JP2005106546A - ガス濃度フラックス計測装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】森林等の広域を計測対象とし、共存物質の影響がなく、高応答性で、かつ計測安定性に優れたガス濃度フラックス計測装置を提供する。
【解決手段】レーザ光源と、レーザ出力制御装置と、波長変調制御装置と、第1の受光装置と、第1の直流成分検出器と、第1の波長変調復調器と、光学系と、参照セルと、第2の受光装置と、第2の直流成分検出器と、第2の波長変調復調器と、第3の波長変調復調器と、解析装置と、加算器と、温度計測手段と、圧力計測手段と、計測領域におけるガス流の水平2方向の流速成分と鉛直方向の流速成分とをそれぞれ直接的に計測し、これらの計測信号を解析装置に出力する流速計測手段とを有し、解析装置は、前記流速計測手段から入力される信号を用いて渦相関則に基づく解析を行い、その解析結果を用いて計測対象ガスの運動量フラックスと濃度を演算により求める。
【選択図】 図2

Description

森林でのCO2吸収量評価を行うため、また地面から発生する地球温暖化ガス(GHG)の発生量調査等の環境調査を行うため、あるいはCO2地下処分プラントやガス貯留設備やパイプライン等のガス漏洩を検知するために用いられるガス濃度フラックス計測装置に関する。
近年、温室効果ガス(GHG:CO2,CH4,N2O等)による地球温暖化問題が注目され、地表面や工業プラントからの各種GHG放出/漏洩量や、森林でのCO2吸収量の把握は重要性をますます増してきている。
地表面からの、単位面積当りのガス放出(フラックス)量を把握する最も簡単な方法は、図15Aに示すように、微小穴の開いた容器101を地面100に伏せ、最初に容器101内の計測対象ガスの濃度を計測しておき、一定時間経過後に再度ガス濃度計測を行う手法である。ガス濃度フラックス量は、濃度差および容器の接地面積/容積から見積もることができる。
また、近年、各所で活発に実施され始めている森林CO2フラックス計測では、森林中に観測タワー91を設置し、タワー91上にて時間応答性の良い流速計51とCO2濃度計93,96を用いて大気観測を行い、両者の計測結果を渦相関法にて解析し、森林CO2フラックス量(すなわち、森林によるCO2吸収量)を導出している。例えば、本発明者らは非特許文献1においてCO2フラックスの連続観測を報告している。
具体的には、図15Bに示すように、風速計測に関しては、時間応答性の非常に良い超音波流速計51が一般的に用いられる。CO2濃度計測に関しては、サンプリング管95を用いる方式のクローズドパス型CO2濃度計96が一般的であるが、近年は、時間応答性の良い赤外光源を用いたオープンパス型CO2計93(計測長は1m以下)も使われるようになってきている。
さらに、ガス濃度フラックスそのものではないが、レーザを用いた広域の運動量フラックス(={大気質量(平均密度)×水平方向速度成分}の鉛直方向輸送量)計測技術が開発され、森林計測への応用が進められている。この計測技術は、図15Cに示すように、森林に二基の観測タワー91,92を離して設置し、一方のタワー91上に設置した光源部111から森林上部を透過するようにレーザを2本照射し、もう一方のタワー92上に設置した受光部112によりそれぞれのレーザ透過率の時間変化(シンチレーション)を計測する。
この従来装置の基本構成は、図15Dに示すように、タワー上の2対のレーザ発振器113,114/受光装置115,116および計測室内に設けられた解析部122からなる。計測領域100を透過した2本のレーザ光は受光装置115,116でそれぞれ受光され、受光信号101,102を解析部122へ送る。解析部122では、先ず光路上の大気の乱れ状態を把握するために分散、共分散の解析を行い、次いでMonin-Obukhov相似則による解析手法を用いて運動エネルギや熱の消散率εを求め、さらに運動量フラックスおよび顕熱フラックス(場合によっては潜熱フラックスも含む)を求める。
ところで、大気境界層では地表面の摩擦作用と熱的作用によって乱流が発生し、各種物理量の上空への輸送は、乱流輸送が支配的となることが知られている。Monin-Obukhov相似則(以後、MOSという)は、この領域の大気変数の各種統計量(平均値,分散,共分散,スペクトル等)がz/L(z:測定高さ,L:Monin-Obukhov長)に関する普遍的な関数になることを示している。よって、この相似則が成立する場合は、大気乱流状態(この場合は、レーザ透過率の時間変化→大気密度の乱れ(2次の密度構造関数Dn))を計測し、その計測結果をMOSに基づいて順次解析(大気乱流状態→運動エネルギスペクトル→エネルギ散逸率)を行い、運動量フラックスを導出する。
このように運動量フラックスの導出に関しては、森林上部ではMOSが成立すると仮定し、非特許文献2に記載されている手法を用いてレーザのシンチレーション状態から大気乱流状態を解析し、その結果から、光路上の運動量フラックス量が導き出される(シンチレーション法)。
中屋耕ほか「浅間山東麓ダケカンバ林におけるCO2フラックスの連続観測の紹介」2002年CGERフラックスリサーチミーティング(2002年11月14日)、58頁 Thiermann, V. "A displaced-beam scintillometer for line-averaged measurements of surface layer turbulence". Tenth symposium of turbulence and diffusion, 29 Sept -2 Oct, 1992, Portland, OR., published by the American Meteorological Society, Boston, MA.: p244-p247 (1992).
しかしながら、上述の従来方式を用いてガス濃度フラックスを計測する場合は、以下に示すような種々の問題点がある。
(1)現状のガス濃度計は、フラックス計測に用いられている必要条件を完全に満たしていない。
従来技術の最初に示した、フラックス量の時間変化を考慮しない計測は除き、森林CO2吸収量計測等のフラックス計測に用いられるガス濃度計測には次に掲げる特性が要求される。
(i)高応答性
渦相関法でのフラックス検出には、可能な限り速い応答性が求められる。
(ii)共存物質の影響が無いこと
微量成分検出のため、対象ガス以外の物質に影響を受けないことが要求される。
(iii)計測安定性
長時間の連続計測が必要になるので、計測の安定性が要求される。
通常用いられている、サンプリング式のクローズドパス型ガス濃度計96は、その構造上、計測遅れや希釈効果が働くため、その応答性に問題がある。
また、共存物質(H2O,固体粒子)の影響を受けやすいため、必ず、前処理(除湿,除塵)が必要となり、応答性の向上を困難にしている。
また、応答性改善を目的に導入が始まっているオープンパス型ガス濃度計93は、光源に発振幅の広い赤外光源を用いるため、共存ガス(特に、H2O)の影響を受けやすい。また、光源の問題から、計測安定性にも課題を残している。
(2)広域の連続的なガス濃度計測は不可能である。
現状のクローズドパス式ガス濃度計96ではサンプリング位置近傍の領域のみに計測範囲が限定されてしまう。また、オープンパス型ガス濃度計93では光源の問題から、その計測長はせいぜい1m以下にすぎない。よって、従来方式では1m以上の、例えば、10m、100m、1km規模の広域のガス濃度変動を計測することはできない。なお、従来方式であっても、多数の計測装置を並べて計測すれば、理論的には広域のガス濃度計測も可能である。ただし、多数の計測装置を設置すると、それらの装置自身が障害物となって計測領域の状況(濃度、フラックス等)を変化させるため、正確な広域フラックス計測は不可能である。
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、森林等の広域を計測対象とし、共存物質の影響がなく、高応答性で、かつ計測安定性に優れたガス濃度フラックス計測装置を提供することを目的とする。
本発明者らは、先の特願2003−009785の出願明細書等において常温発振の近赤外半導体レーザを光源とした波長変調方式の非接触ガス濃度計測技術(波長可変半導体レーザ吸収分光法(Tunable Diode Laser Absorption Spectroscopy(以下、TDLASという))を利用したガス濃度モニタリングシステムを提案している。TDLASは、i)時間応答性が非常に良好であること、ii)共存物質(固体粒子など)の影響を受けないこと、iii)波長が安定しているなど計測の安定性が良好であること等の利点を有する計測技術であり、(イ)単純なガス濃度計測技術として、時間応答性の高い流速計と組み合わせて、フラックス計測に応用する(ロ)若しくは、TDLASによるガス濃度計測に利用している、波長や偏光面の制御が可能なレーザを、フラックス計測に応用する手段を用いることで、上記の課題を有効に解決するガス濃度フラックス計測が可能となる。このようなTDLASの機能に着目して本発明者らは以下に述べる本発明を完成した。
本発明に係るガス濃度フラックス計測装置は、計測対象ガスに固有な吸収波長のレーザ光を計測領域に向けて発振する光源と、前記光源の出力動作を制御するレーザ出力制御装置と、前記光源から発振されるレーザの発振波長に対して変調を加えるための変調信号を出力し、かつ、その変調に同期した参照信号を出力する波長変調制御装置と、計測領域を透過してきたレーザを受光し、かつ、その受光強度に応じた信号を出力する第1の受光装置と、前記第1の受光装置から出力された信号の中から変調信号としての交流成分を取り除き、受光強度の直流成分を出力する第1の直流成分検出器と、前記波長変調制御装置からの参照信号に基づいて、前記第1の受光装置から出力された信号の中からレーザに加えた波長変調信号の偶数次高調波成分を検出し、計測領域の計測対象ガス濃度に比例した信号を出力する第1の波長変調復調器と、前記光源から発振されるレーザを2つ以上に分配する光学系と、濃度が既知の前記計測対象ガスが封入され、前記光学系により分配されて計測領域に向かわなくなったレーザが前記封入ガス中を透過するような位置に配置された参照セルと、前記参照セル内の封入ガスを透過してきたレーザを受光し、かつ、その受光強度に応じた信号を出力する第2の受光装置と、前記第2の受光装置から出力された信号の中から変調信号としての交流成分を取り除き、受光強度の直流成分を出力する第2の直流成分検出器と、前記波長変調制御装置からの参照信号に基づいて、前記第2の受光装置から出力された信号の中からレーザに加えた波長変調信号の偶数次高調波成分を検出し、前記参照セル内の封入ガス濃度に比例した信号を出力する第2の波長変調復調器と、前記波長変調制御装置からの参照信号に基づいて、前記第2の受光装置から出力された信号の中からレーザに加えた波長変調信号の奇数次高調波成分を検出し、レーザ波長を計測対象ガスの吸収波長に固定化するための基準信号を出力する第3の波長変調復調器と、前記第1の直流成分検出器、第1の波長変調復調器、第2の直流成分検出器および第2の波長変調復調器から出力された信号に基づいて、計測領域中のガス濃度および固体粒子濃度を算出し、その算出結果を出力する解析装置と、前記波長変調制御装置からの変調信号と前記第3の波長変調復調器からのレーザ波長固定化信号とを加算し、その加算信号を前記レーザ出力制御装置への外部制御信号として出力する加算器と、計測領域の温度を計測し、その計測値に応じた信号を前記解析装置に出力する温度計測手段と、計測領域の圧力を計測し、その計測値に応じた信号を前記解析装置に出力する圧力計測手段と、を具備するガス濃度フラックス計測装置であって、
