JP2005126756A - 化合物半導体薄膜の製造方法および製造装置 - Google Patents

化合物半導体薄膜の製造方法および製造装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 I−III−VI族化合物半導体薄膜を形成する際に、結晶の微細化や膜欠陥の発生を防止することができ、かつ、Seの利用効率を向上できる化合物半導体薄膜の製造方法および製造装置を提供する。
【解決手段】 真空容器1内で帯状の基板12を連続的に走行させながら、基板12の一主面上にCu蒸着源5,In蒸着源6,Se蒸着源7などの蒸着源より、Cu,In,SeなどのI族元素、III族元素、VI族元素を供給してI−III−VI族化合物半導体薄膜を形成する際に、送り出しロール8と巻き取りロール10との間の基板12を接触支持する第1,第2,第3の中間ローラ16,17,18の基板接触面の温度を、基板12の温度低下を緩和するように制御する。これにより、基板12の急激な温度低下を防止して、I−III−VI族化合物の結晶の微細化を抑制できる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、真空中で長尺の帯状基材上に連続的に化合物半導体薄膜を形成する方法および装置に関するものである。
近年、電子デバイスの薄膜化が進み、金属箔や樹脂フィルムなどの長尺の帯状基材上に連続的に薄膜電子デバイスを形成するロール・トゥ・ロールプロセスの重要性が高まっている。
図2に、従来より用いられている化合物半導体薄膜の製造装置の一例として、CuInSe薄膜などのI−III−VI族化合物半導体薄膜を帯状基材上に形成するロール蒸着装置を示す。CuInSe(以下、CISと略す)は、CIS薄膜太陽電池の光吸収層として用いられている。
図2において、1は真空容器、2は真空容器1内にスリット2a,2bを持った別途容器として設けられた製膜室、3は真空容器1内を排気する排気装置としてのターボ分子ポンプ、4は製膜室2内の上部に設けられたヒータ、5,6,7はそれぞれ製膜室2内の下部に設けられたCu蒸着源,In蒸着源,Se蒸着源である。8,9,10,11は製膜室2の両外側にそれぞれ一対ずつ配置され、長尺の帯状ステンレス基材12(以下、基板12という)を製膜室2内に供給する送り出しロール,送り出し側中間ローラ、および、巻き取りロール,巻き取り側中間ローラである。
基板12は送り出しロール8に巻回されていて、図示したように、製膜室2内を経て巻き取りロール10に一端部が取り付けられており、送り出しロール8および巻き取りロール10の動力によってテンションがかけられるとともに、スリット2a,2bの近傍の送り出し側中間ローラ9,巻き取り側中間ローラ11により支持されることで、製膜室2内で撓むことなく水平に展張される。
このようなロール蒸着装置で基板12の表面にCIS化合物薄膜を形成する際にはまず、真空容器1内をターボ分子ポンプ3により所定の真空度まで排気する。その後に、基板12を上方のヒーター4により550℃に加熱するとともに、基板12の下方のCu蒸着源5,In蒸着源6,Se蒸着源7を加熱してそれぞれ1200℃、900℃、220℃の温度に保持することにより、各蒸着源5,6,7からCu、In,Seの蒸気を基板12に供給する。
この状態において、基板12を送り出しロール8から所定速度で送り出し、巻き取りロール10に巻き取ることにより、基板12の表面に連続的にCIS化合物薄膜を形成する。このときのSeの供給量は、CuInSeの化学量論比に対して3倍以上過剰である(たとえば非特許文献1参照)。
しかしこのようなロール蒸着装置では従来、巻き取り側中間ローラ11は温度制御されておらず、室温〜200℃の範囲の温度となっていたため、550℃に加熱された状態でCIS化合物薄膜が形成された基板12は、巻き取り側中間ローラ11に接触することで、室温〜200℃の範囲の温度まで100℃/分以上の速さで急激に冷却されていた。
