JP2004123931A - 研磨液及び研磨方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】研磨速度を十分上昇させ、金属表面の腐食とディッシングの発生を抑制し、信頼性の高い金属膜の埋め込みパターン形成を可能とする研磨液とそれを用いる研磨方法を提供する。
【解決手段】研磨液と24時間接触した被研磨面に、厚さ100nm以上の反応層が形成される研磨液であり、例えば、酸化剤、水、pH調整剤、及びイミダゾール骨格を有する化合物を含む研磨液。
【選択図】 図1
【解決手段】研磨液と24時間接触した被研磨面に、厚さ100nm以上の反応層が形成される研磨液であり、例えば、酸化剤、水、pH調整剤、及びイミダゾール骨格を有する化合物を含む研磨液。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体デバイスの配線工程に好適な研磨液及びそれを用いた研磨方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体集積回路(LSI)の高集積化、高性能化に伴って新たな微細加工技術が開発されている。化学機械研磨(以下、CMPという。)法もそのひとつであり、LSI製造工程、特に多層配線形成工程における層間絶縁膜の平坦化、金属プラグ形成、埋め込み配線形成において頻繁に利用される技術である。この技術は、例えば米国特許No.4944836号明細書に開示されている。
近年、LSIを高性能化するために、配線材料として銅合金の利用が試みられている。しかし、銅合金は従来のアルミニウム合金配線の形成で頻繁に用いられたドライエッチング法による微細加工が困難である。そこで、あらかじめ溝を形成してある絶縁膜上に銅合金薄膜を堆積して埋め込み、溝以外の銅合金薄膜をCMPにより除去して埋め込み配線を形成する、いわゆるダマシン法が主に採用されている。この技術は、例えば特開平2−278822号公報に開示されている。
【0003】
金属のCMPの一般的な方法は、円形の研磨定盤(プラテン)上に研磨パッドを貼り付け、研磨パッド表面を金属用の研磨液で浸し、基板の金属膜を形成した面を押し付けて、その裏面から所定の圧力(研磨圧力或いは研磨荷重)を加えた状態で研磨定盤を回し、研磨液と金属膜の凸部との機械的摩擦によって凸部の金属膜を除去するものである。
CMPに用いられる金属用研磨液は、一般には酸化剤及び固体砥粒からなっており必要に応じてさらに酸化金属溶解剤、金属防食剤等が添加される。まず、酸化によって金属膜表面を酸化し、その酸化層を固体砥粒によって削り取るのが基本的なメカニズムと考えられている。凹部の金属表面の酸化層は研磨パッドにあまり触れず、固体砥粒による削り取りの効果が及ばないので、CMPの進行とともに凸部の金属層が除去されて基板表面は平坦化される。この詳細についてはジャーナル・オブ・エレクトロケミカルソサエティ誌(Journal of Electrochemical Society)の第138巻11号(1991年発行)の3460〜3464頁に開示されている。
【0004】
CMPによる研磨速度を高める方法として研磨液のpHを低く設定し、酸化金属溶解剤を添加することが有効とされている。固体砥粒によって削り取られた金属酸化物の粒を研磨液に溶解させてしまうと固体砥粒による削り取り効果が増すためであると解釈できる。但し、凹部の金属膜表面の酸化層も溶解(エッチング)されて金属膜表面が露出すると、酸化剤によって金属膜表面がさらに酸化され、これが繰り返されると凹部の金属膜のエッチングが進行してしまい、平坦化効果が損なわれること(ディッシング)が懸念される。研磨速度及び平坦化特性を維持するためには、例えばエッチングが進行しない高めのpH領域の研磨液を用い、添加剤によって金属表面を改質し、研磨速度及び平坦化特性を得ることが望ましい。また、例えば、研磨生成物の研磨パッドへの付着抑制剤を含有する研磨用スラリーを用いる金属配線形成方法が提案されている(特許文献1参照。)このようにpHの制御と添加剤を加えることにより、CMPによる研磨速度が向上するとともに、CMPされる金属表面の損傷(ダメージ)等も低減される効果が得られる。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−189295号公報(第7〜8ページ)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
一方、配線の銅或いは銅合金等の下層には、層間絶縁膜中への銅の拡散防止のためにバリア層として、タンタル、窒化タンタル、タンタル合金またはその他のタンタル化合物、タングステン、窒化タングステン、タングステン合金またはその他のタングステン化合物等の導体層が形成される。従って、銅或いは銅合金を埋め込む配線部分以外では、露出したバリア層をCMPにより取り除く必要がある。
しかし、これらのバリア導体層は、銅或いは銅合金に比べ硬度が高いために、銅または銅合金用の研磨材料の組み合わせでは十分なCMP速度が得られず、バリア導体層をCMPにより取り除く間に銅又は銅合金等がエッチングされ、さらに表面に腐食やディッシングが発生し、配線厚さが低下するという問題が生じる。
【0007】
そこで、本発明者らは、エッチング速度を低く保ち、金属表面の腐食とディッシングの発生を抑制しつつ、研磨速度を十分上昇させるという特性を両立させるために、研磨対象である金属を研磨液に浸漬した際に金属が研磨液と反応して金属表面に形成される反応層に着目した。これにより、本発明は信頼性の高い金属膜の埋め込みパターン形成を可能とする研磨液を提供し、またそのような金属膜の埋め込みパターン形成を、生産性、作業性および歩留まり良く行うことのできる研磨方法を提供する。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(1)研磨液と24時間接触した被研磨面に厚さ100nm以上の反応層が形成されることを特徴とする研磨液に関する。
本発明は、(2)酸化剤、水、pH調整剤、及びイミダゾール骨格を有する化合物を含む前記(1)の研磨液に関する。
【0009】
また、本発明は、(3)イミダゾール骨格を有する化合物が、下記一般式(I)
【化2】
(式(I)中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立して水素原子、アミノ基、又はC1からC12のアルキル基を示す。)で表される化合物である前記(2)の研磨液に関する。
【0010】
また、本発明は(4)イミダゾール骨格を有する化合物が、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2−プロピルイミダゾール、2−イソブチルイミダゾール、2−ブチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、4−エチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール又は2−エチル−4―メチルイミダゾールである前記(2)または(3)の研磨液に関する。
【0011】
また、本発明は、(5)水溶性ポリマーを含む前記(1)〜(4)のいずれかの研磨液に関する。
また、本発明は、(6)水溶性ポリマーが、多糖類、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸エステル、ポリカルボン酸塩、及びビニル系ポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種である前記(5)の研磨液に関する。
【0012】
また、本発明は、(7)酸化剤が、過酸化水素、硝酸、過ヨウ素酸カリウム、次亜塩素酸、過硫酸塩及びオゾン水からなる群より選ばれる少なくとも1種である前記(2)〜(6)のいずれかの研磨液に関する。
また、本発明は、(8)pH調整剤が、有機酸、有機酸エステル、有機酸のアンモニウム塩及び硫酸からなる群より選ばれる少なくとも1種である前記(2)〜(7)のいずれかの研磨液に関する。
【0013】
また、本発明は、(9)さらに、砥粒を含む前記(1)〜(8)のいずれかの研磨液に関する。
また、本発明は、(10)研磨液のpHが5〜10である前記(1)〜(9)のいずれかの研磨液に関する。
【0014】
また、本発明は、(11)研磨される被研磨面が金属膜であり、該金属膜が、銅、銅合金、銅の酸化物、銅合金の酸化物、タンタル及びその化合物、チタン及びその化合物、タングステン及びその化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である前記(1)〜(10)のいずれかの研磨液に関する。
【0015】
