JP2005104772A - 誘電体磁器組成物および電子部品 - Google Patents

誘電体磁器組成物および電子部品 Download PDF

Info

Publication number
JP2005104772A
JP2005104772A JP2003340618A JP2003340618A JP2005104772A JP 2005104772 A JP2005104772 A JP 2005104772A JP 2003340618 A JP2003340618 A JP 2003340618A JP 2003340618 A JP2003340618 A JP 2003340618A JP 2005104772 A JP2005104772 A JP 2005104772A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
dielectric
mol
ceramic composition
temperature
batio
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2003340618A
Other languages
English (en)
Other versions
JP4098206B2 (ja
Inventor
Tomoaki Nonaka
智明 野中
Izuru Soma
出 相馬
Matsumi Watanabe
松巳 渡辺
Hitoshi Tanaka
田中  均
Hisashi Kume
粂  寿
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
TDK Corp
Original Assignee
TDK Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by TDK Corp filed Critical TDK Corp
Priority to JP2003340618A priority Critical patent/JP4098206B2/ja
Publication of JP2005104772A publication Critical patent/JP2005104772A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4098206B2 publication Critical patent/JP4098206B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Images

Abstract

【課題】 積層セラミックコンデンサの誘電体層を薄層化した場合に、高温下、高電界強度の直流電圧印加状態における容量温度変化率および、高温負荷寿命特性に優れた誘電体磁器組成物を提供すること。
【解決手段】 主成分であるBaTiOと、副成分としてMgOと、Yと、Vと、BaαCa(1−α)SiO(ただし、0≦α≦1)とを含有する誘電体磁器組成物であり、主成分であるBaTiO100モルに対する各副成分の比率が、MgO:0.1〜3モル、Y:0.5〜3モル、V:0.01〜0.2モル、BaαCa(1−α)SiO:0.5〜10モルであり、MnOおよびCrを実質的に含まないことを特徴とする誘電体磁器組成物。
【選択図】 無し

