JP2005129788A - 半導体基板の製造方法、及び半導体装置の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 半導体素子を構成するSOI基板上の活性層の厚みに対する制限を低減しながら半導体基板の品質を向上できる半導体基板の製造方法を提供する。
【解決手段】 シリコン支持体1上に酸化膜からなる絶縁層3を挟んで設けられたシリコン層5にイオン注入法によりゲルマニウムイオンを注入するゲルマニウム注入工程と、このゲルマニウム注入工程後、加熱によりシリコン層5中にゲルマニウムを拡散させ、シリコン‐ゲルマニウム層を形成する熱処理工程とを含み、ゲルマニウム注入工程では、ゲルマニウムイオンの投影飛程Rpを、シリコン層の厚みの1/2の位置よりも絶縁層寄りに位置させてシリコン層5の厚み方向にゲルマニウムの濃度勾配を形成し、熱処理工程では、ゲルマニウムイオンの投影飛程Rpでのゲルマニウム濃度で、ゲルマニウムイオンを注入したシリコン層5が部分溶融相状態となり、ゲルマニウムイオンがシリコン層5中に拡散してゲルマニウムの濃度が均質化したときに固相状態となる温度で加熱する。
【選択図】 図1
【解決手段】 シリコン支持体1上に酸化膜からなる絶縁層3を挟んで設けられたシリコン層5にイオン注入法によりゲルマニウムイオンを注入するゲルマニウム注入工程と、このゲルマニウム注入工程後、加熱によりシリコン層5中にゲルマニウムを拡散させ、シリコン‐ゲルマニウム層を形成する熱処理工程とを含み、ゲルマニウム注入工程では、ゲルマニウムイオンの投影飛程Rpを、シリコン層の厚みの1/2の位置よりも絶縁層寄りに位置させてシリコン層5の厚み方向にゲルマニウムの濃度勾配を形成し、熱処理工程では、ゲルマニウムイオンの投影飛程Rpでのゲルマニウム濃度で、ゲルマニウムイオンを注入したシリコン層5が部分溶融相状態となり、ゲルマニウムイオンがシリコン層5中に拡散してゲルマニウムの濃度が均質化したときに固相状態となる温度で加熱する。
【選択図】 図1
Description
本発明は、半導体基板の製造方法に係り、特に、シリコン‐ゲルマニウム層上に歪を有するシリコン層を設けた半導体装置を形成するための半導体基板の製造方法に関する。
格子緩和したシリコン‐ゲルマニウム層の表面に、数nmから数十nmといった薄いシリコン層を、エピタキシャル成長などの方法により形成すると、この形成したシリコン層は結晶の格子がシリコン‐ゲルマニウム層と同じ結晶格子となり、このシリコン層は引っ張り状態となることが知られている。そして、このような歪みを有するシリコン層では、キャリアとなる電子や正孔の移動度が歪みを有していないシリコン層に比べて速くなる。したがって、歪を有するシリコン層を設けた半導体装置では、他の構造の半導体装置に比べて、半導体装置の動作の高速化が可能となる。
一方、SOI(Silicon on Insulater)構造を有する半導体基板のようなシリコン支持体上に酸化膜からなる絶縁層を挟んでシリコン層を設けた構成の半導体基板は、半導体装置の動作の高速化や、低消費電力化が可能な基板として利用されている。
そこで、従来用いられているSOI構造を有する半導体基板のシリコン層の部分をシリコン‐ゲルマニウム層とし、この半導体基板上に歪を有するシリコン層を形成することにより、さらに半導体装置の動作の高速化や、低消費電力化が可能になることが期待され、このような半導体基板に関する技術が検討され、また提案されている(例えば、特許文献1及び2、非特許文献1参照)。
特許文献1には、SOI構造を有する半導体基板の酸化シリコン膜からなる絶縁層上の第1のシリコン層上に、シリコン‐ゲルマニウム層、そして第2のシリコン層を積層し、熱処理により、第1のシリコン層とシリコン‐ゲルマニウム層とを積層した領域にシリコン‐ゲルマニウム層を再結晶化させて絶縁層上に緩和したシリコン‐ゲルマニウム層を得る方法が提案されている。このとき、熱処理において、第1のシリコン層上に積層したシリコン‐ゲルマニウム層は、最初部分溶融相の状態となり、第1のシリコン層中にゲルマニウムが拡散して行く。第1のシリコン層にゲルマニウムが拡散して、第1のシリコン層とシリコン‐ゲルマニウム層とを積層した領域のゲルマニウム濃度が均質化すると、この領域にシリコン‐ゲルマニウム層が再結晶化し、SOI構造を有する半導体基板の酸化膜つまり絶縁層上にシリコン‐ゲルマニウム層が形成される。
一方、SIMOX技術に関する特許文献2や非特許文献1には、シリコン層上に低濃度でシリコン‐ゲルマニウム層を形成し、さらにシリコン層中に酸素イオンの注入により絶縁層を形成し、その後、シリコン‐ゲルマニウム層上に酸化シリコン膜を形成することで、シリコン‐ゲルマニウム層のゲルマニウム濃度を高濃度にすることにより、薄膜化とゲルマニウムの高密度化とを狙った緩和シリコン‐ゲルマニウム層を得る方法が提案されている。
ところで、特許文献1のような製造方法では、SOI構造を有する半導体基板のシリコン層上にシリコン‐ゲルマニウム層を積層し、これを加熱処理することで、最終的なシリコン‐ゲルマニウム層を形成している。このため、最終的に形成されるシリコン‐ゲルマニウム層つまり活性層は、ほぼ、第1のシリコン層の厚みと、第1のシリコン層上に積層したシリコン‐ゲルマニウム層の厚みとを合わせた厚みとなる。したがって、最終的に形成されるシリコン‐ゲルマニウム層の厚み、つまり活性層の厚みは、第1のシリコン層の厚みと、第1のシリコン層上に積層したシリコン‐ゲルマニウム層の厚みとを合わせた厚みよりも薄くすることはできず、例えば20nm以上の緩和シリコン‐ゲルマニウム層を得るには、SOI基板上の活性層を10nmと薄くする必要があり、SOI基板の製造が困難となる欠点がある。
さらに、特許文献1のような製造方法では、ゲルマニウムが第1のシリコン層に拡散して行き、最終的に形成されるシリコン‐ゲルマニウム層の再結晶化が始まるとき、絶縁層つまり酸化シリコン膜表面部分またはその表面近傍部分のシリコンが結晶の成長核となる。したがって、最終的に形成されるシリコン‐ゲルマニウム層の再結晶化が始まると、結晶格子の大きさの違いから、再結晶したシリコン‐ゲルマニウム層と酸化シリコン膜との化学結合が不均一となって欠陥が発生し、品質が低下してしまう場合がある。
一方、特許文献2や非特許文献1のような製造方法では、絶縁層と再結晶したシリコン‐ゲルマニウム層とを合わせた厚みが、例えば数百nm程度といった厚みであれば再結晶したシリコン‐ゲルマニウム層が緩和した状態となるが、絶縁層とシリコン‐ゲルマニウム層とを合わせた厚みを、例えば数十nm程度にすると、シリコン‐ゲルマニウム層の緩和が不完全なものとなってしまい、半導体基板の品質が低下してしまう。したがって、特許文献2や非特許文献1のような製造方法でも、半導体素子を構成するSOI基板上の活性層の厚みには制限がある。
また、特許文献2や非特許文献1のような製造方法では、再結晶したシリコン‐ゲルマニウム層の面積を数μm程度以下の領域に分断した後、シリコン‐ゲルマニウム層を熱酸化してシリコン‐ゲルマニウム層のゲルマニウムを高濃度化すれば、絶縁層と再結晶したシリコン‐ゲルマニウム層とを合わせた厚みを数十nm程度といった厚みにしながらシリコン‐ゲルマニウム層を緩和させることができることが報告されている。しかし、シリコン‐ゲルマニウム層を緩和させるためには、シリコン‐ゲルマニウム層の面積を数μm程度以下の領域に分断しなければならない。このように、特許文献2や非特許文献1のような製造方法では、一般的に用いられる大きさの半導体基板では品質を向上しながら半導体素子を構成するSOI基板上の活性層の厚みの制限を低減することは難しくなってしまう。
