JP2005129822A - 研磨液及び研磨方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】銅防食剤と銅酸化物が反応して生成した錯体が水溶性であり、研磨後に清浄な被研磨面が得られ、さらに研磨後のディッシングと研磨傷を抑制できる研磨液、及びそれを用いて化学機械研磨する方法を提供する。
【解決手段】硫酸銅(II)を添加した際に生成される銅錯体の研磨液への溶解度が液温25℃で1重量%以上であることと、水を含むこととを特徴とする研磨液であり、好ましくは銅防食剤を含有する研磨液。
【選択図】なし

Description

本発明は、半導体デバイスの配線形成工程等における研磨に使用される研磨液及び研磨方法に関する。
近年、半導体集積回路(以下、LSIと記す。)の高集積化、高性能化に伴って新たな微細加工技術が開発されている。化学機械研磨(以下、CMPと記す。)法もその一つであり、LSI製造工程、特に多層配線形成工程における層間絶縁膜の平坦化、金属プラグ形成、埋め込み配線形成において頻繁に利用される技術である。この技術は、例えば米国特許第4944836号公報に開示されている。
また、最近はLSIを高性能化するために、配線材料となる導電性物質として銅および銅合金の利用が試みられている。しかし、銅や銅合金は従来のアルミニウム合金配線の形成で頻繁に用いられたドライエッチング法による微細加工が困難である。そこで、あらかじめ溝を形成してある絶縁膜上に銅または銅合金の薄膜を堆積して埋め込み、溝部以外の前記薄膜をCMPにより除去して埋め込み配線を形成する、いわゆるダマシン法が主に採用されている。この技術は、例えば特開平2−278822号に開示されている。
銅または銅合金等の配線部用金属を研磨する金属CMPの一般的な方法は、円形の研磨定盤(プラテン)上に研磨布(パッド)を貼り付け、研磨布表面を金属用研磨液で浸しながら、基板の金属膜を形成した面を研磨布表面に押し付けて、研磨布の裏面から所定の圧力(以下、研磨圧力と記す。)を金属膜に加えた状態で研磨定盤を回し、研磨液と金属膜の凸部との相対的機械的摩擦によって凸部の金属膜を除去するものである。
CMPに用いられる金属用研磨液は、一般には酸化剤及び研磨粒子からなっており、必要に応じてさらに酸化金属溶解剤、保護膜形成剤が添加される。まず酸化剤によって金属膜表面を酸化し、その酸化層を研磨粒子によって削り取るのが基本的なメカニズムと考えられている。凹部(溝部)の金属表面の酸化層は研磨パッドにあまり触れず、研磨粒子による削り取りの効果が及ばないので、CMPの進行とともに凸部の金属層が除去されて基板表面は平坦化される。この詳細についてはジャーナル・オブ・エレクトロケミカルソサエティ誌の第138巻11号(1991年発行)の3460〜3464頁に開示されている。
CMPによる研磨速度を高める方法として酸化金属溶解剤を添加することが有効とされている。研磨粒子によって削り取られた金属酸化物を研磨液に溶解(以下、エッチングと記す。)させてしまうと研磨粒子による削り取りの効果が増すためであると解釈される。酸化金属溶解剤の添加によりCMPによる研磨速度は向上するが、一方、凹部の金属膜表面の金属酸化物層もエッチングされて金属膜表面が露出すると、酸化剤によって金属膜表面がさらに酸化され、これが繰り返されると凹部の金属膜のエッチングが進行してしまう。このため研磨後に埋め込まれた金属配線の表面中央部分が皿のように窪む現象(以下、ディッシングと記す。)が発生し、平坦化効果が損なわれる。
これを防ぐために、さらに銅防食剤が添加される。銅防食剤は銅薄膜表面の金属酸化物層上に保護膜を形成し、銅酸化物層の研磨液中への溶解を防止するものである。この保護膜は研磨粒子により容易に削り取ることが可能で、CMPによる研磨速度を低下させないことが望まれる。
銅または銅合金のディッシングや研磨中の腐食を抑制し、信頼性の高いLSI配線を形成するために、グリシン等のアミノ酢酸又はアミド硫酸からなる酸化金属溶解剤及び保護膜形成剤としてベンゾトリアゾールを含有するCMP用研磨液を用いる方法が提唱されている。この技術は、例えば特許文献1に記載されている。