また、本発明は、(12)研磨定盤の研磨布上に前記(1)〜(11)のいずれかの研磨液を供給しながら、基体の被研磨面を研磨布に押圧した状態で研磨布と基体とを相対的に動かして被研磨面を研磨する研磨方法に関する。
また、本発明は、(13)研磨定盤の研磨布上に前記(1)〜(11)のいずれかの研磨液を供給しながら、2種以上の金属膜の積層膜を連続して研磨する研磨方法に関する。
【0016】
また、本発明は、(14)金属膜の積層膜のうち、先に研磨する層が銅、銅合金、銅の酸化物、銅合金の酸化物から選ばれる少なくとも1種であり、
該層の次の層がタンタル及びその化合物、チタン及びその化合物、タングステン及びその化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である組み合わせである前記(13)の研磨方法に関する。
【0017】
また、本発明は、(15)表面が凹部および凸部からなる層間絶縁膜と、前記層間絶縁膜を表面に沿って被覆するバリア導体層と、前記凹部を充填してバリア導体層を被覆する金属層とを有する基板の金属層を研磨して前記凸部のバリア導体層を露出させる第1研磨工程と、該第1研磨工程後に、少なくともバリア導体層および凹部の金属層を研磨して凸部の層間絶縁膜を露出させる第2研磨工程とを含み、第1研磨工程および第2研磨工程の少なくとも一方の工程で前記(1)〜(11)のいずれかの研磨液を用いて研磨する研磨方法に関する。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、研磨液と24時間接触した被研磨面に反応層が形成され、該反応層の厚さが100nm以上である研磨液に関する。
本発明における、研磨液と接触した被研磨面に形成される反応層は、例えば、被研磨面約10mm角を有する基体を研磨液10ミリリットルに浸漬し、室温(約25℃)で24時間接触させて被研磨面と研磨液との反応により被研磨面上に形成される。
反応層は、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)による断面観察で、形成の確認や層厚みの測定をすることができる。層の厚みの測定に用いる機器としては、SEMの他に、TEM(透過型電子顕微鏡)、AFM(原子間力顕微鏡)、STM(走査型トンネル顕微鏡)等が挙げられ、SEMによるのが好ましい。なお、観察のための断面は、集束イオンビーム加工装置(FIB)により形成するのが好ましい。
【0019】
図1に、本発明の研磨液により被研磨面に反応層を形成した銅基体の一例のSEMによる断面写真を示す。図1における白い矢印の範囲が反応層である。図1中の反応層よりも上に見られる表面の不揃いな層は、SEM観察時に光って見えるもので実像ではない。従って反応層及びその厚さとは無関係である。
反応層の厚さは、100nm以上である必要があり、上限は1000nm以下が好ましい。また、200〜500nmがより好ましく、250〜350nmがさらに好ましい。反応層の厚さが100nm未満では十分な研磨速度が得られない。一方、厚さが1000nmを超えると研磨速度が高くなりすぎ、研磨時間の制御が困難になる傾向がある。反応層は、酸素原子(O)及び被研磨面の構成成分が主成分であることが好ましい。また、反応層の表面には研磨剤中の成分の錯体を含むことが好ましい。
【0020】
被研磨面とこのように反応する研磨液は、例えば、酸化剤、水、pH調整剤、及びイミダゾール骨格を有する化合物を含む組成により得ることができる。以下、イミダゾール骨格を有する化合物を含む研磨液について説明するが、本発明の研磨液はこの化合物を含む組成に限定されるものではない。
本発明における酸化剤としては、過酸化水素(H2O2)、硝酸、過ヨウ素酸カリウム、次亜塩素酸、過硫酸塩及びオゾン水等が挙げられ、その中でも過酸化水素が特に好ましい。これらは1種類単独で、もしくは2種類以上混合して用いることができる。適用対象の基体が集積回路用素子を含むシリコン基板である場合、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ハロゲン化物などによる汚染は望ましくないので、不揮発成分を含まない酸化剤が望ましい。但し、オゾン水は組成の時間変化が激しいので過酸化水素が最も適している。但し、基体が半導体素子を含まないガラス基板などである場合は不揮発成分を含む酸化剤であっても差し支えない。
【0021】
酸化剤の配合量は、研磨液の総量に対して、0.1〜50重量%とすることが好ましく、0.2〜25重量%とすることが好ましく、0.3〜15重量%とすることが特に好ましい。配合量が、0.1重量%未満では、金属の酸化が不十分でCMP速度が低くなる傾向があり、50重量%を超えると、被研磨面に荒れが生じる傾向がある。
【0022】
本発明におけるpH調整剤は、水溶性のものであれば特に制限はなく、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、2−メチル酪酸、n−ヘキサン酸、3,3−ジメチル酪酸、2−エチル酪酸、4−メチルペンタン酸、n−ヘプタン酸、2−メチルヘキサン酸、n−オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、安息香酸、グリコール酸、サリチル酸、グリセリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等の有機酸、これらの有機酸エステル及びこれら有機酸のアンモニウム塩等が例示できる。また塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸、これら無機酸のアンモニウム塩類、例えば過硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム等、クロム酸等が挙げられる。これらの中で特に、効果的に研磨できるという点でギ酸、マロン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸の有機酸、有機酸エステル、有機酸のアンモニウム塩及び硫酸が金属層のCMPに対して好適である。これらpH調整剤は1種類単独で、もしくは2種類以上混合して用いることができる。
本発明におけるpH調整剤の配合量は、研磨液の総量に対して0.001〜10重量%とすることが好ましく、0.01〜8重量%とすることがより好ましく、0.02〜5重量%とすることが特に好ましい。この配合量が0.001重量%未満になると研磨速度が極端に減少する傾向にあり、10重量%を超えると、研磨速度が飽和する傾向がある。
【0023】
本発明におけるイミダゾール骨格を有する化合物は、特に制限はなく、前記一般式(I)で表される化合物を挙げることができる。式(I)中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立して水素原子、アミノ基、又はC1からC12のアルキル基を示す。
イミダゾール骨格を有する化合物としては、具体的には、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2−プロピルイミダゾール、2−イソブチルイミダゾール、2−ブチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、4−エチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール又は2−エチル−4−メチルイミダゾール等を例示することができる。これらは1種類単独で、もしくは2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0024】
本発明におけるイミダゾール骨格を有する化合物の配合量は、研磨液の総量に対して0.001〜10重量%とすることが好ましく、0.01〜8重量%とすることがより好ましく、0.02〜5重量%とすることが特に好ましい。この配合量が0.001重量%未満では、研磨速度が低くなる傾向があり、10重量%を超えると金属のエッチング量が増大する傾向がある。
【0025】