(1)さらに、計測領域におけるガス流の水平2方向の流速成分と鉛直方向の流速成分とをそれぞれ直接的に計測し、これらの計測信号を前記解析装置に出力する流速計測手段を有し、前記解析装置は、前記流速計測手段から入力される信号を用いて渦相関則に基づく解析を行い、その解析結果を用いて計測領域の運動量フラックス(計測領域全体の水平方向運動量[例:大気平均密度×水平風速]の鉛直方向輸送量)、計測対象ガスの濃度フラックス(計測対象ガスのみの鉛直方向輸送量)および計測対象ガス濃度を演算により求めるか、あるいは、
(2)さらに、計測領域にレーザを照射する第2の光源と、前記第2の光源から出射され計測領域を透過してきたレーザを受光し、かつ、その受光強度に応じた信号を前記解析装置に出力する第3の受光装置と、を有し、前記解析装置は、前記第3の受光装置から入力される信号を用いてレーザ透過率の時間変化を求め、求めたレーザ透過率の時間変化からガス密度の時間変化を導出し、さらにガス密度の時間変化から計測対象ガスの乱れの状態を把握するためにMonin-Obukhov相似則に基づく解析を行い、その解析結果を用いて計測領域の運動量フラックス、計測対象ガスの濃度フラックスおよび計測対象ガス濃度を演算により求めるか、あるいは、
(3)さらに、計測対象ガスに固有な吸収波長のレーザ光を計測領域に向けて発振する第2の光源と、前記第2の光源から発振され計測領域を透過してきたレーザを受光し、かつ、その受光強度に応じた信号を出力する第3の受光装置と、前記第3の受光装置から受けた信号の中から変調信号としての交流成分を取り除き、受光強度の直流成分を前記解析装置に出力する第3の直流成分検出器と、を有し、前記解析装置は、前記第3の直流成分検出器から入力される信号を用いてレーザ透過率の時間変化を求め、求めたレーザ透過率の時間変化からガス密度の時間変化を導出し、さらにガス密度の時間変化から計測対象ガスの乱れの状態を把握するためにMonin-Obukhov相似則に基づく解析を行い、その解析結果を用いて計測領域の運動量フラックス、計測対象ガスの濃度フラックスおよび計測対象ガス濃度を演算により求めるか、あるいは、
(4)さらに、前記単一の光源から発振されるレーザの偏光面を回転させる偏光面回転装置と、前記偏光面回転装置により偏光面が回転されたレーザを受光し、かつ、その受光強度に応じた信号を出力する第3の受光装置と、前記第3の受光装置から受けた信号の中から変調信号としての交流成分を取り除き、受光強度の直流成分を前記解析装置に出力する第3の直流成分検出器と、を有し、前記解析装置は、前記第3の直流成分検出器から入力される信号を用いてレーザ透過率の時間変化を求め、求めたレーザ透過率の時間変化からガス密度の時間変化を導出し、さらにガス密度の時間変化から計測対象ガスの乱れの状態を把握するためにMonin-Obukhov相似則に基づく解析を行い、その解析結果を用いて計測領域の運動量フラックス、計測対象ガスの濃度フラックスおよび計測対象ガス濃度を演算により求めるか、あるいは、
(5)さらに、外部制御されるファラデー回転子を有し、前記単一の光源から発振されるレーザの偏光面を回転させる偏光面回転装置と、前記ファラデー回転子の回転角度を制御し、レーザ偏光面を縦偏光と横偏光に一定周期で切り替えさせる偏光面変調制御装置と、前記偏光面変調制御装置からの強度変調参照信号に基づいて前記第1の受光装置の出力信号中から偏光面変調に同期した信号を検出し、計測領域を透過してきた縦偏光レーザの受光強度に比例した信号を計測部レーザ吸収量信号として前記解析装置に出力する第1の偏光面復調器と、前記偏光面変調制御装置からの強度変調参照信号に基づいて前記第1の受光装置の出力信号中から偏光面変調に同期した信号を検出し、計測領域を透過してきた横偏光レーザの受光強度に比例した信号を計測部レーザ吸収量信号として前記解析装置に出力する第2の偏光面復調器と、前記偏光面変調制御装置からの強度変調参照信号に基づいて前記第1の受光装置の出力信号中から偏光面変調に同期した信号を検出し、計測領域を透過してきたレーザの受光強度に比例した信号を濃度計測信号として前記解析装置に出力する第3の偏光面復調器と、を有し、前記解析装置は、前記第1、第2及び第3の偏光面復調器から入力される信号を用いてレーザ透過率の時間変化を求め、求めたレーザ透過率の時間変化からガス密度の時間変化を導出し、さらにガス密度の時間変化から計測対象ガスの乱れの状態を把握するためにMonin-Obukhov相似則に基づく解析を行い、その解析結果を用いて計測領域の運動量フラックス、計測対象ガスの濃度フラックスおよび計測対象ガス濃度を演算により求めることを特徴とする。
なお、本明細書中において「運動量フラックス」とは、計測領域に存在するガス全体の水平方向運動量(例:大気平均密度×水平方向風速)の鉛直方向輸送量のことをいうものとする。また、「ガス濃度フラックス」とは、計測領域中の計測対象ガスのみの鉛直方向輸送量をいうものとする。
波長変調TDLASとシンチレーション法との組合せに関しては次の2つをあげることができる。
(i)TDLAS装置とシンチレーション計測装置との組合せ
例えば図7に示すように、波長変調TDLASでの広域ガス濃度計測装置と、シンチレーション法による広域運動量フラックス計測装置を組合せ、夫々の計測結果を、Monin-Obukhov相似則に基づいて統合することで、広域のガス濃度フラックス計測が可能となる。
(ii)TDLASガス濃度計測技術にシンチレーション手法を直接組み込む組合せ
例えば図9、図11、図13に示すように、波長変調TDLASにシンチレーション手法の機能を追加し、単体装置による広域のガス濃度フラックス計測装置を可能とさせる。
次に、シンチレーション法による運動量フラックスの導出手順を図16Aと図16Bに示す。シンチレーション法による運動量フラックスの導出に関する基本的な原理は非特許文献2で詳細に説明されている。なお、図16Aと図16Bに示した導出手順においては、その表記を非特許文献2のものとは別表記としているが、基本的な考え方は同じである。
レーザ光が計測領域を通過する際、その領域のガス(大気)が乱れていると、屈折率の変化によりレーザ光が僅かに曲げられ、受光部でレーザ光の瞬き(レーザ・シンチレーション)が計測される。シンチレーション法では、二つの受光部でこの瞬きを計測し、図16Aに示すように、夫々のデータの分散(B1,B2),共分散(B)から、大気の乱れの最小単位(内部スケール)L0,運動量エネルギ散逸率ε,大気密度ρの変動程度(密度構造関数)Cn2をそれぞれ求める。
その結果をMonin-Obukhov相似則に基づいて解析し、図16Bに示す式を用いて大気の摩擦速度u*を求める。次いで、その結果と大気密度ρとを用いて運動量フラックスM(=ρ・(u*)2)を求める。
次に、ガス濃度フラックスの導出手順を図17Aと図17Bを参照して説明する。
通常のシンチレーション法での計測と同様に、レーザ・シンチレーションの計測結果より、内部スケールL0,運動エネルギ散逸率ε,密度構造関数Cn2をそれぞれ求めるとともに、図17Aに示すように、TDLASにより計測領域における計測対象ガス濃度gを求め、その結果から、計測領域の計測対象ガスの変動程度(ガス濃度構造関数)を求め、同様に、温度計測結果より温度構造関数Cr2を求める。
以上の計測結果を、Monin-Obukhov相似則に基づいて解析し、図17Bに示す式を用いて大気の摩擦比濃G*を求める。次いで、その結果と大気の摩擦速度u*と大気密度ρとを用いて計測対象ガスの濃度フラックスG(=ρ・u*・G*)を求める。
本発明によれば、従来技術の課題を克服して計測精度を向上させたガス濃度フラックス計測技術が実現できるばかりでなく、従来技術の組合せだけでは不可能であった広域のガス濃度フラックスのリアルタイム計測が可能となる。このため、本発明を用いた環境計測や、漏洩監視は、従来法を組み合わせた手法と比較すると、大幅な労力,コストの削減が可能になり、最終的には、森林管理や各種プラントの安全管理の高度化が図れる。
また、本発明によれば、レーザの偏光面を縦偏光と横偏光に切り替えることにより、レーザ発振装置の数および受光装置の数を減少させることができる。
また、本発明によれば、ガス濃度計測装置としての波長変調TDLAS装置の下記の有利性が存分に発揮される。
(i)時間応答性が非常に良好である。
波長変調TDLAS計測は光学計測であるため、従来技術で必要とされるガスサンプリングや前処理が不要である。このため従来技術の組合せでは不可能であった広域のガス濃度フラックス計測が可能になり、また良好な時間応答性のためにリアルタイムな計測が実現される。
従来の光学計測法と比較して、波長変調による濃度計測感度の大幅な向上が実現できており、計測時定数を下げても(時間応答性を上げても)十分な感度でのガス濃度フラックスの計測が可能になる。
(ii)共存物質の影響を受けない。
光源に波長線幅の非常に狭いレーザを用いているため、共存ガスの影響を受けない。波長変調計測により固体粒子の影響も除去が可能であり、汚れの影響にも強く、さらに雨天等の悪条件下でも問題無く計測できる。
(iii)計測の安定性が良好である。
本発明では、波長変調を複数段化することにより、計測安定性の向上を実証済みである。さらに、波長変調TDLASはレーザ利用の光学計測であるため、従来のガス濃度計測技術では非常に困難であった広域ガス濃度のリアルタイム計測が可能となる。よって、この波長変調TDLAS技術に、シンチレーション法による広域の運動量フラックス計測技術を結びつけることで、広域のガス濃度フラックスのリアルタイム計測が可能となる。
以下、添付の図面を参照して本発明の種々の好ましい実施の形態について説明する。
(ガス濃度計測の基本構成)
先ず図1を参照してTDLASを利用したガス濃度計測装置の基本構成について説明する。ガス濃度計測装置10は、光源部2、受光部3、直流成分検出器4,12、波長変調復調器5、波長変調制御装置6、波長変調復調器7,8、加算器9、LD制御装置11、A/D変換器13、コンピュータ14を備えている。光源部2は、外周が耐候性に優れた光学系容器2aで覆われ、内部に半導体レーザ光源21、参照セル25、レーザ光の一部を光学窓23に向けて透過させるとともに一部を反射するハーフミラー22、ハーフミラー22で反射されたレーザ光を参照セル25に向けて反射するミラー24、参照セル25からのレーザ光を受光する参照用受光部26を備えている。
