JP2005126427A - ギ酸エステル及びメタノールの製造方法 - Google Patents

ギ酸エステル及びメタノールの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明は、超臨界相における反応の利点を有し、さらに超臨界状態の溶媒が触媒作用を示すため、高転化率にて運転可能で、かつ、240℃以下の低温で副反応がほとんど進行せず、ギ酸エステル及びメタノールを合成することを可能とする製造方法を提供する。
【解決手段】 一酸化炭素又は二酸化炭素の一方又は双方と水素を含む原料ガスを触媒の存在下反応させてギ酸エステル及びメタノールを製造する方法であって、溶媒が触媒作用を示すアルコールを含み、該アルコールが超臨界流体となる条件で反応を行うことを特徴とするギ酸エステル及びメタノールの製造方法である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ギ酸エステル及びメタノールの製造方法に関する。さらに詳しくは、一酸化炭素又は二酸化炭素の一方又は双方の炭素源と水素からメタノールを製造する際に、高効率で生成物を得る方法に関する。
一般的に、工業的にメタノールを合成する際には、メタンを主成分とする天然ガスを水蒸気改質して得られる一酸化炭素と水素(合成ガス)を原料とし、銅・亜鉛系等の触媒を用いて固定床気相法にて、200〜300℃、5〜25MPaという厳しい条件で合成される(非特許文献1)。本反応は発熱反応であるが、気相法では熱伝導が悪いために、効率的な抜熱が困難であることから、反応器通過時の転化率を低く抑えて、未反応の高圧原料ガスをリサイクルするという効率に難点のあるプロセスとなっている。しかし、合成ガス中に含まれる、水、二酸化炭素による反応阻害は受けにくいという長所を活かして、様々なプラントが稼働中である。
一方、液相でメタノールを合成して、抜熱速度を向上させる様々の方法が検討されている。中でも、低温(100〜180℃程度)で活性の高い触媒を用いる方法は、熱力学的にも生成系に有利であり、注目を集めている(非特許文献2等)。しかし、これらの方法では、合成ガス中に含まれることが多い水、二酸化炭素による活性低下が報告され、何れも実用には至っていない(非特許文献3)。
メタノール合成を超臨界状態で行う従来例としては、特許文献1が挙げられる。これは、二酸化炭素と水素を原料としたメタノール合成であり、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンのような反応に不活性な溶媒が超臨界となる条件下で反応を行う方法で、気相における合成法と比較してメタノール生成速度を高めることができる。また、一酸化炭素を含めた酸化炭素と水素を原料としてメタノールを合成する方法も、特許文献2、特許文献3に開示されている。特許文献1と同様に、超臨界流体として反応に不活性な流体を用いている。これらの超臨界相メタノール合成については、超臨界流体の役割は、反応ガスの拡散、生成物の触媒表面からの除去、反応熱の除去を促進させることであり、超臨界流体自身の触媒効果については全く検討されていない。
一方、本発明者らは溶媒として触媒作用を持つアルコールを用いて、超臨界相で反応を行うと、反応に不活性な溶媒を使用した場合と比較して、転化率が著しく向上することを見出した(非特許文献4)。触媒作用を持つ溶媒として2-ブタノールを、触媒として工業用Cu/ZnOを使用した技術について公表しているが、2-ブタノールの臨界温度が263℃であるため、反応温度は265℃の高温領域である。しかし、このような250℃以上の高温領域では、Cu系触媒上で、副反応として溶媒アルコールの脱水素によるケトンの生成反応が進行する。そのため、実機プロセスにおいて溶媒のリサイクルを考えた際に、ケトンの蓄積が問題であった。