一方、銅或いは銅合金等の配線部用金属の下層には、層間絶縁膜中への銅拡散防止や密着性向上のためのバリア導体層(以下、バリア層という。)として、例えばタンタル、タンタル合金、窒化タンタル等のタンタル化合物等の導体層が形成される。したがって、銅或いは銅合金を埋め込む配線部以外では、露出したバリア層をCMPにより取り除く必要がある。しかし、これらのバリア層の導体は、銅或いは銅合金に比べ硬度が高いために、銅或いは銅合金用の研磨材料を組み合わせても十分な研磨速度が得られず、かつ平坦性が悪くなる場合が多い。そこで、配線部用金属を研磨する第1の研磨工程と、バリア層を研磨する第2の研磨工程からなる2段研磨方法が検討されている。
バリア層を研磨する第2の研磨工程では平坦性を向上させるために層間絶縁膜も研磨する必要がある。層間絶縁膜は酸化ケイ素膜が主流であったが、近年LSIを高性能化するため酸化ケイ素膜よりも低誘電率であるケイ素系材料または有機ポリマの利用が試みられている。
特開平8−83780号公報
銅防食剤が銅薄膜表面の銅酸化物層上に保護膜を形成する場合、保護膜には2種類の形態が考えられる。一つは銅薄膜表面の酸化層上に銅防食剤が吸着している形態。もう一つは銅酸化物と銅防食剤が反応して生成した錯体層が保護膜となっている形態である。後者の保護膜は前者に較べて厚みがあるので、銅酸化物層の研磨液中への溶解を防止する能力が高い。しかし、この錯体層は水に対する溶解度が低いために、研磨粒子によって削り取られた後、基板や研磨布に再付着して異物の原因になる場合がある。現行では基板を洗浄する際に用いる洗浄液の化学成分を最適化することで異物を取り除いているが、銅防食剤の種類によってそれぞれ最適な洗浄液を選ぶ必要があり煩雑である。
本発明は、上記問題点に鑑み、銅防食剤と銅酸化物が反応して生成した錯体が水溶性であり、研磨後に清浄な基板表面が得られる研磨液を提供するものである。銅防食剤と銅酸化物が反応して生成した錯体が水溶性である研磨液の確認方法としては、研磨液に硫酸銅(II)を添加した際に生成される銅錯体の研磨液への溶解度が高いことを確認することが好ましい。そして、この研磨液によれば基板上金属配線凹部の銅酸化物層のエッチングを抑制することができるため、ディッシングが抑制される。また、研磨時に研磨粒子以外の固形物が生成しないので研磨傷を抑制できる。また、本発明は、微細化、薄膜化、寸法精度に優れ、信頼性が高く、低コストの半導体デバイス等の製造における研磨方法を提供するものである。
本発明の研磨液は、硫酸銅(II)を添加した際に生成される銅錯体の研磨液への溶解度が液温25℃で1重量%以上であることと、水を含むこととを特徴とする。
さらに、本発明は、表面が凹部および凸部からなる層間絶縁膜と、前記層間絶縁膜を表面に沿って被覆するバリア層と、前記凹部を充填してバリア層を被覆する導電性物質層とを有する基体の、導電性物質層を研磨して前記凸部のバリア層を露出させる第1の研磨工程と、バリア層と層間絶縁膜および凹部の導電性物質層とを研磨して平坦化させる第2の研磨工程とを含み、前記第1の研磨工程及び第2の研磨工程の少なくともいずれかで上記本発明の研磨液を供給しながら化学機械研磨する研磨方法に関する。
本発明の研磨液により、研磨後に清浄な基体表面が得られる。さらに研磨後のディッシングと研磨傷を抑制できる。この研磨液を用いて化学機械研磨を行う本発明の研磨方法は、生産性が高く、微細化、薄膜化、寸法精度に優れ、信頼性の高い半導体デバイス及び他の電子機器の製造に好適である。
本発明の研磨液は、硫酸銅(II)を添加した際に生成される銅錯体の研磨液への溶解度が液温25℃で1重量%以上であることと、水を含むこととを特徴とし、好ましくは、銅防食剤、研磨粒子、酸化金属溶解剤及び金属の酸化剤の少なくともいずれかを含有する。
本発明における銅防食剤は、その銅錯体の研磨液への溶解度が液温25℃で1重量%以上であればよい。溶解度が1重量%未満である場合、研磨後基体上に銅錯体が異物として残り、清浄性が悪くなる傾向がある。1,2,4−トリアゾール、1,2,3−トリアゾール、イミダゾール、2−メチル−4−メチルイミダゾール、1−ヒドロキシ−ベンゾトリアゾール、ジフェニルグアニジンが好ましく、1,2,4−トリアゾール、1,2,3−トリアゾール、イミダゾール、2−メチル−4−メチルイミダゾールから選ばれるのがより好ましく、特に銅酸化物層のエッチングを抑制する効果が高い1,2,4−トリアゾールが好ましい。これらは1種類単独で、もしくは2種類以上を組み合わせて使用される。