半導体レーザ光源21は、レーザ素子の温度調節を行うためのペルチェ素子とともにLDモジュールのなかに設けられている。半導体レーザ素子はLD制御装置11の駆動回路に接続され、その温度と電流とが制御されるようになっている。LD制御装置11から光源21に送られる発振信号S1は、加算器9からの信号S13によってフィードバック制御されるようになっている。なお、本実施形態では、光源21として半導体レーザ素子を採用した場合を例にとって説明しているが、本発明の光源は半導体レーザ素子のみに限定されるものではなく、その他の波長変調が可能なレーザ発振器のすべてに適用可能であり、さらに、レーザ以外の光・電磁波の場合も、波長変調が可能な場合には、すべて適用可能である。また、LD制御装置11は、手動で制御できるようにしてもよいし、外部制御できるようにしてもよい。
計測領域100には温度測定器T1と圧力測定器P1が設けられ、温度測定信号S2および圧力測定信号S3がA/D変換器13を介して解析部であるコンピュータ14にそれぞれ送られるようになっている。
計測用受光部3は、光軸が光源部2の光軸と一致するように配置され、計測領域100を透過してきたレーザ光を受光する。計測用受光部3の後段には第1の直流成分検出器4と第1の波長変調復調器5が設けられている。第1の直流成分検出器4は、受光部3から出力された信号S4の中から変調信号としての交流成分を取り除き、受光強度の直流成分信号S5を解析部としてのコンピュータ14に出力する。
第1の波長変調復調器5は、波長変調制御装置6からの参照信号S10に基づいて、第1の受光装置から出力された信号S4の中からレーザに加えた波長変調信号の偶数次高調波成分を検出し、計測領域の計測対象ガス濃度に比例した信号S6を出力する。
波長変調制御装置6は、濃度計測用の第1の波長変調復調器5、濃度校正用の第2の波長変調復調器7および加算器9の前段に設けられ、2つの波長変調復調器5,7には波長変調参照信号S10をそれぞれ出力し、加算器9には波長変調信号S11を出力する。
参照セル25は、濃度が既知の計測対象ガス(例えば、CO2ガス)が封入され、光学系22,24により分配されて計測領域100に向かわなくなったレーザが封入ガス中を透過するような位置に配置されている。
第2の受光装置26は、参照セル25の後段に配置され、参照セル25内の封入ガスを透過してきたレーザを受光し、その受光強度に応じた信号S7を第2の直流成分検出器12に出力する。
第2の直流成分検出器12は、第2の受光装置26から出力された信号S7の中から変調信号としての交流成分を取り除き、受光強度の直流成分信号S8を解析部14に出力する。
第2の波長変調復調器7は、波長変調制御装置6からの参照信号S10に基づいて、第2の受光装置26から出力された信号S7の中からレーザに加えた波長変調信号の偶数次高調波成分を検出し、参照セル25内の封入ガス濃度に比例した信号S9を解析部14に出力する。
第3の波長変調復調器は、波長変調制御装置6からの参照信号S10に基づいて、第2の受光装置から出力された信号S7の中からレーザに加えた波長変調信号の奇数次高調波成分を検出し、レーザ波長を計測対象ガスの吸収波長に固定化するための基準信号S12を加算器9に出力する。
解析装置は、温度測定器T1、圧力測定器P1、第1の直流成分検出器4、第1の波長変調復調器5、第2の直流成分検出器12および第2の波長変調復調器7からそれぞれ出力された信号S2,S3,S5,S6,S8,S9に基づいて、計測領域中のガス濃度および固体粒子濃度をそれぞれ算出し、その算出結果を記録するとともにディスプレイ上に出力表示する。
加算器9は、波長変調制御装置6からの変調信号S11と第3の波長変調復調器8からのレーザ波長固定化信号S12とを加算し、その加算信号S13をレーザ出力制御装置11への外部制御信号として出力する。
ガス濃度の検定は次のようにしてなされる。
参照セル25の内部にはガス濃度が既知の標準ガスを一定圧力で封入するか、または通流させてある。先ず、参照セル25内の既知のガス濃度と、参照セル25の既知の光学長さと、計測領域の既知の光学長さとを解析部であるコンピュータ14にデータ入力する。コンピュータ14は、メモリから所定の数式を呼び出し、3つの入力データを所定の数式の該当パラメータにそれぞれ代入し、演算によりガス濃度値を求める。求めたガス濃度値は、連続的に記録されるとともに、その時々刻々変化する様子がディスプレイ画面上に表示される。
以上が本発明装置のうちガス濃度計測を担う部分である。本発明装置は上記のガス濃度計測部分に加えてさらに以下に述べるフラックス計測を担う部分を備えている。
(ガス濃度フラックス計測1)
(2つの光源と2つの計測用受光部との組合せ)
図2は実施形態のガス濃度フラックス計測装置の全体構成を示す図である。なお、本実施形態のガス濃度フラックス計測装置10Bが上述したガス濃度計測装置10と重複する部分の説明は省略する。
ガス濃度フラックス計測装置10Aは、光源部2A内に半導体レーザ光源21の他にもう1つ別にレーザ光源21Aを備えている。このため光学系容器2aには2つの光学窓23a,23bが並んで設けられ、一方の光学窓23aからは第1の光源21の発振レーザが計測領域100に出射され、他方の光学窓23bからは第2の光源21Aの発振レーザが計測領域100に出射されるようになっている。2本のレーザビーム光軸が実質的に平行になるように第1及び第2の光源21,21Aは互いに位置合わせされている。
受光部3Aは第1の計測用受光部31の他に第2の計測用受光部32を備えている。第1の計測用受光部31は、第1の光源21から発振されたレーザを受光し、その信号S41を第1の直流成分検出器41に出力する。第2の計測用受光部32は、第2の光源21Aから発振されたレーザを受光し、その信号S42を第3の直流成分検出器42に出力する。
第3の直流成分検出器42は、受光信号S42の中から変調信号としての交流成分を取り除き、大気乱流成分信号S52を解析部14に出力する。これと並行して第1の直流成分検出器41は、受光信号S42の中から変調信号としての交流成分を取り除き、計測部受光強度信号S51を解析部14に出力する。
波長変調復調器5は、波長変調制御装置6からの参照信号S10に基づいて、第1の受光装置から出力された信号S41の中からレーザに加えた波長変調信号の偶数次高調波成分を検出し、計測領域の計測対象ガス濃度に比例した信号S61を出力する。
解析部14は、温度測定器T1、圧力測定器P1、第1の直流成分検出器41、第1の波長変調復調器5、第2の直流成分検出器12、第2の波長変調復調器7および第3の直流成分検出器42からそれぞれ出力された信号S2,S3,S51,S52,S61,S8,S9に基づいて、MOS則に従って計測領域中のガス濃度および固体粒子濃度をそれぞれ算出するとともに、計測領域中の運動量フラックスを算出し、これらの算出結果を連続記録するとともにディスプレイ上に出力表示する。
(ガス濃度フラックス計測2)
(単一光源と2つの計測用受光部との組合せ)
図3は他の実施形態のガス濃度フラックス計測装置の全体構成を示す図である。なお、本実施形態のガス濃度フラックス計測装置10Bが上述の装置10,10Aと重複する部分の説明は省略する。
ガス濃度フラックス計測装置10Bは、光源部2B内に偏光面回転装置27およびレーザ分配用の光学系22a,22b,24a,24bを備えている。光源21と偏光面回転装置27との間には2つのハーフミラー22a,22bが挿入されている。第1のハーフミラー22aは、単一の光源21から発振されたレーザ光の一部を反射してミラー24aを経由して参照セル25に分配する。第2のハーフミラー22bは、第1のハーフミラー22aを透過した光の一部を反射し、その反射光をミラー24bを経由して第1の光学窓23aから計測領域に出射させるとともに、第1のハーフミラー22aを透過した光の一部を透過させ、その透過光を偏光面回転装置27に分配する。偏光面回転装置27は、縦偏光を90°回転させて横偏光に交互に変換するファラデー回転子を内蔵している。偏光面回転装置27で偏光面変調されたレーザ光は第2の光学窓23bから計測領域100に出射されるようになっている。なお、2本のレーザビーム光軸が実質的に平行になるように光学系22a,22b,24a,24bおよび偏光面回転装置27は互いに位置合わせされている。
受光部3Aは第1の計測用受光部31の他に第2の計測用受光部32を備えている。第1の計測用受光部31は、発振レーザを受光し、その信号S41を第1の直流成分検出器41に出力する。第2の計測用受光部32は、偏光面変調レーザを受光し、その信号S42を第3の直流成分検出器42に出力する。
第3の直流成分検出器42は、受光信号S42の中から変調信号としての交流成分を取り除き、大気乱流成分信号S52を解析部14に出力する。これと並行して第1の直流成分検出器41は、受光信号S42の中から変調信号としての交流成分を取り除き、計測部受光強度信号S51を解析部14に出力する。
波長変調復調器5は、波長変調制御装置6からの参照信号S10に基づいて、第1の受光装置から出力された信号S41の中からレーザに加えた波長変調信号の偶数次高調波成分を検出し、計測領域の計測対象ガス濃度に比例した信号S61を出力する。
解析部14は、温度測定器T1、圧力測定器P1、第1の直流成分検出器41、第1の波長変調復調器5、第2の直流成分検出器12、第2の波長変調復調器7および第3の直流成分検出器42からそれぞれ出力された信号S2,S3,S51,S52,S61,S8,S9に基づいて、MOS則に従って計測領域中のガス濃度および固体粒子濃度をそれぞれ算出するとともに、計測領域中の運動量フラックスを算出し、これらの算出結果を連続記録するとともにディスプレイ上に出力表示する。
(ガス濃度フラックス計測3)
(単一光源と単一の計測用受光部との組合せ)
図4はさらに他のガス濃度フラックス計測装置の全体構成を示す図である。なお、本実施形態のガス濃度フラックス計測装置10Cが上述の装置10,10A,10Bと重複する部分の説明は省略する。
ガス濃度フラックス計測装置10Cは、光源部2C内に外部制御偏光面回転装置27Aを備えている。ハーフミラー22aは、単一の光源21から発振されたレーザ光の一部を反射し、その反射光をミラー24を経由して参照セル25に分配するとともに、発振レーザ光の一部を透過させて外部制御偏光面回転装置27Aに分配する。外部制御偏光面回転装置27Aは、外部に設けられた偏光面変調制御装置15から変調制御信号S14が入力されると、ファラデー回転子により所定のタイミングで縦偏光(0°)と横偏光(90°)との間で切り替える。レーザ光は、外部制御偏光面回転装置27Aで偏光面変調された後に光学窓23から計測領域100に向けて出射され、受光部3に受光される。すなわち、本実施形態の装置では、単一光源21から発振された1本のレーザ光を縦偏光と横偏光とに交互に切り替えるタイミング制御によりフラックス計測と濃度計測とを同時に行うようにしている。
受光部3は、受光信号S4を第1の偏光面変調復調器17a、第2の偏光面変調復調器17bおよび波長変調復調器5(濃度計測用)のそれぞれに出力する。