特開2000-336050号公報 特開平11-71308号公報 特開2000-204053号公報 J. C. J. Bart et al., Catal. Today, 2, p.1 (1987) 大山聖一, PETROTECH, 18(1), p.27 (1995) S. Ohyama, Applied Catalysis A: General, 180, p.217 (1999) P.Reubroycharoen et al., Fuel, 82, p.2255 (2003)
本発明は、上記の課題を解決することを目的とするものであり、現行気相法における熱力学的制限を解消可能であり、低温液相法において問題となる触媒失活も無く、高効率でメタノールを製造可能な超臨界相メタノール合成において、超臨界流体が反応に不活性な溶媒である従来法とは異なり、触媒作用を持つアルコールである為、著しく高効率な方法であって、240℃以下の低温で反応を行うことで、副反応がほとんど進行せず、ギ酸エステル及びメタノールを合成することを可能とする、製造方法を提供するものである。
本発明の特徴とするところは、以下に記す通りである。
(1) 一酸化炭素又は二酸化炭素の一方又は双方と水素を含む原料ガスを触媒の存在下反応させてギ酸エステル及びメタノールを製造する方法であって、溶媒が触媒作用を示すアルコールを含み、該アルコールが超臨界流体となる条件で反応を行うことを特徴とするギ酸エステル及びメタノールの製造方法。
(2) 一酸化炭素又は二酸化炭素の一方又は双方と水素を含む原料ガスを触媒の存在下反応させ、溶媒が触媒作用を示すアルコールを含み、該アルコールが超臨界流体となる条件で反応を行い、ギ酸エステル及びメタノールを生成すると共に、さらに、生成したギ酸エステルを水素化してメタノールを製造することを特徴とするメタノールの製造方法。
(3) 一酸化炭素又は二酸化炭素の一方又は双方と水素を含む原料ガスを触媒の存在下反応させ、溶媒が触媒作用を示すアルコールを含み、該アルコールが超臨界流体となる条件で反応を行い、ギ酸エステル及びメタノールを生成し、得られた生成物を反応系から分離した後、該生成物中のギ酸エステルを水素化分解触媒で水素化してメタノールを製造することを特徴とするメタノールの製造方法。
(4) 前記触媒作用を示すアルコールの臨界温度が240℃以下である(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法。
(5) 前記触媒作用を示すアルコールが2-プロパノールである(1)〜(4)のいずれかに記載の製造方法。
(6) 前記溶媒に反応に不活性な溶媒を含む(1)〜(5)のいずれかに記載の製造方法。
(7) 前記反応に不活性な溶媒が有機溶媒である(6)記載の製造方法。
(8) 前記有機溶媒の臨界温度が200℃以下である(7)記載の製造方法。
(9) 前記有機溶媒がn-ブタンである(8)記載の製造方法。
(10) 前記触媒が、アルカリ金属系触媒又はアルカリ土類金属系触媒の一方又は双方である(1)〜(9)のいずれかに記載の製造方法。
(11) 前記触媒が、CuとZn、Mg、Mn、Reの1種以上を同時に含有する触媒である(1)〜(10)のいずれかに記載の製造方法。
本発明の触媒作用を持つ溶媒アルコールを240℃以下の超臨界相で反応させるギ酸エステル及びメタノールの製造方法によると、従来法に比べ高収率で合成でき、かつ250℃以上の超臨界相メタノール合成において問題となっていた副生成物の生成も無いため、安価にギ酸エステル及びメタノールを供給することが可能になった。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明者らは、鋭意検討した結果、触媒作用を持つ臨界温度240℃以下の溶媒が超臨界流体になる条件で触媒の存在下反応を行うと、一酸化炭素又は二酸化炭素の一方又は双方と水素からなる原料ガスから、高効率でギ酸エステル及びメタノールが製造可能であることを見出し、本発明に至った。