このため、歪を有するシリコン層を設けたSOI構造を有する半導体基板とすることにより期待される半導体装置の動作の一層の高速化や、一層の低消費電力化などといった効果が損なわれないように半導体素子を構成するSOI基板上の活性層の厚みに対する制限を低減したうえで、半導体基板の品質を向上することが望まれている。
本発明の課題は、半導体素子を構成するSOI基板上の活性層の厚みに対する制限を低減しながら半導体基板の品質を向上することにある。
本発明の半導体基板の製造方法は、シリコン支持体上に酸化膜からなる絶縁層を挟んで設けられたシリコン層にイオン注入法によりゲルマニウムイオンを注入するゲルマニウム注入工程と、このゲルマニウム注入工程後、加熱によりシリコン層中にゲルマニウムイオンを拡散させ、シリコン‐ゲルマニウム層を形成する熱処理工程とを含み、ゲルマニウム注入工程では、ゲルマニウムイオンの投影飛程を、シリコン層の厚みの1/2の位置よりも絶縁層寄りに位置させてシリコン層の厚み方向にゲルマニウムの濃度勾配を形成し、熱処理工程では、ゲルマニウムイオンの投影飛程でのゲルマニウム濃度で、ゲルマニウムイオンを注入したシリコン層が部分溶融相状態となり、ゲルマニウムがシリコン層中に拡散してゲルマニウムの濃度が均質化したときに固相状態となる温度で加熱することにより上記課題を解決する。
イオン注入法によれば、ゲルマニウムイオンの投影飛程を、シリコン層の厚みの1/2の位置よりも絶縁層寄りに位置させているため、熱処理工程において、ゲルマニウムがシリコン層中に拡散し絶縁層近傍に達した状態でも、絶縁層に接するシリコン‐ゲルマニウム層は部分溶融状態にあり、シリコンゲルマニウム層と酸化シリコン膜との間の化学結合は固定されたものにはなり難い。
一方、部分溶融状態のシリコン‐ゲルマニウムが絶縁層とは反対のシリコン‐ゲルマニウム層の表面側のシリコン層または固相状態にあるシリコン‐ゲルマニウム層を溶融拡散しながら、このときの熱処理温度において固相となるゲルマニウム濃度またはシリコン濃度となったとき、この部分溶融状態のシリコン‐ゲルマニウムは、表面側のシリコンまたは固相状態にあるシリコン‐ゲルマニウム層を結晶の成長核として、表面側から絶縁層側に向かって再結晶化する。体積比率としては、部分溶融の状態にあるシリコン‐ゲルマニウムが大部分を占めているため、再結晶化するシリコン‐ゲルマニウム層は、そのシリコンとゲルマニウムとの組成比に応じたバルクの状態での格子定数で再結晶化、つまり、ほぼ完全緩和の状態または完全緩和に近い状態で再結晶化する。
このとき、表面側のシリコンまたは固相状態にあるシリコン‐ゲルマニウム層の格子定数は、再結晶化するシリコン‐ゲルマニウム層よりも格子定数が短いが、表面側のシリコンまたは固相状態にあるシリコン‐ゲルマニウム層が十分に薄いことから欠陥を生成し難く、表面側のシリコン層または固相状態にあるシリコン‐ゲルマニウム層は歪んだ状態を維持する。したがって、最終的に得られるシリコン‐ゲルマニウム層は、その厚み方向に対し、ほぼ一様な組成となり、また、完全緩和に近い格子定数を有することとなる。
さらに、酸化シリコン膜近傍のシリコン‐ゲルマニウム層が部分溶融相を履歴の後、再結晶化することから、シリコン‐ゲルマニウム層と酸化シリコン膜との間の化学結合は、緩和した再結晶化シリコン‐ゲルマニウムの格子定数に整合して再結合する。このため、本発明の半導体基板の製造方法では、シリコン‐ゲルマニウム層と酸化シリコン膜との間の化学結合の部分的切断による欠陥の発生は生じ難くい。したがって、完全緩和に近いシリコン‐ゲルマニウム層が得られる上、欠陥の発生も低減できるため、半導体基板の品質を向上できる。
加えて、本発明の半導体基板の製造方法では、イオン注入法により、SOI構造を有する半導体基板のシリコン層にゲルマニウムイオンを注入しているため、ゲルマニウムイオンを注入するシリコン層の厚みのみが半導体素子を構成するSOI基板上の活性層の厚みを制限する要因となる。このため、従来の方法に比べ、半導体素子を構成するSOI基板上の活性層の厚みに対する制限が低減される。
このように、半導体素子を構成するSOI基板上の活性層の厚みに関係なく、シリコン‐ゲルマニウム層を緩和した状態にでき、また、欠陥の発生も低減できる。したがって、本発明の半導体基板の製造方法では、半導体素子を構成するSOI基板上の活性層の厚みに対する制限を低減しながら半導体基板の品質を向上できる。
また、ゲルマニウム注入工程では、ゲルマニウムイオンの投影飛程を、シリコン層の厚みの絶縁層側から1/3の位置から絶縁層との界面との間に位置させてシリコン層の厚み方向にゲルマニウムの濃度勾配を形成する半導体基板の製造方法とする。ゲルマニウムイオンを注入した結果、ゲルマニウムイオンを注入したシリコン層は体積膨張して厚みが増大する。したがって、ゲルマニウムイオンの投影飛程を、シリコン層の厚みの絶縁層側から1/3の位置から絶縁層との界面位置との間に位置させてさせれば、シリコン‐ゲルマニウム層となるシリコン層の厚みが増大しても、確実に、絶縁層とは反対のシリコン‐ゲルマニウム層の表面側のシリコンやシリコン‐ゲルマニウムをシリコン‐ゲルマニウム層の結晶の成長核にでき、欠陥の発生を確実に低減できる。
さらに、ゲルマニウム注入工程で、ゲルマニウムイオンの投影飛程の位置におけるゲルマニウムの濃度は、熱処理工程により均質化した後のシリコン‐ゲルマニウム層中のゲルマニウムの濃度の1.1倍以上である半導体基板の製造方法とする。これにより、温度揺らぎや温度分布を有する一般的に用いられる熱処理炉で本発明の半導体基板の製造方法の熱処理工程を実施する場合、一定温度制御下において、熱処理工程開始時のゲルマニウムイオンの投影飛程の位置でのゲルマニウムの濃度のときに確実にゲルマニウムイオンが注入されたシリコン層を部分溶融相とし、ゲルマニウムの濃度が均質化したときにこの層を確実に固相にできる。
また、ゲルマニウム注入工程で、ゲルマニウムイオンの投影飛程の位置におけるゲルマニウムの濃度は、熱処理工程により均質化した後のシリコン‐ゲルマニウム層中のゲルマニウムの濃度の1.2倍以上である半導体基板の製造方法とすれば、より確実に、熱処理工程開始時のゲルマニウムイオンの投影飛程の位置でのゲルマニウムの濃度のときにゲルマニウムイオンが注入されたシリコン層を部分溶融相とし、ゲルマニウムの濃度が均質化したときに固相にできる。
さらに、ゲルマニウム注入工程と、熱処理工程との間で、ゲルマニウムイオンを注入したシリコン層の表面に酸化膜を形成する酸化膜形成工程を含む半導体基板の製造方法とする。これにより、熱処理工程において部分溶融相を生じさせたとき、シリコン‐ゲルマニウム層の表面からゲルマニウムが蒸発することを防ぐことができる。また、酸化膜形成工程は、700℃以上900℃以下の温度で行えば、ゲルマニウムの拡散がほとんど生じず、シリコン‐ゲルマニウム層の形成へ影響し難くできるので好ましい。
さらに、熱処理工程の後、酸素または酸素を含む気体雰囲気中で加熱して、熱処理工程で形成したシリコン‐ゲルマニウム層の表面に犠牲酸化層を形成する犠牲酸化層形成工程を含む半導体基板の製造方法とする。このような半導体基板の製造方法とすれば、シリコン‐ゲルマニウム層を形成した後に、犠牲酸化層形成工程により、シリコン‐ゲルマニウム層の薄膜化や、ゲルマニウム濃度の調整が可能となる。
