JP2005105047A - 塩化ビニル系樹脂スラリーから塩化ビニルモノマーを除去する方法 - Google Patents

塩化ビニル系樹脂スラリーから塩化ビニルモノマーを除去する方法 Download PDF

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Abstract

【課題】脱モノマー塔の種類に関係なく、効率的に塩化ビニル系樹脂スラリーから未反応塩化ビニルモノマーを除去する方法を提供すること。
【解決手段】(1)脱モノマー塔を用いて、塩化ビニル系樹脂スラリーから塩化ビニルモノマーを除去するに際し、脱モノマー塔への塩化ビニル系樹脂スラリーの装入温度を塔装入部温度より3〜15℃高く設定することを特徴とする塩化ビニル系樹脂スラリーから塩化ビニルモノマーを除去する方法、(2)塩化ビニル系樹脂スラリーの装入温度の設定が塔装入の直前に行われるものである1記載の塩化ビニル系樹脂スラリーから塩化ビニルモノマーを除去する方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、重合反応終了後の塩化ビニル系樹脂スラリーから未反応の塩化ビニルモノマーを除去する方法に関するものである。
塩化ビニ系樹脂は、難燃性、絶縁性、断熱性等に優れた特性を備えた樹脂であるので、世界的にみても幅広い分野に使用されており、極めて有用な樹脂である。
塩化ビニル系樹脂は、通常、懸濁重合法、乳化重合法、塊状重合法等によって製造されるが、反応熱を除去し易いこと、不純物の少ない製品を得ることができること、重合後の塩化ビニル系樹脂が粒子状であるため造粒工程が不要であること等の理由から、懸濁重合法や乳化重合法が広く採用されている。
この懸濁重合法や乳化重合法は、通常、塩化ビニル、水性媒体、分散剤、重合開始剤等を攪拌機付き重合反応器内で、所定温度に保ちながら攪拌することによって行われるが、重合反応は、塩化ビニルが100%塩化ビニル系樹脂となるまで行われることはなく、通常、製造効率のよい段階、即ち、重合転化率80〜95%の段階で停止される。
その後、重合反応器を脱圧することで未反応モノマーを取り出し、あるいは重合反応器から脱ガス槽に塩化ビニル系樹脂スラリーをブローダウン(取卸し)して脱ガス槽に受けたのち、脱ガス槽の圧力を大気圧まで脱圧すると、塩化ビニル系樹脂スラリーには約2%の未反応モノマーが存在する。
しかし、原料の塩化ビニルは、有害なので、製品の塩化ビニル系樹脂には実質的に混入してはならないとされ、対樹脂当たり10ppm以下にすることが求められている。
更に、近年の要求として、対樹脂当たり1ppm以下とすることが、塩ビパイプ用途及び継ぎ手用途から望まれている。
そのために、未反応塩化ビニルを回収した後の塩化ビニル系樹脂スラリー中の塩化ビニルを脱モノマー塔でストリッピング処理し、対樹脂スラリーあたり100ppm以下に減衰させたのち、塩化ビニル系樹脂スラリーから水性媒体を機械的に分離し、塩化ビニル系樹脂中に25%前後残っている水性媒体と未反応塩化ビニルを熱風乾燥等により除去し、残水性媒体0.3%以下で、かつ残留塩化ビニル濃度10ppm以下の粉末状の塩化ビニル系樹脂を得ている。
従来から、上記塩化ビニル系樹脂スラリーから塩化ビニルを除去する方法が開発されており、例えば、(1)約60〜90℃に余熱された重合体分散液を、その段板をそれぞれ少なくとも1つの、偏心に配置された水分散液用の流下管が貫通している変更多孔板塔の上部に段板の面積1m2当たり毎時約5〜35m3の量で連続的に導入し、これに対し向流で約0.5〜5バールの圧力下の約80〜150℃の熱水蒸気で、分散液1m3当たり蒸気30〜100kgの蒸気負荷率において約1〜30分の平均滞留時間処理し、その際1つの段板を通過するときの、塔内の蒸気の圧損失は好ましくない1つの流下管を通過するときよりも小さく、かつ単量体を除去精製された分散液は塔の底部で取出し、塔の頂部から流出する蒸気混合物は水相ならびに単量体を得るために凝縮させることにより、重合体分散液から単量体を連続的に除去する方法(特許文献1)、(2)塩化ビニルモノマーを含む塩化ビニル樹脂スラリーの流出経路を必要とする少なくとも1つの多孔板を備えた容器(塔を含む)にスラリーを供給し、該スラリーを前記多孔板上において該多孔板の多数の細孔から吹き込まれる水蒸気で処理して該スラリー中の塩化ビニルモノマーを除去する方法において、前記処理の間前記多孔板の下面を間欠的または連続的に温水噴射により洗浄することにより、重合体分散液から塩化ビニルモノマーを除去する方法(特許文献2)、(3)充填塔に入る前の懸濁液もしくは乳濁液を熱交換器の低温入口部に導入し、該熱交換器より出た懸濁液もしくは乳濁液を充填塔に送入し、一方、充填塔で未反応塩化ビニルモノマーが除去された懸濁液もしくは乳濁液を該熱交換器の高温供給部入口へ導入し、充填塔へ送られる懸濁液もしくは乳濁液の加熱媒体となし、該熱交換器で充填塔へ送られる懸濁液もしくは乳濁液を加熱したのちに該熱交換器より出た懸濁液もしくは乳濁液を2つの流れに分け第1の流れを乾燥工程へ送り、第2の流れを充填塔の塔底へリサイクルすること、及び、充填塔内部で未反応塩化ビニルモノマーがストリッピングされ充填塔の塔頂部から系外へ排出されるに際し、未反応塩化ビニルモノマーと共に排出される水蒸気が凝縮され、該凝縮水が充填塔の塔頂部のリサイクルされることにより、重合体分散液から塩化ビニルモノマーを除去する方法(特許文献3)等が挙げられる。
特開昭53−33288号公報 特開昭56−22305号公報 特開昭59−56410号公報
上記の従来法は、多段棚段式又は充填塔式の脱モノマー塔を用いて、塩化ビニル系樹脂スラリーから未反応塩化ビニルモノマーの除去を図ったものであり、汎用性や効率性等の点からみて十分ではない。
以上のことから、脱モノマー塔の種類に関係なく、効率的に塩化ビニル系樹脂スラリーから未反応塩化ビニルモノマーを除去することが出来る技術の開発が待たれている。
本発明の課題は、脱モノマー塔の種類に関係なく、効率的に塩化ビニル系樹脂スラリーから未反応塩化ビニルモノマーを除去する方法を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意研究を重ねたところ、脱モノマー塔を用いて、塩化ビニル系樹脂スラリーから未反応の塩化ビニルモノマーを除去するに際し、塩化ビニル系樹脂スラリーの装入温度を工夫すると、意外にも、該スラリー中の未反応の塩化ビニルモノマーの除去が促進されることを知り、更に研究を重ねた結果、本発明を完成するに至ったものである。
本発明は、以下の各発明から構成されるものである。
1 脱モノマー塔を用いて、塩化ビニル系樹脂スラリーから塩化ビニルモノマーを除去するに際し、脱モノマー塔への塩化ビニル系樹脂スラリーの装入温度を塔装入部温度より3〜15℃高く設定することを特徴とする塩化ビニル系樹脂スラリーから塩化ビニルモノマーを除去する方法。
2 塩化ビニル系樹脂スラリーの装入温度の設定が塔装入の直前に行われるものである上記1記載の塩化ビニル系樹脂スラリーから塩化ビニルモノマーを除去する方法。
3 塩化ビニル系樹脂スラリーの装入温度の設定が水蒸気及び/又は加熱器により行われるものである上記2記載の塩化ビニル系樹脂スラリーから塩化ビニルモノマーを除去する方法。
本発明は、脱モノマー塔を用いて、塩化ビニル系樹脂スラリーから塩化ビニルモノマーを除去するに際し、脱モノマー塔への塩化ビニル系樹脂スラリーの装入温度を塔装入部温度より3〜15℃高く設定することにより、塩化ビニル系樹脂スラリーから未反応塩化ビニルモノマーを効率よく除去する点に特徴を有するものである。