例えば、図1に示すような反応プロセスで連続的にメタノールを製造し得る。固定床流通式の管型反応器4に触媒を充填し、合成ガス1と、気化器3によって気化した溶媒アルコール2’を供給する。反応器出口の生成物、溶媒アルコール、未反応ガスの混合物を冷却器5で冷却し、未反応ガス6と、生成物と溶媒アルコールの混合物7に分離し、後者は次段に設置した蒸留塔8においてメタノール9と溶媒アルコール2に分離する。転化率が低い場合は、未反応ガス6を再度管型反応器4に供給することも可能であるが、高収率で得られる場合は、未反応ガス6を合成ガス製造の熱源として利用する。蒸留塔8で分離された溶媒アルコール2は気化した後、管型反応器4に再度供給する。
また、ギ酸エステル選択率が高い場合には、製品としてギ酸エステルを得ることが可能であり、生成物と溶媒アルコールの混合物7を蒸留塔8で、ギ酸エステル、メタノール、溶媒アルコールに分離する。
本発明の超臨界流体は、臨界温度が240℃以下の溶媒であり、反応温度240℃以下の低温反応においても超臨界流体として存在する流体である。上記超臨界流体は、ギ酸エステル、メタノール合成反応において触媒作用を示すアルコールであり、具体的には、2-プロパノールが好適である。超臨界相で反応を行う目的は、反応ガスの拡散向上、生成物の触媒表面からの除去促進、反応熱の除去促進であり、超臨界アルコールは、触媒作用と上記利点を併せ持った好適な溶媒である。また、2-プロパノールでは臨界温度が低いため、反応温度を低下できる利点を持つ。超臨界流体は、触媒作用を示す溶媒アルコールと反応に不活性な溶媒の混合流体でもよく、少なくとも一方が超臨界流体であればよい。触媒作用を示す溶媒アルコールとしては、鎖状又は脂環式炭化水素類に水酸基が付いたものの他、フェノール及びその置換体、更には、チオール及びその置換体でも良い。これらアルコール類の炭素数は特に限定されるものではないが、反応効率等の点からは炭素数1〜4のアルコールが好ましく、メタノール、エタノール、プロパノール等の低級アルコールが最も一般的である。反応に不活性な溶媒は、臨界温度が200℃以下の溶媒であり、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサンを含む飽和炭化水素の他、不飽和炭化水素、含酸素炭化水素から選ぶことができる。触媒作用を示す溶媒アルコールと反応に不活性な溶媒の混合比は、特に限定されるものではないが、触媒作用を示す溶媒アルコール含有量は10%以上(モル%)が好適である。臨界温度が200℃以下の不活性溶媒と触媒作用を示す溶媒アルコールの混合系は、反応ガスの拡散向上、生成物の触媒表面からの除去促進、反応熱の除去促進のような超臨界相としての利点と、アルコールの触媒作用による反応促進の利点を低い反応温度において併せ持つことが可能である。反応は、超臨界相で行うため、使用する溶媒の臨界温度、臨界圧によって反応条件は制限され、使用する触媒によっても異なるが、温度70〜240℃、圧力10〜100気圧の範囲が好ましい。ただし、これらに限定されない。
使用する触媒は、ギ酸エステル合成、メタノール合成それぞれにおいて好適な触媒から選ぶことができる。
ギ酸エステル合成では、アルカリ金属系触媒又はアルカリ土類金属系触媒の一方又は双方を用いると、水や二酸化炭素が混在しても、一酸化炭素とアルコール類からギ酸エステルが製造可能であり、好適である。これらのアルカリ金属系としては、リチウム、カリウム、ナトリウム、セシウム等の金属化合物もしくは単体が挙げられ、一方、アルカリ土類金属系としては、カルシウム、マグネシウム、バリウム、ストロンチウム等の金属化合物もしくは単体が挙げられる。これらの金属化合物としては、金属塩もしくは金属酸化物が好適であり、さらに好適には、アルカリ金属系触媒のアルカリ金属塩、例えば、炭酸塩、硝酸塩、リン酸塩、酢酸塩、ギ酸塩等が挙げられる。これらの触媒は、常法により一般的な担体に担持させて用いることもできる。上記触媒を使用する場合、触媒作用を示すアルコール類としては、反応効率等の点から、第1級アルコールが好ましく、メタノール、エタノール等の低級アルコールが最も一般的である。
