比較例2の結果は、図32に示すように、アミノオキシシランカップリング剤で修飾されずに露出したチップの酸化ケイ素膜表面に、H5N1亜型鳥インフルエンザウイルスが非特異的に吸着したことによると考えられる。
(実施例4)
実施例2と同様に、6’−シアリルラクトースを固定したチップを複数用意し、それぞれ、1μg/mL、1ng/mL、1pg/mL、1fg/mLのH1N1亜型季節性インフルエンザウイルス検査液と反応させた。リンカーを結合する前のオゾン酸化処理した後のチップを透過した光のスペクトルに対する、1μg/mLのH1N1亜型季節性インフルエンザウイルス検査液と反応した後のチップを透過した光のスペクトルにおける吸収ピークの波長シフトを100%として、図33に示すように、リンカーのみを結合した場合、リンカーに糖鎖のみを結合した場合、及び糖鎖に各濃度のウイルスを結合した場合における波長シフトをグラフにした。
実施例4の結果から、鎖長の短いリンカー及び糖鎖は、チップを透過した光のスペクトルにおける吸収ピークの波長シフトに大きな影響を与えないが、糖鎖に特異的なウイルスが結合すると、ウイルスの濃度が1fg/mLのような極めて低い濃度でも、チップを透過した光のスペクトルにおける吸収ピークが大きく波長シフトすることが示された。
(その他の実施の形態)
上記のように本発明を実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす記述及び図面はこの発明を限定するものであると理解するべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかになるはずである。例えば、実施の形態では、ナノインプリントリソグラフィー法を用いたチップの製造方法を説明したが、電子線リソグラフィー法を用いてチップを製造してもよい。このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を包含するということを理解すべきである。
10 チップ
11 基板
12 酸化膜
13 パターン構造
14 リンカー
15 アプタマー
20 光源
30 検出器
40 筐体
41 検査液セル
42 導入ガイド
50 バンドパスフィルタ
60 廃液タンク
61 バルブ
70 表示部
100 モールド
110 反転レプリカモールド
119 蒸着膜
120 樹脂層
121 蒸着膜
122 堆積膜
300 処理装置

Claims (18)

  1. 基板上に配置された、ウイルスと結合する糖鎖又はアプタマーを備えるチップと、
    前記チップに光を照射する光源と、
    前記光を照射されたチップ上における表面プラズモン共鳴による前記光の吸収を検出する検出器と、
    を備える、表面プラズモン共鳴測定装置。
  2. 前記チップ上における前記光の吸収スペクトルの変化を検出して、前記チップ上におけるウイルスの存在を検出する、請求項1に記載の表面プラズモン共鳴測定装置。
  3. 前記アプタマーが、デオキシリボ核酸、リボ核酸、及びペプチドからなる群から選択される一つである、請求項1又は2に記載の表面プラズモン共鳴測定装置。
  4. 前記糖鎖又は前記アプタマーが、リンカーを介して前記基板上に固定されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の表面プラズモン共鳴測定装置。
  5. 前記リンカーが備えるアルキル鎖の炭素数が1以上5以下である、請求項1から4のいずれか1項に記載の表面プラズモン共鳴測定装置。
  6. 前記チップが、前記基板上に設けられた酸化膜と、前記酸化膜上に設けられた、金からなるパターン構造と、を更に備える、請求項1から5のいずれか1項に記載の表面プラズモン共鳴測定装置。
  7. 前記パターン構造が、格子状に配置されたパターン構造である、請求項6に記載の表面プラズモン共鳴測定装置。
  8. 前記パターン構造が、格子状に配置されたドットパターン構造である、請求項6に記載の表面プラズモン共鳴測定装置。
  9. 前記パターン構造の表面、及び前記パターン構造の開口から露出する前記酸化膜の表面に、前記糖鎖又はアプタマーが配置されている、請求項6から8のいずれか1項に記載の表面プラズモン共鳴測定装置。
  10. 前記ウイルスを含み得る検査液が前記チップに接触するよう、前記検査液を貯蔵する検査液セルを更に備える、請求項1から9のいずれか1項に記載の表面プラズモン共鳴測定装置。
  11. 基板と、
    前記基板上に配置された、ウイルスと結合する糖鎖又はアプタマーと、
    を備える、表面プラズモン共鳴測定装置のチップ。
  12. 前記アプタマーが、デオキシリボ核酸、リボ核酸、及びペプチドからなる群から選択される一つである、請求項11に記載の表面プラズモン共鳴測定装置のチップ。
  13. 前記糖鎖又は前記アプタマーが、リンカーを介して前記基板上に固定されている、請求項11又は12に記載の表面プラズモン共鳴測定装置のチップ。
  14. 前記リンカーが備えるアルキル鎖の炭素数が1以上5以下である、請求項13に記載の表面プラズモン共鳴測定装置のチップ。
  15. 前記基板上に設けられた酸化膜と、前記酸化膜上に設けられた、金からなるパターン構造と、を更に備える、請求項11から14のいずれか1項に記載の表面プラズモン共鳴測定装置のチップ。
  16. 前記パターン構造が、格子状に配置されたパターン構造である、請求項15に記載の表面プラズモン共鳴測定装置のチップ。
  17. 前記パターン構造が、格子状に配置されたドットパターン構造である、請求項15に記載の表面プラズモン共鳴測定装置のチップ。
  18. 前記パターン構造の表面、及び前記パターン構造の開口から露出する前記酸化膜の表面に、前記糖鎖又はアプタマーが配置されている、請求項15から17のいずれか1項に記載の表面プラズモン共鳴測定装置のチップ。
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