Description

本発明は、たとえば積層セラミックコンデンサの誘電体層などとして用いられる誘電体磁器組成物と、その誘電体磁器組成物を誘電体層として用いる電子部品に関する。
電子部品の一例である積層セラミックコンデンサは、たとえば、所定の誘電体磁器組成物からなるセラミックグリーンシートと、所定パターンの内部電極層とを交互に重ね、その後一体化して得られるグリーンチップを、同時焼成して製造される。積層セラミックコンデンサの内部電極層は、焼成によりセラミック誘電体と一体化されるために、セラミック誘電体と反応しないような材料を選択する必要がある。このため、内部電極層を構成する材料として、従来では白金やパラジウムなどの高価な貴金属を用いることを余儀なくされていた。
これに対して、安価な卑金属(たとえばニッケルや銅など)を内部電極の材料として用いるためには、中性または還元性雰囲気下において低温で焼成しても半導体化せず、すなわち耐還元性に優れ、焼成後には十分な比誘電率と優れた誘電特性(たとえば容量温度変化率が小さいなど)とを有する誘電体磁器組成物を開発することが必要である。
内部電極の材料として、ニッケルや銅のような卑金属を用いることができる誘電体磁器組成物として種々の提案がなされている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1には、86.32〜97.64モルのBaTiO、0.01〜10.00モルのY、0.01〜10.00モルのMgO、0.001〜0.200モルのVからなることを特徴とする耐還元性誘電体磁器組成物が開示されている。この文献には、内部電極に用いるニッケルが酸化しないように中性あるいは還元性雰囲気中で焼成した場合であっても、誘電体磁器組成物が還元されることによる比抵抗の低下及び短寿命化がなく、静電容量の温度変化が小さい積層磁器コンデンサを得ることができる旨が記載されている。
なお、この文献によると、MnO・Cr・Coの添加量の総量が0.01モル%未満であると、誘電体磁器組成物が半導体化してしまうため、良好な結果を得るためには、MnO・Cr・Coの総量は0.01モル%〜10モル%の範囲にある必要があると記載されており、この文献に具体的に開示されたコンデンサ試料、特に実施例に開示された試料は、いずれもMnOおよび/またはCrを含有している。
一方、近年、電子回路の高密度化に伴う電子部品の小型化に対する要求は高く、積層セラミックコンデンサの小型化、大容量化が急速に進んでいる。それに伴い、積層セラミックコンデンサにおける1層あたりの誘電体層の薄層化、および積層数増加による誘電体層の多層化が進み、薄層化および多層化してもコンデンサとしての信頼性を維持できる誘電体磁器組成物が求められている。
特に、小型化および大容量化のために、誘電体層を薄層化、たとえば5μm以下とした場合には、内部電極層も薄層化され、たとえば電極の酸化等による電極途切れが生じ易くなる。
しかし、上記特許文献1のように、MnOを誘電体磁器組成物に添加すると、焼成時にニッケル内部電極近傍にMnOの偏析が起こり、ニッケル電極が酸化し、電極途切れが発生する。このため、導通がとれなくなる等の故障、あるいは、信頼性の低下につながってしまい、特に、誘電体層を薄層化し、積層セラミックコンデンサの小型化した場合においては、この問題が顕著になる。
また、Crは、クロムを含む化合物であり、環境問題の観点より、代替物を探索するか、使用しないことが望まれている。
上述したように、特許文献1の実施例に開示された試料は、いずれもMnOおよび/またはCrを含むものであり、MnOおよびCrのいずれも含まない誘電体磁器組成物の具体的組成範囲に関しては何ら開示されていない。そのため、MnOおよびCrを含有しない誘電体磁器組成物を誘電体層として使用する場合、いかなる組成とすれば、薄層化しても高い信頼性を有する誘電体磁器組成物を得ることができるかについては、不明である。
また、特許文献2には、チタン酸バリウムを主成分とし、副成分としてR(ただし、RはY、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、TmおよびYbのうちの少なくとも1種類)、Ca、MgおよびSiの各元素を含有したものからなる複合酸化物である誘電体セラミック組成物が開示されている。また、この文献には、上記誘電体セラミック組成物に、Vを副成分としてさらに含有させることができると記載されている。
この文献によると、上記誘電体セラミック組成物を誘電体層として使用することにより、静電容量の温度特性がB特性、X7R特性を満足し、薄層化しても信頼性に優れた、積層セラミックコンデンサを得ることができる旨が記載されている。
一方、積層セラミックコンデンサの小型化および大容量化のために、誘電体層の薄層化および多層化が進むと、直流電圧を印加した際に、誘電体層にかかる電界強度(V/μm)が相対的に高くなる。そのため、コンデンサを小型化および大容量化するためには、上記性能のみならず、高い電界強度による直流電圧を印加した際における信頼性についても要求される。
しかし、上記特許文献2に具体的に開示されたコンデンサ試料、特に実施例に開示された試料には、実際にYO3/2を添加した試料および、Vを副成分として添加した試料については開示されていないうえ、さらに、薄層化した際に重要となる電界強度の高い直流電圧印加時の容量温度変化率に関しては、なんら記載されていない。
特許第2764513号公報 特開2001−39765号公報
本発明の目的は、積層セラミックコンデンサの誘電体層として使用し、積層セラミックコンデンサの誘電体層を薄層化、たとえば5μm以下とした場合においても、信頼性の高い誘電体磁器組成物、具体的には、高温下、高電界強度の直流電圧印加状態における容量温度変化率および、高温負荷寿命特性に優れた誘電体磁器組成物を提供することである。また、本発明は、このような誘電体磁器組成物を用いて製造され、信頼性が高められた積層セラミックコンデンサなどの電子部品を提供することも目的とする。特に本発明は、薄層化、小型化対応の積層セラミックコンデンサ等の電子部品を提供することを目的としている。
本発明の発明者等は、積層セラミックコンデンサなどの電子部品の誘電体層として用いられる誘電体磁器組成物において、積層セラミックコンデンサの誘電体層として使用し、積層セラミックコンデンサの誘電体層を薄層化しても、高温下、高電界強度の直流電圧印加状態における容量温度変化率および、高温負荷寿命特性に優れた誘電体磁器組成物について鋭意検討した結果、主成分であるBaTiOと、副成分としてMgOと、Yと、Vと、BaαCa(1−α)SiO(ただし、0≦α≦1)とを含有する誘電体磁器組成物において、その組成比を限定し、前記誘電体磁器組成物において、MnOおよびCrを実質的に含有しないことにより、本発明の目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明に係る誘電体磁器組成物は、
主成分であるBaTiOと、
副成分としてMgOと、Yと、Vと、BaαCa(1−α)SiO(ただし、0≦α≦1)とを含有する誘電体磁器組成物であって、
主成分であるBaTiO100モルに対する各副成分の比率が、
MgO:0.1〜3モル
:0.5〜3モル
:0.01〜0.2モル
BaαCa(1−α)SiO:0.5〜10モル
であり、MnOおよびCrを実質的に含まないことを特徴とする。
本発明に係る誘電体磁器組成物において、好ましくは、前記誘電体磁器組成物中のMnOの含有量が、前記主成分であるBaTiO100モルに対して、0.01モル以下であり、さらに好ましくは0.005モル以下である。
本発明に係る誘電体磁器組成物において、好ましくは、前記誘電体磁器組成物中のCrの含有量が、前記主成分であるBaTiO100モルに対して、0.01モル以下であり、さらに好ましくは0.005モル以下である。