本発明の研磨液は水溶性ポリマーを含むことができる。水溶性ポリマーとしては、特に制限はなく、例えばアルギン酸、ペクチン酸、カルボキシメチルセルロ−ス、寒天、カードラン及びプルラン等の多糖類;ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ポリリシン、ポリリンゴ酸、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸アンモニウム塩、ポリメタクリル酸ナトリウム塩、ポリアミド酸、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸、ポリフマル酸、ポリ(p−スチレンカルボン酸)、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、アミノポリアクリルアミド、ポリアクリル酸アンモニウム塩、ポリアクリル酸ナトリウム塩、ポリアミド酸、ポリアミド酸アンモニウム塩、ポリアミド酸ナトリウム塩及びポリグリオキシル酸等のポリカルボン酸、ポリカルボン酸エステル及びポリカルボン酸塩;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン及びポリアクロレイン等のビニル系ポリマー等が挙げられる。但し、適用する基体が半導体集積回路用シリコン基板などの場合はアルカリ金属、アルカリ土類金属、ハロゲン化物等による汚染は望ましくないため、酸もしくはそのアンモニウム塩が望ましい。基体がガラス基板等である場合はその限りではない。その中でもペクチン酸、寒天、ポリリンゴ酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸アンモニウム塩、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドン、それらのエステル及びそれらのアンモニウム塩が好ましい。
【0026】
水溶性ポリマーを含む場合の配合量は、研磨液の総量に対して10重量%以下とすることが好ましく、5重量%以下とすることがより好ましく、1重量%以下とすることが特に好ましい。この配合量が10重量%を超えると研磨速度が低下する傾向がある。
水溶性ポリマーの重量平均分子量は500以上とすることが好ましく、1500以上とすることがより好ましく5000以上とすることが特に好ましい。重量平均分子量の上限は特に規定するものではないが、溶解性の観点から500万以下である。重量平均分子量が500未満では高い研磨速度が発現しない傾向にある。本発明では、重量平均分子量が500以上である少なくとも1種の水溶性ポリマーを用いることが好ましい。
【0027】
本発明の研磨液では砥粒を添加することもできる。砥粒としては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、セリア、チタニア、ゲルマニア、炭化珪素等の無機物砥粒、ポリスチレン、ポリアクリル、ポリ塩化ビニル等の有機物砥粒を例示することができるが、研磨液中での分散安定性が良く、CMPにより発生する研磨傷(スクラッチ)の発生数の少ない、平均粒径が100nm以下のコロイダルシリカ、コロイダルアルミナが好ましい。
砥粒を添加する場合の配合量は全重量に対して10重量%以下であることが好ましく、5重量%以下であることがより好ましい。この配合量が10重量%を超えるとCMPによる研磨速度は飽和し、それ以上加えても研磨速度の増加は見られない。
【0028】
本発明の研磨液には、上述した材料のほかにアニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤、ビクトリアピュアブルー等の染料、フタロシアニングリーン等の顔料等の着色剤等を含有させてもよい。
【0029】
本発明における研磨液のpHはCMPによる研磨速度が大きく、エッチング速度を効果的に抑制できるという点で5〜10であるのが好ましく、特にpH6〜9の範囲が好ましい。pHが5より低くなると金属のエッチング量が増大する傾向にあり、pHが10を超えると、研磨速度が極端に減少する傾向がある。pHは酸の添加量により調整することができる。またアンモニア、水酸化ナトリウム、テトラメチルアンモニウムハイドライド等のアルカリ成分の添加によっても調整可能である。
【0030】
本発明の研磨液を適用して研磨されるものには金属膜が挙げられ、該金属膜としては、銅、銅合金、銅の酸化物、銅合金の酸化物(以下、銅及びその化合物という。)、タンタル、窒化タンタル、タンタル合金、その他のタンタル化合物(以下、タンタル及びその化合物という。)、チタン、窒化チタン、チタン合金、その他のチタン化合物(以下、チタン及びその化合物という。)、タングステン、窒化タングステン、タングステン合金、その他のタングステン化合物(以下、タングステン及びその化合物という。)等を例示することができ、公知のスパッタ法、メッキ法により成膜できる。これらは1種または2種以上を組み合わせて研磨される。
【0031】
金属膜は、二種以上の上記金属を組み合わせた積層膜であってもよい。本発明を適用する積層膜としては、研磨される金属膜の積層膜のうち、先に研磨される層が前記銅及びその化合物から選ばれる少なくとも一種であり、該層の次の層が前記タンタル及びその化合物、チタン及びその化合物、タングステン及びその化合物から選ばれる少なくとも一種である組み合わせが挙げられる。
本発明の研磨液を用いることにより上記の二種以上の金属膜の積層膜を連続して研磨することもできる。
【0032】
本発明の第一の研磨方法は、研磨定盤の研磨布上に前記本発明の研磨液を供給しながら、基体の被研磨面を研磨布に押圧した状態で研磨布と基体とを相対的に動かして被研磨面を研磨することを特徴とする研磨方法である。
研磨する装置としては、例えば、研磨される基体を保持するホルダーと、研磨パッド(研磨布)を貼り付けてあり、回転数が変更可能なモータ等を取り付けてある研磨定盤とを有する一般的な研磨装置が使用できる。研磨布としては、一般的な不織布、発泡ポリウレタン、多孔質フッ素樹脂などが使用でき、特に制限がない。研磨条件には制限はないが、定盤の回転速度は基体が飛び出さないように200rpm以下の低回転が好ましい。被研磨面を有する基体の研磨布への押し付け圧力が1〜100kPaであることが好ましく、CMP速度の被研磨面内均一性及びパターンの平坦性を満足するためには、5〜50kPaであることがより好ましい。研磨している間、研磨布には研磨液をポンプ等で連続的に供給する。この供給量に制限はないが、研磨布の表面が常に研磨液で覆われていることが好ましい。研磨終了後の基体は、流水中でよく洗浄後、スピンドライ等を用いて基体上に付着した水滴を払い落としてから乾燥させることが好ましい。
【0033】
研磨布と基体とを相対的に動かすには、研磨定盤を回転させる他に、ホルダーを回転や揺動させて研磨しても良い。また、研磨定盤を遊星回転させる研磨方法、ベルト状の研磨パッドを長尺方向の一方向に直線状に動かす研磨方法等が挙げられる。なお、ホルダーは固定、回転、揺動のいずれの状態でも良い。これらの研磨方法は、研磨パッドと基体とを相対的に動かすのであれば、被研磨面や研磨装置により適宜選択できる。
【0034】
また、本発明の第二の研磨方法は、研磨定盤の研磨布上に本発明の研磨液を供給しながら、二種以上の金属膜の積層膜を連続して研磨するものである。例えば、金属膜の積層膜のうち、先に研磨される層が、前記銅及びその化合物から選ばれる少なくとも一種であり、該層と積層している層すなわち次の層が、前記タンタル及びその化合物、チタン及びその化合物、タングステン及びその化合物から選ばれる少なくとも一種である積層膜の組み合わせが挙げられる。
【0035】
本発明は、例えば半導体デバイスの配線層の形成における、金属配線用の導電性物質層と、層間絶縁膜へ前記導電性物質が拡散するのを防ぐバリア導体層(以下、バリア層という。)と、層間絶縁膜との化学機械研磨(CMP)に適用することができる。前記先に研磨される層が導電性物質層、該層の次の層がバリア層に相当する。
すなわち本発明の第三の研磨方法は、表面が凹部および凸部からなる層間絶縁膜と、前記層間絶縁膜を表面に沿って被覆するバリア層と、前記凹部を充填してバリア層を被覆する金属層とを有する基板の金属層を研磨して前記凸部のバリア層を露出させる第1研磨工程と、該第1研磨工程後に、少なくともバリア層および凹部の金属層を研磨して凸部の層間絶縁膜を露出させる第2研磨工程とを含み、第1研磨工程および第2研磨工程の少なくとも一方の工程で本発明の研磨液を用いて研磨することを特徴とする。
【0036】
以下、本発明の研磨方法の実施態様を、半導体デバイスにおける配線層の形成に沿って説明する。
まず、シリコンの基板上に二酸化シリコン等の層間絶縁膜を積層する。次いで、レジスト層形成、エッチング等の公知の手段によって、層間絶縁膜表面に所定パターンの凹部(基板露出部)を形成して凸部と凹部とからなる層間絶縁膜とする。この層間絶縁膜上に、表面の凸凹に沿って層間絶縁膜を被覆するバリア層として、タンタル等を蒸着またはCVD等により成膜する。さらに、前記凹部を充填するようにバリア層を被覆する導電性物質層(以下、金属層という。)として銅等を蒸着、めっきまたはCVD等により形成して積層膜を得る。層間絶縁膜、バリア層および金属層の形成厚さは、それぞれ0.01〜2.0μm、1〜100nm、0.01〜2.5μm程度が好ましい。
【0037】