本発明における硫酸銅(II)の添加量は研磨液100gに対して0〜10(ただし0を除く。)gとすることが好ましく、上記防食剤と銅(II)イオンがモル濃度2対1で錯体を形成するとして、研磨液中銅防食剤のモル濃度の半分を添加するのが特に好ましい。
本発明における研磨粒子としては、シリカ、アルミナ、セリア、チタニア、ジルコニア、ゲルマニア、炭化ケイ素等の無機物研磨粒子、ポリスチレン、ポリアクリル、ポリ塩化ビニル等の有機物研磨粒子のいずれでもよい。シリカ、アルミナ、セリア、チタニア、ジルコニア、ゲルマニアが好ましく、特に、研磨液中での分散安定性が良く、CMPにより発生する研磨傷(スクラッチ)の発生数の少ない、平均粒径が70nm以下のコロイダルシリカ、コロイダルアルミナが好ましく、平均粒径が50nm以下のコロイダルシリカ、コロイダルアルミナがより好ましい。また、一次粒子が平均2粒子未満凝集している粒子が好ましく、一次粒子が平均1.2粒子未満凝集している粒子がより好ましい。さらに、平均粒度分布の標準偏差が10nm以下であることが好ましく、平均粒度分布の標準偏差が5nm以下であるのがより好ましい。これらは1種類単独で、もしくは2種類以上を組み合わせて使用される。
本発明における酸化金属溶解剤は、特に制限はないが、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、2−メチル酪酸、n−ヘキサン酸、3,3−ジメチル酪酸、2−エチル酪酸、4−メチルペンタン酸、n−ヘプタン酸、2−メチルヘキサン酸、n−オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、安息香酸、グリコール酸、サリチル酸、グリセリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等の有機酸、これらの有機酸エステル及びこれら有機酸のアンモニウム塩等が挙げられる。また塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸、これら無機酸のアンモニウム塩類、例えば過硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、クロム酸等が挙げられる。これらの中では、実用的なCMP速度を維持しつつ、エッチング速度を効果的に抑制できるという点でギ酸、マロン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸が、また、高CMP速度の点で硫酸が、金属を主成分とする導電性物質に対して好適である。これらは1種類単独で、もしくは2種類以上混合して用いることができる。
本発明の研磨液に金属の酸化剤を添加しても良い。金属の酸化剤としては、過酸化水素、硝酸、過ヨウ素酸カリウム、次亜塩素酸、オゾン水等が挙げられ、その中でも過酸化水素が特に好ましい。これらは1種類単独で、もしくは2種類以上混合して用いることができる。研磨適用対象の基体が集積回路用素子を含むシリコン基板である場合、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ハロゲン化物などによる汚染は望ましくないので、不揮発成分を含まない酸化剤が望ましい。但し、オゾン水は組成の時間変化が激しいので過酸化水素が最も適している。但し、基体が半導体素子を含まないガラス基板などである場合は不揮発成分を含む酸化剤であっても差し支えない。
本発明の研磨液における銅防食剤の配合量は、溶解性及び防食性との関係から、研磨液100gに対して0〜10gとすることが好ましく、0.001〜5gとすることがより好ましく、0.002〜2gとすることが特に好ましい。この配合量が10gを超えると研磨速度が低くなる傾向がある。
研磨粒子を配合する場合、本発明における研磨粒子の配合量は、研磨液100gに対して、0.01〜50gとすることが好ましく、0.02〜20gとすることがより好ましく、0.05〜10gとすることが特に好ましい。配合量が0.01g未満では研磨速度が低く、50gを超えると研磨傷が多く発生する傾向にある。
酸化金属溶解剤を配合する場合、本発明における酸化金属溶解剤の配合量は、研磨液100gに対して、0.001〜20gとすることが好ましく、0.002〜10gとすることがより好ましく、0.005〜5gとすることが特に好ましい。配合量が0.001g未満では、研磨速度が低く、20gを超えるとエッチングの抑制が困難となり研磨面に荒れが生じる傾向がある。
金属の酸化剤を配合する場合、本発明における金属の酸化剤の配合量は、研磨液100gに対して、0.01〜50gとすることが好ましく、0.02〜20gとすることがより好ましく、0.05〜10gとすることが特に好ましい。配合量が0.01g未満では、金属の酸化が不十分でCMP速度が低く、50gを超えると、研磨面に荒れが生じる傾向がある。なお、水の配合量は残部でよく、含有されていれば特に制限はない。
また本発明の研磨液には、上述した各種成分のほかに、必要に応じて、水と混合可能な溶剤、水溶性ポリマ、着色剤等を含有させてもよい。
以上のような本発明の研磨液を、半導体デバイスにおける配線層の形成に適用できる。例えば導電性物質層と、バリア層と、層間絶縁膜との化学機械研磨(CMP)に使用することができる。本発明の研磨方法は、表面が凹部および凸部からなる層間絶縁膜と、前記層間絶縁膜を表面に沿って被覆するバリア層と、前記凹部を充填してバリア層を被覆する導電性物質層とを有する基体の、導電性物質層を研磨して前記凸部のバリア層を露出させる第1の研磨工程と、バリア層と層間絶縁膜および凹部の導電性物質層とを研磨して平坦化させる第2の研磨工程とを含む。そして、前記第1の研磨工程及び第2の研磨工程の少なくともいずれかで前記本発明の研磨液を供給しながら化学機械研磨する。
第1及び第2の研磨工程の両方で本発明の研磨液を供給しながら化学機械研磨するのが好ましい。この場合、第1の研磨工程と第2の研磨工程とで、研磨液の組成を変えても良い。
ここで、化学機械研磨には、被研磨面を有する基体を研磨定盤の研磨布(パッド)上に押圧した状態で研磨液を供給しながら研磨定盤と基体とを相対的に動かすことによって被研磨面を研磨する方法が挙げられる。平坦化させるには、他に、金属製または樹脂製のブラシを接触させる方法、研磨液を所定の圧力で吹きつける方法が挙げられる。
本発明の研磨液を用いて、同一条件下のCMPにおいて導電性物質層/バリア層は第1の研磨工程で研磨速度比1/0.1〜1で研磨されるのが好ましい。第2の研磨工程では、同様に導電性物質層/バリア層/層間絶縁膜は研磨速度比0.1〜2/1/0.1〜2で研磨されるのが好ましい。
導電性物質としては、銅、銅合金、銅の酸化物、銅合金の酸化物、タングステン、タングステン合金、銀、金等の、金属が主成分の物質が挙げられ、銅、銅合金、銅の酸化物、銅合金の酸化物等の銅が主成分である導電性物質が好ましい。導電性物質層として公知のスパッタ法、メッキ法により前記物質を成膜した膜を使用できる。
バリア層は絶縁膜中への導電性物質拡散防止、および絶縁膜と導電性物質との密着性向上のために形成される。バリア層に用いられる導体は、タングステン、窒化タングステン、タングステン合金、その他のタングステン化合物、チタン、窒化チタン、チタン合金、その他のチタン化合物、タンタル、窒化タンタル、タンタル合金、その他のタンタル化合物から選ばれる1種以上を含むのが好ましい。バリア層は、1種からなる単層であっても、2種以上の積層膜であっても良い。
層間絶縁膜としては、Low−kのシリコン系被膜や有機ポリマ膜が挙げられる。シリコン系被膜としては、フルオロシリケートグラス、オルガノシリケートグラス、シリコンオキシナイトライド、水素化シルセスキオキサン等のシリカ系被膜が挙げられる。また、有機ポリマ膜としては、全芳香族系低誘電率層間絶縁膜が挙げられる。特に、オルガノシリケートグラスが好ましい。これらの膜は、CVD法、スピンコート法、ディップコート法、またはスプレー法によって成膜される。