本発明に係る電子部品は、上記のいずれかに記載の誘電体磁器組成物で構成してある誘電体層を有する。電子部品としては、特に限定されないが、積層セラミックコンデンサ、圧電素子、チップインダクタ、チップバリスタ、チップサーミスタ、チップ抵抗、その他の表面実装(SMD)チップ型電子部品が例示される。
本発明に係る積層セラミックコンデンサは、上記のいずれかに記載の誘電体磁器組成物で構成してある誘電体層と、内部電極層とが交互に積層してあるコンデンサ素子本体を有する。
本発明に係る積層セラミックコンデンサにおいて、好ましくは、温度20℃、印加電圧0Vにおける静電容量を基準とした場合に、温度85℃、電界強度0.8V/μmの直流電圧の印加状態における容量温度変化率(ΔC/C20)が±10%以内である。
本発明に係る積層セラミックコンデンサにおいて、好ましくは、前記誘電体層の厚みが、5μm以下である。
本発明に係る積層セラミックコンデンサにおいて、好ましくは、前記誘電体層を構成する誘電体粒子の平均粒子径が0.8μm未満である。
本発明に係る積層セラミックコンデンサにおいて、好ましくは、前記誘電体層の積層方向に並んだ粒子径の平均値が前記内部電極層の層間距離の1/3以下である。
本発明に係る積層セラミックコンデンサにおいて、好ましくは、試験温度200℃、30V/μmの直流電圧の印加状態に保持することにより測定される高温負荷寿命測定において、前記直流電圧の印加開始から、前記直流電圧の印加状態において、検出される電流の電流値が2mA以上となるまでの時間が、35時間以上である。
本発明によると、主成分であるBaTiOと、副成分としてMgOと、Yと、Vと、BaαCa(1−α)SiOとを含有する誘電体磁器組成物において、前記副成分の組成の範囲を限定し、MnOおよびCrを実質的に含有しないことにより、積層セラミックコンデンサの誘電体層として使用し、積層セラミックコンデンサの誘電体層を薄層化しても、高温下、高電界強度の直流電圧印加状態における容量温度変化率および、高温負荷寿命特性に優れた誘電体磁器組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、薄層化しても、高温下、高電界強度の直流電圧印加状態における容量温度変化率および、高温負荷寿命特性に優れた積層セラミックコンデンサなどの電子部品を提供することができる。
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの断面図、
図2は本発明の実施例および比較例の試料の各電界強度と比抵抗ρとの関係を示すグラフ、
図3は本発明の実施例および比較例の試料の各電界強度と比抵抗ρの対数logρとの関係を示すグラフである。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサ1は、誘電体層2と内部電極層3とが交互に積層された構成のコンデンサ素子本体10を有する。このコンデンサ素子本体10の両端部には、素子本体10の内部で交互に配置された内部電極層3と各々導通する一対の外部電極4が形成してある。コンデンサ素子本体10の形状に特に制限はないが、通常、直方体状とされる。また、その寸法にも特に制限はなく、用途に応じて適当な寸法とすればよいが、通常、(0.4〜5.6mm)×(0.2〜5.0mm)×(0.2〜1.9mm)程度である。
内部電極層3は、各端面がコンデンサ素子本体10の対向する2端部の表面に交互に露出するように積層してある。一対の外部電極4は、コンデンサ素子本体10の両端部に形成され、交互に配置された内部電極層3の露出端面に接続されて、コンデンサ回路を構成する。
誘電体層2は、本発明の誘電体磁器組成物を含有する。
本発明の誘電体磁器組成物は、主成分であるBaTiOと、
副成分としてMgOと、Yと、Vと、BaαCa(1−α)SiO(ただし、0≦α≦1)とを含有する誘電体磁器組成物であって、
MnOおよびCrを実質的に含まない。
主成分であるBaTiOは、固相法、蓚酸塩法、水熱合成法、アルコキシド法、ゾルゲル法その他の公知の製造方法を用いて製造することができる。
MgOの含有量は、BaTiO100モルに対して、0.1〜3モルであり、好ましくは0.5〜2.5モル、さらに好ましくは、1.0〜2.0モルである。
MgOは、耐還元性を向上させる効果と、高温負荷寿命特性を向上させる効果とがあり、MgOの含有量が少な過ぎると、このような効果が得られなくなる傾向にあり、多過ぎると、焼結性が悪くなり、比誘電率(ε)が低下する傾向にある。
の含有量は、BaTiO100モルに対して、0.5〜3モルであり、好ましくは1.0〜3モルである。
は、高温負荷寿命特性を向上させる効果があり、Yの含有量が少な過ぎると、このような効果が得られなくなる傾向にあり、多過ぎると、焼結性が悪化する傾向にある。
の含有量は、BaTiO100モルに対して、0.01〜0.2モルであり、好ましくは0.01〜0.12モル、さらに好ましくは、0.06〜0.12モルである。
は、キュリー温度以上での容量温度特性を平坦化する効果と、IR寿命を向上させる効果とがあり、Vの含有量が少な過ぎると、添加した効果が得られなくなる傾向にあり、多過ぎると、IRが著しく低下する傾向にある。
BaαCa(1−α)SiOの含有量は、BaTiO100モルに対して、0.5〜10モルであり、好ましくは0.5〜3.0モル、さらに好ましくは、0.5〜2.0モルである。
BaαCa(1−α)SiOは、焼結性を向上させ、初期IR不良率の発生を低下させる効果があり、BaαCa(1−α)SiOの含有量が少な過ぎると、焼結性が悪化する傾向にあり、多過ぎると比誘電率が低下する傾向にある。
また、複合酸化物であるBaαCa(1−α)SiOは、融点が低いため主成分に対する反応性が良好なので、それぞれ単独の酸化物であるBaOおよびCaOとして添加するよりも、本発明ではBaOおよび/またはCaOを上記複合酸化物として添加することが好ましい。
なお、BaとCaとの組成モル比を示す記号αは任意であり(0≦α≦1)、一方だけを含有するものであってもよいが、好ましくは0.3≦α≦0.7である。
本発明の誘電体磁器組成物の特徴点は、主成分であるBaTiOと、上述した各副成分とを含有する誘電体磁器組成物であり、MnOおよびCrを実質的に含まない点である。
本実施形態の誘電体磁器組成物において、MnOの含有量は、実質的に含まないという程度であれば、特に問題はないが、BaTiO100モルに対して、好ましくは0.01モル以下、さらに好ましくは0.005モル以下、より好ましくは0.001モル以下である。
MnOは、焼成時にニッケル内部電極近傍に偏析し、ニッケル電極を酸化させてしまう。そのため、誘電体磁器組成物中のMnOが多過ぎると、直流電圧印加状態における温度特性が悪化したり、導通がとれなくなる等の故障、あるいは、信頼性の低下につながる傾向にある。
また、Crの含有量についても、実質的に含まないという程度であれば、特に問題はないが、BaTiO100モルに対して、好ましくは0.01モル以下、さらに好ましくは0.005モル以下、より好ましくは0.001モル以下である。
Crは、環境問題の原因となるクロムの酸化物であるため、地球環境保護の観点から、実質的に含まないことが望ましい。また、Crの含有量が多過ぎると、直流電圧印加状態における温度特性が悪化したり、高温下における、絶縁抵抗の電界強度依存性が高くなる傾向にある。
誘電体層2の厚さは、特に限定されないが、一層あたり10μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは5μm以下、より好ましくは、3μm以下である。厚さの下限は、特に限定されないが、たとえば0.5μm程度である。