メタノール合成では、Cuに加えて、Zn、Mg、Mn、Reの1種以上を同時に含有する触媒を用いると、低温においても高転化率にてメタノールが製造可能であり、具体的には、Cu/ZnOx、Cu/MgOx、Cu/MnOx、Cu/ReOx(xは化学的に許容し得る値)が好適である。上記触媒を多孔質無機化合物上に担持させて使用することも可能であり、多孔質無機化合物としては、具体的にはシリカが好適である。これら触媒の調製は、含浸法、沈殿法、ゾルゲル法、共沈法、イオン交換法、混練法、蒸発乾固法等の通常の方法によれば良く、特に限定されるものではないが、共沈法によると高担持率触媒の調製が可能となり、好結果が得られやすい。
生成物として得られるギ酸エステルとメタノールの混合物は、蒸留等により精製してギ酸エステルとメタノールに分離することができ、ギ酸エステルは、そのままメタノールの製造に供することもできる。すなわち、ギ酸エステルを水素化分解してメタノールを製造し得る。水素化分解には水素化分解触媒が用いられ、例えば、Cu、Pt、Ni、Co、Ru、Pd系の一般的な水素化分解触媒を用いることができる。
本発明においては、原料ガスとアルコール類からギ酸エステルとメタノールを生成させる前記反応系に、これらの水素化分解触媒を共存させておくことにより、メタノール選択率を増加させ、効率良くメタノールを製造することができる。
また、前記方法でギ酸エステル選択率が高くメタノール選択率が低いために、メタノールを製造することが困難な場合は、生成したギ酸エステルを蒸留により分離した後に、水素化分解触媒及び水素を共存させて、分離したギ酸エステルを水素化分解してメタノールを得ることも可能である。
また、前記反応系で生成したギ酸エステルとメタノールの混合物を分離せず、その後、水素化分解触媒及び水素を共存させて、混合物中のギ酸エステルを水素化分解してメタノールを得ることもできる。
触媒として、アルカリ金属系触媒又はアルカリ土類金属系触媒の一方又は双方を用いたギ酸エステル及びメタノールの製造方法は、次に示す反応式に基づくものと推定される(アルコール類が、鎖状又は脂環式炭化水素類に水酸基が付いたものである場合を例にとって示す)。
R-OH + CO → HCOOR (1)
HCOOR + 2H2 → CH3OH + R-OH (2)
(ここで、Rはアルキル基を示す。)
また、触媒として、Cu/ZnOx、Cu/MgOx、Cu/MnOx、Cu/ReOx(xは化学的に許容し得る値)を用いたメタノールの製造方法は、次に示す反応式に基づくものと推定される(アルコール類が、鎖状又は脂環式炭化水素類に水酸基が付いたものである場合を例にとって示す)。
CO + H2O → CO2 + H2 (1)
CO2 + H2 + R-OH → HCOOR + H2O (2)
HCOOR + 2H2 → CH3OH + R-OH (3)
したがって、メタノールの製造原料は、一酸化炭素と二酸化炭素の双方と水素であり、アルコール類は回収、再利用し得る。
以下、実施例1〜20と比較例1,2により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。また、これらの結果は表1〜表3として一覧化した。
以下の実施例に記載した、CO転化率、CO2転化率、C転化率、ギ酸エステル選択率、メタノール選択率、メタノール収率は、それぞれ次に示す式により算出した。
●CO転化率(%) = [1-(反応後に回収されたCOモル数)/(仕込んだCOモル数)]×100
●CO2転化率(%) = [1-(反応後に回収されたCO2モル数)/(仕込んだCO2モル数)]×100
●C転化率(%) = CO転化率(%)×[(仕込んだCOモル数)/(仕込んだCO+CO2モル数)] + CO2転化率(%)×[(仕込んだCO2モル数)/(仕込んだCO+CO2モル数)]
●ギ酸エステル選択率(%) = [(反応後に回収されたギ酸エステルモル数)/{(C転化率(%))×(仕込んだCO+CO2モル数)}]×100
●メタノール選択率(%) = [(反応後に回収されたメタノールモル数)/{(C転化率(%))×(仕込んだCO+CO2モル数)}]×100
●メタノール収率(%) = (生成したメタノールモル数)/(仕込んだCO+CO2モル数)×100