本発明は、塩化ビニル樹脂の細孔容積が、0.2ml/g以下、即ち、0.08〜0.20ml/g、好ましくは0.10〜0.18ml/g、のスラリーを脱モノマー塔で処理する場合に、その特徴がより一層発揮される。
本発明は、以下の知見に基づいてなされたものである。
(1)残留モノマー濃度を低減させるために、脱モノマー塔の塔底部の温度をより高い温度でスラリーを処理すると、製品の熱安定性を損なうことになる。
(2)一方、熱安定性が損なわないために、脱モノマー塔でのスラリー滞留時間を短くすると、残留モノマー濃度を低減させることができない。
(3)ところが、塩化ビニル系樹脂スラリーの装入温度を装入部温度より3〜15℃高く設定するという手段をとると、意外にも、該スラリー中の未反応の塩化ビニルモノマーの除去が促進され、製品の熱安定性を損なうことなく、製品中に残留するモノマー濃度を低減することができることをつきとめた。
このように、本発明では、製品の熱安定性を損なうことなく、製品中に残留するモノマー濃度を低減することができるが、その理由は、以下の通りであると推察される。
脱モノマー塔を用いて、塩化ビニル系樹脂スラリーから未反応の塩化ビニルモノマーを除去するに際し、該スラリーの装入温度を装入部温度より3〜15℃高く設定すると、通常の水蒸気処理による塩化ビニルモノマーの除去に加えて、更に該スラリーに減圧蒸散(フラッシュ現象)が生じ、該スラリー中の塩化ビニルモノマーの除去が促進されるものと考えられる。
何れにしても、本発明は、脱モノマー塔への塩化ビニル系樹脂スラリーの装入温度を装入部温度より3〜15℃高く設定すると、該スラリーについて、自然発生的な減圧蒸散(フラッシュ現象)が生起するという現象を利用するものであるので、脱モノマー塔の種類、例えば、多段棚段式又は充填塔式等の種類に関係なく、適用できる利点があり、また、そのための手段、即ち、装入温度を装入部温度より高く設定するという手段自体も簡便であり、容易に設定可能である。
以上のように、本発明では、従来の多段棚段式又は充填塔式等の脱モノマー塔を用いて、塩化ビニル系樹脂スラリーから未反応の塩化ビニルモノマーを除去するに際し、通常の水蒸気処理による塩化ビニルモノマーの除去に加えて、更に減圧蒸散(フラッシュ現象)という現象によると考えられる塩化ビニルモノマーの除去も加算されるので、従来法に比し効率的に塩化ビニルモノマーが除去し得るという優れた効果が奏されることになる。
以下、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、脱モノマー塔を用いて、塩化ビニル系樹脂スラリーから塩化ビニルモノマーを除去するに際し、脱モノマー塔への塩化ビニル系樹脂スラリーの装入温度を塔装入部温度より3〜15℃高く設定して、塩化ビニル系樹脂スラリーから塩化ビニルモノマーを効率よく除去する方法である。
そこで、上記の本発明の構成要件について、説明する。
(1)塩化ビニル系樹脂スラリー
本発明の対象とする塩化ビニル系樹脂スラリーは、塩化ビニル単独重合体又は塩化ビニルとその共重合性モノマーとの共重合体からなるスラリーであって、該スラリーは、該モノマーを懸濁重合法、乳化重合法等の重合法により重合して得られたものが挙げられる。
塩化ビニルと重合反応し得る重合性モノマーとしては、例えば、酢酸ビニルのようなビニルアルコールのカルボン酸エステル類、アルキルビニルエーテルのようなビニルエーテル類、アクリレート、メタクリレートのような不飽和カルボン酸のエステル類、塩化ビニリデン、弗化ビニリデンのようなハロゲン化ビニリデン類、アクリロニトリルのような不飽和ニトリル類、エチレン、プロピレンのようなオレフィン類などが挙げられる。