研磨する装置としては、例えば研磨布により研磨する場合、研磨される基体を保持できるホルダと、回転数が変更可能なモータ等に接続し、研磨布を貼り付けられる定盤とを有する一般的な研磨装置が使用できる。研磨布としては、一般的な不織布、発泡ポリウレタン、多孔質フッ素樹脂などが使用でき、特に制限がない。研磨条件には制限はないが、定盤の回転速度は基体が飛び出さないように200rpm以下の低回転が好ましい。被研磨面を有する基体の研磨布への押し付け圧力(研磨圧力)が1〜100kPaであることが好ましく、CMP速度の被研磨面内均一性及びパターンの平坦性を満足するためには、5〜50kPaであることがより好ましい。研磨している間、研磨布には研磨液をポンプ等で連続的に供給する。この供給量に制限はないが、研磨布の表面が常に研磨液で覆われていることが好ましい。研磨終了後の基体は、流水中でよく洗浄後、スピンドライ等を用いて基体上に付着した水滴を払い落としてから乾燥させることが好ましい。研磨布の表面状態を常に同一にして化学機械研磨を行うために、研磨の前に研磨布のコンディショニング工程を入れるのが好ましい。例えば、ダイヤモンド粒子のついたドレッサを用いて少なくとも水を含む液で研磨布のコンディショニングを行う。続いて本発明による化学機械研磨工程を実施し、さらに、基体洗浄工程を加えるのが好ましい。
以下、本発明の研磨方法の実施態様の一例を、半導体デバイスにおける配線層の形成に沿って説明する。
まず、シリコンの基板上に二酸化ケイ素、Low−k等の層間絶縁膜を積層する。次いで、レジスト層形成、エッチング等の公知の手段によって、層間絶縁膜表面に所定パターンの凹部(基板露出部)を形成して凸部と凹部とを有する層間絶縁膜とする。この層間絶縁膜上に、表面の凸凹に沿って層間絶縁膜を被覆するタンタル等のバリア層を蒸着、スパッタ、CVD等により成膜する。さらに、前記凹部を充填するようにバリア層を被覆する銅等の金属導電性物質層を蒸着、めっきまたはCVD等により形成する。層間絶縁膜、バリア層および導電性物質の形成厚さは、それぞれ0.01〜2.0μm、1〜100nm、0.01〜2.5μm程度が好ましい。
次に、この半導体基板の表面の導電性物質層を、例えば前記導電性物質/バリア層の研磨速度比が適切に大きい本発明の研磨液を用いて、CMPにより研磨する(第1の研磨工程)。これにより、基板上の凸部のバリア層が表面に露出し、凹部に前記導電性物質膜が残された所望の導体パターンが得られる。この得られたパターン面を第2の研磨工程用の被研磨面として、研磨液を用いて研磨する。
第2の研磨工程では、例えば導電性物質、バリア層および層間絶縁膜を研磨できる本発明の研磨液を使用して、化学機械研磨により、まず、前記露出しているバリア層および凹部の導電性物質を研磨する。凸部のバリア層の下の層間絶縁膜が露出した後は層間絶縁膜も研磨してゆき、凹部に配線層となる前記導電性物質層が残され、凸部と凹部との境界にバリア層の断面が露出した平坦性の高い所望のパターンが得られた時点で研磨を終了する。
このようにして形成された金属配線の上に、さらに、層間絶縁膜および第2層目の所定パターンを形成し、その上に再度バリア層および導電性物質層を形成後、同様に研磨して半導体基板全面に渡って平滑な面とする。この工程を所定数繰り返すことにより、所望の配線層数を有する半導体デバイスを製造することができる。
本発明の研磨液は、上記のような半導体基板に形成された金属膜の研磨だけでなく、磁気ヘッド等の基板を研磨するためにも使用することができる。
以下、実施例により本発明を説明する。本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
(研磨液作製方法)
研磨液(a): 1,2,4−トリアゾールを10g、平均粒径が30nmのコロイダルシリカを25g、リンゴ酸を25g、過酸化水素30%水溶液を1000g、純水を3940g混合して5000gの研磨液を調製した。
研磨液(b): 1,2,4−トリアゾールを10g、平均粒径が70nmのコロイダルシリカを150g、リンゴ酸を25g、過酸化水素30%水溶液を50g、純水を4765g混合して5000gの研磨液を調製した。