(実施例1)
管型固定床流通式反応器に、工業用Cu/ZnO触媒(ICI 51-2)を0.5g充填した。溶媒の2-プロパノールは、高圧ポンプにて供給した。合成ガス(CO:31.8%、CO2:5.0%、H2:60.2%、Ar:3.0%)の分圧を1MPa、2-プロパノールの分圧を5MPaとし、240℃の2-プロパノールが超臨界流体となる条件で、6時間、反応を行った。反応生成物は、反応器後段に設置したコールドトラップにて回収した。未反応ガス、反応生成物は、ガスクロマトグラフで分析した。CO転化率77.4%、CO2転化率22.5%、C転化率69.9%、ギ酸プロピル選択率11.9%、メタノール選択率88.1%、メタノール収率61.6%であった。比較例1に記載の超臨界流体にならない条件と比較するとメタノール収率が著しく増加した。
(比較例1)
反応温度を2-プロパノールが超臨界流体にならない230℃とする他は、実施例1に記載の方法で反応を行った。CO転化率58.2%、CO2転化率18.0%、C転化率52.9%、ギ酸プロピル選択率12.1%、メタノール選択率87.9%、メタノール収率46.5%であった。
(実施例2)
水素化分解触媒として、Cu/SiO2触媒(ENGELHARD製Cu-0860 E 1/8)0.5gを、さらに添加する他は、実施例1と同様の条件で反応を行った。CO転化率78.1%、CO2転化率24.1%、C転化率70.8%、ギ酸プロピル選択率0.9%、メタノール選択率99.1%、メタノール収率70.1%であった。水素化分解触媒の共存によって、メタノール選択率、メタノール収率が増加した。
(実施例3)
実施例1に記載の方法で反応を行った後、コールドトラップ中の溶媒と生成物の液体混合物を回収した。実施例2に記載のCu/SiO2触媒0.5gを反応器に充填し、該液体混合物を高圧ポンプにて供給した。純水素ガスを供給し、反応温度150℃、反応圧2MPaで反応を行い、反応生成物をガスクロマトグラフで分析した。この反応では、ギ酸プロピルが水素化分解されてメタノールが生成する。水素化分解反応は、ギ酸プロピル転化率88.7%、メタノール選択率98.2%、CO選択率1.8%であった。実施例1からの一貫反応として評価すると、CO転化率75.4%、CO2転化率22.5%、C転化率68.2%、ギ酸プロピル選択率1.3%、メタノール選択率98.5%、メタノール収率67.2%であった。
(実施例4)
管型固定床流通式反応器に、工業用Cu/ZnO触媒(ICI 51-2)を0.5g充填した。溶媒の2-プロパノールは高圧ポンプにて供給した。合成ガス(CO:31.8%、CO2:5.0%、H2:60.2%、Ar:3.0%)の分圧を1MPa、2-プロパノールの分圧を1MPa、反応に不活性なn-ブタンの分圧を4MPaとし、240℃の2-プロパノール及びn-ブタンが超臨界流体となる条件で、6時間、反応を行った。反応生成物は、反応器後段に設置したコールドトラップにて回収した。未反応ガス、反応生成物は、ガスクロマトグラフで分析した。CO転化率26.2%、CO2転化率65.4%、C転化率31.5%、ギ酸プロピル選択率12.3%、メタノール選択率87.7%、メタノール収率27.6%であった。
(実施例5)
反応温度を200℃とする他は、実施例4に記載の方法で反応を行った。CO転化率20.9%、CO2転化率49.7%、C転化率24.8%、ギ酸プロピル選択率11.6%、メタノール選択率88.4%、メタノール収率21.9%であった。比較例2に記載の不活性な溶媒のみを使用する場合、比較例3に記載の超臨界流体とならない場合と比較すると、メタノール収率は増加した。
(比較例2)
溶媒として触媒作用を示す2-プロパノールを添加せず、反応に不活性なn-ブタンのみを用い分圧を5MPaとする他は、実施例5に記載の方法で反応を行った。CO転化率14.7%、CO2転化率32.1%、C転化率17.0%、メタン選択率1.3%、メタノール選択率98.7%、メタノール収率16.8%であった。
(比較例3)
