JP2005097483A - 高圧ラジカル重合法ポリエチレン - Google Patents

高圧ラジカル重合法ポリエチレン Download PDF

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晋 江尻
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重一 小林
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Abstract

【課題】 透明性および光沢に優れ、剛性が高い高圧ラジカル重合法によって製造されるポリエチレンおよびそれを中空成形して得られる中空成形体を提供する。
【解決手段】 高圧ラジカル重合法によって製造され、下記の要件(1)〜要件(4)を満たすポリエチレンおよびそれを中空成形して得られる中空成形体。
要件(1)メルトフローレートが0.1〜20g/10分である。
要件(2)密度が、925〜940kg/m3である。
要件(3)スウェル比が1.20〜1.45である。
要件(4)赤外吸収スペクトルによって求められる炭素数2000個あたりのビニル基の数(Vvn)と、炭素数2000個あたりのビニリデン基の数(Vvd)との比(Vvn/Vvd)が0.01〜0.30である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、高圧ラジカル重合法によって製造されるポリエチレンに関するものである。さらに詳しくは、透明性および光沢に優れ、剛性が高い高圧ラジカル重合法によって製造されるポリエチレンに関するものである。(なお、以下、高圧ラジカル重合法によって製造されるポリエチレンを、高圧ラジカル重合法ポリエチレンと称する。)
高圧ラジカル重合法ポリエチレンは、次の(1)〜(12)等に示す材料として、広く使用されている。
(1)規格袋、ゴミ袋、米袋、パン包装、内袋、表面保護フィルム、ストレッチフィルム、ラップフィルム等の包装材料
(2)肥料や土などを入れる重包装に用いられる材料
(3)マルチフィルムや潅水チューブ等の農業資材
(4)牛乳容器、ジュース容器、酒容器、調味料容器等に用いられるコート材料
(5)電力ケーブル、通信ケーブル、電話線等の絶縁材料
(6)キャップや中栓等の射出成型材料
(7)マヨネーズ容器、ケチャップ容器、ドラム缶内容器等の中空成形容器材料
(8)液体の収納や輸送等に用いられるチューブ材料
(9)水道パイプ、ガス管等のパイプ用材料
(10)緩衝材等に使用される発泡体材料
(11)鋼管被覆材料
(12)粉末成型材料
これらのものは、人目に触れる機会が多く、特にフィルム、シート袋、容器、チューブ、パイプ、キャップ等には、透明性、光沢に優れた材料が求められており、さらに、実際に使いやすいという観点から、「腰がある」といわれる性質が求められている。「腰がない」といわれる状態では、容器の自立性が悪くなったり、フィルムが柔かくなり取り扱い難くなったり、袋の口開きが悪くなったり、袋等へ内容物を充填する際に口がすぐ折れ曲がったりすることがある。「腰がある」または「腰がない」といわれる性質は、一般に、剛性によって判断することができ、フィルム、シート袋、容器、チューブ、パイプ、キャップ等には、適度な高さの剛性が求められている。
例えば、特開2001−219514号公報には、剛性が実用的な水準に維持され、透明性に優れる少なくとも3層である包装用フィルムの両表面層の一つの成分として用いられる末端二重結合が0.2〜1.0個/2000Cである高圧ラジカル法低密度ポリエチレンが記載されている。
また、プラスチック材料講座4 ポリエチレン樹脂(昭和44年8月30日発行、第18頁)には、高圧ポリエチレンの製造において、開始剤としては、一般的な基準として110〜210℃の温度範囲で1分の半減期を有するものがよいことが記載されている。すなわち、110〜210℃の温度範囲で1分の半減期を有する開始剤を用いて製造された高圧ラジカル重合法ポリエチレンが記載されている。
しかし、上記の特開2001−219514号公報やプラスチック材料講座4 ポリエチレン樹脂に記載されている高圧ラジカル重合法ポリエチレンにおいても、フィルム、シート袋、容器、チューブ、パイプ、キャップ等に求められている透明性や光沢、さらに、「腰がある」といわれる性質の判断に用いられる剛性については、さらなる改良が求められていた。