(溶解度の測定)
研磨液(a)1000gに硫酸銅(II)5水和物を3.6g加え、よく撹拌する。この液に沈殿物はみられなかった。ここで、生成される銅と1,2,4−トリアゾールとの錯体は2.9gと推定される。つぎにこの液を減圧乾燥機で濃縮し、200gにして、液温を25℃にしたところ、やはり沈殿物はみられなかった。よって研磨液(a)において、硫酸銅を添加した際に生成される銅錯体の研磨液への溶解度が液温25℃で1.45重量%以上であることがわかった。
同様に研磨液(b)1000gに硫酸銅(II)5水和物を3.6g加え、上記の操作を行ったところ、やはり沈殿物はみられなかった。よって研磨液(b)において、硫酸銅を添加した際に生成される銅錯体の研磨液への溶解度が液温25℃で1.45重量%以上であることがわかった。
(基板)
[パターン基板の作製] シリコン基板上に層間絶縁層として二酸化ケイ素(厚さ:500nm)をCVD法で成膜した。この層間絶縁層にフォトリソ法によって、配線金属部幅100μm、層間絶縁膜部幅100μmが交互に並ぶように、溝を深さ500nmで形成して表面に凹部(溝部分)と凸部(非溝部分)を作製した。さらにこの表面にそって、スパッタ法によってバリア層として厚さ20nmの窒化タンタル膜を形成した。前記窒化タンタル膜の上に、めっき法により前記溝を全て埋める様に導電性物質層として銅膜を1100nm形成した。
[エッチング測定用基板] シリコン基板上に銅が厚さ1500nmで製膜されているものを使用した。
(研磨条件:第1及び第2の研磨工程で共通)
研磨パッド:発泡ポリウレタン樹脂(ロデール社製型番:IC1000)
研磨圧力:14kPa
基板と研磨定盤との相対速度:70m/min
研磨液の供給量:200ml/min
(基板の研磨工程)
パターン基板を、上記で調製した研磨液(a)で、上記研磨条件で180秒間化学機械研磨した。これは第1の研磨工程に相当し、バリア層が露出した。さらに上記で調製した研磨液(b)で、90秒間化学機械研磨した。これは第2の研磨工程に相当し、約30秒で凸部の層間絶縁層は全て被研磨面に露出し、残りの約60秒は凸部ではこの層間絶縁膜を研磨した。
(基板の洗浄工程)
上記で研磨したパターン基板の被研磨面にスポンジブラシ(ポリビニルアルコール製)を押し付け、蒸留水を基板に供給しながら基板とスポンジブラシを回転させ、90秒間洗浄した。つぎにスポンジブラシを取り除き、基板の被研磨面に蒸留水を60秒間供給した。最後に基板を高速で回転させることで蒸留水を弾き飛ばして基板を乾燥し、以下のように評価した。
(評価項目)
(1) 基板上の異物:KLA Tencor社製異物検出装置SurfScan6220を用いて、上記研磨および洗浄したパターン基板上の直径1μm以上の大きさの異物を測定し、1平方cm当たりの平均個数で評価した。
(2) 平坦性(ディッシング量):パターン基板の、配線金属(銅)部幅100μm、層間絶縁膜部幅100μmが交互に並んだストライプ状パターン部の表面形状から、触針式段差計で層間絶縁膜部に対する配線金属部の膜減り量を求めた。
(3) 研磨傷:パターン基板から、研磨傷の量をKLA Tencor社製パターンウエハ欠陥検出装置2138を用いて測定し、1平方cm当たりの平均個数で評価した。
(4) 銅エッチング速度:上記エッチング測定用基板を、攪拌している液温25℃の研磨液へ60秒間浸漬した前後の平均銅膜厚差を電気抵抗値から換算して求めた。
(評価結果)
(1) 基板上の異物:0.3個であった。
(2) 平坦性(ディッシング量):平均して50nmであった。
(3) 研磨傷:0.2個であった。
(4) 銅エッチング速度:研磨液(a)は0.8nm/min、研磨液(b)は0.4nm/minであった。
(比較例)
(研磨液作製方法)
研磨液(c): 3−アミノ−1,2,4−トリアゾールを10g、平均粒径が30nmのコロイダルシリカを25g、リンゴ酸を25g、過酸化水素30%水溶液を1000g、純水を3940g混合して5000gの研磨液を調製した。