また、半導体基板に設けられたシリコン‐ゲルマニウム層の表面に歪みを有するシリコン層を形成する歪シリコン層形成工程を含む半導体装置の製造方法であり、半導体基板として上記のいずれか1項に記載の方法により製造した半導体基板を用いる半導体装置の製造方法とする。このような半導体装置の製造方法とすれば、用いる半導体素子を構成するSOI基板上の活性層の厚みに対する制限を低減しながら半導体基板の品質を向上できることにより、半導体装置の性能を向上できる。
本発明によれば、半導体素子を構成するSOI基板上の活性層の厚みに対する制限を低減しながら半導体基板の品質を向上できる。
以下、本発明を適用してなる半導体基板の製造方法の一実施形態について図1乃至図9を参照して説明する。図1は、本発明を適用してなる半導体基板の製造方法を説明する図であり、ゲルマニウム注入工程においてゲルマニウムイオンを注入したシリコン層中のゲルマニウムの濃度勾配の状態及び基板の状態を模式的に示す図である。図2は、本発明を適用してなる半導体基板の製造方法を説明する図であり、(a)は、熱処理工程において部分溶融相が生じゲルマニウムが拡散している基板の状態を、(b)は、熱処理工程においてシリコン‐ゲルマニウム層が再結晶化している基板の状態を、(c)は、熱処理工程においてシリコン‐ゲルマニウム層が形成された基板の状態を模式的に示す図である。
図3は、本発明を適用してなる半導体基板の製造方法の基本となる考え方を説明する図であり、(a)は、第1のシリコン層上にシリコン‐ゲルマニウム層と第2のシリコン層を積層した基板の状態を、(b)は、熱処理工程において部分溶融相が生じゲルマニウムが拡散している基板の状態を、(c)は、熱処理工程においてシリコン‐ゲルマニウム層が再結晶化している基板の状態を、(d)は、熱処理工程においてシリコン‐ゲルマニウム層が形成された基板の状態を模式的に示す図である。図4は、ゲルマニウム濃度に対する加熱温度と相の状態との関係を示す図である。図5は、ゲルマニウムイオンを注入するときの加速電圧と、投影飛程の位置との関係を示す図である。図6は、ゲルマニウムイオンを注入するときの加速電圧が20kVの場合と50kVの場合との投影飛程の位置の比較を示す図である。
図7は、ゲルマニウム濃度に対する加熱温度と相の状態との関係を示す図であり、熱処理工程において加熱温度を変化させた場合を示す図である。図8は、本発明を適用してなる半導体基板の製造方法の犠牲酸化層を形成する場合を説明する図であり、(a)は、ゲルマニウム注入工程においてゲルマニウムイオンを注入したシリコン層中のゲルマニウムの濃度勾配の状態及び基板の状態を、(b)は、熱処理工程において部分溶融相が生じゲルマニウムが拡散している基板の状態を、(c)は、熱処理工程においてシリコン‐ゲルマニウム層が再結晶化している基板の状態を、(d)は、熱処理工程においてシリコン‐ゲルマニウム層が形成された基板の状態を、(e)は、シリコン‐ゲルマニウム層の表面に犠牲酸化層が形成された状態を模式的に示す図である。図9は、ゲルマニウム濃度に対する加熱温度と相の状態との関係を示す図であり、犠牲酸化層を形成した場合を示す図である。
なお、本実施形態で参照する図では、本発明を適用してなる半導体基板の製造方法における半導体基板の状態を模式的に示しており、各層の位置関係を除き、各層の厚みなどは実際の厚みの関係などを示したものではない。
本発明者等は、従来の半導体基板の製造方法において生じる欠陥を低減するため、第1のシリコン層上に、シリコン‐ゲルマニウム層、そして第2のシリコン層11を積層するとき、これら3つの層を合わせた厚みの中心よりも、酸化シリコン膜からなる絶縁層寄りにシリコン‐ゲルマニウム層を位置させることを考えた。
すなわち、図3(a)に示すように、シリコン支持体1、シリコン支持体1上に形成された酸化シリコン膜からなる絶縁層3、そして絶縁層3上に形成された第1のシリコン層5を有する一般に入手可能なSOI(Silicon on Insulater)基板7の第1のシリコン層5上に、シリコン‐ゲルマニウム層9、さらに、シリコン‐ゲルマニウム層9上に第2のシリコン層11を積層するとき、これら3つの層5、7、9を合わせた厚みの中心よりも、絶縁層3寄りにシリコン‐ゲルマニウム層7を位置させること、つまり、第2のシリコン層11の膜厚をt1、シリコン‐ゲルマニウム層9の膜厚をt2、第1のシリコン層5の膜厚をt3としたとき、t1>t3となるようにシリコン‐ゲルマニウム層9を形成することを考えた。
このようにシリコン‐ゲルマニウム層9を形成し、このシリコン‐ゲルマニウム層9のゲルマニウムの濃度においてこのシリコン‐ゲルマニウム層9が部分溶融相となる温度で、熱処理工程の加熱を開始する。例えば、図4に示すように、シリコン‐ゲルマニウム層9のゲルマニウムの濃度を50%とすると、この濃度でシリコン‐ゲルマニウム層9が部分溶融相となる温度、1200℃で加熱する。つまり、図4における液相線13と固相線15との間の部分溶融相17に位置する位置Aで熱処理工程が開始される。
部分溶融相となったシリコン‐ゲルマニウム層9から第1のシリコン層5方向と第2のシリコン層11方向との両方向にゲルマニウムが拡散して行くと、これに伴い、図3(b)に示すように、部分溶融相の状態となった領域、つまり部分溶融相領域19が、図3(b)に実線の矢印で示すように、第1のシリコン層5方向と第2のシリコン層11方向との両方向に拡大して行く。これは、図4においてゲルマニウムの拡散によりゲルマニウム濃度が低下し位置Aから固相線15近傍の位置Bに移行して行く過程となる。ゲルマニウムの拡散が絶縁層3側に達したとき、つまり部分溶融相領域19が絶縁層3側に達したとき、図4における位置Bの状態にあれば、絶縁層3には部分溶融相領域19が接した状態となっている。
一方、さらに第2のシリコン層11方向へのゲルマニウムの拡散が進んでゲルマニウムの濃度が低下し、図4における固相線15を超えると、つまり、固相線15と位置Cとの間の位置になると、図3(c)に示すように、固相20の状態となり、再結晶化によりシリコン‐ゲルマニウム層21の形成が始まる。このとき、結晶の成長核となるシリコンは、第2のシリコン層11側に位置するシリコンとなり、再結晶は、図3(c)に実線の矢印で示したように、第2のシリコン層11側から絶縁層3に向かって進むことになる。このとき、第2のシリコン層11は、熱処理工程を開始したときに比べて厚みが薄くなっており、歪を有するシリコン層をシリコン‐ゲルマニウム層21上に形成する場合と同様に、ほとんど欠陥を生じることなくシリコン‐ゲルマニウム層21の影響で歪んだ状態となることが可能である。
したがって、絶縁層3との界面の化学結合は、部分溶融相領域19となったとき、一旦切断されるが、部分溶融相の状態からシリコン‐ゲルマニウム層21への再結晶化のとき、シリコン‐ゲルマニウム層21と絶縁層3との界面は、シリコン‐ゲルマニウム層21の格子定数に整合して化学的に再結合される。つまり、部分溶融相の状態を経ることで、形成されたシリコン‐ゲルマニウム層21と絶縁層3との界面における欠陥の発生を低減できる。さらに、シリコン‐ゲルマニウム層21の格子定数に応じて歪むことが可能な第2のシリコン層11側から絶縁層3に向かってシリコン‐ゲルマニウム層21の再結晶化が進むことにより、シリコン‐ゲルマニウム層21は、緩和し易くなる。
このように、シリコン‐ゲルマニウム層21での欠陥の発生を低減でき、また、シリコン‐ゲルマニウム層21が緩和し易くなることから、半導体基板の品質を向上することができる。