特開2001−219514号公報 プラスチック材料講座4 ポリエチレン樹脂(昭和44年8月30日発行、第18頁)
本発明の目的は、透明性および光沢に優れ、剛性が高い高圧ラジカル重合法によって製造されるポリエチレン(高圧ラジカル重合法ポリエチレン)、および、前記ポリエチレンを中空成形して得られる中空成形体を提供することにある。
本発明者等は、かかる実情に鑑み、鋭意検討した結果、本発明が上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、
高圧ラジカル重合法によって製造され、下記の要件(1)〜要件(4)を満たすポリエチレン、および、前記ポリエチレンを中空成形して得られる中空成形体に係るものである。
要件(1)メルトフローレートが0.1〜20g/10分である。
要件(2)密度が、925〜940kg/m3である。
要件(3)スウェル比が1.20〜1.45である。
要件(4)赤外吸収スペクトルによって求められる炭素数2000個あたりのビニル基の数(Vvn)と、炭素数2000個あたりのビニリデン基の数(Vvd)との比(Vvn/Vvd)が0.01〜0.30である。
本発明によれば、透明性および光沢に優れ、剛性が高い高圧ラジカル重合法によって製造されるポリエチレン(高圧ラジカル重合法ポリエチレン)および、前記ポリエチレンを中空成形して得られる中空成形体を得ることができる。
本発明の高圧ラジカル重合法ポリエチレンのメルトフローレート(MFR)は、0.1〜20g/10分であり(要件(1))、好ましくは0.15〜10g/10分であり、より好ましくは0.20〜5g/10分であり、さらに好ましくは0.25〜1g/10分である。MFRが0.1g/10分未満の場合、透明性が不充分であることがあり、20g/10分を超えた場合、成形体の強度が過度に低下することがある。
本発明の高圧ラジカル重合法ポリエチレンの密度(d)は、925〜940kg/m3であり(要件(2))、好ましくは926〜935kg/m3であり、より好ましくは927〜930kg/m3である。密度が925kg/m3未満の場合、剛性が低く、成形体のハンドリング性が不充分なことがあり、940kg/m3を超えた場合、衝撃強度が低下することがある。
本発明の高圧ラジカル重合法ポリエチレンのスウェル比(SR)は、1.20〜1.45であり(要件(3))、好ましくは1.22〜1.40であり、より好ましくは1.25〜1.38である。スウェル比(SR)が、1.20未満の場合、または、1.45を超えた場合、透明性が不充分なことがある。
本発明の高圧ラジカル重合法ポリエチレンのメルトフローレート(MFR)またはスウェル比(SR)の調整は、本発明の高圧ラジカル重合法ポリエチレンを、少なくとも一回混練することによって行うことができる。混練は通常の押出機や混練機を用いて行われ、押出機としては、例えば、単軸押出機、同方向二軸押出機、異方向二軸押出機等が挙げられ、混練機としては、例えば、ニーダー型やバンバリー型の混練機等が挙げられる。
本発明の高圧ラジカル重合法ポリエチレンは、当該ポリエチレンに含まれるビニル基、ビニリデン基、トランスビニレン基について、次のような特徴を有するものである。
赤外吸収スペクトルによって求められる炭素数2000個あたりのビニル基の数(Vvn)と、炭素数2000個あたりのビニリデン基の数(Vvd)との比(Vvn/Vvd)が0.01〜0.30である(要件(4))。この比(Vvn/Vvd)として、好ましくは0.05〜0.20である。この比(Vvn/Vvd)が0.30を超えた場合、耐熱性や透明性や光沢が悪化することがあり、この比(Vvn/Vvd)が0.01未満のものは製造が難しいことがある。
また、耐熱性や透明性や光沢、または、製造のしやすさの観点から、赤外吸収スペクトルによって求められる炭素数2000個あたりのビニル基の数(Vvn)と、炭素数2000個あたりのトランスビニレン基の数(Vtv)との比(Vvn/Vtv)として、好ましくは0.01〜1.30であり、より好ましくは0.10〜1.20である。