管型固定床流通式反応器に、工業用Cu/ZnO触媒(ICI 51-2)を0.5g充填した。溶媒の2-プロパノールは高圧ポンプにて供給した。合成ガス(CO:31.8%、CO2:5.0%、H2:60.2%、Ar:3.0%)の分圧を1MPa、2-プロパノールの分圧を1MPa、反応に不活性なプロパンの分圧を4MPaとし、200℃の2-プロパノール及びプロパンの両者が超臨界流体とならない条件で、6時間、反応を行った。反応生成物は、反応器後段に設置したコールドトラップにて回収した。未反応ガス、反応生成物は、ガスクロマトグラフで分析した。CO転化率10.3%、CO2転化率24.9%、C転化率12.3%、ギ酸プロピル選択率11.1%、メタノール選択率88.9%、メタノール収率10.9%であった。
(実施例6)
水素化分解触媒として、Cu/SiO2触媒(ENGELHARD製Cu-0860 E 1/8)0.5gを、さらに添加する他は、実施例4と同様の条件で反応を行った。CO転化率25.1%、CO2転化率63.7%、C転化率30.3%、ギ酸プロピル選択率1.2%、メタノール選択率98.8%、メタノール収率29.9%であった。水素化分解触媒の共存によって、メタノール選択率、メタノール収率が増加した。
(実施例7)
反応温度を200℃とする他は、実施例6と同様の条件で反応を行った。CO転化率20.2%、CO2転化率50.1%、C転化率24.3%、ギ酸プロピル選択率1.2%、メタノール選択率98.8%、メタノール収率24.0%であった。
(実施例8)
実施例4に記載の方法で反応を行った後、コールドトラップ中の溶媒と生成物の液体混合物を回収した。実施例2に記載のCu/SiO2触媒0.5gを反応器に充填し、該液体混合物を高圧ポンプにて供給した。純水素ガスを供給し、反応温度150℃、反応圧2MPaで反応を行い、反応生成物をガスクロマトグラフで分析した。水素化分解反応は、ギ酸プロピル転化率89.5%、メタノール選択率98.4%、CO選択率1.6%であった。実施例4からの一貫反応として評価すると、CO転化率24.4%、CO2転化率65.4%、C転化率30.0%、ギ酸プロピル選択率1.4%、メタノール選択率98.2%、メタノール収率29.5%であった。
(実施例9)
実施例5に記載の方法で反応を行った後、コールドトラップ中の溶媒と生成物の液体混合物を回収した。実施例8と同様の条件で反応を行い、反応生成物をガスクロマトグラフで分析した。水素化分解反応は、ギ酸プロピル転化率86.5%、メタノール選択率98.7%、CO選択率1.3%であった。実施例5からの一貫反応として評価すると、CO転化率20.1%、CO2転化率49.7%、C転化率24.1%、ギ酸プロピル選択率1.6%、メタノール選択率97.3%、メタノール収率23.4%であった。
(実施例10)
内容積85mlのオートクレーブを用い、触媒として炭酸カリウム2gを仕込み、合成ガス(CO:31.8%、CO2:5.0%、H2:60.2%、Ar:3.0%)の分圧を1MPa、溶媒としてエタノールの分圧を1MPa、反応に不活性なn-ブタンの分圧を4MPaとし、170℃のエタノール及びn-ブタンが超臨界流体となる条件で、2時間、反応を行い、反応生成物をガスクロマトグラフで分析した。CO転化率25.6%、CO2転化率15.2%、C転化率24.2%、ギ酸エチル選択率100%、メタノール選択率0%、メタノール収率0%であった。
(実施例11)
触媒として、Cu(NO3)2・3H2O、Mn(NO3)2・6H2Oを原料として、共沈法で調製したCu/MnO触媒1gをさらに添加する他は、実施例10と同様の条件で反応を行った。CO転化率24.4%、CO2転化率15.6%、C転化率23.2%、ギ酸エチル選択率81.2%、メタノール選択率18.8%、メタノール収率4.4%であった。
(実施例12)