そのため、CIS化合物薄膜においてCIS化合物の結晶の微細化が起こり(SEM観察による結晶粒の大きさ0.5μm以下)、太陽電池特性が低下するという問題があった。また、550℃から、室温〜200℃の範囲の温度まで冷却されるCIS化合物薄膜は、300℃以上でありながらVI族元素Seが供給されない状態を経るため、CIS化合物薄膜からSeが再蒸発してしまい、膜欠陥が生じ、太陽電池特性が低下する問題があった。たとえば、形成したCIS化合物薄膜上にCBD法でCdSを堆積し、スパッタ法でZnO膜とITO膜を積層し、最後に電子ビーム蒸着で電極を形成してCIS太陽電池セルを作製した場合、その特性は変換効率6.0%、開放電圧=0.35V、短絡電流密度=33mA/cm2、曲線因子=52%という低いものとなることがあった。
またロール蒸着装置内の壁面の温度は制御されておらず、室温付近の温度となっていたため、CIS化合物薄膜に取り込まれなかったSeは装置内の壁面に付着してしまい、Seの利用効率が低かった。実際にSeの利用効率を「CIS薄膜へSeが取り込まれる量/Se蒸着源の中のSe原料の減少量×100」として求めると、約5%と算出された。材料費に大きく影響する結果である。
平成13年度 新エネルギー・産業技術総合開発機構委託業務成果報告書「CIS系薄膜太陽電池モジュール製造技術開発(高品質薄膜製造高速化技術)」
本発明は上記問題に鑑みて、I−III−VI族化合物半導体薄膜を形成する際に、結晶の微細化や膜欠陥の発生を防止することができ、かつ、Seの利用効率を向上できる化合物半導体薄膜の製造方法および製造装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の化合物半導体薄膜の製造方法は、帯状の基材を送り出しロールと巻き取りロールとによりチャンバー内で走行させながら、前記基材の一主面上にI族元素、III族元素、VI族元素を供給してI−III−VI族化合物半導体薄膜を形成する際に、前記送り出しロールと巻き取りロールとの間に配されて前記I族元素、III族元素、VI族元素が供給された基材を接触支持する支持部材の基材接触面の温度を、前記基材の温度低下を緩和するように制御することを特徴とするもので、これにより、基材の急激な温度低下を防止して、I−III−VI族化合物の結晶の微細化を抑制できる。
また本発明の化合物半導体薄膜の製造方法は、帯状の基材を送り出しロールと巻き取りロールとによりチャンバー内で走行させながら、前記基材の一主面上にI族元素、III族元素、VI族元素を供給してI−III−VI族化合物半導体薄膜を形成する際に、前記VI族元素は、前記基材の温度がVI族元素が再蒸発しない温度に低下するまで供給することを特徴とするもので、これにより、VI族元素の再蒸発に起因する膜欠陥の発生を防止できる。
好ましくは、VI族元素は、基材の温度が300(℃)以下に低下するまで供給する。基材が300℃以下であれば、I−III−VI族化合物からのVI族元素の再蒸発はほとんど起こらない。300℃よりも高い温度であればVI族元素の再蒸発が起こり易い。
また好ましくは、VI族元素の供給領域に存在する構造体の基材対向面の温度を前記VI族元素の融点以上に制御する。これにより、構造体の基材対向面へのVI族元素の付着を防止することができ、VI族元素の利用効率を向上できる。
また好ましくは、送り出しロールと巻き取りロールとの間に配されてI族元素、III族元素、VI族元素が供給された基材を接触支持する支持部材の基材接触面の温度を、前記基材の温度低下を緩和するように制御する。これにより、基材の急激な温度低下を防止して、I−III−VI族化合物の結晶の微細化を抑制できる。