また、耐熱性や透明性や光沢、または、製造のしやすさの観点から、赤外吸収スペクトルによって求められる炭素数2000個あたりのトランスビニレン基の数(Vtv)と、炭素数2000個あたりのビニリデン基の数(Vvd)との比(Vtv/Vvd)として、好ましくは0.01〜0.24であり、より好ましくは0.12〜0.19である。
また、剛性、製造のしやすさ、または、熱安定性の観点から、赤外吸収スペクトルによって求められる炭素数2000個あたりのビニル基の数(Vvn)と、炭素数2000個あたりのビニリデン基の数(Vvd)と、炭素数2000個あたりのトランスビニレン基の数(Vtv)との和(Vvn+Vvd+Vtv)の値として、好ましくは0.05〜0.50であり、より好ましくは0.20〜0.38である。
そして、耐熱性や透明性や光沢、または、製造のしやすさの観点から、赤外吸収スペクトルによって求められる炭素数2000個あたりのビニリデン基の数(Vvd)として、好ましくは0.04〜2.00であり、より好ましくは0.10〜1.00であり、さらに好ましくは0.15〜0.40である。
本発明の高圧ラジカル重合法ポリエチレンは、多段ガス圧縮機によってエチレンを50〜400MPaまで加圧し、210〜300℃の反応温度で、反応温度において半減期が10秒以下であるラジカル発生剤を少なくとも2種用いて、エチレンを重合させることによって製造される。
本発明の高圧ラジカル重合法ポリエチレンの製造における反応圧力は、本発明のポリエチレンの要件を制御すること、製造設備や安全性の観点から、50〜400MPaであり、好ましくは180〜300MPaであり、より好ましくは220〜255MPaである。
本発明の高圧ラジカル重合法ポリエチレンの製造における反応温度は、本発明のポリエチレンの要件を制御することや生産性の観点から、210〜300℃であり、好ましくは210〜270℃であり、より好ましくは210〜255℃である。
本発明の高圧ラジカル重合法ポリエチレンは、反応温度において半減期が10秒以下であるラジカル発生剤を少なくとも2種用いて、エチレンを重合させることによって製造される。
本発明の高圧ラジカル重合法ポリエチレンの製造に用いられるラジカル発生剤の反応温度における半減期として、好ましくは5秒以下であり、より好ましくは1秒以下である。
本発明の高圧ラジカル重合法ポリエチレンの製造に用いられるラジカル発生剤としては、例えば、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチル−パーオキシ−2−エチルヘキサネート、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−アミルパーオキサイド、クミルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシビバレート等の有機過酸化物類や、酸素等が挙げられる。
本発明の高圧ラジカル重合法ポリエチレンの製造に用いられるラジカル発生剤は、少なくとも2種が用いられ、少なくとも2種のラジカル発生剤を逐次に使用しても良く、少なくとも2種を混合して使用しても良い。そして、重合反応器に導入する時も、一箇所から導入しても良く、複数箇所から導入しても良い。また、重合反応器に導入する時に、溶剤等に溶解して使用しても良い。
本発明の高圧ラジカル重合法ポリエチレンの分子量を調整するために、その製造において、連鎖移動剤を用いても良い。連鎖移動剤としては、例えば、飽和炭化水素類、芳香族炭化水素類、アルコール類等が挙げられる。飽和炭化水素類としては、エタン、プロパン、n−ブタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、イソブタン等のアルカン類や、シクロヘキサン等の環状アルカン類が挙げられる。芳香族炭化水素類としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等が挙げられ、アルコール類としては、メタノール、エタノール等が挙げられる。また、テトラヒドロフラン、アセトン等のヘテロ原子を含む有機化合物や水素等も挙げられる。連鎖移動剤として、好ましくは飽和炭化水素類であり、より好ましくはアルカン類である。
本発明の高圧ラジカル重合法ポリエチレンの製造に用いられる反応容器としては、槽型反応容器、管型反応容器等が挙げられ、好ましくは管型反応容器である。