(第1研磨工程)次に、この半導体基板を研磨装置に固定し、表面の金属層を被研磨面として、本発明の研磨液を供給しながら研磨する。これにより、層間絶縁膜凸部のバリア層が基板表面に露出し、層間絶縁膜凹部に前記金属層が残された所望の導体パターンが得られる。
【0038】
(第2研磨工程)次いで、前記導体パターンを被研磨面として、少なくとも、前記露出しているバリア層および凹部の金属層を被研磨面として、本発明の研磨液を供給しながら研磨する。凸部のバリア層の下の層間絶縁膜が全て露出し、凹部に配線層となる前記金属層が残され、凸部と凹部との境界にバリア層の断面が露出した所望のパターンが得られた時点で研磨を終了する。なお、研磨終了時のより優れた平坦性を確保するために、さらに、オーバー研磨(例えば、第2研磨工程で所望のパターンを得られるまでの時間が100秒の場合、この100秒の研磨に加えて50秒追加して研磨することをオーバー研磨50%という。)して凸部の層間絶縁膜の一部を含む深さまで研磨しても良い。
【0039】
この第1研磨工程および第2研磨工程の少なくとも一方で、本発明の研磨液を使用して研磨することにより、エッチング速度を低く保ちつつ、研磨速度を充分上昇させ、被研磨面の腐蝕とディッシングの発生を抑制できる。第1研磨工程および第2研磨工程で、引き続いて、本発明の研磨液を使用して研磨してもよい。この場合、第1研磨工程と第2研磨工程との間は、特に被研磨面の洗浄工程や乾燥工程等を行う必要はないが、研磨定盤や研磨布を取り換えたり、加工荷重等を変更させるために停止させてもよい。第1研磨工程および第2研磨工程で使用する本発明の研磨液は同一組成でも異なった組成でもよいが、同一組成であれば、第1研磨工程から第2研磨工程へ停止せずに連続して研磨を続けることができるため、生産性に優れる。
【0040】
このようにして形成された金属配線の上に、さらに、層間絶縁膜および第2層目の金属配線を形成し、その配線間および配線上に再度層間絶縁膜を形成後、研磨して半導体基板全面に渡って平滑な面とする。この工程を所定数繰り返すことにより、所望の配線層数を有する半導体デバイスを製造することができる。
【0041】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明する。本発明はこれらの実施例により制限されるものではない。
(実施例1〜3:浸漬試験)
〔浸漬試験液の作製方法〕
浸漬試験用研磨液は、イミダゾール 0.2重量%、及び30%濃度の過酸化水素水 10重量%、残部 水を混合後、コハク酸またはアンモニアを添加してpHを6、7または8に調整して作製した。
【0042】
〔浸漬試験方法〕
厚さ1500nmの銅金属を堆積したシリコン基板を約10mm角にカットしたものを、上記の浸漬試験液を10ミリリットル入れた内容積約100ミリリットルのポリエチレンカップに、室温(約25℃)で24時間静置して浸漬後、水洗、窒素風乾燥して、銅金属表面に反応層が形成された試料を得た。
この試料について、下記に示す測定条件で集束イオンビーム加工装置(FIB)による断面形成加工及び走査型電子顕微鏡(SEM)による断面観察を行い、反応層の厚みを測定した。評価結果を表1に示す。
〔FIB加工条件〕
装置:株式会社日立製作所製FB−2000A型
加速電圧:30kV
前処理:白金スパッタコーティング→カーボン蒸着→タングステンデポ
〔SEM測定条件〕
装置:株式会社日立製作所製S−900型
加速電圧:3kV
前処理:白金スパッタコーティング
【0043】
(比較例1〜3)
〔浸漬試験液の作製方法〕
浸漬試験用研磨液は、イミダゾールを使用しない以外は、実施例1〜3の浸漬試験液と同様にして作製した。
〔浸漬試験方法〕
この研磨液について実施例1と同様の方法で行った。評価結果を表1に示す。実施例1では図1のように反応層が厚く、実施例1〜3は反応層厚みが240〜340nmであり、比較例1〜3の22〜35nmと比較して厚いことが分かる。
【0044】
【表1】
【0045】
(実施例4〜6:研磨速度)
〔研磨液作製方法〕
研磨液は、イミダゾール 0.2重量%、コロイダルシリカ 0.5重量%及び30%過酸化水素水 10重量%、残部水を混合後、コハク酸またはアンモニアを添加してpHを調整して作製した。この研磨液について実施例1と同様に浸漬試験を行った結果、反応層厚みが100nm以上(240〜340nm)であり、実施例1〜3とほぼ同程度の値であることを観察できた。
〔研磨条件〕
銅基体:厚さ1500nmの銅金属を堆積したシリコン基板
タングステン基体:厚さ600nmのタングステン化合物(窒化タングステン)を堆積したシリコン基板
研磨パッド:発泡ポリウレタン樹脂(IC1000(ロデール社製))
研磨圧力:30kPa
〔研磨品評価項目〕
研磨速度:各膜の研磨前後での膜厚差を電気抵抗値から換算して求めた。
表2に銅基体に対するCMP研磨速度、タングステン基体に対するCMP研磨速度の結果を示した。
【0046】
(比較例4〜6)
研磨液は、イミダゾールを使用しない以外は、実施例4〜6の浸漬試験液と同様にして作製した。この研磨液について実施例1と同様に浸漬試験を行った結果、比較例1〜3とほぼ同程度の反応層厚みを観察できた。この研磨液を用いて実施例4〜6と同様の研磨条件および研磨品評価項目で研磨を行った。
銅基体に対するCMP研磨速度、タングステン基体に対するCMP研磨速度の結果を表2に併記した。
実施例4〜6は銅の研磨速度が、250nm/min以上、タングステンナイトライドの研磨速度が、180nm以上と比較例4〜6に比べて大きく改善されている。
【0047】
【表2】
【0048】
(実施例7:ディッシング)
二酸化シリコン中に深さ0.5〜100μmの溝を形成して、公知の方法によってバリア層として厚さ50nmの窒化タングステン層を形成し、その上層に銅膜を1.0μm形成したシリコン基板を用意した。この基板表面全面で二酸化シリコンの凸部が露出するまで、上記実施例1で作製した浸漬試験液を研磨液に用いて、2分間研磨を行った。
次に、触針式段差計で配線金属部幅100μm、絶縁膜部幅100μmが交互に並んだストライプ状パターン部の表面形状から絶縁膜部に対する配線金属部の膜減り量(ディッシング量)を求めたところ約70nmであり、十分実用的な値であった。
【0049】
(実施例8)
バリア層として窒化タングステン層の代わりに厚さ50nmの窒化タンタル層を形成した以外は実施例7と同様にしたシリコン基板を用い、基板表面全面で二酸化シリコンの凸部が露出するまで上記実施例7と同じ研磨液によって2分間研磨を行った。次に、実施例7と同様にして絶縁膜部に対する配線金属部の膜減り量を求めたところ、約60nmであり、十分実用的な値であった。
【0050】
【発明の効果】
本発明の研磨液は、研磨速度を十分上昇させ、金属表面の腐食とディッシングの発生を抑制し、信頼性の高い金属膜の埋め込みパターン形成を可能とするものである。
また、本発明の研磨方法は、研磨速度を十分上昇させ、金属表面の腐食とディッシングの発生を抑制し、信頼性の高い金属膜の埋め込みパターン形成を生産性、作業性、歩留まりよく行うことのできるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の研磨液により被研磨面に反応層を形成した銅基体の一例のSEMによる断面写真である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体デバイスの配線工程に好適な研磨液及びそれを用いた研磨方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体集積回路(LSI)の高集積化、高性能化に伴って新たな微細加工技術が開発されている。化学機械研磨(以下、CMPという。)法もそのひとつであり、LSI製造工程、特に多層配線形成工程における層間絶縁膜の平坦化、金属プラグ形成、埋め込み配線形成において頻繁に利用される技術である。この技術は、例えば米国特許No.4944836号明細書に開示されている。
近年、LSIを高性能化するために、配線材料として銅合金の利用が試みられている。しかし、銅合金は従来のアルミニウム合金配線の形成で頻繁に用いられたドライエッチング法による微細加工が困難である。そこで、あらかじめ溝を形成してある絶縁膜上に銅合金薄膜を堆積して埋め込み、溝以外の銅合金薄膜をCMPにより除去して埋め込み配線を形成する、いわゆるダマシン法が主に採用されている。この技術は、例えば特開平2−278822号公報に開示されている。
【0003】
金属のCMPの一般的な方法は、円形の研磨定盤(プラテン)上に研磨パッドを貼り付け、研磨パッド表面を金属用の研磨液で浸し、基板の金属膜を形成した面を押し付けて、その裏面から所定の圧力(研磨圧力或いは研磨荷重)を加えた状態で研磨定盤を回し、研磨液と金属膜の凸部との機械的摩擦によって凸部の金属膜を除去するものである。