誘電体層2に含まれる誘電体粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、0.8μm未満であることが好ましく、さらに好ましくは0.4μm未満である。平均粒子径の下限は、特に限定されないが、たとえば0.15μm程度である。平均粒子径を小さくすることにより、高温負荷寿命を改良することができる。
本実施形態においては、好ましくは、前記誘電体層2の積層方向に並んだ粒子径の平均値が、前記内部電極層の層間距離の1/3以下であり、さらに好ましくは1/6以下である。
本実施形態のように、前記誘電体層2の積層方向に並んだ粒子径が前記内部電極層の層間距離の1/3以下とすることにより、誘電体層1層あたりにおいて積層方向に並んだ平均誘電体粒子数を3個以上とすることができ、このようにすることにより、IR不良率の低減およびIR寿命特性の向上を図ることが可能となる。
内部電極層3に含有される導電材は特に限定されないが、誘電体層2の構成材料が耐還元性を有するため、卑金属を用いることができる。導電材として用いる卑金属としては、NiまたはNi合金が好ましい。Ni合金としては、Mn,Cr,CoおよびAlから選択される1種以上の元素とNiとの合金が好ましく、合金中のNi含有量は95重量%以上であることが好ましい。なお、NiまたはNi合金中には、P等の各種微量成分が0.1重量%程度以下含まれていてもよい。内部電極層3の厚さは用途等に応じて適宜決定すればよいが、通常、0.1〜3μm、特に0.2〜2.0μm程度であることが好ましい。
外部電極4に含有される導電材は特に限定されないが、本発明では安価なNi,Cuや、これらの合金を用いることができる。外部電極4の厚さは用途等に応じて適宜決定されればよいが、通常、10〜50μm程度であることが好ましい。
本発明の誘電体磁器組成物を用いた積層セラミックコンデンサは、従来の積層セラミックコンデンサと同様に、ペーストを用いた通常の印刷法やシート法によりグリーンチップを作製し、これを焼成した後、外部電極を印刷または転写して焼成することにより製造される。以下、製造方法について具体的に説明する。
まず、誘電体層用ペーストに含まれる誘電体磁器組成物粉末を準備し、これを塗料化して、誘電体層用ペーストを調整する。
誘電体層用ペーストは、誘電体磁器組成物粉末と有機ビヒクルとを混練した有機系の塗料であってもよく、水系の塗料であってもよい。
誘電体磁器組成物粉末としては、上記した酸化物やその混合物、複合酸化物を用いることができるが、その他、焼成により上記した酸化物や複合酸化物となる各種化合物、例えば、炭酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物等から適宜選択し、混合して用いることもできる。誘電体磁器組成物粉末中の各化合物の含有量は、焼成後に上記した誘電体磁器組成物の組成となるように決定すればよい。塗料化する前の状態で、誘電体磁器組成物粉末の粒径は、通常、平均粒径0.1〜1μm程度である。
有機ビヒクルとは、バインダを有機溶剤中に溶解したものである。有機ビヒクルに用いるバインダは特に限定されず、エチルセルロース、ポリビニルブチラール等の通常の各種バインダから適宜選択すればよい。また、用いる有機溶剤も特に限定されず、印刷法やシート法など、利用する方法に応じて、テルピネオール、ブチルカルビトール、アセトン、トルエン等の各種有機溶剤から適宜選択すればよい。
また、誘電体層用ペーストを水系の塗料とする場合には、水溶性のバインダや分散剤などを水に溶解させた水系ビヒクルと、誘電体原料とを混練すればよい。水系ビヒクルに用いる水溶性バインダは特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコール、セルロース、水溶性アクリル樹脂などを用いればよい。
内部電極層用ペーストは、上記した各種導電性金属や合金からなる導電材、あるいは焼成後に上記した導電材となる各種酸化物、有機金属化合物、レジネート等と、上記した有機ビヒクルとを混練して調製する。
外部電極用ペーストは、上記した内部電極層用ペーストと同様にして調製すればよい。
上記した各ペースト中の有機ビヒクルの含有量に特に制限はなく、通常の含有量、例えば、バインダは1〜5重量%程度、溶剤は10〜50重量%程度とすればよい。また、各ペースト中には、必要に応じて各種分散剤、可塑剤、誘電体、絶縁体等から選択される添加物が含有されていてもよい。これらの総含有量は、10重量%以下とすることが好ましい。
印刷法を用いる場合、誘電体層用ペーストおよび内部電極層用ペーストを、PET等の基板上に積層印刷し、所定形状に切断した後、基板から剥離してグリーンチップとする。
また、シート法を用いる場合、誘電体層用ペーストを用いてグリーンシートを形成し、この上に内部電極層用ペーストを印刷した後、これらを積層してグリーンチップとする。
焼成前に、グリーンチップに脱バインダ処理を施す。脱バインダ処理は、内部電極層ペースト中の導電材の種類に応じて適宜決定されればよいが、導電材としてNiやNi合金等の卑金属を用いる場合、脱バインダ雰囲気中の酸素分圧を10−45 〜10Paとすることが好ましい。酸素分圧が前記範囲未満であると、脱バインダ効果が低下する。また酸素分圧が前記範囲を超えると、内部電極層が酸化する傾向にある。
また、それ以外の脱バインダ条件としては、昇温速度を好ましくは5〜300℃/時間、より好ましくは10〜100℃/時間、保持温度を好ましくは180〜400℃、より好ましくは200〜350℃、温度保持時間を好ましくは0.5〜24時間、より好ましくは2〜20時間とする。また、焼成雰囲気は、空気もしくは還元性雰囲気とすることが好ましく、還元性雰囲気における雰囲気ガスとしては、たとえばNとHとの混合ガスを加湿して用いることが好ましい。
グリーンチップ焼成時の雰囲気は、内部電極層用ペースト中の導電材の種類に応じて適宜決定されればよいが、導電材としてNiやNi合金等の卑金属を用いる場合、焼成雰囲気中の酸素分圧は、10−9〜10−4Paとすることが好ましい。酸素分圧が前記範囲未満であると、内部電極層の導電材が異常焼結を起こし、途切れてしまうことがある。また、酸素分圧が前記範囲を超えると、内部電極層が酸化する傾向にある。
また、焼成時の保持温度は、好ましくは1100〜1400℃、より好ましくは1200〜1350℃である。保持温度が前記範囲未満であると緻密化が不十分となり、前記範囲を超えると、内部電極層の異常焼結による電極の途切れや、内部電極層構成材料の拡散による容量温度特性の悪化、誘電体磁器組成物の還元が生じやすくなる。
これ以外の焼成条件としては、昇温速度を好ましくは50〜500℃/時間、より好ましくは200〜300℃/時間、温度保持時間を好ましくは0.5〜8時間、より好ましくは1〜3時間、冷却速度を好ましくは50〜500℃/時間、より好ましくは200〜300℃/時間とする。また、焼成雰囲気は還元性雰囲気とすることが好ましく、雰囲気ガスとしてはたとえば、NとHとの混合ガスを加湿して用いることが好ましい。
還元性雰囲気中で焼成した場合、コンデンサ素子本体にはアニールを施すことが好ましい。アニールは、誘電体層を再酸化するための処理であり、これによりIR寿命を著しく長くすることができるので、信頼性が向上する。
アニール雰囲気中の酸素分圧は、10−3Pa以上、特に10−2〜10Paとすることが好ましい。酸素分圧が前記範囲未満であると誘電体層の再酸化が困難であり、前記範囲を超えると内部電極層が酸化する傾向にある。
アニールの際の保持温度は、1100℃以下、特に500〜1100℃とすることが好ましい。保持温度が前記範囲未満であると誘電体層の酸化が不十分となるので、IRが低く、また、IR寿命が短くなりやすい。一方、保持温度が前記範囲を超えると、内部電極層が酸化して容量が低下するだけでなく、内部電極層が誘電体素地と反応してしまい、容量温度特性の悪化、IRの低下、IR寿命の低下が生じやすくなる。なお、アニールは昇温過程および降温過程だけから構成してもよい。すなわち、温度保持時間を零としてもよい。この場合、保持温度は最高温度と同義である。