好ましくは、少なくとも2個の支持部材の基材接触面の温度を300(℃)以上に制御する。このことにより、基材接触面に接触する基材の温度を300(℃)迄徐々に下げることが可能となり、半導体特性に大きな影響を及ぼす結晶の微細化を抑えることができる。基材温度が300(℃)以下になれば、基材を急冷しても結晶の微細化は起こらない。
好ましくは、I族元素、III族元素、VI族元素の必要量が供給された基材が接触するn番目,n+1番目の支持部材は、それぞれの基材接触面の温度をT(n),T(n+1)(℃)、互いの距離をL(n)(m)とした時に、次の式
T(n)>T(n+1)≧300
L(n)=(T(n)−T(n+1))/dt×v
0<dt<30
(ただし、基材の走行速度v(m/分)、基材の降温速度dt(℃/分)である)
を満たすように配置し、温度制御する。基材の降温速度dtを30℃/min.より遅くすることで、半導体特性に大きな影響を及ぼす結晶の微細化を抑えることができる。30℃/min.より速いと結晶の微細化が顕著になる。
また好ましくは、I族元素、III族元素、VI族元素の必要量が供給された基材が接触する第1番目の支持部材は、基材接触面の温度をT(1)(℃)、I族元素およびIII族元素の少なくとも一方が供給される範囲からの最短距離をx(m)とした時に、次の式
T(1)<Ts
x=(Ts−T(1))/dt×v
0<dt<30
(ただし、I族元素およびIII族元素の少なくとも一方が供給される範囲の基材の温度Ts(℃)、基材の走行速度v(m/分)、基材の降温速度dt(℃/分)である)
を満たすように配置し、温度制御する。
I族元素がCuとAgの内の少なくとも1種であり、III族元素がAl、In、Gaの内の少なくとも1種であり、VI族元素がO、S、Seの内の少なくとも1種である時に有効である。
また、基材がステンレス、ガラス、ポリイミド、SiO、Al、TiO、Moの内の少なくとも1種から構成された時に有効である。
本発明の化合物半導体薄膜の製造装置は、チャンバーと、前記チャンバー内で帯状の基材を走行させる送り出しロールおよび巻き取りロールを含んだ機構と、前記基材の一主面上にI族元素、III族元素、VI族元素を供給する機構とを備え、I−III−VI族化合物半導体薄膜を形成する製造装置において、前記送り出しロールと巻き取りロールとの間に配されて前記I族元素、III族元素、VI族元素が供給された基材を接触支持する複数の支持部材を、前記基材の温度低下を緩和するように基材接触面を温度制御可能に構成したことを特徴とする。
また本発明の化合物半導体薄膜の製造装置は、チャンバーと、前記チャンバー内で帯状の基材を走行させる送り出しロールおよび巻き取りロールを含んだ機構と、前記基材の一主面上にI族元素、III族元素、VI族元素を供給する機構とを備え、I−III−VI族化合物半導体薄膜を形成する製造装置において、VI族元素を供給する供給部を1または複数個設け、その内の少なくとも1個を、前記基材の温度がVI族元素が再蒸発しない温度に低下するまで供給可能に配置した構成としたことを特徴とする。
好ましくは、VI族元素の供給領域に存在する構造体を、基材対向面の温度を前記VI族元素の融点以上に制御可能に構成する。
本発明によれば、I−III−VI族化合物半導体薄膜が形成される帯状基材を接触支持する支持部材を、基材の温度低下を緩和するように温度制御するので、I−III−VI族化合物の結晶の微細化が起こりにくい。
また、基材の温度がVI族元素が再蒸発しない温度に低下するまでVI族元素を供給するので、基材上に形成されたI−III−VI族化合物半導体薄膜からのVI族元素の再蒸発に起因する膜欠陥を防止できる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態における化合物半導体薄膜の製造装置の概略構成を示す断面図である。この実施形態の装置において、先に図2を用いて説明した従来の装置と同様の作用を有する部材には同じ符号を付して説明する。