本発明の塩化ビニル系樹脂スラリーは、重合反応終了後の塩化ビニル系樹脂、未反応の残留モノマー及び水を主成分とした水性媒体からなる分散液からなるが、重合反応には、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース等の分散剤又は必要に応じて緩衝剤、粒径調整剤、スケール付着抑制剤、消泡剤等が使用されるので、該スラリー中には、これらが微少量混入している。
本発明で処理される塩化ビニル系樹脂スラリーは、該スラリー中に分散している塩化ビニル系樹脂の濃度、即ち、スラリー濃度が5〜45重量%、好ましくは10〜40重量%のものが望ましい。スラリー濃度が45重量%を超えると、残留モノマー除去処理塔内での塩化ビニル系樹脂スラリーの流動性が悪化する。一方、5重量%未満では、除去処理効率が著しく低下する。
本発明で処理される塩化ビニル系樹脂スラリーは、通常、重合反応が終了した後、重合器内部の圧力が常圧まで降圧するのを待って、塩化ビニル系樹脂スラリータンクに移されるが、重合器内部の圧力が常圧まで降圧する以前、もしくは任意の重合転化率で停止した重合反応途中の塩化ビニル系樹脂スラリーを塩化ビニル系樹脂スラリータンクに移しても良い。塩化ビニル系樹脂スラリータンクに移されたスラリーは、ポンプを使って、本発明の脱モノマー塔に流し込まれる。
(2)塩化ビニルモノマーの除去
1)脱モノマー塔
塩化ビニルモノマーの除去は、脱モノマー塔を用いて行われるが、該塔としては、通常のもの、例えば、棚段式脱モノマー塔や充填塔式脱モノマー塔等が使用することが出来る。
棚段式脱モノマー塔方式は、塩化ビニル系樹脂スラリーの流出通路を設けた少なくとも1つの多孔板を備えた塔にスラリーを供給し、該スラリーを多孔板上において、該多孔板の多数の細孔から吹き込まれた90〜120℃の熱水蒸気で処理して、スラリー中の塩化ビニルを除去する方法である。
また、充填塔式脱モノマー塔方式は、塩化ビニル系樹脂スラリーを充填塔内で水蒸気と向流接触させてスラリー中の塩化ビニルモノマーを除去する方法であって、充填塔中の充填物としては、ラシヒリング、ペルルサドル、テラレッテパッキング、ボールリング、レッシングリング、インターロッキングサドル等が用いられている。
2)脱モノマー塔の操作条件
脱モノマー塔の操作条件は、一般的には、脱モノマー塔ボトム温度は95〜105℃、脱モノマー塔トップ温度は85〜95℃、スラリーの滞留時間は5〜15分間の範囲で操作し、当該スラリーの着色や熱安定性が損なわれないように、脱モノマー塔への蒸気流量、脱モノマー塔へのスラリー供給流量、脱モノマー塔塔頂圧力およびスラリーの脱モノマー塔装入棚段部を変えて、適切な範囲になるように調節する。
3)スラリー装入部
脱モノマー塔へのスラリー装入部は、通常はトップ段であるが、棚段塔にあっては、必ずしもトップ段ではなく、トップ段より1〜3段低い棚段部に装入することもある。
例えば、(1)スラリーの脱モノマー塔での滞留時間を短くした場合であっても、当該スラリーの脱モノマー塔でのモノマーストリッピングが十分に果たされるとき、(2)処理するスラリー流量が少なく、脱モノマー塔処理設計条件から大きく外れる場合、脱モノマー塔での当該スラリーの滞留時間が長くなることで、当該スラリーの着色や熱安定性が損なわれるとき、等が挙げられる。
4)スラリー装入温度と装入部温度
通常は、脱モノマー塔へのスラリー温度は塔装入部温度より低いのが常識である。その理由は、以下述べるように、スラリーの予熱システムによるところが大きい。
(イ)スラリーから残留モノマーを効率よく、省エネルギーでストリッピングする為には、スラリーの予熱源は、脱モノマー塔底部から取り出され高温の脱モノマーされたスラリーとするのが一般的である。
この時、予熱器内でスラリーの沈積発生がなく、スラリー予熱量を大きくするために予熱器を大きくする設計を行うと、スラリーが予熱器を流れる時に生ずる予熱器の差圧は大きくなる。その場合、スラリーポンプを大型化すると、消費する動力が大きくなるので実態にそぐわなくなる。