偏光面変調制御装置15は、外部制御偏光面回転装置27Aに変調制御信号S14を出力するとともに、信号位相変換器16、第1の偏光面変調復調器17aおよび第3の偏光面変調復調器18のそれぞれに偏光面変調参照信号S15を出力する。
信号位相変換器16は、偏光面変調制御装置15から偏光面変調参照信号S15が入ると、信号の位相を変換し、その位相変換信号S16を第2の偏光面変調復調器17bに出力する。
波長変調復調器5は、波長変調制御装置6からの参照信号S10に基づいて、受光信号S4の中からレーザに加えた波長変調信号の偶数次高調波成分を検出し、計測領域の計測対象ガス濃度に比例した信号S6を第3の偏光面変調復調器18に出力する。
第1の偏光面変調復調器17aは、偏光面変調制御装置15から偏光面変調参照信号S15が入ると、受光信号S4の中から偏光面変調に同期した信号を検出し、計測領域を透過してきた縦偏光レーザの受光強度に比例した信号を計測部レーザ吸収量信号S18として解析装置14に出力する。
第2の偏光面変調復調器17bは、信号位相変換器16から位相変換信号S16が入ると、受光信号S4の中から偏光面変調に同期した信号を検出し、計測領域を透過してきた横偏光レーザの受光強度に比例した信号を計測部レーザ吸収量信号S17として解析装置14に出力する。
第3の偏光面変調復調器18は、偏光面変調制御装置15から偏光面変調参照信号S15が入ると、計測領域を透過してきたレーザの受光信号S4の強度に比例した信号とし、これを濃度計測信号S62として解析装置14に出力する。
ここで、波長変調制御装置6から出力された波長変調参照信号S10と偏光面変調制御装置15から出力された偏光面変調参照信号S15とが波長変調復調器5または第3の偏光面変調復調器18において干渉しないように、これらの変調周波数を異ならせておく必要がある。例えば図4に示すように第3の偏光面変調復調器18を波長変調復調器5の後段に設けた場合は、偏光面変調参照信号S15の周波数λ2(例えば100Hz)を波長変調参照信号S10の周波数λ1(例えば10kHz)より十分小さく設定することが望ましい。一方、これとは復調器5,18の配置を逆にする場合、すなわち第3の偏光面変調復調器18を第1の波長変調復調器の前段に設けた場合は、偏光面変調参照信号S15の周波数λ2(例えば1MHz)を波長変調参照信号S10の周波数λ1(10kHz)より十分大きく設定することが望ましい。
解析部14は、温度測定器T1、圧力測定器P1、第1の偏光面復調器17a、第2の偏光面復調器17b、第3の偏光面復調器18、第1の波長変調復調器5、第2の波長変調復調器7からそれぞれ出力された信号S2,S3,S17,S18,S62,S8,S9に基づいて、MOS則に従って計測領域中のガス濃度および固体粒子濃度をそれぞれ算出するとともに、計測領域中の運動量フラックスを算出し、これらの算出結果を連続記録するとともにディスプレイ上に出力表示する。
[実施例]
実施例1としてTDLASガス濃度計測装置と超音波流速計とを組み合わせたガス濃度フラックス計測装置を用いて森林観測タワー上においてCO2フラックスと濃度を計測した例について説明する。
(実施例1)
本実施例1では、本発明によるガス濃度フラックス計測を実証するために、図5(b)に示すように、波長可変TDLAS式ガス濃度計測装置と超音波流速計を1つの容器2b内に組み込んだ計測部2Dを森林観測タワー91上に設置し、両者の計測結果を渦相関法で解析し、森林観測タワー91上でのCO2濃度フラックスを計測した。なお、計測領域100のガスは、サンプリング管95を通って森林観測タワー91上の計測部2D内に導入するようにした。また、サンプリング管95のガス採取端側にCO2計93および前処理器94をそれぞれ設け、比較確認用としてCO2濃度を実際に測定するとともに採取ガスを所定の方法で前処理した。さらに、制御/解析部19Dはタワー近傍の観測室90内に設けた。
図5(a)に示すように、ガス濃度フラックス計測装置10Dは計測部2Dおよび制御/解析部19Dからなり、通信ケーブルまたは無線電信機を用いて計測部2Dと制御/解析部19Dとの間で信号の送受信がなされるようになっている。計測部2D内に組み込まれた波長可変TDLAS式ガス濃度計測装置20の構成は、図1に示した波長変調TDLAS式ガス濃度計測装置とほぼ同じであるが、本実施例ではガス濃度計測精度の向上を目的として、制御/解析部19Dにおいて二重の波長変調機構(波長変調波形発生器61,62)と濃度0点を監視するための濃度ゼロ計測部(直流検出器65c、ゼロ参照部29c)を追加している。
具体的には、タワー91上に設置した計測部2Dは、レーザを発振するTDLAS光学系ユニット20、計測領域100を透過してきたレーザを受光する受光装置(PD−G)29aおよび超音波風速計51を備えている。
計測部2Dは全体が保護容器2bにより覆われている。TDLAS光学系ユニット20は、耐環境性の向上を図るために耐候性に優れた光学系容器2aにより全体が囲まれている。光学系容器2aにはレーザ光を出射するための光学窓23が取り付けられている。フォトダイオードからなる受光装置(PD−G)29aが光学窓23と向き合って配置されている。サンプリング管91の開口端は計測部2Dの内部に導入され、受光装置(PD−G)29aと光学窓23との間に位置し、両者間に採取ガス(森林中の大気)が供給されるようになっている。本実施例では光学窓23から受光装置(PD−G)29aまでの距離L1を約2mに設定した。
次に、森林観測タワー横の観測室に設置した制御/解析部19Dは、上記LD28のレーザ発振を制御するLD制御装置11と、そのレーザ光に変調を掛けるための第1の波形発生器(No.1−FG)61、第2の波形発生器(No.1−FG,No.2−FG)62、各受光装置(PD−G,PD−R,PD−Z)29a,29b,29cからの受光信号の中から直流成分を検出し、その受光強度信号S23,S22,S21を出力する直流検出器(LPF)、それぞれの受光信号から、第1の波長変調波形発生器61からの参照信号に基づいて、その変調周波数の倍波周波数成分に同期した信号のみを検出し出力する第1の位相敏感検波器(No.1−PSD−)63と、No.1−PSDの出力信号から、No.2−FGの参照信号に基づいて、変調周波数の倍波周波数成分に同期した信号のみを検出,出力する位相敏感検出器(No.1−PSD)63,それぞれの信号を取り込むためのA/D変換部13、A/D変換信号を解析し、大気中のCO2濃度,CO2濃度フラックスを解析し記録するパソコン(PC)14、No.1−FG61とNo.2−FG62の変調信号や、No.2−PSD−FB64dからの波長固定化信号を加算してLD制御装置11の外部制御信号として出力する加算器9とを備えている。
さらに、本実施例では、レーザ波長をCO2吸収波長の周りで掃引するための波長掃引波形発生器(FG)66と、その信号をレーザ波長固定化信号と切り替えるための切換スイッチ(切換SW)67とを付加している。
計測部2Dには超音波流速計51、半導体式圧力センサ53および温度センサ52が収納されている。これらの超音波流速計51およびセンサ52,53は、サンプリング管91のガス吹出し口の近傍に取り付けられ、流速計測信号S19、温度計測信号S2および圧力計測信号S3をA/D変換器13を経由してパソコン14にそれぞれ出力する。
単一の半導体レーザ(LD)28はレーザ発振波長をCO2の吸収波長の一つに調整できるようになっている。光学系は、第1のハーフミラー22a、第2のハーフミラー22bおよび反射ミラー24を含んでいる。第1のハーフミラー22aは、光源28から発振されたレーザ光の一部を透過させて分配し、光学窓23から計測用受光装置(PD−G)29aに向けて出射させるとともに、発振レーザ光の一部を反射させて第2のハーフミラー22bに分配する。第2のハーフミラー22bは、分配光の一部を反射させて参照セル25にさらに分配するとともに、分配光の一部を透過させて反射ミラー24を経由してゼロ参照部(PD−Z)29cに分配する。参照セル25内には濃度較正とレーザ波長のCO2吸収波長への固定化のために規定濃度のCO2ガス(CO2=1%,N2=99%)を封入してある。参照セル25を透過した光は参照用受光装置(PD−R)29bに入り、制御/解析部19Dの直流検出器(LPF)65bに受光信号が出力される。直流検出器(LPF)65bは、受光信号の中から変調信号としての交流成分を取り除いた信号S22をパソコン14に出力する。一方、ゼロ参照部(PD−Z)29cから制御/解析部19Dの直流検出器(LPF)65cに受光信号が入ると、直流検出器(LPF)65cは受光信号の中から変調信号としての交流成分を取り除いた信号S21をパソコン14に出力する。
計測用受光装置(PD−G)29aは、制御/解析部19Dの直流検出器(LPF)65cおよび第1の位相敏感検波器(No.1−PSD−G)63aのそれぞれに受光信号を出力する。直流検出器(LPF)65cに受光信号が入ると、直流検出器(LPF)65cは受光信号の中から変調信号としての交流成分を取り除いた信号S23をパソコン14に出力する。第1の位相敏感検波器(No.1−PSD−G)63aは、第1の波長変調波形発生器(No.1−FG)61からの波長変調参照信号に基づいて、受光装置29aから出力された信号の中からレーザに加えた波長変調信号の偶数次高調波成分を検出し、参照セル内の封入ガス濃度に比例した信号を第2の位相敏感検波器(No.2−PSD−G)64aに出力する。さらに第2の位相敏感検波器(No.2−PSD−G)64aは、第2の波長変調波形発生器(No.2−FG)62からの波長変調参照信号に基づいて、受光装置29aから出力された信号の中からレーザに加えた波長変調信号の奇数次高調波成分を検出し、参照セル内の封入ガス濃度に比例した信号S24をパソコン14に出力する。
波長掃引波形発生器66は、測定対象ガスに固有の吸収スペクトルのところでレーザ発振波長をゆっくりと掃引させるために、例えば周波数0.5Hz又は0.01Hzのランプ波を半導体レーザ素子の注入電流に印可するようになっている。なお、長時間にわたりガス濃度の変化を測定する場合は、波長掃引波形発生器66によるレーザ発振波長の掃引を止め、レーザ発振波長を所定波長にロックする。波長掃引波形発生器66からは波長掃引信号S28がパソコン14に出力される。
2つの波長変調波形発生器61,62は、レーザ発振波長を変調するために、それぞれ異なる周波数のサイン波を半導体レーザ素子28の注入電流に重ねて印可するようになっている。例えば、一方の波長変調波形発生器61からは第1の変調周波数fとして例えば10kHzのサイン波(f=10kHz)信号が加算器9を経由してLD制御装置11に印可され、他方の波長変調波形発生器62からは第2の変調周波数wとして例えば500Hzのサイン波(w=500Hz=0.5kHz)信号が加算器9を経由してLD制御装置11に印可されるようになっている。