1は真空容器、2は真空容器1内に別途容器として設けられた製膜室、3は真空容器1内を排気する排気装置としてのターボ分子ポンプである。
製膜室2には、製膜領域13が下部に形成されるとともに、この製膜領域13の一側部から上部にわたる断面L型の冷却領域14が形成されている。基板(帯状基材)12を製膜室2内に供給するためのスリット2a,2bはそれぞれ製膜領域13,冷却領域14に開口しており、スリット2a,2bの外側にそれぞれ一対ずつ、送り出しロール8,送り出し側中間ローラ9、および、巻き取りロール10,巻き取り側中間ローラ11が配置されている。
製膜領域13は冷却領域14に対して、スリット2aに対応する位置まで下垂した仕切板により上部のみ仕切られており、仕切られた上部領域にヒータ4が設けられ、下部領域にCu蒸着源5,In蒸着源6,Se蒸着源7が設けられている。冷却領域14内にもSe蒸着源15が設けられている。
基板12は送り出しロール8に巻回されていて、図示したように、製膜室2(製膜領域13,冷却領域14)内を経て巻き取りロール10に取り付けられており、送り出しロール8および巻き取りロール10の動力によってテンションがかけられるとともに、スリット2a,2bの近傍の送り出し側中間ローラ9,巻き取り側中間ローラ11,および製膜室2内の冷却領域14に配置された第1,第2,第3の製膜室内中間ローラ16,17,18(以下、単に第1,第2,第3の中間ローラ16,17,18という)により接触支持されることで、製膜室2内で撓むことなく展張されている。前記Se蒸着源15は第1の中間ローラ16の近傍に配置されている。
製膜室2の内外の第1,第2,第3の中間ローラ16,17,18,巻き取り側中間ローラ11はそれぞれ、基板12への接触面を温度制御可能に構成されていて、熱伝導によって、基板12の接触部分の温度を制御することが可能である。製膜室2の内壁面も所望温度に加熱可能である。
第1の中間ローラ16は、基板12に対するCu蒸着源5,In蒸着源6からの蒸気供給範囲からの距離x(m)が0.5mとなるように設置されている。第2の中間ローラ17は第1の中間ローラ16からの距離L(1)(m)が1mとなるように、第3の中間ローラ18は第2の中間ローラ17からの距離L(2)(m)が1mとなるように設置されている。
上記構成における化合物半導体薄膜の製造方法を具体的に説明する。
基板2は、SUS304よりなる、幅150mm、厚さ50μmのものをセットする。真空容器1内をターボ分子ポンプ3により1×10−3Pa以下の圧力まで排気する。
その後に、冷却領域14内の第1中間ローラ16,第2中間ローラ17,第3中間ローラ18の基板接触面をそれぞれ500℃、400℃、300℃に制御するとともに、製膜室2の内壁面をSeの融点である217℃以上、ここでは230℃に温度制御する。
また、基板12をヒーター4により550℃に加熱するとともに、基板12の下方のCu蒸着源5、In蒸着源6、Se蒸着源7、および、Se蒸着源15を加熱して、1200℃、900℃、200℃、200℃に保持することにより、Cu、In,Seの蒸気を放出させる。
この状態において、基板12を送り出しロール8から0.1m/分の速度で供給し、巻き取りロール10に巻き取ることにより、基板12の表面に連続的にCIS(CuInSe)の化合物薄膜を形成する。
以上のようにして形成したCIS化合物薄膜について、CIS化合物の結晶粒の大きさを調べたところ、0.8μm程度まで大きく成長していた。またこのCIS化合物薄膜の上に、CBD法でCdS層を堆積し、スパッタ法でZnO膜、ITO膜を形成し、最後に電子ビーム蒸着で電極を形成して、CIS太陽電池セルを作製したところ、その特性は、変換効率8.8%、開放電圧=0.45V、短絡電流密度=35mA/cm、曲線因子=0.56にまで劇的に向上した。Seの利用効率も15%にまで向上した。