これ以外のアニール条件としては、温度保持時間を好ましくは0〜20時間、より好ましくは2〜10時間、冷却速度を好ましくは50〜500℃/時間、より好ましくは100〜300℃/時間とする。また、アニールの雰囲気ガスとしては、たとえば、加湿したNガス等を用いることが好ましい。
上記した脱バインダ処理、焼成およびアニールにおいて、Nガスや混合ガス等を加湿するには、例えばウェッター等を使用すればよい。この場合、水温は5〜75℃程度が好ましい。
脱バインダ処理、焼成およびアニールは、連続して行なっても、独立に行なってもよい。
上記のようにして得られたコンデンサ素子本体に、例えばバレル研磨やサンドブラストなどにより端面研磨を施し、外部電極用ペーストを印刷または転写して焼成し、外部電極4を形成する。外部電極用ペーストの焼成条件は、例えば、加湿したNとHとの混合ガス中で600〜800℃にて10分間〜1時間程度とすることが好ましい。そして、必要に応じ、外部電極4表面に、めっき等により被覆層を形成する。
このようにして製造された本発明の積層セラミックコンデンサは、ハンダ付等によりプリント基板上などに実装され、各種電子機器等に使用される。
なお、本実施形態の積層セラミックコンデンサは、誘電体層を薄層化、たとえば5μm以下とした場合においても、高電界強度の直流電圧印加状態における温度特性および、高温負荷寿命特性に優れている。
たとえば、温度20℃、印加電圧0Vにおける静電容量を基準とした場合に、温度85℃、電界強度0.8V/μmの直流電圧の印加状態における容量温度変化率(ΔC/C20)が、好ましくは±10%以内である。
また、高温負荷寿命特性に関しては、たとえば、試験温度200℃、30V/μmの直流電圧の印加状態に保持する条件において、前記直流電圧の印加開始から、前記直流電圧の印加状態において、検出される電流の電流値が2mA以上となるまでの時間が、好ましくは35時間以上であり、さらに好ましくは50時間以上である。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々に改変することができる。
たとえば、上述した実施形態では、本発明に係る電子部品として積層セラミックコンデンサを例示したが、本発明に係る電子部品としては、積層セラミックコンデンサに限定されず、上記組成の誘電体磁器組成物で構成してある誘電体層を有するものであれば何でも良い。
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
実施例1
出発原料として、BaOとTiOをBa/Tiモル比で0.990〜1.010の範囲で調合し、固相法により化学反応させることによりBaTiOを調製した。なお、得られたBaTiOの平均粒子径は0.4μmであった。
主成分として上記にて調製したBaTiOと副成分として、MgOと、Yと、Vと、BaαCa(1−α)SiO(ただし、0≦α≦1)とを用い、表1〜5に示した組成になるように、主成分と各副成分とを秤量・調合した。また、表5に示した試料22,23には、MnOを、試料24,25には、Crを副成分としてさらに添加した。なお、BaαCa(1−α)SiOとしては、α=0.58、すなわちBa0.58Ca0.42SiOを使用した。
次に、秤量・調合した主成分と各副成分とをボールミルにより16時湿式混合し、乾燥することによって誘電体材料とした。
得られた誘電体材料100重量部と、アクリル樹脂6重量部と、トルエン6重量部と、メチルエチルケトン3.5重量部と、ミネラルスピリット6重量部と、アセトン4重量部とをボールミルで混合し、ペースト化して誘電体層用ペーストを得た。
平均粒径0.2〜0.8μmのNi粒子100重量部と、有機ビヒクル(エチルセルロース8重量部をブチルカルビトール92重量部に溶解したもの)40重量部と、ブチルカルビトール10重量部とを3本ロールにより混練し、ペースト化して内部電極層用ペーストを得た。
得られた誘電体層用ペーストを用いてPETフィルム上に、ドクターブレード法により、シート成形を行い、乾燥することにより、グリーンシートを形成した。このとき、グリーンシートの厚みは、3.5μmとした。この上に内部電極用ペーストを印刷した後、PETフィルムからシートを剥離した。次いで、これらのグリーンシートと保護用グリーンシート(内部電極層用ペーストを印刷しないもの)とを積層、圧着して、グリーンチップを得た。
次いで、グリーンチップを所定サイズに切断し、脱バインダ処理、焼成およびアニールを下記条件にて行って、積層セラミック焼成体を得た。脱バインダ処理は、空気中にて、250℃で加熱することにより行った。
焼成は、酸素分圧を10−5〜10−8Paに制御したH−N−HOからなる還元雰囲気中で表1〜5に示した各焼成温度で2時間焼成を行った。
アニールは、焼成において欠乏した酸素を補うために、加湿したNガス雰囲気中で、900〜1100℃で、2時間加熱をすることにより行った。
なお、焼成および再酸化処理の際の雰囲気ガスの加湿には、水温を35℃としたウエッターを用いた。
次いで、得られた積層セラミック焼成体の端面をサンドブラストにて研磨した後、外部電極としてIn−Gaを塗布し、図1に示す積層セラミックコンデンサの試料を得た。
得られたコンデンサのサイズは、3.2mm×1.6mm×0.6mmであり、内部電極層に挟まれた誘電体層の数は100層、1層あたりの誘電体層の厚み(層間厚み)は2.5μmであり、内部電極層の厚さは1.5μmであった。また、各試料の誘電体層における平均粒子径を調べたところ、0.4μmであった。
また、MnOおよびCrを添加していない試料1〜21について、高周波誘導プラズマ発光(ICP)組成分析法により、MnOおよびCrの含有量を測定した結果、いずれの試料もMnOが0.0005%未満、Crが0.003%未満であり、すなわち、BaTiO100モルに対して、MnOの含有量が0.00167モル未満、Crの含有量が0.005モル未満であることが確認できた。
各試料について下記特性の評価を行った。
比誘電率(ε
コンデンサの試料に対し、基準温度25℃において、デジタルLCRメータ(YHP社製4274A)にて、周波数1kHz,入力信号レベル(測定電圧)1Vrmsの条件下で、静電容量を測定した。そして、得られた静電容量から、比誘電率(単位なし)を算出した。結果を表1〜5に示す。
容量温度変化率(ΔC/C 20
温度−25℃および85℃において、コンデンサの試料に対し、電界強度0.8V/μmの直流電圧を印加し、直流電圧の印加状態における静電容量を測定し、温度20℃、印加電圧0Vにおける静電容量を基準とした、各温度における容量温度変化率(ΔC/C20)を算出した。
高温負荷寿命(絶縁抵抗の加速寿命/HALT)
コンデンサの試料に対し、200℃で30V/μmの直流電圧の印加状態に保持することにより、高温負荷寿命を測定した。この高温負荷寿命は、誘電体層を薄層化する際に特に重要となるものである。本実施例では直流電圧の印加状態において、印加開始から検出電流の電流値が2mA以上となるまでの時間を寿命と定義し、これを10個のコンデンサ試料に対して行い、その平均寿命時間を算出した。結果を表1〜5に示す。
Figure 2005104772
表1に、副成分であるMgOの量を変化させたときの、焼成温度、比誘電率、各温度における容量温度変化率および高温負荷寿命を示す。
表1より、MgOを本発明の範囲内とした実施例の試料2〜5は、温度85℃、電界強度0.8V/μmの直流電圧の印加状態における容量温度変化率(ΔC/C20)が、いずれも±10%以内となり良好な結果となった。高温負荷寿命についても、いずれも35時間以上を達成しており、試料3,4については、60時間以上と特に良好な結果となった。また、MgOの含有量が増加すると、比誘電率は、低下する傾向がみられたが、いずれも高い値となった。