なお、シリコン‐ゲルマニウム層21の形成が始まった後は、図3(c)において破線の矢印で示したように、固相20の状態においても固相拡散によりゲルマニウムが第2のシリコン層11中に拡散を続ける。そして、図3(d)に示すように、SOI基板7の第1のシリコン層5、第1のシリコン層5上に積層したシリコン‐ゲルマニウム層9、そして第2のシリコン層11からなる部分全体が再結晶により形成されたシリコン‐ゲルマニウム層21となったとき、図4において、シリコン‐ゲルマニウム層21のゲルマニウム濃度として設定した濃度となる位置Cになる。
ところで、上記のような本発明者等が考えた製造方法では、SOI構造を有する半導体基板上に、シリコン‐ゲルマニウム層、そして第2のシリコン層を積層する方法であるため、従来の半導体基板の製造方法と同様に、半導体素子を構成するSOI基板上の活性層の厚みに制限が生じてしまう。
そこで、本発明者等は、半導体素子を構成するSOI基板上の活性層の厚みに対する制限を低減しながら品質を向上できる半導体基板の製造方法を検討し、イオン注入法によりゲルマニウムイオンをSOI構造を有する半導体基板に設けられたシリコン層に注入する本発明の半導体基板の製造方法により、半導体素子を構成するSOI基板上の活性層の厚みに対する制限を低減しながら、上記のような本発明者等が考えた製造方法と同様に半導体基板の品質を向上できることを見出した。
本実施形態の半導体基板の製造方法では、図1及び図2に示すように、シリコン支持体1、シリコン支持体1上に形成された酸化シリコン膜からなる絶縁層3、そして絶縁層3上に形成されたシリコン層5を有する一般に入手可能なSOI構造を有する半導体基板であるSOI基板7を用いる。そして、図1に示すような、SOI基板7に設けられたシリコン層5に、イオン注入法によりゲルマニウムイオンを注入するゲルマニウム注入工程、図2に示すような、このゲルマニウム注入工程後、予め設定された温度で加熱することにより、ゲルマニウムイオンを注入されたシリコン層5中にゲルマニウムを拡散させて、このシリコン層5が設けられていた部分にシリコン‐ゲルマニウム層21を形成する熱処理工程とを含んでいる。
さらに、本実施形態の半導体基板の製造方法では、ゲルマニウム注入工程と熱処理工程との間で、シリコン層5の表面、つまりシリコン層5の絶縁層3と接する側と反対側の面に、酸素を含む雰囲気中で加熱することにより熱酸化膜、つまり熱酸化により形成された酸化シリコン膜23を形成する酸化膜形成工程も含んでいる。
ゲルマニウム注入工程では、図1に示すように、ゲルマニウムの濃度のピーク、つまりゲルマニウムイオンの投影飛程Rpが、シリコン層5の厚みの1/2よりも絶縁層3寄りに位置するようにゲルマニウムイオンを注入し、ゲルマニウムイオンの投影飛程Rpの位置をピークとしてシリコン層5の両面に向けて暫時ゲルマニウムの濃度が減少するゲルマニウムの濃度勾配、つまりシリコン層5の厚み方向にゲルマニウムの濃度勾配をシリコン層5中に形成している。
ここで、ゲルマニウム注入工程では、図5及び図6に示すように、ゲルマニウムイオンのドーズ量が同じでも、注入条件、例えばイオン注入法における加速電圧や用いたSOI基板7のシリコン層5の膜厚によっては、注入後の投影飛程Rpの位置が、シリコン層5の厚みの1/2よりも絶縁層3寄りに位置するという条件を満たさない場合がある。したがって、注入後の投影飛程Rpの位置を、シリコン層5の厚みの1/2よりも絶縁層3寄りに位置させるため、シリコン層5の厚みに応じて、シリコン層5の厚みの1/2よりも絶縁層3寄りに投影飛程Rpが来る加速電圧を選択している。
例えば、図6の場合には、加速電圧が20kVでは、投影飛程Rpが結晶シリコン層5の厚みの1/2よりも絶縁層3寄りにならないが、加速電圧が50kVでは、投影飛程Rpが結晶シリコン層5の厚みの1/2よりも絶縁層3寄りになる。したがって、図6の場合には、加速電圧が50kVでイオン注入法によりゲルマニウムのシリコン層5への注入を行う。
このように、ゲルマニウムイオンの投影飛程Rpがシリコン層5の厚みの1/2よりも絶縁層3寄りに位置するようにゲルマニウムイオンを注入することにより、仮に、図1に示すように、ゲルマニウムイオンの投影飛程Rpに対して2ΔRpまでゲルマニウムイオンを注入したシリコン層5の部分を領域5a、領域5aからゲルマニウムイオンを注入したシリコン層5の表面にかけての部分を領域5b、そして、領域5aから絶縁層3にかけてのゲルマニウムイオンを注入したシリコン層5の部分を領域5cとすると、領域5aが図3のシリコン‐ゲルマニウム層9に、領域5bが図3の第2のシリコン層11に、領域5cが図3の第1のシリコン層5に相当することになる。
このとき、領域5bおよび領域5cにはゲルマニウムが注入された状態ではあるが、図4に示すように、熱処理工程での加熱温度を、各領域5a、5b、5cのゲルマニウムの濃度に応じて、加熱を開始した段階で領域5aの少なくとも一部が部分溶融相17の状態となり、領域5b、5cが固相線15の外側で固相20の状態となる温度、例えば図1及び図4の場合約1200℃にすれば、領域5a、5b、5cが、各々、図3のシリコン‐ゲルマニウム層9、第2のシリコン層11、第1のシリコン層5に相当することになる。そして、図3に対応させて図1における領域5aの厚みをt2、領域5bの厚みをt1、領域5cの厚みをt3とすると、t1>t3となっている。
なお、ゲルマニウムイオンを注入した結果、ゲルマニウムイオンを注入したシリコン層5は、体積膨張して厚みが増大する。したがって、ゲルマニウムイオンの投影飛程Rpを、シリコン層5の厚みの1/2よりも絶縁層3寄りに位置させただけでは、シリコン層5の厚みが増大したことにより、t1>t3という条件にならない場合がある。このため、シリコン‐ゲルマニウム層21となるシリコン層5の厚みが増大しても、確実にt1>t3という条件になるようにするため、ゲルマニウムイオンの投影飛程Rpを、シリコン層5の厚みの絶縁層側から1/3の位置から絶縁層3との界面との間に位置させることが望ましい。言い換えれば、シリコン層5の表面側からシリコン層5の厚みの厚みの2/3以上の深さ、つまり絶縁層3側から1/3以上の深さにゲルマニウムイオンの投影飛程Rpを位置させることが望ましい。
熱処理工程では、図4に示すように、ゲルマニウムイオンの投影飛程Rpの位置で、ゲルマニウムイオンを注入したシリコン層5が部分溶融相17の状態となり、ゲルマニウムがシリコン層5中に拡散してゲルマニウムの濃度が目的とするシリコン‐ゲルマニウム層21のゲルマニウムの濃度に均質化したときに固相20の状態となる温度で加熱する。
例えば、ゲルマニウムイオンの投影飛程Rpの位置のゲルマニウム濃度、例えば約40〜42%に対応する図4の位置Aでは、部分溶融相17の状態となり、シリコン‐ゲルマニウム層21が均質化したときのゲルマニウム濃度、例えば約25〜27%に対応する図4の位置Cでは、固相20の状態となる温度で加熱する。したがって、図4の例では、熱処理工程における加熱温度1200℃で熱処理を行っている。この熱処理工程は、熱処理炉内に、例えば窒素やアルゴンなど、温度に応じて適宜選択した不活性ガスを充填し、不活性ガス雰囲気中で行う。