そのため、通常、差圧0.8〜1.2kg/cm2程度のスラリー予熱器とする。
(ロ)その結果、通常、予熱器出口のスラリー温度は、塔ボトム温度より5〜25℃低い温度までにしか上がらないので、脱モノマー塔の底部と頂部の温度差は、通常、底部温度より頂部温度は5〜15℃低くなる。そして、底部からは蒸気を吹き込んでおり、棚段上にあるスラリーと、多孔板である棚段を蒸気が通過する時に生ずる差圧のため、脱モノマー塔はその圧力に相当する水蒸気の沸騰温度を示す。
例えば、塔底温度を100℃で操作した場合、塔頂温度は92℃前後となり、脱モノマー塔底部から取り出され100℃の脱モノマーされたスラリーにより予熱された、予熱器を出るスラリーは88℃で塔頂部に装入されることになる。
(ハ)以上のことから、通常、脱モノマー塔では、予熱スラリー温度が塔装入部温度より高くなることはない。
以上の判断が正しいことは、従来の棚段式脱モノマー塔方式では、例えば、60〜90℃のスラリーを塔の頂部温度85〜115℃の脱モノマー塔に装入するとされているが、実施例では、80℃に予熱されたスラリーを塔頂部温度104℃の脱モノマー塔へ装入していること(特許文献1参照)、また、従来の充填塔式脱モノマー塔方式では、例えば、70〜100℃の予熱されたスラリーを塔頂温度70〜100℃の脱モノマー塔に装入するとされているが、実施例では、85℃の予熱されたスラリーを塔頂温度88℃の脱モノマー塔の装入していること(特許文献3参照)から、窺い知れることである。
このように、従来法では、脱モノマー塔への塩化ビニル系樹脂スラリーの導入温度は、塔の導入部(塔頂部)の温度より低い温度で実施されているのが通常である。
これに対して、本発明では、脱モノマー塔自体は、通常の棚段式や充填塔式等を用いるが、通常とは逆に、脱モノマー塔への塩化ビニル系樹脂スラリーの装入温度は、脱モノマー塔の装入部(塔頂部)の温度より3〜15℃、好ましくは5〜12℃高く設定し、目的を達成した。この温度範囲を逸脱すると、本発明の目的は達成できない。
本発明では、上記の手段の採用により、従来の水蒸気処理による塩化ビニルモノマーの除去に加えて、更に減圧蒸散(フラッシュ現象)という現象による塩化ビニルモノマーの除去も加算されるために、塩化ビニルモノマーの除去は向上する結果となる。
また、塩化ビニル系樹脂スラリーの装入温度の設定は、塔装入の直前に行うのがよく、その場合の加熱手段としては、水蒸気及び/又は加熱器が採用し得る。
次に、図面により本発明を説明する。
図1は、本発明を模式的に示すフロー図である。
重合反応終了後の塩化ビニル系樹脂スラリーは、原料スラリータンク1に貯えられる。この原料スラリータンク1中のスラリーは、熱交換器2において、脱モノマー塔3から製品スラリー排出ポンプ16により製品スラリータンク5に供給される製品スラリーとの熱交換より予熱された後、更にスラリー蒸気ミキサー4により、脱モノマー塔3の塔頂装入部の温度より3〜15℃高い温度になるように加熱して、脱モノマー塔3の塔頂装入部に導入する。
この場合の塔頂部及び塔底部の温度は、それぞれ、脱モノマー塔頂部温度計13、脱モノマー塔底部温度計14により測定する。
また、供給スラリーの流量の設定は、供給スラリー流量計6、供給スラリー流量調節計7及び供給スラリー流量調節弁8により、また、供給スラリーの導入温度の設定は、供給スラリー温度計9と供給スラリー温度調節計10により行う。
次いで、脱モノマーされたスラリーは、脱モノマー塔3の底部出口から脱モノマー塔スラリー排出ポンプ16により取り出され、熱交換器2で熱交換されて冷却された後、製品スラリータンク5に貯えられる。