加算器9は、波長掃引波形発生器66からの掃引信号S29、2つの波長変調波形発生器61,62からの異なる周波数f,wの変調信号S25,S26、二段の位相敏感検波器63a〜63d,64a〜64dからの周波数2f+wの3次微分復調信号S27を重畳して半導体レーザ素子の注入電流に印可するようになっている。
波長掃引波形発生器66から掃引波長をもつランプ波を注入電流に印可するとともに、各波長変調波形発生器61,62から異なる周波数f,wのサイン波を注入電流に重ねて印可すると、これによりレーザ発振波長は2つの異なる周波数f,wで二重に変調される。その結果、このレーザ光を受光した信号には変調周波数f,wとその高調波が含まれるようになるので、位相敏感検波器63a〜63dにより信号が2倍の周波数20kHz(2f)で復調され、次いで位相敏感検波器64a〜64dにより2倍の周波数1kHz(2w)で復調され、これらが重畳された4次微分信号(2f+2w)がパソコン14に送られる。
また、位相敏感検波器63a〜63dにより2倍の周波数20kHz(2f)で復調された信号は、位相敏感検波器64a〜64dにおいて周波数wで復調される。これらが重畳された3次微分信号(2f+w)が切替スイッチ67を通って加算器9に送られ、この信号に基づきレーザ発振波長が測定対象ガスの吸収中心波長にフィードバック制御される。
タワー91上の風速は、超音波流速計51で計測しており、その風速信号(S)は観測室90の制御/解析部19Dに出力されている。計測領域100は、図中に示すように、計測長2m(=L1)のタワー上の大気である。また、計測領域100の圧力は半導体式圧力センサ53で計測しており、その計測信号S3は計測室に出力され、計測領域の温度は熱電対で計測しており、その温度信号S2は計測へ出力されている。なお、温度や圧力に関しては、センサを用いないで、対象ガスの吸収スペクトルの特性を利用してレーザで計測する場合もある。
吸収スペクトルの測定のためには、波長掃引波形発生器(FG)66により例えば0.5Hzまたは0.01Hzのランプ波を注入電流に印可し、レーザ波長をゆっくりと掃引する。長時間の濃度変化を測定するためにはレーザ波長をロックする。
さらに、本実施例では、従来計測との比較のために、本発明の計測領域とほぼ同じ位置から大気をサンプリングし、前処理器94で前処理を行った上で、従来CO2計93で計測し、超音波流速計51の計測結果と併せて渦相関解析し、CO2濃度フラックスを同時計測した。
図6は横軸に計測時刻をとり、縦軸に計測したCO2濃度フラックス(mg/m2・S)をとって、実施例1の計測結果を示す特性線図である。図中にて実線A1は本発明装置により計測した実施例1の結果を示し、破線B1は従来のサンプリング法利用装置により計測した比較例の結果を示した。
両者の結果は、ほぼ一致しており、本発明によるCO2濃度フラックス計測が可能であることが実証された。さらに、夜明け直後や、日没直後などで、植物の光合成/呼吸の切り替わりが起きて、運動量フラックスがマイナスからプラスに大きく変化する状況では、本実施例の計測結果(特性線A1)は、その様子を明確に捕らえているが、従来技術の計測結果(特性線B1)ではその様子がやや均された結果となっている。この原因は、希釈効果等による従来CO2計93の応答性遅れが原因と考えられる。このように従来装置では計測領域内での速い変動を十分にとらえることができず、実際よりもフラックス量を過小評価してしまう傾向にある。これに対して本発明装置によるCO2濃度フラックス計測は、計測領域内での速い変動を的確にとらえることができており、その有効性が実証された。
(実施例2)
次に、実施例2として図7を参照してTDLASでの広域ガス濃度計測装置とシンシレーション手法を組み合わせた森林観測タワー間の広域CO2フラックスを計測した例について説明する。なお、本実施例が上記の実施例と重複する部分の説明は省略する。
本実施例2では、本発明による広域のガス濃度フラックス計測を実証するために、森林観測タワー上に波長可変TDLAS式ガス濃度計測装置とシンチレーション法式運動量フラックス計測装置を組み合わせて設置し、両者の計測結果をMonin-Obukhov相似則に基づいて解析し、森林観測タワー間での広域CO2濃度フラックスを計測した。
図7に本実施例2の装置系統を示す。波長可変TDLAS式ガス濃度計測装置2E,19Eの構成は、図5に示した実施例1の装置系統2D,19Dと実質的に同じであり、また、観測室90に設置した制御/解析部19Eは、図5に示した実施例1の制御/解析部19Dと実質的に同じである。しかし、本実施例2の装置は、広域ガス濃度計測のために、計測長が森林観測タワー91,92間の距離と等しい81mと大幅に長距離化している。
具体的には、第1の観測タワー91上に設置した光源部2Eは、上記実施例1と実質的に同じ構成のTDLAS光学系ユニット20と、図15Dに示したシンチレーション計測ユニット70とを備えている。この光源部2Eは、参照部受光信号S22、ゼロ部受光信号S21、シンチレーション計測ユニット70の強度変調参照信号S24が観測室90の制御/解析部19Eに向けて出力すると同時に、TDLAS光学系ユニット20へのLD制御信号S1が観測室90の制御/解析部19Eから送信されている。シンチレーション計測ユニット70のなかには2つのレーザ発振器71,72が収納され、発振されるレーザは光学窓73a,73bをそれぞれ通って計測領域100に出射され、第2のタワー92上の受光部3Eでそれぞれ受光されるようになっている。
また、本実施例では、第1の森林監視タワー91上に半導体式圧力センサ53と熱電対52を設置し、その計測値を計測領域の圧力と温度として代表させているが、対象ガスの吸収スペクトルの特性を利用して計測領域の平均圧力,平均温度をレーザで計測する場合もある。
次に、第2の森林観測タワー92上に設置した受光部3Eは、第1タワー91上の光源部2EのTDLAS光学系ユニット20から出射され、大気中を透過してきたレーザを受光する受光装置(PD−G)35と、シンチレーション計測ユニット70から照射されたレーザを受光する受光装置(PD−S1,PD−S2)33,34とから構成されており、夫々の受光信号S23,S191,S192(G,S1,S2)は、解析のため観測室90の制御/解析部19Eへ出力される。
なお、本実施例では、タワー91,92上の光源部2Eおよび受光部3Eから観測室90までの信号伝送を通常の電気配線ケーブルで行ったが、本発明はこれのみに限定されるものではなく、さらに計測長が長くなった場合に対応するために通信施設の設置が容易な光ファイバー方式や無線方式の伝送方法を採用することも可能である。
図8は横軸に計測時刻をとり、縦軸に計測したCO2濃度フラックス(mg/m2・S)をとって、実施例2の計測結果を示す特性線図である。図中にて実線A2は本発明装置により計測した実施例2の結果を示し、破線B2は従来のCO2計による濃度計測と第1観測タワー91上での超音波流速計によるフラックス計測を組み合せた比較例1の結果を示し、二点鎖線C2は従来のCO2計による濃度計測と第2観測タワー92上での超音波流速計によるフラックス計測を組み合せた比較例2の結果を示した。図から明らかなように本実施例2の計測結果(特性線A2)は、比較例の結果(特性線B2,C2)よりも滑らかな変化曲線となっている。これは本発明装置では光源部から受光部までの間に障害物がまったく無い(外乱がない)ことに起因している。一方、従来装置を用いた比較例の計測結果は変化曲線にギザギザが多く発生している。これは従来技術では計測領域内に多数の計測装置が設置されるので、ある計測装置からみれば他の計測装置が障害物となり、計測装置それ自体が外乱の発生原因となるからである。
本発明による広域CO2濃度フラックスの計測結果(特性線A2)を、従来技術を用いた比較例の計測結果(特性線B2,C2)で直接検証することはできないが、本発明の計測結果は、各タワー上で従来技術を用いて計測した結果とほぼ一致しており、本発明が広域CO2濃度フラックスのリアルタイム計測に好適であることを実証できた。
(実施例3)
実施例3として図9を参照して半導体レーザ方式ガス濃度フラックス計測装置を用いて森林観測タワー間の広域CO2フラックスを計測した例について説明する。なお、本実施例が上記の実施例と重複する部分の説明は省略する。
本実施例3では、本発明による広域のガス濃度フラックス計測を実証するため、森林観測タワー上にシンチレーション法機能を追加した波長可変TDLAS式ガス濃度計測装置の単体装置である半導体レーザ式ガス濃度フラックス計測装置を設置し、その計測結果をMonin-Obukhov相似則に基づいて解析し、森林観測タワー間での広域CO2濃度フラックスを計測した。なお、本実施例3でも実施例2と同様に計測長はタワー間距離と等しい81mとした。
図9に実施例3の装置系統を示す。波長可変TDLAS式ガス濃度計測装置2F,3Fの構成は、図2に示した代表的装置構成とほぼ同様であり、実施例1,2と同様に、計測感度や計測安定性の向上のため、二重波長変調機構およびゼロ点計測機構を追加している。また、観測室90に設置した制御/解析部19Fは、図7に示した実施例2の制御/解析部19Dとほぼ同様である。
具体的な装置配置は、第1の森林観測タワー91上に設置した光源部2Fは、実施例1,2のTDLAS光学系ユニット20の基本構成に、ガス濃度計測用光源11aとは別個のレーザ発振装置11bを組み込んでいる。光源部2Fからは、参照部受光信号S23、ゼロ部受光信号S21が観測室90の制御/解析部19Fに向けて出力されており、同時に、それぞれの光源部LDの制御信号が観測室90の制御/解析部19Fから送信されている。また、本実施例では、第1の森林監視タワー91上に半導体式圧力センサ53および熱電対52を設置し、その計測値を計測領域100の圧力と温度として代表させているが、対象ガスの吸収スペクトルの特性を利用して計測領域100の平均圧力と平均温度をレーザで計測する場合もある。
次に、第2観測タワー92上に設置した受光部3Fは、光学ユニット20から出射されてタワー91〜92間の大気中を透過してきた、それぞれのレーザの受光装置(PD−G,PD−S)29a,29dで構成され、それぞれの受光信号S20,S23は、解析のために観測室60の制御/解析部19Fへ出力される。なお、本実施例では、この信号伝送を通常の電気配線ケーブルで行ったが、さらに計測長が長くなった場合は、施設設置の容易な光ファイバー伝送や無線伝送も可能である。
図10は横軸に計測時刻をとり、縦軸に計測したCO2濃度フラックス(mg/m2・S)をとって、実施例3の計測結果を示す特性線図である。図中にて実線A3は本発明装置により計測した実施例3の結果を示し、破線B3は従来のCO2計による濃度計測と第1観測タワー91上での超音波流速計によるフラックス計測を組み合せた比較例1の結果を示し、二点鎖線C3は従来のCO2計による濃度計測と第2観測タワー92上での超音波流速計によるフラックス計測を組み合せた比較例2の結果を示した。図から明らかなように本実施例3の計測結果(特性線A3)は、比較例の結果(特性線B3,C3)よりも滑らかな変化曲線となっている。これは本発明装置では光源部から受光部までの間に障害物がまったく無い(外乱がない)ことに起因している。一方、従来装置を用いた比較例の計測結果は変化曲線にギザギザが多く発生している。これは従来技術では計測領域内に多数の計測装置が設置されるので、ある計測装置からみれば他の計測装置が障害物となり、計測装置それ自体が外乱の発生原因となるからである。