CMPに用いられる金属用研磨液は、一般には酸化剤及び固体砥粒からなっており必要に応じてさらに酸化金属溶解剤、金属防食剤等が添加される。まず、酸化によって金属膜表面を酸化し、その酸化層を固体砥粒によって削り取るのが基本的なメカニズムと考えられている。凹部の金属表面の酸化層は研磨パッドにあまり触れず、固体砥粒による削り取りの効果が及ばないので、CMPの進行とともに凸部の金属層が除去されて基板表面は平坦化される。この詳細についてはジャーナル・オブ・エレクトロケミカルソサエティ誌(Journal of Electrochemical Society)の第138巻11号(1991年発行)の3460〜3464頁に開示されている。
【0004】
CMPによる研磨速度を高める方法として研磨液のpHを低く設定し、酸化金属溶解剤を添加することが有効とされている。固体砥粒によって削り取られた金属酸化物の粒を研磨液に溶解させてしまうと固体砥粒による削り取り効果が増すためであると解釈できる。但し、凹部の金属膜表面の酸化層も溶解(エッチング)されて金属膜表面が露出すると、酸化剤によって金属膜表面がさらに酸化され、これが繰り返されると凹部の金属膜のエッチングが進行してしまい、平坦化効果が損なわれること(ディッシング)が懸念される。研磨速度及び平坦化特性を維持するためには、例えばエッチングが進行しない高めのpH領域の研磨液を用い、添加剤によって金属表面を改質し、研磨速度及び平坦化特性を得ることが望ましい。また、例えば、研磨生成物の研磨パッドへの付着抑制剤を含有する研磨用スラリーを用いる金属配線形成方法が提案されている(特許文献1参照。)このようにpHの制御と添加剤を加えることにより、CMPによる研磨速度が向上するとともに、CMPされる金属表面の損傷(ダメージ)等も低減される効果が得られる。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−189295号公報(第7〜8ページ)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
一方、配線の銅或いは銅合金等の下層には、層間絶縁膜中への銅の拡散防止のためにバリア層として、タンタル、窒化タンタル、タンタル合金またはその他のタンタル化合物、タングステン、窒化タングステン、タングステン合金またはその他のタングステン化合物等の導体層が形成される。従って、銅或いは銅合金を埋め込む配線部分以外では、露出したバリア層をCMPにより取り除く必要がある。
しかし、これらのバリア導体層は、銅或いは銅合金に比べ硬度が高いために、銅または銅合金用の研磨材料の組み合わせでは十分なCMP速度が得られず、バリア導体層をCMPにより取り除く間に銅又は銅合金等がエッチングされ、さらに表面に腐食やディッシングが発生し、配線厚さが低下するという問題が生じる。
【0007】
そこで、本発明者らは、エッチング速度を低く保ち、金属表面の腐食とディッシングの発生を抑制しつつ、研磨速度を十分上昇させるという特性を両立させるために、研磨対象である金属を研磨液に浸漬した際に金属が研磨液と反応して金属表面に形成される反応層に着目した。これにより、本発明は信頼性の高い金属膜の埋め込みパターン形成を可能とする研磨液を提供し、またそのような金属膜の埋め込みパターン形成を、生産性、作業性および歩留まり良く行うことのできる研磨方法を提供する。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(1)研磨液と24時間接触した被研磨面に厚さ100nm以上の反応層が形成されることを特徴とする研磨液に関する。
本発明は、(2)酸化剤、水、pH調整剤、及びイミダゾール骨格を有する化合物を含む前記(1)の研磨液に関する。
【0009】
また、本発明は、(3)イミダゾール骨格を有する化合物が、下記一般式(I)
【化2】
(式(I)中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立して水素原子、アミノ基、又はC1からC12のアルキル基を示す。)で表される化合物である前記(2)の研磨液に関する。
【0010】
また、本発明は(4)イミダゾール骨格を有する化合物が、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2−プロピルイミダゾール、2−イソブチルイミダゾール、2−ブチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、4−エチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール又は2−エチル−4―メチルイミダゾールである前記(2)または(3)の研磨液に関する。
【0011】
また、本発明は、(5)水溶性ポリマーを含む前記(1)〜(4)のいずれかの研磨液に関する。
また、本発明は、(6)水溶性ポリマーが、多糖類、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸エステル、ポリカルボン酸塩、及びビニル系ポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種である前記(5)の研磨液に関する。
【0012】
また、本発明は、(7)酸化剤が、過酸化水素、硝酸、過ヨウ素酸カリウム、次亜塩素酸、過硫酸塩及びオゾン水からなる群より選ばれる少なくとも1種である前記(2)〜(6)のいずれかの研磨液に関する。
また、本発明は、(8)pH調整剤が、有機酸、有機酸エステル、有機酸のアンモニウム塩及び硫酸からなる群より選ばれる少なくとも1種である前記(2)〜(7)のいずれかの研磨液に関する。
【0013】
また、本発明は、(9)さらに、砥粒を含む前記(1)〜(8)のいずれかの研磨液に関する。
また、本発明は、(10)研磨液のpHが5〜10である前記(1)〜(9)のいずれかの研磨液に関する。
【0014】
また、本発明は、(11)研磨される被研磨面が金属膜であり、該金属膜が、銅、銅合金、銅の酸化物、銅合金の酸化物、タンタル及びその化合物、チタン及びその化合物、タングステン及びその化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である前記(1)〜(10)のいずれかの研磨液に関する。
【0015】
また、本発明は、(12)研磨定盤の研磨布上に前記(1)〜(11)のいずれかの研磨液を供給しながら、基体の被研磨面を研磨布に押圧した状態で研磨布と基体とを相対的に動かして被研磨面を研磨する研磨方法に関する。
また、本発明は、(13)研磨定盤の研磨布上に前記(1)〜(11)のいずれかの研磨液を供給しながら、2種以上の金属膜の積層膜を連続して研磨する研磨方法に関する。
【0016】
また、本発明は、(14)金属膜の積層膜のうち、先に研磨する層が銅、銅合金、銅の酸化物、銅合金の酸化物から選ばれる少なくとも1種であり、
該層の次の層がタンタル及びその化合物、チタン及びその化合物、タングステン及びその化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である組み合わせである前記(13)の研磨方法に関する。
【0017】
また、本発明は、(15)表面が凹部および凸部からなる層間絶縁膜と、前記層間絶縁膜を表面に沿って被覆するバリア導体層と、前記凹部を充填してバリア導体層を被覆する金属層とを有する基板の金属層を研磨して前記凸部のバリア導体層を露出させる第1研磨工程と、該第1研磨工程後に、少なくともバリア導体層および凹部の金属層を研磨して凸部の層間絶縁膜を露出させる第2研磨工程とを含み、第1研磨工程および第2研磨工程の少なくとも一方の工程で前記(1)〜(11)のいずれかの研磨液を用いて研磨する研磨方法に関する。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、研磨液と24時間接触した被研磨面に反応層が形成され、該反応層の厚さが100nm以上である研磨液に関する。
本発明における、研磨液と接触した被研磨面に形成される反応層は、例えば、被研磨面約10mm角を有する基体を研磨液10ミリリットルに浸漬し、室温(約25℃)で24時間接触させて被研磨面と研磨液との反応により被研磨面上に形成される。
反応層は、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)による断面観察で、形成の確認や層厚みの測定をすることができる。層の厚みの測定に用いる機器としては、SEMの他に、TEM(透過型電子顕微鏡)、AFM(原子間力顕微鏡)、STM(走査型トンネル顕微鏡)等が挙げられ、SEMによるのが好ましい。なお、観察のための断面は、集束イオンビーム加工装置(FIB)により形成するのが好ましい。