本発明の高圧ラジカル重合法ポリエチレンには、必要に応じて、高圧ラジカル重合法ポリエチレン以外の他の樹脂を添加してもよい。例えば、剛性を改良するために添加されるポリプロピレンや高密度ポリエチレン、機械的強度を改良するために添加されるエチレン・α−オレフィン共重合体、衝撃強度を改良するために添加される低密度エラストマー等のポリオレフィン系樹脂が挙げられる。これらの他の樹脂は、単独で添加しても良く、少なくとも二種を併用しても良い。
本発明の高圧ラジカル重合法ポリエチレンには、必要に応じて、安定剤、滑剤、帯電防止剤、加工性改良剤、抗ブロッキング剤等を添加しても良い。
安定剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、商品名:IRGANOX1010)やn−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、商品名:IRGANOX1076)等のフェノール系安定剤、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトやトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等のホスファイト系安定剤が挙げられる。
滑剤としては、有機脂肪酸アミドを用いても良い。有機脂肪酸アミドとしては、例えば飽和脂肪酸アミド、不飽和脂肪酸アミド、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミド等が挙げられ、これらを単独で用いても良く、少なくとも2種以上を併用しても良い。
飽和脂肪酸アミドとしては、例えばステアリン酸アミドやベヘニン酸アミド等が挙げられ、不飽和脂肪酸アミドとしては、例えばオレイン酸アミドやエルカ酸アミド等が挙げられる。また、飽和脂肪酸ビスアミドとしては、例えばエチレンビスステアリン酸アミド等が挙げられ、不飽和脂肪酸ビスアミドとしては、例えばエチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミド等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミドである。
有機脂肪酸アミドの配合量は、本発明の高圧ラジカル重合法ポリエチレン100重量部に対し、通常、0.01〜0.5重量部である。
帯電防止剤としては、例えば、炭素数8〜22の脂肪酸のグリセリンエステルやソルビタン酸エステルやポリエチレングリコールエステルが挙げられ、加工性改良剤としては、例えば、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩が挙げられ、抗ブロッキング剤としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられる。
本発明の高圧ラジカル重合法ポリエチレンに、必要に応じて添加される他の樹脂や安定剤、滑剤、帯電防止剤、加工性改良剤、抗ブロッキング剤等を添加する方法としては、例えば、本発明の高圧ラジカル重合法ポリエチレンに、他の樹脂や安定剤、滑剤、帯電防止剤、加工性改良剤、抗ブロッキング剤等を、溶融混練する方法や、ドライブレンドする方法が挙げられる。
また、他の樹脂や安定剤、滑剤、帯電防止剤、加工性改良剤、抗ブロッキング剤等の少なくとも一種のマスターバッチを用意して、このマスターバッチを高圧ラジカル重合法ポリエチレンにドライブレンドする方法も挙げられる。
本発明の高圧ラジカル重合法ポリエチレンを成型する方法としては、例えば、インフレーションフィルム成型法、Tダイキャストフィルム成型法、ブロー成型法、チューブ成型法等の押出成型法、射出成型法、熱プレス成型法等が挙げられる。
特に、本発明の高圧ラジカル重合法ポリエチレンの溶融樹脂を急激に冷却する成型法において、本発明の効果が顕著に現れる。溶融樹脂を急激に冷却する成型法としては、例えば、水で溶融樹脂を冷却する水冷インフレーションフィルム成型法やチューブ成型法、冷却した金属に溶融樹脂を押し付けるTダイキャストフィルム成型法、冷却した金型を用いるブロー成型法や射出成型法、冷却プレスを用いた熱プレス成型法等が挙げられる。