内容積85mlのオートクレーブを用い、触媒として炭酸カリウム2gを仕込み、合成ガス(CO:31.8%、CO2:5.0%、H2:60.2%、Ar:3.0%)の分圧を1MPa、溶媒として2-プロパノールの分圧を5MPaとし、240℃の2-プロパノールが超臨界流体となる条件で、2時間、反応を行い、反応生成物をガスクロマトグラフで分析した。CO転化率37.4%、CO2転化率16.5%、C転化率34.6%、ギ酸プロピル選択率100%、メタノール選択率0%、メタノール収率0%であった。
(実施例13)
触媒として、実施例11に記載したCu/MnO触媒1gをさらに添加する他は、実施例12と同様の条件で反応を行った。CO転化率35.4%、CO2転化率15.9%、C転化率32.8%、ギ酸プロピル選択率79.5%、メタノール選択率20.5%、メタノール収率6.7%であった。
(実施例14)
触媒として、含浸法で調製したシリカ担持炭酸カリウム触媒1gを使用する他は、実施例10と同様の条件で反応を行った。CO転化率19.3%、CO2転化率7.6%、C転化率17.7%、ギ酸エチル選択率98.2%、メタノール選択率1.8%、メタノール収率0.3%であった。
(実施例15)
実施例14に記載の方法で反応を行った後、オートクレーブ中の溶媒、生成物、触媒の混合物から、溶媒と生成物の液体混合物を分取した。該液体混合物と実施例2に記載のCu/SiO2触媒1gをオートクレーブに仕込み、水素ガスを2MPa充填し、150℃、2時間、反応を行い、反応生成物をガスクロマトグラフで分析した。この反応では、ギ酸エチルが水素化分解されて、メタノールが生成する。水素化分解反応は、ギ酸エチル転化率88.8%、メタノール選択率98.1%、CO選択率1.9%であった。実施例14からの一貫反応として評価すると、CO転化率18.2%、CO2転化率7.6%、C転化率16.8%、ギ酸エチル選択率11.0%、メタノール選択率89.0%、メタノール収率15.0%であった。
(実施例16)
触媒として、含浸法で調製したシリカ担持炭酸カリウム触媒1gを使用する他は、実施例12と同様の条件で反応を行った。CO転化率29.8%、CO2転化率13.5%、C転化率27.6%、ギ酸プロピル選択率98.8%、メタノール選択率1.2%、メタノール収率0.3%であった。
(実施例17)
実施例16に記載の方法で反応を行った後、オートクレーブ中の溶媒、生成物、触媒の混合物から、溶媒と生成物の液体混合物を分取した。該液体混合物と実施例2に記載のCu/SiO2触媒1gをオートクレーブに仕込み、水素ガスを2MPa充填し、150℃、2時間、反応を行い、反応生成物をガスクロマトグラフで分析した。この反応では、ギ酸プロピルが水素化分解されて、メタノールが生成する。水素化分解反応は、ギ酸プロピル転化率89.8%、メタノール選択率98.4%、CO選択率1.6%であった。実施例16からの一貫反応として評価すると、CO転化率28.6%、CO2転化率13.5%、C転化率26.5%、ギ酸プロピル選択率11.3%、メタノール選択率88.7%、メタノール収率23.5%であった。
(実施例18)
工業用Cu/ZnO触媒の代わりに、Cu(NO3)2・3H2O、Mg(NO3)2・6H2Oを原料として、共沈法で調製したCu/MgOxを使用する他は、実施例1と同様の条件で反応を行った。CO転化率79.6%、CO2転化率13.4%、C転化率70.6%、ギ酸プロピル選択率6.4%、メタノール選択率93.6%、メタノール収率66.1%であった。
(実施例19)
工業用Cu/ZnO触媒の代わりに、Cu(NO3)2・3H2O、Mg(NO3)2・6H2Oを原料として、共沈法で調製したCu/MgOxを使用する他は、実施例5と同様の条件で反応を行った。CO転化率49.7%、CO2転化率70.5%、C転化率52.5%、ギ酸プロピル選択率8.4%、メタノール選択率91.6%、メタノール収率48.1%であった。
(実施例20)
工業用Cu/ZnO触媒の代わりに、Cu(NO3)2・3H2O、Zn(NO3)2・6H2Oを原料として、共沈法で調製したCu/ZnOを使用する他は、実施例1と同様の条件で反応を行った。CO転化率80.1%、CO2転化率65.1%、C転化率78.2%、ギ酸プロピル選択率4.5%、メタノール選択率95.5%、メタノール収率74.7%であった。