【0019】
図1に、本発明の研磨液により被研磨面に反応層を形成した銅基体の一例のSEMによる断面写真を示す。図1における白い矢印の範囲が反応層である。図1中の反応層よりも上に見られる表面の不揃いな層は、SEM観察時に光って見えるもので実像ではない。従って反応層及びその厚さとは無関係である。
反応層の厚さは、100nm以上である必要があり、上限は1000nm以下が好ましい。また、200〜500nmがより好ましく、250〜350nmがさらに好ましい。反応層の厚さが100nm未満では十分な研磨速度が得られない。一方、厚さが1000nmを超えると研磨速度が高くなりすぎ、研磨時間の制御が困難になる傾向がある。反応層は、酸素原子(O)及び被研磨面の構成成分が主成分であることが好ましい。また、反応層の表面には研磨剤中の成分の錯体を含むことが好ましい。
【0020】
被研磨面とこのように反応する研磨液は、例えば、酸化剤、水、pH調整剤、及びイミダゾール骨格を有する化合物を含む組成により得ることができる。以下、イミダゾール骨格を有する化合物を含む研磨液について説明するが、本発明の研磨液はこの化合物を含む組成に限定されるものではない。
本発明における酸化剤としては、過酸化水素(H2O2)、硝酸、過ヨウ素酸カリウム、次亜塩素酸、過硫酸塩及びオゾン水等が挙げられ、その中でも過酸化水素が特に好ましい。これらは1種類単独で、もしくは2種類以上混合して用いることができる。適用対象の基体が集積回路用素子を含むシリコン基板である場合、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ハロゲン化物などによる汚染は望ましくないので、不揮発成分を含まない酸化剤が望ましい。但し、オゾン水は組成の時間変化が激しいので過酸化水素が最も適している。但し、基体が半導体素子を含まないガラス基板などである場合は不揮発成分を含む酸化剤であっても差し支えない。
【0021】
酸化剤の配合量は、研磨液の総量に対して、0.1〜50重量%とすることが好ましく、0.2〜25重量%とすることが好ましく、0.3〜15重量%とすることが特に好ましい。配合量が、0.1重量%未満では、金属の酸化が不十分でCMP速度が低くなる傾向があり、50重量%を超えると、被研磨面に荒れが生じる傾向がある。
【0022】
本発明におけるpH調整剤は、水溶性のものであれば特に制限はなく、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、2−メチル酪酸、n−ヘキサン酸、3,3−ジメチル酪酸、2−エチル酪酸、4−メチルペンタン酸、n−ヘプタン酸、2−メチルヘキサン酸、n−オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、安息香酸、グリコール酸、サリチル酸、グリセリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等の有機酸、これらの有機酸エステル及びこれら有機酸のアンモニウム塩等が例示できる。また塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸、これら無機酸のアンモニウム塩類、例えば過硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム等、クロム酸等が挙げられる。これらの中で特に、効果的に研磨できるという点でギ酸、マロン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸の有機酸、有機酸エステル、有機酸のアンモニウム塩及び硫酸が金属層のCMPに対して好適である。これらpH調整剤は1種類単独で、もしくは2種類以上混合して用いることができる。
本発明におけるpH調整剤の配合量は、研磨液の総量に対して0.001〜10重量%とすることが好ましく、0.01〜8重量%とすることがより好ましく、0.02〜5重量%とすることが特に好ましい。この配合量が0.001重量%未満になると研磨速度が極端に減少する傾向にあり、10重量%を超えると、研磨速度が飽和する傾向がある。
【0023】
本発明におけるイミダゾール骨格を有する化合物は、特に制限はなく、前記一般式(I)で表される化合物を挙げることができる。式(I)中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立して水素原子、アミノ基、又はC1からC12のアルキル基を示す。
イミダゾール骨格を有する化合物としては、具体的には、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2−プロピルイミダゾール、2−イソブチルイミダゾール、2−ブチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、4−エチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール又は2−エチル−4−メチルイミダゾール等を例示することができる。これらは1種類単独で、もしくは2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0024】
本発明におけるイミダゾール骨格を有する化合物の配合量は、研磨液の総量に対して0.001〜10重量%とすることが好ましく、0.01〜8重量%とすることがより好ましく、0.02〜5重量%とすることが特に好ましい。この配合量が0.001重量%未満では、研磨速度が低くなる傾向があり、10重量%を超えると金属のエッチング量が増大する傾向がある。
【0025】
本発明の研磨液は水溶性ポリマーを含むことができる。水溶性ポリマーとしては、特に制限はなく、例えばアルギン酸、ペクチン酸、カルボキシメチルセルロ−ス、寒天、カードラン及びプルラン等の多糖類;ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ポリリシン、ポリリンゴ酸、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸アンモニウム塩、ポリメタクリル酸ナトリウム塩、ポリアミド酸、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸、ポリフマル酸、ポリ(p−スチレンカルボン酸)、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、アミノポリアクリルアミド、ポリアクリル酸アンモニウム塩、ポリアクリル酸ナトリウム塩、ポリアミド酸、ポリアミド酸アンモニウム塩、ポリアミド酸ナトリウム塩及びポリグリオキシル酸等のポリカルボン酸、ポリカルボン酸エステル及びポリカルボン酸塩;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン及びポリアクロレイン等のビニル系ポリマー等が挙げられる。但し、適用する基体が半導体集積回路用シリコン基板などの場合はアルカリ金属、アルカリ土類金属、ハロゲン化物等による汚染は望ましくないため、酸もしくはそのアンモニウム塩が望ましい。基体がガラス基板等である場合はその限りではない。その中でもペクチン酸、寒天、ポリリンゴ酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸アンモニウム塩、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドン、それらのエステル及びそれらのアンモニウム塩が好ましい。
【0026】
水溶性ポリマーを含む場合の配合量は、研磨液の総量に対して10重量%以下とすることが好ましく、5重量%以下とすることがより好ましく、1重量%以下とすることが特に好ましい。この配合量が10重量%を超えると研磨速度が低下する傾向がある。
水溶性ポリマーの重量平均分子量は500以上とすることが好ましく、1500以上とすることがより好ましく5000以上とすることが特に好ましい。重量平均分子量の上限は特に規定するものではないが、溶解性の観点から500万以下である。重量平均分子量が500未満では高い研磨速度が発現しない傾向にある。本発明では、重量平均分子量が500以上である少なくとも1種の水溶性ポリマーを用いることが好ましい。
【0027】
本発明の研磨液では砥粒を添加することもできる。砥粒としては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、セリア、チタニア、ゲルマニア、炭化珪素等の無機物砥粒、ポリスチレン、ポリアクリル、ポリ塩化ビニル等の有機物砥粒を例示することができるが、研磨液中での分散安定性が良く、CMPにより発生する研磨傷(スクラッチ)の発生数の少ない、平均粒径が100nm以下のコロイダルシリカ、コロイダルアルミナが好ましい。