一方、脱モノマー塔3の塩化ビニル含有ガスは、該塔上部の冷却部で冷却された後、脱モノマー塔3から、脱モノマー塔圧力調節計11と脱モノマー塔圧力調節弁12により、排出量を調整して排出し、塩化ビニルの回収工程に付して、塩化ビニルを回収する。
製品スラリータンク5中の塩化ビニルモノマーが除去されたスラリーは、乾燥工程で脱水されて、高品質の最終製品となる。
(1)本発明では、脱モノマー塔を用いて、塩化ビニル系樹脂スラリーから未反応の塩化ビニルモノマーを除去するに際し、通常の水蒸気処理による塩化ビニルの除去に加えて、更に減圧蒸散(フラッシュ現象)という現象による塩化ビニルの除去も加算されるので、従来に比し効率的に塩化ビニルが除去されるので、製品の熱安定性を損なうことなく、製品中に残留するモノマー濃度を低減することができるという優れた効果が達成される。
(2)本発明は、脱モノマー塔の種類、例えば、多段棚段式又は充填塔式等の種類に関係なく、適用できる利点があり、また、そのための手段、即ち、装入温度を装入部温度より高く設定するという手段自体も簡便であり、容易に設定可能である点で有利である。
(3)本発明は、塩化ビニル樹脂の細孔容積が、0.2ml/g以下のスラリーを脱モノマー塔で処理する場合に、その特徴がより一層発揮される。
以下、実施例等により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらのものに限定されない。なお、特に触れない限り、「%」は「重量%」を意味する。
実施例及び比較例の塩化ビニル樹脂製品の物性評価等は、以下の方法で行った。
(1)プレスシート熱安定性試験
(試験方法)
塩化ビニル重合体100重量部に対し、
三塩基硫酸鉛 1.0重量部
ステアリン酸鉛 0.8 〃
ステアリン酸カルシウム 0.3 〃
ステアリン酸 0.1 〃
を配合し、160℃のロールで5分間混錬、厚さ1mmのシートを作成。
その後、プレス175℃予熱10分間、加圧80kg/cm2G×10分間で、厚さ2mmのシートを作成。
次いで、日本電色株式会社製分光色差計SQ−2000を使用して、上記の成型シートの熱安定性を測定した。測定した値(YI)が小さい値程、熱安定性が高いことを示す。
(YIの評価)
−1.5以上 ・・・・・・・・・ 劣(×)
−1.5未満〜−3.0未満・・・ 良(○)
−3.0以下・・・・・・・・・・ 優(◎)
(2)塩化ビニル樹脂パウダーの細孔容積
塩化ビニル樹脂パウダーをサンプリングし、ポロシティメーター(MICROMERITICS社製)により、下記の条件で、塩化ビニル樹脂の細孔容積を測定した。
測定法:水銀圧入法
装置 :オートポアIII 9420(MICROMERITICS社製)
圧力 :2300kg/cm2
測定値:細孔径0.1〜5μの累積細孔容積(ml/g)を測定値とした。
(3)残留塩化ビニルモノマー濃度
塩化ビニル樹脂スラリー又は乾燥パウダーをサンプリングし、脱水した後、ガスクロマトグラフ(ガスクロマトグラフ8A:島津製作所(株)製)を用いたヘッドスペース法により、下記の条件下で、塩化ビニル樹脂中の残留塩化ビニルモノマー濃度を測定した。
検出部:FIDタイプ(水素炎イオン化検出器)
カラム:ステンレススチール製 3mmφ×3m
カラム充填材:20%トリクレジルフォスフエイト(TCP)
カラム温度:約60℃
検出器濃度:約190℃
キャリアガス:窒素
ディスクターガス:空気
(4)残留塩化ビニルモノマー濃度測定値の評価
(出口スラリー)
100ppm以上・・・・・・・・・・・ 劣(×)
30ppm以上〜100ppm未満・・ 良(○)
30ppm未満・・・・・・・・・・・ 優(◎)
(乾燥機出口製品)
10ppm以上・・・・・・・・・・・ 劣(×)
1ppm以上〜10ppm未満・・・ 良(○)
1ppm未満・・・・・・・・・・・ 優(◎)
(実施例1)