これは、冷却領域14内の第1中間ローラ16,第2中間ローラ17,第3中間ローラ18の位置および温度を上記のように設定したことにより、CuおよびInが蒸着された後の基板12を550℃から300℃まで約10℃/分の降温速度で徐々に下げることができ、CIS化合物の結晶の微細化を防止できたためである。
なかでも変換効率の劇的な向上は、CIS化合物の結晶の微細化を防止できたことのほか、Cu蒸着源5、In蒸着源6、Se蒸着源7により蒸着されたCIS薄膜にさらに、第1中間ローラ16の近傍のSe蒸着源15によって、基板12の温度が300℃になるまでSeを照射し続けたため、CIS薄膜からのSeの再蒸発を防止することができ、再蒸発Seに起因する膜欠陥の発生を防止できたことによる。
Seの利用効率の飛躍的な向上は、Se蒸着源7,15の温度設定を200℃という従来より低い温度まで下げたことで、Seの蒸発量を従来の3分の1程度まで低減できたこと、および、製膜室2の内壁面をSeの融点以上の温度230℃に温度制御したことで、Seが製膜室2の内壁面へ付着するのを防止できたためである。
なお、L(1)(m)に相当する部分へのSe蒸気の供給は、Se蒸着源15から直接に行なわれるが、L(2)(m)に相当する部分へは、製膜室2の内壁面から再蒸発したSe蒸気が供給される。L(2)(m)に相当する部分により十分量のSe蒸気を確保するために、仮想線で示したようにSe蒸着源15´を対向配置してもよい。
製膜室2を真空容器1の内部に2重構造状に設けたことは、製膜室2の内壁面の温度制御を容易化できるだけでなく、製膜室2内で発生した金属蒸気が真空容器1の内部全体を汚染するのを防ぐ利点もある。
以上述べた実施形態は、真空容器1や製膜室2の形状、蒸着源5,6,7,15の配置や制御温度等に関して、様々なバリエーションの一部を例示したに過ぎず、本発明はこれらに限定されるものではない。
基板12の巻き取り速度0.1m/分や、第1,第2,第3の中間ローラ16,17,18の配置や制御温度も、基板12を平均10℃/分の降温速度で変化させるための例示に過ぎない。
第1中間ローラ16の位置および温度は次の関係式から決定することができる。つまり、Cu蒸着源5,In蒸着源6,Se蒸着源7によりCu,In,Seとも必要量(SeはCuおよびInに対して化学量論比)を供給し終えた位置と第1中間ローラ16との間の距離x(m)、第1中間ローラ16の基板12との接触面の制御温度T(1)(℃)、基板12の降温速度dt(℃/分)、CuまたはInSeの供給時の基板12の温度Ts(℃)、基板12の走行速度v(m/分)とした時に、
T(1)<Ts、
0<dt<30
x=(Ts−T(1))/dt×v
が成り立つように各値を設定する。
ここで、0<dt<30が満たされるのがCIS化合物の結晶の微細化を防ぐのに効果的であるが、5<dt<20が満たされるのが特に効果的である。
例えば、Ts=600℃、T(1)=510℃、dt=15℃/分、v=0.2m/分とした場合には、x=(600−510)/15×0.2=1.2mと決定することができる。
基板12が、CuおよびInが供給された後、巻き取りロール10に巻き取られるまでに、n番目,(n+1)番目に接触する中間ローラ(上記実施形態における第1中間ローラ16,第2中間ローラ17,第3中間ローラ18)の位置や温度は次の関係式から決定することができる。つまり、基板12の走行速度をv(m/分)、互いの距離をL(m)、基板12との接触面の制御温度をT(℃)、基板12の降温速度をdt(℃/分)とした時に、
T(n)>T(n+1)≧300
L(n)=(T(n)−T(n+1))/dt×v
0<dt<30
が成り立つように各値を設定する。
ここでも、0<dt<30が満たされるのがCIS化合物の結晶の微細化を防ぐのに効果的であるが、5<dt<20が満たされるのが特に効果的である。