砥粒を添加する場合の配合量は全重量に対して10重量%以下であることが好ましく、5重量%以下であることがより好ましい。この配合量が10重量%を超えるとCMPによる研磨速度は飽和し、それ以上加えても研磨速度の増加は見られない。
【0028】
本発明の研磨液には、上述した材料のほかにアニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤、ビクトリアピュアブルー等の染料、フタロシアニングリーン等の顔料等の着色剤等を含有させてもよい。
【0029】
本発明における研磨液のpHはCMPによる研磨速度が大きく、エッチング速度を効果的に抑制できるという点で5〜10であるのが好ましく、特にpH6〜9の範囲が好ましい。pHが5より低くなると金属のエッチング量が増大する傾向にあり、pHが10を超えると、研磨速度が極端に減少する傾向がある。pHは酸の添加量により調整することができる。またアンモニア、水酸化ナトリウム、テトラメチルアンモニウムハイドライド等のアルカリ成分の添加によっても調整可能である。
【0030】
本発明の研磨液を適用して研磨されるものには金属膜が挙げられ、該金属膜としては、銅、銅合金、銅の酸化物、銅合金の酸化物(以下、銅及びその化合物という。)、タンタル、窒化タンタル、タンタル合金、その他のタンタル化合物(以下、タンタル及びその化合物という。)、チタン、窒化チタン、チタン合金、その他のチタン化合物(以下、チタン及びその化合物という。)、タングステン、窒化タングステン、タングステン合金、その他のタングステン化合物(以下、タングステン及びその化合物という。)等を例示することができ、公知のスパッタ法、メッキ法により成膜できる。これらは1種または2種以上を組み合わせて研磨される。
【0031】
金属膜は、二種以上の上記金属を組み合わせた積層膜であってもよい。本発明を適用する積層膜としては、研磨される金属膜の積層膜のうち、先に研磨される層が前記銅及びその化合物から選ばれる少なくとも一種であり、該層の次の層が前記タンタル及びその化合物、チタン及びその化合物、タングステン及びその化合物から選ばれる少なくとも一種である組み合わせが挙げられる。
本発明の研磨液を用いることにより上記の二種以上の金属膜の積層膜を連続して研磨することもできる。
【0032】
本発明の第一の研磨方法は、研磨定盤の研磨布上に前記本発明の研磨液を供給しながら、基体の被研磨面を研磨布に押圧した状態で研磨布と基体とを相対的に動かして被研磨面を研磨することを特徴とする研磨方法である。
研磨する装置としては、例えば、研磨される基体を保持するホルダーと、研磨パッド(研磨布)を貼り付けてあり、回転数が変更可能なモータ等を取り付けてある研磨定盤とを有する一般的な研磨装置が使用できる。研磨布としては、一般的な不織布、発泡ポリウレタン、多孔質フッ素樹脂などが使用でき、特に制限がない。研磨条件には制限はないが、定盤の回転速度は基体が飛び出さないように200rpm以下の低回転が好ましい。被研磨面を有する基体の研磨布への押し付け圧力が1〜100kPaであることが好ましく、CMP速度の被研磨面内均一性及びパターンの平坦性を満足するためには、5〜50kPaであることがより好ましい。研磨している間、研磨布には研磨液をポンプ等で連続的に供給する。この供給量に制限はないが、研磨布の表面が常に研磨液で覆われていることが好ましい。研磨終了後の基体は、流水中でよく洗浄後、スピンドライ等を用いて基体上に付着した水滴を払い落としてから乾燥させることが好ましい。
【0033】
研磨布と基体とを相対的に動かすには、研磨定盤を回転させる他に、ホルダーを回転や揺動させて研磨しても良い。また、研磨定盤を遊星回転させる研磨方法、ベルト状の研磨パッドを長尺方向の一方向に直線状に動かす研磨方法等が挙げられる。なお、ホルダーは固定、回転、揺動のいずれの状態でも良い。これらの研磨方法は、研磨パッドと基体とを相対的に動かすのであれば、被研磨面や研磨装置により適宜選択できる。
【0034】
また、本発明の第二の研磨方法は、研磨定盤の研磨布上に本発明の研磨液を供給しながら、二種以上の金属膜の積層膜を連続して研磨するものである。例えば、金属膜の積層膜のうち、先に研磨される層が、前記銅及びその化合物から選ばれる少なくとも一種であり、該層と積層している層すなわち次の層が、前記タンタル及びその化合物、チタン及びその化合物、タングステン及びその化合物から選ばれる少なくとも一種である積層膜の組み合わせが挙げられる。
【0035】
本発明は、例えば半導体デバイスの配線層の形成における、金属配線用の導電性物質層と、層間絶縁膜へ前記導電性物質が拡散するのを防ぐバリア導体層(以下、バリア層という。)と、層間絶縁膜との化学機械研磨(CMP)に適用することができる。前記先に研磨される層が導電性物質層、該層の次の層がバリア層に相当する。
すなわち本発明の第三の研磨方法は、表面が凹部および凸部からなる層間絶縁膜と、前記層間絶縁膜を表面に沿って被覆するバリア層と、前記凹部を充填してバリア層を被覆する金属層とを有する基板の金属層を研磨して前記凸部のバリア層を露出させる第1研磨工程と、該第1研磨工程後に、少なくともバリア層および凹部の金属層を研磨して凸部の層間絶縁膜を露出させる第2研磨工程とを含み、第1研磨工程および第2研磨工程の少なくとも一方の工程で本発明の研磨液を用いて研磨することを特徴とする。
【0036】
以下、本発明の研磨方法の実施態様を、半導体デバイスにおける配線層の形成に沿って説明する。
まず、シリコンの基板上に二酸化シリコン等の層間絶縁膜を積層する。次いで、レジスト層形成、エッチング等の公知の手段によって、層間絶縁膜表面に所定パターンの凹部(基板露出部)を形成して凸部と凹部とからなる層間絶縁膜とする。この層間絶縁膜上に、表面の凸凹に沿って層間絶縁膜を被覆するバリア層として、タンタル等を蒸着またはCVD等により成膜する。さらに、前記凹部を充填するようにバリア層を被覆する導電性物質層(以下、金属層という。)として銅等を蒸着、めっきまたはCVD等により形成して積層膜を得る。層間絶縁膜、バリア層および金属層の形成厚さは、それぞれ0.01〜2.0μm、1〜100nm、0.01〜2.5μm程度が好ましい。
【0037】
(第1研磨工程)次に、この半導体基板を研磨装置に固定し、表面の金属層を被研磨面として、本発明の研磨液を供給しながら研磨する。これにより、層間絶縁膜凸部のバリア層が基板表面に露出し、層間絶縁膜凹部に前記金属層が残された所望の導体パターンが得られる。
【0038】
(第2研磨工程)次いで、前記導体パターンを被研磨面として、少なくとも、前記露出しているバリア層および凹部の金属層を被研磨面として、本発明の研磨液を供給しながら研磨する。凸部のバリア層の下の層間絶縁膜が全て露出し、凹部に配線層となる前記金属層が残され、凸部と凹部との境界にバリア層の断面が露出した所望のパターンが得られた時点で研磨を終了する。なお、研磨終了時のより優れた平坦性を確保するために、さらに、オーバー研磨(例えば、第2研磨工程で所望のパターンを得られるまでの時間が100秒の場合、この100秒の研磨に加えて50秒追加して研磨することをオーバー研磨50%という。)して凸部の層間絶縁膜の一部を含む深さまで研磨しても良い。
【0039】
この第1研磨工程および第2研磨工程の少なくとも一方で、本発明の研磨液を使用して研磨することにより、エッチング速度を低く保ちつつ、研磨速度を充分上昇させ、被研磨面の腐蝕とディッシングの発生を抑制できる。第1研磨工程および第2研磨工程で、引き続いて、本発明の研磨液を使用して研磨してもよい。この場合、第1研磨工程と第2研磨工程との間は、特に被研磨面の洗浄工程や乾燥工程等を行う必要はないが、研磨定盤や研磨布を取り換えたり、加工荷重等を変更させるために停止させてもよい。第1研磨工程および第2研磨工程で使用する本発明の研磨液は同一組成でも異なった組成でもよいが、同一組成であれば、第1研磨工程から第2研磨工程へ停止せずに連続して研磨を続けることができるため、生産性に優れる。
【0040】
このようにして形成された金属配線の上に、さらに、層間絶縁膜および第2層目の金属配線を形成し、その配線間および配線上に再度層間絶縁膜を形成後、研磨して半導体基板全面に渡って平滑な面とする。この工程を所定数繰り返すことにより、所望の配線層数を有する半導体デバイスを製造することができる。
【0041】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明する。本発明はこれらの実施例により制限されるものではない。