また、本実施形態の熱処理工程のように一定温度制御下、例えば1200℃で熱処理を行う場合、用いる熱処理炉は一般的に温度揺らぎや温度分布を有する。したがって、図4において、確実に、ゲルマニウムイオンの投影飛程Rpの位置のゲルマニウム濃度であるAの位置のゲルマニウム濃度で部分溶融相17の状態となり、シリコン‐ゲルマニウム層21が均質化したときのゲルマニウム濃度である位置Cのゲルマニウム濃度で固相20の状態となる組成マージンとして、ゲルマニウム注入工程において、ゲルマニウムを注入したときのゲルマニウムイオンの投影飛程の位置におけるゲルマニウムの濃度は、熱処理工程により均質化した後のシリコン‐ゲルマニウム層中のゲルマニウムの濃度の1.1倍以上となるようにした。
つまり、図4の位置Aのゲルマニウム濃度をX%、位置Cのゲルマニウム濃度をY%とすると、ゲルマニウム注入工程においてゲルマニウムを注入したとき、X≧1.1Yとした。さらに確実に部分溶融相17から固相20の状態となるようにするためには、ゲルマニウム注入工程において、ゲルマニウムを注入したときのゲルマニウムイオンの投影飛程の位置におけるゲルマニウムの濃度は、熱処理工程により均質化した後のシリコン‐ゲルマニウム層中のゲルマニウムの濃度の1.2倍以上となるようにすることが望ましい。すなわち、X≧1.2Yとすることが望ましい。
なお、ここでは、熱処理工程を一定温度で行う場合を前提として説明を行ったが、本発明の半導体基板の製造方法では、熱処理工程において加熱したときに、ゲルマニウムイオンの投影飛程Rpの位置のゲルマニウム濃度で部分溶融相17の状態となり、シリコン‐ゲルマニウム層21が均質化したときのゲルマニウム濃度で固相20の状態となることが重要である。したがって、ゲルマニウムイオンの投影飛程Rpの位置のゲルマニウム濃度で部分溶融相17の状態となり、シリコン‐ゲルマニウム層21が均質化したときのゲルマニウム濃度で固相20の状態となれば、図7に示すように、熱処理工程における加熱温度を変化させることもできる。
酸化膜形成工程は、ゲルマニウム注入工程と熱処理工程との間で行う工程であり、図2に示すように、酸素を含む雰囲気中で加熱することにより、厚みが少なくとも5nm以上の熱酸化膜、つまり酸化シリコン膜23をシリコン層5の表面、つまりシリコン層5の絶縁層3と接する側と反対側の面に形成する。このように、酸化シリコン膜23をシリコン層5の表面、つまり領域5bの表面に形成しておくことで、シリコン層5の領域5bの表面からゲルマニウムが蒸発することで、最終的に形成されたシリコン‐ゲルマニウム層21のゲルマニウム濃度が目的とするゲルマニウム濃度よりも低くなるのを防ぐことができる。
この酸化膜形成工程では、酸化膜形成工程の間に、シリコン層5中で部分溶融相17が生じ、ゲルマニウムの拡散が起こるのを防ぐため、ゲルマニウムイオンの投影飛程Rpの位置のゲルマニウム濃度で部分溶融相17の状態とならない温度で加熱することが望ましい。したがって、図4のゲルマニウム濃度と加熱温度との関係から、ゲルマニウムの拡散が生ずに熱酸化膜を形成できる温度として、酸化膜形成工程では、700℃以上900℃以下の加熱温度で熱処理を行うことが望ましい。
このようにゲルマニウム注入工程により、SOI基板7のシリコン層5にゲルマニウムを注入してゲルマニウムの濃度勾配を形成し、熱処理工程の加熱を開始すると、図1に示すように、図3のシリコン‐ゲルマニウム層9、第2のシリコン層11、第1のシリコン層5に相当する3つの領域5a、5b、5cを形成したと仮定できるため、図3と同様の経過をたどることになる。つまり、図4における液相線13と固相線15との間の部分溶融相17に位置する位置Aで熱処理工程が開始されると、図2(a)に示すように、部分溶融相17の状態となったゲルマニウムイオンの投影飛程Rpの位置周囲の部分から、領域5b方向と領域5c方向との両方向にゲルマニウムが拡散して行く。
これに伴い、部分溶融相17の状態となった領域、つまり部分溶融相領域19が、図2(a)に実線の矢印で示すように、領域5b方向と領域5c方向との両方向に拡大して行く。これは、図4においてゲルマニウムの拡散によりゲルマニウム濃度が低下し位置Aから固相線15近傍の位置Bに移行して行く過程となる。ゲルマニウムの拡散が絶縁層3側に達したとき、つまり部分溶融相領域19が絶縁層3側に達したとき、図4における位置Bの状態にあれば、絶縁層3には部分溶融相領域19が接した状態となっている。
一方、さらに領域5b方向へのゲルマニウムの拡散が進んでゲルマニウムの濃度が低下し、図4における固相線15を超えると、つまり、固相線15と位置Cとの間の位置になると、固相20の状態となり、図2(b)に示すように、再結晶化によりシリコン‐ゲルマニウム層21の形成が始まる。このとき、結晶の成長核となるシリコンは、領域5b側に位置するシリコンまたはシリコン‐ゲルマニウムとなり、再結晶は、図2(b)に実線の矢印で示したように、領域5b側から絶縁層3に向かって進むことになる。
なお、シリコン‐ゲルマニウム層21の形成が始まった後は、図2(b)において破線の矢印で示したように、固相20の状態においても固相拡散によりゲルマニウムが領域5b中に拡散を続ける。そして、図2(c)に示すように、SOI基板7の第1のシリコン層5であった部分が再結晶により形成されたシリコン‐ゲルマニウム層21となったとき、図4において、シリコン‐ゲルマニウム層21のゲルマニウム濃度として設定した目的の濃度となる位置Cになる。また、半導体装置とするため、シリコン‐ゲルマニウム層21上にエピタキシャル成長法などにより歪を有するシリコン層を形成するとき、酸化シリコン膜23は除去し、シリコン‐ゲルマニウム層21上に歪を有するシリコン層を形成する。
このように本実施形態の半導体基板の製造方法では、絶縁層3との界面での結合は、部分溶融相領域19となったとき、一旦切断されるが、部分溶融相17の状態からシリコン‐ゲルマニウム層21への再結晶化のとき、シリコン‐ゲルマニウム層21と絶縁層3との界面がシリコン‐ゲルマニウム層21の格子定数に整合して化学的に再結合される。つまり、部分溶融相の状態を経ることで、形成されたシリコン‐ゲルマニウム層21と絶縁層3との界面における欠陥の発生を低減できる。さらに、シリコン‐ゲルマニウムからなる領域5側から絶縁層3に向かってシリコン‐ゲルマニウム層21の再結晶化が進むことにより、シリコン‐ゲルマニウム層21は、緩和し易くなる。このように、シリコン‐ゲルマニウム層21での欠陥の発生を低減でき、また、シリコン‐ゲルマニウム層21が緩和し易くなることから、半導体基板の品質を向上することができる。
加えて、本実施形態では、SOI基板7のシリコン層5中にゲルマニウムを注入することでシリコン‐ゲルマニウム層21を形成しているため、ゲルマニウムイオンを注入するシリコン層5の厚みのみが得られるシリコン‐ゲルマニウム層を有する半導体素子を構成するSOI基板上のシリコン‐ゲルマニウム層、つまり活性層の厚みを制限する要因となる。このため、従来の半導体基板の製造方法に比べ、半導体素子を構成するSOI基板上の活性層の厚みに対する制限が低減される。また、半導体素子を構成するSOI基板上の活性層の厚みに関係なく、シリコン‐ゲルマニウム層21を緩和した状態にできる。すなわち、本実施形態の半導体基板の製造方法では、半導体素子を構成するSOI基板上の活性層の厚みに対する制限を低減しながら半導体基板の品質を向上できる。
さらに、本発明を適用してなる製造方法により得られた半導体装置では、動作を高速化が可能でき、また、消費電力を低減できるなど、性能を向上することができる。