一方、MgOの添加量をBaTiO100モルに対して、0.05モルとした比較例の試料1は、高温負荷寿命が15時間と短くなり、3.42モルとした比較例の試料6は、温度85℃における容量温度変化率(ΔC/C20)の値が−10.7%と、−10%を下回る結果となった。
この結果より、副成分であるMgOの量は、0.1〜3モルであることが望ましく、好ましくは0.5〜2.5モル、さらに好ましくは、1.0〜2.0モルであることが確認できた。
Figure 2005104772
表2に、副成分であるYの量を変化させたときの、焼成温度、比誘電率、各温度における容量温度変化率および高温負荷寿命を示す。
表2より、Yを本発明の範囲内とした実施例の試料4,8〜10は、温度85℃、電界強度0.8V/μmの直流電圧の印加状態における容量温度変化率(ΔC/C20)が、いずれも±10%以内となり良好な結果となった。高温負荷寿命についても、いずれも35時間以上を達成しており、試料4,9,10については、60時間以上と特に良好な結果となった。また、Yの含有量が増加すると、比誘電率も向上する傾向がみられ、いずれも高い値となった。
一方、Yの添加量をBaTiO100モルに対して、0.20モルとした比較例の試料7は、高温負荷寿命が19時間と短くなり、3.31モルとした比較例の試料11は、焼結性が悪く、焼成温度を1330℃と高温にする必要があったため、結果として不良品が多く発生した。
この結果より、副成分であるYの量は、0.5〜3モルであることが望ましく、好ましくは1.0〜3モルであることが確認できた。
Figure 2005104772
表3に、副成分であるVの量を変化させたときの、焼成温度、比誘電率、各温度における容量温度変化率および高温負荷寿命を示す。
表3より、Vを本発明の範囲内とした実施例の試料4,13〜15は、温度85℃、電界強度0.8V/μmの直流電圧の印加状態における容量温度変化率(ΔC/C20)が、いずれも±10%以内となり良好な結果となった。また、高温負荷寿命についても、いずれも35時間以上を達成しており良好な結果となった。また、Vの含有量が増加すると、比誘電率は低下する傾向がみられたが、いずれも高い値となった。
一方、Vを添加しなかった比較例の試料12およびVの添加量をBaTiO100モルに対して、0.24モルとした比較例の試料16は、高温負荷寿命がそれぞれ31時間、12時間と短くなる結果となった。
この結果より、副成分であるVの量は、0.01〜0.2モルであることが望ましく、好ましくは0.01〜0.12モル、さらに好ましくは、0.06〜0.12モルであることが確認できた。
Figure 2005104772
表4に、副成分であるBaαCa(1−α)SiOの量を変化させたときの、焼成温度、比誘電率、各温度における容量温度変化率および高温負荷寿命を示す。なお、本実施例においては、α=0.58とした。
表4より、BaαCa(1−α)SiOを本発明の範囲内とした実施例の試料4,18〜21は、温度85℃、電界強度0.8V/μmの直流電圧の印加状態における容量温度変化率(ΔC/C20)が、いずれも±10%以内となり良好な結果となった。また、高温負荷寿命についても、いずれも35時間以上を達成しており、試料4,18,19については、60時間以上と特に良好な結果となった。また、BaαCa(1−α)SiOの含有量が増加すると、比誘電率は低下する傾向がみられたが、いずれも高い値となった。
一方、BaαCa(1−α)SiOの添加量をBaTiO100モルに対して、0.12モルとした比較例の試料17は、高温負荷寿命が27時間と短くなり、また、焼結性悪く、焼成温度を1320℃と高くする必要があったため、不良品が多く発生した。また、BaαCa(1−α)SiOの添加量を12.03モルとした比較例の試料22は、−25℃、+80℃の両温度において、容量温度変化率(ΔC/C20)がそれぞれ、−13.2%、−11.1%と−10%を下回る結果となり、さらに、高温負荷寿命についても20時間と短くなる結果となった。
この結果より、副成分であるBaαCa(1−α)SiOの量は、0.5〜10モルであることが望ましく、好ましくは0.5〜3.0モル、さらに好ましくは、0.5〜2.0モルであることが確認できた。
Figure 2005104772
表5に、副成分として、MnOおよびCrを添加したときの、焼成温度、比誘電率、各温度における容量温度変化率および高温負荷寿命を示す。
表5より、MnOおよびCrを添加した比較例の試料23〜26は、温度85℃、電界強度0.8V/μmの直流電圧の印加状態における容量温度変化率(ΔC/C20)が、いずれも10%を超える結果となった。また、MnOおよびCrの添加量が増加すると、容量温度変化率が悪化する傾向にあることも確認された。
この結果より、MnOおよびCrを実質的に含まないことが望ましく、好ましくは、MnOおよび/またはCrの添加量が、BaTiO100モルに対して、0.01モルであることが確認できた。
実施例2
MnOを添加していないコンデンサ試料4と、BaTiO100モルに対して、MnOを0.01モル添加したコンデンサ試料22について、EPMA(Electron Probe MicroAnalysis)により、コンデンサチップ中央部および端部における、ニッケル電極の電極途切れ率を測定した。
測定方法としては、まず、コンデンサ試料を図1に見られるような面で切断し、切断面を鏡面研磨して面だしし、60×60μm角の面積を、0.2μm間隔で走査して、Ni、Mn、Oの各元素をマッピングした。次に、EPMAによりマッピングした視野のNi電極の占有部位と考えられる部分において、MnとOが検出され、かつNiが検出されなかった部位を電極途切れとした。そして、Ni電極の占有部位と考えられる部分の総面積に対して、この電極途切れの総面積の割合を求め、これをニッケル電極の途切れ率とした。なお、測定は、中央部、端部それぞれ15層の電極層について、各2カ所ずつ行った。
測定の結果、電極途切れ率は、試料22では、中央部:14%、端部:19%であり、試料4では、中央部:0%、端部:0%であった。この結果より、MnOを実質的に含有していない誘電体磁器組成物を誘電体層として使用した積層セラミックコンデンサにおいては、ニッケル電極の電極途切れ率を低く抑えることができるということが確認できた。
実施例3
Crを添加していないコンデンサ試料4と、BaTiO100モルに対して、Crを0.01モル添加したコンデンサ試料24について、温度150℃、各電界強度における比抵抗ρ(単位はΩcm)をそれぞれ測定した。図2に、試料4,24の各電界強度と比抵抗ρの関係を、図3に、電界強度3.5V/μmを基準とした、各電界強度と、比抵抗ρの対数logρの変化率の関係を示した。
図2より、試料4,24のいずれも電界強度の増大するにつれて、比抵抗ρの値は、小さくなっていくことがわかる。一方、図3より、Crを含有する試料24は、Crを実質的に含有しない試料4と比較して、電界強度を増加した時の比抵抗の変化率が、大きいということが確認された。この結果より、Crを実質的に含有しないことにより、高温時、たとえば150℃における比抵抗の電界強度依存性を小さくすることができ、コンデンサの信頼性を向上できることが確認できた。
図1は本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの断面図である。 図2は本発明の実施例および比較例の試料の各電界強度と比抵抗ρとの関係を示すグラフである。 図3は本発明の実施例および比較例の試料の各電界強度と比抵抗ρの対数logρとの関係を示すグラフである。
符号の説明
1… 積層セラミックコンデンサ
10… コンデンサ素子本体
2… 誘電体層
3… 内部電極層
4… 外部電極