上記実施形態では、基板12にCuおよびInが供給された後、基板12が巻き取りロール10に巻き取られるまでに、基板12との接触面が300℃以上に制御された3個の巻き取り側中間ローラ(第1中間ローラ16,第2中間ローラ17,第3中間ローラ18)に接触する構成を例示したが、3個に限定されず、少なくとも2個に接触するようにすればよい。ただし、300℃以上の巻き取り側中間ローラが2個の場合には、基板12の温度が巻き取り側中間ローラの近くで急激に変化し、基板12の降温速度の制御性が低くなる恐れがあるため、3個以上、できるだけ多くの設置が効果的である。
上記した巻き取り側中間ローラ(第1中間ローラ16,第2中間ローラ17,第3中間ローラ18,巻き取り側中間ローラ11)の他に、例えば、送り出しロール8、送り出し側中間ローラ12、巻き取りロール10の温度を制御するのも好ましい。特に、巻き取りロール10を室温に制御することで、巻き取りロール10に巻き取られた基板12上のCIS化合物薄膜に余計な熱履歴を加えることを防ぐことができ、高品質のCIS化合物薄膜を得るために有効である。
蒸着の際の基板12の温度は上記した550℃に限定されず、例えば500〜650℃の範囲でもよい。
製膜室2の内壁面の温度制御は上記した230℃に限定されない。金属Seの融点は217℃であることから、217℃以上に温度制御するようにしてもよい。Seの同素体には融点が170℃のものが存在するため、170℃以上に温度制御するようにしてもよい。
製膜室2の内壁面は、VI族元素が照射される基板12が対面する構造物の一例であるが、他に、防着板などを設けてその温度を制御するようにしても同様の効果が得られる。
I−III−VI族化合物半導体薄膜の一例として、CuInSe(CIS)薄膜の形成を例示したが、これに限定されず、I族元素としてCuとAgの内の少なくとも1種を含み、III族元素としてAl、In、Gaの内の少なくとも1種を含み、VI族元素としてO、S、Seの内の少なくとも1種を含んだ、I−III−VI族化合物半導体薄膜の製膜に特に効果的である。
基材としての基板12は、上記したステンレスの他、ガラス、ポリイミド、SiO、Al、TiO、Moなどのいずれか1種であってもよい。
本発明の化合物半導体薄膜の製造方法および製造装置は、太陽電池の光吸収層として用いられるCIS薄膜など、長尺の帯状基材上に化合物半導体薄膜を連続的に形成するのに有用である。
本発明の一実施形態における化合物半導体薄膜の製造装置の概略構成を示す断面図 従来の化合物半導体薄膜の製造装置の概略構成を示す断面図
符号の説明
1 真空容器
2 製膜室
2a,2b スリット
3 ターボ分子ポンプ
4 ヒーター
5 Cu蒸着源
6 In蒸着源
7 Se蒸着源
8 送り出しロール
9 送り出し側中間ローラ
10 巻き取りロール
11 巻き取り側中間ローラ
12 基板
13 製膜領域
14 冷却領域
15 Se蒸着源
16 第1の製膜室内中間ローラ
17 第2の製膜室内中間ローラ
18 第3の製膜室内中間ローラ

Claims (13)

  1. 帯状の基材を送り出しロールと巻き取りロールとによりチャンバー内で走行させながら、前記基材の一主面上にI族元素、III族元素、VI族元素を供給してI−III−VI族化合物半導体薄膜を形成する際に、
    前記送り出しロールと巻き取りロールとの間に配されて前記I族元素、III族元素、VI族元素が供給された基材を接触支持する支持部材の基材接触面の温度を、前記基材の温度低下を緩和するように制御する化合物半導体薄膜の製造方法。
  2. 帯状の基材を送り出しロールと巻き取りロールとによりチャンバー内で走行させながら、前記基材の一主面上にI族元素、III族元素、VI族元素を供給してI−III−VI族化合物半導体薄膜を形成する際に、
    前記VI族元素は、前記基材の温度がVI族元素が再蒸発しない温度に低下するまで供給する化合物半導体薄膜の製造方法。
  3. VI族元素は、基材の温度が300(℃)以下に低下するまで供給する請求項2記載の化合物半導体薄膜の製造方法。