また、このような本発明の半導体基板の製造方法では、格子不整合に由来する欠陥はほとんど発生しないが、仮に格子不整合に由来する欠陥が発生したとしても、部分溶融相17を経ることなどによりその欠陥は修復される。つまり、格子不整合に由来する欠陥となる転位線は、ゲルマニウムの注入領域に存在する点欠陥により、比較的短距離で終端する。そして、一般に、このような点欠陥や比較的短距離の欠陥は熱処理で部分溶融状態になることで欠陥の履歴を失う。さらに、部分溶融相17を生じさせることができ、かつ、部分溶融相17が所定温度で固相線15を横切るゲルマニウム濃度に薄まった後にも表層部に結晶シリコン層が残ることができる温度での熱処理を施すことにより、比較的ゲルマニウム濃度が高い領域の格子不整合に由来する欠陥は、部分溶融相17を経ることにより結晶周期性を失う。部分溶融相17を経た後、結晶性が比較的高い表層側のシリコン層から再結晶化すると、結晶欠陥は減少する。
さらに、イオン注入法は、SIMOX法により形成したSOI構造を有する半導体基板が産業的に成立しているように、再現性が有り、かつ、比較的大面積の基板においても均一性が得られる。また、本発明者等は、イオン注入条件、特に注入のときの加速電圧の制御により、部分溶融相を発生させる位置を比較的高い精度で制御できることを見出した。
ところで、本実施形態のようにSOI基板7を用いて半導体基板の製造を行う場合、SOI基板7上のシリコン層5の厚みは、最終目標となるシリコン‐ゲルマニウム層21の厚みに近いことが望ましい。しかし、ゲルマニウム注入工程におけるゲルマニウムイオンの注入の結果や、用いることができるSOI基板7のシリコン層5の厚みなどによって、形成されたシリコン‐ゲルマニウム層21が、目標としたシリコン‐ゲルマニウム層21の厚みより厚くなる場合がある。また、形成されたシリコン‐ゲルマニウム層21が、目標としたシリコン‐ゲルマニウム層21の厚みより厚くなることによって、シリコン‐ゲルマニウム層21中のゲルマニウム濃度が目標濃度よりも薄くなってしまう。このような場合、シリコン‐ゲルマニウム層21の厚み、及びゲルマニウム濃度を修正する必要が生じる。
このように、シリコン‐ゲルマニウム層21の厚み、及びゲルマニウム濃度を修正する必要がある場合には、図8に示すように、熱処理工程を終えた後、酸素または酸素を含む気体雰囲気中で加熱して、熱処理工程で形成したシリコン‐ゲルマニウム層21の表面に犠牲酸化層25を形成する犠牲酸化層形成工程を行うこともできる。犠牲酸化層形成工程を行う場合の半導体基板の製造方法を示す図8において、図8(a)から図8(d)までは、各々、犠牲酸化層25を形成しない場合の半導体基板の製造方法を示した図1、図2(a)から図2(c)と同じ過程を示すものである。
犠牲酸化層形成工程は、図8(d)に示すような熱処理工程においてシリコン‐ゲルマニウム層21が形成された後に行い、例えば、熱処理工程での加熱温度を保ったままで、熱処理炉内に酸素を含む気体を導入し、炉内を、酸素を含んだ雰囲気にすることで、図8(e)に示すように、シリコン‐ゲルマニウム層21の表面に犠牲酸化層25が形成される。このとき、犠牲酸化層25に取り込まれなかったゲルマニウムが、犠牲酸化層25の成長に伴い、シリコン‐ゲルマニウム層21の厚みが薄くなると共に、シリコン‐ゲルマニウム層21の厚みが薄くなった分だけ、図9に示すように位置Dに移行するため、シリコン‐ゲルマニウム層21中のゲルマニウム濃度が高くなる。
このように、形成する犠牲酸化層25の厚みを調整することによって、シリコン‐ゲルマニウム層21の厚み、及びゲルマニウム濃度を調整できるため、図9における目標とするシリコン‐ゲルマニウム層21中のゲルマニウム濃度となる位置Dになる犠牲酸化層25の厚みを算出しておき、犠牲酸化層25の厚みがこの算出した厚みになるまで、牲酸化層形成工程を行う。なお、シリコン‐ゲルマニウム層21上に歪みを有するシリコン層を形成するため、犠牲酸化層25は除去する。
以下、本発明を適用してなる半導体基板の製造方法の第1の実施例について図10などを参照して説明する。図10は、シリコン層の厚さが35nmで加速電圧30kVでゲルマニウムイオンを注入したシリコン層中のゲルマニウムの濃度勾配を示す図である。
本実施例では、形成するシリコン‐ゲルマニウム層の膜厚を50nm、形成されたシリコン‐ゲルマニウム層中のゲルマニウム濃度を30%とした。このように設定した目標構造、つまり目標シリコン‐ゲルマニウム層厚、目標ゲルマニウム濃度に応じて最初に製造条件を決定した。
まず、注入するゲルマニウムイオンのドーズ量を決定する。ゲルマニウム濃度30%での完全緩和シリコン‐ゲルマニウム結晶の格子定数は、シリコンの格子定数の約1.012倍であり1nm3当たりの体積に存在するシリコンとゲルマニウムの原子は、約48個である。そして、この30%がゲルマニウムであることから、1nm3当たりに必要なゲルマニウム原子は16個である。したがって、膜厚50nmに対しては、1nm2当たり800個のゲルマニウム原子を必要とする。すなわち、ゲルマニウムイオンのドーズ量は、800atoms/nm2、つまり8×1016atoms/cm2である。
さらに、シリコン‐ゲルマニウム層を形成するSOI構造を有する半導体基板の条件を決定する。ゲルマニウム濃度30%のシリコン‐ゲルマニウム層中に含有されるシリコン原子の数は、1nm3当たり約32個である。したがって、膜厚50nmに対しては1nm2あたり約1600個のシリコン原子が存在することになる。これをゲルマニウム注入前のシリコン層の膜厚に換算すると、約32nmである。そこで、本実施例では一般的に入手が容易な、活性膜厚、つまりシリコン層の膜厚が35nmのSOI構造を有する半導体基板を用いることとした。
また、上記のように決定したゲルマニウムイオンのドーズ量8×1016atoms/cm2に対し、注入電圧を決定する。注入を実施するSOI構造を有する半導体基板のシリコン層の厚さが35nmのときに、ゲルマニウムイオンの投影飛程Rpを、シリコン層の厚みの1/2よりも絶縁層寄りに位置させることができ、ゲルマニウムを注入したときのゲルマニウムイオンの投影飛程Rpの位置におけるゲルマニウムの濃度が熱処理工程により均質化した後のシリコン‐ゲルマニウム層中のゲルマニウムの濃度の1.1倍以上となる条件を満たすゲルマニウムイオンの加速電圧を検討した。ここで、ゲルマニウムイオンの投影飛程Rpの位置におけるゲルマニウム濃度は、Lindhard,Scharff,Schiottの理論における近似式により推定した。ただし、ここで用いた理論式は希薄濃度のイオン注入に対するものであり、%のオーダーにおいては、予測制度が悪化すると考えられる。したがって、ここでは目安として本理論式を用いている。
さらに、ゲルマニウムの蒸発を防ぐための酸化膜厚を決定する。ゲルマニウム濃度30%のシリコン‐ゲルマニウム層中に含有されるシリコン原子の数は、前述のように、1nm3当たり約32個である。したがって、膜厚50nmに対しては、1nm2当たり約1600個のシリコン原子が存在することになる。一方、SOI構造を有する半導体基板のシリコン層の厚さが35nmでは、シリコン原子の数は、1nm2当たり約1750個である。よって、1nm2当たり約150個のシリコン原子を酸化膜として消費しなければならない。これは、シリコン100%の膜で換算して厚さ3nmである。シリコンを3nm消費するには、酸化シリコン膜を約6.7nm形成すればよい。