Claims (10)

  1. 主成分であるBaTiOと、
    副成分としてMgOと、Yと、Vと、BaαCa(1−α)SiO(ただし、0≦α≦1)とを含有する誘電体磁器組成物であって、
    主成分であるBaTiO100モルに対する各副成分の比率が、
    MgO:0.1〜3モル
    :0.5〜3モル
    :0.01〜0.2モル
    BaαCa(1−α)SiO:0.5〜10モル
    であり、MnOおよびCrを実質的に含まないことを特徴とする誘電体磁器組成物。
  2. 前記誘電体磁器組成物中のMnOの含有量が、前記主成分であるBaTiO100モルに対して、0.01モル以下であることを特徴とする請求項1に記載の誘電体磁器組成物。
  3. 前記誘電体磁器組成物中のCrの含有量が、前記主成分であるBaTiO100モルに対して、0.01モル以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の誘電体磁器組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の誘電体磁器組成物で構成してある誘電体層を有する電子部品。
  5. 請求項1〜3のいずれかに記載の誘電体磁器組成物で構成してある誘電体層と、内部電極層とが交互に積層してあるコンデンサ素子本体を有する積層セラミックコンデンサ。
  6. 温度20℃、印加電圧0Vにおける静電容量を基準とした場合に、温度85℃、電界強度0.8V/μmの直流電圧の印加状態における容量温度変化率(ΔC/C20)が±10%以内である請求項5に記載の積層セラミックコンデンサ。
  7. 前記誘電体層の厚みが、5μm以下であることを特徴とする請求項5または6に記載の積層セラミックコンデンサ。
  8. 前記誘電体層を構成する誘電体粒子の平均粒子径が0.8μm未満である請求項5〜7記載の積層セラミックコンデンサ。
  9. 前記誘電体層の積層方向に並んだ粒子径の平均値が前記内部電極層の層間距離の1/3以下である請求項5〜8に記載の積層セラミックコンデンサ。
  10. 試験温度200℃、30V/μmの直流電圧の印加状態に保持することにより測定される高温負荷寿命測定において、前記直流電圧の印加開始から、前記直流電圧の印加状態において、検出される電流の電流値が2mA以上となるまでの時間が、35時間以上である請求項5〜9に記載の積層セラミックコンデンサ。
JP2003340618A 2003-09-30 2003-09-30 誘電体磁器組成物および電子部品 Expired - Lifetime JP4098206B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003340618A JP4098206B2 (ja) 2003-09-30 2003-09-30 誘電体磁器組成物および電子部品