伝熱面積(外径基準)150m2を有した竪型・多管式還流熱交換器を備えた容積100m3反応器に、塩化ビニルモノマー39m3、脱塩水42.5m3、分散剤A(ポリビニールアルコール 部分ケン化度80.5モル%)を770ppm(対モノマー)及び分散剤B(ポリビニールアルコール 部分ケン化度36.5モル%)を150ppm(対モノマー)、溶性開始剤(t−ブチルパーオキシネオデカノエート)495ppm(対モノマー)を添加して撹拌し、反応温度を61.5℃に調節しながら反応を進め、重合率5%に到達する頃から 連鎖移動剤(2−メルカプトエタノール)295ppm(対モノマー)を反応器に85ppm(対モノマー)/Hr装入し、反応器圧力が8.0kg/cm2Gを示した時反応を打ち切った。その後、反応器内スラリーをブローダウンして反応器下流のブローダウン槽に受け、次に、ブローダウン槽の未反応モノマーを回収した後、スラリー処理する脱モノマー塔3の入り口にある原料スラリータンク1へ送って脱モノマー処理に備えた。当該スラリー中の残留塩化ビニルモノマー濃度を測定したところ、2.0%であった。
塔径2000mm、各トレーが回転することによりトレー上のスラリー逐次下段のトレーに落下させる方式の、段間700mmの8段のトレーを有する脱モノマー塔3を、スラリー処理の前に水、窒素ガスおよび蒸気を使用して水運転および昇温運転を行い、脱モノマー塔底部の温度を99℃になるように塔頂圧力を調節した後、上記の原料スラリータンク1中のスラリーの供給を開始した。スラリーの供給流量は35m3/Hrとし、脱モノマー塔3をスラリーが通過する時間を12分間とするように、回転トレーの動作(開閉の間隔)時間を調節した。この時の脱モノマー塔のスラリー供給段(トレー最上段)のスラリー温度は92℃を示し、脱モノマー塔3の底部スラリーは塔底から排出され、熱交換器2に導入して、原料スラリータンク1から供給されるスラリーを予熱して、スラリー温度を87℃とした。この予熱されたスラリーは、熱交換器2と脱モノマー塔3との間の配管に設けられたスラリー蒸気ミキサー4に導入し、ここで蒸気を導入して、スラリー温度を95℃に調節し、脱モノマー塔3の最上段に供給した。15分後に、脱モノマー塔3の出口から99℃のスラリーを密封容器に採取し、常温まで冷却後に、スラリー中の残留塩化ビニルモノマー濃度を測定した結果、69ppmであった。
また、上記のスラリーを、脱水後、真空乾燥器で水分0.3%以下に乾燥させ、上記(1)の熱安定性試験に供した。
上記の測定結果によると、上記スラリー乾燥物のYIは、−4.4であった。
次に、上記の脱モノマー塔で得られた製品スラリータンク5中のスラリーを後工程で乾燥処理した後、製品の分析を実施したところ、平均重合度700、嵩比重0.56g/ml、平均粒径143μm、細孔容積(ミクロポロシティ)0.14ml/g であった。
(実施例2)
実施例1において、脱モノ塔へ装入されるスラリー温度を98℃に変更して脱モノマー処理を実施した以外は、同一の条件で実施し評価した結果、スラリー残留塩化ビニルモノマー濃度は29ppm、YIは−3.8であった。
(実施例3)
実施例1において、脱モノマー塔へ装入されるスラリー温度を101℃に変更して脱モノマー処理を実施した以外は、同一の条件で実施し評価した結果、スラリー残留塩化ビニルモノマー濃度は14ppm、YIは−3.3であった。
(実施例4)
実施例1において、脱モノマー塔へ装入されるスラリー温度を104℃に変更して脱モノマー処理を実施した以外は、同一の条件で実施し評価した結果、スラリー残留塩化ビニルモノマー濃度は8ppm、YIは−3.1であった。
(実施例5)
実施例1において、脱モノマー塔へ装入されるスラリー温度を106℃に変更して脱モノマー処理を実施した以外は、同一の条件で実施し評価した結果、スラリー残留塩化ビニルモノマー濃度は6ppm、YIは−2.8であった。
(比較例1)