本発明による広域CO2濃度フラックスの計測結果(特性線A3)を、従来技術を用いた比較例の計測結果(特性線B3,C3)で直接検証することはできないが、本発明の計測結果は、各タワー上で従来技術を用いて計測した結果とほぼ一致しており、本発明が広域CO2濃度フラックスのリアルタイム計測に好適であることを実証できた。
(実施例4)
実施例4として図11を参照して半導体レーザ方式ガス濃度フラックス計測装置を用いて森林観測タワー間の広域CO2フラックス計測について説明する。なお、本実施例が上記の実施例と重複する部分の説明は省略する。
本実施例4では、本発明による広域のガス濃度フラックス計測を実証するため、森林観測タワー91,92上にシンチレーション法機能を追加した波長可変TDLAS式ガス濃度計測装置の単体装置である半導体レーザ式ガス濃度フラックス計測装置2G,3Gを設置し、その計測結果をMonin-Obukhov相似則に基づいて解析し、森林観測タワー91,92間での広域CO2濃度フラックスを計測した。なお、本実施例でも上記の実施例2と同様に計測長はタワー間距離と等しい81mとした。
図10に実施例4の装置系統を示す。波長可変TDLAS式ガス濃度計測装置の構成は図3に示した代表的装置構成とほぼ同様であるが、実施例1,2と同様に、計測感度や計測安定性の向上のため、二重波長変調機構とゼロ点計測機構を追加した。
具体的な装置配置は、第1の森林観測タワー91上に設置した光源部2Gは、実施例1,2のTDLAS光学系ユニットの基本構造に、計測用レーザを2つに分配し、その一方のレーザ偏光面を90°回転させたうえで、計測領域に向けて発振させる偏光面回転器27Gを追加した構成であり、参照部受光信号S22、ゼロ部受光信号S21が観測室90の制御/解析部19Gに向けて出力されており、同時に、TDLAS光学系ユニット20へのLD制御信号が観測室90の制御/解析部19Gから送信されている。偏光面回転器27Gは、ファラデー回転子を内蔵しており、光源28から発振されたレーザ光の偏光面を90°回転させて、縦偏光から横偏光にレーザ偏光面を変換するものである。
また、本実施例では、第1の森林監視タワー91上に半導体式圧力センサ53と熱電対52を設置し、その計測値を計測領域100の圧力と温度として代表させているが、対象ガスの吸収スペクトルの特性を利用して計測領域の平均圧力と平均温度をレーザで計測する場合もある。
次に、第2の森林観測タワー92上に設置した受光部3Gは、光学ユニット20から出射され、タワー91,92間の大気中を透過してきた2本のレーザを受光する2つの受光装置(PD−G,PD−S)29a,29dで構成されており、その受光信号(G,S)は、解析の為、観測室の制御/解析部へ出力される。なお、本実施例では、この信号伝送を通常の電気配線ケーブルで行ったが、さらに計測長が長くなった場合は、通信施設の設置が容易な光ファイバー方式や無線方式の伝送も可能である。後に、観測室90に設置した制御/解析部19Gは、図7に示した実施例2のものとほぼ同様である。
図12は横軸に計測時刻をとり、縦軸に計測したCO2濃度フラックス(mg/m2・S)をとって、実施例4の計測結果を示す特性線図である。図中にて実線A4は本発明装置により計測した実施例4の結果を示し、破線B4は従来のCO2計による濃度計測と第1観測タワー91上での超音波流速計によるフラックス計測を組み合せた比較例1の結果を示し、二点鎖線C4は従来のCO2計による濃度計測と第2観測タワー92上での超音波流速計によるフラックス計測を組み合せた比較例2の結果を示した。
本発明による広域CO2濃度フラックスの計測結果を、従来技術の計測結果で直接検証することはできないが、本発明での計測結果は、各タワー上で従来技術にて計測した結果とほぼ一致しており、本発明にて広域CO2濃度フラックスのリアルタイム計測が可能であることを実証できたといえる。
(実施例5)
実施例5として図13を参照して半導体レーザ方式ガス濃度フラックス計測装置を用いて森林観測タワー間の広域CO2フラックス計測する場合について説明する。なお、本実施例が上記の実施例と重複する部分の説明は省略する。
本実施例5では、本発明による広域のガス濃度フラックス計測を実証するため、森林観測タワー91,92上にシンチレーション法機能を追加した波長可変TDLAS式ガス濃度計測装置の単体装置である半導体レーザ式ガス濃度フラックス計測装置10Hを設置し、その計測結果をMonin-Obukhov相似則に基づいて解析し、森林観測タワー91,92間での広域CO2濃度フラックスを計測した。なお、本実施例でも上記実施例2と同様に、計測長はタワー間距離と等しい81mとした。
図13に実施例5の装置系統を示す。波長可変TDLAS式ガス濃度計測装置の構成は、波長変調周波数と比較して偏光面変調周波数が十分低いため、図4に示した代表的装置構成とほぼ同様であるが、実施例1,2と同様に、計測感度や計測安定性の向上のために、二重波長変調機構とゼロ点計測機構を追加している。
具体的な装置配置は、第1の森林観測タワー91上に設置した光源部2Hは、実施例1,2のTDLAS光学系ユニットの基本構造に、偏光面変調機能を付加するための偏光面変調装置59と、その変調制御装置58を追加した光学ユニット20で構成され、参照部受光信号S22、ゼロ部受光信号S21、偏光面変調参照信号S37が観測室90の制御/解析部19Hに向けて出力されており、同時に、光学系ユニット20へのLD制御信号が観測室90の制御/解析部19Hから送信されている。また、本実施例では、第1の森林監視タワー91上に半導体式圧力センサ53と熱電対52を設置し、その計測値を計測領域の圧力と温度として代表させているが、対象ガスの吸収スペクトルの特性を利用して計測領域の平均圧力と平均温度をレーザで計測する場合もある。
観測室90に設置した制御/解析部19Hは、図7に示した実施例2のものに、第2の位相敏感検波器(No.2−PSD−G)64aから出力される信号から、偏光面変調参照信号S37に基づいて、変調に同期した信号成分を検出するための第3の位相敏感検出器(No.3−PSD−G)64eと、PD−Gの受光信号から縦偏光レーザの受光強度信号を取り出すための第1の位相敏感検出器(No.1−PSD−S)63aや、PD−Gの受光信号から横偏光レーザの受光強度信号を取り出すための位相敏感検出器(No.2−PSD−S)64f、偏光面変調参照信号S37の位相をシフトさせる信号S36を出力する位相シフター68が追加され、その代わりに受光強度信号用の直流成分検出装置は省かれている。
第2の森林観測タワー92上に設置した受光部2Hは、光学ユニット20から出射され、タワー91,92間の大気中を透過してきたレーザを受光する受光装置(PD−G)29で構成されており、その受光信号S22は、解析のため観測室90の制御/解析部19Hへ出力される。なお、本実施例では、この信号伝送を通常の電気配線ケーブルで行ったが、さらに計測長が長くなった場合は、通信施設設置が容易な光ファイバー方式や無線方式の伝送とすることも可能である。
図14は横軸に計測時刻をとり、縦軸に計測したCO2濃度フラックス(mg/m2・S)をとって、実施例5の計測結果を示す特性線図である。図中にて実線A5は本発明装置により計測した実施例5の結果を示し、破線B5は従来のCO2計による濃度計測と第1観測タワー91上での超音波流速計によるフラックス計測を組み合せた比較例1の結果を示し、二点鎖線C5は従来のCO2計による濃度計測と第2観測タワー92上での超音波流速計によるフラックス計測を組み合せた比較例2の結果を示した。
本発明による広域CO2濃度フラックスの計測結果を、従来技術の計測結果で直接検証することはできないが、本発明での計測結果は、各タワー上で従来技術にて計測した結果とほぼ一致しており、本発明にて広域CO2濃度フラックスのリアルタイム計測が可能であることを実証できたといえる。
本発明のガス濃度フラックス計測装置は、広域にわたる地球温暖化ガス(GHG)の存在量のモニタリングに用いられ、例えば森林でのCO2吸収量の評価や、地表、地中で発生するGHG発生量調査等の環境調査に用いられ、あるいはCO2地下処分プラントやガス貯留設備,パイプライン等のガス漏洩の検知にも用いられる。
本発明装置に組み込まれる基本的なガス濃度計測装置の部分を示す構成ブロック図。 本発明のガス濃度フラックス計測装置(2個のレーザ光源と2個の受光装置の組み合せ)を示す構成ブロック図。 本発明のガス濃度フラックス計測装置(1個のレーザ光源と2個の受光装置の組み合せ;偏光面変調方式)を示す構成ブロック図。 本発明のガス濃度フラックス計測装置(1個のレーザ光源と1個の受光装置の組み合せ;外部制御偏光面変調方式)を示す構成ブロック図。 (a)は本発明のガス濃度フラックス計測装置(実施例1;森林観測タワー上でのCO2濃度フラックス計測例)を示す構成ブロック図、(b)は装置の概略配置図。 実施例1の計測結果(超音波流速計との組合せによる森林CO2濃度フラックス計測結果)を示す特性線図。 (a)は本発明のガス濃度フラックス計測装置(実施例2;森林観測タワー間での広域CO2濃度フラックス計測例)を示す構成ブロック図、(b)は装置の概略配置図。 実施例2の計測結果(シンチレーション法との組合せによる森林観測タワー間での広域CO2フラックス計測結果)を示す特性線図。 (a)は本発明のガス濃度フラックス計測装置(実施例3;森林観測タワー間での広域CO2濃度フラックス計測例)を示す構成ブロック図、(b)は装置の概略配置図。 実施例3の計測結果(半導体レーザ方式ガス濃度フラックス計測装置による森林観測タワー間での広域CO2フラックス計測結果)を示す特性線図。 (a)は本発明のガス濃度フラックス計測装置(実施例4;森林観測タワー間での広域CO2濃度フラックス計測例)を示す構成ブロック図、(b)は装置の概略配置図。 実施例4の計測結果(半導体レーザ方式ガス濃度フラックス計測装置による森林観測タワー間での広域CO2フラックス計測結果)を示す特性線図。 (a)は本発明のガス濃度フラックス計測装置(実施例5;森林観測タワー間での広域CO2濃度フラックス計測例)を示す構成ブロック図、(b)は装置の概略配置図。 実施例5の計測結果(半導体レーザ方式ガス濃度フラックス計測装置による森林観測タワー間での広域CO2フラックス計測結果)を示す特性線図。 従来のサンプリング装置の概要図。 森林でのCO2吸収量計測に用いられている従来装置の概要図。 シンチレーション法により森林中運動量フラックスを計測する従来装置の概要図。 シンチレーション法により運動量フラックスを計測する従来装置の概要図。 シンチレーション法による運動量フラックスの導出手順を示すフローチャート。 シンチレーション法による運動量フラックスの導出手順(図16Aの続き)を示すフローチャート。 本発明によるガス濃度フラックスの導出手順を示すフローチャート。 本発明によるガス濃度フラックスの導出手順(図17Aの続き)を示すフローチャート。