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003340618A JP4098206B2 (ja) 2003-09-30 2003-09-30 誘電体磁器組成物および電子部品

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2005104772A true JP2005104772A (ja) 2005-04-21
JP4098206B2 JP4098206B2 (ja) 2008-06-11

Family

ID=34535456

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003340618A Expired - Lifetime JP4098206B2 (ja) 2003-09-30 2003-09-30 誘電体磁器組成物および電子部品

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4098206B2 (ja)

Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7220691B2 (en) 2005-09-30 2007-05-22 Tdk Corporation Dielectric ceramic composition and electronic device
JP2008285373A (ja) * 2007-05-18 2008-11-27 Tdk Corp 誘電体磁器組成物および電子部品
JP2009051717A (ja) * 2007-08-29 2009-03-12 Kyocera Corp 誘電体磁器および積層セラミックコンデンサ
US20110118104A1 (en) * 2009-11-17 2011-05-19 Shinsuke Hashimoto Dielectric ceramic composition
JP2011176186A (ja) * 2010-02-25 2011-09-08 Kyocera Corp 積層セラミックコンデンサ
JP2011176184A (ja) * 2010-02-25 2011-09-08 Kyocera Corp 積層セラミックコンデンサ

Cited By (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7220691B2 (en) 2005-09-30 2007-05-22 Tdk Corporation Dielectric ceramic composition and electronic device
KR101272286B1 (ko) * 2005-09-30 2013-06-07 티디케이가부시기가이샤 유전체 자기 조성물 및 전자 부품
JP2008285373A (ja) * 2007-05-18 2008-11-27 Tdk Corp 誘電体磁器組成物および電子部品
JP2009051717A (ja) * 2007-08-29 2009-03-12 Kyocera Corp 誘電体磁器および積層セラミックコンデンサ
US20110118104A1 (en) * 2009-11-17 2011-05-19 Shinsuke Hashimoto Dielectric ceramic composition
US8283272B2 (en) * 2009-11-17 2012-10-09 Tdk Corporation Dielectric ceramic composition
JP2011176186A (ja) * 2010-02-25 2011-09-08 Kyocera Corp 積層セラミックコンデンサ
JP2011176184A (ja) * 2010-02-25 2011-09-08 Kyocera Corp 積層セラミックコンデンサ

Also Published As

Publication number Publication date
JP4098206B2 (ja) 2008-06-11

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3908715B2 (ja) 積層セラミックコンデンサ
KR100673879B1 (ko) 전자 부품, 유전체 자기 조성물 및 그 제조 방법
JP4821357B2 (ja) 電子部品、誘電体磁器組成物およびその製造方法
JP4839913B2 (ja) 電子部品、誘電体磁器組成物およびその製造方法
JP5035016B2 (ja) 誘電体磁器組成物および電子部品
JP4687680B2 (ja) 誘電体磁器組成物の製造方法および電子部品の製造方法
JP4967965B2 (ja) 誘電体磁器組成物および電子部品
JP5018604B2 (ja) 誘電体磁器組成物および電子部品
JP4396608B2 (ja) 誘電体磁器組成物および電子部品
JP4191496B2 (ja) 誘電体磁器組成物および電子部品
JP4461679B2 (ja) 誘電体磁器組成物および電子部品
JP5067534B2 (ja) 誘電体磁器組成物および電子部品
JP4696891B2 (ja) 電子部品、誘電体磁器組成物およびその製造方法
JP3924286B2 (ja) 積層セラミック電子部品の製造方法
JP5067535B2 (ja) 誘電体磁器組成物および電子部品
KR100651019B1 (ko) 유전체 자기 조성물 및 전자 부품
JP4576807B2 (ja) 誘電体磁器組成物および電子部品
JP4556924B2 (ja) 誘電体磁器組成物および電子部品
JP4951896B2 (ja) 誘電体磁器組成物および電子部品
JP4098206B2 (ja) 誘電体磁器組成物および電子部品
JP5153288B2 (ja) 誘電体磁器組成物および電子部品
JP3908458B2 (ja) 誘電体磁器組成物の製造方法
JP4547945B2 (ja) 電子部品、誘電体磁器組成物およびその製造方法
JP4853360B2 (ja) 誘電体磁器組成物および電子部品
JP4893361B2 (ja) 誘電体磁器組成物および電子部品

Legal Events

Date Code Title Description
A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20070720

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20070731

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20070926

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20071106

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20080104

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20080212

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20080312

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4098206

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110321

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120321

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120321

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130321

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140321

Year of fee payment: 6

EXPY Cancellation because of completion of term