本発明の高圧ラジカル重合法ポリエチレンの用途としては、例えば、次の(1)〜(13)の用途が挙げられる。
(1)規格袋、ゴミ袋、米袋、パン包装、内袋、表面保護フィルム、ストレッチフィルム、ラップフィルム等の包装材料
(2)肥料や土などを入れる重包装に用いられる材料
(3)マルチフィルムや潅水チューブ等の農業資材
(4)牛乳容器、ジュース容器、酒容器、調味料容器等に用いられるコート材料
(5)電力ケーブル、通信ケーブル、電話線等の絶縁材料
(6)キャップ、中栓等の射出成型材料
(7)マヨネーズ容器、ケチャップ容器、ドラム缶内容器等の中空成形容器材料
(8)液体の収納や輸送等に用いられるチューブ材料
(9)水道パイプ、ガス管等のパイプ用材料
(10)緩衝材等に使用される発泡体材料
(11)鋼管被覆材料
(12)粉末成型材料
(13)押出材料
次に、実施例および比較例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
実施例および比較例で用いた高圧ラジカル重合法ポリエチレンの物性は以下の方法で測定した。
(1)密度(d、単位:kg/m3
JIS K6760に従って測定を行った。100℃沸騰水中で1時間アニーリングした後、測定に用いた。
(2)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
JIS K7210に従って測定した。試験荷重は21.18N(2.16kgf)、測定温度は190℃であった。
(3)スウェル比(SR)
JIS K7210に規定されたメルトフローレート測定装置を用い、メルトフローレート測定時に押出しされたストランドの直径Dを測定し、オリフィスの直径D0とストランドの直径Dの比(D/D0)をスウェル比(SR)の値とした。測定温度は190℃で行った。
(4)Haze(霞み度、単位:%)
ASTM D1003に従って測定した。この値が小さいほど透明性が良いことを示す。
(5)Gloss(光沢度、単位:%)
JIS K7105に従って測定した。45度鏡面光沢度を測定した。この値が大きいほど光沢が優れることを示す。
(6)曲げ剛性率(単位:MPa)
ASTM D747−70に従ってオルゼン曲げ試験機を用いて測定した。試料は熱プレスで150℃にて1mm厚に成型し100℃沸騰水中で1時間アニーリングしたものを測定に用いた。この値が大きいものほど剛性が高く腰があることを示す。
(7)メルトテンション(単位:cN)
東洋精機製作所製メルトテンションテスターを用い、190℃の温度でオリフィス穴から一定量のポリマーを強制的に押出し、モノフィラメント状に引張るときに生じる張力をストレンゲージで検出した。張力は、モノフィラメント状の溶融ポリマーが切断するまで引取ロールにより引取速度を一定の速度で上昇させながら測定し、引取開始から切断までの間に測定される張力の最高値をもって溶融張力とした。
押出速度:0.32g/min
オリフィス:直径2.095mm、長さ8.000mm
引取上昇速度:6.3m/min
この値が高いほど溶融張力があることを示す。但し、溶融張力が高すぎると引取性が悪化することがあるので、適度な値であることが望ましい。
(8)ブラベンダートルク(単位:Nm)
ブラベンダー社のブラベンダープラストグラフを用いて、160℃、60rpmの条件で混練を行い、30分後のトルク値を測定した。
この値が小さいほど、押出負荷が小さいことを示す。
(9)ビニル基、ビニリデン基、トランスビニレン基の定量(単位:個/2000炭素)
赤外吸収スペクトルの測定に用いた試料は、150℃の熱プレスを用いて、厚さ約0.5mmに成型した。赤外吸収スペクトルは、日本分光製FT/IR−480PLUS型フーリエ変換赤外分光光度計を用いて、積算回数128回、分解能4cm-1にて、透過光にて測定を行った。
得られた赤外吸収スペクトルから、ビニル基にあたる910cm-1の吸収バンド、ビニリデン基にあたる888cm-1の吸収バンド、トランスビニレン基にあたる965cm-1の吸収バンドにおいて、各吸収バンドのそれぞれのベースラインからの吸光度、A910、A888、A965を求めた。試料により各バンドの吸収強度が異なるため、各吸収バンドのそれぞれのベースラインは各バンドの高波数側と低波数側の2点で吸収曲線と接する直線とし、ビニル基では900cm-1付近と918cm-1付近で接する接線、ビニリデン基では875cm-1付近と900cm-1付近で接する接線、トランスビニレン基では948cm-1付近と980cm-1付近で接する接線として決定した。