さらに、部分溶融相を形成するための温度を決定する。ゲルマニウム注入後のシリコン層を加熱して部分溶融相となる部分を形成し、シリコン層全体にわたってゲルマニウムが均一に拡散すると、ゲルマニウム濃度は、約30%となる。よって、図4に示すSi−Geの二元系相図を鑑み、投影飛程Rpの位置におけるゲルマニウム濃度で部分溶融が生じ、均一化してゲルマニウム濃度が約30%になった時点では固相である温度として、1200℃にて部分溶融相化及び再結晶化、つまり熱処理工程を行うこととした。
次に、このように決定した条件による半導体基板の製造方法について説明する。まず、面方位(001)で、活性層つまりシリコン層膜厚が35nm、絶縁層膜厚が135nmである直径200mmのSIMOX法により形成したSOI構造を有する半導体基板を準備した。本実施例ではSOI構造を有する半導体基板としてSIMOX基板を用いたが、もちろん、貼り合わせ法により形成した所謂SOI基板など様々なSOI構造を有する半導体基板を用いることができる。この準備したSIMOX基板を枚葉洗浄機にてHF/03洗浄を施した。
このHF/03洗浄後、イオン注入法によるゲルマニウム注入工程を行った。洗浄した本基板をイオン注入機(IBIS社製、IBIS−1000)にセットし、真空引きした。GeH4ガスを、このイオン注入機のガスイオン化部に導入し、GeH4をGe+イオンとH+イオンにイオン化した。ゲルマニウムイオン注入ドーズ量はドーズ量8×1016atoms/cm2であるが、GeH4をイオン化した際にGe+イオンの4倍のH+イオンが生成されているため、注入機におけるイオン電流は4×1017/cm2注入を目標として制御した。尚、H+イオンもGe+イオンと同時に加速され、SIMOX基板表面に照射されるが、本実施例の加速電圧30kVではH+イオンはシリコン中にほとんど注入されない。ゲルマニウム注入工程後、イオン注入を終えた基板に枚葉洗浄機にて再びHF/03洗浄を施した。
このHF/03洗浄後、ゲルマニウムの蒸発を防ぐための酸化膜形成工程を行った。酸化膜形成工程における熱処理行うため、縦型熱処理炉(真空技研社製、SIFRV−1500HT)に基板をセットした。700℃、不活性ガス雰囲気で均熱を整えた後、100%酸素ガスを導入し、シリコン層の表面に約6.7nmの酸化シリコン膜を形成した。
この酸化膜形成工程の後、シリコン‐ゲルマニウム層を形成するための熱処理工程を行った。酸化膜形成工程の後、酸素を排出してアルゴン雰囲気とし、アルゴン雰囲気中で炉内温度を1200℃に昇温し、1200℃にて60分保持し、ゲルマニウムを注入したシリコン層の部分溶融化、及びシリコン‐ゲルマニウム層の再結晶化を行った。
この熱処理工程の後、SIMS測定装置(Physical
Electronics社製、ADEPT10−10)にてSIMS測定を実施した。その結果、酸化シリコン膜厚は6.9nm、シリコン‐ゲルマニウム層膜厚は49.2nm、そしてシリコン‐ゲルマニウム層のゲルマニウム濃度は30.8%であり、ほぼ設定した目標構造のシリコン‐ゲルマニウム層を有する半導体基板を得ることができた。
Electronics社製、ADEPT10−10)にてSIMS測定を実施した。その結果、酸化シリコン膜厚は6.9nm、シリコン‐ゲルマニウム層膜厚は49.2nm、そしてシリコン‐ゲルマニウム層のゲルマニウム濃度は30.8%であり、ほぼ設定した目標構造のシリコン‐ゲルマニウム層を有する半導体基板を得ることができた。
さらに、シリコン‐ゲルマニウム層の緩和率を測定するため、顕微ラマン装置(Jobin−Yvon社製、U−1000)にてシリコン‐ゲルマニウム層中のSi−Si振動周波数と、一般的な面方位(001)の鏡面仕上げのシリコン基板のSi−Si振動周波数とを測定し比較した。その結果、一般的なシリコン基板中のSi−Si振動数は520.2cm−1であるのに対して、本実施例のシリコン‐ゲルマニウム層中のSi−Si振動数は501.2cm−1であった。
これらのSIMS測定とラマン測定の結果をJounal
of Applied Phisics 75(12)、15 June、1994、 p8098により解析すると、本実施例のシリコン‐ゲルマニウム層は約99%という、ほぼ完全緩和の緩和率を有していた。さらに、欠陥の発生を、希釈セコエッチング後の顕微鏡観察により確認したが、欠陥密度は、約3×103ケ/cm2であった。
of Applied Phisics 75(12)、15 June、1994、 p8098により解析すると、本実施例のシリコン‐ゲルマニウム層は約99%という、ほぼ完全緩和の緩和率を有していた。さらに、欠陥の発生を、希釈セコエッチング後の顕微鏡観察により確認したが、欠陥密度は、約3×103ケ/cm2であった。
以下、本発明を適用してなる半導体基板の製造方法の第2の実施例について図11などを参照して説明する。図11は、シリコン層の厚さが55nmで加速電圧45kVでゲルマニウムイオンを注入したシリコン層中のゲルマニウムの濃度勾配を示す図である。
本実施例でも、実施例1と同様に、形成するシリコン‐ゲルマニウム層の膜厚を50nm、形成されたシリコン‐ゲルマニウム層中のゲルマニウム濃度を30%とした。このように設定した目標構造、つまり目標シリコン‐ゲルマニウム層厚、目標ゲルマニウム濃度に応じて最初に製造条件を決定した。注入するゲルマニウムイオンのドーズ量は、実施例1と同様に決定され、800atoms/nm2、つまり8×1016atoms/cm2である。
さらに、シリコン‐ゲルマニウム層を形成するSOI構造を有する半導体基板の条件、及びゲルマニウムイオンのドーズ量8×1016atoms/cm2に対し、注入電圧を決定する。注入を実施するSOI構造を有する半導体基板のシリコン層の厚さが55nm、75nm、そして95nmの場合について、ゲルマニウムイオンの投影飛程Rpを、シリコン層の厚みの1/2よりも絶縁層寄りに位置させることができ、ゲルマニウムを注入したときのゲルマニウムイオンの投影飛程Rpの位置におけるゲルマニウムの濃度が熱処理工程により均質化した後のシリコン‐ゲルマニウム層中のゲルマニウムの濃度の1.1倍以上となる条件を満たすゲルマニウムイオンの加速電圧を検討した。ここでも、ゲルマニウムイオンの投影飛程Rpの位置におけるゲルマニウム濃度は、Lindhard,Scharff,Schiottの理論における近似式により推定した。
そして、最終的にシリコン‐ゲルマニウム層の厚みを調整するため、ゲルマニウムイオンの投影飛程Rpの位置をシリコン層の厚さの2/3の深さとすることを目標とし、表2に基づき、ゲルマニウムイオンの加速電圧を50kVに決定した。これにより、図11に示すようなゲルマニウムの濃度勾配がシリコン層中に形成されると予測される。
さらに、ゲルマニウムの蒸発を防ぐための酸化膜と犠牲酸化層とを併せた形成する全酸化シリコン膜の厚みを決定する。ゲルマニウム濃度30%のシリコン‐ゲルマニウム層中に含有されるシリコン原子の数は、前述のように、1nm3当たり約32個である。したがって、膜厚50nmに対しては、1nm2当たり約1600個のシリコン原子が存在することになる。一方、SOI基板のシリコン層の厚さが55nmでは、シリコン原子の数は、1nm2当たり約2750個である。よって、1nm2当たり約1150個のシリコン原子を酸化膜として消費しなければならない。これは、シリコン100%の膜で換算して厚さ23nmである。シリコンを23nm消費するには、酸化シリコン膜を約51nm形成すればよい。