(実施例21)
原料ガスとして、組成の異なる合成ガス(CO:32.1%、H2:64.4%、Ar:3.5%)を使用する他は、実施例20と同様の条件で反応を行った。CO転化率74.6%、ギ酸プロピル選択率3.2%、メタノール選択率96.8%、メタノール収率72.2%であった。
(実施例22)
原料ガスとして、組成の異なる合成ガス(CO2:32.5%、H2:64.3%、Ar:3.2%)を使用する他は、実施例20と同様の条件で反応を行った。CO2転化率71.8%、ギ酸プロピル選択率4.1%、メタノール選択率95.9%、メタノール収率68.9%であった。
Figure 2005126427
Figure 2005126427
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以上より、本発明の超臨界流体となる条件で反応を行うことで、ギ酸エステル及びメタノール、又はメタノールを、触媒失活無く、ケトンのような副生成物も生成せず、高収率で製造することができることが判る。また、不活性溶媒共存系では溶媒として触媒作用を示すアルコールのみの場合と比較すると収率は減少するが、臨界条件が温和なものを用いると、マイルドな反応条件に設定できる利点がある。
本発明の超臨界相メタノール合成を実施する反応プロセスの一例である。
符号の説明
1 合成ガス
2 溶媒アルコール
2’ 気化した溶媒アルコール
3 気化器
4 管型反応器
5 冷却器
6 未反応ガス
7 生成物と溶媒アルコールの混合物
8 蒸留塔
9 メタノール

Claims (11)

  1. 一酸化炭素又は二酸化炭素の一方又は双方と水素を含む原料ガスを触媒の存在下反応させてギ酸エステル及びメタノールを製造する方法であって、溶媒が触媒作用を示すアルコールを含み、該アルコールが超臨界流体となる条件で反応を行うことを特徴とするギ酸エステル及びメタノールの製造方法。
  2. 一酸化炭素又は二酸化炭素の一方又は双方と水素を含む原料ガスを触媒の存在下反応させ、溶媒が触媒作用を示すアルコールを含み、該アルコールが超臨界流体となる条件で反応を行い、ギ酸エステル及びメタノールを生成すると共に、さらに、生成したギ酸エステルを水素化してメタノールを製造することを特徴とするメタノールの製造方法。
  3. 一酸化炭素又は二酸化炭素の一方又は双方と水素を含む原料ガスを触媒の存在下反応させ、溶媒が触媒作用を示すアルコールを含み、該アルコールが超臨界流体となる条件で反応を行い、ギ酸エステル及びメタノールを生成し、得られた生成物を反応系から分離した後、該生成物中のギ酸エステルを水素化分解触媒で水素化してメタノールを製造することを特徴とするメタノールの製造方法。
  4. 前記触媒作用を示すアルコールの臨界温度が240℃以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 前記触媒作用を示すアルコールが2-プロパノールである請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
  6. 前記溶媒に反応に不活性な溶媒を含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
  7. 前記反応に不活性な溶媒が有機溶媒である請求項6記載の製造方法。
  8. 前記有機溶媒の臨界温度が200℃以下である請求項7記載の製造方法。
  9. 前記有機溶媒がn-ブタンである請求項8記載の製造方法。
  10. 前記触媒が、アルカリ金属系触媒又はアルカリ土類金属系触媒の一方又は双方である請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
  11. 前記触媒が、CuとZn、Mg、Mn、Reの1種以上を同時に含有する触媒である請求項1〜10のいずれか1項に記載の製造方法。
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