各吸収バンドのベースラインからの吸光度から下記の式(1)〜(3)を用いて、ポリエチレンの2000炭素あたりの、ビニル基、ビニリデン基、トランスビニレン基の数を求めた。
2000炭素あたりのビニル基の数:Vvn
Vvn=0.231/(d×l)×A910 式(1)
2000炭素あたりのビニリデン基の数:Vvd
Vvd=0.271/(d×l)×A888 式(2)
2000炭素あたりのトランスビニレン基の数:Vtv
Vtv=0.328/(d×l)×A965 式(3)
式(1)〜(3)において、dは試料の密度(g/cm3)を表し、lはマイクロメーターを用いて測定した試料の厚み(cm)を表す。
(10)引張弾性率(σ、単位:MPa)
引張弾性率の測定は、次のとおりに行った。ブロー成型したボトルから2cm×9cmの短冊状(厚み約0.5mm)に試料を切り出し、測定に用いた。引っ張り試験機を用いて、チャック間6cmになるように試料を取り付け、引張速度5mm/分で引張試験を行い、測定チャートからチャック間が0.06cm(1%)伸びた時の荷重Fを読み取った。引張弾性率(σ)は次の式(4)からもとめた。
σ=k×(F×L)/(w×t×ΔL) 式(4)
F:1%伸び(0.06cm)における荷重[kgf]
σ:引張弾性率[MPa]
w:試料片の幅[cm]
t:試料片の厚み[cm]
L:チャック間隔[cm]
ΔL:1%伸び(=0.06[cm])
k:単位変換係数 0.098[MPa/(kgf/cm2)]
(11)半減期
反応温度における半減期は次のように求めた。
半減期は重合に用いた有機過酸化物それぞれについて、過酸化物初期濃度0.1mol/Lのベンゼン溶液のデータをもとに計算を行った。具体的には、有機過酸化物研究グループ編「有機化酸化物」(発行:株式会社化学工業社)記載の過酸化物初期濃度0.1mol/Lのベンゼン溶液での、半減期1分、半減期10時間、半減期100時間を得るための温度から、以下のように温度(T(℃))と半減期(t(1/2)(秒))の関係を求め、それをもとに目的の温度の半減期を求めた。
まず温度(T(℃))と半減期(t1/2(秒))の関係を、温度の逆数(1/(T+273.15)(1/℃))に対し半減期の自然対数(ln(t1/2))をプロットし、プロットについて直線近似を行い、1/(T+273.15)とln(t1/2)の関係を得た。得られた温度(T(℃))と半減期(t(1/2)(秒))の関係を、反応温度と半減期の関係とし、反応温度における半減期を求めた。
〔LD−1〕
実施例1または実施例4で用いた高圧ラジカル重合法ポリエチレン(LD−1)は、次のとおりに製造した。管型の反応器を用いて、重合圧力240MPa、重合温度235℃、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(235℃での半減期0.077秒)とt−ブチルパーオキシピバレート(235℃での半減期0.005秒)とt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート(235℃での半減期0.003秒)をラジカル発生剤として、連鎖移動剤としてプロパンを用いて重合を行った。重合によって得られたポリエチレン100重量部に対して、滑剤としてオレイン酸アミド0.03重量部を添加した。その物性値を表1に示した。
〔LD−2〕
実施例2または実施例5で用いた高圧ラジカル重合法ポリエチレン(LD−2)は、次のとおりに製造した。管型の反応器を用いて、重合圧力240MPa、重合温度220℃、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(220℃での半減期0.227秒)とt−ブチルパーオキシピバレート(220℃での半減期0.012秒)とt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート(220℃での半減期0.007秒)をラジカル発生剤として、連鎖移動剤としてプロパンを用いて重合を行った。重合によって得られたポリエチレン100重量部に対して、滑剤としてオレイン酸アミド0.03重量部を添加した。その物性値を表1に示した。