実施例1において、スラリー蒸気ミキサーに水蒸気を供給しないで、87℃のスラリーを最上段トレーに供給し、脱モノマー処理を実施した以外は、同一の条件で実施し評価した結果、スラリー残留塩化ビニルモノマー濃度は313ppm、YIは−4.9であった。
(比較例2)
実施例1において、スラリー蒸気ミキサーに水蒸気を供給して、脱モノマー塔へ装入されるスラリー温度を93℃に調整し脱モノマー処理を実施した以外は、同一の条件で実施し評価した結果、スラリー残留塩化ビニルモノマー濃度は107ppm、YIは−4.7であった。
(比較例3)
実施例1において、スラリー蒸気ミキサーに蒸気を供給しないで、脱モノマー塔ボトム温度を106℃に上げて、脱モノマー処理を実施した。熱交換器2で予熱されたスラリー温度は94℃、脱モノマー塔最上段の温度は97℃であった。結果は、スラリー残留塩化ビニルモノマー濃度は12ppm、YIは2.1であった。
(比較例4)
実施例1において、スラリー蒸気ミキサーに水蒸気を供給しないで、脱モノマー塔ボトム温度を106℃に上げ、脱モノマー塔をスラリーが通過する時間を10分間とするように回転トレーの動作(開閉の間隔)時間を変更して処理を実施し、脱モノマー塔最上段の温度は97℃、熱交換器2で予熱された供給スラリー温度は94℃であった以外は、同一の条件で実施し評価した結果、スラリー残留塩化ビニルモノマー濃度は34ppm、YIは0.5であった。
上記の実施例及び比較例の結果は、表1に示す。
Figure 2005105047
表1の結果より、以下のことが解る。
(1)残留モノマー濃度を低減させるために脱モノマー塔のボトム温度をより高い温度でスラリーを処理すると、製品の熱安定性を損なうことになる。
(2)熱安定性が損なわないために、脱モノマー塔でのスラリー滞留時間を短くすると、残留モノマー濃度を低減させることができない。
(3)本発明による方法、即ち、脱モノマー塔への塩化ビニル系樹脂スラリーの装入温度を塔装入部温度より3〜15℃高く設定すれば、製品の熱安定性を損なうことなく、製品中に残留するモノマー濃度を低減できることが可能である。
塩化ビニ系樹脂は、難燃性、絶縁性、断熱性等に優れた特性を備えた樹脂であるので、世界的にみても幅広い分野に使用されており、極めて有用な樹脂であるが、該樹脂として、製品の熱安定性を損なうことなく、製品中に残留するモノマー濃度が少ない製品を簡便に得ることが可能である。
本発明を模式的に示すフロー図である。
符号の説明
1 原料スラリータンク
2 熱交換器
3 脱モノマー塔
4 スラリー蒸気ミキサー
5 製品スラリータンク
6 供給スラリー流量計
7 供給スラリー流量調節計
8 供給スラリー流量調節弁
9 供給スラリー温度計
10 供給スラリー温度調節計
11 脱モノマー塔圧力調節計
12 脱モノマー塔圧力調節弁
13 脱モノマー塔頂部温度計
14 脱モノマー塔底部温度計
15 脱モノマー塔スラリー供給ポンプ
16 脱モノマー塔スラリー排出ポンプ

Claims (3)

  1. 脱モノマー塔を用いて、塩化ビニル系樹脂スラリーから塩化ビニルモノマーを除去するに際し、脱モノマー塔への塩化ビニル系樹脂スラリーの装入温度を塔装入部温度より3〜15℃高く設定することを特徴とする塩化ビニル系樹脂スラリーから塩化ビニルモノマーを除去する方法。
  2. 塩化ビニル系樹脂スラリーの装入温度の設定が塔装入の直前に行われるものである請求項1記載の塩化ビニル系樹脂スラリーから塩化ビニルモノマーを除去する方法。
  3. 塩化ビニル系樹脂スラリーの装入温度の設定が水蒸気及び/又は加熱器により行われるものである請求項2記載の塩化ビニル系樹脂スラリーから塩化ビニルモノマーを除去する方法。


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