(実施例1〜3:浸漬試験)
〔浸漬試験液の作製方法〕
浸漬試験用研磨液は、イミダゾール 0.2重量%、及び30%濃度の過酸化水素水 10重量%、残部 水を混合後、コハク酸またはアンモニアを添加してpHを6、7または8に調整して作製した。
【0042】
〔浸漬試験方法〕
厚さ1500nmの銅金属を堆積したシリコン基板を約10mm角にカットしたものを、上記の浸漬試験液を10ミリリットル入れた内容積約100ミリリットルのポリエチレンカップに、室温(約25℃)で24時間静置して浸漬後、水洗、窒素風乾燥して、銅金属表面に反応層が形成された試料を得た。
この試料について、下記に示す測定条件で集束イオンビーム加工装置(FIB)による断面形成加工及び走査型電子顕微鏡(SEM)による断面観察を行い、反応層の厚みを測定した。評価結果を表1に示す。
〔FIB加工条件〕
装置:株式会社日立製作所製FB−2000A型
加速電圧:30kV
前処理:白金スパッタコーティング→カーボン蒸着→タングステンデポ
〔SEM測定条件〕
装置:株式会社日立製作所製S−900型
加速電圧:3kV
前処理:白金スパッタコーティング
【0043】
(比較例1〜3)
〔浸漬試験液の作製方法〕
浸漬試験用研磨液は、イミダゾールを使用しない以外は、実施例1〜3の浸漬試験液と同様にして作製した。
〔浸漬試験方法〕
この研磨液について実施例1と同様の方法で行った。評価結果を表1に示す。実施例1では図1のように反応層が厚く、実施例1〜3は反応層厚みが240〜340nmであり、比較例1〜3の22〜35nmと比較して厚いことが分かる。
【0044】
【表1】
【0045】
(実施例4〜6:研磨速度)
〔研磨液作製方法〕
研磨液は、イミダゾール 0.2重量%、コロイダルシリカ 0.5重量%及び30%過酸化水素水 10重量%、残部水を混合後、コハク酸またはアンモニアを添加してpHを調整して作製した。この研磨液について実施例1と同様に浸漬試験を行った結果、反応層厚みが100nm以上(240〜340nm)であり、実施例1〜3とほぼ同程度の値であることを観察できた。
〔研磨条件〕
銅基体:厚さ1500nmの銅金属を堆積したシリコン基板
タングステン基体:厚さ600nmのタングステン化合物(窒化タングステン)を堆積したシリコン基板
研磨パッド:発泡ポリウレタン樹脂(IC1000(ロデール社製))
研磨圧力:30kPa
〔研磨品評価項目〕
研磨速度:各膜の研磨前後での膜厚差を電気抵抗値から換算して求めた。
表2に銅基体に対するCMP研磨速度、タングステン基体に対するCMP研磨速度の結果を示した。
【0046】
(比較例4〜6)
研磨液は、イミダゾールを使用しない以外は、実施例4〜6の浸漬試験液と同様にして作製した。この研磨液について実施例1と同様に浸漬試験を行った結果、比較例1〜3とほぼ同程度の反応層厚みを観察できた。この研磨液を用いて実施例4〜6と同様の研磨条件および研磨品評価項目で研磨を行った。
銅基体に対するCMP研磨速度、タングステン基体に対するCMP研磨速度の結果を表2に併記した。
実施例4〜6は銅の研磨速度が、250nm/min以上、タングステンナイトライドの研磨速度が、180nm以上と比較例4〜6に比べて大きく改善されている。
【0047】
【表2】
【0048】
(実施例7:ディッシング)
二酸化シリコン中に深さ0.5〜100μmの溝を形成して、公知の方法によってバリア層として厚さ50nmの窒化タングステン層を形成し、その上層に銅膜を1.0μm形成したシリコン基板を用意した。この基板表面全面で二酸化シリコンの凸部が露出するまで、上記実施例1で作製した浸漬試験液を研磨液に用いて、2分間研磨を行った。
次に、触針式段差計で配線金属部幅100μm、絶縁膜部幅100μmが交互に並んだストライプ状パターン部の表面形状から絶縁膜部に対する配線金属部の膜減り量(ディッシング量)を求めたところ約70nmであり、十分実用的な値であった。
【0049】
(実施例8)
バリア層として窒化タングステン層の代わりに厚さ50nmの窒化タンタル層を形成した以外は実施例7と同様にしたシリコン基板を用い、基板表面全面で二酸化シリコンの凸部が露出するまで上記実施例7と同じ研磨液によって2分間研磨を行った。次に、実施例7と同様にして絶縁膜部に対する配線金属部の膜減り量を求めたところ、約60nmであり、十分実用的な値であった。
【0050】
【発明の効果】
本発明の研磨液は、研磨速度を十分上昇させ、金属表面の腐食とディッシングの発生を抑制し、信頼性の高い金属膜の埋め込みパターン形成を可能とするものである。
また、本発明の研磨方法は、研磨速度を十分上昇させ、金属表面の腐食とディッシングの発生を抑制し、信頼性の高い金属膜の埋め込みパターン形成を生産性、作業性、歩留まりよく行うことのできるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の研磨液により被研磨面に反応層を形成した銅基体の一例のSEMによる断面写真である。
Claims (15)
- 研磨液と24時間接触した被研磨面に、厚さ100nm以上の反応層が形成されることを特徴とする研磨液。
- 酸化剤、水、pH調整剤、及びイミダゾール骨格を有する化合物を含む請求項1記載の研磨液。
- イミダゾール骨格を有する化合物が、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2−プロピルイミダゾール、2−イソブチルイミダゾール、2−ブチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、4−エチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール及び2−エチル−4−メチルイミダゾールからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項2記載の研磨液。
- 水溶性ポリマーを含む請求項1〜4のいずれか記載の研磨液。
- 水溶性ポリマーが、多糖類、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸エステル、ポリカルボン酸塩及びビニル系ポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項5記載の研磨液。
- 酸化剤が、過酸化水素、硝酸、過ヨウ素酸カリウム、次亜塩素酸、過硫酸塩及びオゾン水からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項2〜6のいずれか記載の研磨液。
- pH調整剤が、有機酸、有機酸エステル、有機酸のアンモニウム塩及び硫酸からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項2〜7のいずれか記載の研磨液。
- さらに、砥粒を含む請求項1〜8のいずれか記載の研磨液。
- 研磨液のpHが5〜10である請求項1〜9のいずれか記載の研磨液。
- 被研磨面が金属膜であり、該金属膜が、銅、銅合金、銅の酸化物、銅合金の酸化物、タンタル及びその化合物、チタン及びその化合物、タングステン及びその化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜10のいずれか記載の研磨液。
- 研磨定盤の研磨布上に請求項1〜11のいずれか記載の研磨液を供給しながら、基体の被研磨面を研磨布に押圧した状態で研磨布と基体とを相対的に動かして被研磨面を研磨することを特徴とする研磨方法。
- 研磨定盤の研磨布上に請求項1〜11のいずれか記載の研磨液を供給しながら、2種以上の金属膜の積層膜を連続して研磨することを特徴とする研磨方法。
- 金属膜の積層膜のうち、先に研磨する層が銅、銅合金、銅の酸化物、銅合金の酸化物から選ばれる少なくとも1種であり、
該層の次の層がタンタル及びその化合物、チタン及びその化合物、タングステン及びその化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である組み合わせである請求項13記載の研磨方法。 - 表面が凹部および凸部からなる層間絶縁膜と、前記層間絶縁膜を表面に沿って被覆するバリア導体層と、前記凹部を充填してバリア導体層を被覆する金属層とを有する基板の金属層を研磨して前記凸部のバリア導体層を露出させる第1研磨工程と、該第1研磨工程後に、少なくともバリア導体層および凹部の金属層を研磨して凸部の層間絶縁膜を露出させる第2研磨工程とを含み、第1研磨工程および第2研磨工程の少なくとも一方の工程で請求項1〜11のいずれか記載の研磨液を用いて研磨することを特徴とする研磨方法。
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