〔LD−3〕
実施例3または実施例6で用いた高圧ラジカル重合法ポリエチレン(LD−3)は、次のとおりに製造した。管型の反応器を用いて、重合圧力240MPa、重合温度225℃、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(225℃での半減期0.157秒)とt−ブチルパーオキシピバレート(225℃での半減期0.009秒)とt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート(225℃での半減期0.006秒)をラジカル発生剤として、連鎖移動剤としてプロパンを用いて重合を行った。重合によって得られたポリエチレン100重量部に対して、滑剤としてオレイン酸アミド0.03部を添加した。その物性値を表1に示した。
〔LD−4〕
比較例1または比較例3には、高圧ラジカル重合法ポリエチレン(LD−4)として、住友化学工業(株)製 スミカセンF102−0を用いた。その物性値を表1に示した。
〔LD−5〕
比較例2には、高圧ラジカル重合法ポリエチレン(LD−5)として、住友化学工業(株)製 スミカセンF200を用いた。その物性値を表1に示した。
Figure 2005097483
実施例1〜3および比較例1〜2で用いたプレスシートは、厚さが0.5mmで、(株)神藤金属工業所の熱プレス成型機を用いて、次のとおりの熱プレスによって作製した。すなわち、高圧ラジカル重合法ポリエチレンとスペーサーをポリエチレンテレフタレートのフィルムではさみ、それをさらに0.3mm厚のアルミニウム板ではさみ、2mm厚のステンレス板ではさんだものを、150℃で加圧しない状態で5分間保持して予備加熱を行った後、100kg/cm2に加圧して5分間保持し、加圧状態で5分経過直後、30℃の冷却水を流した冷却プレスで5分間加圧することによって、プレスシートを作製した。
そして、得られたプレスシートを、23℃、湿度50%の恒温室に24時間以上放置した後、Haze、Glossの測定に用いた。実施例1〜3および比較例1〜2で用いたプレスシートのHaze、Glossを表2に示した。
Figure 2005097483
実施例4〜6および比較例3
日本製鋼所製NB−3B中空成型機を用いて、内容積約600mlの丸瓶の成型を行った。50mmφ押出機の温度設定は、シリンダー1を170℃、シリンダー2を190℃、シリンダー3を210℃、アダプターを210℃、クロスヘッドを210℃とした。ダイ内径17mmφの円形のダイと、15mmφの円形のコアを用いて、吐出量8kg/hr、金型温度30℃で成型を行った。パリソンコントロールを用いて目付量20gのボトルを得た。
得られたボトルのHaze、ボトル外面のGlossおよび引張弾性率の測定を行った。測定された物性値を表3に示した。
Figure 2005097483
本発明の要件を満足する実施例1〜3のプレスシートおよび実施例4〜6のボトルは、透明性および光沢に優れ、剛性が高いものであることが分かる。
これに対して、本発明の要件である密度(要件(2))、スウェル比(要件(3))、ビニル基の数(Vvn)とビニリデン基の数(Vvd)との比(Vvn/Vvd)(要件(4))を満足しない比較例1および比較例2のプレスシート、および、比較例3のボトルは、透明性、光沢および剛性のいずれも不充分であることが分かる。

Claims (2)

  1. 高圧ラジカル重合法によって製造され、下記の要件(1)〜要件(4)を満たすポリエチレン。
    要件(1)メルトフローレートが0.1〜20g/10分である。
    要件(2)密度が、925〜940kg/m3である。
    要件(3)スウェル比が1.20〜1.45である。
    要件(4)赤外吸収スペクトルによって求められる炭素数2000個あたりのビニル基の数(Vvn)と、炭素数2000個あたりのビニリデン基の数(Vvd)との比(Vvn/Vvd)が0.01〜0.30である。
  2. 請求項1記載のポリエチレンを中空成形して得られる中空成形体。
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