符号の説明
10…ガス濃度計測装置
10A〜10H…ガス濃度フラックス計測装置
11,11a,11b…LD制御装置(レーザ出力制御装置)
12…第2の直流成分検出器(参照用)
13…A/D変換器
14…データ解析/記録/表示部(解析装置;パソコン)
15…偏光面変調制御装置
16…信号位相変換器
17a,17b,18…偏光面変調復調器
19D〜19H…制御/解析部
2,2A〜2H…光源部(計測部)
2a…光学系容器、2b…保護容器
20…光学系ユニット
21…レーザ光源
22,22a〜22c…ハーフミラー
23,23a,23b…光学窓
24…ミラー
25…参照セル
26,29b…参照用受光部(第2の受光装置)
27,27A,27G…偏光面変調装置(偏光面回転装置)
28,28a,28b…レーザダイオード(LD)
29a…フォトダイオード(第1の受光装置)
29b…フォトダイオード(第2の受光装置)
29c,29d…フォトダイオード(第3の受光装置)
3,3A〜3H,31,33,34…第1の計測用受光部(第1の受光装置)
32,33,34…第2の計測用受光部(第3の受光装置)
3a…光学系容器
4,41,42…第1の直流成分検出器(計測用)
5…第1の波長変調復調器(濃度計測用)
6…波長変調制御装置
7…第2の波長変調復調器(濃度校正用)
8…第3の波長変調復調器(レーザ波長固定化信号用)
9…加算器
51…超音波流速計
52…温度センサ
53…圧力センサ
58…偏光面変調制御器
59…偏光面変調器(偏光面回転器)
61,62…波長変調波形発生器
63a〜63d,64a〜64d…位相敏感検波器
65a〜65d…ローパスフィルタ
66…波長掃引波形発生器
67…切替スイッチ
70…シンチレーション計測ユニット
71,72…レーザ発振器
73a,73b…光学窓
90…観測室
91,92…タワー
93…オープンパス型CO2
95…サンプリング管
96…クローズパス型CO2
100…計測領域
T1…温度計測器
P1…圧力計測器
S1〜S192…信号

Claims (12)

  1. 計測対象ガスに固有な吸収波長のレーザ光を計測領域に向けて発振する少なくとも1つの光源と、
    前記光源の出力動作を制御するレーザ出力制御装置と、
    前記光源から発振されるレーザの発振波長に対して変調を加えるための変調信号を出力し、かつ、その変調に同期した参照信号を出力する波長変調制御装置と、
    計測領域を透過してきたレーザを受光し、かつ、その受光強度に応じた信号を出力する第1の受光装置と、
    前記第1の受光装置から出力された信号の中から変調信号としての交流成分を取り除き、受光強度の直流成分を出力する第1の直流成分検出器と、
    前記波長変調制御装置からの参照信号に基づいて、前記第1の受光装置から出力された信号の中からレーザに加えた波長変調信号の偶数次高調波成分を検出し、計測領域の計測対象ガス濃度に比例した信号を出力する第1の波長変調復調器と、
    前記光源から発振されるレーザを2つ以上に分配する光学系と、
    濃度が既知の前記計測対象ガスが封入され、前記光学系により分配されて計測領域に向かわなくなったレーザが前記封入ガス中を透過するような位置に配置された参照セルと、
    前記参照セル内の封入ガスを透過してきたレーザを受光し、かつ、その受光強度に応じた信号を出力する第2の受光装置と、
    前記第2の受光装置から出力された信号の中から変調信号としての交流成分を取り除き、受光強度の直流成分を出力する第2の直流成分検出器と、
    前記波長変調制御装置からの参照信号に基づいて、前記第2の受光装置から出力された信号の中からレーザに加えた波長変調信号の偶数次高調波成分を検出し、前記参照セル内の封入ガス濃度に比例した信号を出力する第2の波長変調復調器と、
    前記波長変調制御装置からの参照信号に基づいて、前記第2の受光装置から出力された信号の中からレーザに加えた波長変調信号の奇数次高調波成分を検出し、レーザ波長を計測対象ガスの吸収波長に固定化するための基準信号を出力する第3の波長変調復調器と、
    前記第1の直流成分検出器、第1の波長変調復調器、第2の直流成分検出器および第2の波長変調復調器から出力された信号に基づいて、計測領域中のガス濃度および固体粒子濃度を算出し、その算出結果を出力する解析装置と、
    前記波長変調制御装置からの変調信号と前記第3の波長変調復調器からのレーザ波長固定化信号とを加算し、その加算信号を前記レーザ出力制御装置への外部制御信号として出力する加算器と、
    計測領域の温度を計測し、その計測値に応じた信号を前記解析装置に出力する温度計測手段と、
    計測領域の圧力を計測し、その計測値に応じた信号を前記解析装置に出力する圧力計測手段と、を具備するガス濃度フラックス計測装置であって、
    さらに、計測領域におけるガス流の水平2方向の流速成分と鉛直方向の流速成分とをそれぞれ直接的に計測し、これらの計測信号を前記解析装置に出力する流速計測手段を有し、
    前記解析装置は、前記流速計測手段から入力される信号を用いて渦相関則に基づく解析を行い、その解析結果を用いて計測領域の運動量フラックス、計測対象ガスの濃度フラックスおよび計測対象ガス濃度を演算により求めることを特徴とするガス濃度フラックス計測装置。
  2. 計測対象ガスに固有な吸収波長のレーザ光を計測領域に向けて発振する少なくとも1つの第1のレーザ光源と、
    前記レーザ光源の出力動作を制御するレーザ出力制御装置と、
    前記レーザ光源から発振されるレーザの発振波長に対して変調を加えるための変調信号を出力し、かつ、その変調に同期した参照信号を出力する波長変調制御装置と、
    計測領域を透過してきたレーザを受光し、かつ、その受光強度に応じた信号を出力する第1の受光装置と、
    前記第1の受光装置から出力された信号の中から変調信号としての交流成分を取り除き、受光強度の直流成分を出力する第1の直流成分検出器と、
    前記波長変調制御装置からの参照信号に基づいて、前記第1の受光装置から出力された信号の中からレーザに加えた波長変調信号の偶数次高調波成分を検出し、計測領域の計測対象ガス濃度に比例した信号を出力する第1の波長変調復調器と、
    前記第1のレーザ光源から発振されるレーザを2つ以上に分配する光学系と、
    濃度が既知の前記計測対象ガスが封入され、前記光学系により分配されて計測領域に向かわなくなったレーザが前記封入ガス中を透過するような位置に配置された参照セルと、
    前記参照セル内の封入ガスを透過してきたレーザを受光し、かつ、その受光強度に応じた信号を出力する第2の受光装置と、
    前記第2の受光装置から出力された信号の中から変調信号としての交流成分を取り除き、受光強度の直流成分を出力する第2の直流成分検出器と、
    前記波長変調制御装置からの参照信号に基づいて、前記第2の受光装置から出力された信号の中からレーザに加えた波長変調信号の偶数次高調波成分を検出し、前記参照セル内の封入ガス濃度に比例した信号を出力する第2の波長変調復調器と、
    前記波長変調制御装置からの参照信号に基づいて、前記第2の受光装置から出力された信号の中からレーザに加えた波長変調信号の奇数次高調波成分を検出し、レーザ波長を計測対象ガスの吸収波長に固定化するための基準信号を出力する第3の波長変調復調器と、
    前記第1の直流成分検出器、第1の波長変調復調器、第2の直流成分検出器および第2の波長変調復調器から出力された信号に基づいて、計測領域中のガス濃度および固体粒子濃度を算出し、その算出結果を出力する解析装置と、
    前記波長変調制御装置からの変調信号と前記第3の波長変調復調器からのレーザ波長固定化信号とを加算し、その加算信号を前記レーザ出力制御装置への外部制御信号として出力する加算器と、
    計測領域の温度を計測し、その計測値に応じた信号を前記解析装置に出力する温度計測手段と、
    計測領域の圧力を計測し、その計測値に応じた信号を前記解析装置に出力する圧力計測手段と、を具備するガス濃度フラックス計測装置であって、
    さらに、計測領域にレーザを照射する第2の光源と、
    前記第2の光源から出射され計測領域を透過してきたレーザを受光し、かつ、その受光強度に応じた信号を前記解析装置に出力する第3の受光装置と、を有し、
    前記解析装置は、前記第3の受光装置から入力される信号を用いてレーザ透過率の時間変化を求め、求めたレーザ透過率の時間変化からガス密度の時間変化を導出し、さらにガス密度の時間変化から計測対象ガスの乱れの状態を把握するためにMonin-Obukhov相似則に基づく解析を行い、その解析結果を用いて計測領域の運動量フラックス、計測対象ガスの濃度フラックスおよび計測対象ガス濃度を演算により求めることを特徴とするガス濃度フラックス計測装置。
  3. 計測対象ガスに固有な吸収波長のレーザ光を計測領域に向けて発振する第1の光源と、
    前記第1の光源の出力動作を制御するレーザ出力制御装置と、
    前記第1の光源から発振されるレーザの発振波長に対して変調を加えるための変調信号を出力し、かつ、その変調に同期した参照信号を出力する波長変調制御装置と、
    計測領域を透過してきたレーザを受光し、かつ、その受光強度に応じた信号を出力する第1の受光装置と、
    前記第1の受光装置から出力された信号の中から変調信号としての交流成分を取り除き、受光強度の直流成分を出力する第1の直流成分検出器と、
    前記波長変調制御装置からの参照信号に基づいて、前記第1の受光装置から出力された信号の中からレーザに加えた波長変調信号の偶数次高調波成分を検出し、計測領域の計測対象ガス濃度に比例した信号を出力する第1の波長変調復調器と、
    前記第1の光源から発振されるレーザを2つ以上に分配する光学系と、
    濃度が既知の前記計測対象ガスが封入され、前記光学系により分配されて計測領域に向かわなくなったレーザが前記封入ガス中を透過するような位置に配置された参照セルと、
    前記参照セル内の封入ガスを透過してきたレーザを受光し、かつ、その受光強度に応じた信号を出力する第2の受光装置と、
    前記第2の受光装置から出力された信号の中から変調信号としての交流成分を取り除き、受光強度の直流成分を出力する第2の直流成分検出器と、
    前記波長変調制御装置からの参照信号に基づいて、前記第2の受光装置から出力された信号の中からレーザに加えた波長変調信号の偶数次高調波成分を検出し、前記参照セル内の封入ガス濃度に比例した信号を出力する第2の波長変調復調器と、
    前記波長変調制御装置からの参照信号に基づいて、前記第2の受光装置から出力された信号の中からレーザに加えた波長変調信号の奇数次高調波成分を検出し、レーザ波長を計測対象ガスの吸収波長に固定化するための基準信号を出力する第3の波長変調復調器と、