研磨液(d): 3−アミノ−1,2,4−トリアゾールを10g、平均粒径が70nmのコロイダルシリカを150g、リンゴ酸を25g、過酸化水素30%水溶液を50g、純水を4765g混合して5000gの研磨液を調製した。
(溶解度の測定)
研磨液(c)1000gに硫酸銅(II)5水和物を2.9g加え、よく撹拌した後、液温を25℃に保ち、静置すると緑色の沈殿物がみられた。ここで、生成される銅と3−アミノ−1,2,4−トリアゾールの錯体は2.8gと推定され、緑色の沈殿物は銅と3−アミノ−1,2,4−トリアゾールの錯体と考えられる。よって研磨液(c)において、硫酸銅を添加した際に生成される銅錯体の研磨液への溶解度が液温25℃で0.28重量%未満であることがわかった。
同様に研磨液(d)1000gに硫酸銅(II)5水和物を2.9g加え、上記の操作を行ったところ、やはり沈殿物がみられた。よって研磨液(d)において、硫酸銅を添加した際に生成される銅錯体の研磨液への溶解度が液温25℃で0.28重量%未満であることがわかった。
研磨液(a)の代わりに研磨液(c)を、研磨液(b)の代わりに研磨液(d)を用いて実施例と同様に評価を行った。基板、研磨条件、基板の研磨工程、基板の洗浄工程、評価項目は実施例と同一である。
(評価結果)
(1) 基板上の異物:6.7個であった。
(2) 平坦性(ディッシング量):平均して55nmであった。
(3) 研磨傷:0.4個であった。
(4) 銅エッチング速度:研磨液(c)は1.2nm/min、研磨液(d)は0.5nm/minであった。
比較例では、銅錯体の溶解性が低いため基板上の異物が多く、清浄性が低い。また、比較例ではディッシングがやや大きくなり、研磨傷の量が多い。一方、実施例では、銅錯体の溶解性が高いため、基板上の異物が少なく、清浄性が高い。また、実施例ではディッシングの値は小さく、研磨傷の量も少なく良好である。

Claims (12)

  1. 硫酸銅(II)を添加した際に生成される銅錯体の研磨液への溶解度が液温25℃で1重量%以上であって、水を含むことを特徴とする研磨液。
  2. 銅防食剤を含む請求項1記載の研磨液。
  3. 銅防食剤が、1,2,4−トリアゾール、1,2,3−トリアゾール、イミダゾール、2−メチル−4−メチルイミダゾールから選ばれる少なくとも1種である請求項2記載の研磨液。
  4. 研磨粒子を含む請求項1〜3のいずれか記載の研磨液。
  5. 研磨粒子が、シリカ、アルミナ、セリア、チタニア、ジルコニア、ゲルマニアから選ばれる少なくとも1種である請求項4記載の研磨液。
  6. 酸化金属溶解剤を含む請求項1〜5のいずれか記載の研磨液。
  7. 酸化金属溶解剤が、有機酸、有機酸エステル、有機酸のアンモニウム塩及び硫酸から選ばれる少なくとも1種である請求項6記載の研磨液。
  8. 金属の酸化剤を含む請求項1〜7のいずれか記載の研磨液。
  9. 金属の酸化剤が、過酸化水素、硝酸、過ヨウ素酸カリウム、次亜塩素酸及びオゾン水から選ばれる少なくとも1種である請求項8記載の研磨液。
  10. 表面が凹部および凸部からなる層間絶縁膜と、前記層間絶縁膜を表面に沿って被覆するバリア導体層と、前記凹部を充填してバリア導体層を被覆する導電性物質層とを有する基体の、導電性物質層を研磨して前記凸部のバリア導体層を露出させる第1の研磨工程と、バリア導体層と層間絶縁膜および凹部の導電性物質層とを研磨して平坦化させる第2の研磨工程とを含み、前記第1の研磨工程及び第2の研磨工程の少なくともいずれかで請求項1〜9のいずれか記載の研磨液を供給しながら化学機械研磨することを特徴とする研磨方法。
  11. 導電性物質が銅を主成分とする請求項10記載の研磨方法。
  12. バリア導体層が前記層間絶縁膜へ前記導電性物質が拡散するのを防ぐバリア層であって、タンタル、窒化タンタル、タンタル合金、その他のタンタル化合物、チタン、窒化チタン、チタン合金、その他のチタン化合物、タングステン、窒化タングステン、タングステン合金、その他のタングステン化合物から選ばれる少なくとも1種を含む請求項10あるいは11記載の研磨方法。
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