さらに、部分溶融相を形成するための温度を決定する。犠牲酸化層形成前においては、膜厚1nm2あたり、約800個のゲルマニウム原子が存在し、約2750個のシリコン原子が存在する。ゲルマニウム注入後のシリコン層を加熱して部分溶融相となる部分を形成し、シリコン層全体にわたってゲルマニウムが均一に拡散すると、ゲルマニウム濃度は、約22.5%となる。よって、図4に示すSi−Geの二元系相図を鑑み、投影飛程Rpの位置におけるゲルマニウム濃度で部分溶融が生じ、均一化したゲルマニウム濃度が約22.5%時点では固相である温度として、1250℃にて部分溶融化及び再結晶化、つまり熱処理工程を行うこととした。
次に、このように決定した条件による半導体基板の製造方法について説明する。まず、面方位(001)で、活性層つまりシリコン層膜厚が55nm、絶縁層膜厚が145nmである直径200mmのSIMOX法により形成したSOI構造を有する半導体基板を準備した。本実施例ではSOI構造を有する半導体基板としてSIMOX基板を用いたが、もちろん、貼り合わせ法により形成した所謂SOI基板を用いることもできる。この準備したSIMOX基板を枚葉洗浄機にてHF/03洗浄を施した。
このHF/03洗浄後、イオン注入法によるゲルマニウム注入工程を行った。洗浄した本基板をイオン注入機(IBIS社製、IBIS−1000)にセットし、真空引きした。GeH4ガスを、このイオン注入機のガスイオン化部に導入し、GeH4をGe+イオンとH+イオンにイオン化した。ゲルマニウムイオン注入ドーズ量はドーズ量8×1016atoms/cm2であるが、GeH4をイオン化した際にGe+イオンの4倍のH+イオンが生成されているため、注入機におけるイオン電流は4×1017/cm2注入を目標として制御した。尚、H+イオンもGe+イオンと同時に加速され、SIMOX基板表面に照射されるが、本実施例の加速電圧30kVではH+イオンはシリコン中にほとんど注入されない。ゲルマニウム注入工程後、イオン注入を終えた基板に枚葉洗浄機にて再びHF/03洗浄を施した。
このHF/03洗浄後、ゲルマニウムの蒸発を防ぐための酸化膜形成工程を行った。酸化膜形成工程における熱処理行うため、縦型熱処理炉(真空技研社製、SIFRV−1500HT)に基板をセットした。700℃、不活性ガス雰囲気で均熱を整えた後、100%酸素ガスを導入し、シリコン層の表面に約10nmの酸化シリコン膜を形成した。
この酸化膜形成工程の後、シリコン‐ゲルマニウム層を形成するための熱処理工程を行った。酸化膜形成工程の後、酸素を排出してアルゴン雰囲気とし、アルゴン雰囲気中で炉内温度を1250℃に昇温し、1250℃にて60分保持し、ゲルマニウムを注入したシリコン層の部分溶融化、及びシリコン‐ゲルマニウム層の再結晶化を行った。
この熱処理工程の後、形成したシリコン‐ゲルマニウム層の膜厚とゲルマニウム濃度を調整するための犠牲酸化層形成工程を行った。熱処理工程の後、熱処理工程中の温度を維持したまま、アルゴン90%、酸素10%のガスを炉内に導入し、この酸素を含む雰囲気により追加酸化することで、シリコン‐ゲルマニウム層の表面の酸化膜形成工程で形成した約10nmの酸化シリコン膜に、新たに約41nmの酸化シリコン膜を形成し、最終的に約51nmの犠牲酸化層を形成した。
SIMS測定装置(Physical
Electronics社製、ADEPT10−10)にてSIMS測定を実施した。その結果、酸化シリコン膜厚は50.1nm、シリコン‐ゲルマニウム層膜厚は50.6nm、そしてシリコン‐ゲルマニウム層のゲルマニウム濃度は29.7%であり、ほぼ設定した目標構造のシリコン‐ゲルマニウム層を有する半導体基板を得ることができた。
Electronics社製、ADEPT10−10)にてSIMS測定を実施した。その結果、酸化シリコン膜厚は50.1nm、シリコン‐ゲルマニウム層膜厚は50.6nm、そしてシリコン‐ゲルマニウム層のゲルマニウム濃度は29.7%であり、ほぼ設定した目標構造のシリコン‐ゲルマニウム層を有する半導体基板を得ることができた。
さらに、シリコン‐ゲルマニウム層の緩和率を測定するため、顕微ラマン装置(Jobin−Yvon社製、U−1000)にてシリコン‐ゲルマニウム層中のSi−Si振動周波数と、一般的な面方位(001)の鏡面仕上げのシリコン基板のSi−Si振動周波数とを測定し比較した。その結果、一般的なシリコン基板中のSi−Si振動数は520.2cm−1であるのに対して、本実施例のシリコン‐ゲルマニウム層中のSi−Si振動数は503.0cm−1であった。
これらのSIMS測定とラマン測定の結果をJounal
of Applied Phisics 75(12)、15 June、1994、 p8098により解析すると、本実施例のシリコン‐ゲルマニウム層は約87%という完全緩和に近い高い緩和率を有していた。さらに、欠陥の発生を希釈セコエッチング後の顕微鏡観察により確認したが、欠陥密度は約4×103ケ/cm2であった。
of Applied Phisics 75(12)、15 June、1994、 p8098により解析すると、本実施例のシリコン‐ゲルマニウム層は約87%という完全緩和に近い高い緩和率を有していた。さらに、欠陥の発生を希釈セコエッチング後の顕微鏡観察により確認したが、欠陥密度は約4×103ケ/cm2であった。
1 シリコン支持体
3 絶縁層(酸化シリコン膜)
5 シリコン層
7 SOI基板
3 絶縁層(酸化シリコン膜)
5 シリコン層
7 SOI基板
Claims (4)
- シリコン支持体上に酸化膜からなる絶縁層を挟んで設けられたシリコン層にイオン注入法によりゲルマニウムイオンを注入するゲルマニウム注入工程と、該ゲルマニウム注入工程後、加熱により前記シリコン層中にゲルマニウムイオンを拡散させ、シリコン‐ゲルマニウム層を形成する熱処理工程とを含み、
前記ゲルマニウム注入工程では、ゲルマニウムイオンの投影飛程を、前記シリコン層の厚みの1/2の位置よりも前記絶縁層寄りに位置させて前記シリコン層の厚み方向にゲルマニウムの濃度勾配を形成し、前記熱処理工程では、前記ゲルマニウムイオンの投影飛程でのゲルマニウム濃度で、前記ゲルマニウムイオンを注入したシリコン層が部分溶融相状態となり、ゲルマニウムが前記シリコン層中に拡散してゲルマニウムの濃度が均質化したときに固相状態となる温度で加熱する半導体基板の製造方法。 - 前記ゲルマニウム注入工程と、前記熱処理工程との間で、前記ゲルマニウムイオンを注入したシリコン層の表面に酸化膜を形成する酸化膜形成工程を含むことを特徴とする半導体基板の製造方法。
- 前記熱処理工程の後、酸素または酸素を含む気体雰囲気中で加熱して、前記熱処理工程で形成したシリコン‐ゲルマニウム層の表面に犠牲酸化層を形成する犠牲酸化層形成工程を含む請求項1または2に記載の半導体基板の製造方法。
- 半導体基板に設けられたシリコン‐ゲルマニウム層の表面に歪みを有するシリコン層を形成する歪シリコン層形成工程を含む半導体装置の製造方法であり、
前記半導体基板として請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法により製造した半導体基板を用いることを特徴とする半導体装置の製造方法。
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2003
- 2003-10-24 JP JP2003364764A patent/JP2005129788A/ja active Pending
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