    前記第1の直流成分検出器、第1の波長変調復調器、第2の直流成分検出器および第2の波長変調復調器から出力された信号に基づいて、計測領域中のガス濃度および固体粒子濃度を算出し、その算出結果を出力する解析装置と、
    前記波長変調制御装置からの変調信号と前記第3の波長変調復調器からのレーザ波長固定化信号とを加算し、その加算信号を前記レーザ出力制御装置への外部制御信号として出力する加算器と、
    計測領域の温度を計測し、その計測値に応じた信号を前記解析装置に出力する温度計測手段と、
    計測領域の圧力を計測し、その計測値に応じた信号を前記解析装置に出力する圧力計測手段と、を具備するガス濃度フラックス計測装置であって、
    さらに、計測対象ガスに固有な吸収波長のレーザ光を計測領域に向けて発振する第2の光源と、
    前記第2の光源から発振され計測領域を透過してきたレーザを受光し、かつ、その受光強度に応じた信号を出力する第3の受光装置と、
    前記第3の受光装置から受けた信号の中から変調信号としての交流成分を取り除き、受光強度の直流成分を前記解析装置に出力する第3の直流成分検出器と、を有し、
    前記解析装置は、前記第3の直流成分検出器から入力される信号を用いてレーザ透過率の時間変化を求め、求めたレーザ透過率の時間変化からガス密度の時間変化を導出し、さらにガス密度の時間変化から計測対象ガスの乱れの状態を把握するためにMonin-Obukhov相似則に基づく解析を行い、その解析結果を用いて計測領域の運動量フラックス、計測対象ガスの濃度フラックスおよび計測対象ガス濃度を演算により求めることを特徴とするガス濃度フラックス計測装置。
  4. 計測対象ガスに固有な吸収波長のレーザ光を計測領域に向けて発振する単一の光源と、
    前記光源の出力動作を制御するレーザ出力制御装置と、
    前記光源から発振されるレーザの発振波長に対して変調を加えるための変調信号を出力し、かつ、その変調に同期した参照信号を出力する波長変調制御装置と、
    計測領域を透過してきたレーザを受光し、かつ、その受光強度に応じた信号を出力する第1の受光装置と、
    前記第1の受光装置から出力された信号の中から変調信号としての交流成分を取り除き、受光強度の直流成分を出力する第1の直流成分検出器と、
    前記波長変調制御装置からの参照信号に基づいて、前記第1の受光装置から出力された信号の中からレーザに加えた波長変調信号の偶数次高調波成分を検出し、計測領域の計測対象ガス濃度に比例した信号を出力する第1の波長変調復調器と、
    前記光源から発振されるレーザを2つ以上に分配する光学系と、
    濃度が既知の前記計測対象ガスが封入され、前記光学系により分配されて計測領域に向かわなくなったレーザが前記封入ガス中を透過するような位置に配置された参照セルと、
    前記参照セル内の封入ガスを透過してきたレーザを受光し、かつ、その受光強度に応じた信号を出力する第2の受光装置と、
    前記第2の受光装置から出力された信号の中から変調信号としての交流成分を取り除き、受光強度の直流成分を出力する第2の直流成分検出器と、
    前記波長変調制御装置からの参照信号に基づいて、前記第2の受光装置から出力された信号の中からレーザに加えた波長変調信号の偶数次高調波成分を検出し、前記参照セル内の封入ガス濃度に比例した信号を出力する第2の波長変調復調器と、
    前記波長変調制御装置からの参照信号に基づいて、前記第2の受光装置から出力された信号の中からレーザに加えた波長変調信号の奇数次高調波成分を検出し、レーザ波長を計測対象ガスの吸収波長に固定化するための基準信号を出力する第3の波長変調復調器と、
    前記第1の直流成分検出器、第1の波長変調復調器、第2の直流成分検出器および第2の波長変調復調器から出力された信号に基づいて、計測領域中のガス濃度および固体粒子濃度を算出し、その算出結果を出力する解析装置と、
    前記波長変調制御装置からの変調信号と前記第3の波長変調復調器からのレーザ波長固定化信号とを加算し、その加算信号を前記レーザ出力制御装置への外部制御信号として出力する加算器と、
    計測領域の温度を計測し、その計測値に応じた信号を前記解析装置に出力する温度計測手段と、
    計測領域の圧力を計測し、その計測値に応じた信号を前記解析装置に出力する圧力計測手段と、を具備するガス濃度フラックス計測装置であって、
    さらに、前記単一の光源から発振されるレーザを2つ以上に分配する光学系と、
    分配された一つ以上のレーザの偏光面を回転させる偏光面回転装置と、
    前記偏光面回転装置により偏光面が回転されたレーザを受光し、かつ、その受光強度に応じた信号を出力する第3の受光装置と、
    前記第3の受光装置から受けた信号の中から変調信号としての交流成分を取り除き、受光強度の直流成分を前記解析装置に出力する第3の直流成分検出器と、を有し、
    前記解析装置は、前記第3の直流成分検出器から入力される信号を用いてレーザ透過率の時間変化を求め、求めたレーザ透過率の時間変化からガス密度の時間変化を導出し、さらにガス密度の時間変化から計測対象ガスの乱れの状態を把握するためにMonin-Obukhov相似則に基づく解析を行い、その解析結果を用いて計測領域の運動量フラックス、計測対象ガスの濃度フラックスおよび計測対象ガス濃度を演算により求めることを特徴とするガス濃度フラックス計測装置。
  5. 計測対象ガスに固有な吸収波長のレーザ光を計測領域に向けて発振する単一の光源と、
    前記光源の出力動作を制御するレーザ出力制御装置と、
    前記光源から発振されるレーザの発振波長に対して変調を加えるための変調信号を出力し、かつ、その変調に同期した参照信号を出力する波長変調制御装置と、
    計測領域を透過してきたレーザを受光し、かつ、その受光強度に応じた信号を出力する第1の受光装置と、
    前記波長変調制御装置からの参照信号に基づいて、前記第1の受光装置から出力された信号の中からレーザに加えた波長変調信号の偶数次高調波成分を検出し、計測領域の計測対象ガス濃度に比例した信号を出力する第1の波長変調復調器と、
    前記光源から発振されるレーザを2つ以上に分配する光学系と、
    濃度が既知の前記計測対象ガスが封入され、前記光学系により分配されて計測領域に向かわなくなったレーザが前記封入ガス中を透過するような位置に配置された参照セルと、
    前記参照セル内の封入ガスを透過してきたレーザを受光し、かつ、その受光強度に応じた信号を出力する第2の受光装置と、
    前記第2の受光装置から出力された信号の中から変調信号としての交流成分を取り除き、受光強度の直流成分を出力する第2の直流成分検出器と、
    前記波長変調制御装置からの参照信号に基づいて、前記第2の受光装置から出力された信号の中からレーザに加えた波長変調信号の偶数次高調波成分を検出し、前記参照セル内の封入ガス濃度に比例した信号を出力する第2の波長変調復調器と、
    前記波長変調制御装置からの参照信号に基づいて、前記第2の受光装置から出力された信号の中からレーザに加えた波長変調信号の奇数次高調波成分を検出し、レーザ波長を計測対象ガスの吸収波長に固定化するための基準信号を出力する第3の波長変調復調器と、
    前記第1の波長変調復調器、第2の直流成分検出器および第2の波長変調復調器から出力された信号に基づいて、計測領域中のガス濃度および固体粒子濃度を算出し、その算出結果を出力する解析装置と、
    前記波長変調制御装置からの変調信号と前記第3の波長変調復調器からのレーザ波長固定化信号とを加算し、その加算信号を前記レーザ出力制御装置への外部制御信号として出力する加算器と、
    計測領域の温度を計測し、その計測値に応じた信号を前記解析装置に出力する温度計測手段と、
    計測領域の圧力を計測し、その計測値に応じた信号を前記解析装置に出力する圧力計測手段と、を具備するガス濃度フラックス計測装置であって、
    さらに、外部制御されるファラデー回転子を有し、前記単一の光源から発振されるレーザの偏光面を回転させる偏光面回転装置と、
    前記ファラデー回転子の回転角度を制御し、レーザ偏光面を縦偏光と横偏光に一定周期で切り替えさせる偏光面変調制御装置と、
    前記偏光面変調制御装置からの強度変調参照信号に基づいて前記第1の受光装置の出力信号中から偏光面変調に同期した信号を検出し、計測領域を透過してきた縦偏光レーザの受光強度に比例した信号を計測部レーザ吸収量信号として前記解析装置に出力する第1の偏光面復調器と、
    前記偏光面変調制御装置からの強度変調参照信号に基づいて前記第1の受光装置の出力信号中から偏光面変調に同期した信号を検出し、計測領域を透過してきた横偏光レーザの受光強度に比例した信号を計測部レーザ吸収量信号として前記解析装置に出力する第2の偏光面復調器と、
    前記偏光面変調制御装置からの強度変調参照信号に基づいて前記第1の受光装置の出力信号中から偏光面変調に同期した信号を検出し、計測領域を透過してきたレーザの受光強度に比例した信号を濃度計測信号として前記解析装置に出力する第3の偏光面復調器と、を有し、
    前記解析装置は、前記第1、第2及び第3の偏光面復調器からそれぞれ入力される信号を用いてレーザ透過率の時間変化を求め、求めたレーザ透過率の時間変化からガス密度の時間変化を導出し、さらにガス密度の時間変化から計測対象ガスの乱れの状態を把握するためにMonin-Obukhov相似則に基づく解析を行い、その解析結果を用いて計測領域の運動量フラックス、計測対象ガスの濃度フラックスおよび計測対象ガス濃度を演算により求めることを特徴とするガス濃度フラックス計測装置。
  6. 前記第3の偏光面復調器は前記第1の波長変調復調器の後段に設けられ、偏光面変調周波数は波長変調周波数より小さく設定されていることを特徴とする請求項5記載の装置。
  7. 前記第3の偏光面復調器は前記第1の波長変調復調器の前段に設けられ、偏光面変調周波数は波長変調周波数より大きく設定されていることを特徴とする請求項5記載の装置。
  8. さらに、前記第1及び第2の偏光面復調器の前段に設けられ、前記偏光面変調制御装置からの偏光面変調参照信号の位相を変化させる信号位相変換器を有することを特徴とする請求項5記載の装置。
  9. 前記第3の直流成分検出器の代わりとして、前記第1の受光装置から出力された信号の中から偏光面変調に同期した信号を検出し、受光強度に比例した信号を出力する偏光面変調復調器を有することを特徴とする請求項3又は4のいずれか一方に記載の装置。
  10. 前記光源と前記第1の受光装置は同じ容器内に収納されていることを特徴とする請求項1乃至5のうちのいずれか1項記載の装置。
  11. さらに、前記温度計測手段と前記圧力計測手段も前記同じ容器内に収納されていることを特徴とする請求項10記載の装置。
  12. 前記流速計測手段として時間応答性良好な超音波流速計を用い、該超音波流速計は前記同じ容器内に収納されていることを特徴とする請求項10記載の装置。
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