  4. VI族元素の供給領域に存在する構造体の基材対向面の温度を前記VI族元素の融点以上に制御する請求項2または請求項3のいずれかに記載の化合物半導体薄膜の製造方法。
  5. 送り出しロールと巻き取りロールとの間に配されてI族元素、III族元素、VI族元素が供給された基材を接触支持する支持部材の基材接触面の温度を、前記基材の温度低下を緩和するように制御する請求項2から請求項4のいずれかに記載の化合物半導体薄膜の製造方法。
  6. 少なくとも2個の支持部材の基材接触面の温度を300(℃)以上に制御する請求項1または請求項5のいずれかに記載の化合物半導体薄膜の製造方法。
  7. I族元素、III族元素、VI族元素の必要量が供給された基材が接触するn番目,n+1番目の支持部材は、それぞれの基材接触面の温度をT(n),T(n+1)(℃)、互いの距離をL(n)(m)とした時に、次の式
    T(n)>T(n+1)≧300
    L(n)=(T(n)−T(n+1))/dt×v
    0<dt<30
    (ただし、基材の走行速度v(m/分)、基材の降温速度dt(℃/分)である)
    を満たすように配置し、温度制御する請求項1、請求項5、請求項6のいずれかに記載の化合物半導体薄膜の製造方法。
  8. I族元素、III族元素、VI族元素の必要量が供給された基材が接触する第1番目の支持部材は、基材接触面の温度をT(1)(℃)、I族元素およびIII族元素の少なくとも一方が供給される範囲からの最短距離をx(m)とした時に、次の式
    T(1)<Ts
    x=(Ts−T(1))/dt×v
    0<dt<30
    (ただし、I族元素およびIII族元素の少なくとも一方が供給される範囲の基材の温度Ts(℃)、基材の走行速度v(m/分)、基材の降温速度dt(℃/分)である)
    を満たすように配置し、温度制御する請求項1、請求項5、請求項6、請求項7のいずれかに記載の化合物半導体薄膜の製造方法。
  9. I族元素がCuとAgの内の少なくとも1種であり、III族元素がAl、In、Gaの内の少なくとも1種であり、VI族元素がO、S、Seの内の少なくとも1種である請求項1〜請求項8のいずれかに記載の化合物半導体薄膜の製造方法。
  10. 基材がステンレス、ガラス、ポリイミド、SiO、Al、TiO、Moの内の少なくとも1種から構成された請求項1〜請求項9のいずれかに記載の化合物半導体薄膜の製造方法。
  11. チャンバーと、前記チャンバー内で帯状の基材を走行させる送り出しロールおよび巻き取りロールを含んだ機構と、前記基材の一主面上にI族元素、III族元素、VI族元素を供給する機構とを備え、I−III−VI族化合物半導体薄膜を形成する製造装置において、
    前記送り出しロールと巻き取りロールとの間に配されて前記I族元素、III族元素、VI族元素が供給された基材を接触支持する複数の支持部材を、前記基材の温度低下を緩和するように基材接触面を温度制御可能に構成した化合物半導体薄膜の製造装置。
  12. チャンバーと、前記チャンバー内で帯状の基材を走行させる送り出しロールおよび巻き取りロールを含んだ機構と、前記基材の一主面上にI族元素、III族元素、VI族元素を供給する機構とを備え、I−III−VI族化合物半導体薄膜を形成する製造装置において、
    VI族元素を供給する供給部を1または複数個設け、その内の少なくとも1個を、前記基材の温度がVI族元素が再蒸発しない温度に低下するまで供給可能に配置した化合物半導体薄膜の製造装置。
  13. VI族元素の供給領域に存在する構造体を、基材対向面の温度を前記VI族元素の融点以上に制御可能に構成した請求項12記載の化合物半導体薄膜の製造装置。
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